JP3432214B2 - 藻類の処理法 - Google Patents

藻類の処理法

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  • Biological Treatment Of Waste Water (AREA)
  • Purification Treatments By Anaerobic Or Anaerobic And Aerobic Bacteria Or Animals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、湖沼、池、ダム、
濠、内海等の閉鎖性水域に発生する浮遊性の藍藻類(ア
オコ)を殺藻、無害化する処理法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】比較的水温の高い時期になると、富栄養
化した湖沼やダム等の閉鎖性水域にアオコと呼ばれる藍
藻類(シアノバクテリア)が多量に発生して、水域の自
然環境を破壊したり、生活用水や工業用水の利用を著し
く阻害する事態がしばしば起きている。また、湖岸など
に打寄せられたアオコは、腐敗して悪臭を発するので、
吸引ろ過等の方法で採集し、乾燥・焼却等の処分をして
いるが実効は少ないのが現状である。
【0003】ところで、アオコは多くの種類を含んだ藍
藻生物群の俗称であって、ミクロシステス属、アナベナ
属、オシラトリア属などのシアノバクテリアが含まれて
いる。ミクロシステス属は単細胞性の球状をした菌であ
り、国内でも頻繁に検出されている。この菌は、肝毒素
や発ガン促進物質として注目されるミクロシスチンの生
産菌としても知られている。なお、全ての藍藻類が同じ
毒性を持つものではなく、神経毒として作用するもの
や、無毒のものも多数あり、また、化学薬品に対する感
受性も異なる。ミクロシスチンは分子量約1,000の
環状ペプチドであり、これまでに構造の異なる約50種
類のものが報告されている。アオコの発生は湖沼の富栄
養化の結果であり、すなわち環境汚染を反映するもので
あって、地域住民の生活に密接に係るものであることか
ら、アオコの処理にあたっては、その種類並びに発生水
系に応じた適切な処理法を選択する必要がある。さらに
大切なのはその場所の生態系を乱さないために処理機材
や持ち込んだ菌体等が回収処分できるシステムであり、
処分に伴なって新たな環境汚染が発生しないことを確認
して決定しなければならない。
【0004】アオコの従来の処理方法としては、硫酸
銅、塩素、オゾン、β−シアノ−L−アラニンなどの殺
藻剤によって死滅させたり(特開平11−71203号
公報、特開平11−70395号公報に記載)、紫外線
照射や高速流れで生じるキャビテーション作用によって
細胞の増殖作用を失活させるもの(特開平11−477
85号公報に記載)、水生ミミズ、ミジンコ、モナスグ
ットウラなどの生物の捕食作用で処理するもの(特開平
7−100489号公報、特開平8−126号公報、特
開平8−117790号公報等に記載)が提案されてい
る。また、特許第3050578号公報には、水面付近
に浮遊するアオコにバチルス属、サッカロミセス属また
はダクチロスポランジウム属に属する微生物の株を散布
し、アオコの浮力を失わせて池底に沈殿させ若しくは殺
藻する方法及び剤に関する技術が示されている。さらに
変異体バクテリアを利用する技術(特開昭62−499
99号公報に記載)なども提案されている。レイムらは
汚水処理場の酸化池から得られたバチルス ブレビス(B
acillus brevis)の培養液が溶藻性を示し、これはグラ
ミシヂン(Gramicidin)様物質による細胞膜の溶解であ
ることを指摘している。(Can.J.Microbiol.,20,981-98
6,1974 Reim,R.L., M.S.Shane,& R.E.Cannon)
【0005】前記の各種処理方法には、種々の欠点が指
摘されたり、研究段階のものもあって、大規模な水域を
対象とした実用技術はいまだ完成していない。実用化す
る上での課題は、使用する資材等による環境の二次汚染
がないこと、アオコの処分に伴ない溶出する毒性成分の
ミクロシスチンを確実に無毒化するシステムであるこ
と、そして処理システムが経済的であり、取り扱いが容
易であり、かつ必要に応じて回収可能であって環境の生
態系をかく乱しないものであることが挙げられる。
【0006】藍藻類のミクロシステスが生産するミクロ
シスチンには、50を越える同族体や誘導体があること
が報告されており、日本産の藍藻類からはミクロシスチ
ンRR,LR,YRなど7種の同族体が確認されてい
る。さらに、本願発明者の調査で、国内湖沼において藍
藻の細胞から放出されたミクロシスチンLRの半減期は
約10週間であり、水中でかなり安定に存在している。
なお、塩素処理を行なうとアダ(Adda)の共役ジエンの
4,5位の二重結合に2個の水酸基が付加した化合物を
はじめとする数種のジハイドロオキシミクロシスチンと
称される化合物が生成して無害化できたが、塩素処理に
よる環境への影響が懸念されている。(有毒ラン藻が産
生するMicrocystin の生合成に関する研究(I)名城大
学総合研究所紀要第4号、pp127-140(1999.3)原田、藤
井、K.SIVONEN )オーストラリアのジョーンズらは河川
水から単離したスフィンゴモナス菌がミクロシスチンを
加水分解して直鎖状の化合物にすることを報告してい
る。(Enzymatic pathway for the bacterial degradati
on of the cyanobacterial cyclicpeptide toxin micro
cystin LR. Appl.Environ Microbiol, 62(11),4086-409
4,1996, Bourne DG, Jones GJ, Blakeley RL, Jones A,
Negri AP, Riddles P.)しかし 、加水分解処理による
環境への影響や実用化する上での問題解明はされていな
い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、アオ
コの発生する自然環境から採取した溶藻菌体を使ってア
オコを死滅させ、続いて同じ環境から単離・培養した菌
体の分泌する酵素によってアオコの放出したミクロシス
チンを分解することのできる、高性能で、長期間安定し
て操業でき、しかも経済的なシステムを構築することに
ある。他の課題は、アオコの分解に伴なって発生するB
OD成分を活用して、後段の酵素発生菌の消耗を減ら
し、かつBOD成分を低減する水処理プロセスを実現す
ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、藻類を含有す
る液を、ブレビバチルス系の溶藻性微生物と接触させて
殺藻または分解し、次いで前記藻類の分解によって放出
されたミクロシスチンをスフィンゴモナス菌と接触させ
て無害化することを特徴とする藻類の処理法である。ま
た、藻類を含有する液を、ブレビバチルス系の溶藻性微
生物と接触させて殺藻または分解し、次いで前記藻類の
分解によって放出されたミクロシスチンをスフィンゴモ
ナス菌と接触させて無害化した後、活性汚泥と好気条件
下で接触させBOD成分を除去することを特徴とする藻
類の処理法である。そして、前記ブレビバチルス系の溶
藻性微生物及び/又はスフィンゴモナス菌は、多孔性担
体にそれぞれ105個/cm3担体以上担持したものであ
ることを特徴とする前記の藻類の処理法である。
【0009】本発明を実施する工程の1例を図1に示す
が、本発明はこれに限定されるものではない。アオコを
含む水を取水して除塵、流量調節などの必要な前処理を
施し、藍藻類の溶藻工程に導入する。溶藻工程には予め
ブレビバチルス菌を培養して担体に担持した担体が投入
してあり、ブレビバチルスによってアオコの細胞膜が破
壊される。次ぎに、アオコの細胞内から溶出したミクロ
シスチンを分解するための工程に移るが、この工程で
は、スフィンゴモナス菌を培養して担体に担持したもの
と接触させる。ミクロシスチン分解工程においても、B
ODは減少するが、後段にBOD分解工程を付設するこ
とによって、清浄度の高い処理水が放出される。
【0010】本発明者らは、ブレビバチルス菌、放線菌
ストレプトマイセスが生産する物質(抗生物質様低分子
化合物)によるミクロシステスの溶藻機構を検討し、溶
藻速度が菌体濃度を高くすることによって急激に増大す
ること。また、ミクロシスチンLRの分解がスフィンゴ
モナス菌が分泌する酵素によって起きること。濃度2m
g/LのミクロシスチンLRをスフィンゴモナス菌と2
4時間接触させることでWHOの基準である1μg/L
以下にすることが可能であること。さらに、ミクロシス
テスの分解によって生じたBOD成分をスフィンゴモナ
ス菌が摂取してその活性維持期間を実用上好ましい2ヶ
月以上にまで延長できること。ブレビバチルス菌及びス
フィンゴモナス菌は多孔性担体に10個/cm3担体
以上担持させるとその活性が高められ、しかも回収、再
生が容易であること等を新たに見い出して本発明を完成
した。
【0011】本発明で使用したブレビバチルス菌は、神
奈川県津久井郡所在の津久井湖の底泥を採取し、寒天培
地で培養・分離した後集積培養したものである。ブレビ
バチルス菌の産業技術総合研究所生命工学工業技術研究
所への寄託は、次ぎのとおりである。 微生物の表示:(寄託者が付した識別のための表示)
Brevibacillus sp.B1−A (受託番号)FERM
P−18213 受領及び受託:平成13年2月20日 寄託に際して使用した培地は、グルコース0.5g/
L、ポリペプトン2g/L、酵母エキス1g/L、寒天
15g/Lの桜井培地である。寄託菌体B1−Aについ
て16SrRNA遺伝子塩基配列を測定し、国立遺伝研
究所の相同性検索システムFASTAで検索した結果、
遺伝研アクション番号D78460 Brevibacillus for
mosus と98.512%の相同性を示したので、本菌体
は、ブレビバチルスと同定した。16SrRNA遺伝子
塩基配列を参考のために表1に示す。
【0012】
【表1】
【0013】本菌はかん菌で、グラム陽性の好気性菌で
ある。運動は鞭毛による。性の胞子がふくれて胞子嚢を
形成する。10種のコロニーは平滑で、黄色みを帯びた
灰色で、栄養寒天培地上では可溶性の色素は生成しな
い。
【0014】溶藻反応に使用するブレビバチルスの培養
は、散気、撹拌装置を備えたタンクに培養液1L当たり
ペプトン2g、酵母エキス1g、ブドウ糖0.5gを溶
解し、これに予め単離、培養しておいた種培養液のブレ
ビバチルス菌を加えて27℃の温度で緩やかに曝気撹拌
しながら培養した。菌体濃度が106個/mL以上に達
したところで多孔質担体を浸漬し、12時間以上放置し
ておくと、菌体数が105個/cm3担体以上担持したブ
レビバチルス菌を担持した多孔質担体が得られる。培養
した高濃度の菌体含有液は、アオコを含む液に直接散布
しても良いが、発泡ポリエステルのごとき多孔質担体に
担持させておくと、担体表面に高菌体濃度の領域が形成
されるため、ここで溶藻反応が活発に行なわれる。担持
したブレビバチルスの菌体数が2×10個/cm3
体〜1×10個/cm3担体の試験担体を、アオコの
含有量が10個/mLの溶液に12時間浸漬したとき
の溶藻率を図2に示す。ブレビバチルス菌の担持量が1
5個/cm3担体以上、好ましくは5×105個/cm3
担体以上維持すると溶藻率は平均70%以上を示した
が、菌体数が減ると溶藻率は急激に低下する。なお、菌
体数の少ない担体は再度培養タンクに投入して菌体数を
増やすことができる。
【0015】アオコ(藍藻)の濃度はクロロフィルa濃
度から測定することができる。津久井湖での現地試験
(フィールドデータ)及び実験室で測定した藍藻濃度と
クロロフィルa濃度の関係は図3に示すとおり、ほぼ直
線的に変化しており、クロロフィルaの測定値から藍藻
濃度を決定することができる。ブレビバチルス菌の担体
としては、発泡ポリエチレンの他にも発泡ポリプロピレ
ン、ポリエステル、ウレタン、活性炭、竹炭、木材チッ
プ、セルロース、珪酸バルーン、ウレタンゴムなどの水
処理で使用する材料をそれらの使用法に従い採用するこ
とができる。形状は粒状体の他に、板状、網状、紐状、
棒状、筒状等、使用しやすい形状のものを適宜選ぶこと
ができる。菌体の担持は付着型が簡便であるが、含水ゲ
ルに培養成分を添加して菌体を包括固定したものは、付
着型よりも有効期間を長く維持することができる。ブレ
ビバチルス菌の培養液に、凝集剤を添加して得られた含
水水和酸化物等は、水和物とアオコとの結合が強く溶藻
反応としては好ましいが、再生して使うことができな
い。
【0016】アオコを含む原水は、通常塵芥が混じって
いるので、スクリーンなどで共雑物を除き、必要に応じ
て高速で撹拌し、多糖類の膜で覆われたアオコの集合体
を破壊して、次ぎの段階で行なう溶藻反応において、溶
藻物質であるブレビバチルスが直接アオコ細胞と接触し
易くすることが好ましい。アオコの発生初期段階では濃
度が薄かったり、アオコの種類によっては水面に浮上せ
ずに水中に浮遊しているものがある。この場合はデカン
ターや遠心分離機を用いてアオコを濃縮することで、反
応槽の容量を小さくすることができる。溶藻段階は、撹
拌処理した藻類を含有する液をブレビバチルス菌と接触
させるものであれば、反応槽の形式や方式にとくに拘束
されるものではない。好ましくは比重がほぼ1である担
体を液中に浮遊させ、槽の底部から空気を吹きこみ、緩
やかに撹拌するものである。別の方式としては、担体を
堆積させ、液を堆積層にポンプ循環で接触させるもの、
格子状または板状の担体を使用するもの、特に軽比重の
担体と接触させ、MFやROなどの膜を処理水側の出口
に設けた膜型リアクターは上水用の水源施設としても好
適である。
【0017】ミクロシスチンの分解段階は、アオコの細
胞膜を破壊した溶液をスフィンゴモナス菌を担持した担
体と接触させることによって行なわれる。日本産のアオ
コからは約6種類のミクロシスチンが検出されており、
その構造は化学構造式(1)に示すものを基本単位と
し、表2に示すように分類される。なお、記号の略号は
表2の下に併記する。
【0018】
【化1】
【0019】
【表2】 Ala:D-アラニン β-MeAsp:D-β-メチルアスパラギン酸 Adda:3-amino-9-methoxy-2,6,8-trimethyl-10-phe
nyldeca-4,6-dienoic acid Glu:D-グルタミン酸 Mdha:N-メチルデヒドロアラニン Arg:L-アルギニン Leu:L-ロイシン
【0020】本発明で使用したスフィンゴモナス菌は、
神奈川県津久井郡所在の津久井湖の湖水を採取し、寒天
培地で培養・分離し、集積培養したものであり、前記表
2のミクロシスチンのいずれにも有効に働くものであ
る。スフィンゴモナス菌の産業技術総合研究所生命工学
工業技術研究所への寄託は次ぎのとおりである。 微生物の表示:(寄託者が付した識別のための表示)ス
フィンゴモナス エスピー ビー9(Sphingomonas sp.
B9)(受託番号)FERM P-18212 受領及び受託:平成13年2月20日 培地の組成はグルコース0.5g/L、ポリペプトン2
g/L、酵母エキス1g/L、寒天15g/Lからなる
桜井培地である。スフィンゴモナス エスピー ビー9
(Sphingomonas sp.B9)菌の16SrRNA遺伝子塩
基配列を表3に示す。
【0021】
【表3】
【0022】塩基配列に基づいて、スフィンゴモナス属
菌種、関連アルファ−プロトバクテリア(α−Proteoba
cteria)菌種との近隣結合法による系統樹から、当該菌
種はスフィンゴモナス属のクラスターに入った。なお、
この属はグラム陰性菌で、胞子は形成せず直線状のかん
菌で、運動するための単一の極性鞭毛を有しており、真
性の好気性菌である。コロニーはそれが出現したときか
らレモンイエローをしており、消滅すると色も消えるの
で簡便に存在を識別することができる。
【0023】スフィンゴモナスは黄色を帯びた菌であ
り、ミクロシスチン分解酵素を消費してしまうと無色に
なる。スフィンゴモナス菌は一般の湖沼水中では繁殖し
にくく、反応タンクからの流出分を考慮すると20日間
程度で新しい菌体を担持した担体を追加する必要があ
る。しかし、前段で藍藻類を殺藻すると、藻類の体内か
ら放出されるBOD成分をスフィンゴモナス菌が摂取し
て活性維持期間が延びることが分かった。すなわち、一
定濃度のミクロシスチン溶液中のBOD濃度を変えて、
スフィンゴモナス菌の活性維持期間を測定した結果を図
4に示す。BOD成分濃度が2mg/L以上あると、ス
フィンゴモナス菌の活性がやや高まりかつ寿命が大幅に
延びるので、ミクロシスチン分解工程はBOD濃度2m
g/L以上の条件下で行なうことが好ましい。なお、処
理水中に最初から含まれていたり、殺藻段階で放出され
たBOD成分の除去が必要な場合は、ミクロシスチン分
解工程の後で行なうのが好ましい。
【0024】スフィンゴモナス菌の培養は、散気、撹拌
装置を備えたタンクに培養液1L当たりペプトン2g、
酵母エキス1g、ブドウ糖0.5gを溶解し、これに予
め単離、培養しておいた種培養液のスフィンゴモナス菌
を加えて27℃の温度で緩やかに曝気撹拌しながら培養
した。菌体濃度が106個/mL以上に達したところで
多孔質担体を浸漬し、12時間以上放置しておくと、菌
体数が105個/cm3担体以上担持したスフィンゴモナ
ス菌を担持した多孔質担体が得られる。ブレビバチルス
やスフィンゴモナスの培養には、廃糖蜜、コンスティー
プリカなどの天然培地が安価に利用できるが、天然培地
と合成培地を組み合わせた半合成培地でもよく、単なる
合成培地でも良い。とくに培養初期は立ち上げが難しい
ため合成培地を用い、その後、天然培地を用いるのがよ
い。
【0025】培養した高濃度の菌体含有液に発泡ポリエ
チレンのごとき多孔質担体を浸漬しておくと、担体表面
に高菌体濃度の領域が形成されるため、ここでミクロシ
スチンの分解反応が活発に行なわれる。菌体濃度が2×
10個/cm3担体〜5×10個/cm3担体の試験
担体を、ミクロシスチン濃度が200μg/Lの溶液に
12時間浸漬したときの分解率を図5に示す。スフィン
ゴモナス菌の担持量が1×105個/cm3担体以上でミ
クロシスチンの分解率は80%以上を示したが、菌体数
が減ると溶藻率が低下するので、担体を高濃度培養タン
クに戻して再担持させることで性能が回復する。担体及
び担持方法並びに反応槽については、ブレビバチルス菌
の処理方法を準用することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面によって具体
的に詳細に説明する。図6は、本発明の処理システムの
一例を説明する図である。アオコを含む原水は、原水配
管(12)を通って撹拌槽(10)に送られる。なお、
流入口にはスクリーン(14)があって木片等の異物を
除去する。撹拌槽(10)の中には複数の撹拌機(1
7)があって連続的又は間欠的に回転して被処理液を均
質化する。
【0027】被処理液は配管(19)、送液ポンプ(2
1)によって、第1の溶藻槽(30−1)に送られる。
溶藻槽(30−1)、(30−2)及び(30−3)は
ほぼ同じ形状(100L×3槽)をしているが、被処理
液の流れの方向は最初の槽が上方向で、次が下向き流
れ、再び上向きとし、液と担体との接触性を高めてい
る。各溶藻槽の内部には、下部に散気配管(34)が、
その上部にブレビバチルス菌を担持した発泡ポリエチレ
ン担体30Lを格納したかご(32)が収納されてい
る。なお、ブレビバチルスを担持した担体を格納したか
ご(32)は、予め100L容量のバチルス培養タンク
(40)に入れられ、ブレビバチルスの培養に適した条
件下で担体の表面に充分な量のブレビバチルス菌を付着
させておく。担体を格納したかご(32)は、各溶藻槽
(30−1)、(30−2)及び(30−3)とバチル
ス培養タンク(40)との間を往復させても良く、ま
た、図6の矢印に示すように逐次循環使用することもで
きる。アオコを含む藍藻類の濃度は、図3に示すよう
に、クロロフィルの濃度の測定から知ることができる。
【0028】溶藻槽(30−3)から流出した被処理水
は配管(23)を経由して、次に容量100Lのミクロ
シスチン分解槽(54)に流入する。ミクロシスチン分
解槽(54)の中には、散気管(34)と30Lのスフ
ィンゴモナス担持担体収納かご(52)があり、被処理
水に含まれるミクロシスチンを分解して無害化する。ス
フィンゴモナス担体収納かご(52)も予めスフィンゴ
モナス培養タンク(50)に入れて、担体の表面に菌体
を付着又は吸着させておく。ミクロシスチンを処理した
処理水は配管(56)から後処理槽(60)に入れ、こ
こで曝気処理した後放流配管(62)から排出される。
【0029】各溶藻槽及びミクロシスチン分解槽におけ
る反応条件は次の通りである。担体の見掛け充填率は1
5%であり、空気の吹き込み量は被処理水100L当り
3L/minで、平均水温27℃、溶存酸素量は平均
4.5mg/Lであった。なお、空気の吹き込みだけで
は液の撹拌が不充分であるので、機械的撹拌機によっ
て、液の上下方向の流れを形成した。
【0030】また、バチルス培養タンクにおける培養条
件は、培養液1L当たりペプトン2g、酵母エキス1
g、ブドウ糖0.5gを溶解し、これに予め単離、培養
しておいた種培養液のバチルス菌を加えて27℃の温度
で緩やかに曝気攪拌しながら培養した。菌体濃度が10
6個/mL以上にまで達したところで発泡ポリエチレン
担体を浸漬し、24時間放置して多孔質担体にバチルス
菌を担持した。
【0031】スフィンゴモナス培養タンク(50)にお
ける培養条件並びに培養の確認は次のとおりである。培
養液1L当たりペプトン2g、酵母エキス1gを加え、
湖水から分離したスフィンゴモナス菌を散布して27℃
の温度で緩やかに曝気撹拌しながら培養した。菌体濃度
が107個/mLにまで達したところで多孔質の発泡ポ
リエチレン担体を浸漬し、数日間放置して多孔質担体に
スフィンゴモナス菌を担持した。スフィンゴモナスはオ
レンジイエロー色を帯びているので、色度からも大凡の
濃度を判断できるが、波長660nmにおける吸光度か
ら正確に分析できる。
【0032】本発明の例では、図6の装置を使って、関
東地方の湖水から採取したアオコの分解処理テストを約
80日間行なった。アオコを含んだ原水は、平日は1日
に1回投入し、溶藻槽で3日、ミクロシスチン分解槽で
1日滞留して排出する。この結果を図7及び図8に示
す。溶藻槽(30−1)に入る被処理水中の藍藻類の平
均濃度は107個/mLであり、3槽目(30−3)の
出口濃度は約250個/mLにまで減少した。ミクロシ
スチン分解槽(54)に流入する被処理水中のミクロシ
スチン濃度は、80〜100μg/Lであり、処理後の
出口濃度は、50日間にわたって1μg/L以下を記録
した。このミクロシスチン濃度は放流先で希釈され、ま
た自然界で徐々に分解するために、環境水として問題の
ないレベルであった。原水配管(12)で採取した原水
のTOCは約1mg/Lであり、BODとして0.5m
g/L程度と推定された。溶藻反応の終了した被処理水
配管(23)の処理水はBODが4.5〜5.5mg/L
含まれていたが、後曝気槽(60)の出口放流配管(6
2)の放流水ではBODが2mg/L以下であり、放流
する上で全く問題のないレベルであった。
【0033】
【発明の効果】以上、詳細且つ具体的な説明より明らか
なように、本発明のアオコの処理システムは、アオコの
繁殖した水域から採取したブレビバチルス菌及びスフィ
ンゴモナス菌を培養して担体に担持したものを使用して
いるため、使用する資材による環境の二次汚染の心配が
なく、アオコの殺藻とこれに伴い生じる有毒成分を無害
化することができる。また、溶藻槽やミクロシスチン分
解槽に発生する活性汚泥の働きによって、窒素、りんの
除去もでき、水質の向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の工程の一例を示した説明図である。
【図2】溶藻率に及ぼすブレビバチルスの担持量に関す
る実験データーである。
【図3】藍藻類の個数とクロロフィル濃度を示す関係図
である。
【図4】BOD成分の濃度レベルによるスフィンゴモナ
スの活性維持期間の変化を示す図である。
【図5】ミクロシスチン分解率に及ぼす担体に担持した
菌体数の関係図である。
【図6】本発明のシステム構成の1例を説明する装置配
置図である。
【図7】本発明の実施例で使用した溶藻槽の入口、出口
水中の藍藻類の個数を測定した図である。
【図8】本発明の例で使用したミクロシスチン分解槽の
入口、出口水中のミクロシスチン濃度を測定した図であ
る。
【符号の説明】
10 撹拌槽 12 原水配管 14 スクリーン 17 撹拌機 19 配管 21 送液ポンプ 23 配管 30−1 溶藻槽 30−2 溶藻槽 30−3 溶藻槽 32 ブレビバチルス担持担体収納かご 34 散気配管 40 ブレビバチルス培養タンク 50 スフィンゴモナス培養タンク 52 スフィンゴモナス担持担体かご 54 ミクロシスチン分解槽 56 配管 60 後処理槽 62 放流配管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI //(C12N 1/20 C12R 1:01 C12R 1:01) (56)参考文献 斉藤猛、他3名,自然水域から単離さ れたミクロキスチン分解菌の分解特性, 日本水環境学会年会講演集,日本,2000 年 3月15日,第34巻,p.240 Reim,R.L.,et al,C anadian journal of microbiology,カナダ, 1974年,vol.20,p.981−986 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C02F 3/34 C12N 1/20 PubMed JICSTファイル(JOIS) BIOSIS(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 藻類を含有する液を、ブレビバチルス系
    の溶藻性微生物と接触させて分解し、次いで前記藻類の
    分解によって放出されたミクロシスチンをスフィンゴモ
    ナス菌と接触させて無害化することを特徴とする藻類の
    処理法。
  2. 【請求項2】 藻類を含有する液を、ブレビバチルス系
    の溶藻性微生物と接触させて分解し、次いで前記藻類の
    分解によって放出されたミクロシスチンをスフィンゴモ
    ナス菌と接触させて無害化した後、活性汚泥と好気条件
    下で接触させBOD成分を除去することを特徴とする藻
    類の処理法。
  3. 【請求項3】 前記ブレビバチルス系の溶藻性微生物及
    び/又はスフィンゴモナス菌は、多孔性担体にそれぞれ
    105個/cm3担体以上担持したものであることを特徴
    とする請求項1又は2に記載の藻類の処理法。
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