JP3446204B2 - 超伝導素子 - Google Patents

超伝導素子

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JP3446204B2
JP3446204B2 JP50880393A JP50880393A JP3446204B2 JP 3446204 B2 JP3446204 B2 JP 3446204B2 JP 50880393 A JP50880393 A JP 50880393A JP 50880393 A JP50880393 A JP 50880393A JP 3446204 B2 JP3446204 B2 JP 3446204B2
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critical temperature
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武富 上川
栄治 名取
節也 岩下
達也 下田
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    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10NELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10N60/00Superconducting devices
    • H10N60/20Permanent superconducting devices
    • H10N60/205Permanent superconducting devices having three or more electrodes, e.g. transistor-like structures 
    • H10N60/207Field effect devices
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10NELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10N60/00Superconducting devices
    • H10N60/30Devices switchable between superconducting and normal states

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  • Superconductor Devices And Manufacturing Methods Thereof (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、スイッチ、メモリー、SQUID、電磁波検出
器、電圧標準などに用いる超伝導素子に関するものであ
る。
背景技術 超伝導素子は電気的および磁気的に特異な特性を有す
ることおよび高速かつ低消費電力で動作することからエ
レクトロニクス分野に多様な応用が可能であり、これま
で多くの研究開発が行われてきた。特に高臨界温度を有
する酸化物超伝導体の発見以来大がかりな冷却設備とラ
ンニングコストの問題も解決してますます研究開発に拍
車がかかり現在に至っている。
超伝導素子の基本構成要素は一般に2つの超伝導電極
とそれらを連結する結合体である。このことは2端子超
伝導素子および3端子超伝導素子の双方について言える
ことである。
結合体としては一般に絶縁体、半導体、常伝導体が用
いられるが、超伝導材料が用いられることもある。しか
し、超伝導材料を用いる場合でも、その多くは素子の動
作温度がその材料の臨界温度よりはるかに高い温度に設
定されていて、その材料は完全な常伝導体として用いら
れることが多かった。
従来のこのような超伝導素子の本質は結合体によって
2つの超伝導電極を弱く結合する超伝導弱結合にある。
ここで超伝導弱結合が生じる理由を述べると、絶縁体あ
るいは一部の半導体からなる結合体ではその理由はトン
ネル効果であり、また他の一部の半導体、常伝導体、あ
るいは超伝導材料からなる結合体ではその理由は超伝導
状態のしみ込み効果、すなわち近接効果である。
以上述べた従来例の他に、特に3端子超伝導素子につ
いては以下に示す二つの従来例がある。ひとつは、特開
平1−207982に示されるように、結合体に超伝導状態に
なっている超伝導材料を用い、結合体に取り付けた制御
電極に信号電圧を印加することによって超伝導電極間を
流れる電流を変調するという3端子超伝導素子の従来例
である。この従来例では結合体が第1および第2超伝導
電極の機能を兼ねている。換言すれば、第1および第2
超伝導電極と結合体は同一の超伝導材料で構成されてい
る。このような超伝導素子が機能することの本質は、ト
ンネル効果や近接効果ではなく、結合体がその臨界電流
値以上の電流では電気抵抗ゼロの状態が破壊されるこ
と、そして信号電圧によって結合体に空乏層が形成さ
れ、結合体がチャネルとしての機能を果たすことにあ
る。他のひとつは、特開昭63−234572、特開昭63−2345
73、および特開昭63−234574に示されるように、チャネ
ルとなる結合体をTcオンセット(超伝導の始まる温度)
とTc0(電気抵抗がゼロになる温度)の温度差の大きい
超伝導材料で構成して、TcオンセットとTc0の中間の温
度で動作させる3端子超伝導素子の従来例である。
しかし、トンネル効果や近接効果にもとづく従来の超
伝導素子には結合体を数100nm以下の超薄膜あるいは超
微細パターンにしないと充分にその機能を発揮しないと
いう欠点があった。その理由は、トンネル効果にしろ近
接効果にしろそれらが顕著に現われる長さの程度が従来
の超伝導素子の使用材料と動作環境では数10から数100n
m以下だからである。特に近接効果については、一般に
しみ込み長さは結合体のコヒーレンス長と密接に関係し
ていて両者は同程度の長さであるとされている。一方、
酸化物高温超伝導体のコヒーレンス長は金属超伝導体の
それより短く数nm以下であることが知られている。した
がって、特に酸化物高温超伝導体の近接効果を用いた超
伝導素子の場合には結合体のサイズを数nm以下にするこ
とが必要である。チャネルをこの程度のサイズにするこ
とは、薄膜形成技術あるいはフォトリソグラフィー技術
の見地からみてひじょうに難しい技術である。さらに、
結合体に制御電極を取り付けた3端子超伝導素子ではチ
ャネルのサイズの制約はそのまま制御電極の取り付け領
域の制約となるから困難はいっそう大きくなる。以上の
ことから明らかなように、結合体のサイズが数100nm以
下あるいは数nm以下に制約されることは超伝導素子の製
造歩留まり、信頼性、および特性の再現性・一様性にお
いて大きなマイナス要因になる。特に酸化物高温超伝導
体を用いる場合には既に述べた理由によって結合体のサ
イズの制約はより厳しくなり、高臨界温度を有するとい
うせっかくの長所を生かせないという意味で重大な欠点
と言わざるを得ない。
また特開平1−207982に示されるような超伝導状態の
結合体を用いる3端子超伝導素子の従来例について言え
ば、良好なスイッチング特性を得ることが難しいという
問題があった。その理由は、結合体をチャネルとして用
いて、そこに明確なON/OFF状態を作り出すために充分な
厚さの空乏層を形成させることが難しいことにある。充
分な厚さの空乏層を得るためには、超伝導素子の動作電
圧としては非実用的な高い信号電圧を用いるか、あるい
は結合体の膜厚を超伝導特性が劣化するような厚さまで
薄くすることが必要であった。
さらにまた特開昭63−234572、特開昭63−234573、お
よび特開昭63−234574に示されるような3端子超伝導素
子の従来例について言えば、チャネルを抵抗性の超伝導
状態で用いているためにチャネルに0でない電圧を印加
することが必要であり、超伝導素子の利点である超伝導
電流を利用できないという欠点がある。さらに、Tcオン
セットとTc0の温度差が大きい超伝導材料は材料技術の
観点から見ると低品質であり、信頼性や安定性に乏しく
実用的ではない。
本発明はかかる問題を解決するものであって、薄膜の
膜厚およびパターンルールに関する制約が少なく、製造
が容易であって歩留まりと信頼性が高く、そしてまた結
合体を良質な超伝導材料で構成することが可能であって
0電圧で流れる超伝導電流が利用できる超伝導素子を提
供するものである。本発明は、特に3端子超伝導素子に
おいては以上に加えて良好なスイッチング特性を有する
超伝導素子を提供するものである。
発明の開示 本発明の超伝導素子は、基板と、前記基板上に、MBE
法により形成された結合体と、前記結合体上に、MBE法
により形成された第1及び第2超伝導電極と、を備え、
前記結合体はYBa2Cu4O8であり、前記第1及び第2超伝
導電極はYBa2Cu3O7-yであって、該yは、0≦y<0.2で
あることを特徴とする。または、前記超伝導素子は、前
記結合体上であって、前記第1及び第2超伝導電極の間
に形成された誘電体と、前記誘電体上に形成された制御
電極と、を備えたことを特徴とする。
図面の簡単な説明 図1は、本発明の2端子超伝導素子の斜視断面図であ
る。
図2は、本発明に用いた超伝導体の比抵抗の温度特性
である。
図3は、2端子超伝導素子におけるI/V特性の一例を
示す図である。
図4は、第1超伝導電極と第2超伝導電極の間隔dと
臨界電流Icの関係を示す図である。
図5は、本発明の3端子超伝導素子の斜視断面図であ
る。
図6は、3端子超伝導素子におけるI/V特性の制御電
極電圧依存性の一例を示す図である。
図7は、動作温度Tと第1および第2超伝導電極の間
を流れる臨界電流Icの関係を示す図である。
図8は、動作温度Tとスイッチング比の関係を示す図
である。
図9は、キャリヤ密度に差をつける方法による3端子
超伝導素子の斜視断面図である。
発明を実施するための最良の形態 図1は、2端子超伝導素子の斜視断面図である。超伝
導素子は基板1上に形成され、結合体2、第1超伝導電
極3、第2超伝導電極4から構成される。図1中の記号
dは第1超伝導電極と第2超伝導電極の間隔を示してい
る。材料に関して言えば、基板1はSrTiO3単結晶、結合
体2はYBa2Cu3O7-x(0.2≦x≦0.5)、そして第1超伝
導電極3と第2超伝導電極4はYBa2Cu3O7-y(0≦y<
0.2)である。
本超伝導素子の製造方法を述べると、次のとおりであ
る。基板1上にMolecular Beam Epitaxy(MBE)を用
いて結合体2となるYBa2Cu3O7-x(0.2≦x≦0.5)を約1
00nmの膜厚で形成し、さらに連続して第1超伝導電極3
および第2超伝導電極4となるYBa2Cu3O7-y(0≦y<
0.2)を約100nmの膜厚で形成する。薄膜の酸化はMBE中
にElectron Cyclotron Resonance(ECR)プラズマ発
生装置を用いて活性化した酸素を導入することによって
膜形成と同時に行う。その後パターニングを行って図1
の構造を有する2端子超伝導素子を得る。
以上述べた製造方法において、指標xとyによって示
される酸化度の制御は酸素のガス圧と流量およびECRプ
ラズマ発生装置による活性化酸素量の調整あるいは蒸着
レートの調整によって行うことができる。0.2≦x≦0.5
および0≦y<0.2となるようにすると、YBa2Cu3O7-x
70K級の超伝導体になり、またYBa2Cu3O7-yは90K級の超
伝導体になる。このように酸化度の制御によって臨界温
度が制御できる理由は、酸化物超伝導体の物性が酸素ド
ープ量に本質的に関係していることにある。酸化度の指
標xあるいはyを0.2の近傍にとる場合には臨界温度は7
0K〜90Kの中間の温度になり、またxを0.5の近傍にとる
場合には臨界温度は70Kより小さくなる。さらに酸化度
の指標を0.5より小さくしていくと、臨界温度は減少し
て行き、最後には超伝導を示さなくなる。それゆえ、結
合体の臨界温度を70Kに、また第1および第2超伝導電
極の臨界温度を90Kにするためには、指標xとyをそれ
ぞれ0.25≦x≦0.4および0≦y≦0.15にすることがよ
り望ましい。本実施例では結合体と第1および第2超伝
導電極に同じYBCO系物質を用いている。それゆえ連続形
成が可能であり、このことは薄膜形成技術の見地からみ
て好都合である。また、YBa2Cu3O7-x(0.2≦x≦0.5)
とYBa2Cu3O7-y(0≦y<0.2)の格子定数はほぼ同じで
あり、これは薄膜エピタキシャル成長技術の見地からみ
て好都合である。
図2は、本発明に用いた超伝導体の比抵抗の温度特性
である。図2中のaで示される特性は結合体の比抵抗の
温度特性であり、bで示される特性は第1および第2超
伝導電極の比抵抗の温度特性である。図2に示されるよ
うに、結合体と第1および第2超伝導電極ともにTcオン
セットとTc0の温度差は数K以下である。この温度差は
酸化物超伝導体としては小さい値であり、両者とも良質
な超伝導薄膜であることを示している。
実験として第1超伝導電極と第2超伝導電極の間隔d
を表1に示す値に設定した試料を作製した。
各試料について動作温度が50、60および77Kにおける
第1超伝導電極と第2超伝導電極間のI/V特性を測定し
た。図3は、2端子超伝導素子におけるI/V特性の一例
を示す図である。図3中の記号Icは臨界電流を示してお
り、−Icから+Icの電流領域ではゼロ電圧の超伝導電流
が流れ、それ以外の電流領域では電圧が発生している。
すなわち図3に示されるI/V特性はResistively shunte
d Junction(RSJ)的な特性を示している。図4は、第
1超伝導電極と第2超伝導電極の間隔dと臨界電流Icの
関係を示す図である。図4に示されるように、動作温度
が結合体の臨界温度70Kより低い場合にはすべての試料
についてゼロ電圧の超伝導電流を有する特性が得られ、
また動作温度が結合体の臨界温度70Kより高い温度であ
る77Kの場合でもdが3000nmより小さい試料については
ゼロ電圧で超伝導電流を有する特性が得られる。仮に超
伝導素子を実際に動作させる場合には0.1mA以上の臨界
電流が必要であるとすると、dの最小値は、たとえば50
K動作では約3000nmであり、また77K動作では約1000nmで
ある。これらのdの値は現有のフォトリソグラフィーで
容易に、あるいは技術的困難を伴うことなくパターニン
グ可能なサイズである。
ここで、結合体の臨界温度より低い動作温度において
はすべての試料についてRSJ特性が得られたこと、また
結合体の臨界温度より高い動作温度においてもフォトリ
ソグラフィーでパターニング可能な比較的大きなdの値
を有する試料についてRSJ特性が得られたことの理由を
述べると、それは次のとおりである。
最初に、結合体の臨界温度より低い動作温度の場合の
理由を述べる。YBa2Cu3O7-x(0.2<x≦0.5)からなる
超伝導体はこの動作温度では超伝導状態になっている。
ただし、その臨界電流密度はYBa2Cu3O7-y(0≦y<0.
2)からなる第1および第2超伝導電極の臨界電流密度
より小さい。このことに起因して本実施例の構造からな
る超伝導素子に電流を流すと以下に述べる現象が生じ
る。まず、電流の大きさが結合体の臨界電流以下の場合
には超伝導電流が流れる。この間隔dに無関係であり、
原理的にはdをどんなに長く選んでも流れるものであ
る。次に、電流の大きさが結合体の臨界電流を超えた場
合を考える。この場合は電流の大きさによってさらに次
に述べる2つの場合に分けられる。第1の場合は結合体
の臨界電流よりやや大きい電流を流した場合であり、ま
た第2の場合は第1の場合より大きな電流を流した場合
である。第1の場合では、結合体単体では本来超伝導状
態が破られるはずであるにもかかわらず、第1および第
2の超伝導電極が隣接していることによる近接効果のお
かげで結合体の超伝導状態が維持されている。したがっ
て、この場合には結合体の臨界電流以下の大きさの電流
を流した場合と同様に超伝導電流が流れる。ただし、本
実施例の実験水準ではdは近接効果が有効に作用する長
さより充分長いため第1の場合に対応する超伝導電流の
領域は狭い範囲に限られている。つづいて第2の場合で
は、結合体の超伝導状態は完全に破られていて、第1と
第2の超伝導電極の間に電圧が発生する。以上をまとめ
ると、臨界電流Icまでは超伝導電流が流れ、それ以上の
電流では電圧が発生することになり、RSJ特性が得られ
たことを説明できる。ただし以上の議論から明らかなよ
うに、Icは厳密に言えば結合体単体の臨界電流より大き
な値である。
次に、結合体の臨界温度より高い動作温度の場合の理
由を述べる。YBa2Cu3O7-x(0.2<x≦0.5)からなる結
合体は単体ではこの動作温度では超伝導状態にならな
い。しかし、結合体は第1および第2超伝導電極と接し
ているので、近接効果によって結合体の中にも超伝導状
態がしみ込んでくる。したがって、結合体において近接
効果が及んでいる領域は、その臨界温度より高い動作温
度でも超伝導体化していることになる。ただし、そのし
み込みは結合体の中では第1および第2超伝導電極との
接触面から離れるに従って減衰する。ギンツブルグ・ラ
ンダウ理論によれば、この減衰の様子は温度に依存す
る。すなわち、臨界温度に近いほど減衰の仕方は小さく
なってしみ込み距離は長くなり、そして臨界温度ではそ
の距離は無限大になる。したがって、臨界温度より高く
てもそれに近い温度であれば近接効果は充分長い距離ま
で有効である。以上が間隔dが比較的大きくても充分な
近接効果が得られる理由である。この理由によれば、超
伝導素子の動作温度が結合体の臨界温度より高く且つそ
れに近ければ近いほど、言い換えると、動作温度と結合
体の臨界温度の比が1より大きく且つ1に近いほど間隔
dを大きくとることが許されるので、設計上有利にな
る。
以上に述べた2端子超伝導素子の構造を作製後にさら
に誘電体と制御電極を形成・パターニングして3端子超
伝導素子を作製した。図5は、本発明の3端子超伝導素
子の斜視断面図である。この超伝導素子は、基板1、結
合体2、第1超伝導電極3、第2超伝導電極4、誘電体
5、および制御電極6から構成されている。間隔dの水
準は表1に示す水準とまったく同様である。
本超伝導素子では、第1および第2超伝導電極の間を
流れる電流のI/V特性を制御電極に印加した電圧によっ
て制御して電流の変調を行う。各試料について動作温度
が50、60および77Kにおける変調特性の測定を行った。
図6は、3端子超伝導素子におけるI/V特性の制御電極
電圧依存性の一例を示す図である。図中の記号VGは制御
電極電圧を示している。図6に示されるように、I/V特
性は制御電極に印加される電圧によって制御できる。臨
界電流は、制御電極電圧が正の場合にはその値が大きく
なるに従って減少し、また負の場合にはその絶対値が大
きくなるに従って増加する。この変調特性は、結合体の
臨界温度70Kより低い動作温度においてはすべての試料
について、また結合体の臨界温度70Kより高い動作温度
である77Kにおいてもdが3000nmより小さい試料につい
て得られた。また、それら以外の超伝導電流が流れない
試料についても電圧発生領域においてI/V特性が制御電
極に印加される電圧によって制御できるという結果を得
た。このような制御が可能である理由は、印加電圧によ
って誘電体5が分極し、その結果として結合体2のキャ
リヤ密度が変調されることにある。すなわち、結合体は
3端子超伝導素子ではチャネルとして機能する。
なお、以上では臨界温度が70K級の結合体を用いた
が、結合体の臨界温度は酸素量xを調整することによっ
て制御することができる。そこで、60K〜70Kの数種類の
臨界温度をもつ結合体を用いた試料を作製してI/V特性
の制御電極電圧依存性を評価したところ、すべての試料
についてI/V特性が制御電極に印加される電圧によって
制御できた。
本発明をこのような3端子超伝導素子に応用すれば、
制御電極を取り付ける領域を広くとれるから製造が容易
になるという長所がある。
つづいて、本発明における超伝導素子の動作温度を最
適化する実験を行った。実験に用いた試料の基本構造、
材料および製造方法は図5に示した3端子超伝導素子と
同様である。ただし、より顕著な変調特性を得るために
結合体の膜厚を第1および第2超伝導電極の膜厚より薄
くし、結合体の膜厚を50〜150nm、また第1および第2
超伝導電極の膜厚を5〜100nmとした。結合体の臨界温
度は70Kである。間隔dについては、500nm、1000nm、15
00nm、2000nm、2500nm、および3000nmの6種類の試料を
作製した。以上に述べた試料を用いて、60K〜80Kの範囲
のより詳細な動作温度点について第1および第2超伝導
電極間を流れる電流のI/V特性の測定を行った。この測
定では制御電極は電圧を印加しない浮遊状態とした。図
7は、動作温度Tと第1および第2超伝導電極の間を流
れる臨界電流Icの関係を示す図である。図7に示される
ように、動作温度が約75K以下、すなわち結合体の臨界
温度70Kより約5K高い温度以下であれば、dが2000nmで
もIcは0.1mA以上である。d≧2000nmは現有のフォトリ
ソグラフィー技術でも容易にパターン形成可能な値であ
る。次に、d=2000nmの試料を用いて、60K〜80Kの範囲
のより詳細な動作温度点についてI/V特性を制御電極に
印加した電圧によって制御する実験を行った。図8は、
動作温度Tとスイッチング比の関係を示す図である。た
だし、スイッチング比は制御電極電圧によって制御でき
る最大臨界電流と最小臨界電流の比によって定義した。
図8に示されるように、この測定の範囲内ではスイッチ
ング比は動作温度が高いほど大きくなり、特に動作温度
が65K付近、すなわち結合体の臨界温度より約5K低い温
度以上では急激に大きくなる。特に、結合体の臨界温度
より2〜3K低い温度以上ではスイッチング比は20以上な
って充分実用的な値になる。なお、d=2000nm以外の試
料についても動作温度とスイッチング比の関係を評価し
てみたが、結果は図8とほぼ同様であった。
以上述べた実験をまとめると、動作温度を結合体の臨
界温度±5K、さらに好ましくは±3Kの範囲に設定すれ
ば、製造が容易であって電気的特性が良好な超伝導素子
が得られることになる。なお、動作温度が結合体の臨界
温度より低い場合は臨界電流が大きいので大電流を必要
とする分野に適しており、またその逆の場合は大きなス
イッチング比を必要とする分野に適している。
さらに、60K〜70Kの数種類の臨界温度をもつ結合体を
用いた試料についても、結合体の膜厚が50〜150nm、第
1および第2超伝導電極の膜厚が5〜100nmという条件
で作製して同様の動作温度最適化実験を行った。その結
果、やはり動作温度を結合体の臨界温度±5Kの範囲に設
定すれば良好な電気的特性が得られた。さらに、動作温
度を結合体の臨界温度±5Kの範囲に設定するという条件
の下では結合体の臨界温度が低いほどスイッチング比は
大きくなるという結果を得た。この結果は、言い換えれ
ば、スイッチング特性は第1および第2超伝導電極の臨
界温度と結合体の臨界温度の差が大きくなるほど向上す
るという結果になる。
ここで、結合体の臨界温度以下の温度領域において動
作温度が結合体の臨界温度に近いほど大きなスイッチン
グ比が得られた理由は次のとおりである。第1の理由は
温度が高くなるにしたがって結合体のキャリヤ密度が減
少することである。スイッチング制御は、印加電圧によ
って誘電体が分極し、その結果として結合体のキャリヤ
数が変調されることによる。したがって、同じ数のキャ
リヤを変調する場合でも全体のキャリヤ数が少ない方が
変調比、換言するとスイッチング比は大きくなる。な
お、このことから、酸化物超伝導体のキャリヤ濃度は金
属超伝導体のそれより小さいので、結合体としては酸化
物超伝導体を用いると大きな変調が可能になって都合が
よいことがわかる。第2の理由は、結合体の超伝導状態
はその両側の第1および第2超伝導電極からの超伝導状
態のしみ込みによって強化されるが、その強化の程度は
温度が低くなるにしたがって大きくなることである。結
合体の超伝導状態が強化されると変調を受けにくくな
り、その結果としてスイッチング比は低くなるのであ
る。なお、超伝導状態の強弱は超伝導キャリヤ密度の高
低と対応しているから、その意味では第1の理由と第2
の理由は互いに関係していることになる。
以上に述べてきた2端子および3端子超伝導素子では
第1および第2超伝導電極の臨界温度は結合体のそれよ
り高くなっている。これによって、結合体の臨界温度よ
り低い動作温度の場合には結合体は第1および第2超伝
導電極より弱い超伝導状態になり、またそれより高い動
作温度の場合には超伝導状態に近い常伝導状態になって
いる。ここで、もし仮に第1および第2超伝導電極の臨
界温度と結合体のそれが同じである場合にはどのような
不都合が生じるかについて述べておく。第1および第2
超伝導電極の臨界温度と結合体のそれが同じであると、
動作温度がその臨界温度以上である場合には第1および
第2超伝導電極が超伝導状態でなくなるから超伝導素子
としての意味を失う。一方、動作温度がその臨界温度以
下である場合には、動作温度と臨界温度の差が小さいた
めに結合体のみならず第1および第2超伝導電極の超伝
導状態も弱くなり、しかも周囲にその状態を支える強い
超伝導状態の部分がないので、外部からのわずかな攪乱
によってその超伝導状態は破壊されることになる。すな
わち誤動作の確率が大きく且つ信頼性の乏しい超伝導素
子になってしまう。以上述べたように、第1および第2
超伝導電極の臨界温度が結合体のそれより高いことは重
要な役割をもっている。
さて、結合体の臨界温度より低い動作温度の場合には
結合体を第1および第2超伝導電極より弱い超伝導状態
にし、またそれより高い動作温度の場合には超伝導状態
に近い常伝導状態にする手段としては、上述の方法の他
に第1および第2超伝導電極のペア・ポテンシャルと結
合体のペア・ポテンシャルに差をつける方法と第1およ
び第2超伝導電極のキャリヤ密度と結合体のキャリヤ密
度に差をつける方法がある。以下ではこれらの方法につ
いて説明する。
ペア・ポテンシャルに差をつける方法による2端子超
伝導素子の基本構造は図1に示した2端子超伝導素子の
構造と同様である。材料に関して言えば、基板はSrTiO3
単結晶、結合体はY0.87Pr0.13Ba2Cu3O7-xからなる低ポ
テンシャル超伝導体、そして第1および第2超伝導電極
はYBa2Cu3O7-yからなる高いポテンシャル超伝導体であ
る。本超伝導素子の構造では、結合体である低ポテンシ
ャル超伝導体の膜厚は5〜100nm、また第1および第2
超伝導電極である高いポテンシャル超伝導体の膜厚は50
〜150nmである。
本超伝導素子の製造方法は次のとおりである。基板1
上にMBEを用いて結合体2となる低ポテンシャル超伝導
体Y0.87Pr0.13Ba2Cu3O7-xおよび第1超伝導電極3およ
び第2超伝導電極4となる高ポテンシャル超伝導体YBa2
Cu3O7-yを連続薄膜形成する。蒸着物質には金属材料を
用い薄膜の酸化は成膜中にECRプラズマ発生装置を用い
活性酸素を導入して行う。この様にして得られた低ポテ
ンシャル超伝導体と高ポテンシャル超伝導体の臨界温度
はそれぞれ72Kと90Kであった。なお、低ポテンシャル超
伝導体の臨界温度はYサイトとPr置換量により調整がで
き、置換量を少なくすると臨界温度は高くなり置換量が
多くなると臨界温度は低下する。これら2種類の超伝導
体の格子定数はほぼ同じため薄膜エピタキシャル成長技
術の見地からみて好都合である。基板上に低ポテンシャ
ル超伝導体と高ポテンシャル超伝導体を連続薄膜形成し
た後、フォトリソグラフィーによってエッチングを行い
図1の構造の2端子超伝導素子を得る。なお、図示して
いないが劣化防止のため取り出し電極部を除いた表面部
には保護膜を形成する。
得られた超伝導素子のI/V特性を測定したところ図3
に示すRSJ特性が観測された。測定温度は70Kであり、冷
却はソルベイ冷凍機により行った。第1および第2超伝
導電極の間隔dを200nmから9000nmまで変化させI/V特性
を調べたが何れも明確なRSJ特性を示した。
ペア・ポテンシャルに差をつける方法による3端子超
伝導素子の構造は図5に示した3端子超伝導素子の構造
と同様である。基板、低ポテンシャル超伝導体、および
高ポテンシャル超伝導体の材料と製造方法は前述のペア
・ポテンシャルに差をつける方法による2端子超伝導素
子のそれらとまったく同じである。
本超伝導素子のI/V特性の制御電極電圧依存性は図6
に示す特性と同様になり、I/V特性が制御電極に印加さ
れる電圧によって制御できることが実際にわかる。この
ような制御ができる理由は、印加電圧によって誘電体4
が分極し、その結果として低ポテンシャル超伝導体2の
キャリヤが変調されることにある。低ポテンシャル超伝
導体として酸化物超伝導体を用いると、酸化物超伝導体
のキャリヤは金属超伝導体のそれより少ないので、大き
な変調が可能になるから都合がよい。
本超伝導素子では第1および第2超伝導電極側のペア
・ポテンシャルが結合体のそれより高いため結合体の超
伝導状態は安定となるから、熱ノイズ等の外乱に対して
強い超伝導素子が得られる。さらに、スイッチング時間
はCR時定数を押さえることが可能であるため高速とな
る。
表2に本超伝導素子と第1および第2超伝導電極と結
合体を同一の超伝導材料で形成した超伝導素子(比較
例)のスイッチング比を示す。比較例における超伝導体
の臨界温度は90Kである。表2より明らかなように、第
1および第2超伝導電極と結合体を構成する超伝導体を
ペア・ポテンシャルの異なる超伝導体で組み合わせ且つ
結合体のペア・ポテンシャルを低くすることによりスイ
ッチング比は大きくなる。すなわち、制御性の高い安定
した超伝導素子となる。
本発明をこのような3端子素子に応用し、さらに制御
電極を複数形成すれば、デュアル型トランジスタのよう
に多目的の応用も可能となる。
図9は、キャリヤ密度に差をつける方法による3端子
超伝導素子の斜視断面図である。超伝導素子は、基板
1、結合体2、第1超伝導電極3、第2の超伝導電極
4、誘電体5および制御電極6から構成される。
本超伝導素子を作製するプロセスと材料のポイントは
次のとおりである。まず、SrTiO3単結晶よりなる基板1
上に膜厚が50nm〜100nmのYBa2Cu3O7-X系酸化物超伝導薄
膜を形成する。このYBa2Cu3O7-X膜の臨界温度は90Kであ
る。なお、基板は超伝導薄膜との反応が少なく格子定数
整合性が良い材料でさえあればSrTiO3に限られるもので
はない。次に超伝導薄膜形成後にフォトリソグラフィー
を用いてパターニングを行い第1超伝導電極3および第
2超伝導電極4を同時に得る。次に、膜厚が5〜10nmの
La2-XSrxCuO4系超伝導体を形成・パターニングして結合
体2を得る。結合体2は3価であるLaの一部を2価であ
るSrで置換して正孔を導入している。故にxの値を調整
することによりキャリヤ密度の調整が図れる。表3にx
を調整した試料のキャリヤ密度を示す。なお、キャリヤ
密度は得られた膜のホール効果の測定結果から算出し
た。その値はSrの置換量から見積られる値と半定量的に
は一致したものの、定量的一致には至らなかった。その
理由はSrの置換量に応じて酸素量も化学量論組成から外
れることにあると考えられる。次に誘電体5と制御電極
6を形成・パターニングする。
以上のプロセスにより超伝導素子を作製して、その超
伝導素子のスイッチング比を調べた。表4にその結果を
キャリヤ密度が適性値でない比較例とともに示した。測
定温度はチャネル超伝導体の臨界温度より3K低い温度で
ある。なお、比較例5は臨界温度が一番高い試料であ
る。表4に併記されている評価は次の基準に従った。実
用に応用可能なスイッチング比の値を20以上とみなし、
その値を目標値とした。スイッチング比が目標値以上の
場合には「良」とし、特に30以上の場合にはスイッチン
グ比が非常に良好であると判断して「優」とした。ま
た、スイッチング比が20以下の場合には基本的には「不
可」としたが、20に近い場合には「可」とした。
表3と表4から、良好なスイッチング特性を得るには
結合体2のキャリヤ密度を特定の範囲内に抑える必要が
あり、そのキャリヤ密度の範囲は1019〜1020/cm3台であ
ること、より好ましくは、1×1020〜9×1020/cm3であ
ることがわかる。キャリヤ密度とスイッチング比の関係
は当初キャリヤ密度の減少とともにスイッチング比は向
上するが1019/cm3台に入ると今度は逆にスイッチング比
は低下する傾向にある。これはキャリヤ密度を抑えるこ
とにより超伝導キャリヤの変調を容易にする反面キャリ
ヤ密度を少なくし過ぎると結合体2の超伝導状態を不安
定にするためと考えられる。なお、、スイッチング比の
評価が「不可」となるのは、キャリヤ密度が2×1019/c
m3程度より小さくなる場合である。すなわち、1019/cm3
台において2×1019/cm3程度以上であれば、スイッチン
グ特性は確保できる。スイッチング比の低下は超伝導キ
ャリヤ変調が支配的であったスイッチング特性が近接効
果が支配的になりサイズの自由度(第1超伝導電極3と
第2超伝導電極4の間の距離)が失われつつあるためと
も言える。
また、本超伝導素子のキャリヤ密度の調整は結合体2
の組成比を変えて行うため新たな工程を加えるのではな
く極めて容易に行うことができる。
つづいて、キャリヤ密度に差をつける方法による3端
子超伝導素子の別の例を述べる。本超伝導素子が先の例
と異なる点は、第1および第2超伝導電極にNdBa2Cu3O
7-y系超伝導体を用い、そして結合体のキャリヤ密度の
調整には3価元素であるNdを4価をとるPrで置換してNd
1-xPrxBa2Cu3O7-y系超伝導体を用いたことにある。表5
に作製した試料のキャリヤ密度を示す。
Prを選択した理由はNdと同じ希土類元素であり特性が
類似しているためとイオン半径が近いため格子定数の変
化を極力押えキャリヤ密度の調整ができるためである。
超伝導構成元素の組合せ種類により置換元素はいくつか
選択できるが超伝導体の臨界温度は周知のごとく格子定
数により大きく左右される点を考慮する必要がある。Nd
Ba2Cu3O7-y系超伝導体のキャリヤ密度の調整はこの他に
酸素の量を制御する方法も可能であるがキャリヤ密度を
精密に制御する場合には適さない。
得られた超伝導素子のスイッチング比を調べた。結果
をキャリヤ密度の適正値でない比較例とともに表6に示
した。なお、比較例5は結合体の臨界温度が一番高い試
料であり第1および第2超伝導電極と結合体は同一組成
となっている。表6に併記されている評価の基準は表4
のそれと同じである。表6に示されるように本超伝導素
子は比較例と比べて顕著にスイッチング比が向上してい
る。この結果から言えば、良好なスイッチング特性が得
られるキャリヤ密度の範囲は1019〜1020/cm3台であり、
好ましくは、3×1020〜6×1020/cm3である。
本超伝導素子のように結合体の両端にそれよりキャリ
ヤ密度が高くペア・ポテンシャルの高い超伝導体(ここ
では第1および第2超伝導電極)を形成すると、結合体
の臨界温度は結合体単体で臨界温度を測定したときより
顕著に高くなる傾向を示す。これは結合体のペアポテン
シャルが周囲の超伝導体により引き上げられるためと考
えられる。このような特徴を利用すると結合体を単体で
超伝導素子に用いるタイプに比べより高い温度で使用す
ることが可能となる。場合によっては結合体単体におけ
る臨界温度より高い温度で使用しても結合体を超伝導状
態に維持することもできる。また結合体を単体で用いる
ときよりも特性の安定性、再現性が高いことも特徴であ
る。
以上の説明ではキャリヤ密度の制御を組成比と価数の
異なる元素置換する方法を2つの例によって説明した
が、置換元素としてはこれらの他にCe、Tb、Bi、Sb、P
b、Tl、Ag、K、Rb、あるいはCsを用いてもよい。また
この方法の他に、正孔または電子が導入されるCu−O結
合のCuのサイトを直接別元素で置換する方法を用いるこ
ともでき、導電層のCuサイトの置換元素としては酸素2p
軌道との結合エネルギーに差があるTi、Zr、Hf、V、N
b、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、あるいはZnを用
いることができる。さらに、これらの方法を複合して用
いても良い。
以上述べてきたキャリヤ密度に差をつける方法による
超伝導素子の説明では3端子超伝導素子についてのみ取
り上げたが、キャリヤ密度に差をつける方法自身は2端
子超伝導素子にもそのまま応用できることは言うまでも
ない。
次に、第1および第2超伝導電極と結合体に結晶学的
に異なる超伝導体を用いた超伝導素子について説明す
る。その基本構造は図5に示される3端子超伝導素子の
構造と同様である。結晶学的に異なる超伝導体の組合せ
として以下で述べる3種類を選択して、それぞれ試料を
作製した。
第1の組合せによる超伝導素子は、SrTiO3単結晶から
なる基板上に形成された超伝導体YBa2Cu4O8からなる結
合体、該結合体と結晶学的に異なる超伝導体YBa2Cu3O
7-y(0≦y<0.2)からなる第1および第2超伝導電
極、結合体上に形成された誘電体、そして制御電極5か
ら構成される。この超伝導素子のスイッチングや増幅は
誘電体と制御電極により結合体内のキャリヤ密度を変え
臨界電流値を制御して行うものである。
作製は基板上にMBEを用いて結合体となるYBa2Cu4O8
よび第1および第2超伝導電極となるYBa2Cu3O7-y(0
≦y<0.2)を同一チャンバー内で連続形成する。蒸着
物質には金属材料を用い、薄膜の酸化は成膜中にECRプ
ラズマ発生装置から活性化した酸素を導入することによ
って行う。次にフォトリソグラフィーによりYBa2Cu3O
7-y(0≦y<0.2)薄膜をエッチングすることによりパ
ターニングして第1および第2超伝導電極を形成する。
さらに第1超伝導電極と第2超伝導電極の間に誘電体と
制御電極を形成し超伝導素子を得る。
ここで用いた第1および第2超伝導電極と結合体の臨
界温度はそれぞれ90Kと78Kであった。
第2の組合せによる超伝導素子は、第1の組合せによ
る超伝導素子と同様な構造において、第1および第2超
伝導電極にはBi2Sr2Ca2Cu3Oy系超伝導体を、また結合体
には第1および第2超伝導電極と結晶学的に異なるBi2S
r2CaCu2Oy(Biの一部をPbで置換する場合もある)を用
いて作製した。
第3の組合せによる超伝導素子は、第1の組合せによ
る超伝導素子と同様な構造において、第1および第2超
伝導電極にYBa2Cu3O7-y(0≦y<0.2)超伝導体を、ま
た結合体にBi2Sr2Ca2Cu3Oy(Biの一部をPbで置換する場
合もある)を用いて作製した。なお、第1の組合せと第
2の組合せ超伝導素子では同一のチャンバー内で第1お
よび第2超伝導電極となる超伝導薄膜と結合体となる超
伝導薄膜を形成しているが、第3の組合せによる超伝導
素子では2台のMBEで別々に形成している。ただし、2
台のMBE装置は接続され大気に晒すことなく連続に成膜
できるように構成されている。
以上の第1から第3の組合せによる超伝導素子を各々
10サンプル作製し、所定の制御電圧におけるI/V特性を
測定した。測定は結合体の臨界温度−2Kの温度でHeガス
雰囲気中で行った。各々10サンプルの臨界電流値の初回
のバラツキ、および繰り返し測定を5回行い再現性(変
動)を調べた。そのうち変動量が最も大きい測定時の変
動量の平均値を臨界電流の平均値で割った値を変動率と
し、初回バラツキ、変動率、およびY系の酸素量を変え
臨界温度を調整した比較試料による従来例を表7に示
す。
表7からわかるように第1から第3の組合せによる超
伝導素子では結晶構造が異なり超伝導状態の安定した超
伝導体を組み合わせることにより顕著に安定性と信頼性
が向上している。これは揺らぐ因子が少なくなったため
とエレクトロマイグレーションの抑制によるものであ
る。これらの値はまだ改良を加え小さくする必要がある
値であり、またさらに小さくすることも可能であるが今
後技術が進歩しても前に述べたように不安定さの因子数
が第1から第3の組合せによる超伝導素子より従来例の
方が多いため両者の値が逆転することは考えられない。
以上述べてきた第1および第2超伝導電極と結合体に
結晶学的に異なる超伝導体を用いた超伝導素子について
の説明では3端子超伝導素子についてのみ取り上げた
が、この方法自身は2端子超伝導素子にもそのまま応用
できることは言うまでもない。
産業上の利用可能性 以上のように、本発明にかかる超伝導素子は、製造が容
易であるため、高い歩留り、高い信頼性を有する超伝導
素子として有用であり、特に3端子超伝導素子として用
いる場合にはスイッチング特性が優れているため、高速
低消費電力が要求される論理回路用のスイッチング素子
に適している。
フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平4−51596 (32)優先日 平成4年3月10日(1992.3.10) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平4−96598 (32)優先日 平成4年4月16日(1992.4.16) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 下田 達也 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイ コーエプソン株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−261765(JP,A) 特開 平2−194667(JP,A) 特開 昭63−269585(JP,A) 特開 平3−68180(JP,A) 特開 昭64−51680(JP,A) 特開 平5−160451(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 39/22 ZAA

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板と、 前記基板上に、MBE法により形成された結合体と、 前記結合体上に、MBE法により形成された第1及び第2
    超伝導電極と、を備え、 前記結合体はYBa2Cu4O8であり、前記第1及び第2超伝
    導電極はYBa2Cu3O7-yであって、該yは、0≦y<0.2で
    あることを特徴とする超伝導素子。
  2. 【請求項2】前記結合体上であって、前記第1及び第2
    超伝導電極の間に形成された誘電体と、 前記誘電体上に形成された制御電極と、を備えたことを
    特徴とする請求項1記載の超伝導素子。
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