JP2786827B2 - 超電導素子 - Google Patents

超電導素子

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JP2786827B2
JP2786827B2 JP7024846A JP2484695A JP2786827B2 JP 2786827 B2 JP2786827 B2 JP 2786827B2 JP 7024846 A JP7024846 A JP 7024846A JP 2484695 A JP2484695 A JP 2484695A JP 2786827 B2 JP2786827 B2 JP 2786827B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸化物超電導体を利用
した超電導素子に係り、特に超電導電極間を高抵抗の常
伝導バリア層で接続した構成を有するジョセフソン素子
のような超電導素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、超電導素子として、Pbあるい
はNb等の金属超電導体を用いて、超電導電子対(クーパ
ー対)がトンネルできる程度の薄い絶縁層を挟み込んだ
構成のトンネル型ジョセフソン接合が知られている。こ
のような従来のトンネル型ジョセフソン素子は、液体ヘ
リウム温度に近い極低温動作が必要とされている。ま
た、トンネル型ジョセフソン接合に特有の強いヒステリ
シスを持つ電流−電圧特性を示すため、回路構成が複雑
になる等の問題を有し、広く実用に供されるまでには至
っていない。
【0003】一方、金属超電導体を用いた、ヒステリシ
ス特性を持たないジョセフソン接合素子として、金属超
電導体からなる主電極間を細くかつ薄い金属で接続し
た、いわゆるブリッジ型接合の開発も進められている。
しかし、このようなブリッジ型接合は、上述したトンネ
ル型接合の場合と同様に、液体ヘリウム温度に近い極低
温動作が必要であると共に、ブリッジ部の抵抗が小さ
く、かつ金属超電導体の超電導ギャップ自体も小さいた
めに、大きい出力電圧を得ることが困難であり、十分に
産業上寄与するには至っていない。
【0004】このような状況の下で、近年、液体窒素温
度以上の高温で超電導特性を示す酸化物超電導材料が発
見され、このような酸化物超電導体を用いた超電導素子
の研究が活発に進められている。酸化物超電導体を用い
てジョセフソン接合を作製し得れば、従来の金属超電導
体を用いて構成したジョセフソン接合に比べて、少なく
とも極低温動作の必要がないことから、広範囲な応用が
期待される。
【0005】さらに、酸化物超電導体は超電導ギャップ
エネルギーが従来の金属超電導体に比べて 1桁程度大き
いため、電流−電圧特性にヒステリシスを生じない程度
の比較的大きい接合コンダクタンスを有する弱結合型の
ジョセフソン接合を構成した場合でも、大きい出力電圧
が得られることが期待される。このような弱結合型の接
合は、SQUID磁束計や磁束量子転送型論理回路等の
性能を、金属超電導体を用いた場合に比べて大幅に改善
するものと期待される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一般に
酸化物高温超電導体は複雑な結晶構造を持ち、これに起
因して結晶構造が異なる材料、例えば他のペロブスカイ
ト構造を有する酸化物等と積層して接合を形成した場合
には、その界面に多量の局在準位が発生したり、また格
子定数の相違から完全なヘテロエピタキシャル成長が生
ぜず、ピンホールが発生する等の本質的問題を有してい
る。特に、界面に多量に発生する局在準位は、接合の電
気特性に大きな影響を及ぼす。この影響はジョセフソン
接合を実現しようとする場合には致命的であり、接合を
流れる超電導電流の値が著しく減少してしまうことにな
る。
【0007】上述したような問題を回避するためには、
酸化物超電導体からなる超電導電極と同一の結晶構造を
持つ材料でバリア層を形成する必要があり、例えばPrBa
2 Cu3 O 7-y (0< y<1)がバリア層形成材料として注目
されている。しかし、PrBa2Cu3 O 7-y 酸化物は、超電
導特性は示さないものの、Cu-O1次元鎖には伝導電子が
介在し、またPr原子間の電子のホッピングやCu-O2次元
面の局在準位を介した伝導機構等のために、接合のバリ
ア層として使用すると、クーパー対ではない準粒子の伝
導が過剰となり、ジョセフソン接合の特性の指標である
c n 積(接合を流れる超電導電流Ic と、Ic 以上
の電流を流した場合に発生する抵抗Rnとの積)が小さ
くならざるを得ないという問題を招いていた。
【0008】このようなことから、酸化物超電導体から
なる超電導電極とバリア層との界面の整合性を高め、界
面における局在準位の発生やピンホールの発生等を防止
した上で、ジョセフソン接合の特性の指標であるIc
n 積の増大を図ることを可能にしたジョセフソン接合素
子の出現が強く望まれている。
【0009】本発明は、このような課題に対処してなさ
れたもので、良好なジョセフソン特性を示すと共に、制
御性に優れ、かつ大きい出力電圧を有する超電導素子を
提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段と作用】本発明の超電導素
子は、 一般式:REBa2 Cu3 O 7-y …(1) (式中、REはPrを除く希土類元素(Yを含む)を示し、 y
は 0< y< 1を満足する数である)で実質的に組成が表
される酸化物超電導体からなる 2つの超電導電極と、前
記超電導電極間に介在され、Pr1-z REz Ba2 Cu3 O 7-y
(ただし、 0< y< 1、 0< z≦0.5)で表される酸化物
中のCuの一部を、当該酸化物の結晶構造中に含まれるCu
-O1次元鎖構造中に選択的に入る他の金属原子で置換し
た、 一般式:Pr1-z REz Ba2 Cu3-x Mx O 7-y …(2) (式中、REはPrを除く希土類元素(Yを含む)を、 MはPr
1-z REz Ba2 Cu3 O 7-y酸化物の結晶構造中に含まれるC
u-O1次元鎖構造中に選択的に入るCuを除く金属元素を
示し、 xは0.05≦ x≦0.25を満足する数、 zは 0< z≦
0.5を満足する数、 yは 0< y< 1を満足する数であ
る)で実質的に組成が表される酸化物からなるバリア層
とを具備し、前記バリア層が介在された前記 2つの超電
導電極間に接合が構成されていることを特徴としてい
る。
【0011】また、上記超電導素子において、前記バリ
ア層はその厚さが10nm以下であること、さらには前記超
電導電極とバリア層とで形成する接合面は、前記超電導
電極を構成する酸化物超電導体の結晶構造の c軸方向と
直交しないように形成されていることを特徴としてい
る。
【0012】本発明の超電導素子においては、超電導電
極として上記 (1)式で実質的に組成が表される酸化物超
電導体を用いると共に、バリア層として上記 (2)式で実
質的に組成が表される酸化物を用いている。
【0013】ここで、従来からバリア層として用いられ
てきたPrBa2 Cu3 O 7-y 酸化物は、前述したように、超
電導特性は示さないものの、Cu-O1次元鎖には伝導電子
が介在し、またPr原子間の電子のホッピングやCu-O2次
元面の局在準位を介した伝導機構等のために、接合のバ
リア層として使用すると、クーパー対ではない準粒子の
伝導が過剰となって、Ic n 積が小さくならざるを得
ない。
【0014】本発明者は、バリア層としてPrBa2 Cu3 O
7-y を用いたジョセフソン接合について検討を重ねた結
果、上述したような問題を解決し、Ic n 積が大きい
良好な特性を有する弱結合型(電流−電圧特性にヒステ
リシスを生じないか、ヒステリシスが小さい)ジョセフ
ソン接合を作製するためには、バリア層を構成する材料
の出発物質としてPrBa2 Cu3 O 7-y を採用した上で、以
下に示す (1)および(2)を実現する必要があること、さ
らには以下の (3)を実現することが好ましいことを見出
した。
【0015】(1) バリア層において、クーパー対を有
効には輸送できないCu-O1次元鎖構造部の伝導を制御す
る(酸化物超電導体におけるクーパ一対はCu-O2次元面
に介在するため、1次元鎖部には有効に転送されな
い)。
【0016】(2) クーパー対を輸送できるCu-O2次元
面の伝導電子を適当な値に制御し、クーパー対の拡散
(近接効果と呼ばれる)により流れる超電導電流を一部
利用する。
【0017】(3) バリア層を直接トンネルできるクー
パー対の確率を増加させ、トータルの超電導電流値を増
加させる。
【0018】本発明においては、上記 (1)のCu-O1次元
鎖構造部の伝導を制御するために、バリア層材料である
PrBa2 Cu3 O 7-y 酸化物中のCu-O1次元鎖構造部のCu原
子の一部、具体的には 5〜25原子% を他の金属原子で置
換している。Cu-O1次元鎖構造部中のCu原子の置換率を
5〜25原子% の範囲と定めた理由は後述する。この置換
金属原子としては、Cu-O1次元鎖構造分に選択的に入る
Cu以外の金属原子が用いられ、具体的にはCo、Nb、Ta等
を用いることができる。これらの金属原子は、Cu-O2次
元面を構成するCu原子とは置換しないため、クーパー対
が輸送されるCu-O2次元面に局在準位を形成しない。こ
のことは、バリア層を通過するクーパー対を破壊しない
と共に、ホッピングによって流れる常伝導電流値を増加
させないために重要である。
【0019】また、上記 (2)のCu-O2次元面の伝導電子
を適当な値に制御するために、バリア層のPr原子の一
部、具体的には50原子% 以下を Yを含む他の希土類原子
で置換している。このPr原子の一部置換により、バリア
層のCu-O2次元面には伝導電子(正確には正孔)が供給
される。ただし、Pr原子の置換率を50原子% を超える値
とすると、バリア層自体が超電導特性を示すようにな
り、ジョセフソン接合特性を得ることができなくなる。
Pr原子の置換率は、バリア層を直接トンネルするクーパ
ー対と拡散で輸送されるクーパー対との割合をどのよう
に設定するかで、適宜選択すればよい。
【0020】本発明の超電導素子においては、上記 (3)
のバリア層を直接トンネルできるクーパー対の確率を増
加させるためには、バリア層の厚さを 5nm以下程度と薄
くすることが好ましい。このような厚さのバリア層に
は、厚さ方向にたかだか10程度のユニットセルしか存在
しない。
【0021】ここで、上記したような厚さのバリア層中
のCu-O1次元鎖構造部中のCu原子の5原子% を無作為に
他の金属原子で置換する場合を考えると、超電導電流が
流れる方向に対して、バリア層に存在するCu-O1次元鎖
構造部の 50%程度には他の金属原子が存在することとな
る。1次元伝導ではわずかな不純物の存在で電子が局在
し、絶縁体に転移することが知られている。従って、Cu
原子の 5原子% の置換は、バリア層中の1次元伝導パス
の 50%を破壊することとなる。この原理によれば、10原
子% の置換で全ての1次元伝導パスを絶縁化できること
になるが、実際には異種金属原子のクラスタリング等に
よって、10原子% では完全な絶縁化は達成されず、実験
的には25原子% 程度の置換が完全な絶縁化のために必要
であった。ただし、Cu-O1次元鎖構造部中のCu原子を25
原子% を超えて他の金属原子で置換すると、MO酸化物と
して析出するおそれ等が生じるため、Cu原子の置換率は
25原子% までとする。前述したCu-O1次元鎖構造部中の
Cuの置換率は、この結果に基いて決められたものであ
る。
【0022】本発明の超電導素子におけるバリア層は、
上述した (1)および (2)を実現するために、上記 (2)式
で実質的に組成が表される酸化物を用いているものであ
る。上述したように、バリア層のCu-O1次元鎖構造部中
のCu原子を 5〜25原子% の範囲で他の金属原子で置換
し、バリア層の通常電子による伝導を制御することによ
りRn の増大を図ることができ、またバリア層のPr原子
の50原子% 以下を Yを含む他の希土類原子で置換し、Cu
-O2次元面によるクーパー対の伝導を増加させることに
よりIc の増大を図ることができる。さらには、バリア
層の厚さを 5nm以下とし、バリア層を直接トンネルでき
るクーパー対の確率を増加させることによって、さらに
c の増大を図ることができる。これらにより、高いI
c n 積を有する弱結合型のジョセフソン接合を得るこ
とができ、液体窒素温度以下の広範囲な温度領域で動作
させることが可能な高出力の超電導素子が実現できる。
このようなジョセフソン接合素子は、極めて微弱な磁界
を検出するSQUID磁束計や、単一磁束量子を情報媒
体とした新しい超高速論理回路の基本的構成要素等とし
て有効に利用できる。
【0023】ところで、酸化物超電導体は、一般に結晶
方位に対する電気特性の異方性が強い。本発明が対象と
する、液体窒素温度以上の超電導転移温度を持ち、最も
応用展開が期待されているREBa2 Cu3 O 7-y 系の材料で
は、超電導状態は結晶構造中のCu-O2次元面によって担
われている。従って、この材料を用いてジョセフソン接
合を作製する場合には、超電導電極とバリア層とで形成
する接合面がCu-O2次元面と垂直、もしくはある程度の
角度を持って交わっていることが望ましく、接合面をCu
-O2次元面と平行にした場合に比べて良好なジョセフソ
ン特性を得ることができる。すなわち、本発明の超電導
素子においては、上記接合面を超電導電極を構成するRE
Ba2 Cu3 O 7-y 系酸化物超電導体の結晶構造の c軸方向
と直交しないように形成することが好ましい。
【0024】具体的には、基板面上にREBa2 Cu3 O 7-y
系酸化物超電導体の結晶軸のc軸(Cu-O2次元面と直交
する方向)が基板面と平行となる [100]、 [010]、 [11
0]等の配向(これらの結晶軸が基板面に対して直立した
配向を表す)膜を下部超電導電極膜として形成したり、
また [103]や [013]等のc軸が基板面に対して45度に近
い角度を成している配向膜を下部超電導電極膜として形
成し、その上にバリア層および上部超電導電極膜を順次
ヘテロエピタキシャル成長させる積層型(サンドイッチ
型)の構成を採用することが好ましい。あるいは、c軸
が基板面に垂直となる [001]配向膜の一部をエッチング
して、基板面とある程度の角度を成す端面を作製し、そ
の端面上にバリア層および上部超電導電極膜を順に形成
する(エッジ型接合またはランプ型接合と呼ばれる)等
の構成を採用してもよい。これらの接合では、いずれも
下部超電導電極のc軸は接合面と直交しない。
【0025】また、本発明の超電導素子では、バリア層
中の伝導に寄与する種々の要素を独立に制御できるた
め、ジョセフソン接合としての特性を、電流−電圧特性
に全くヒステリシスが生じない完全な弱結合型から、若
干のヒステリシスを含み、完全なトンネル型接合に期待
される超電導ギャップ電圧の 2倍に近い大きいIc n
積を有する接合まで、応用形態並びに使用温度に合わせ
て、自在に設計および実現することができる。例えば、
同一構造の接合においても、電流−電圧特性に現れるヒ
ステリシスの程度は動作温度で異なってくるため、高温
での動作を想定する場合には、極低温ではかなりのヒス
テリシスが生じる接合を用いる必要がある。このような
場合には、Cu-O1次元鎖構造部の原子置換を最大に近い
値(xが0.25に近い値)に設定し、かつCu-O2次元面での
伝導電子が少なくするように、Pr原子の置換量は微量と
する条件(zが 0に近い値)を採用すればよい。逆に、熱
雑音の影響が少ない低温領域で、ヒステリシスが全く生
じないことが要求される、例えばSQUID等に応用す
る場合には、Cu-O1次元鎖構造部の置換量x を0.05に近
い値とし、Pr原子の置換量z は 0.5に近い値に設定すれ
ばよい。
【0026】さらに、既に述べた通り、本発明の超電導
素子では、原子置換が行われていないCu-O1次元鎖、あ
るいはCu-O2次元面に導入された伝導電子(正孔)が常
伝導電子の伝導パスとして機能し、接合の常伝導コンダ
クタンスを増加させ、完全なトンネル接合の場合に生じ
るヒステリシス特性を制御することができる。このよう
な機構は、従来の金属超電導ジョセフソン接合で用いら
れたシャント抵抗と同様に機能する。しかし、通常のシ
ャント抵抗との相違は、本発明では常伝導パスが接合の
内部に作製されることにある。酸化物超電導体を用い
て、高温で動作する単一磁束量子転送型の論理回路を構
成する場合には、熱雑音に対抗するために接合の超電導
電流を大きく設定する必要があり、その結果として回路
に含まれる閉ループのインダクタンスを十分に小さくす
ることが要求される。このような場合、従来の金属超電
導体で用いられてきた、接合外部に形成したシャント抵
抗の方式を用いると、シャント部のインダクタンスが増
加して回路構成が困難となる。本発明の超電導素子で
は、実効的にシャント抵抗が接合内部に作り込まれるた
め、インダクタンスを最小とすることができる。これ
は、高温でも動作し得る論理回路を実現する上で極めて
重要な点である。
【0027】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
て説明する。
【0028】図1は、本発明の超電導素子を適用した第
1の実施例のジョセフソン接合素子の構造を示す断面図
である。同図において、1は SrTiO3 (100)単結晶体か
らなる基板であり、この SrTiO3 (100)基板1上には Y
Ba2 Cu3 O 7-y で組成が実質的に表される酸化物超電導
体からなる厚さ 300nmの下部超電導電極層2が、その結
晶構造の [100]軸方向が基板面と直交するように形成さ
れている。この下部超電導電極層2を形成する際、その
結晶方位の制御を容易にするために、基板1との間に他
の酸化物薄膜、例えば PrGaO3 やPrBa2 Cu3 O 7-y 等を
介在させてもよい。
【0029】上記下部超電導電極層2上には、Pr0.9 Y
0.1 Ba2 Cu2.8 Co0.2 O 7-y で組成が実質的に表される
酸化物からなる厚さ 5nmのバリア層3、および下部超電
導電極層2と同組成の酸化物超電導体からなる厚さ 100
nmの上部超電導電極層4が順に積層形成されている。こ
れらの層は、下部超電導電極層2から順次エピタキシャ
ル成長するように形成されており、いずれもその結晶構
造の [100]方向が基板面と直交する配向を有している。
【0030】上部超電導電極層4上には、厚さ 100nmの
Au蒸着膜からなる表面保護層(Au保護層)5が設けられ
ており、またバリア層3、上部超電導電極層4およびAu
保護層5は、接合面積が10μm 角となるようにパターニ
ングされている。そして、これらによる積層部および下
部超電導電極層2は絶縁膜6により覆われており、この
絶縁膜6に設けられたコンタクトホール6aを介して、
上部超電導電極層4へのAu配線層7が接続されて、積層
型ジョセフソン接合素子が構成されている。
【0031】上記実施例のジョセフソン接合素子は、超
電導電極層2、4およびバリア層3の結晶構造中に含ま
れるCu-O2次元面が接合面と直交(結晶のc軸が接合面
と平行)して形成されているため、接合部を通して実用
的な超電導電流を流すことができ、さらには大きなIc
n 積を得ることが可能となる。
【0032】また、上記実施例によるジョセフソン接合
素子では、バリア層3のPrを Yで10原子% のみ置換して
いる。この結果、バリア層3中のCu-O2次元面には、ク
ーパー対の拡散による伝達を補助する、若干量の伝導電
子が導入されているに過ぎない。一方、Cu-O1次元鎖構
造部のCu原子の20原子% はCoで置換されている。この結
果、接合に含まれるCu-O1次元鎖構造部は、ほぼ完全に
絶縁化されている。すなわち、このジョセフソン接合素
子は、少なくとも極低温においてはほぼトンネル型のジ
ョセフソン素子に近い動作をするように設計されてい
る。
【0033】上記実施例によるジョセフソン接合素子
は、例えば以下のようにして作製される。この実施例の
ジョセフソン接合素子の製造工程を図2を参照して述べ
る。
【0034】まず、図2(a)に示すように、 SrTiO3
(100)基板1の上に多元反応性スパッタ法で、下部超電
導電極層2となる YBa2 Cu3 O 7-y 層を厚さ 300nm形成
する。この下部超電導電極層2の形成には、 Y、BaCu、
Cuの 3つの金属ターゲットを用い、各ターゲットの印加
電力を厳密に制御することで、化学量論比組成にほぼ一
致する YBa2 Cu3 O 7-y 酸化物超電導薄膜を得た。成膜
時の温度は913Kであり、この温度で形成した薄膜が、そ
の結晶構造の [100]方向が基板面に垂直な配向を有して
いることは、別途行ったX線回折によって確認した。
【0035】次いで、上記下部超電導電極層2上に、同
一真空容器中で、Pr、 Y、BaCu、Cu、Coの各金属ターゲ
ットを用いて、バリア層3として厚さ 5nmのPr0.9 Y
0.1 Ba2 Cu2.8 Co0.2 O 7-y 薄膜、および上部超電導電
極層4として厚さ 100nmの YBa2 Cu3 O 7-y 酸化物超電
導薄膜を順次成長させた。これらの層3、4が下部超電
導電極層2と同じ配向を有していることはX線回折によ
って確認した。
【0036】得られた積層膜の超電導転移温度は 82Kで
あった。この転移温度が理想的な YBa2 Cu3 O 7-y 膜の
持つ 92Kに比べて若干低いのは、 [100]配向を維持でき
るように、基板温度を低めに設定したためである。 [10
0]配向を維持して超電導転移温度を高めるには、配向性
が決定される下部超電導電極層2の成長を行う前に、[1
00]配向が生じやすくなるバッファ層、例えばPrBa2 Cu
3 O 7-y や PrGaO3 等をまず成長させ、次いで基板温度
を高めて各層2、3、4を成長させればよい。上記積層
膜を形成した後の加工工程は、通常の半導体素子の作製
に用いられるものと同様である。すなわち、図2(b)
に示すように、表面の保護のために、厚さ 100nmのAu蒸
着膜5を形成した後、光学露光法で接合部のパターンを
レジスト膜に転写し、次いでレジストをマスクとしてイ
オンミリング法により、上部超電導電極層4となる YBa
2 Cu3 O 7-y 膜とバリア層3となる中間のPr0.9 Y0.1B
a2 Cu2.8 Co0.2 O 7-y 膜をエッチングする。
【0037】次に、図2(c)に示すように、上部超電
導電極層4および下部超電導電極層2への配線を互いに
絶縁するための絶縁膜6を積層形成し、接合部上部のみ
に穴(コンタクトホール6a)があいた形に加工する。
この絶縁膜6としては、種々のものが利用できるが、こ
の実施例では工程を簡略化する目的で、ネガレジストを
利用した。この後、上部超電導電極層4への配線を形成
すれば積層ジョセフソン素子が完成するが、この実施例
では簡略化のために、配線にはAu配線層7を用いた。
【0038】図3は、この実施例で得られた超電導素子
の液体ヘリウム温度における電流−電圧特性である。前
述したように、この実施例ではバリア層3が薄く、Cu-O
2次元面への伝導電子の供給も少なく設定されているた
め、極低温での電流−電圧特性はヒステリシスを持った
トンネル型ジョセフソン素子に近いものとなっている。
この接合の液体ヘリウム温度でのIc n 積は 9mV程度
であった。
【0039】図4は、温度 60Kで測定した電流−電圧特
性である。図3とは異なり、電流−電圧特性にはヒステ
リシスは見られず、Ic n 積は約 0.3mVであった。 6
0Kにおいてヒステリシスが消失した理由は、温度の上昇
によりバリア層3内のCu-O2次元面に伝導電子(正孔)
が熱的に誘起され、またCu-O1次元鎖構造部の一部でキ
ャリアの局在が解放されて、常伝導抵抗が低下したため
である。
【0040】以上の実施例で示した通り、本発明による
超電導素子は、極低温から液体窒素温度付近まで、広い
温度範囲で良好なジョセフソン特性を示すことが確認で
きた。また、動作温度によって、電流−電圧特性にヒス
テリシスを示すトンネル型の特性から、ヒステリシスを
示さない弱結合型の特性まで変化させることが可能であ
ることも確認された。所定の動作温度でトンネル型、あ
るいは弱結合型のいずれかの特性を選択するためには、
バリア層3の組成を本発明の範囲内で適宜選択すると共
に、バリア層3の厚さを用いる組成に応じて設計すれば
よ良い。
【0041】次に、本発明の超電導素子をエッジ型(ラ
ンプ型)のジョセフソン接合素子に適用した第2の実施
例について、図5を参照して説明する。
【0042】図5は本発明を適用したエッジ型のジョセ
フソン接合素子の構造を示す断面図である。同図におい
て、11は SrTiO3 (100)単結晶体からなる基板であ
り、この SrTiO3 (100)基板11上には、結晶構造の
[001]方向が基板面に垂直となるよう配向させた、 YBa
2 Cu3 O 7-y 酸化物超電導体からなる厚さ 300nmの下部
超電導電極層12が形成されている。この層12は、 Y
Ba2 Cu3 O 7-y の組成を持つ焼結体をターゲットとした
レーザー蒸着法により、基板温度 1073Kで形成したもの
である。
【0043】下部超電導電極層12上には、層間絶縁層
13として SrTiOx 組成の酸化物薄膜が厚さ 400nmで積
層されている。下部超電導電極層12および層間絶縁層
13は同一真空容器内で連続的に形成し、その後通常の
光学露光法でパターニングしたレジスト膜をマスクとし
て、電界で加速されたArイオンを基板面に対して角度を
成すように照射してエッチングを行い、図5のように端
面が基板面と傾斜を成す形に加工した。この実施例の場
合、下部超電導電極層12の端面と基板面とが成す角度
は30°とした。
【0044】上記端面加工の後、厚さ10nmのPr0.7 Y
0.3 Ba2 Cu2.95Co0.05O 7-y 酸化物からなるバリア層1
4、および厚さ 150nmの YBa2 Cu3 O 7-y 酸化物超電導
体からなる上部超電導電極層15を、これらと同一組成
を持つ焼結体ターゲットを用いたレーザー蒸着法により
積層形成した。積層時の基板温度は 1073Kであり、この
条件ではバリア層14および上部超電導電極層15共
に、それらの結晶構造の[001]方向が基板面に垂直とな
るように配向して成長することが確認されている。この
配向は下部超電導電極層12の傾斜した端部でも変化し
ないことが、断面を透過型電子顕微鏡を用いた観察で確
認されている。バリア層14および上部超電導電極層1
5の積層後、これらの層の不要部分をレジストをマスク
としたイオンミリングで除去することにより、図5に構
造を示すエッジ型(ランプ型)ジョセフソン接合素子を
得た。
【0045】この実施例におけるバリア層14は、Pr原
子の30原子% が Y原子で置換されており、バリア層14
中のCu-O2次元面には伝導電子(正孔)が供給されてい
る。また、Cu-O1次元鎖構造部のCu原子のCo原子による
置換率は5%であり、バリア層14に含まれる全Cu-O1次
元鎖の一部は絶縁化されずに残るように設定した。
【0046】また、この実施例では、下部超電導電極層
12は基板面と30°の角度を成すように構成されている
ため、接合面が上下超電導電極層15に含まれるCu-O2
次元面と成す角度は30°である。
【0047】図6は、この実施例の超電導素子の4.2Kに
おける電流−電圧特性である。上述したように、バリア
層14として用いたPr0.7 Y0.3 Ba2 Cu2.95Co0.05O
7-y 層は、Cu-O2次元面およびCu-O1次元鎖構造部に伝
導電子が存在するように選択されているため、4.2Kにお
いても接合の常伝導抵抗値は比較的小さく、電流−電圧
特性にはヒステリシスは生じていない。4.2Kで得られた
c n 積は約 3mVと、弱結合型のジョセフソン素子と
しては極めて高いものであった。
【0048】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれば
酸化物高温超電導体を利用したジョセフソン接合素子
を、極低温から液体窒素温度までの任意の温度におい
て、応用形態に応じて要求される動作モード(電流−電
圧特性にヒステリシスのあるトンネル接合的動作モード
からヒステリシスの存在しない弱結合型モードまで)に
適合した形で自在に設計し、実現することができる。そ
して、いかなる動作モードにおいても、高いIc n
を得ることが可能である。高いIc n 積を有する弱結
合型のジョセフソン接合素子は、SQUID(超電導磁
束量子干渉計)への応用や、単一磁束量子転送型の超高
速論理回路を実現する基本構成素子として最適であり、
本発明の超電導素子は産業上多大の寄与をすることが期
待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例による超電導素子の構
造を模式的に示す断面図である。。
【図2】 図1に示す第1の実施例の超電導素子の製造
工程を模式的に示す断面図である。
【図3】 本発明の第1の実施例による超電導素子の液
体ヘリウム温度における電流−電圧特性を示す図であ
る。
【図4】 本発明の第1の実施例による超電導素子の温
度 60Kにおける電流−電圧特性を示す図である。
【図5】 本発明の第2の実施例による超電導素子の構
造を模式的に示す断面図である。
【図6】 本発明の第2の実施例による超電導素子の4.
2Kにおける電流−電圧特性を示す図である。
【符号の説明】
1、11…… SrTiO3 (100)基板 2、12……下部超電導電極層 3、14……バリア層 4、15……上部超電導電極層

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式:REBa2 Cu3 O 7-y (式中、REはPrを除く希土類元素(Yを含む)を示し、 y
    は 0< y< 1を満足する数である)で実質的に組成が表
    される酸化物超電導体からなる 2つの超電導電極と、 前記超電導電極間に介在され、Pr1-z REz Ba2 Cu3 O
    7-y (ただし、 0< y<1、 0< z≦0.5)で表される酸
    化物中のCuの一部を、当該酸化物の結晶構造中に含まれ
    るCu-O1次元鎖構造中に選択的に入る他の金属原子で置
    換した、 一般式:Pr1-z REz Ba2 Cu3-x Mx O 7-y (式中、REはPrを除く希土類元素(Yを含む)を、 MはPr
    1-z REz Ba2 Cu3 O 7-y酸化物の結晶構造中に含まれるC
    u-O1次元鎖構造中に選択的に入るCuを除く金属元素を
    示し、 xは0.05≦ x≦0.25を満足する数、 zは 0< z≦
    0.5を満足する数、 yは 0< y< 1を満足する数であ
    る)で実質的に組成が表される酸化物からなるバリア層
    とを具備し、 前記バリア層が介在された前記 2つの超電導電極間に接
    合が構成されていることを特徴とする超電導素子。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の超電導素子において、 前記バリア層は、その厚さが10nm以下であることを特徴
    とする超電導体素子。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の超電導素子において、 前記超電導電極とバリア層とで形成する接合面は、前記
    超電導電極を構成する酸化物超電導体の結晶構造のc軸
    方向と直交しないように形成されていることを特徴とす
    る超電導体素子。
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