JP3437177B2 - 冷蔵庫 - Google Patents

冷蔵庫

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JP3437177B2
JP3437177B2 JP2001273052A JP2001273052A JP3437177B2 JP 3437177 B2 JP3437177 B2 JP 3437177B2 JP 2001273052 A JP2001273052 A JP 2001273052A JP 2001273052 A JP2001273052 A JP 2001273052A JP 3437177 B2 JP3437177 B2 JP 3437177B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低圧容器方式のレシプ
ロ形圧縮機を備えた冷蔵庫に係り、特に冷凍サイクルに
封入される冷媒をフロン134aとした場合に好適な冷
蔵庫に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、環境汚染、特にオゾン破壊および
地球温暖化の問題から、世界的に塩素系フロン(クロロ
・フルオロ・カーボン、CFCと略称)が使用規制の対
象となっている。
【0003】規制の対象となっているフロンは、フロン
11、フロン12、フロン113、フロン114、フロ
ン115等いずれも塩素を含むフロンで、例えば冷蔵
庫、除湿機、エアコン(空気調和機)など冷凍機器の冷
凍装置に冷媒として専ら用いられてきたフロン12も規
制の対象となっている。
【0004】そこで、代りとなる冷媒が必要となり、最
近では、オゾンとの反応性が小さく、大気中での分解期
間の短い水素化弗化炭素(HFC)が代替冷媒として注
目を集め、フロン134aはその代表的冷媒である。す
なわち、フロン134aはオゾン破壊係数(ODP)
が、フロン12(ジクロロジフルオロメタンCCl
)を1としたとき0、地球温暖化係数(GWP)がフ
ロン12を1としたとき0.3以下であり、不燃性で、
温度−圧力特性等の熱物性がフロン12と近似してお
り、従来からフロン12を用いていた冷蔵庫、除湿機、
エアコン(空気調和機)などの冷凍装置や冷媒圧縮機の
構造を大巾に変更することなく、実用化できる利点があ
るといわれてきたものである。
【0005】しかしながら、フロン134a(1.1.1−
テトラフルオロエタンCHFCF)は、化学構造が
特異なため、非常に特徴的な性質を有しており、従来の
フロン12の冷凍システムで使用されてきた鉱油やアル
キルベンゼン油等の冷凍機油では、相溶性が劣り、全く
実用化不可能である。さらに、圧縮機械部の摺動部品へ
の潤滑性、耐摩擦摩耗性、電気絶縁材への影響、乾燥剤
への影響などの適合性が問題であり、圧縮機および冷凍
装置を構成する新材料システムの開発が熱望されてき
た。
【0006】そこで、まず、冷媒と冷凍機油との相溶性
の問題に触れる前に、フロン系冷媒を用いた従来の冷媒
圧縮機ならびに冷凍装置を図7及至図9を参照して説明
する。図7は、従来の密閉形ロータリ圧縮機の要部縦断
面図、図8は、その圧縮機部の押除量を説明するための
断面図、図9は、一般的な冷凍サイクルの構成図であ
る。
【0007】図7において、1は油溜めを兼ねた密閉容
器に係るケースで、このケース1内に電動機部22と圧
縮機部23とが収納されている。電動機22は、固定子
19と回転子20とからなり、回転子20には鋳鉄製の
回転軸4Aが嵌着されている。回転軸4Aは、偏心部3
を有し、一端側に中空状に軸穴17が形設されている。
【0008】前記固定子19の巻線部19aは、その芯
線がエステルイミド皮膜で覆われ、固定子のコア部と巻
線部の間にポリエチレンレフタレートの電気絶縁フィ
ルムが装着され、また回転軸4Aの表面は研削加工によ
り仕上げられている。
【0009】圧縮機部23は、鉄系燃結体のシリンダ
2、前記回転軸4Aの偏心部3に嵌入されシリンダ2の
内側に沿って偏心回転する鋳鉄製ローラ7、このローラ
7に先端が当接し他端がばね9に押されながらシリンダ
2の溝8内を往復運動する高速度鋼製ベーン10、前記
回転軸4Aの軸受とシリンダ2の側壁とを兼ね前記シリ
ンダの両側に配設されている鋳鉄又は鉄系焼結体の主軸
受5および副軸受6を主要機構要素としている。
【0010】副軸受6には、吐出弁27が具備されてお
り、サイレンサ28を形成するように吐出カバー25が
取付けられ、主軸受5、シリンダ2、副軸受6をボルト
21で連結している。
【0011】前記ベーン10の背面11と、シリンダ2
の溝8と、主軸受5、副軸受6とで囲まれてポンプ室1
2が構成されている。主軸受5には、ケース1内の底部
に貯溜した冷媒フロンガスの溶解したナフテン系あるい
はアルキルベンゼン系冷凍機油13Aをポンプ室12内
へ吸入できる吸込ピース14があり、副軸受6にはポン
プ室12から冷凍機油13Aを送油管15へ吐出できる
吐出ポート16がある。前記送油管15は回転軸4Aの
軸穴17へ冷凍機油13Aを供給し、さらに軸穴17か
ら分岐穴18を通して要所の摺動部へ給油できるように
なっている。
【0012】このように構成したロータリ圧縮機の作用
を図7、8を参照して説明する。圧縮機を運転し、鋳鉄
製回転軸4Aが回転すると、それに伴って調質鋳鉄製ロ
ーラ7が回転し、高速度鋼製ベーン10はばね9によっ
て押され、ローラ7に先端を当接しながら鋳鉄又は鉄系
焼結体のシリンダ2の溝8内を往復運動し、冷媒吸込口
(図示せず)から流入した冷媒(フロン12)を圧縮
し、冷媒は冷媒吐出口24を介して吐出パイプ29から
圧縮機外に吐出される。固定子19の巻線部19aおよ
び電気絶縁フィルム(図示せず)は、フロンが溶解した
冷凍機油中に浸漬もしくは、ミストにより吹付けの環境
に暴される。
【0013】従来の鉱油又はアルキルベンゼンからなる
冷凍機油とフロン12の組合せにおいては、あらゆる使
用範囲において、フロン12は冷凍機油と完全に相溶し
ているため、後述する圧縮機内の冷凍機油と冷媒の二層
分離現象や熱交換器内に冷凍機油が滞留するいわゆるフ
ロン134aと冷凍機油の相溶性に関する諸問題につい
ては、全く気にする必要はなかった。しかし、特異な性
質を有する塩素を含まない弗化炭化水素系冷媒、例え
ば、フロン134aの場合は、容易に冷媒を溶解する実
用性のある冷凍機油がないことから、冷媒と冷凍機油の
相溶性の問題は実用上の最大の課題となってぃる。
【0014】一般に圧縮機の性能、すなわち、エネルギ
ー効率を示す成績係数(COP)を高めるためには、圧
縮機の機械損失を最小にすることと容積効率を最高にす
ることが必要であった。
【0015】冷媒圧縮機の機械損失としては、機械部に
おけるジャーナル軸受やスラスト軸受における摩擦損失
や油のかき混ぜ動力などが、大部分を占めており、一般
には、ジャーナル軸受の流体潤滑理論に基づいて下記に
示す式の摩擦係数(μ)値を最小にすることが最善の手
段であるといわれてきた。
【0016】
【数1】
【0017】 ここで N:回転数 P:面圧 η:粘度 D:軸直径 C:直径すきま。
【0018】すなわち、流体潤滑条件で運転される冷媒
圧縮機においては、寸法形状の構造的因子の他に、運転
環境により支配される因子であるフロンの溶解した状態
における冷凍機油の実粘度が圧縮機の機械損失に大きく
関係していることを示すものである。
【0019】一方、容積効率を最高に保つ条件として
は、冷媒ガスを圧縮する機械室において、圧縮動作する
部品間のシールを完全に行い、高圧側から低圧側へ冷媒
ガスが漏れないようにすることである。この場合におい
ても、冷媒が溶解した冷凍機油の実粘度が重要な動きを
していることに注目する必要がある。
【0020】以上の通り、従来からフロン12で使用さ
れてきた冷媒圧縮機やこれを用いた冷凍装置において
は、通常運転条件における定格運転ポイントにおける冷
媒溶解時の冷凍機油の実粘度を最善の状態にしておくこ
とが、圧縮機の性能上、重要であるこを意味してい
る。
【0021】これに対して、冷蔵庫や除湿機、エアコン
などの冷凍装置は、まれではあるが、通常の運転条件を
遥かに超える高温環境で運転されることが多々あり、こ
の場合、潤滑油膜が薄くなって、軸受摺動部間が金属接
触を伴う、いわゆる境界潤滑領域に突入して、摩擦係数
が臨時に増大すると共に、発熱を伴うことになるので、
軸受と回転軸間で噛りや焼付凝着現象が発生し、冷媒圧
縮機の信頼性を損う原因となる。そのため、境界潤滑条
件においても、致命的な問題が発生しないように工夫を
施すことが必要である。従来のフロン12を用いた冷媒
圧縮機においては、フロン12中の塩素が極圧剤として
有効に作用していた。つまり、軸受と回転軸間で噛りや
焼付凝着現象が発生すると、その摩擦熱で軸受潤滑油と
しての冷凍機油中に溶解した冷媒フロン12が分解し、
分解生成物の塩素が軸受表面の鉄と反応し塩化鉄を生成
し、これが潤滑剤の作用をする。
【0022】以上のごとく、高圧容器方式のロータリ形
圧縮機を用いた冷凍装置、例えば、冷蔵庫においては、
周囲温度30℃における運転条件が、圧縮機の吐出圧力
約10kg/cmabs、油温約100℃、油の実粘度1〜4
cStになるアルキルベンゼンまたは鉱油の冷凍機油
(40℃のとき、56cSt、100℃のとき、6cS
t)のものが、エルルギー効率を示す成績係数および製
品の信頼性の面で良好であり、大部分の製品がこの範囲
で使用されてきた。
【0023】これに対して、低圧容器方式のレシプロ形
圧縮機(構造、動作の説明は省略)を用いた冷凍装置、
例えば、冷蔵庫においては、周囲温度30℃における運
転条件が、圧縮機吸込圧力約1.6kg/cmabs、油温8
5℃、油の実粘度2〜6cStになる鉱油系の冷凍機油
(40℃のとき、8〜15cSt、100℃のとき、
1.8〜4.2cSt)のものが冷媒圧縮機および冷凍装
置として使用されてきた。
【0024】次に、このようにフロン系冷媒を吸込み圧
縮し吐出する冷媒圧縮機を配設した基本的な冷凍サイク
ルを図9を参照して説明する。図9に示すように、圧縮
機40は、低温、低圧の冷媒ガスを圧縮し、高温、高圧
の冷媒ガスを吐出して凝縮器41に送る。凝縮器41に
送られた冷媒ガスは、その熱を空気中に放出しながら高
温、高圧の冷媒液となり膨張機構(例えば膨張弁または
キャピラリチューブ)42に送られる。膨張機構を通過
する高温、高圧の冷媒液は絞り効果により低温、低圧の
湿り蒸気となり蒸発器43へ送られる。蒸発器43に入
った冷媒は周囲から熱を吸収して蒸発し、蒸発器43を
出た低温、低圧の冷媒ガスは圧縮機40に吸込まれ、以
下同じサイクルが繰り返される。
【0025】従来からこの冷媒としてはフロン12が用
いられていた。しかるに前述のようにフロン12が使用
規制されるに至ったので、その代替えとしてフロン13
4aを使用することになると、従来のフロン12用の鉱
油系やアルキルベンゼン系の冷凍機油では、フロン13
4aとの相溶性が著るしく劣り、実用上多くの問題をか
かえることとなった。そのため、フロン134aとの相
溶性の優れた冷凍機油の開発が盛んに行なわれており、
種々の冷凍機油が提案されてきた。
【0026】その代表的なものとして以下に例示するよ
うなエーテル結合を有する化合物が知られている。例え
ば特開平1−259093号公報には「フロン圧縮機用
冷凍機油」として、プロピレングリコールモノエーテル
の一般式(10)で表せる
【0027】
【化1】
【0028】(ただし、式中のRは炭素数1〜8個のア
ルキルに基、nは4〜19の整数)を基油とするもの
が、また、特開平1−259094号公報では、プロピ
レングリコールの末端をエーテル化してジェーテルタイ
プの化合物の一般式(11)で表せる
【0029】
【化2】
【0030】(ただし、式中のR,Rは炭素数1〜
8個のアルキルに基、nは整数、平均分子量300〜6
00)が、更にまた、特開平1−259095号公報で
は、プロピレングリコールとエチレンゴリコール共重合
体のモノエーテルタイプ化合物の一般式(12)で表せ
【0031】
【化3】
【0032】(ただし、式中のRは炭素数1〜14個の
アルキル基、m、nは整数、m:nの比は6:4〜1:
9平均分子量300〜2000)などが開示されてい
る。
【0033】これらのポリアルキレングリコールが、従
来の鉱油やアルキルベンゼン油と異なる点は分子中にエ
ーテル結合を導入することにより、フロン134aに対
する親和性を強化し相溶性の大巾な改善を図り、圧縮機
摺動部に二層分離現象(冷媒と冷凍機油とが溶け合わず
分離)による冷媒潤滑の防止や熱交換器内壁への油付着
による滞留現象が誘因となる圧縮機への油戻り性の改善
がはかれ、圧縮機摺動部の焼付きや噛りなどの圧縮機お
よび冷凍装置の信頼性に関する諸問題を解決するものと
されている。
【0034】しかし、このように分子中にエーテル結合
(C−O−C)を多く含むものは、(1) 飽和吸湿率が大
きい(水分を吸収し易い)(2) 体積抵抗率が低い(3) 酸
化安定性に乏しく、全酸価が上昇しやすい。などの問題
があり、電動機としてハーメチックモータを使用する冷
媒圧縮機および冷凍装置には不適当であった。
【0035】つまり、冷媒との相溶性は改善されるがモ
ータの絶縁物を優し、電気絶縁特性を劣化させるという
問題がある。上記いずれの化合物もエーテル結合を有す
る分子の末端基が水素でエンドキャップされており、こ
の水素がさらに吸湿性を増大させている。そこでこの水
素をエステル化し次式に示すような冷凍機油とする提案
もなされている(特開平2−132178号公報参
照。)
【0036】
【化4】
【0037】(ただし、式中のRは炭化水素基、R
アルキレン基、Rはアルキル基、nはこの化合物の粘
度が10ないし300(40℃)となる整数)しかし、
この化合物も冷媒に対する相溶性の改善は上記のものと
同様に分子内に存する多数のエーテル結合によるもので
あるため、同様の問題がある。
【0038】このようにエーテル結合を有する化合物
は、上記問題点(1)から、水分を取り込み易く、この水
分により化合物自体が加水分解され不安定となる。ま
た、水分は氷結して冷凍サイクルのキャピラリを詰まら
せ圧力のバランスを崩す要因となる。また(2)から、体
積抵抗率が低くなり、電圧絶縁性が低下する。(3)か
ら、全酸価が上昇すると化合物が加水分解を受け不安定
となる。
【0039】
【発明が解決しようとする課題】上述の通り従来のフロ
ン12の代替冷媒となるフロン134aは、特異な分子
構造であるがゆえに、従来から使用されてきた鉱油系お
よびアルキルベンゼン系等の冷凍機油との親和性に乏し
く、冷媒圧縮機および冷凍装置の基本となる冷凍機油と
の相溶性を欠くという致命的な問題があった。
【0040】また、相溶性を改善する試みも為されてい
るが、それに伴い新たな電気絶縁性の低下、水分の問
題、加水分解および酸による化合物を分解する等の不安
定性の問題等が生じてきた。以下、それぞれの問題につ
いて更に詳述する。相溶性の悪い冷凍機油を無理して使
用すると、冷媒圧縮機および冷凍装置において、以下に
述べるように性能および信頼性の面で実用化できない。
【0041】一般に冷凍機油の冷媒に対する溶解性が小
さいと、圧縮機より排出された油が、熱交換器内で分離
して油成分が壁面に付着残留し、圧縮機内に戻る油量が
減少し、結果として圧縮機の油面が低下し、いわゆる油
あがり現象を生じ、給油レベルが低下する。
【0042】また、冷媒量が多量に封入された冷凍装置
において、圧縮機の温度が低温にさらされた場合、液冷
媒が圧縮機内底部に偏在する、いわゆる寝込み状態にお
いては、二層分離により底部に存在する低粘度の液冷媒
を回転軸摺動面に給油することになり、潤滑油膜の確保
が困難となり、圧縮機に損傷を与える原因となる。
【0043】一方、冷凍装置としては、低温の蒸発器の
内壁に分離した冷凍機油が固着して、断熱層を形成する
ので伝熱性能を著しく阻害し、さらには、このワックス
状の冷凍機油が、膨張機構(キャピラリチューブ)やパ
イプ配管を閉塞する作用がはたらくと、冷媒循環量が激
減し、冷力低下を招くことになる。圧縮機としては、吸
込みガスの圧力が低下し、吐出ガス圧力が上昇するので
冷凍機油の熱劣化現象や機械軸受部の損傷に至り、冷媒
圧縮機および冷凍装置としての長期信頼性を著しく損う
ことになる。
【0044】また、冷媒圧縮機および冷凍装置が、一般
に運転される通常の使用条件において、冷媒圧縮機の冷
凍能力と入力との比であるエネルギー効率を示す成績係
数( COP)を高めることが、長期的視野でみると地球
温暖化(GWP)防止に役立つことになる。
【0045】圧縮機の性能向上の手段として、圧縮機の
入力を小さくするためには、同軸軸受の流体潤滑理論に
基づく、摩擦係数を小さくすることが、必要である。そ
れには、フロン134aと本発明の冷凍機油の溶解度を
測定して、圧縮機で使用される油の実粘度の最適値を設
定することが、軸受の摩擦係数を最小にし、圧縮機およ
び冷凍装置としての成績係数を最高に導き出す上で重要
となる。
【0046】したがって、本発明の目的はこれら従来の
問題点を解消することにあり、上記軸受理論に基づい
て、高圧容器方式のロータリ形圧縮機および低圧容器方
式のレシプロ形圧縮機を用いた冷凍装置に最適な冷凍機
油の粘度範囲を規定することにより高性能化、高信頼性
をはかることにあり、特に低圧容器方式のレシプロ形圧
縮機を備えた高性能の冷蔵庫を提供することにある。
【0047】更に具体的に詳述すれば、(1)水分吸収
性、(2)体抵抗率、(3)酸化劣化性などの改善を図る
と共に、冷媒圧縮機および冷凍装置のあらゆる運転条件
において、フロン134aと相溶する新規冷凍機油組成
物を探索することを基本とし、少くとも、除湿機などの
中温冷凍装置を対象にした臨界溶解温度が0℃以下とす
る第1の目標を満足する冷凍機油、および冷蔵庫などの
低温冷凍装置を対象にした臨界溶解温度が−30℃以下
とする第2の目標を満足する冷凍機油を開発することに
より、それぞれの使用目的の異なる冷凍装置および冷媒
圧縮機等、とりわけ冷蔵庫において、性能、効率、信
頼性のすぐれた冷凍システムを実現することが重要であ
る。
【0048】冷媒圧縮機を備えた冷蔵庫においては、
際には、ごくまれではあるが、設計予想を超える高温環
境や過負荷運転などの超苛酷運転などが実施されること
があり、この場合においても、十分な信頼性を確保する
ことが必要である。
【0049】フロン134aを使用した圧縮機は、同軸
軸受の流体潤滑領域をこえて、金属接触を伴う、いわゆ
る境界潤滑領域で使われると、圧縮機軸受摺動部の噛り
や焼き付き現象の発生が、従来のフロン12の場合に比
べて多い傾向にある。これは、軸受摺動部が金属接触を
生じた時に、油中に溶解しているフロン12が分解し
て、鉄系摺動摩擦面に塩化鉄の化成膜を形成し、これが
極圧作用として働いて、凝着や焼付現象を抑制するもの
である。
【0050】一方、フロン134aを用いた圧縮機にお
いては、塩素を含まない冷媒であることから塩素の供給
が不可能であるため、上記フロン12のような極圧作用
を期待することは困難である。
【0051】したがって、フロン134aに代表される
塩素を含まないフロン系冷媒を使用して圧縮機の摺動軸
受に油切れを起こしても、極圧剤の添加された冷凍機油
を使用することにより超苛酷運転などが実施された場合
においても、摺動部の噛りや焼き付きが防止でき十分な
信頼性を確保することが重要である。
【0052】さらに、フロン134aに代表される塩素
を含まないフロン系冷媒と冷凍機油組成物を使用する冷
媒圧縮機を備えた冷蔵庫において、電動機部を構成す
る電気絶縁フィルムや絶縁被覆巻線などの電気絶縁材料
が長期信頼性に耐え得る電気絶縁システムとすることも
重要である。
【0053】また、フロン134aは、水分吸収率が高
いという特徴があり、フロン134aを相溶する冷凍機
油も、かなり改善はされても比較的親水性があり、いず
れも冷凍サイクル内に水分を持込み易い。冷凍装置内の
水分は、低温側の蒸発器の中で氷離して、キャピラリー
チューブなどの細系パイプを閉塞し、冷凍性能を低下さ
せることになる。また、長期的には、冷凍機油、冷媒、
電気絶縁材料などが加水分解反応を起し、酸性物質の生
成や機械的強度の低下等のマイナス特性を誘因すること
になる。
【0054】したがって、フロン134aに代表される
塩素を含まないフロン系冷媒と冷凍機油の共存する冷蔵
庫の冷凍サイクルにおいて、冷媒を吸収しないで水分
のみを分別吸着して冷凍装置の信頼性を向上させるのに
有効に働く乾燥剤を充填した乾燥器を用いることも重要
である。
【0055】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的を達成
することができる第1の発明に係る冷蔵庫の特徴は、
凍機油を貯留する密閉容器内に設けられ、回転子と固定
子からなるモータと、その回転子に嵌着された回転軸
と、この回転軸を介して連結される圧縮機部とを有する
低圧容器方式のレシプロ形圧縮機と、冷媒を凝縮させる
凝縮機と、前記冷媒を膨張させる膨張機構と、前記冷媒
を蒸発させる蒸発器とを有する冷凍サイクルを備え、こ
の冷凍サイクルに封入される前記冷媒をフロン134a
とした冷蔵庫において、前記冷凍機油を、下記の一般式
(1)乃至(4)で示される脂肪酸のエステル油の群か
ら選ばれる少なくとも1種を含有するものであり、実粘
度が2〜4.2cStとしたことにある。 (R ・CH ) ・C・(CH OCOR ) …(1) ・CH ・C・(CH ・OCOR ) …(2) C・(CH −OCOR ) …(3) (R ・COOH C) ・C・CH ・O・CH ・C
(CH ・OCOR ) …(4) 但し、R :Hまたは炭素数1〜3のアルキル基 :炭素数5〜12のアルキル基で、炭素数の異なる
複数種を混合す ることができる。
【0056】上記本発明の目的を達成することができる
第2の発明に係る冷蔵庫の特徴は、 上記(1)に記載の
冷蔵庫において、前記レシプロ形圧縮機は、前記圧縮機
より吐出された高圧冷媒ガスが前記密閉容器外へ直接
排出されるものであることを特徴とする。
【0057】上記本発明の目的を達成することができる
第3の発明に係る冷蔵庫の特徴は、 冷凍機油を貯留する
密閉容器内に設けられ、回転子と固定子からなるモータ
と、その回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介
して連結される圧縮機部とを有する低圧容器方式のレシ
プロ形圧縮機と、冷媒を凝縮させる凝縮機と、前記冷媒
を膨張させる膨張機構と、前記冷媒を蒸発させる蒸発器
とを有する冷凍サイクルを備え、この冷凍サイクルに封
入される前記冷媒をフロン134aとした冷蔵庫におい
て、前記冷凍機油は、下記の一般式(1)乃至(4)で
示される脂肪酸のエステル油の群から選ばれる少なくと
も1種を含有するものであり、実粘度が2〜4.2cS
tとした冷凍機油からなり、前記固定子にはエナメル材
で被覆した巻き線を備え、この巻き線は、ポリエステル
線(PEW)、上層ポリアミドイミド/下層ポリエステル
イミド線(RFW-V)及びポリアミドイミド線(AIW)のい
ずれか1種のエナメル被覆線であることを特徴とする。 (R ・CH ) ・C・(CH OCOR ) …(1) ・CH ・C・(CH ・OCOR ) …(2) C・(CH −OCOR ) …(3) (R ・COOH C) ・C・CH ・O・CH ・C
(CH ・OCOR ) …(4) 但し、R :Hまたは炭素数1〜3のアルキル基 :炭素数5〜12のアルキル基で、炭素数の異なる
複数種を混合す ることができる。
【0058】
【発明の実施の形態】 (1).上記低圧容器方式のレシプ
ロ形圧縮機の密閉容器内に貯留する冷凍機油として使用
される脂肪酸の エステル油としては分子中にエステル
結合を2個以上保有する脂肪酸のエステルが必須であ
り、エステル結合1個のものでは冷媒との相溶性が悪く
使用に供し得ない。脂肪酸のエステル油は、アルコール
類と脂肪酸とのエステル反応により得られるが、アルコ
ール類としては多価アルコールが望ましく、脂肪酸とし
ては炭素数6〜8のものが望ましく一塩基性でも多塩基
性でもよい。
【0059】また、脂肪酸のエステル油はヒンダード系
エステル油とコンプレックス系エステル油とがあり、冷
媒との相溶性の点では直鎖構造よりも分岐構造を有する
エステル油の方が望ましい傾向にある。実用的な脂肪酸
のエステル油の例を以下に一般式(1)〜(5)で表示する。
【0060】なお、一般式(1)〜(4)はヒンダード系エス
テル油、一般式(5)はコンプレックス系エステル油の例
である。これらエステル油は単独でも2種以上を配合し
てもよく、また、これらを少なくとも50wt%基油と
して含み、残部をその他周知の冷凍機油で補ってもよ
い。 一般式、 (R・CH)・C・(CH OCOR)
…(1) (分子中に2ヶのエステル結合を保有するネオベンチル
グリコール(NPGと略す)系エステルの例) 一般式、 R・CH・C・(CHOCOR)
…(2) (分子中に3ヶのエステル結合を保有するトリメチロー
ルアルキル(プロパン、TMPと略す)系エステルの
例) 一般式、 C・(CHOCOR)
…(3) (分子中に4ヶのエステル結合を保有するペンタエリス
トリトール)(PET)と略す)系エステルの例)一般
式、 (RCOOC)・C・CH・O・CH・C
(CHOCOR)…(4) (分子中に6ヶのエステル結合を保有するジペンタエリ
スリトール(DPETと略す)系エステルの例)一般
式、
【0061】
【化5】
【0062】(分子中に4ヶ以上のエステル結合を保有
するコンプレックス系エステルの例)なお、上記各一般
式において、 RはHまたは炭素数1〜3のアルキル基 Rは炭素数5〜12のアルキル基で、炭素数の異なる複
数種を混合することができる Rは炭素数1〜3のアルキル基 n は0もしくは1〜5の整数 をそれぞれ表す。
【0063】上記一般式(1)〜(4)に関しては、多価アル
コールとモノカルボン酸のエステルであり、アルコール
の種類とモノカルボン酸の単独もしくは複数種の配合を
任意に選択することにより、所望の粘度グレードのもの
を得ることができる。
【0064】また、一般式(5)で代表されるコンプレッ
クス系エステルに関しては、中央の二塩基酸(ジカルボ
ン酸)の化学構造を、コハク酸(n=2)、グリタール
酸(Glut略)、アジピン酸(AZPと略)、ピメリン
酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸(n=8)
と変えたり、多価アルコールおよび末端のモノカルボン
酸の分子鎖を種々のものを選択すると共に配合比(モル
分率)を変えることにより、高粘度で、臨界溶解温度域
の広いものを得ることができる。これらのヒンダード系
エステル油およびコンプレックス系エステル油を単独又
は複合して粘度を調整し、基油とする。
【0065】なお、本発明に使用する臨界温度40℃以
上で、しかも塩素を含まない弗化炭素系冷媒を主成分と
する冷媒としては、ハイドロフルオロカーボンとフロオ
ロカーボンがある。ハイドロフルオロカーボンの具体例
としては、ジフルオロメタン(R32)、ベンタフルオルエ
タン(R125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(R13
4)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,2
−トリフルオロエタン(R143)、1,1,1−トリフルオロエ
タン(R143a)、1,1−ジフルオロエタン(R152a)、モノ
フルオロエタン(R161)が挙げられる。
【0066】また、フルオロカーボンの具体例として
は、ヘキサフルオロプロパン(C216)、オクタフルオロ
シクロブタン(C318)がある。これらの中で特に1,1,2,2
−テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2−テトラフル
オロエタン(R134a)、1,1,2−トリフルオロエタン(R1
34)、1,1,1−トリフルオロエタン(R143a)、ヘキサフ
ルオロプロパン(C216)は、従来のジクロロジフルオロ
メタン(R12)に近い沸点を持っており、代替冷媒とし
て好ましい。
【0067】また、これらハイドロフルオロカーボンも
しくはフロオロカーボン系冷媒を単独で用いる外に2種
以上の混合物として用いることも可能である。ところで
冷媒の臨界温度を40℃以上としたのは、凝縮器での凝
縮温度として40℃以上の冷凍装置を必要としたこと
よる。(2).冷蔵庫の冷凍サイクルに用いる冷媒圧縮機の構成
例として、 冷凍機油を貯溜する密閉容器内に回転子と固
定子からなるモータと、前記回転子に嵌着された回転軸
と、この回転軸を介して、前記モータに連結された圧縮
機部とを収納し、前記圧縮機部より吐出された高圧冷媒
ガスが密閉容器内に滞留する高圧容器方式の冷媒圧縮機
が挙げられるが、この種の高圧容器方式のロータリ形圧
縮機では、ガス圧力9〜11kg/cmabs、油温約100
℃におけるフロン134a溶解による油実粘度が、1.
0〜4.0cStにおさまるように、40℃の粘度が2
〜70cSt、好ましくは5.0〜32cStの上記(1)
項記載の冷凍機油を予め封入しておくことである。(3).これに対して、 冷凍機油を貯溜する密閉容器内に回
転子と固定子からなるモータと、前記回転子に嵌着され
た回転軸と、この回転軸を介して、前記モータに連結さ
れた圧縮機部とを収納し、前記圧縮機部より吐出された
高圧冷媒ガスが密閉容器外へ直接排出される低圧容器方
式の冷媒圧縮機、すなわち、低圧容器方式のレシプロ形
圧縮機では、吸込みガス圧力1.0〜2.0kg/cmabs油温8
5℃におけるフロン134a溶解における油の実粘度が
2.0〜4.5cStにおさまるように、粘度が40℃の
とき5.0〜15cSt、100℃のとき2.0〜4.5
cStの上記(1)項記載の冷凍機油を予め、封入してお
くことである。
【0068】(4).上記(1)項記載の冷凍機油中に極圧剤
を添加することができる。極圧剤は摺動部の摩耗防止剤
となるものであり、例えば一般式(6)および(7)で示され
るアルキルポリオキシアルキレンリン酸エステル、一般
式(8)で示されるジアルキルリン酸エステル等が挙げら
れる。
【0069】
【化6】
【0070】
【化7】
【0071】但し、R:炭素数1〜8のアルキル基 R:H又は炭素数1〜3のアルキル基 分子量:400〜700
【0072】
【化8】
【0073】但し、R:炭素数8〜16のアルキル基 これらリン酸エステルは、単独もしくは2種以上を複合
して添加してもよい。
【0074】また、実用的な添加量としては0.05〜
10wt%である。また、上記極圧剤(摩耗防止剤)と
共に、酸捕捉剤、酸化防止剤、消泡剤等を添加すること
も有効である。
【0075】なお、酸捕捉剤は、冷凍機油中に酸成分が
存在するとそれによりエステル油が分解され不安定とな
るためそれを取り除くために添加するもので、例えばエ
ポキシ化合物等の酸と反応する化合物が好ましい。とり
わけポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルな
どのジグリシジルエーテル化合物やフェニルグリシジル
エーテルなどのモノグリシジルエーテル化合物や脂肪族
環状エポキシ化合物の如くエポキシ基とエーテル結合を
有するものが好ましい。その理由はこれらの化合物のエ
ポキシ基が酸を捕捉し、エーテル結合が多少なりとも冷
凍機油と冷媒との相溶性の改善に寄与するからである。
【0076】上記その他の添加剤は、圧縮機や冷凍装置
を製作する際に使用する塩素系洗浄剤等の残留物の影響
をなくすための塩素捕捉剤や、油の流通や保管中の酸化
劣化の防止用の添加剤、泡立ち性の防止をするための添
加剤等であり、従来の一般的技術で対応できるレベルの
ものであり、ここでは特別に規制しない。
【0077】また、冷媒の少なくとも一部をフロン13
4aに代表される塩素を含まないフロン系冷凍で置き換
え、この冷媒と前記(1)項記載の脂肪酸エステル油を基
油とする冷凍機油とを併用する冷媒圧縮機においては
電動機部を構成する電気絶縁フィルムとして、ガラス転
移温度50℃以上の結晶性プラスチックフィルム、ある
いはガラス転移温度の低いフィルム上にガス転移温度の
高い樹脂層を被覆した複合フィルムを、絶縁被覆巻線と
しては、ガラス転移温度120℃以上のエナメル被覆
線、あるいはガラス転移温度の低い層を下層に、高い層
を上層に複合被覆したエナメル線を用いることが望まし
い。
【0078】そして、実用的な絶縁フィルムとしては、
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレ
ート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケト
ン、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドイミドおよ
びポリイミドの群から選ばれる少なくとも1種の絶縁フ
ィルムが好ましく、エナメル被覆としては、ポリエステ
ルイミド、ポリアミドおよびポリアミドイミドの群から
選ばれる少なくとも1種の絶縁層が好ましい。
【0079】さらにまた、冷媒の少なくとも一部をフロ
134aに代表される塩素を含まないフロン系冷媒
置き換え、この冷媒と前記(1)項記載の脂肪酸エステ
ル油を基油とする冷凍機油とを併用する上記本発明の冷
蔵庫においては、冷凍サイクル経路中に乾燥器を設ける
ことが望ましい。そして、乾燥器に充填する乾燥剤とし
細孔径3.3オングストローク以下、25℃の炭酸
ガス分圧250mmHgにおける炭酸ガス吸収容器が、1.
0%以下であるケイ酸、アルミン酸アルカリ金属複合塩
よりなる合成ゼオライトを用いることである。
【0080】分子中にエステル結合を2ヶ以上保有する
ヒンダードエステルおよびコンプレックスエテルで、粘
度が、40℃のとき2〜70cSt、好ましくは5〜3
2cSt、100℃のとき1〜9cSt、好ましくは2
〜6cStの上記本発明に使用する冷凍機油は、少くと
も、圧縮機、凝縮器、膨張機構および蒸発器から構成さ
れ、冷媒の少なくとも一部をフロン134aに代表され
る塩素を含まないフロン系冷媒で置き換えて用いる冷蔵
において、使用される各部分の全温度帯域において冷
媒との相溶性が良好であるため、冷媒と冷凍機油の2層
分離状態が存在しなくなる。
【0081】したがって、(1) 圧縮機内の貯油部で2層
分離がなくなり、軸受摺動部への給油が保証される。
(2) 圧縮機より吐出されたフロンガスか凝縮器で液化し
た状態、蒸発器の−30℃以下の低温環境において、常
に油が低粘度のフロン134aに溶解した状態で存在し
ており、全体として低粘度状態であるので、圧縮機への
油戻りが良くなる。
【0082】したがって、圧縮機の油面低下現象がなく
なるので、軸受摺動部への油の供給が確保できるので、
噛りや焼付き現象を生ずる問題が解消できた。さらに、
この冷凍機油は、従来のポリオキシアルキレングリコー
ル油の欠点であった飽和水分量が10分の1以下と少な
く、酸化劣化安定性の改善作用が大きく、電気絶縁油の
レベルである体積低効率が1013Ωcmに到達するもの
である。
【0083】したがって、モータ部を圧力容器内に収納
する冷媒圧縮機およびこれを利用する冷凍装置におい
て、フロン134aと本発明の冷凍機油が分離すること
がなく、圧縮機の性能および信頼性の双方ですぐれた特
徴を示す。この冷凍機油は、従来のフロン12やフロン
22等の塩素を含むフロン冷媒に対しても相溶性が優れ
ているため、前述の通りフロン134aの一部をこれら
従来の塩素を含むフロン冷媒で置き換え、混合して使用
することできる。
【0084】次に、上記本発明の冷蔵庫に使用する冷凍
機油のうち、40℃の油粘度が好ましい5〜32cts
のものを高圧容器方式のロータリ形圧縮機に封入し、圧
縮機の成績係数をみると、15cStの油を使用した点
がピークを示し、5〜32cStが、圧縮機の性能を表
す成績係数でおおよそ1.4以上、従来のフロン12と
アルキルベンゼン油の組合せを1とすると0.95〜0.
93の範囲となり、実用上何ら問題のないことを示して
いる。
【0085】また、40℃における粘度が56cStの
ものでは、圧縮機の成績係数がポリオキシプロビレング
リコール油に比べて、本発明で使用する冷凍機油の方が
優れていることがわかった。
【0086】これは、油自身が保有するエステル結合が
主に圧縮機の軸、軸受部の鉄系摺動部表面に分子配向し
て潤滑性を向上する作用と、フロン134aに溶け易い
性質により、実粘度が下って機械損失を改善する作用が
相互に働いて、圧縮機の成績係数を改善するものであ
る。
【0087】一方、低圧容器方式のレシプロ形圧縮機に
おいては、容器内の圧力が1〜2kg/cmabsと小さいと
ころで運転するため、フロン134aの溶解量および実
粘度の変動範囲が少ない。そのため、冷媒、冷凍機油の
種類による特徴が表われにくく、従来のごとく、粘度
は、40℃のときが5〜15cSt、100℃のとき2
〜4cStの範囲のものが、信頼性および性能におい
て、良好であることがわかった。
【0088】次に、本発明の冷蔵庫に使用する冷凍機油
中に、極圧剤として例えば、アルキルポリオキシアルキ
レンリン酸エステルおよびジアルキルリン酸エステルな
どの分子中にOH基を残留する第1級、第2級の強力な
リン酸エステルを0.05〜10wt%の適量ブレンド
すると、圧縮機の軸、軸受を構成する鉄系摺動部の表面
に分子配向しているエステル結合の潤滑油膜を、押除け
てさらに強力なリン酸エステルの化学吸着膜を形成する
ことができ、摺動部の潤滑性をより良好なものとし、噛
りや焼き付きを防止することができる。
【0089】この極圧剤を添加した本発明に使用する
凍機油の潤滑性について試験検討したところ、フロン1
34aが溶解していない状態を想定したファレックス試
験(油の焼き付き試験)においては、限界焼き付き面圧
の大巾な改善が達成され、さらに高濃度溶解を想定して
フロン134aを50%溶解した冷凍機油の鉄系摺動部
材の摩耗量については、無添加品に比べて、その摩耗量
を5分の1以下に低減することが可能であった。添加量
の適正範囲は、上記のとおり0.05〜10wt%であ
る。
【0090】なお、この摩耗量の試験結果については、
後の実施例の項で具体的に述べるが第6図に示す通りで
あり、添加による摩耗量の低減効果は顕著である。ま
た、上記極圧剤と共に通常使用される酸捕捉剤、酸化防
止剤、滑泡剤などの添加剤を配合することができ、さら
に効果的に作用するものである。
【0091】次ぎに、冷媒の少なくとも一部をフロン
34aで置き換え、この冷媒と本発明の冷蔵庫に使用す
冷凍機油を併用する冷媒圧縮機の電気絶縁材料につい
てであるが、モータ部の電気絶縁システム材料である絶
縁フィルムは、ガラス転移温度50℃以上の結晶性プラ
スチックスフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサ
ルファイド、ポリエーテルエーチルケトン、ポリエチレ
ンナフタレート、ポリアミドイミド、ポリイミドあるい
は、ガラス転移温度の低いフィルム上に、ガス転移温度
の高い樹脂層を被覆する複合フィルムは、引張強度特
性、電気絶縁特性の劣化現象が生じにくく、実用上問題
のない範囲におさまるものである。これは、従来のポリ
オキシアルキレングリコール油に比べて、水分持込量、
酸の生成量が非常に少いため、フィルム自体の加水分解
による劣化現象が生じにくいためである。
【0092】同様にモータ部に使われるマグネットワイ
ヤについても、ガラス転移温度120℃以上のエナメル
被覆、例えば、ポリエステルイミド、ポリアミド、ポリ
アミドイミド等の単一層、あるいはガス転移温度の低い
ものを下層に、ガラス転移温度の高いものを上層に複合
したエナメル被膜は、前記フィルム同様に、加水分解に
よる皮膜の劣化、亀裂の発生、軟化、膨潤、絶縁破壊電
圧の低下等が少なく、実用面において信頼性の向上に役
立つことがわかった。
【0093】なお、マグネットワイヤのエナメル被覆の
中に自己潤滑性を有し、電工作業性を改善する目的で、
内部潤滑剤、外部潤滑剤を添加するものがあるが、基本
的には、エナメル皮膜自体の特性は上述の基本構造をそ
のまま継承するものである。
【0094】最後に、冷媒の少なくとも一部をフロン
34aで置き換え、この冷媒と前記本発明の冷蔵庫に使
用する冷凍機油の共存する冷凍サイクルに乾燥器を設け
る場合、乾燥器に充填する乾燥剤としては、細孔径3.
3オングストローム以下、25℃、炭酸ガス分圧250
mmHgにおける炭酸ガス吸収容量が、1.0%以下である
ケイ酸、アルミン酸アルカリ金属複合塩よりなる合成ゼ
オライトが好ましく、この種のものとしては例えば、ユ
ニオン昭和(株)製の商品名XH−9、XH−600等を
挙げることができ、いずれも弗素イオン吸着量が少な
い。
【0095】なお、同上の炭酸ガス吸収容量が1.5%
以上のものでは、弗素イオン吸収量が、0.24%以上
に及び、モレキュラーシーブスとしての吸着特性、破壊
強度を低下させる。また、腐食した結晶崩漬物が、冷凍
サイクル配管部の詰りや圧縮機の軸受摺動部を損傷する
原因となる。かかる観点から本発明で使用する乾燥剤
細孔径を上記の炭酸ガス吸収器で規制したものは、この
ような心配がなく、信頼性の高い冷凍サイクルを構成す
ることが可能となる。
【0096】
【実施例】以下、本発明の各実施例を図1及至図6およ
び表1及至表4により説明する。 〈実施例1〜17〉これらの 実施例は本発明の一実施例を示すものであり、
冷凍サイクルおよび冷媒圧縮機に係る密閉形ロータリ圧
縮機には、冷媒としてフロン134aを用い、冷凍機油
としては、40℃のときの粘度2〜70cSt、より好
ましくは5〜32cSt、100℃のときの粘度1〜9
cSt、より好ましくは2〜6cStの、分子中にエス
テル基を2ヶ以上有する表1に表示のエステル油を併用
することの実施例について解析する。なお、表1には比
較のために従来の冷凍機油についても表示した。
【0097】図1は、フロン134aと冷凍機油の相溶
性を説明する二相分離温度線図を示したもので、高圧ガ
ラス容器の中にフロン134aと冷凍機油とを封じ、溶
解比率と各温度毎の二層分離の状態について目視観察し
た結果を纏めたものである。
【0098】横軸にフロン134a中の油の濃度、縦軸
に二層分離温度を示す。この図に表示した第1の目標値
とは、除湿機などの中温度の蒸発器温度(0℃以下)を
有する冷凍装置が必要とする下臨界溶解温度、そして第
2の目標値とは、冷蔵庫などの低温度の蒸発器温度(−
30℃以下)を有する冷凍装置が必要とする下臨界溶解
温度(何れも仕様値)を示したものである。
【0099】従来の冷凍機油、例えば日本サン石油(株)
製の商品名スニソ4GSD(ナフテン系)やZ300
(アルキルベンゼン系)は溶解せず、また、同じく日本
サン石油(株)製の商品名PAG56(ポリアルキレング
リコール)では、下臨界溶解温度(L1で表示)が−6
0℃、上臨界溶解温度(U1で表示)が35℃であるこ
とを示している。本発明において使用する分子中にエス
テル基を2ヶ以上保有するエステル油を含有する冷凍機
は下臨界溶解温度(L2で表示)が、−70℃、上臨
界溶解温度(U2)が70℃以上と臨界溶解温度がすぐ
れていることを示している。このうち、冷凍装置の熱交
換器においては下臨界溶解温度が冷媒圧縮機においては
上臨界溶解温度が実用上重要な要素となる。
【0100】すなわち、図9及び図10は、冷凍装置の
冷凍サイクル構成図を示したものであるが、冷媒圧縮機
40、凝縮41、乾燥器45、膨張器42、蒸発器4
3より成る冷凍サイクルにおいて、上記冷凍機油をフロ
ン134aと併用して運転すると、従来例1及び2に示
すナフテン系鉱油のスニソ4GSDやアルキルベンゼン
油のZ300A(同じく日本サン石油(株)製の商品名)
は、冷媒が多量に存在し、圧縮機内に寝込む場合におい
ては、二相分離によって密度の大きい冷媒層が下層に、
密度の小さい冷凍機油層が上層に偏在することとなるの
で、図7の冷媒圧縮機(密閉形ロータリ圧縮機の例)の
要部縦断面図で示したごとく、軸4Aと主軸受5、副軸
受6への給油は、ポンプの吸込口14から、下層に偏在
する冷媒層を吸引することになる。したがって、冷媒層
の粘度が冷凍機油に比べて小さく、軸受部に給油された
場合、油膜の厚みが薄く金属接触を発生しやすくなる。
【0101】また、摺動摩擦面は、瞬時に温度上昇が起
るので、冷媒がガス化して更にシビアな条件へと移行し
た。この現象が繰り返されると、軸と軸受部の噛りや焼
付きによる損傷が発生し、冷媒圧縮機としての性能を失
うことになる。
【0102】また、図9及び図10に示す冷凍装置の熱
交換器、例えば0〜−60℃で使用する蒸発器43に用
いると、圧縮機40より、冷媒ガスと共に吐出された冷
凍機油は、蒸発器41の中で二層分離を起し、冷凍機油
が、熱交換器配管の内壁に固着し、冷凍機油の滞留現象
や熱交換器の熱絶縁現象を発生するので、冷凍装置とし
ての冷却性能を著しく阻害し、実用的でない。この点、
表1に従来例3で示したポリアルキレングリコールは、
下臨界溶解温度が−60℃であるので蒸発器41の中で
は二層分離を起さず有利であるが、稼働時の圧縮機40
の温度は少なくとも80℃になることから上臨界溶解温
度が35では完全に二層分離を起してしまい、従来例1
および2と同様に軸受部に給油された場合、軸と軸受部
との噛りや焼付きによる損傷が発生し、冷媒圧縮機とし
ての性能を失うことになる。
【0103】また、ハーメチックモータを備えた冷媒圧
縮機、例えば図7に示す密閉形ロータリ形圧縮機におい
ては、当然電気絶縁油としての特性が要求される。
【0104】図2は、本発明で使用するエステル油を含
有する冷凍機油と従来の鉱油およぴポリアルキレングリ
コールの水分吸収量と体積抵抗率の関係を示したもので
ある。水分が500ppm以下に管理された状態において
も、従来例のポリアルキレングリコールは分子中のエー
テル結合の作用により、1012Ωcm以下の低い値を示
し望ましくない。
【0105】これに対して、2ヶ以上のエステル基を導
入した冷凍機油では1013Ωcm以上の高絶縁性能を示
し、「JISC2320」電気絶縁油の基準値を満足す
るので十分に実用に供し得るものであることがわかっ
た。なお、従来例の鉱油は高絶縁性能を有しているが、
フロン134aとの相溶性が悪いので実用に供し得な
い。
【0106】次にフロン134aに適合する冷凍機油の
成分となるエステル油の種類、化学構造および下臨界溶
解温度との関係について、表1を用いて詳細に説明す
る。冷凍機油の成分として使用する分子中にエステル基
を2ヶ以上有するエステル油の種類は、一塩基性有機
酸、もしくは多塩基性有機酸と多価アルコールとのエス
テルを意味し、代表的なエステル油としてネオベンチル
グリコール系エステル、トリメチロールプロパン(又は
エタン)系エステル、ペンタエリスリトール系エステル
で代表されるヒンダードエステル油およびコンプレック
ス系エステルなどがあり、各々代表的な化学合成物の名
称と粘度、臨界溶解温度との関係を示した。
【0107】
【表1】
【0108】なお、表1の試料名の中にはエステル油の
化学合成物の名称を簡略表示したものがあり、例えば実
施例1のNGP/n−Cであれば、NGPはネオペン
チルグリコールの略、n−Cは炭素数8個のノルマル
有機酸(直鎖脂肪酸)の略であり、ネオペンチルグリコ
ールと炭素数8個のノルマル有機酸(直鎖脂肪酸)との
エステルを表す。また、実施例3のNGP/i−2EH
であれば、i−2EHはイソ・2エチル・ヘキシル酸の
略であり、ネオペンチルグリコールとイソ・2エチル・
ヘキシル酸(分岐鎖を有する脂肪酸)とのエステルを表
す。
【0109】この結果、 (1) ネオペンチルグリコールエステル(NPG)類につ
いては、実施例1〜4に示すごとく、二価アルコールの
ネオペンチルグリコールと一塩基性有機酸であるモノカ
ルボン酸のエステルであり、分子中に2ヶのエステル基
を保有することが特徴である。これらの化学構造がフロ
ン134aとの相溶性や油の粘度特性に重要な関係を示
すものである。
【0110】すなわち、モノカルボン酸の炭素数が7〜
8の範囲のエステルが良好で、下臨界溶解温度が−29
〜−70℃であり、40℃の粘度が2.8〜7.0cSt
であった。
【0111】下臨界溶解温度は、モノカルボン酸(脂肪
酸)の炭素数が小さいほど低く、また分子中に分岐鎖を
有する実施例3のイソー2エチル・ヘキシル(i−2E
H)酸や実施例4のイソーヘプタン(I−C)酸の方
が低く、好都合であることがわかった。また、高粘度化
をはかるために、カルボン酸の炭素数(11個)を増加
した場合の例を実施例5であり、40℃の粘度が14.
9cSt、下臨界溶解温度が−40℃で限界であること
がわかった。 (2) 次に分子中にエステル結合を3ヶ保有するトリメチ
ルプロパノール系(TMP)エステルについては、実施
例6〜10により説明する。三価アルコールのトリメチ
ロールプロパン(TMP)と一塩基性有機酸であるモノ
カルボン酸の縮合により得られるエステル油は、分子中
にエステル基が3ヶ保有され、モノカルボン酸の炭素数
6〜8個に対して、40℃の粘度が10.8〜32.2c
St、下臨界溶解温度が、−20〜−60℃の範囲を示
す。−20℃以下のものは、実施例6のヘフタン酸(n
−C)、実施例8のオクタン酸(n−C)、実施例9
のイソー2エチル・ヘキシン酸(i−2EH)、−60
℃以下のものは、実施例7のヘキサン(n−C)酸、
実施例10のイソーヘプタン酸(i−C)のエステル
油である。ここでも、下臨界溶解温度は、炭素数が小さ
いほど低く、また、同炭素数でも分岐鎖(イソ)を含む
ものほど低いという特徴がある。 (3) 四価アルコールのペンタエリスリトール(PET)
とモノカルボン酸の縮合により得られるエステル油は、
実施例11〜13に示すごとく分子中にエステル基が4
ヶ保有され、モノカルボン酸の炭素数6〜8個に対し
て、40℃の粘度が17.5〜52.0cStと高粘度化
となり、下臨界溶解温度は、−8〜−44℃の範囲を示
し、前述の二価アルコール、三価アルコールのエステル
油に対して、高温側にシフトしている。
【0112】この中で、下臨界溶解温度が−40℃以下
を示すものは、実視例11のヘキサン(n−C)酸、
実施例13のイソーヘプタン(i−C)酸とのエステ
ル油である。ここでも、下臨界溶解温度は、炭素数が少
ないほど低く、分岐鎖を含むものほど低いという特徴が
ある。 (4) 次に、分子中のエステル基を4ヶ含有する方法とし
て、二塩基性有機酸の代表であるジカルボン酸を中心
に、多価アルコール、更にモノカルボン酸の縮合によ
り、エステル化をはかると、下臨界溶解温度が低く、か
つ高粘度化が容易にはかれる。このように分子設計した
ものがコンプレックスエステルであり、本発明の実施例
14〜17で説明する。
【0113】実施例14はジカルボン酸のグルタル酸
(Glutと略)と二価アルコールのネオペンチルグリ
コール(NPG)、モノカルボン酸のヘキサン(C
酸のコンプレックスエステルであり、40℃の粘度が3
2.6cSt、100℃が5.9cSt、臨界溶解温度が
−75℃以下であった。
【0114】実施例15は、実施例4と実施例16の混
合により、中間の粘度グレードを調製した例を示し、こ
の場合も下臨界溶解温度の大きな変化はないことがわか
った。
【0115】実施例16は、ジカルボン酸のアジピン酸
(AZPと略)、二価アルコールのネオペンチルグリコ
ール(NPG)、モノカルボン酸のデカン酸(n−C
10)のコンプレックスエステル、実施例17は、ジカ
ルボン酸のグルタル酸(Glut)、二価アルコールのネ
オペンチルグリコール(NPG)、モノカルボン酸のイ
ソーヘキサン酸(i−C)のコンプレックスエステルを
示し、40℃の粘度54.5〜56.6cSt、100℃
の粘度7.3〜8.6cSt、下臨界溶解温度が−60℃
とすぐれていることがわかった。
【0116】コンプレックスエステルにおいては、二塩
基性有機酸のジカルボン酸の炭素数C〜C10や一塩
基性酸のモノカルボン酸の炭素数C〜C10を任意に
設定し、さらに、配合するモル比を選定して多価アルコ
ールと縮合させると、任意の粘度のものが合成できるこ
とを示すものである。これらの実施例を整理するとエス
テル類を一般式で次のように表わすことができる。 ネオペンチルグリコール系エステル: (R・CH)・C・(CH OCOR) …(1) トリメチロールプロパン(又はエタン)系エステル: R・CH・C・(CHOCOR) …(2) ペンタエリスリトール系エステル: C・(CHOCOR) …(3) コンプレックス系エステル:例えば、
【0117】
【化9】
【0118】更に容易に得られものとして、 ジペンダエリスリトール系エステル: (RCOOC)・C・CH・O・CH・C
(CHOCOR)…(4) 但し、R:H又は炭素数1〜3のアルキル基 R:炭素数5〜12のアルキル基で、炭素数の異なる
複数種を混合することができる R:炭素数1〜3のアルキル基 n :0又は1〜5の整数 で表わすことができ、任意の粘度を設計する場合は、多
価アルコールと塩基性有機酸であるカルボン酸の種類を
選択することにより可能であった。
【0119】そして本発明において好ましい冷凍機油
は、上記の一般式(1)〜(5)で示される脂肪酸のエ
ステル油の群から選ばれる少なくとも1種を含有し(た
だし、R は炭素数5〜12のアルキル基で、炭素数の
異なる複数種を混合することができる)、かつ上記の一
般式(1)〜(5)で示される脂肪酸のエステル油のう
ち、R の炭素数が5より小さいものを含まない冷凍機
油である。
【0120】また、中間の粘度を得るためには、低粘度
油と高粘度油をブレンドする方式により容易に調整可能
であった。
【0121】以上のごとく、塩素を含まないフロン系冷
媒、例えばフロン134aを使用する冷凍装置において
分子中に2ヶ以上のエステル結合を保有するヒンダード
エステルおよびコンプレックスエステルの中から、第1
の目標値である下臨界溶解温度0℃以下の油、あるいは
第2の目標値である下臨界溶解温度−30℃以下の油
で、それぞれ、粘度が、40℃のとき、2〜70cS
t、より好ましくは5〜32cSt、100℃のとき1
〜9cSt、より好ましくは2〜6cStのものを選定
することにより、圧縮機および冷凍装置の性能および信
頼性を基本的に満足するものが得られた。
【0122】これらのエステル系冷凍機油はフロン13
4aばかりでなく、フロン152a(ジフルオロエタン
CHCHF)などの塩素を含まないフロン系冷媒ガ
ス全般にわたり、相溶性が良いことを確認しており、冷
凍装置の高性能、高信頼性に有効であった。
【0123】さらに、本発明に使用する冷凍機油の成分
であるこれらエステル油はフロン12、フロン22など
従来の塩素を含むフロン系冷媒(塩化弗化炭化水素系冷
媒)にもよく溶けるので、その一部を混合して使用する
場合においても、有効であることを確認した。
【0124】ただし、これら従来の塩素を含むフロン系
冷媒は環境破壊の問題で使用規制対象のものであること
から50%以下、フロン143aを代表する塩素を含ま
ない冷媒を50%以上とし、冷凍機油の成分としても
発明に使用するエステル油を少なくとも50%以上含有
させることが望ましい。 〈実施例18〉 冷媒圧縮機である図7の密閉形ロータリー形圧縮機を、
図9及び図10図で構成する冷凍装置に組み込んで、冷
蔵庫の信頼性試験条件である圧縮機温度100℃、吐出
ガス温度9.5℃〜10kgf/cmGにおける圧縮機内に貯
溜する冷凍機油の粘度と圧縮機の冷凍能力と入力との比
である成績係数(COP)の関係を、表1に例示した代
表的な粘度グレードのエステル油を用いて測定し、その
結果を図3に示した。
【0125】図3は、横軸にロータリ型圧縮機に貯溜す
る冷凍機油の実粘度を、縦軸に圧縮機の成績係数(相対
値で表示)を目盛り、本発明のエステル油が40℃にお
ける粘度が5〜56cStのもの、従来例のポリアルキ
レングリコールおよびフロン12を使用した時のアルキ
ルベンゼン油(スニソZ−300A)について、冷凍機
油実粘度と成績係数(COP)との関係を表わしたもの
である。
【0126】これによると、従来のフロン12と40℃
のときの粘度が56cStのZ−300A(アルキルベ
ンゼン油)の成績係数を1.0として相対比較すると、
従来例3のポリアルキレングリコール(PAG56)と
フロン134aとの組合せは0.859と低く、エネル
ギ効率が約14%悪くなることを示している。
【0127】これに対して本発明の実施例17の40℃
のときの粘度が56.6cStのコンプレックスエステ
ル油は、0.906と良好であった。これは、同じ運転
条件におけるフロン134a溶解時の冷凍機油の粘度が
4.35cStと低くなるため、先に従来の技術の項で
説明した摩擦係数を示す式(9)で代表されるジャーナル
軸受理論に基づく摩擦損失を減少することによる効果
と、油のかき混ぜ動力や放熱効果なども動くものと考え
られた。
【0128】次に、本発明の冷凍サイクルに使用する冷
凍機油の成分であるエステル油の粘度を更に低い範囲の
5〜32cSt(40℃)の油のもので、同条件で成績
係数を比較すると、実施例14の32.6cSt(40
℃)のものが、0.926、実施例5の14.9cSt
(40℃)のものが0.966、実施例10の14.9c
St(40℃)のものが0.973と順次良くなり、実
施例4の5.5cSt(40℃)では逆に0.953と若
干低下の傾向を示した。
【0129】この結果より、ロータリー形圧縮機の冷凍
機油として適合する理想的なエステル油は、最良値であ
る40℃のときの粘度14.9cStの前後の範囲を含
む、5〜32(正確には5.5〜32.6)cStのエス
テル油であって、前述したごとく、分子中にエステル結
合を2ヶ以上含有しているものである。 〈実施例19〉 次に低圧容器方式のレシプロ形圧縮機に、フロン134
aおよび本発明の表1に例示の冷凍機油を併用し、冷凍
装置である冷蔵庫に組込んで、高温信頼性試験(ケース
内圧力1.6kg/cmabs、ケース温度85℃、100
V、50Hz)を実施した。
【0130】図4はその結果を示したもので、圧縮機の
中に貯溜する冷凍機油の粘度の実測値を横軸に、圧縮機
の性能を示す成績係数(COP)を縦軸に目盛り、冷凍
機油の40℃における粘度が表1の実施例で示した5.
5,14.9,22.0,32.6および56.6cStの
試料冷凍機油の実機運転における実粘度と成績係数との
関係の特性をプロットし、ほぼ直線で結ばれたものであ
る。
【0131】この結果から、低圧容器方式のレシプロ形
圧縮機は、低粘度の冷凍機油ほど成績係数がすぐれてい
ることを示し、実粘度において2〜4.2cSt、冷凍
機油の40℃における粘度が、5.5〜14.9cSt
のものが優れていると言える。
【0132】なお、実粘度が2cStよりも小さくなる
と、圧縮機の摺動部品表面の粗さが、従来の鋳鉄や鉄系
焼結材においては、仕上精度に限界があり、金属接触を
伴う境界潤滑領域に突入し、成績係数が下り、また軸受
信頼性が劣る傾向にある。 〈実施例20〉次に冷凍機 および冷媒圧縮機における潤滑性について、
下記実施例を参考にして説明する。潤滑性の評価方法と
しては、大気中のファレックス試験における焼付荷重
と、フロン134aを50%溶解した冷凍機油中での焼
付荷重を求める高圧雰囲気摩擦試験を実施し、それぞれ
の結果の相関図を図5に示した。なお、焼付荷重は回転
する試料ピンに両サイドから荷重を加えて行き、焼付を
起した時点の荷重をポンド(lb)で表示したものであ
る。
【0133】ここでは、本発明の冷凍機に使用する冷凍
機油を、表1に例示した実施例10のトリメチロールプ
ロパン(TMP)とイソーヘプタン(i−C)酸のエ
ステル油を代表例とし、このエステル油中に添加する極
圧剤の種類および添加量と潤滑特性との関係を求めた。
なお、潤滑性評価に用いた試験片の材質は、ファレック
ス試験におけるピンがJIS規格のSNC−21(ニッ
ケル・クロム鋼)、ブロックが同じくJIS規格のSU
M41(硫黄快削鋼)の標準的なものであり、これに対
して高圧雰囲気摩擦試験は、ロータリ形圧縮機で実績の
あるシャフト材(共晶黒鉛鋳鉄)とローラ材(共晶黒鉛
鋳鉄調質材)の円筒同志の摩擦試験により評価し、焼付
現象が発生した時の荷重をもって表すものである。
【0134】図5の試料No.1に示すごとく、極圧剤無
添加のエステル油(実施例10の油)は、ファレックス焼
付荷重700(lb)、フロン134a雰囲気中では9
0kgf/cmと低い値を示したのに対して、試料No.2で
は、極圧剤として分子中に活性なOH基を保有する酸性
リン酸エステルの一つであるジアルキルリン酸エステル
からなる堺化学製の商品名チクレックスH−10を1%
添加したことにより、また、試料No.3では、アルキレ
ングリコールとリン酸のエステル化合物(ブチルポリオ
キシプロピレンリン酸エステル)を1%添加したことに
より、ファレックス焼付荷重で更に400(lb)改善
して1100(lb)、フロン134a雰囲気中では9
0kg/cm改善して180kg/cmの効果を確認した。
【0135】すなわち、酸性リン酸エステルやアルキレ
ングリコールリン酸エステル化合物などのリン系化合物
が極圧剤として有効に作用し、フロン134aの共存の
有無にかかわらず、焼付防止の極圧作用として効率的で
あることが実証された。
【0136】次にファレックス試験において、荷重を一
定の100(lb)に固定し、連続最高120分の試験
を行い、鉄系試験片であるピンの摩耗量について測定し
た。その結果は、図6に示す通りであり、極圧剤無添加
の試料No.4の油では、25mg摩耗したのに対し、前述
のリン系化合物を添加したものは、試料No.7および試
料No.8に示すごとくいずれも0.4mgと小さく、5分の
1以下にすることができた。
【0137】このリン系化合物の添加量は試料No.5に
示すごとく0.05wt%付近から効果が得られ、増量す
るに従って改善されるが、10wt%をこえると潤滑性の
改善効果が飽和に達し、経済的に不利となるので実用的
でなくなる。
【0138】また、油の粘度を試料No.4の14.9cS
t(40℃)から、試料No.6の56.6cSt(40
℃)に高粘度化することによっても摩耗量は減少した。
【0139】以上のことから、本発明に使用する冷凍機
油に対して酸性リン酸エステル、リン酸エステル、アル
キレングリコールリン酸エステルなどのリン系化合物を
極圧剤として0.05〜10wt%添加することによ
り、また極圧剤を添加する代わりに油の粘度を調整し、
高粘度化することによっても鉄系摺動部材の焼付荷重お
よび耐摩耗性、潤滑性を飛躍的に改善できることがわか
った。特に、塩素を含まないフロン134aのごときフ
ロン系冷媒が共存した時に優れた性能を発揮するもので
ある。 〈実施例21〉ここでは 、圧縮機のハーメチックモータに使用する電気
絶縁材料が、フロン134aと本発明に使用する冷凍機
油の共存下での挙動について評価した結果を表2および
表3を用いて説明する。
【0140】フロン134aと冷凍機油の評価は、外部
からの影響をなくすため、シールドチューブテストによ
り、マグネットワイヤ(エナメル被覆線)と絶縁フィル
ム材の特性劣化の状態を観察した。
【0141】その(1).マグネットワイヤ(エナメル被
覆線)の絶縁特性について:マグネットワイヤの試験
は、5%伸長品と、ツイストペア試験片の2種類につい
て、150℃、40日間のシールドチューブテストを行
ったもので、表2に掲げた結果を用いて、以下説明す
る。
【0142】
【表2】
【0143】先に表1の従来例3で示したフロン134
aに適合できるといわれている冷凍機油のポリアルキレ
ングリコールとフロン134aの組合せにおけるシール
ドチューブテスト結果では、表2の試料No.9のポリエ
ステル線(PEW)、試料No.10のエステルイミド線
(EIW−R)では、5%伸長線に対していずれもクレ
ージング(亀裂)を発生し、ツイストペア試験片の絶縁
破壊電圧の保持率においては、30〜32%に著しく低
下した。
【0144】一方、同様な評価を、表1に例示の本発明
に使用する冷凍機油である実施例17のグルタル酸(G
lut)とネオペンチルグリコール(TPG)とイソー
ヘキサン酸(i−C)のコンポジットエステル油とフ
ロン134aの組合せにより実施した結果、前述の従来
例の試料No.9や10で劣化を示したポリエステル線
(ガラス転移温度:Tgは表2中に記す)やポリエステ
ルイミド線は、試料No.11や試料No.12に示す通り外
観異常が認められず、また、絶縁破壊電圧の保持率も9
5%以上と高く、マグネットワイヤに対する劣化の程度
が極めて少いことがわかった。この理由は、本発明の冷
凍機油が初期の段階で保有する水分量が少いこと、熱安
定性がすぐれ、加水分解を促進するような酸性物質を生
成しにくいことなどの特長が、改善効果をもたらしてい
るものである。
【0145】試料No.13は、試料No.12のエステルイ
ミド線の上に更にポリアミドイミド層を被覆、複合した
もの、また、試料No.14はポリアミドイミド単独(A
IW)被覆のもの、何れにおいても良好な特性を示し
た。このようにガラス転移温度の低い層の上に、ガラス
転移温度の高い層を被覆したマグネットワイヤは、フロ
ン134aと冷凍機油の侵食に対して、上層の被膜が保
護作用として有効に働くので、圧縮機の信頼性の向上に
寄与することがわかった。
【0146】その(2).絶縁フィルムの絶縁特性につい
て:次に、モータの絶縁フィルムにおけるシールドチュ
ーブテストを、130℃、40日間の絶縁強度試験を実
施し、外観および引張強さ保持率について評価した。そ
の結果を表3に示す。
【0147】
【表3】
【0148】圧縮機のハーメチックモータに用いる一般
的なポリエステルフィルム(東レ製の商品名、ルミラー
10)では、試料No.15に示す従来のポリアルキレ
ングリコール油では、油中にオリゴマ成分の折出が認め
られ、引張強さの保持率が83%であった。
【0149】これに対して、本発明に使用する実施例1
7のコンプレックスエステル油とフロン134aの組合
せに於いては、試料No.16のルミラーX12、試料No.
17のポリアミドイミドコートポリエステルであるPA
−61M(日立化成工業(株)製の商品名)、試料No.18
のポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、試
料No.19のポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
フィルムのいずれに於いてもオリゴマの折出がなく、ま
た、引張強さ保持率が89%以上とすぐれており、フロ
ン134aを用いる圧縮機の電気絶縁システムとして、
信頼性を著るしく改善できることがわかった。
【0150】すなわち、フロン134aと本発明に使用
する分子中にエステル基を2ヶ以上保有する冷凍機油の
共存する環境において、ガラス転移温度が65℃以上の
ポリエステルフィルム、ポリアミドイミドコードポリエ
ステルフィルムおよびPPSフィルム、PEEKフィル
ムを適当に選択して、ハーメチックスモータの絶縁シス
テムを完成させることが、試料No.15に示す従来例3
の油で問題となっていたオリゴマー成分の折出やフィル
ム強度低下による圧縮機や冷凍装置における性能上の問
題や長期信頼性に関する実用上の問題点を解消できるこ
とがわかった。〈実施例22〉 冷凍装置の中で、特に0
℃以下の熱交換器を利用するものでは、冷凍装置中の水
分の管理が、冷却性能や電気絶縁材の品質の保証の面で
重要な影響を及ぼすことが知られており、水分除去法に
対する技術確立が冷凍装置のシステムの上で、欠くこと
のできない要件となっている。
【0151】冷凍装置の水分は、図10に示すごとく、
構成される冷凍サイクルにおいて、圧縮機40より吐出
されたフロン134aガスが、凝縮器41において、放
熱により凝縮して液冷媒となり、高温、高圧の液冷媒が
次の膨張機構42によって、低温、低圧の湿り蒸気とな
り蒸発器43へ送られる工程のなかで、凝縮器41と膨
張機構42の間に乾燥器45が配設され、合成ゼオライ
トで代表される乾燥剤で吸着除去される。本発明に使用
する冷凍機油とフロン134aが共存する使用環境の中
で、乾燥剤の種類を適切に選択することが重要であり、
これらの適合性について表4の実施例にもとづいて説明
する。
【0152】
【表4】
【0153】供試した乾燥剤は、いずれもユニオン昭和
(株)製の商品名モレキュラーシーブスと称する合成ゼオ
ライトであり、吸着する細孔径の分布を表わす指標とし
て、25℃、炭酸ガス分圧250mmHgにおける吸着容量
(%)をもって分類をした種々の合成ゼオライトであ
る。
【0154】合成ゼオライトのフロン134aと本発明
に使用する冷凍機油に対する適合性について、表4に掲
げるシールドチューブテスト結果に基づいて説明する。
【0155】試料No.20(従来例、商品名4ANR
G)に示すアルミン酸、ケイ酸のナトリウム塩を主成分
とする合成ゼオライトは、フッ素イオン吸着量が、1.0
5%と大きく、合成ゼオライトの反応による強度低下や
粉化による問題が生ずることがわかった。また。アルミ
ン酸、ケイ酸のナトリウム、カリウム塩を主成分とする
試料No.21(従来例、商品名4AXH−6)や試料No.
22(比較例、商品名XH−7)は、炭酸ガス吸着容量
が4.5〜1.5%のもので、フッ素イオン吸着量は0.
24%と低減した。しかし、実用に供するには未だフッ
素イオン吸着量が多い。
【0156】更にアルミン酸、ケイ酸のカリウム、ナト
リウム塩を主体とする合成ゼオライトからなる試料No.
23(実施例、商品名XH−600)および試料No.2
3(実施例、商品名XH−9)は、炭酸ガス吸着容量が
0.2%のもので、フッ素イオン吸着量は0.04%と激
減した。実用に供し得るフッ素イオン吸着量が0.1%
以下であることからすれば、これらの試料はいずれも十
分に使用可能であることを示している。
【0157】なお、合成ゼオライトの細孔径の分布が、
フロン134aの分子を吸着して、合成ゼオライト自体
の特性を低下させることが問題となることから、フッ素
イオン吸着量を0.1%以下に管理するためには、炭酸
ガスの吸着容量を、1.0%以下に管理された合成ゼオ
ライトを使用すればよいことを確認している。
【0158】すなわち、フロン134aと本発明に使用
する分子中に2ヶ以上のエステル結合を保有する冷凍機
油を共存状態で使用する冷凍装置において、炭酸ガスの
吸着容量が、25℃、炭酸ガス分圧、250mmHgで、
1.0%以下に管理されたケイ酸、アルミン酸のアルカ
リ塩よりなる合成ゼオライト、例えば、ユニオン昭和
(株)製の商品名モレキュラーシーブスXH−600、X
H−9を乾燥剤として、実用することが水分のみを効果
的に除去でき、フッ素イオン吸着による粉化やビーズの
強度低下などの影響が少なく、実用面において著しく優
れていることがわかった。
【0159】なお、炭酸ガスの吸着容量が、25℃、炭
酸ガス分圧、250mmHgで、1.0%以下の下限値は、
可能な限り小さいことが望ましく、これがゼロ%の場
合、Fイオンは吸収せず水分のみを選択的に吸収し理想
的な分子篩いとなる。
【0160】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の冷凍サイ
クルを使用した冷蔵庫によれば、従来の冷凍サイクルに
おいて塩素を含む冷媒を、塩素を含まないフロン143
aに置き換えて使用する際に、冷凍機油として実粘度を
規定した特定の脂肪酸のエステル油を含有する冷凍機
を用いることで、圧縮機の信頼性を向上して成績係数が
従来に劣ることのない冷蔵庫を得ることができる。
【0161】すなわち、従来の塩素を含むフロン系冷媒
ガス(例えばフロン12)塩素を含まないフロン14
3aに置き換えて使用するので、地球環境で問題となっ
ているオゾン破壊係数(OPP)及び地球温暖化係数
(GWP)を低減することができ、環境にやさしい冷凍
サイクルを使用した冷蔵庫が可能となり、産業上貢献す
るところ大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】フロン134a冷媒と冷凍機油の相溶性を説明
する二層分離温度線図である。
【図2】各種冷凍機油の水分溶解量と体積抵抗率の関係
を示した特性図である。
【図3】高圧容器方式のロータリ形圧縮機の定格運転時
の冷凍機油の実粘度と成績係数との関係を示した特性で
ある。
【図4】低圧容器方式のレシプロ形圧縮機の定格運転時
の実粘度と成績係数との関係を示した特性である。
【図5】鉄系摩擦摺動面を有するファレックス試験とフ
ロン134a溶解油の高圧雰囲気摩擦試験の関係を示し
た特性である。
【図6】ファレックス試験による摩耗量を示すを示した
特性図である。
【図7】密閉形ロータリ圧縮機の要部縦断面図である。
【図8】ロータリ圧縮機の圧縮機械部の要部縦断面図で
ある。
【図9】冷凍装置の冷凍サイクル構成図である。
【図10】冷凍装置の冷凍サイクル構成図である。
【符号の説明】
1…ケース、 2…シリンダ、 3…偏心部、 4…回転軸、 5…主軸受、 6…副軸受、 7…ローラ、 8…シリンダの
溝、 9…ばね、 10…ベーン、 13…冷凍機油、 17…軸穴、 19…固定子、 19a…巻線、 20…回転子、 22…電動機、 23…圧縮機部、 40…圧縮機、 41…凝縮器、 42…膨張機構、 43…蒸発器、 45…乾燥器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C10N 30:06 C10N 30:06 30:10 30:10 30:18 30:18 40:30 40:30 (72)発明者 田中 誠 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所 栃木工場内 (72)発明者 本間 吉治 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (72)発明者 畠 裕章 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所 栃木工場内 (72)発明者 香曽我部 弘勝 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社 日立製作所 機械研究所内 (72)発明者 成好 巧次 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所 栃木工場内 (72)発明者 岩田 博 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社 日立製作所 機械研究所内 (56)参考文献 特許2967574(JP,B2) 特許3388666(JP,B2) K.S.Sanvordenker, 「Materials Compati bility of R134a in Refrigerant System s」,ASHRAE Winter Meeting in January 1989,1989年 1月,211−216 「THE 1990 USNC/IIR− PURDUE REFRIGERATI ON CONFERENCE AND THE 1990 ASHRAE−PURD UE CFC CONFERENC E」,1990年 7月20日,190−195 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C10M 105/38 C09K 5/04 F25B 1/00 F25B 43/00 H02K 3/44 C10N 40:30

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】冷凍機油を貯留する密閉容器内に設けら
    れ、回転子と固定子からなるモータと、その回転子に嵌
    着された回転軸と、この回転軸を介して連結される圧縮
    機部とを有する低圧容器方式のレシプロ形圧縮機と、 冷媒を凝縮させる凝縮機と、 前記冷媒を膨張させる膨張機構と、 前記冷媒を蒸発させる蒸発器とを有する冷凍サイクルを
    備え、 この冷凍サイクルに封入される前記冷媒をフロン134
    aとした冷蔵庫において、 前記冷凍機油を、下記の一般式(1)乃至(4)で示さ
    れる脂肪酸のエステル油の群から選ばれる少なくとも1
    種を含有するものであり、実粘度が2〜4.2cStと
    した冷蔵庫。 (R ・CH ) ・C・(CH OCOR ) …(1) ・CH ・C・(CH ・OCOR ) …(2) C・(CH −OCOR ) …(3) (R ・COOH C) ・C・CH ・O・CH ・C
    (CH ・OCOR ) …(4) 但し、R :Hまたは炭素数1〜3のアルキル基 :炭素数5〜12のアルキル基で、炭素数の異なる
    複数種を混合す ることができる
  2. 【請求項2】請求項1に記載の冷蔵庫において、前記レ
    シプロ形圧縮機は、前記圧縮機部より吐出された高圧冷
    媒ガスが前記密閉容器外へ直接排出されるものである冷
    蔵庫。
  3. 【請求項3】冷凍機油を貯留する密閉容器内に設けら
    れ、回転子と固定子からなるモータと 、その回転子に嵌
    着された回転軸と、この回転軸を介して連結される圧縮
    機部とを有する低圧容器方式のレシプロ形圧縮機と、 冷媒を凝縮させる凝縮機と、 前記冷媒を膨張させる膨張機構と、 前記冷媒を蒸発させる蒸発器とを有する冷凍サイクルを
    備え、 この冷凍サイクルに封入される前記冷媒をフロン134
    aとした冷蔵庫において、 前記冷凍機油は、下記の一般式(1)乃至(4)で示さ
    れる脂肪酸のエステル油の群から選ばれる少なくとも1
    種を含有するものであり、実粘度が2〜4.2cStと
    した冷凍機油からなり、 前記固定子にはエナメル材で被覆した巻き線を備え、こ
    の巻き線は、ポリエステル線(PEW)、上層ポリアミド
    イミド/下層ポリエステルイミド線(RFW-V)及びポリ
    アミドイミド線(AIW)のいずれか1種のエナメル被覆
    線である冷蔵庫。冷蔵庫。 (R ・CH ) ・C・(CH OCOR ) …(1) ・CH ・C・(CH ・OCOR ) …(2) C・(CH −OCOR ) …(3) (R ・COOH C) ・C・CH ・O・CH ・C
    (CH ・OCOR ) …(4) 但し、R :Hまたは炭素数1〜3のアルキル基 :炭素数5〜12のアルキル基で、炭素数の異なる
    複数種を混合す ることができる
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