JP3444358B2 - ゆで卵の製造方法 - Google Patents

ゆで卵の製造方法

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JP3444358B2 JP2001132304A JP2001132304A JP3444358B2 JP 3444358 B2 JP3444358 B2 JP 3444358B2 JP 2001132304 A JP2001132304 A JP 2001132304A JP 2001132304 A JP2001132304 A JP 2001132304A JP 3444358 B2 JP3444358 B2 JP 3444358B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工業的に有利なゆ
で卵の製造方法であって、凝固卵白を傷つけずに卵殻を
剥くことができ且つ凝固卵黄の硫化黒変が抑制されたゆ
で卵を与える製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】殻付卵を加熱処理してゆで卵を製造する
際に、卵白のpH値が比較的低い(例えばpH=8.3
前後)新鮮な殻付卵を使用した場合には、卵黄に硫化黒
変が生じないが、卵殻が剥きにくく、凝固卵白を傷つけ
る可能性が高いことが知られている。逆に、相対的に卵
白のpH値が高く(例えばpH=9.5前後)、鮮度の
悪い殻付卵を使用した場合には、卵殻は剥き易いが、硫
化黒変が生じることが知られている。従って、新し過ぎ
ず且つ古過ぎない殻付卵を使用することで、卵殻の剥き
易さと硫化黒変の抑制とのバランスが取れることにな
る。
【0003】ところで、工業的にゆで卵を大量に製造す
る場合、養鶏業者あるいは鶏卵問屋を通して納品された
殻付卵を単純にゆで卵生産ライン上で加熱処理すると、
卵殻の剥き易さや硫化黒変の発生の度合いにバラツキが
生じ、ゆで卵の歩留まりが低下するおそれが高い。これ
は、殻付卵が産卵されてからゆで卵生産ラインに投入さ
れるまでに経過した時間がすべての殻付卵で一定という
わけではなく、鮮度も異なり、しかも殻付卵が置かれた
環境条件(例えば、温度)も異なり、結果的に加熱処理
すべき殻付卵の生卵白のpH値にバラツキが生じるため
である。
【0004】このため、ゆで卵製造工場では、履歴(鮮
度や保管条件)の類似した殻付卵(例えば、同じ時期に
同じ養鶏場で産卵された殻付卵)を集めて保管庫に保管
し、その中から経時的に殻付卵をサンプリングして実際
にゆで卵を製造し、卵殻の剥き易さと硫化黒変の程度と
を確認した上で、保管した全体の殻付卵の加熱処理のタ
イミングを計っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たように、殻付卵の加熱処理のタイミングを計った場
合、加熱処理までに何回も試験的にゆで卵を製造すると
いう煩雑な試験操作が必要である上に、サンプリングし
た殻付卵が保管したすべての殻付卵を代表するものでな
い場合がある。このため、上述したようにタイミングを
計ったとしても、卵殻の剥き易さと硫化黒変の抑制との
バランスが十分に取れず、ゆで卵の歩留まりが十分に向
上せず、品位(硫化黒変の程度)にバラツキが生ずると
いう問題がある。
【0006】本発明は、以上の従来技術の問題を解決し
ようとするものであり、保管した殻付卵に履歴(鮮度や
保管条件)の異なる殻付卵が混ざっていた場合であって
も、保管した全体の殻付卵の卵白のpH値をゆで卵の製
造に適した範囲内に揃え、更にその範囲内に保持するこ
とにより、加熱処理のタイミングを気にすることなく、
ゆで卵を製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、生卵白の
pH値が所定範囲内に収まっている殻付卵を加熱処理す
ると、凝固卵白を傷つけずに容易に殻剥きでき且つ硫化
黒変の抑制されたゆで卵が得られること、そして、特定
濃度の二酸化炭素を含有する雰囲気中に殻付卵を保管す
ると、殻付卵の生卵白のpH値がそのような所定範囲に
収束し、且つその範囲に保持されることを見出し、本発
明を完成させるに至った。
【0008】即ち、殻付卵を0.05容量%以上0.6
容量%未満の二酸化炭素を含有する雰囲気中に保管する
ことにより、該殻付卵の生卵白の平衡pH値を8.80
〜9.15の範囲に収束させ、次いで該殻付卵を加熱凝
固処理することによりゆで卵を得ることを特徴とするゆ
で卵の製造方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】本発明のゆで卵の製造方法は、以下の工程
(a)及びそれに続く工程(b)の二つの工程により特
徴づけられる。
【0011】工程(a) まず、殻付卵、好ましくは鶏卵を0.05容量%以上
0.6容量%未満、より好ましくは0.08容量%以上
0.2容量%以下の二酸化炭素を含有する雰囲気中に保
管することにより、殻付卵の生卵白の平衡pH値を8.
80〜9.15の範囲に収束させる。
【0012】即ち、殻付卵が新鮮である場合には、保管
前の殻付卵の生卵白のpH値は8.3程度であるが、本
工程によりpH値が8.80〜9.15の範囲の平衡p
H値まで上昇する。一方、殻付卵が古い場合には、保管
前の殻付卵の生卵白のpH値が9.5程度であるが、本
工程によりpH値が8.80〜9.15の範囲の平衡p
H値まで下降する。従って、本工程を経ることにより、
履歴(鮮度、保管条件)の異なる殻付卵を同一のバッチ
で処理することが可能となり、原料卵の管理が容易とな
る。
【0013】この工程において、雰囲気中の二酸化炭素
濃度を0.05容量%以上0.6容量%未満とする理由
は、0.05容量%未満となると、殻付卵の生卵白の平
衡pH値が9.15を超え、硫化黒変の問題が生ずるか
らであり、また、0.6容量%以上となると、殻付卵の
生卵白の平衡pH値が8.8を下回り、殻剥きが困難と
なり、凝固卵白の表面に傷が発生するからである。な
お、この工程における雰囲気の二酸化炭素以外の気体と
しては、大気を好ましく挙げることができるが、窒素ガ
ス単体等でもよい。
【0014】また、殻付卵の生卵白の平衡pH値と保管
温度及び保管日数との間には、保管温度が高いほど卵殻
を通しての二酸化炭素の放出が速く、速やかに生卵白の
pH値は上昇し、短い日数(1又は2日)で平衡pH値
に達するという関係がある。例えば、40℃で二酸化炭
素0.4容量%の雰囲気中で保管した殻付卵の場合、そ
の生卵白が平衡pH値に収束するのに1〜2日で足りる
が、5℃で二酸化炭素0.08容量%の雰囲気中で保管
した殻付卵の場合、その生卵白が平衡pH値に収束する
のに4〜5日必要となる。
【0015】従って、卵白や卵黄に対して食用に適さな
いような変化(蛋白の変性等)を生じさせない範囲で、
保管温度をできるだけ高く、例えば40℃に設定するこ
とが、保管日数の短縮化に有利となると考えられる。し
かし、保管温度が高くなると、卵黄係数や卵白のハウ・
ユニットで表される鮮度の低下や卵黄の片寄りが生じる
傾向があるので、保管温度を好ましくは25℃以下、よ
り好ましくは20℃以下とする。
【0016】一方、保管温度が低すぎると、卵殻を通し
ての二酸化炭素の放出速度が著しく遅くなり、平衡pH
値に達するに必要な保管日数が長くなるので、5℃以上
とすることが好ましい。
【0017】従って、殻付卵の保管条件としては、0.
05容量%以上0.6容量%未満の二酸化炭素濃度、5
〜25℃の保管温度、そして2日以上〜5日以内の保管
日数とすることが好ましい。
【0018】なお、短期間で殻付卵の生卵白のpH値を
最適範囲に収束させる場合には、保管温度を、例えば3
0℃〜45℃と高めに設定してもよいが、鮮度低下を極
力避けるために、保管日数を2日未満とすることが望ま
しい。
【0019】更に、ゆで卵の殻剥きが容易であり、しか
も硫化黒変が抑制されたゆで卵が得られる保管条件にお
いて、殻付卵の保管温度に対する二酸化炭素濃度をグラ
フにプロットし、得られたグラフから最小二乗法に従っ
て求めた関係式は、殻付卵の保管条件を示すものとな
る。
【0020】即ち、殻付卵の保管時における保管温度を
X(℃)とし、二酸化炭素濃度をY(容量%)とした場
合に、X(℃)が5℃≦X≦15℃であるときには以下
の式(1)
【0021】
【数3】 0.05≦Y≦0.006X+0.11 (1) を満足するように殻付卵を保管することが好ましい。Y
が0.05容量%以下となると、既に説明したように硫
化黒変の問題が生じ、(0.006X+0.11)容量
%を超えると卵殻の殻剥きが困難となる傾向がある。
【0022】また、Xが15℃<X≦40℃であるとき
には以下の式(2)
【0023】
【数4】 0.008X−0.08≦Y≦0.017X−0.03 (2) を満足するように殻付卵を保管することが好ましい。Y
が(0.008X−0.08)容量%以下となると、硫
化黒変の問題が生じ、(0.017X−0.03)容量
%を超えると卵殻の殻剥きが困難となる傾向がある。
【0024】工程(b) 工程(a)で得られた、生卵白の平衡pH値が8.80
〜9.15の範囲に収束した殻付卵を、加熱凝固処理す
ることによりゆで卵を得る。
【0025】加熱凝固処理の方法としては、従来より公
知の手法を採用することができる。例えば、殻付卵を冷
水から加熱する方法、95〜100℃の湯中に投入し加
熱する方法、加圧蒸気で過熱する方法等により加熱凝固
処理することができる。
【0026】得られたゆで卵は、凝固卵白を傷つけるこ
となく卵殻を容易に殻剥きでき、しかも硫化黒変が非常
に抑制されたものである。
【0027】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。
【0028】なお、以下の実施例において使用した殻付
卵(鶏卵)の鮮度は、以下の表1の経験的な指標により
判断した。
【0029】
【表1】
【0030】実施例1 MSサイズの鮮度のよい殻付卵(鶏卵)群(生卵白のp
H=8.31)240個と鮮度の劣る殻付卵(鶏卵)群
(生卵白のpH=9.18)240個とを、プラスチッ
クトレーに詰め、それらを、二酸化炭素濃度が0.13
容量%の雰囲気を有し、保管温度が15℃に調整された
広さ約5mの保管庫内に4日間保管した。保管後に、
鮮度のよい殻付卵群及び鮮度の劣る殻付卵群のそれぞれ
から5個取り出し、生卵白のpH値を測定したところ、
いずれも平衡pH値が8.95〜9.05の範囲に収束
していた。
【0031】なお、生卵白のpH値は、殻付卵を割卵
後、内容物(生卵黄と生卵白)を卵黄膜が破れないよう
に100mlのビーカーに入れ、pHメータの電極を生
卵白部に接触させ、冷水又はぬるま湯にビーカーを浸
し、生卵白の温度が20〜25℃になった時に測定し
た。なお、pH値は、2台のpHメータ(MP225,
メトラー社; D−12,YOKOGAWA社製)を用
いて測定した値の平均値である。
【0032】次に、4日間保管した殻付卵を、95℃の
湯中で15分間加熱し、流水中で5分間冷却し、ゆで卵
を得た。得られたゆで卵の卵殻を剥いたところ、凝固卵
白に傷を付けずに卵殻を剥き取ることができた。
【0033】また、ゆで卵の卵黄表面の硫化黒変の最も
起こりやすい時点、即ち茹でてから24時間後のゆで卵
の硫化黒変を調べた。具体的には、殻剥きしたゆで卵
を、直ちにポリ袋に入れ、密封して5℃で24時間保管
した後、卵黄の表面を目視観察した。その結果、硫化黒
変が認められなかった。
【0034】実施例2 本実施例は、種々の保管条件においても殻付卵の生卵白
のpH値が所定のpH範囲に収束することを示す例であ
る。表2〜表4及び図1〜図3の結果から、所定の二酸
化炭素濃度雰囲気中で保管された殻付卵の生卵白のpH
値は一定の範囲に収束したことが確認できた。
【0035】(2−1)鮮度のよい殻付卵(鶏卵)群
(生卵白のpH=8.22)と鮮度の悪い殻付卵(鶏
卵)群(生卵白のpH=9.26)とを、二酸化炭素濃
度が0.10容量%の雰囲気を有し、保管温度が15℃
に調整された広さ約5mの保管庫内に保管し、一定日
数経過毎に5個ずつ取り出し、それぞれの生卵白のpH
値を測定し、得られた測定データを平均して生卵白pH
値を求めた。併せて、二酸化炭素濃度が0.03容量%
の大気中(15℃)で放置した殻付卵についても同様に
生卵白pH値を求めた。結果を表2及び図1に示す。
【0036】
【表2】 CO 保管日数 (vol%) 鮮度 0 1 2 3 4 5 7 0.10 良い 生卵白pH 8.22 8.70 8.93 8.95 8.97 8.99 8.98 標準偏差 0.04 0.15 0.05 0.03 0.03 0.05 0.04 悪い 生卵白pH 9.26 9.13 9.05 9.05 9.05 9.05 9.04 標準偏差 0.03 0.06 0.04 0.03 0.02 0.04 0.05 0.03 良い 生卵白pH 8.22 8.78 9.03 9.14 9.18 9.22 9.30 標準偏差 0.05 0.09 0.05 0.04 0.05 0.04 0.03 悪い 生卵白pH 9.26 9.31 9.36 9.38 9.33 9.35 9.38 標準偏差 0.07 0.09 0.10 0.05 0.04 0.05 0.04 (n=5)
【0037】(2−2)鮮度のよい殻付卵(鶏卵)群
(生卵白のpH=8.46)と鮮度が標準の殻付卵(鶏
卵)群(生卵白のpH=8.95)とを、二酸化炭素濃
度が0.40容量%の雰囲気を有し、保管温度が40℃
に調整された広さ約5mの保管庫内に保管し、一定日
数経過毎に取り出し、それぞれの生卵白のpH値を測定
し、得られた測定データを平均して生卵白pH値を求め
た。併せて、二酸化炭素濃度が0.03容量%の大気中
(40℃)で放置した殻付卵についても同様に生卵白p
H値を求めた。得られた結果を表3及び図2に示す。
【0038】
【表3】 CO 保管日数 (vol%) 鮮度 0 0.21 1 2 3 4 5 7 0.40 良い 生卵白pH 8.46 8.67 8.94 8.97 8.97 − 9.06 9.06 標準偏差 0.02 0.07 0.04 0.04 0.05 − 0.05 0.02 標準 生卵白pH 8.95 8.96 9.02 9.02 9.06 − 9.04 9.05 標準偏差 0.05 0.05 0.03 0.02 0.02 − 0.02 0.05 0.03 良い 生卵白pH 8.46 8.78 9.25 9.40 − 9.61 − 9.63 標準偏差 0.02 0.03 0.03 0.04 − 0.03 − 0.03 標準 生卵白pH 8.95 9.03 9.37 9.50 − 9.61 − 9.66 標準偏差 0.05 0.12 0.03 0.05 − 0.17 − 0.03 (n=5)
【0039】(2−3)鮮度のよい殻付卵(鶏卵)群
(生卵白のpH=8.48)と鮮度が標準の殻付卵(鶏
卵)群(生卵白のpH=9.13)とを、二酸化炭素濃
度が0.08容量%の雰囲気を有し、保管温度が5℃に
調整された広さ約5mの保管庫内に保管し、一定日数
経過毎に取り出し、それぞれの生卵白のpH値を測定
し、得られた測定データを平均して生卵白pH値を求め
た。併せて、二酸化炭素濃度が0.03容量%の大気中
(5℃)で放置した殻付卵についても同様に生卵白pH
値を求めた。得られた結果を表4及び図3に示す。
【0040】
【表4】 CO 保管日数 (vol%) 鮮度 0 1 2 4 6 0.08 良い 生卵白pH 8.48 8.76 8.90 9.01 8.98 標準偏差 0.06 0.03 0.04 0.03 0.02 標準 生卵白pH 9.13 9.10 9.08 9.06 9.01 標準偏差 0.01 0.02 0.03 0.03 0.02 0.03 標準 生卵白pH 9.13 9.15 9.18 9.13 9.18 標準偏差 0.01 0.02 0.03 0.03 0.03 (n=5)
【0041】実施例3 本実施例は、卵殻の殻剥きと硫化黒変とに対する二酸化
炭素濃度の関係を示す例である。
【0042】まず、生卵白のpH値が8.2〜8.5の
殻付卵(鶏卵)を、表5に示す保管条件(二酸化炭素濃
度、保管温度、保管日数)でそれぞれ100個保管した
後、生卵白のpH値を測定した。得られた結果を表5に
示す。
【0043】次に、保管した殻付卵を、95℃の湯中で
15分間加熱し、流水中で5分間冷却し、ゆで卵を得
た。
【0044】得られたゆで卵の卵殻を自動殻剥き機(特
開平11−146772号公報記載の装置)で剥き、ゆ
で卵表面(凝固卵白)の3×3mmのサイズ以上の大き
さの傷の有無を目視観察し、殻剥きの容易さを評価し
た。全体のゆで卵の85%以上に傷が観察されない場合
を◎と評価し、75〜84%のゆで卵に傷が観察されな
い場合を○と評価し、65〜74%のゆで卵に傷が観察
されない場合を△と評価し、傷が観察されないゆで卵の
割合が64%未満の場合を×と評価した。得られた結果
を表5に示す。
【0045】また、殻剥きしたゆで卵を、ポリ袋に入
れ、密封して5℃で24時間保管した後、卵黄の表面を
目視観察し、すべてのゆで卵に硫化黒変が観察されない
場合を◎と評価し、硫化黒変が観察されたゆで卵の割合
が10%未満の場合を○と評価し、硫化黒変が観察され
たゆで卵の割合が10〜20%未満の場合を△と評価
し、硫化黒変が観察されたゆで卵の割合が20%以上の
場合を×と評価した。得られた結果を表5に示す。
【0046】表5の結果から、二酸化炭素濃度の適正範
囲が0.05容量%〜0.60容量%であることがわか
る。
【0047】
【表5】 CO 保管温度 保管日数 保管後の生卵白 殻剥きの 硫化黒変(Vol%) (℃) のpH値 容易さ 0.04 10 4 9.30 ◎ × 0.05 10 4 9.15 ◎ ○ 0.08 20 3 9.15 ◎ ○ 0.10 20 3 9.10 ◎ ○ 0.20 25 3 9.00 ○ ◎ 0.30 25 3 8.85 ○ ◎ 0.40 40 2 9.00 ○ ◎ 0.50 40 2 8.98 ○ ◎ 0.60 40 2 8.80 ○ ◎0.65 40 2 8.75 △ ◎
【0048】実施例4 本実施例は、式(1)及び(2)の保管条件式を求める
基礎となる例である。
【0049】表6に示す保管条件で殻付卵をそれぞれ1
0個保管した後、生卵白のpH値を測定した。得られた
結果を表6に示す。
【0050】次に、保管した殻付卵を、95℃の湯中で
15分間加熱し、流水中で5分間冷却し、ゆで卵を得
た。得られたゆで卵について、実施例3と同様に、卵殻
の殻剥きの容易さと硫化黒変について評価した。得られ
た結果を表6に示す。
【0051】
【表6】 保管温度 CO(vol%)0.04 0.05 0.09 0.14 0.20 0.50 5℃ 生卵白pH 9.20 9.15 8.94 8.80 8.63 8.38 硫化黒変 △ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ 殻剥き易さ ◎ ◎ ◎ ○ × × 保管温度 CO(vol%)0.06 0.09 0.12 0.17 0.20 0.40 10℃ 生卵白pH 9.15 9.06 8.91 8.80 8.74 8.51 硫化黒変 ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ 殻剥き易さ ◎ ◎ ◎ ○ △ × 保管温度 CO(vol%)0.06 0.10 0.15 0.20 0.27 0.50 15℃ 生卵白pH 9.15 9.05 8.87 8.80 8.74 8.52 硫化黒変 ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ 殻剥き易さ ◎ ◎ ○ ○ △ × 保管温度 CO(vol%)0.06 0.08 0.16 0.22 0.27 0.35 20℃ 生卵白pH 9.25 9.15 8.95 8.86 8.80 8.72 硫化黒変 × ○ ○ ◎ ◎ ◎ 殻剥き易さ ◎ ◎ ◎ ○ ○ △ 保管温度 CO(vol%)0.10 0.12 0.20 0.25 0.34 0.38 25℃ 生卵白pH 9.18 9.15 8.99 8.91 8.80 8.75 硫化黒変 △ ○ ○ ◎ ◎ ◎ 殻剥き易さ ◎ ◎ ◎ ○ ○ △ 保管温度 CO(vol%)0.20 0.26 0.36 0.42 0.60 0.80 40℃ 生卵白pH 9.20 9.15 9.02 8.95 8.80 8.70 硫化黒変 △ ○ ○ ○ ◎ ◎ 殻剥き易さ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ △
【0052】また、表6の結果の中で、保管後の殻付卵
の生卵白のpH値が8.8である場合の二酸化炭素濃度
(容量%)及び9.15(但し10℃の場合9.18、
15℃/20℃の場合9.20)である場合の二酸化炭
素濃度(容量%)に対する保管温度との関係を表7に抜
き出し、更に図4のグラフに示す。
【0053】
【表7】
【0054】図4のグラフから最小二乗法により保管温
度(X℃)と二酸化炭素濃度(Y容量%)との一次関数
を求めると、以下に示す関係式が得られた。
【0055】
【数5】pH=8.80の場合、 5℃≦X≦15℃では、Y=0.0060X+0.11 15<X≦40℃では、Y=0.016X−0.051 pH=9.15の場合、 5℃≦X≦15℃ではY=0.0010X+0047 15<X≦40℃ではY=0.0083X−0.077
【0056】これらの式は、以下に示す式に経験的に近
似することができる。
【0057】
【数6】pH=8.80の場合、 5℃≦X≦15℃では、Y=0.006X+0.11 15<X≦40℃では、Y=0.017X−0.03 pH=9.15の場合、 5℃≦X≦15℃ではY=0.05 15<X≦40℃ではY=0.008X−0.08
【0058】また、表7の結果から、図4におけるpH
=8.8の線とpH=9.15の線とで挟まれた領域の
保管条件で保管されたゆで卵の場合、卵殻の殻剥きが容
易であり且つ硫化黒変の抑制が良好であることから、本
発明のゆで卵の製造方法における保管条件は、且つ二酸
化炭素濃度が0.05容量%〜0.6容量%の範囲であ
って、これらの線に挟まれた領域の保管条件、即ち、保
管温度X(℃)が5℃≦X≦15℃であるときには以下
の式(1)
【0059】
【数7】 0.05≦Y≦0.006X+0.11 (1) を満足するように殻付卵を保管し、保管温度Xが15℃
<X≦40℃であるときには以下の式(2)
【0060】
【数8】 0.008X−0.08≦Y≦0.017X−0.03 (2) を満足するように殻付卵を保管することが望ましいこと
がわかる。
【0061】
【発明の効果】本発明のゆで卵の製造方法によれば、保
管した殻付卵に履歴(鮮度や保管条件)の異なる殻付卵
が混ざっていた場合であっても、保管した全体の殻付卵
の卵白のpH値をゆで卵の製造に適した範囲内に揃え、
更にその範囲内に保持することにより、加熱処理のタイ
ミングを気にすることなく殻付卵のゆで卵を製造するこ
とができる。従って、得られたゆで卵について、凝固卵
白表面に傷をつけることなく容易に卵殻の殻剥きを行う
ことができる。しかも、卵黄の硫化黒変も抑制すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】二酸化炭素濃度0.10容量%の雰囲気中に1
5℃の保管温度で保管した殻付卵について、保管日数と
生卵白のpH値との関係図である。
【図2】二酸化炭素濃度0.40容量%の雰囲気中に4
0℃の保管温度で保管した殻付卵について、保管日数と
生卵白のpH値との関係図である。
【図3】二酸化炭素濃度0.08容量%の雰囲気中に5
℃の保管温度で保管した殻付卵について、保管日数と生
卵白のpH値との関係図である。
【図4】殻付卵の保管の際の保管温度と二酸化炭素濃度
との関係図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭48−98063(JP,A) 特開 昭48−98065(JP,A) 特開 昭52−114051(JP,A) 特開 平6−105647(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/32 A23B 5/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 殻付卵を0.05容量%以上0.6容量
    %未満の二酸化炭素を含有する雰囲気中に保管すること
    により、該殻付卵の生卵白の平衡pH値を8.80〜
    9.15の範囲に収束させ、次いで該殻付卵を加熱凝固
    処理することによりゆで卵を得ることを特徴とするゆで
    卵の製造方法。
  2. 【請求項2】 該殻付卵の保管時における保管温度をX
    (℃)とし、二酸化炭素濃度をY(容量%)とした場合
    に、X(℃)が5℃≦X≦15℃であるときには以下の
    式(1) 【数1】 0.05≦Y≦0.006X+0.11 (1) を満足するように殻付卵を保管し、Xが15℃<X≦4
    0℃であるときには以下の式(2) 【数2】 0.008X−0.08≦Y≦0.017X−0.03 (2) を満足するように殻付卵を保管する請求項1記載の製造
    方法。
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