JP2867956B2 - 超電導トランジスタ - Google Patents

超電導トランジスタ

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は超電導エレクトロニ
クスの分野に係り、特にディジタル回路、アナログ回路
の分野に応用される酸化物超電導体でソース電極、ドレ
イン電極を形成した超電導トランジスタ(酸化物超電導
トランジスタ)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】超電導電流を外部から制御する、超電導
トランジスタは電荷担体に超電導電子対を用いることか
らくる高速性と低損失性といった利点を有している。特
に液体窒素温度での動作が可能な、酸化物超電導体を用
いた超電導素子は、冷却の容易さの点でより優れてい
る。酸化物超電導体を用いた接合型素子の場合、在来の
技術では金属系超電導体で実現されているような、超電
導体−絶縁体−超電導体のSISジョセフソントンネル
接合が酸化物超電導体の特徴であるコヒーレンス長の短
さのためにはなはだ実現困難な状況にある。このため、
超電導体−常伝導体−超電導体のいわゆるSNS接合を
利用することがより実際的である。ところが、SNS接合
の電流電圧特性はSIS接合のようなヒステリシス特性を
持たないために、ジョセフソンスイッチング素子のよう
な用途には使用できず、量子磁束を担体としたデバイス
やSQUID、あるいは接合を流れる電流を外部から制御す
る超電導トランジスタの開発が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近接効果型の超電導ト
ランジスタにおいては、薄い常伝導体のチャネルに超電
導電極からしみ出す超電導電子波により生じる、所謂近
接効果による超電導電流をゲート電極とゲート絶縁膜を
介してチャネルに電界を印加するか、あるいはまた、電
荷をチャネルに注入することにより、チャネル層中の電
荷密度を変化させて近接効果電流を制御している。この
場合に、近接効果電流の変調率はチャネル層の電荷密度
の変調率に大きく依存する。従来、酸化物超電導トラン
ジスタを構成する酸化物SNS接合(超電導体及び絶縁体
が酸化物からなる)で、実現可能な接合長において近接
効果を起こすために要求されるチャネル層(絶縁体層)
の電荷密度は金属に比べはるかに低密度である酸化物を
用いていてもまだ大きく、充分な電荷の変調率が得られ
なかった。このために、トランジスタの利得を実用可能
な大きさにすることが不可能であった。本発明はこのよ
うな課題を解決するものであり、チャネルに用いる物質
の電荷密度がある臨界値付近にあるとき、わずかな電荷
密度の変化により大幅な伝導特性の変化が起こり,これ
に伴って近接効果電流が大きく変化できるとの現象の発
見に基づいたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記した「ある臨界値付
近の電荷密度」とは、具体的には電荷密度の変化により
酸化物が絶縁体−金属転移を起こす臨界組成あるいは臨
界電荷密度を意味する。ここでいう絶縁体−金属転移と
は温度変化に伴うものではなく、素子の実使用状態の温
度、具体的には液体窒素温度ないしは液体ヘリウム温
度、およびその中間的温度において、酸化物の組成の変
化に対して酸化物の電気伝導が金属から半導体あるいは
絶縁体に変化する現象を示す。このような現象は、モッ
ト・ハバード絶縁体に構成元素と価数の異なる元素の置
換を行うことにより電荷担体としてホールを供給したと
き、ある臨界的な電荷の密度を境にモット・ハバード絶
縁体から金属に転移するというもの(モット転移)が代
表的である。この現象自体は古くから知られていること
であり、このような現象を示す物質系も以前よりよく知
られている。この現象は水素原子からなる結晶格子をモ
デルに理論的な検討がなされており、水素原子のボーア
半径a0により規定される格子定数ac≒4.5a0なる値
(以下、臨界格子定数)を境に、臨界格子定数より大き
い格子定数を有する結晶は絶縁体的な電気伝導度を示
し、臨界格子状数未満の格子定数を有する結晶は金属的
な電気伝導度を示すことが知られている。しかし、理論
的なアプローチの違いで、臨界格子定数をac≒2.78a0
と定義する説もあり、個々の材料に対応した臨界格子定
数の具体的な導出に関しては途上段階といえよう。ただ
し、臨界格子定数なる値が存在すること、そしてこの値
を境に結晶の電気伝導(換言すれば、抵抗率)が急峻に
変化することは定性的ながら知られている。モット遷移
による結晶の電気伝導の変化は、臨界格子定数を境に結
晶内部のバンド構造が著しく変わることに起因するとい
えよう。即ち、結晶内部の電子、正孔の挙動を決める価
電子帯、伝導帯の形状、所謂バンド構造は、結晶の格子
定数により変化するが、その変化の度合いが臨界格子定
数で非常に大きくなるのである。
【0005】さて、このような絶縁体−金属転移(モッ
ト遷移又は、これに類似した現象)を生ずる物質をSNS
接合のチャネル層に用いた場合にどのような現象が観測
されるだろうか、という疑問が本発明を生み出す直接的
な契機となった。モット転移を示す臨界組成(上述の臨
界格子定数を有する結晶組成)よりわずかに金属的な組
成の物質(即ち、金属的な電気伝導を示す物質)をチャ
ネル層に用いて酸化物超電導体のSNS接合を形成する
と、近接効果によりジョセフソン電流が観測された。と
ころが、上記臨界組成よりわずかに絶縁体的な組成の物
質(即ち、絶縁体的な電気伝導を示す物質)をチャネル
層に用いて酸化物超電導体のSNS接合を形成しても超電
導電流はほとんど観測されなかった。このようなわずか
な組成の変化による接合の超電導電流の大幅な変化は、
チャネル層の物質のわずかな組成変化に起因する伝導特
性変化(電気伝導性の変化)によることは明らかであ
る。さらに、わずかに絶縁体よりの組成の物質に対して
ホールの濃度をわずかに増大させる方向に電界を印加す
るか、あるいは電荷を注入することにより、チャネル層
の物質は金属的となり、SNS接合の超電導電流が大きく
増大する。逆に、わずかに金属よりの組成の物質に対し
てホールの濃度をわずかに減少させる方向に電界を印加
するか、あるいは電荷を注入することにより、チャネル
層の物質は絶縁体的となり、超電導電流は大きく減少す
る。このような実験事実から、本発明者らはチャネル層
の伝導特性変化が、組成の変化のみならず、外部からの
電荷密度の変化によっても達成できることを見いだし
た。この事実より、チャネル層をわずかに絶縁体よりの
組成の物質とわずかに金属よりの組成の物質とを積層し
て形成し、これらを同時に動作させると、同じ入力に対
して逆方向の動作をさせる、すなわち、コンプリメンタ
リの素子を形成することも可能になる。
【0006】そこで、本発明者はこれらの知見に鑑み、
以下に記すような特徴を有する超電導トランジスタを構
成し、上述の課題を解決した。
【0007】本発明の超電導トランジスタは、チャネル
層とこれに互いに離間して設けられた2つの超電導電極
(所謂ソース電極とドレイン電極)とを含んで構成され
る既知の超電導トランジスタにおいて、チャネル層の物
質の内部に外部より電荷密度変化による絶縁体−金属転
移を生じさせ、それに対応して超電導電極間に近接効果
によりチャネル層を介して流れる超電導電流の変化を生
じさせる用に構成した点に基本的な特徴を有する。即
ち、構成的にはチャネル層の物質の選定に、機能的には
チャネル層内の超電導電流の制御に特徴がある。前者を
詳述すれば、チャネル層は、外部からの電界印加又は電
荷注入により絶縁体−金属転移が生じる物質で構成され
る。
【0008】より望ましくチャネル層の物質(チャネル
材料)を選定する指針は、次の付加的規定にて明らかに
される。付加的規定1として、チャネル材料は3d遷移金
属からなる複合酸化物であり且つ素子を動作させる温度
において絶縁体−金属転移の生じる臨界組成のごく近傍
の組成を有する材料を選定する。
【0009】また付加的規定2として、(LaxY1-x)1-z(S
ryCa1-y)zTiO3 (1.00> x >0.00, 1.00> y >0.00,
0.45> z >0.00)を望ましいチャネル材料の一例として
示す。
【0010】また本発明の超電導トランジスタの実施態
様の変形として、チャネル層を、わずかに金属側の組成
を有する物質とわずかに絶縁体側の組成の物質を一つの
ウェハー又は一つの素子の中に同時に存在させ、相互に
異なる動作をさせる超電導トランジスタがある。この超
電導トランジスタによれば、チャネル層の超電導電極間
に設けられた単一のゲート電極からの信号入力に対し
て、複数の異なる値の出力を得れるという機能的な特徴
が実現できる。
【0011】ところで、いわゆる絶縁体−金属転移に関
連した超電導素子の電流制御については、特開平7-226
61号公報に開示されてある。しかし、この発明で制御さ
れる超電導素子の超電導電流は変換層(絶縁体−金属転
移を生じる物質からなる)を介して制御電極が設けられ
た超電導物質からなるチャネルを流れているものであ
り、チャネルそのものの物質に絶縁体−金属転移を生じ
させる本発明と素子構成とは本質的に異なる。また、い
くら変換層の物質の物性が金属から絶縁体に変化したと
しても超電導物質の超電導性を変化させるに至らしめる
ことは不可能であると考えられる。本発明者らの実験事
実によれば、変換層と超電導層が接触しておれば、変換
層が金属化した状況に於いても大部分の電流は超電導層
中を流れてしまうのである。本発明においては、超電導
電流はあくまでも実際に絶縁体−金属転移を起こす物質
中を近接効果により流れるものであり、このことによ
り、大きな利得が実現されるのである。本発明は、チャ
ネル層の物質に絶縁体−金属転移を生じさせるため、チ
ャネル層の結晶組成及び結晶構造について上述の公報に
は教示されない配慮が求められるが、この点については
発明の実施の形態の冒頭にて詳述する。
【0012】また、超電導トランジスタの利得向上の手
段としては、他にも、チャネルに極薄の超電導膜を用い
て、これの電気抵抗が量子面抵抗(平方センチメートル
当たり約6.5キロオーム)の近傍で超電導−絶縁体転移
を起こすという現象を利用する方法が特願平8−23660
号として出願されている。この方法でのチャネル層材料
は超電導体で、この物性を変化させてチャネル層中の超
電導電流の制御を行うのに対し、本発明のチャネル層材
料は非超電導体であって、この非超電導体中を流れる近
接効果による電流を制御するという点で本質的に異なる
方法である。特願平8−23660号として出願された発明
では、超電導−絶縁体転移を電界の印加等により制御す
るために、チャネル層の抵抗を最適化する必要があり、
このためにチャネル層材料の常伝導抵抗率や膜厚および
チャネル幅に厳密な制御を必要とする。本発明の素子で
は、チャネル層の組成を決定すればチャネル層の特性が
決定し、膜厚やチャネル幅等には影響されないため、製
造の簡便さでより優れている。
【0013】さらに本発明の超電導トランジスタに関
し、具体的な説明を加える。本発明による超電導トラン
ジスタの構造は、平面型、積層型、段差型のいずれの形
状に於いてもSNS接合を構成し、チャネルに電界をかけ
るか電荷注入を行える構造になっていれば良い。特に平
面型はリソグラフィーにより、超電導トランジスタ素子
の微細化と高集積化が図れるため好ましい形状といえ
る。平面型の場合、ゲートがチャネル層の上部にあって
も下部にあっても構わない。チャネル層にペロブスカイ
ト型酸化物を用いた場合、超電導電極も銅のペロブスカ
イト型酸化物系の物質を用い、薄膜形成の基板材料に同
じくペロブスカイト型酸化物の単結晶を用いると、超電
導トランジスタを構成するすべての薄膜がエピタキシャ
ル成長させることが可能になり、好適である。
【0014】上記のように絶縁体−金属転移近傍の組成
の酸化物をチャネルに用いて近接効果型超電導トランジ
スタを構成すると、チャネル層にわずかに電界をかける
か、あるいはわずかに電荷の注入を行うことにより、チ
ャネル層の伝導特性が大幅に変化し,それと対応して近
接効果電流の大幅な変調が実現する。これにより、従来
の近接効果型トランジスタでは不可能であった高利得が
実現する。また、チャネル層の組成を絶縁体−金属転移
近傍の組成に対して、わずかに逆方向にずらせた組成の
物質をチャネル層に用いると、等しいゲート入力に対し
て、逆の出力を実現できる。一つのチップないしは素子
(超電導トランジスタ)の中に異なる組成のチャネル層
を形成することにより、逆動作の素子を同時に作製する
ことが可能になる。これら複数の素子のゲートを共通化
すれば、一つの入力に対して逆の複数の出力が得られ
る。この性質を利用すると、例えば逆出力の素子をペア
にしてこれらの出力電流の和を一定に保たせる動作も可
能になり、隣接線間の電磁気的干渉が微細構造素子で問
題になる場合などに干渉の防止に役立つ。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明に係る超電導トランジスタ
の好適な実施形態は、SrTiO3基板上に上述の付加的規定
2に示したごとく、(LaxY1-x)1-z(SryCa1-y)zTiO3系材
料からなるチャネル層を形成し、これに2つの超電導電
極を離間して設け、さらに超電導電極間においてチャネ
ル層に電界を印加する手段又は電荷を注入する手段を設
ける。
【0016】好適な実施形態としてこのような構成を推
奨する理由は、次のような実験的知見に基づく。まず単
結晶SrTiO3からなる基板の上に、パルスレーザー堆積法
で(LaxY1-x)1-z(SryCa1-y)zTiO3薄膜を種々の組成でエ
ピタキシャル成長させて試験試料を作製した。次に試験
試料の個々について、(LaxY1-x)1-z(SryCa1-y)zTiO3
膜の電気伝導特性を測定した。図1に(LaxY1-x)1-z(Sry
Ca1-y)zTiO3薄膜の組成と電気伝導特性との相関を、電
気伝導特性が金属的な場合に黒丸、絶縁体的な場合に白
丸で示す。金属的か絶縁体的かの判断基準は、試験試料
の薄膜の抵抗率を室温下(298K)で測定した際、抵
抗率が10~3Ωcm以下の場合を前者、10~2Ωcm以上の
場合を後者とした。両者のいずれかになるかの判断基準
は、室温における抵抗率が10~3Ωcm〜10~2Ωcmの領
域にあるが、その詳細は定かでない。しかし、いずれの
試験試料もこの領域を外れて高い抵抗率又は低い抵抗率
を示した。
【0017】チャネル材料として、(LaxY1-x)1-z(SryCa
1-y)zTiO3薄膜を選定して検討した理由は、次の通りで
ある。まず、本発明に要請される条件として、金属的な
電気伝導性を呈する結晶内において電荷密度を低く抑え
る(超電導トランジスタの変調率を高くするため)こと
が、チャネル層に求められる。これに対し、絶縁性の結
晶(即ち、電荷密度の低い)であるSrTiO3をベースに、
このSr元素を一部別の元素で置き換えることで他の酸化
物より電荷密度の低い常伝導チャネルが形成できると考
えたからである。さらに上述のようにモット遷移には、
(1)結晶の格子定数と臨界格子定数との大小関係と、(2)
格子定数変化による結晶内部におけるバンド構造変化と
が関与する。これに対し、結晶を構成する物質の組成は
当該結晶の格子定数及びバンド構造を決める。このこと
から、チャネル層の組成を制御することで、モット遷移
が発生する格子定数及びバンド構造を実現できる。本発
明を検討するにあたり、基板たるSrTiO3と同じ結晶構造
を持つ薄膜を基板上にエピタキシャル成長させることに
より、その結晶を基板と同様に配向させ、最外殻軌道に
2個のs電子を持つ(2価の)Srのサイトを一部、最外
殻軌道に2個のs電子と1個のd電子を持つ(3価の)
元素Aで置き換えて、結晶の格子定数並びにバンド構造
を制御することを考えた。その根拠は、最外殻軌道に3
d電子を有する遷移金属であるTiの複合酸化物Srz1-z
TiO3において、Tiの価数がSrとAの組成比z:1-zにより
変化するという現象にあり、この組成比を設定すること
により結晶の格子定数、バンド構造、並びに電荷密度の
多様な制御が可能になると考えたからである。
【0018】結晶の格子定数制御に鑑みれば、Srサイト
を置換する元素のイオン半径をも考慮することが必要で
ある。イオン半径1.10ÅのSrに対し、これに最も近いイ
オン半径を持つ元素AはLa(1.04Å)である。従って、
絶縁体−金属転移近傍の組成を簡便に設定するにはLa
1-zSrzTiO3の組成が望ましく考えられる。しかし、この
チャネル層内の電荷密度を制御して、チャネル材料に絶
縁体−金属転移を起こさせる条件(例えば、制御電圧)
は、チャネル材料の組成により一義的に決まってしまう
(即ち、超電導トランジスタの周辺回路の仕様を決めて
しまう)点が問題となり得る。電界印加や電荷注入によ
り制御されるチャネル層内のバンド構造は、その組成に
より決まるからである。そこで超電導トランジスタの設
計の自由度を増すために、2価のSr元素をCa(イオン半
径:0.94Å)で、3価の元素LaをY(イオン半径:0.88
Å)で、夫々適宜置き換えるとよいと考えた。実際にSr
元素をCa元素に、La元素をYに置き換えてチャネル層を
形成した結果、結晶の安定性の観点から(LaxY1-x)1-z(S
ryCa1-y)zTiO3薄膜の組成においてx=y、即ち3価元
素におけるYの比率と2価元素におけるCaの比率とを等
しくすることが望ましいことが判った。La, Sr, Y, Ca
のイオン半径を考慮しても、この条件が好ましいことは
いえよう。また、この固溶体系の原子価を考慮した場
合、xとyが少々異なってもその物性に大きく影響しない
ことは明らかであった。図の白丸と黒丸の間の組成で絶
縁体−金属転移が起こっていることがわかる。すなわ
ち、その組成の近傍の組成をチャネル層の材料に用いれ
ば、本発明の超電導トランジスタが作製可能になる。
【0019】以下、本発明の実施例につき、添付図面を
参照して詳細に説明する。
【0020】<実施例1>図2に示す構造の平面型SNS
接合10を作製した。接合の基板材料11には単結晶SrTiO3
ウエハをウェハ表面と結晶の001面が平行になるように
鏡面研磨したものを用いた。この基板11の上にチャネル
層となるべき常伝導酸化物膜(La1-zSrzTiO3)12をパル
スレーザー堆積法でエピタキシャル成長させ、さらにそ
の上に超電導ソース電極13ならびに超電導ドレイン電極
14となるべき酸化物超電導膜15を同じ方法でエピタキシ
ャル成長させた。立方晶ペロブスカイト型の結晶構造を
有する単結晶SrTiO3基板上にLa1-zSrzTiO3なる組成の常
伝導酸化物膜をエピタキシャル成長させると、この常伝
導酸化膜も基板結晶と同じ方位に配向した単結晶とな
る。ここでは、基板結晶の001面に常伝導酸化膜を形成
したため、その結晶は基板表面に対して一様にc軸配向
する。チャネル層における電荷密度の制御の効果をここ
に生じる超電導電流に均一に及ぼすには、チャネル層が
単結晶であることが望ましく、結晶粒界の影響を受ける
多結晶(特に結晶粒の小さいもの)は避けたい。
【0021】さて、しかるのちに、電子線描画法により
パターニングを行い、超電導ソース電極13ならびに超電
導ドレイン電極14を分離すべくECRプラズマエッチング
法で超電導膜15を溝状にエッチングした。接合の幅は10
ミクロン、長さは100nmとした。常伝導酸化物膜12に
は、2種類の組成、即ちLa0.97Sr0.03TiO3(これをI組
成とする)と、La0.93Sr0.07TiO3(これをM組成とす
る)にした。図3にこれらの組成で、SrTiO3単結晶基板
上にエピタキシャル成長させた薄膜の電気伝導特性を示
す。グラフ上のプロット16で示されるように、I組成で
は負の温度係数をもつ半導体で、低温ではほとんど絶縁
体化する。また、グラフ上のプロット17で示されるよう
に、M組成では金属であることがわかる。このことよ
り、I組成とM組成の中間的組成に於いて、絶縁体−金
属転移が起こっていると考えられる。酸化物超電導膜に
はYBa2Cu3O7を用いた。この膜の超電導転移温度は89Kで
あった。さて、SNS接合10の特性を冷却剤に液体窒素を
用いて77Kで測定した。図4に常伝導酸化物膜12にI組
成を用いた場合18と常伝導酸化物膜12にM組成を用いた
場合19の電流電圧特性を示す。I組成を用いた場合18で
は電流電圧特性はオーミックであり、接合を超電導電流
が流れていないことがわかる。一方、M組成を用いた場
合19では、SNS接合に典型的なRSJ型の電流電圧特性を示
しており、この接合がジョセフソン接合となっているこ
とがわかる。以上のように、常伝導酸化物膜の伝導特性
が金属であるか半導体かによって、接合に超電導性が支
配される。
【0022】<実施例2>本実施例では、図5に示すよ
うなテスト用試料20を作製した。実施例1と同様にSrTi
O3単結晶基板11に常伝導酸化物膜12を成長させた。常伝
導酸化物膜12の組成はLa0.97Sr0.03TiO3、即ちI組成と
した。次に基板11の一部を機械研磨し、厚さ100ミクロ
ンとし、そこへ電界印加用金電極21を真空蒸着法により
形成した。電極のサイズは1.5mm角とした。常伝導酸化
物膜12の上に直流4端子法による電気抵抗測定用の金電
極22,23を形成した。電圧端子22は電界印加用電極の直
上に配置し、電流端子23はその外側に配置した。テスト
用試料を冷却剤に液体ヘリウムを用いて4.2Kに冷却
し、電気抵抗を測定した。電界印加用電極21に電圧を印
加しない場合はほぼ絶縁体であるのに対して、電界印加
用電極21に+10Vを印加すると電気抵抗がおよそ10オーム
となり、高い導電性を示した。
【0023】<実施例3>本実施例では、図6に示すよ
うなトランジスタ24を作製した。ゲート部分以外のSNS
接合部分は実施例1の図2に示すものと全く同じであ
る。ただし、常伝導酸化物膜12の組成はLa0.97Sr0.03Ti
O3即ちI組成とした。図2の接合の溝の部分およびその
周辺の上部にゲート絶縁膜25となるSrTiO3薄膜を300nm
堆積し、その上部にゲート電極26となるYBa2Cu3O7薄膜
を堆積した。ゲート絶縁膜25およびゲート電極26のパタ
ーニングは電子線描画法およびプラズマエッチング法に
より行った。常伝導酸化物膜12の組成はLa0.97Sr0.03Ti
O3、即ちI組成とした。図7にこのトランジスタ24のソ
ース−ドレイン間の電流−電圧特性をゲート電圧の関数
で示す。ゲート電圧の変化に対応して、この接合の臨界
電流が制御される。適当な負荷線を引くことにより、増
幅作用を生じさせることが可能になる。次に、ゲート絶
縁膜25の材料にSrTiO3の代わりに導電性のあるSr0.5La
0.5TiO3を用いて図6と同じ素子を作製した。この素子
のソース−ドレイン間の電流−電圧特性をゲートを通し
て注入する電流の関数で図8に示す。図7と同様に接合
の臨界電流の制御をゲートを通して注入する電荷の量に
よって制御することも可能である。
【0024】<実施例4>実施例3の超電導トランジス
タ24と同じ構成で、常伝導酸化物膜12の組成をLa0.93Sr
0.07TiO3、即ちM組成とした本実施例のトランジスタに
おいて、ゲート電圧が負の時に電流がオンになるという
(実施例3の超電導トランジスタと逆の)特性が得られ
た。実施例3のトランジスタをI型、本実施例のトラン
ジスタをM型と便宜上呼び、この2種類のトランジスタ
を並列に接続したときの入力電圧、I型の出力電流、M
型の出力電流、I型M型両者の電流の和の関係を図9に
示す。バイアス電圧が0であるために、I型は負の入力
でM型は正の入力で電流がカットオフされる。両者の電
流の和は入力電圧の関わりなく一定になる。また、この
ときバイアス電圧を変えると、I型、M型両者の出力バ
ランスを変化させることが出来た。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、酸化物超電導体を用い
た超電導トランジスタの利得が、実用に十分な大きさに
高めることができる。したがって、このトランジスタを
用いた論理回路、スイッチング回路、変換器などが液体
窒素温度において動作可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(LaxY1-x)1-z(SryCa1-y)zTiO3薄膜の組成と電
気伝導特性の関係を示す図である。黒丸は金属、白丸は
絶縁体を示す。
【図2】本発明の実施例1の平面型SNS接合10の断面構
造図である。
【図3】本発明の実施例1の常伝導酸化物膜の電気伝導
特性を温度に対してプロットした図である。
【図4】本発明の実施例1の平面型SNS接合10の電流−
電圧特性を示した図である。
【図5】本発明の実施例2の試料20の断面構造図であ
る。
【図6】本発明の実施例3のトランジスタ24の断面構造
図である。
【図7】本発明の実施例3のトランジスタ24の特性を示
す図である。常伝導酸化物膜12の組成はLa0.97Sr0.03Ti
O3(I組成)である。
【図8】本発明の実施例3のトランジスタ24の特性を示
す図である。ただし、図6の25のゲート絶縁膜のSrTiO3
の代わりにSr0.5La0.5TiO3を用い、導電性を持たせた。
【図9】図7の特性を持つトランジスタ(I型)とそれ
の逆の特性を持つトランジスタ(M型)を並列に接続し
たときの入力電圧、出力電流の波形を示す図である。
【符号の説明】
10…平面型SNS接合、11…基板、12…常伝導酸化物
膜、13…超電導ソース電極、14…超電導ドレイン電極、
15…酸化物超電導膜、16…I組成(La0.97Sr0.03Ti
3)膜の特性、17…M組成(La0.93Sr0.07TiO3)膜の
特性、18…常伝導酸化物膜12にI組成を用いた場合の特
性、19…常伝導酸化物膜12にM組成を用いた場合の特
性、20…電気伝導特性への電界効果依存性測定用試料、
21…電界印加用金電極、22…電圧端子、23…電流端子、
24…トランジスタ、25…ゲート絶縁膜、26…ゲート電
極。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 樺沢 宇紀 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 深沢 徳海 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 高木 一正 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭64−74773(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01L 39/00 H01L 39/22 - 39/24 H01L 27/18

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】チャネル層と、該チャネル層に互いに離間
    して設けられた2つの超電導電極とを含んで構成され、
    上記チャネル層の物質に、外部より電荷密度変化による
    絶縁体−金属転移を生じさせ、それに対応して、上記超
    電導電極間に近接効果により該チャネル層を介して流れ
    る超電導電流の変化を生じさせることを特徴とする超電
    導トランジスタ。
  2. 【請求項2】上記チャネル層は、外部からの電界印加に
    より絶縁体−金属転移が生じる物質からなることを特徴
    とする請求項1記載の超電導トランジスタ。
  3. 【請求項3】上記チャネル層は、外部からの電荷注入に
    より絶縁体−金属転移が生じる物質からなることを特徴
    とする請求項1記載の超電導トランジスタ。
  4. 【請求項4】上記チャネル層の物質は、3d遷移金属複合
    酸化物であり且つ素子を動作させる温度において絶縁体
    −金属転移の生じる臨界組成のごく近傍の組成を有する
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の超
    電導トランジスタ。
  5. 【請求項5】上記チャネル層を、わずかに金属側の組成
    を有する物質とわずかに絶縁体側の組成の物質を一つの
    ウェハー又は一つの素子の中に同時に存在させ、相互に
    異なる動作をさせることを特徴とする請求項1乃至4の
    いずれかに記載の超電導トランジスタ。
  6. 【請求項6】上記チャネル層の上記超電導電極間に設け
    られた単一のゲート電極からの信号入力に対して、複数
    の異なる値の出力を得ることを特徴とする請求項5に記
    載の超電導トランジスタ。
  7. 【請求項7】上記チャネル層は、(LaxY1-x)1-z(SryCa
    1-y)zTiO3 (1.00>x>0.00, 1.00>y>0.00, 0.45>z>
    0.00)からなることを特徴とする請求項1乃至6のいず
    れかに記載の超電導トランジスタ。
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