JP3444214B2 - 逆浸透膜脱塩方法 - Google Patents

逆浸透膜脱塩方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は逆浸透膜(RO膜)
脱塩方法に係り、特に、フッ化物イオンを含有する水
を、処理水の低下を引き起こすことなく高い水回収率の
もとに脱塩処理するRO膜脱塩方法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、市水、井水等の脱塩方法として、
RO膜処理法が広く採用されている。 【0003】このRO膜処理における水回収率(原水
(給水)量に対する透過水の割合)は、RO膜のスケー
ルやスライム汚染を考慮して決定されている。即ち、R
O膜処理は、原水中のスケール生成成分やスライム生成
成分が濃縮されることで膜面にスケールやスライムが付
着し、膜性能が低下することがないような範囲で水回収
率を設定して実施されている。 【0004】このようなRO膜処理で得られる濃縮水
は、スケール生成成分やスライム生成成分が相当に濃縮
され、スケール、スライム汚染を起こし易い水であるた
め、従来においては、RO膜処理の濃縮水は排水として
系外に排出されており、これを再度RO膜処理すること
は行われていない。しかし、このように濃縮水を排水と
して系外に排出するRO膜処理方法では、水回収率を高
めることができないという欠点がある。 【0005】この問題を解決し、RO膜処理の濃縮水を
更にRO膜処理し、これにより水回収率の向上を図る方
法として、原水を第1の逆浸透膜分離装置(以下「RO
膜装置」と称す。)に通水して透過水と濃縮水とに分離
し、第1のRO膜装置の濃縮水に必要に応じて酸を添加
してpH6以下とすると共に、スケール分散剤及びスラ
イム防止剤を添加した後、第2のRO膜装置に通水して
透過水と濃縮水とに分離するRO膜処理方法が提案され
ている(特開平10−202066号公報)。この方法
では、スケール、スライム汚染を起こし易い第1のRO
膜装置の濃縮水をpH6以下としてスケール分散剤及び
スライム防止剤を添加することにより、スケール生成及
びスライム汚染を防止して2段RO膜処理を可能として
いる。ここで、pH6以下に調整することは、スケール
分散剤とスライム防止剤との相乗効果の向上に有効であ
る。このため、この方法では、従来排水として排出して
いたRO膜処理の濃縮水を、第2のRO膜装置で更にR
O膜処理し、その透過水を第1のRO膜装置に通水して
再度RO膜装置することで水回収率を高めることができ
る。 【0006】ところで、RO膜処理におけるpH条件と
RO阻止率(脱塩率)との間には関係があり、RO阻止
率はpH条件に影響を受けることは一般的に知られてい
る。 【0007】一方で、現在提供されているRO膜はかな
り広い範囲で使用可能とされており、従って、pH条件
は膜強度やRO阻止率を考慮して膜の種類及び原水水質
に応じて所定のpH範囲とされるべきであるが、現状で
は、原水水質に基づいてpH調整を行うというよりも、
膜の物理化学的性質に応じてpH調整が行われている。
しかして、一般的には、前記特開平10−202066
号公報における2段RO膜処理(第1のRO膜装置の濃
縮水を第2のRO膜装置に通水し、第2のRO膜装置の
濃縮水を第1のRO膜装置に戻して脱塩処理する方法)
も含めて、第1のRO膜装置に通水される給水は、アル
ミニウム、鉄、シリカ等のスケールの析出やスライムの
生成を抑制して膜を保護するために、酸性条件とされて
いる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】特開平10−2020
66号公報記載の2段RO膜処理において、第1のRO
膜装置の給水を酸性条件とすると、第1のRO膜装置で
得られる濃縮水は酸が更に濃縮されるため、この濃縮水
を更に第2のRO膜装置でRO膜処理する際にはpHが
更に低下して酸性条件が強くなる。 【0009】しかし、本発明者の研究により、第2のR
O膜装置においてこのように酸性条件が強くなると、R
O阻止率が低下し、第2のRO膜装置から得られる透過
水は、水質が非常に劣るものとなること、そして、この
ように水質の劣る第2のRO膜装置での透過水が原水に
混合されることで、第1のRO膜装置の給水の水質が悪
化し、結果的に処理水(第1のRO膜装置の透過水)の
水質も低下することが判明した。 【0010】特に原水中にフッ化イオンが含まれている
場合、とりわけ、フッ化物イオン濃度が1mg/L以上
の原水の場合には、この傾向が大きく、2段RO膜処理
による水質の低下が問題となる。 【0011】本発明は上記従来の問題点を解決し、フッ
化物イオンを含む原水を2段RO膜処理することによ
り、即ち、原水を第1のRO膜装置に通水してその濃縮
水を第2のRO膜装置に通水し、第2のRO膜装置の透
過水を原水と共に第1のRO膜装置に通水して処理する
ことにより水回収率を高めた逆浸透膜脱塩方法におい
て、処理水水質の低下を防止して、良好な水質の処理水
を高い回収率で得る方法を提供することを目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明の逆浸透膜脱塩方
法は、フッ化物イオンを1mg/L以上含有する原水
を、酸性条件下、第1のRO膜装置に通水して脱塩処理
し、該第1のRO膜装置の濃縮水を第2のRO膜装置に
通水して脱塩処理し、該第2のRO膜装置の透過水を第
1のRO膜装置の供給する原水と混合して脱塩処理する
逆浸透膜脱塩方法において、該第1のRO膜装置の濃縮
水をpH5〜7に調整して該第2のRO膜装置に通水す
ることを特徴とする。 【0013】前述の如く、2段RO膜処理において、第
1のRO膜処理を酸性条件下で行った場合、例えば、p
H5の原水を通水した場合、第1のRO膜装置の濃縮水
は酸が濃縮されることによりpH4.3となる。このよ
うにpHが低下した場合、特にフッ化物イオンの阻止率
が悪影響を受け、このため第2のRO膜装置で得られる
透過水はフッ化物イオン濃度が高いものとなる。 【0014】本発明者の研究によれば、このフッ化物イ
オンのRO阻止率とpHとの関係は図2に示す通りであ
った。 【0015】このようにフッ化物イオンの阻止率がpH
の低下に伴って顕著に悪化する理由は、フッ化物イオン
はマイナスイオンの中でも最も分子量が小さく、RO膜
による除去性が他のイオンに比べて悪いためと推定され
る。 【0016】このように第1のRO膜処理を酸性条件下
で行う2段RO膜処理では、第2のRO膜装置におい
て、フッ化物イオンの阻止率が低減することから、第1
のRO膜装置に返送される第2のRO膜装置の透過水
は、原水よりもフッ化物イオン濃度の高いものとなり、
系内でフッ化物イオンの濃縮が行なわれることとなる。
そして、この結果、処理水である第1のRO膜装置の透
過水の水質も低下する。 【0017】本発明では、第1のRO膜装置の濃縮水の
pHを5〜7に調整して第2のRO膜装置に通水するた
め、第2のRO膜装置におけるフッ化物イオン阻止率の
低下が防止される。そして、第2のRO膜装置において
も効率的にフッ化物イオンを除去できるため、フッ化物
イオンの低い第2のRO膜装置の透過水を原水側に返送
することができ、処理水水質を高めることができる。 【0018】 【発明の実施の形態】以下に図面を参照して本発明の実
施の形態を詳細に説明する。 【0019】図1は本発明の逆浸透膜脱塩方法の実施の
形態を示す系統図である。 【0020】原水は後段の第2のRO膜装置2の透過水
と共に、第1のRO膜装置1に供給される。この第1の
RO膜装置1の給水は、スケール析出やスライム生成を
制御するために、必要に応じてHCl、H2SO4等の酸
が添加されて酸性条件、好ましくは、pH4.5〜6.
5に調整される。 【0021】この第1のRO膜装置1の透過水は処理水
として取り出され、濃縮水は第2のRO膜装置2に給水
されるが、本発明においては、この第2のRO膜装置2
に給水される第1のRO膜装置1の濃縮水にNaOH等
のアルカリを添加してpH5〜7に調整する。 【0022】即ち、第1のRO膜装置1におけるRO膜
処理を酸性条件下で行った場合、酸の濃縮により第1の
RO膜装置1の濃縮水のpHは3.8〜6.0程度の酸
性となる。 【0023】本発明では、このような第1のRO膜装置
1の濃縮水にアルカリを添加してpH5〜7に調整した
後第2のRO膜装置2に給水する。この調整pHが5未
満であると、図2のグラフからも明らかなように第2の
RO膜装置2におけるフッ化物イオン阻止率の急激な低
下が生じ、結果として処理水の水質が悪化する。この調
整pHが7を超えると第2のRO膜装置2において、膜
面でのスケール析出の問題が生じる。 【0024】このように、第2のRO膜装置2の給水を
pH5〜7に調整してRO膜処理することにより、第2
のRO膜装置2においても高いフッ化物イオン阻止率で
処理を行うことが可能となり、フッ化物イオン濃度の低
い透過水を得ることができる。 【0025】この第2のRO膜装置2の透過水は、返送
水として原水と共に第1のRO膜装置1に給水される
が、本発明では、この第2のRO膜装置2の透過水のフ
ッ化物イオン濃度が低く、第1のRO膜装置1の給水の
水質を低下させることがないため、第1のRO膜装置1
の透過水として高水質の処理水を得ることができる。 【0026】本発明はフッ化物イオン濃度が1mg/L
以上である原水を対象とするものであるが、このような
原水としては、フッ化物イオン濃度が1〜50ppm或
いはそれ以上の半導体工場の回収水、この回収水と市
水、工水等との混合水等が挙げられる。 【0027】なお、このような原水を処理する場合、各
RO膜装置の水回収率には特に制限はないが、一般的に
は、第1のRO膜装置1の水回収率を70〜90%、第
2のRO膜装置2の水回収率を50〜80%程度で行う
のが好ましい。 【0028】本発明のRO膜脱塩方法は、純水製造に適
用できるが、さらに、後段にイオン交換装置やRO膜装
置を設けて超純水製造にも適用することができる。 【0029】 【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明する。 【0030】実施例1 半導体工場の回収水と水道水とを9:1で混合した水
(フッ化物イオン濃度1.0mg/L,電導度50μs
/cm)を原水として図1に示す方法に従って、2段R
O膜処理を行った。なお、第1のRO膜装置1のRO膜
としては、日東電工(株)製RO膜「ES−20」を用
い、第2のRO膜装置2のRO膜としてはFilmte
c社製RO膜「BW30LE−440」を用いた。各R
O膜装置1,2の水回収率は80%とし、図1に示す
(a)〜(e)の各部の水量は次の通りとした。 【0031】 (a):15m3/hr (b):12m3/hr (c):3.0m3/hr (d):0.6m3/hr (e):2.4m3/hr 第1のRO膜装置1に導入される給水は、HClを添加
してpH5.0に調整し、この第1のRO膜装置1から
得られた濃縮水(pH4.3)にNaOHを添加してp
H5.0に調整して第2のRO膜装置2に供給した。 【0032】このようにして5時間継続して2段RO膜
処理を行った時の返送水(第2のRO膜装置2の透過
水)及び処理水(第1のRO膜装置1の透過水)との水
質を表1に示す。 【0033】比較例1 実施例1において、第1のRO膜装置1の濃縮水(pH
4.3)にNaOHを添加することなく、そのまま第2
のRO膜装置2に供給したこと以外は同様にして5時間
継続して2段RO膜処理を行った。このときの返送水と
処理水の水質を表1に示した。 【0034】 【表1】【0035】表1より、2段RO膜処理において、第1
のRO膜装置の濃縮水にアルカリを添加してpH調整し
た後第2のRO膜装置に供給する本発明の方法によれ
ば、返送水のフッ化物イオン濃度を低減して処理水水質
を格段に高めることができることがわかる。 【0036】 【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の逆浸透膜脱
塩方法によれば、フッ化イオンを含む原水を第1のRO
膜装置に通水してその濃縮水を第2のRO膜装置に通水
し、第2のRO膜装置の透過水を原水と共に第1のRO
膜装置に通水して処理することにより水回収率を高めた
逆浸透膜脱塩方法において、処理水水質の低下を防止し
て、良好な水質の処理水を高い回収率で得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の逆浸透膜脱塩方法の実施の形態を示す
系統図である。 【図2】RO膜処理におけるpH条件とフッ化物イオン
阻止率との関係を示すグラフである。 【符号の説明】 1 第1のRO膜装置 2 第2のRO膜装置

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 フッ化物イオンを1mg/L以上含有す
    る原水を、酸性条件下、第1の逆浸透膜分離装置に通水
    して脱塩処理し、該第1の逆浸透膜分離装置の濃縮水を
    第2の逆浸透膜分離装置に通水して脱塩処理し、該第2
    の逆浸透膜分離装置の透過水を第1の逆浸透膜分離装置
    に供給する原水と混合して脱塩処理する逆浸透膜脱塩方
    法において、 該第1の逆浸透膜分離装置の濃縮水をpH5〜7に調整
    して該第2の逆浸透膜分離装置に通水することを特徴と
    する逆浸透膜脱塩方法。
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