JP3436643B2 - ボルトの廻り止め構造 - Google Patents

ボルトの廻り止め構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セレーションボル
トを用いて締結対象物を所定箇所に結合するためのボル
トの廻り止め構造に関し、四輪自動車のサスペンション
部品等を締結するボルトに適している。
【0002】
【従来の技術】汎用ボルトを用いてサスペンションロッ
ド等をサスペンションのアーム等の他の部品に固定する
場合、ボルトとナットとを組み合わせて使用するときに
は、ボルト側及びナット側の双方にスパナ等による廻り
止めをしなければならない。このように、スパナ等で行
う廻り止め作業は組立能率の低下を招く。
【0003】そこで、従来は、図7及び図8に示すよう
に、ロアアーム1にテンションロッド2を結合する場
合、締結用ボルト3としては、先端側の雄ねじ部4と頭
部5とローレット加工を施したセレーション部6とを一
体に有するものが用いられ、テンションロッド2の板状
端部7に該セレーション部6よりも若干小さい内径の挿
通孔8を開け、この挿通孔8に該セレーション部6を圧
入してボルト3を挿通し、ボルト3の雄ねじ部4に螺合
するナット11を使用し、タイヤ12を支持するロアア
ーム1にテンションロッド2をボルト3とこれに螺合す
るナット11とによって結合していた。そして、従来の
廻り止め構造では、テンションロッド2の挿通孔8は円
形をなし、該孔に嵌合するボルト3のセレーション部6
の硬さはテンションロッド2の硬さより硬いため、該孔
に圧入された時、孔の内壁面にセレーション部6が食い
込み、これがボルト3の廻り止め効果を成していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の構
造では、ボルト3を圧入するための挿通孔8を開けてあ
るテンションロッド2に高強度が要求される場合、焼き
入れ焼き戻し等の熱処理が必要となる。そのため、テン
ションロッド2の硬度が大きくなり、ボルト3のセレー
ション部6がテンションロッド2の挿通孔6の内周に噛
み込まず、逆にセレーション部6が削れてしまい、十分
な廻り止め効果が得られなくなり、ナット11を締付け
る際に、ボルト3も空廻りしてしまうという問題点があ
った。
【0005】このボルトの空廻りを防止する対策とし
て、ボルトの硬度を上げてテンションロッドよりも硬く
しようとしても、割れ等の問題が出てくるため限界があ
る。本発明は、上述のような従来の問題点に鑑みなされ
たものであって、その目的とするところは、ボルトの空
廻りを確実に回避することができるのみならず、工場に
おける組付け工数を減らし、コストの低減を図ることが
できるボルトの廻り止め構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、先端側の雄ねじ部と、該雄ねじ部よりも
若干外径が大きいセレーション部とを一体に有するボル
トを用い、締結対象物に開けた挿通孔に該ボルトを通
し、該締結対象物を締結して所定箇所に取付けるための
ボルトの廻り止め構造において、前記挿通孔には同心配
置した曲率半径が大きい方の一対の大径曲面部と該一対
の大径曲面部の曲率中心を対称中心とし対称的に配置し
た曲率半径が小さい方の一対の小径曲面部とを備え、該
一対の小径曲面部が前記セレーション部の外周面に対し
干渉しない位置にあり、前記一対の大径曲面部が前記セ
レーション部の外周面よりも若干小さい半径の円周に沿
って形成されており、該一対の大径曲面部に前記セレー
ション部を係合させて前記挿通孔に前記ボルトを圧入す
ることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態に係るボルト
の廻り止め構造につき、セレーションボルトを用いてロ
アアームにテンションロッドを連結する場合を例とし
て、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明
の実施の形態に係るボルトの廻り止め構造のテンション
ロッドの中心線に沿った部分断面図であり、図2はボル
トが圧入される挿通孔の形状を示す。
【0008】この実施の形態に係るボルトの廻り止め構
造では、ロアアーム1にテンションロッド2を結合する
ために従来と同様のボルト3を用いており、テンション
ロッド2の板状端部7に開けてある挿通孔16は、曲率
半径が小さい方の一対の小径曲面部18,18と、同心
配置した曲率半径が大きい方の一対の大径曲面部21,
21とからなっており、一対の小径曲面部18,18が
一対の大径曲面部21,21の曲率中心を対称中心とし
て対称的に配置されている。
【0009】そして、一対の小径曲面部18,18はセ
レーション部6の外周面に対し干渉しない位置にあり、
一対の大径曲面部21,21はセレーション部6の外周
面よりも若干小さい曲率半径の円周に沿って形成されて
おり、該一対の大径曲面部21,21にセレーション部
6の一部を係合させて挿通孔16にボルト3を圧入する
ことによって、該ボルト3は廻り止めされている。
【0010】ロアアーム1は、ボルト3の雄ねじ部4の
外径よりも若干直径が大きい円形の透孔13を開けてあ
る。テンションロッド2は、ロアアーム1の透孔13の
位置に合わせて挿通孔16を開けてある。
【0011】ボルト3は、先端側の雄ねじ部4と頭部5
との間に外径が該雄ねじ部4よりも若干大きく頭部5よ
りも小さいセレーション部6を一体に有し、該セレーシ
ョン部6と雄ねじ部4との間にテーパ部9が介在してい
る。セレーション部6は、外周にローレット加工を施し
てあり、ローレット加工された部分が挿通孔16内に収
まるように寸法設定されている。
【0012】挿通孔16は、図3及び図4に示すよう
に、長穴17と、該長穴17の両端の一対の小径曲面部
18を残して同心位置に開けた円形穴20の内周面とを
組み合わせて構成されている。テンションロッド2の所
定箇所に、図3において、真直平行部19,19の内寸
法がセレーション部6の直径よりも若干小さく長手方向
の内寸法がセレーション部6の直径に対し小さくない長
穴17を、打ち抜きによって開ける。
【0013】次に、図4において二点鎖線で示すよう
に、直径がセレーション部6の外径よりも若干小さく雄
ねじ部4の外径よりも大きいドリル若しくはリーマを長
穴17に対し同心的に通すと、図2に示すような挿通孔
16が形成される。円形穴20の直径は真直平行部1
9,19間の内寸法よりも大きく一対の小径曲面部1
8,18間の内寸法よりも小さい。
【0014】かかる挿通孔16は、ボルト3のセレーシ
ョン部6の半径よりも小さい曲率半径R1 の曲面を有す
る長穴17の両端部分である一対の小径曲面部18,1
8と、半径R2 がセレーション部6の半径よりも若干小
さく且つ雄ねじ部4の半径よりも大きく長穴17に対し
同心的に開けた円形穴20の内周面の部分である一対の
大径曲面部21とを組み合わせて形成されている。そし
て、ボルト3が圧入される際に、図5に示すように一対
の小径曲面部18の少なくとも一部はセレーション部6
に対し干渉しない位置にあるとともに、図1に示すよう
に一対の大径曲面部21はセレーション部6に対し干渉
する位置にある。
【0015】本発明の上記実施の形態に係るボルトの廻
り止め構造では、ロアアーム1にテンションロッド2を
重ね合わせ、ボルト3を透孔13及び挿通孔16に芯を
合わせて真直に挿入し、セレーション部6を挿通孔16
に圧入すると、セレーション部6のローレット加工した
部分が挿通孔16の一対の大径曲面部21に食い込ん
で、ボルト3は廻り止めされる。この状態で、図8に示
すのと同様のナットを雄ねじ部4に螺合させ、締め付け
て、ロアアーム1にテンションロッド2を結合する。
【0016】本発明の上記実施の形態に係るボルトの廻
り止め構造によれば、一対の大径曲面部21,21に対
向するセレーション部6のローレット加工した部分が確
実に残り、一対の小径曲面部18,18と一対の大径曲
面部21,21との境界の各変曲部22に、セレーショ
ン部6のローレット加工した部分が引掛かって、確実に
ボルト3が廻り止めされる。ボルト3の圧入荷重に比較
し、ボルト3を回転させようとする力に対して挿通孔1
6の内面とセレーション部6の外周面との必要な摩擦力
は小さいため、セレーション部6のローレット加工した
部分が削られてしまうことはない。高強度を得ようとし
て締結対象物に熱処理を施した後に、穴開け加工しよう
としても、熱処理により表面が硬くなって穴開けが困難
となるため、予め穴を開けた後に熱処理する場合、寸法
精度が狂うので、通常、熱処理後に穴仕上げ加工をする
必要があり、本発明を適用する場合も、テンションロッ
ド2の製造上何ら工程増しとはならず、コストアップも
ない。
【0017】本発明の効果について、具体的数値を従来
との比較において示すと、セレーション部6の直径が共
に10.2mmのボルト3を用い、従来の円形挿通孔8の
直径が10mm、本発明の挿通孔16(8×11.5mm)
の小径曲面部18の曲率半径が4mmで大径曲面部21の
曲率半径が5mmの場合の実験結果によると、廻りトルク
は、従来の方が4〜7kgf-mであるのに対し、本発明で
は10kgf-m以上であった。これにより、本発明に係る
形状の挿通孔16の場合、廻りトルクは、テンションロ
ッド2のボルトの締付けトルク4〜6kgf-mを大幅に越
えており、廻り止め機能は十分達成している。
【0018】なお、本発明は、上記実施の形態によって
限定されるものではなく、その要旨から逸脱しない範囲
で種々の変形が可能である。例えば、ロアアーム1にテ
ンションロッド2を連結する場合以外にも適用すること
ができ、長穴17と円形穴20の組み合わせに代えて長
円穴と直径が該長円穴の小径よりも大きく長径よりも小
さい円形穴との組み合わせによって挿通孔を形成しても
よい。また、本発明は上記構造に留まらずボルトのセレ
ーションの歯の少なくとも一歯が引掛かる形状のもので
あれば良く、図6に示すように、挿通孔の内周面側に、
対をなす平行な内周面が多対配置され、且つ挿通孔の中
心から内周面への距離が異なっていてセレーション部の
外周面に対し干渉しない位置にある非干渉部分と干渉す
る位置にある干渉部分とを備える十字形や六角形の挿通
孔16でもボルトの廻り止めの効果が達せられ、セレー
ションの歯との引掛かり具合は規則的、不規則的、連続
的または不連続的であっても構わない。
【0019】
【発明の効果】本発明は、同心配置した曲率半径が大き
い方の一対の大径曲面部と該一対の大径曲面部の曲率中
心を対称中心とし対称的に配置した曲率半径が小さい方
の一対の小径曲面部とを挿通孔に備え、一対の小径曲面
部がセレーション部の外周面に対し干渉しない位置にあ
り、一対の大径曲面部がセレーション部の外周面よりも
若干小さい半径の円周に沿って形成されており、該一対
の大径曲面部にセレーション部を係合させて挿通孔にボ
ルトを圧入することにより、挿通孔にセレーション部が
引掛かってボルトが廻り止めされるので、締結対象物を
組付ける時に、ボルトとナットの両方にスパナ等で廻り
止めをする必要がなくなり、熱処理を施した高強度の締
結対象物に対しても、加工コストが上昇すること無しで
ボルトを確実に廻り止めし、組立工数の削減を図ること
ができるという効果を奏する。また、セレーション部の
外径よりも内面間寸法が小さい平行部を有する長穴の両
端円弧に沿い該セレーション部の外周面に対し干渉しな
い位置にある一対の小径曲面部と、直径が平行部間の内
寸法よりも大きく一対の小径曲面部間の内寸法よりも小
さい円に沿った一対の大径曲面部とによって、挿通孔を
形成することにより、極めて容易に挿通孔を開けること
ができる。さらに、挿通孔の内周面側には対をなす平行
な内周面が多対配置され、且つ挿通孔の中心から内周面
への距離が異なっていてセレーション部の外周面に対し
干渉しない位置にある非干渉部分と干渉する位置にある
干渉部分とを備え、該干渉部分にセレーション部を係合
させて挿通孔にボルトを圧入することによっても、ボル
トを確実に廻り止めして、組立工数の削減を図ることが
できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るボルトの廻り止め構
造のテンションロッドの中心線に沿った部分断面図であ
る。
【図2】ボルトが圧入される挿通孔の形状を示す図であ
る。
【図3】本発明の実施の形態に係る挿通孔を開ける方法
の説明用図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る挿通孔を開ける方法
の説明用図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るボルトの廻り止め構
造の要部を示しボルトの中心を通る位置においてテンシ
ョンロッドを横断する断面図である。
【図6】ボルトが圧入される挿通孔の形状の変形例を示
す図である。
【図7】従来の四輪自動車におけるボルトの廻り止め構
造を適用したサスペンションの要部を示す概略構成図で
ある。
【図8】従来のボルトの廻り止め構造を説明するための
部分断面図である。
【符号の説明】
1 ロアアーム 2 テンションロッド 3 ボルト 6 セレーション部 7 板状端部 13 透孔 16 挿通孔 17 長穴 18 小径曲面部 19 平行部 20 円形穴 21 大径曲面部 22 変曲部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−225212(JP,A) 特開 昭52−92059(JP,A) 特開 平5−60203(JP,A) 特開 昭56−113811(JP,A) 実開 平3−43108(JP,U) 実開 平3−51208(JP,U) 実開 平3−69715(JP,U) 実開 昭54−172145(JP,U) 実開 昭63−27312(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16B 35/04 F16B 37/04 F16B 4/00 F16D 1/02 F16D 1/06

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 先端側の雄ねじ部と、該雄ねじ部よりも
    若干外径が大きいセレーション部とを一体に有するボル
    トを用い、締結対象物に開けた挿通孔に該ボルトを通
    し、該締結対象物を締結して所定箇所に取付けるための
    ボルトの廻り止め構造において、前記挿通孔には同心配
    置した曲率半径が大きい方の一対の大径曲面部と該一対
    の大径曲面部の曲率中心を対称中心とし対称的に配置し
    た曲率半径が小さい方の一対の小径曲面部とを備え、該
    一対の小径曲面部が前記セレーション部の外周面に対し
    干渉しない位置にあり、前記一対の大径曲面部が前記セ
    レーション部の外周面よりも若干小さい半径の円周に沿
    って形成されており、該一対の大径曲面部に前記セレー
    ション部を係合させて前記挿通孔に前記ボルトを圧入す
    ることを特徴とするボルトの廻り止め構造。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のボルトの廻り止め構造
    において、前記セレーション部の外径よりも内面間寸法
    が小さい平行部を有する長穴の両端円弧に沿い該セレー
    ション部の外周面に対し干渉しない位置にある一対の小
    径曲面部と、直径が前記平行部間の内寸法よりも大きく
    前記一対の小径曲面部間の内寸法よりも小さい円に沿っ
    た一対の大径曲面部とによって、前記挿通孔を形成する
    ことを特徴とするボルトの廻り止め構造。
  3. 【請求項3】 先端側の雄ねじ部と、該雄ねじ部よりも
    若干外径が大きいセレーション部とを一体に有するボル
    トを用い、締結対象物に開けた挿通孔に該ボルトを通
    し、該締結対象物を締結して所定箇所に取付けるための
    ボルトの廻り止め構造において、前記挿通孔の内周面側
    には対をなす平行な内周面が多対配置され、且つ前記挿
    通孔の中心から前記内周面への距離が異なっていて前記
    セレーション部の外周面に対し干渉しない位置にある非
    干渉部分と干渉する位置にある干渉部分とを備える十字
    形に形成され、該干渉部分に前記セレーション部を係合
    させて前記挿通孔に前記ボルトを圧入することを特徴と
    するボルトの廻り止め構造。
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