JP3445951B2 - 防炎障子紙及びその製造方法 - Google Patents

防炎障子紙及びその製造方法

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JP3445951B2
JP3445951B2 JP2000033566A JP2000033566A JP3445951B2 JP 3445951 B2 JP3445951 B2 JP 3445951B2 JP 2000033566 A JP2000033566 A JP 2000033566A JP 2000033566 A JP2000033566 A JP 2000033566A JP 3445951 B2 JP3445951 B2 JP 3445951B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、防炎障子紙及び
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】火災予防の観点から不燃、難燃、防炎等
の特性が各種建材に対して要求されている現在、障子紙
の中にも防炎性能を有するものがいくつか提案されてい
る。しかし、満足いく防炎障子紙は未だ見出されていな
いというのが現状である。
【0003】例えば、和紙と塩化ビニル系の難燃性フィ
ルムとを複合して形成した防炎障子紙が知られている
が、これは和紙風合いが損なわれるために見栄えが悪い
という問題があった。
【0004】和紙風合いを残しつつ防炎性能を発揮する
ことができる障子紙としては、防炎薬剤として高分子リ
ン酸アンモンを内添して抄造される防炎障子紙(特開昭
49−14710号公報)が知られている。しかし、原
料に添加される高分子リン酸アンモンのうち半分近くは
定着しないまま廃液となるため、環境汚染の点や資源の
有効利用という点で問題があった。また、使用時のタル
ミやベコツキを抑えるためには桟に張り付けた後に霧吹
きを行う手間が必要であり、施工性が悪いという問題も
あった。
【0005】また、水系の防炎薬剤を障子紙に含浸させ
てなる防炎障子紙も公知である。しかし、こうした防炎
障子紙の中には、例えば有機リン化合物のように金属を
腐食するおそれのある化合物が防炎薬剤として使用され
ているものがあり、桟に用いられている釘等が腐食して
錆が発生するという問題があった。
【0006】その一方で、障子紙の防炎性以外の特性を
改善する試みも続けられている(特開昭51−1021
07号公報、特開昭63−120199号公報、特開昭
54−96107号公報など)。中でも、丈夫で破れに
くい障子紙、即ち破裂強さに優れた障子紙を求める声は
依然として大きく、そうした声に応えて開発された障子
紙としては、30〜70重量%のポリオレフィン系複合
繊維と70〜30重量%の木材パルプを混合してポリオ
レフィン系複合繊維を熱溶解させたタイプのものが知ら
れている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、優れた破裂
強さと防炎性を同時に備えた障子紙を得ようとした場
合、水系の防炎薬剤を含浸させる従来の方法を使って上
述の破裂強さに優れた障子紙に対して防炎性を付与する
ことは困難である。これは、上述の障子紙が疎水性繊維
であるポリオレフィン系複合繊維を多く含有しているこ
とが原因であり、これにより水系の防炎薬剤の浸透が阻
害されてしまうためである。
【0008】この発明は、上記のような従来技術に存在
する問題点に着目してなされたものである。その目的と
するところは、破裂強さと防炎性がともに優れるうえに
錆の発生も抑えることができ、しかも和紙の風合い等、
従来の障子紙の長所を損なうおそれも少ない防炎障子紙
及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1に記載の発明の防炎障子紙は、親水性合
成繊維と植物繊維と無機繊維とを主成分とする原料から
る原紙に防炎薬剤とバインダーとを含有してなる防炎
障子紙であって前記防炎薬剤リン・窒素系化合物
あり、前記防炎薬剤を原紙に定着させるためのバインダ
ーはブロム含有ポリエーテル系ウレタン樹脂であること
を要旨とする。
【0010】請求項2に記載の発明の防炎障子紙は、請
求項1に記載の発明において、前記親水性合成繊維は、
繊度1.14〜5.7デシテックス、平均繊維長さ3〜
15mmのビニロン繊維と、平均繊維長さ3〜10mm
のポリビニルアルコール繊維であり、同ビニロン繊維と
ポリビニルアルコール繊維との合計量を、原料中の繊維
成分の総量に対して10〜50重量%含有するととも
に、坪量が40〜100g/m2であることを要旨とす
る。
【0011】請求項3に記載の発明の防炎障子紙は、請
求項1又は請求項2に記載の発明において、前記無機繊
維は、繊維径7μm以下、平均繊維長さ10mm以下の
ガラス繊維であり、同ガラス繊維を、原料中の繊維成分
の総量に対して2〜20重量%含有することを要旨とす
る。
【0012】請求項4に記載の発明の防炎障子紙は、請
求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明におい
て、前記防炎薬剤を5〜25g/m2含有することを要
旨とする。
【0013】請求項5に記載の発明の防炎障子紙の製造
方法は、親水性合成繊維と植物繊維と無機繊維とを主成
分とする原料からなる原紙に対して、防炎薬剤としてリ
ン・窒素系化合物と、同防炎薬剤を原紙に定着させるた
めのバインダーとしてブロム含有ポリエーテル系ウレタ
ン樹脂を含浸させることを要旨とする。
【0014】請求項6に記載の発明の防炎障子紙の製造
方法は、請求項5に記載の発明において、前記原紙に対
して、さらに疎水化して糊の滲みを防止するためのサイ
ズ剤を含浸させることを要旨とする。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態につい
て詳細に説明する。実施形態の防炎障子紙は、親水性合
成繊維と植物繊維と無機繊維とを主成分とする原料から
なる原紙に対して、防炎薬剤とバインダーとサイズ剤と
を含浸させたものである。
【0016】原紙の原料を構成する親水性合成繊維とし
ては、ビニロン繊維、ポリビニルアルコール繊維、レー
ヨン繊維等が挙げられ、これらの中から選ばれる少なく
とも一種が使用される。その中でも、ビニロン繊維とポ
リビニルアルコール繊維を組み合わせて用いるのが好ま
しい。
【0017】親水性合成繊維の繊度は、好ましくは1.
14〜5.7デシテックス、より好ましくは1.14〜
3.42デシテックスである。繊度が1.14デシテッ
クス未満では、抄紙時に結束繊維が発生するおそれがあ
る。逆に、5.7デシテックスを超えると仕上がりが硬
くなり、施工性が悪くなる場合がある。また、平均繊維
長さは、好ましくは3〜15mm、より好ましくは5〜
12mmである。平均繊維長さが3mm未満では、得ら
れる防炎障子紙の引裂強さが低下するおそれがあるため
好ましくない。逆に、15mmを超えると、繊維分散性
が低下して均一な原紙ができないおそれがある。
【0018】親水性合成繊維は、原料中の繊維成分の総
量に対して好ましくは10〜50重量%、より好ましく
は15〜40重量%含有される。この含有量が10重量
%未満では、防炎障子紙の引裂強さが低下するおそれが
ある。逆に、50重量%を超えると、防炎障子紙の通気
性が極端に悪くなるため好ましくない。
【0019】植物繊維としては、木材から製造されるパ
ルプと、マニラ麻、亜麻、黄麻、サイザル麻、ケナフ、
雁皮、楮、バナナ繊維、三椏等の木材以外の植物から製
造されるパルプが挙げられ、これらの中から選ばれる少
なくとも一種が使用される。
【0020】無機繊維としては、ガラス繊維(ガラスウ
ールも含まれる)、セラミックス繊維、ロックファイバ
ー等が挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも一
種が使用される。その中でも、ガラス繊維を単独で用い
るのが好ましい。
【0021】無機繊維の繊維径は、好ましくは7μm以
下、より好ましくは0.3〜6μmである。繊維径が7
μmを超えると、防炎障子紙の表面に無機繊維が突出し
やすく、桟に張り付けるとき等に手を刺激するおそれが
ある。また、平均繊維長さは、好ましくは10mm以
下、より好ましくは3〜7mmである。平均繊維長さが
10mmを超えると、繊維分散性が低下するため好まし
くない。
【0022】無機繊維は、原料中の繊維成分の総量に対
して好ましくは2〜20重量%、より好ましくは2〜1
0重量%含有される。この含有量が2重量%未満では、
防炎障子紙の湿潤寸法安定性が低下して湿潤時にタルミ
を生じるおそれがある。逆に、20重量%を超えると、
防炎障子紙の強度がやや低下する場合がある。
【0023】また、原紙の原料に対して、上記の親水性
合成繊維と植物繊維と無機繊維のほかに、その他の繊維
物質や非繊維物質を加えてもよい。例えば耐水性を向上
させるためにポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂やカ
ルボキシメチルセルロース等を添加してもよい。
【0024】原紙に含浸される防炎薬剤としては、リン
・窒素系化合物を主体とする防炎薬剤であるリン・窒素
系の防炎薬剤が使用される。リン・窒素系化合物とはリ
ン原子と窒素原子とを含む化合物であり、具体的にはリ
ン酸グアニジン、ポリリン酸アンモン、リン酸1アンモ
ニウム、リン酸2アンモニウム、アルキルポリリン酸カ
ルバメート、アルキル酸性リン酸エステル等が挙げら
れ、これらの中から選ばれる少なくとも一種が使用され
る。
【0025】防炎薬剤は、未加工の原紙1m2当たりに
好ましくは5〜25g、より好ましくは10〜25g含
浸される。即ち、防炎障子紙は1m2当たりに好ましく
は5〜25g、より好ましくは10〜25gの防炎薬剤
を含有している。この含有量が5g/m2未満では加熱
したときに炭化面積が増えるため好ましくない。逆に、
25g/m2を超えると、吸湿性が高くなってタルミが
生じやすくなるため好ましくない。
【0026】防炎薬剤を原紙に定着させるためのバイン
ダーとしては、ウレタン樹脂、塩化ビニル系ラテック
ス、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴ
ム、アクリル酸エステル系等のバインダーが挙げられ
る。その中でも耐光性、防炎性を向上させることができ
る点でブロム含有ポリエーテル系ウレタン樹脂が好まし
い。バインダーとしてブロム含有ポリエーテル系ウレタ
ン樹脂を用いた防炎障子紙は、後述する耐光性試験(紫
外線カーボンアーク灯光照射1200時間)において、
残存強度が大きく、さらには黄変も認められない。
【0027】バインダーは、防炎障子紙1m2当たりに
好ましくは3〜15g、より好ましくは3〜10g含有
される。この含有量が3g/m2未満では原紙に対する
防炎薬剤の定着性が不充分となるおそれがある。逆に、
15g/m2を超えると、風合いが硬くなるため好まし
くない。
【0028】防炎障子紙を疎水化して糊の滲みを防止す
るためのサイズ剤としては、フッ素系、ワックス系、シ
リコン系又はスチレン系のサイズ剤、アルキルケテンダ
イマー等が挙げられ、その中でも、フッ素系サイズ剤が
好ましい。
【0029】サイズ剤は、防炎障子紙1m2当たりに好
ましくは0.05〜2g、より好ましくは0.05〜
1.0g含有される。この含有量が0.05g/m2
満では疎水化を充分に図ることができない場合がある。
逆に、2g/m2を超えると、桟に張り付けるときに充
分な接着力を得られないおそれがある。
【0030】実施形態の防炎障子紙の坪量は、好ましく
は40〜100g/m2、より好ましくは50〜80g
/m2である。坪量が40g/m2未満では透明性が強く
なり桟の影が目立つため好ましくない。逆に、100g
/m2を超えると、光の透過性が悪くなって部屋が暗く
なるため好ましくない。
【0031】また、原紙は、縦方向と横方向の強度(引
張強さ)の比が好ましくは1:1〜3:1、より好まし
くは1:1〜2:1となるように抄紙される。この比が
上記の範囲外であると、張り替えなどで障子紙を桟から
引き剥がすときに、障子紙が縦裂けしやすく、また障子
紙の一部が桟に残りやすいので好ましくない。
【0032】次に、実施形態の防炎障子紙の製造方法に
ついて説明する。防炎障子紙を製造する場合には、まず
植物繊維に水を加えてビーター等の叩解機で叩解した
後、そこに親水性合成繊維と無機繊維を加えて叩解機で
混合し、さらに、必要に応じてその他の繊維物質や非繊
維物質を加えて混合して紙料を調製する。そして、円網
抄紙機、円網型サクションフォーマー、傾斜フォーマ
ー、短網抄紙機、長網抄紙機等の抄紙機を単独で用い
て、あるいは併用して紙料を抄紙し、原紙を形成する。
【0033】続いて、防炎薬剤とバインダーとサイズ剤
とを含む混合液を原紙に塗布又は撒布し、あるいは同混
合液に原紙を浸漬し、その後乾燥、キュアリングする。
すると、原紙に防炎薬剤とバインダーとサイズ剤とが含
浸されてなる実施形態の防炎障子紙が得られる。
【0034】以上のように、この実施形態によれば次の
ような効果が発揮される。 ・ 実施形態の防炎障子紙は、親水性合成繊維と植物繊
維と無機繊維とを主成分とする原料からなり、防炎薬剤
としてリン・窒素系化合物を含有している。このため、
従来の障子紙に比べて破裂強さに優れるうえ、優れた防
炎性も発揮することができる。
【0035】・ 金属を腐食するおそれのある有機リン
化合物を防炎薬剤として用いていないため、錆の発生を
抑えることができる。 ・ 実施形態の防炎障子紙は、防炎薬剤を5〜25g/
2、バインダーを3〜15g/m2、サイズ剤を0.0
5〜2g/m2含有している。このため、JISS 3102に準
拠して測定される透気度は15〜100秒であり、5秒
以下のものが大半である一般の障子紙に比べて大きい。
従って、実施形態の防炎障子紙は、保温性、断熱性の高
い障子紙といえる。
【0036】加えて、実施形態の防炎障子紙は汚れにく
い障子紙でもある。障子紙の汚れの原因は、エア・フィ
ルター効果によって空気中の微塵を障子紙が吸着してし
まうことにあるため、通気性の低い障子紙はエア・フィ
ルター効果が弱く、その結果汚れにくい。
【0037】さらには、透気度が500秒を超えると、
障子を開閉するときに音の反響が起きて、いわゆる「太
鼓音」が発生するが、本実施形態ではそのおそれがな
い。 ・ 実施形態の防炎障子紙は、親水性合成繊維を含むこ
とにより引裂強さを向上させることができる。このこと
は、針葉樹晒クラフトパルプ(N−BKP)とビニロン
繊維とからなる紙について、両者の配合割合と比引裂強
さとの関係について調べた表1の結果より明らかであ
る。このため、張り替えなどで障子紙を桟から引き剥が
す場合、引裂強さが小さいと裂けやすく、また障子紙の
一部が桟に残るおそれがあるが、本発明の防炎障子紙は
そのおそれがない。従って、張り替え時の施工性を向上
させることができる。さらに、原紙の縦方向と横方向の
強度の比を1:1〜3:1とすることによって障子紙が
縦裂けするのを防ぐことができるので、張り替え時の施
工性を一層向上させることができる。
【0038】
【表1】 ・ 親水性合成繊維を含まない障子紙は洋紙風合いとな
り見栄えが悪いが、実施形態の防炎障子紙は親水性合成
繊維を含むことにより和紙風合いを有し、見栄えを向上
させることができる。
【0039】・ 防炎薬剤はバインダーによって原紙に
定着されるため、防炎薬剤が原紙の表面に析出する等し
て防炎障子紙の防炎性が低下するのを防ぐことができ
る。 ・ 実施形態の防炎障子紙は無機繊維を含むので、湿潤
時の寸法安定性が高い。従って、水系の防炎薬剤で処理
しても非常に幅方向の収縮が少なく、桟に張り付けた後
でも温湿度変化に対して伸縮が非常に少ないので、タル
ミ、ベコツキのおそれも少ない。
【0040】・ 実施形態の防炎障子紙は無機繊維を含
むうえに、防炎薬剤とバインダーが添加され、さらには
サイズ剤も添加されている。このため、湿潤状態でも強
い腰があり、桟に張り付けた直後の糊で濡れた状態のと
きでも容易にカットすることができる。従って、張り替
え時の施工性を向上させることができる。
【0041】
【実施例】次に、実施例及び比較例を挙げ、前記実施形
態をさらに具体的に説明する。なお、各例における防炎
性、寸法安定性、防錆性及び耐光性の評価は以下の方法
に従って行った。
【0042】(1)防炎性の評価 消防法の防火性能試験方法(45°ミクロバーナー法)
に準拠して1分間の加熱を行い、残炎時間、残じん時
間、炭化面積を測定した。消防庁告示第11号(昭和4
8年6月1日)に基づいて、残炎時間が3秒以下、残じ
ん時間が5秒以下、炭化面積が26cm2以下、以上全
てを満たす場合は○、炭化面積が26〜30cm2の場
合は△、炭化面積が30cm2以上の場合は×と評価し
た。
【0043】(2)寸法安定性の評価 水に充分浸漬させてから110℃で5分間加熱乾燥した
後、収縮率を測定した。縦方向及び横方向の収縮率が1
%以下の場合は○、1%を超える場合は×と評価した。
【0044】(3)防錆性の評価 溶剤(キシレン)で洗浄した鉄製のクリップを取付けて
常温で一ヶ月間放置した。目視で錆が認められない場合
には○、錆が認められる場合には×と評価した。
【0045】(4)耐光性の評価 紫外線カーボンアークフェードメーターを用いてブラッ
クパネル温度63±3℃の条件でカーボンアーク灯光照
射を行った。所定時間毎に破裂強さ(JIS P 8112)を測
定するとともに、その値と初期値(初期強度)とを比較
して残存強度を百分率で求めた。光照射1200時間後
の破裂強さの値が150kPa以上であり、かつ残存強
度が55%以上である場合は○、光照射1200時間後
の破裂強さの値が150kPa未満(1200時間以前
に150kPaを下回った場合)、又は残存強度が55
%未満の場合は×と評価した。
【0046】(実施例1)まず、木材パルプ(N−BK
P)に水を加えてビーターでSR18度に叩解した。そ
こに繊度が1.14デシテックスで平均繊維長さが5m
mのビニロン繊維(商品名VPB103、株式会社クラ
レ製)と、繊度が1.14デシテックスで平均繊維長さ
が4mmのポリビニルアルコール繊維(商品名VPB1
05−1、株式会社クラレ製)と、繊維径が6μmで平
均繊維長さが6mmのガラス繊維を加えてビータで混合
した。次いで、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂
(商品名WS−525、株式会社日本PMC製)とカル
ボキシメチルセルロース(商品名SGセロゲンWSC、
第一工業製薬株式会社)を加え、さらに剥離剤(商品名
メイカテックスPEC−10、明成化学工業株式会社
製)を加えて混合して紙料を調製した。そして、縦方向
と横方向の強度の比が1:1〜2:1となるようにサク
ションフォマーを使って紙料を抄紙して坪量53g/m
2の原紙を得た。
【0047】なお、剥離剤は、ポリビニルアルコール繊
維によって原紙がヤンキードライヤーに接着しやすくな
るため、その接着を防ぐために加えられる。続いて、リ
ン・窒素系の防炎薬剤(商品名ノンネン600、丸菱油
化工業株式会社製)とアクリル酸エステル系のバインダ
ー(商品名ポリゾールOLY−1512−3、昭和高分
子株式会社製)とフッ素系のサイズ剤(商品名アサヒガ
ードAG−550、旭硝子株式会社製)とを混合し、水
で希釈して混合液を調製した。そして、ロールコータを
使って原紙に混合液を塗布し、120〜140℃の温度
で乾燥、さらにキュアリングして坪量70g/m2の防
炎障子紙を得た。このとき、防炎障子紙には防炎薬剤が
12.7g/m2、バインダーが4.2g/m2、サイズ
剤が0.09g/m2含まれていた。
【0048】なお、前記混合液を塗布した後の原紙の乾
燥、キュアリングは、フローティングドライヤー又はド
ラムドライヤーを用いて、あるいはそれらの両方を用い
て行われるが、その中でもドラムドライヤーを用いて行
うのが好ましい。なぜなら、ドラムドライヤーを用いる
場合には、ドラムに張り付けられた状態で処理がなされ
るのでほとんど縮みがなく、このため、その後吸湿した
ときにもタルミを生じるおそれがないからである。一
方、フローティングドライヤーの場合には、乾燥時に若
干の縮みが生じるため、その後吸湿したときに若干のタ
ルミを生じるおそれがある。
【0049】この防炎障子紙の防炎性、寸法安定性、防
錆性について上述した方法で評価した結果を表2に示
す。原紙の原料として用いられる親水性合成繊維と植物
繊維と無機繊維それぞれの配合量と、使用した防炎薬剤
とバインダーとサイズ剤の種類についても合わせて表2
に示す。なお、表2中のPVAはポリビニルアルコール
繊維を、GFはガラス繊維を表す。
【0050】また、上述した方法で耐光性について評価
した結果を表3に示す。なお、表3には、光照射前と光
照射開始後200時間毎に1200時間後まで測定した
破裂強さの値[kPa]と、そのときの残存強度[%]
の値も合わせて示す。
【0051】(実施例2〜5、比較例1〜4)原紙の原
料として用いられる親水性合成繊維と植物繊維と無機繊
維の種類とそれぞれの配合量、並びに使用する防炎薬剤
とバインダーとサイズ剤の種類について、それぞれ表2
に示す変更を加えた以外は実施例1と同様に操作を行
い、障子紙を製造した。各例で得られた障子紙を実施例
1と同様に評価した結果を表2及び表3に示す。ただ
し、比較例1,2,4では耐光性の評価を行わなかっ
た。
【0052】なお、表2中において、グアニジン系の防
炎薬剤とは日華化学株式会社製の商品名ニッカファイノ
ン900であり、リン系の防炎薬剤とは明成化学工業株
式会社製の商品名ホスコンFR−30Cである。また、
PVC(塩化ビニル系ラテックス)系のバインダーとは
日本ゼオン株式会社製の商品名Genon576であり、ウ
レタン樹脂系(ブロム含有ポリエーテル系ウレタン樹脂
系)のバインダーとは明成化学工業株式会社製の商品名
パスコールNF30である。
【0053】(比較例5)比較例5の障子紙は、40重
量%のポリオレフィン系複合繊維と60重量%の木材パ
ルプとを混合してポリオレフィン系複合繊維を熱溶解さ
せることにより得た。この障子紙は、破裂強さに優れた
障子紙を求める声に応えて開発された高強度の障子紙で
あるが、上述したように疎水性であるために防炎性を付
与することは困難である。この障子紙の耐光性について
上述の方法で評価した結果を表3に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】 表2及び表3に示すように、実施例1〜5では、初期強
度(破裂強さ)がいずれも250kPa以上と一般の障
子紙(98kPa程度)に比べて優れるうえに、防炎
性、寸法安定性、防錆性のいずれもが良好であることが
示された。その一方、比較例1〜5では、防炎性、寸法
安定性、防錆性のいずれかが不良であった。
【0056】また、実施例1,2と実施例4,5を比較
すると、優れた破裂強さを長期間持続的に発揮させるた
めには、アクリル酸エステル系のバインダーよりもウレ
タン樹脂系のバインダーの方が適することが示された。
実施例4,5の防炎障子紙は、1200時間のカーボン
アーク灯光照射の後でも150kPa以上と一般の障子
紙を超える破裂強さを有し、比較例5の高強度障子紙と
同等の耐光性を示した。カーボンアーク灯光照射を12
00時間行った防炎障子紙は、通常の使用条件で約四年
間使用した防炎障子紙に相当すると考えられるため、実
施例4,5の防炎障子紙は三年以上の実用に耐えること
が可能であると推測される。
【0057】
【発明の効果】この発明は、以上のように構成されてい
るため、次のような効果を奏する。請求項1に記載の発
明の防炎障子紙によれば、破裂強さと防炎性がともに優
れるうえに錆の発生も抑えることができ、しかも和紙の
風合い等、従来の障子紙の長所を損なうおそれも少な
い。
【0058】請求項2から請求項4に記載の発明の防炎
障子紙によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、
従来の障子紙が有する、和紙の風合い等の長所を損なう
おそれをさらに少なくすることができる。
【0059】請求項5に記載の発明の防炎障子紙の製造
方法によれば、上記のように優れた特性を有する防炎障
子紙を効率よく製造することができるうえに、バインダ
ーによって防炎薬剤を原紙に定着させることができるの
で防炎性の低下を抑えることができる。
【0060】請求項6に記載の発明の防炎障子紙の製造
方法によれば、請求項5に記載の発明の効果に加え、サ
イズ剤によって疎水化されるので防炎障子紙が湿潤時に
腰がなくなるおそれが少ない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−120199(JP,A) 特開 昭49−14710(JP,A) 特開 昭57−202368(JP,A) 特開 昭53−119312(JP,A) 特開 昭60−224900(JP,A) 特開 平10−25696(JP,A) 特開 平1−66289(JP,A) 特開 平10−60447(JP,A) 特開 昭54−101909(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D21H 11/00 - 27/42

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 親水性合成繊維と植物繊維と無機繊維と
    を主成分とする原料からなる原紙に防炎薬剤とバインダ
    ーとを含有してなる防炎障子紙であって前記防炎薬剤
    リン・窒素系化合物であり、前記防炎薬剤を原紙に定
    着させるためのバインダーはブロム含有ポリエーテル系
    ウレタン樹脂であることを特徴とする防炎障子紙。
  2. 【請求項2】 前記親水性合成繊維は、繊度1.14〜
    5.7デシテックス、平均繊維長さ3〜15mmのビニ
    ロン繊維と、平均繊維長さ3〜10mmのポリビニルア
    ルコール繊維であり、同ビニロン繊維とポリビニルアル
    コール繊維との合計量を、原料中の繊維成分の総量に対
    て10〜50重量%含有するとともに、坪量が40〜
    100g/m2であることを特徴とする請求項1に記載
    の防炎障子紙。
  3. 【請求項3】 前記無機繊維は、繊維径7μm以下、平
    均繊維長さ10mm以下のガラス繊維であり、同ガラス
    繊維を、原料中の繊維成分の総量に対して2〜20重量
    %含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記
    載の防炎障子紙。
  4. 【請求項4】 前記防炎薬剤を5〜25g/m2含有す
    ることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一
    項に記載の防炎障子紙。
  5. 【請求項5】 親水性合成繊維と植物繊維と無機繊維と
    を主成分とする原料からなる原紙に対して、防炎薬剤と
    してリン・窒素系化合物と、同防炎薬剤を原紙に定着さ
    せるためのバインダーとしてブロム含有ポリエーテル系
    ウレタン樹脂を含浸させることを特徴とする防炎障子紙
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記原紙に対して、さらに疎水化して糊
    の滲みを防止するためのサイズ剤を含浸させることを特
    徴とする請求項5に記載の防炎障子紙の製造方法。
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