JP3442285B2 - N−置換(メタ)アクリルアミドの製造方法 - Google Patents

N−置換(メタ)アクリルアミドの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリ
ルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミドは凝集
剤、沈殿剤、増粘剤、接着剤、水溶性フィルム、繊維お
よび樹脂の改質剤などの原料として用いられる有用な化
合物である。本発明は、N−置換アルキル(メタ)アク
リルアミド製造時の触媒に由来する有機錫化合物の含有
量を大幅に低減せしめたN−置換(メタ)アクリルアミ
ドの製造方法に関する。
【0002】アクリル酸又はメタクリル酸(以下、併せ
て(メタ)アクリル酸と表示する)のアルキルエステル
を脂肪族又は芳香族アミンと温度50℃〜180℃で、
ジアルキル酸化錫の存在下で反応させるN−置換(メ
タ)アクリルアミドの製法が特開昭54−138513
号公報に、同様の反応をジ(またはトリ)アルキル錫ア
ルコキシド触媒の存在下で行う方法が特開昭56−13
1555号公報に記載されている。
【0003】通常、このようにして得られた反応液から
目的とするN−置換(メタ)アクリルアミドを取得する
には蒸留法が採用されるが、有機錫触媒は揮発性がある
ため、最終製品への相当量の錫の混入がさけられないと
いう問題があり、又、錫触媒存在下での蒸留では多官能
化合物生成等の副反応を起こして、製品収量および製品
品質を低下せしめる懸念がある。
【0004】有機錫触媒はエステル交換反応にも使用さ
れ、特開平9−183751号公報にはエステル交換反
応後の反応液をアルカリ水性液で洗浄して有機錫触媒を
除去する方法が記載されているが、これは、得られるエ
ステルが非水溶性であり、水を加えた液が二相分離して
エステルを容易に分取できるため採用できる方法であ
り、本発明のような水溶性の反応生成物からの錫触媒の
除去には適用できない。又、実施例によれば、錫の除去
率は相当高いものの、それでも錫が25〜1160pp
m残留している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】有機錫は巻貝の船底へ
の付着を防ぐための船底塗料に用いられてきたが、近
年、有機錫が巻貝の奇形を誘発するとの報告から、有機
錫の船底塗料への使用が規制されているという事例から
明らかなように有機錫触媒が残留すると使用環境への影
響が懸念されるため、極力錫が製品中に残留しないこと
が強く要請されていた。
【0006】又、製品中に有機錫触媒が残留すると製品
の重合挙動に異常を来したり、添加剤として使用する場
合には濁りの原因になるといわれている。さらに製品の
製造工程の観点からも、アミノリシス反応後、得られた
N−置換(メタ)アクリルアミドを精留する場合に触媒
が大量に残存していると、重合を促進したり、副反応が
進行して多官能不飽和化合物が生成したり、有機錫が揮
発して製品に混入するという問題があり、N−置換(メ
タ)アクリルアミドの合成後できるだけ速やかに有機錫
触媒を除去したいという要請が強かった。しかし、実質
的には、上述のような要請に応えうる方法は皆無に等し
かった状況にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な状況に鑑み、アミノリシス反応後、有機錫触媒を反応
生成物から除去し、実質的に有機錫の混入がほとんどな
いN−置換(メタ)アクリルアミドの製造方法の開発に
努め、本発明に到達した。即ち、本発明は有機錫触媒存
在下に(メタ)アクリル酸エステルと脂肪族アミンとを
アミノリシス反応させ、得られた反応液から未反応エス
テルを除いた後、蒸発器にかけて反応液を留出させ、得
られた留出液に水を添加して、留出液中の触媒を不溶化
し、その後に留出液を蒸留することを特徴とするN−置
換(メタ)アクリルアミドの製造方法に関する。
【0008】本発明において用いられる有機錫触媒とし
ては、ジアルキル錫オキシドやジアルキル錫ジアルコキ
シド、トリアルキル錫アルコキシドを用いることがで
き、ジアルキル錫オキサイドとしては、アルキル基が各
々独立に炭素数4〜8であるものが用いられ、ジブチル
錫オキシド、ジオクチル錫オキシドをその具体例として
例示できる。
【0009】ジアルキル錫ジアルコキシドとしては、ア
ルキル基の炭素数が1〜4個、アルコキシ基の炭素数が
4〜8個で、アルキル基もアルコキシ基も互いに異なっ
ていてもよく同じであってもよいものが用いられ、2つ
のアルコキシ基は互いに結合して炭素数2〜8の環を構
成していてもよい。ジアルキル錫ジアルコキシドの具体
例としては、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジエ
トキシド、ジブチル錫ジイソプロポキシド、ジブチル錫
ジ−t−ブトキシド、ジオクチル錫ジメトキシド、ジオ
クチル錫ジエトキシドなどを例示できる。
【0010】トリアルキル錫アルコキシドとしては、ア
ルキル基は互いに独立に炭素数4〜8であり、アルコキ
シ基の炭素数は1〜4であり、その具体例としては、ト
リブチル錫メトキシド、トリブチル錫エトキシド、トリ
ブチル錫イソプロポキシド、トリブチル錫−t−ブトキ
シド、トリエチル錫メトキシド、トリメチル錫メトキシ
ドなどを挙げることができる。
【0011】本発明で用いられる(メタ)アクリル酸エ
ステルとしては、アルコキシ基の炭素数1〜4のアクリ
ル酸およびメタクリル酸のエステルを例示でき、アクリ
ル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メ
タクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸
ブチルなどを例示できるが、アクリル酸メチル、メタク
リル酸メチルを用いることが好ましい。
【0012】脂肪族アミンとしては一般式HNR1 2
またはH2 NR1 (R1 およびR2は各々独立に炭素数
1〜20の直鎖又は分岐状のアルキル基を示す)で示さ
れるアルキルアミン、H2 NR3 NR4 5 (R3 は炭
素数2〜4の直鎖又は分岐状のアルキレン基、R4 およ
びR5 は各々独立にHまたは炭素数1〜6のアルキル基
であるか、窒素原子と結合してモルホリン環、ピロリジ
ン環又はピペリジン環を形成する)で示されるポリアミ
ンを示し、これらの具体例としては、ジメチルアミン、
ジエチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、
オクチルアミン、モルホリン、ジメチルアミノエチルア
ミン、3,3−ジメチルアミノプロピルアミン、3,3
−ジエチルアミノプロピルアミン、3−メチルアミノプ
ロピルアミン、シクロヘキシルアミノプロピルアミンな
どを挙げることができる。
【0013】有機錫触媒の存在下での(メタ)アクリル
酸エステルとアミンのアミノリシス反応は通常、液相で
行われ、その際、アルコールが生成するので、これを反
応系から除去しながら反応を行うのがよい。反応方法と
しては、エステル、有機錫触媒およびアミンを混合して
反応を行ってもよく、エステルおよび有機錫触媒の混合
液にアミン又はエステルとアミンを徐々に添加して反応
を行わせるのが好ましい。反応時に発生するアルコール
は、通常は、蒸留塔を通し原料(メタ)アクリル酸エス
テルとの共沸混合物として、適当な還流比で系外に留去
する。
【0014】反応に用いるエステルとアミンの割合はア
ミン1モルに対しエステル1モル以上、好ましくは2〜
5モルとするのがよい。触媒の使用量は、原料アミンに
対し、0.05〜10モル%程度が適当であり、0.5
〜5モル%であることが好ましい。反応温度は約50℃
〜約200℃の範囲が適当であり、65〜150℃の範
囲が好ましい。反応圧力は加圧、常圧、減圧のいずれの
条件も採用することができるが、常圧又は減圧であるこ
とが好ましい。
【0015】反応系には重合を防止するために重合防止
剤を加えるのが好ましい。重合防止剤としては、フェノ
チアジン、チオ尿素等の有機硫黄化合物、ハイドロキノ
ン、p−メトキシフェノール等のキノン類、ヘキサメタ
燐酸ソーダ、蓚酸などのキレート性化合物、N−フェニ
ル−2−ナフチルアミン等の芳香族アミンを例示でき
る。
【0016】アミノリシス反応の終了後、反応系に残っ
た未反応エステルを好ましくは減圧にして系外に留去す
る。未反応エステルを除いた反応液にはアミノリシス反
応生成物であるN−置換(メタ)アクリルアミドと、少
量のアミンのマイケル付加物と、触媒、重合禁止剤が含
まれている。この反応液を蒸発器にかけてN−置換(メ
タ)アクリルアミドのほとんどを回収する。これによ
り、大部分の有機錫触媒は残査として残り、少量のみの
有機錫が揮発して留出液に混入する。
【0017】蒸発器としてはどのようなタイプのものも
用いることができるが、薄膜蒸発器が好ましく用いられ
る。薄膜蒸発器としては、遠心式薄膜型、流下薄膜型、
攪拌薄膜型、プレート型などが挙げられるが、反応液と
伝熱面との接触時間が短く、かつ、総括伝熱係数の大き
い遠心式薄膜蒸発器がより好ましい例として例示でき
る。
【0018】蒸発器にかけて回収したN−置換(メタ)
アクリルアミドに水を添加し、攪拌する。添加する水は
蒸留水やイオン交換水であることが好ましい。水を添加
すると、N−置換(メタ)アクリルアミドに混入した有
機錫が不溶化する。水の添加量は有機錫を不溶化するに
充分あればよく、添加する水の量はN−置換(メタ)ア
クリルアミド量に対して0.01〜3部であり、好まし
くは0.1部〜2部である。
【0019】添加する水の温度は、室温付近で充分に目
的にかなうが、必要であれば加温したものを用いること
もできる。
【0020】こうして得られたN−置換(メタ)アクリ
ルアミドを蒸留することによって、水と分離できる。蒸
留前に、不溶化した錫化合物を濾過して除いてもよく、
濾過せずにそのまま蒸留してもよい。蒸留器は通常、有
機化合物の蒸留に用いられるものであればどのようなも
のも用いることができる。一旦不溶化した錫化合物は蒸
留にあたって揮発することがなく、従って、実質的に錫
化合物を含有しないN−置換(メタ)アクリルアミドを
得ることができる。
【0021】
【実施例】以下に、実施例を用いて本発明を更に詳細に
説明する。実施例、比較例においてはN,N−ジメチル
アミノプロピルメタクリルアミドの合成例で説明する
が、本発明のポイントは、アミノリシス反応で得たN−
置換(メタ)アクリルアミド製品中にいかに錫触媒を残
さないかにあり、アミノリシス反応は公知の方法で用い
るエステル、アミドの沸点、反応性に応じて適宜反応条
件を選択すればよく、過剰エステルの除去、反応生成物
の蒸発、蒸留はエステル及び反応生成物の沸点を勘案し
て適宜温度、圧力条件を選べばよい。従って、本明細書
の特許請求の範囲に記載したいかなるアミノリシス反応
及び反応生成物の精製も以下の実施例に準じて、錫濃度
の極めて低い製品を得ることができる。なお、実施例に
おいて、液中の錫濃度の定量はICP発光分光分析法お
よびICP質量分析法にて行った。
【0022】実施例1 蒸留塔(マクマホンパッキング充填、高さ30cm)お
よび攪拌器を備えた反応器にメタクリル酸メチル3.3
モル、ジメチル錫メトキシド0.015モル、重合禁止
剤としてフェノチアジン4ミリモルとヘキサメタ燐酸ソ
ーダ0.25ミリモルを仕込み、反応器内を常圧で、反
応液の温度を110℃に維持しながら、N,N−ジメチ
ルアミノプロピルアミン1モルを90分かけて滴下し
た。反応により生成したメタノールはメタクリル酸メチ
ルとの共沸混合物として、還流比約10で留去した。滴
下終了後、120分攪拌を続けた後、反応器内を減圧に
してメタクリル酸メチルを充分に留去した。
【0023】このときの反応混合物(以下メタクリル酸
メチル留去後の反応混合物という)をガスクロマトグラ
フィーにより分析した結果、N,N−ジメチルアミノプ
ロピルアミン1モルから、N,N−ジメチルアミノプロ
ピルメタクリルアミド0.991モル、メタクリル酸メ
チルのマイケル付加物0.002モル、N,N−ジメチ
ルアミノプロピルメタクリルアミドのマイケル付加物
0.006モルが生成しており、メタクリル酸メチル留
去後の反応混合物中の錫濃度は錫原子として約1%であ
ることが判明した。こうして得られたメタクリル酸メチ
ル留去後の反応混合物を遠心型薄膜蒸発器((株)大川原
製作所製)を用いて0.1Torr、110℃で蒸発さ
せ蒸発物を分取して、残査の有機錫触媒を分離したとこ
ろ、留出液中の錫濃度は錫原子として312ppmであ
った。(除去率96.8%)
【0024】この留出液に室温で等重量のイオン交換水
を加え、約1時間攪拌後、不溶化した触媒を0.4μm
のメンブレンフィルターで減圧濾過し、得られた濾液を
5Torr、150℃で蒸留してN,N−ジメチルアミ
ノプロピルメタクリルアミドを得た。留出N,N−ジメ
チルアミノプロピルメタクリルアミド中の錫濃度は0.
2ppmであった。メタクリル酸メチル留去後の反応混
合物からの錫の除去率(以下、総除去率という)は9
9.998%であった。
【0025】実施例2 アミノリシス及びメタクリル酸メチルの留去、遠心薄膜
蒸発器による蒸発までは実施例1と同様にして得た留出
液(錫原子としての錫濃度312ppm)に室温で等重
量のイオン交換水を加え、約1時間攪拌した。不溶化し
た錫触媒を濾過せず、そのまま実施例1と同様にして5
Torr、150℃で蒸留してN,N−ジメチルアミノ
プロピルメタクリルアミドを得たところ、留出N,N−
ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド中の錫濃度は
0.4ppmであった。(総除去率99.996%)
【0026】比較例1 実施例1と同様にしてアミノリシス、メタクリル酸メチ
ルの留去、遠心薄膜蒸発器による蒸発を行って得た留出
液に、水を添加せず、そのまま5Torr、150℃で
蒸留して得たN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリ
ルアミド中の錫濃度は5.9ppmであった。(総除去
率99.94%)
【0027】実施例3 ジメチル錫メトキシドの代わりに同モル量のジブチル錫
オキサイドを用いた以外は実施例1と同様にして反応を
行った。メタクリル酸メチルを充分に留去した後のこの
反応混合物はN,N−ジメチルアミノプロピルアミン1
モルから、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリル
アミド0.903モル、メタクリル酸メチルのマイケル
付加物0.045モル、N,N−ジメチルアミノプロピ
ルメタクリルアミドのマイケル付加物0.023モルが
生成していることが判明した。
【0028】メタクリル酸メチル留去後の反応混合物を
竪型攪拌式薄膜蒸発器を用い、5Torr、150℃で
触媒を分離したところ、得られた留出液中の錫濃度は、
錫原子として1400ppmであった。(除去率86
%)この留出液に室温で等重量のイオン交換水を加え、
約1時間攪拌後、不溶化した触媒を0.4μmのメンブ
レンフィルターで減圧濾過し、得られた濾液を5Tor
r、150℃で蒸留してN,N−ジメチルアミノプロピ
ルメタクリルアミドを得た。留出N,N−ジメチルアミ
ノプロピルメタクリルアミド中の錫濃度は0.2ppm
であった。メタクリル酸メチル留去後の反応混合物から
の錫の除去率(総除去率)は99.998%であった。
【0029】
【発明の効果】本発明の方法によれば、非常に簡単なプ
ロセスで、実質的に錫を含まないN−置換(メタ)アク
リルアミドを得ることができ、得られた製品は異常な重
合挙動を示すこともなく、添加剤として用いた場合も濁
りが出ないという特徴を有する。更に、アミノリシス、
過剰エステル留去後に製品取得にあたって副反応が生じ
ることもなく、高品質の製品が高収率で得られるという
特徴を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−138513(JP,A) 特開 昭63−39836(JP,A) 特開 平1−316389(JP,A) 特開 昭55−130937(JP,A) 特開 昭57−193436(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 231/02 C07C 233/38 C07C 233/09 C07C 231/24

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】有機錫触媒存在下に(メタ)アクリル酸エ
    ステルと脂肪族アミンとをアミノリシス反応させ、得ら
    れた反応液から未反応エステルを除いた後、蒸発器にか
    けて反応液を留出させ、得られた留出液に水を添加し
    て、留出液中の触媒を不溶化し、その後に留出液を蒸留
    することを特徴とするN−置換(メタ)アクリルアミド
    の製造方法。
  2. 【請求項2】水の添加量が、留出液1部に対して0.0
    1〜3部であることを特徴とする請求項1記載のN−置
    換(メタ)アクリルアミドの製造方法。
  3. 【請求項3】蒸発器が薄膜蒸発器であることを特徴とす
    る請求項1又は2記載のN−置換(メタ)アクリルアミ
    ドの製造方法。
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