JP3430047B2 - 目標追尾装置および目標追尾方法、並びに記録媒体 - Google Patents

目標追尾装置および目標追尾方法、並びに記録媒体

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JP3430047B2 JP36571598A JP36571598A JP3430047B2 JP 3430047 B2 JP3430047 B2 JP 3430047B2 JP 36571598 A JP36571598 A JP 36571598A JP 36571598 A JP36571598 A JP 36571598A JP 3430047 B2 JP3430047 B2 JP 3430047B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、レーダ等のセン
サによって得られた目標の位置に係わる観測ベクトルに
基づき、複数の目標の航跡を推定する目標追尾装置およ
び目標追尾方法、並びに記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】センサによって得られた目標位置の観測
ベクトルから目標の航跡を求めるために、前時刻までに
得られた既存の航跡に対し追尾フィルタをかけることに
よって現時刻における目標の予測位置を算出し、この目
標から得られる観測ベクトルの存在期待領域(以後、こ
の領域をゲートと呼ぶ)と実際に取得された観測ベクト
ルとの相関処理により現時刻における目標の航跡を推定
している。ここで、複数の目標が狭い領域に密集して存
在すると、1つの航跡のゲート内に複数の目標の観測ベ
クトルが得られる場合がある。このような状況において
も正しい追尾を続けるためには、一目標の追尾の場合以
上に、航跡と観測ベクトルとの相関を精度良く行う必要
性がある。従来、この要求に応える装置として、例えば
以下に示す目標追尾装置が提案されていた。
【0003】図11は例えば特開平8−271617号
公報に示された従来の目標追尾装置を示す全体構成図で
あり、図において、1は目標追尾装置、2は空間中の目
標を観測して観測ベクトルを得るセンサとしての目標観
測装置、3は使用者が動作を指示する動作指示装置であ
る。目標追尾装置1内において、4はクラスタ内にある
全ての航跡に対して次の観測ベクトル入力時刻における
観測ベクトルの存在期待領域を算出するゲート算出部、
5は目標観測装置2から目標追尾装置1に入力された観
測ベクトル全体からゲート算出部4により算出された各
航跡のゲートに含まれる観測ベクトルを選択する観測ベ
クトル選択部、6は目標追尾装置1内全体のクラスタの
状態を示すシステム内クラスタ表である。7は観測ベク
トル選択部5の出力とシステム内クラスタ表6に示され
た既存のクラスタの関係から既存のクラスタを統合し、
また、新しいクラスタを作成しクラスタ内観測ベクトル
表を作成するクラスタ新設統合部、8はクラスタ内に含
まれる観測ベクトルの全体を示すクラスタ内観測ベクト
ル表である。9はクラスタ内観測ベクトル表8とクラス
タ内の仮説の状況を示すデータ群を入力とし、クラスタ
内ゲート内判定行列を算出するゲート内判定行列算出
部、10はクラスタ内の観測ベクトルと航跡の関係を示
すクラスタ内ゲート内判定行列である。11はクラスタ
内ゲート内判定行列10を入力としクラスタ内航跡相関
行列を算出する航跡相関行列算出部、12はクラスタ内
で仮説の拡張可能性を示すクラスタ内航跡相関行列であ
る。13は前時刻までの観測ベクトルによる仮説の状況
とクラスタ内航跡相関行列12から現時刻に入力した観
測ベクトルに対応して仮説を更新する仮説更新部であ
る。
【0004】14はクラスタ内仮説状況データ群であ
り、15はクラスタ内にある全ての仮説を示したクラス
タ内仮説表、16は各仮説ごとに仮説内にある全ての航
跡を示した仮説内航跡表、17はクラスタ内にある全て
の航跡に対して航跡を構成する観測ベクトルを示したク
ラスタ内航跡−観測ベクトル表である。18はクラスタ
内に複数の仮説が存在する場合に、その中から最善の仮
説を1つ選択して目標の数とその航跡を決定する航跡決
定部である。19は仮説に対して何らかの評価を行い、
その結果によって一部の仮説を削除することによって仮
説数を縮小する仮説縮小部、20は仮説を縮小した際に
クラスタを分離できるかどうかを評価し、クラスタが分
離できる場合にそれぞれのクラスタの仮説を再構成する
クラスタ分離部である。21は観測ベクトルに誤信号が
含まれるかどうかを目標観測装置2、および動作指示装
置3からの信号によって判断する誤信号有無判定部であ
る。22はディスプレイ上に航跡を表示し目標の状態を
使用者に示す目標表示装置である。
【0005】次に動作について説明する。空間内を一般
に複数の目標が移動しており、これらの目標の位置をセ
ンサが周期的に観測しているとする。センサからは目標
以外の誤信号が得られたり、逆に目標の観測に失敗して
目標からの観測ベクトルが得られない場合もあることを
想定する。また、目標からの観測ベクトルが得られた場
合も、この観測ベクトルが示す位置は一般に誤差を含ん
でいる。こうした観測ベクトル群から各目標の航跡を推
定する場合、特に複数の目標が密集して存在すると、各
目標から得られた観測ベクトルがいずれの観測ベクトル
であるかの相関の判定が曖昧となる。このような問題に
対処するため、従来の目標追尾装置では、複数の時刻に
渡る観測ベクトルのいずれの組み合わせが同一目標のも
のであるかの全ての可能性を、各々仮説として維持しな
がら航跡の推定を行っていく方法が採られている。例え
ば、3つの時刻t1,t2,t3に対し図12に示すよ
うな観測ベクトル群が得られた場合、航跡の可能性とし
て、Z1,1 ,Z2,1 ,Z3,1 の3つの観測ベクトルが第
1の目標に対応し、Z2,2 ,Z3,3 の2つの観測ベクト
ルが第2の目標に対応するとの仮説や、あるいは、Z
1,1 ,Z3,3 の2つの観測ベクトルが第1の目標に対応
し、Z2,1 ,Z3,2 の2つの観測ベクトルが第2の目標
に対応するとの仮説などが考えられる。従来の目標追尾
装置では、これら全ての仮説を考慮しながら航跡の推定
が行われる。ところで、上記述べたように、互いに密集
した目標同士の間では相関の判定に曖昧さが生じるもの
の、これらの目標とは十分に距離が離れた別の目標ある
いは目標群との間では相関判定の曖昧さは生じない。こ
のため、航跡の推定は、空間内の全目標を互いに分離し
た複数の目標群(1目標の場合も含む)に分け、この目
標群毎に独立に処理することができる。この処理単位を
クラスタと呼んでいる。
【0006】以下、従来の目標追尾装置の具体的動作手
順を示す。最初に、動作指示装置3、仮説縮小部19、
クラスタ分離部20、および誤信号有無判定部21が存
在しない基本の装置構成の場合について説明する。ま
ず、ある時刻に観測ベクトルが入力すると、ゲート算出
部4では、全てのクラスタに含まれる全ての航跡に対し
て、現時刻における観測ベクトルの存在期待領域である
ゲートを算出する。ここで、通常、ゲートの算出にはカ
ルマンフィルタ等を応用した追尾フィルタが使用され
る。追尾フィルタは航跡の平滑化を行う機能を持ってい
る。図13は時刻tk におけるゲート算出部4の動作を
示すフローチャートである。図において、まず、航跡に
含まれる前時刻tk-1 までの一連の観測ベクトルを平滑
化することにより、前時刻tk-1 での目標の真の位置や
速度等の運動諸元を推定した結果である平滑ベクトルを
算出する(ステップST−1)。次に上記推定した時刻
k-1 の平滑化位置を目標運動モデル(等速直進運動等
を仮定する)を使用して単位時間分外挿化することによ
り、現時刻tk での目標の予測位置を算出する(ステッ
プST−2)。最後にゲートを上記算出した予測位置を
中心とする空間領域として算出する(ステップST−
3)。次に観測ベクトル選択部5では、各航跡のゲート
内にいずれの観測ベクトルが存在するかを調べることに
より、各航跡に相関し得る観測ベクトルを決定する。ク
ラスタ新設統合部7では、まず、いずれのクラスタ内の
航跡とも相関し得ない孤立した観測ベクトルについて、
この観測ベクトルにより構成される新たなクラスタを新
設し、システム内クラスタ表6に定義する。さらに、こ
のクラスタのクラスタ内観測ベクトル表8に上記観測ベ
クトルを書き込む。一方、ある観測ベクトルが互いに異
なるクラスタに含まれる複数の航跡のゲート内に存在し
た場合、これらのクラスタを1つのクラスタとして統合
する。
【0007】次にゲート内判定行列算出部9が、クラス
タ内の今回の観測ベクトル全てと航跡の相関可能性を示
す、クラスタ内ゲート内判定行列10を算出する。時刻
kにおけるクラスタ内ゲート内判定行列10は、時刻
k での観測ベクトル数がm k ,tk での既存航跡、す
なわち、時刻tk-1 までに既に作成された航跡の数がN
k-1 (Nk-1 =0の場合を含む)、時刻tk での航跡数
がNk =Nk-1 +mkの時に、次のように定義される。
【数1】 ここで、上記クラスタ内ゲート内判定行列10の各行は
時刻tk での観測ベクトルZk,j (j=1,2・・・ m
k )に対応し、各列は時刻tk での航跡Tt (t=1,
2・・・ Nk )に対応する。行列の各要素はそれぞれの観
測ベクトルがそれぞれの航跡のゲート内にあるか否かを
表し、具体的には以下のように設定する。まず、t=0
の列は観測ベクトルが誤信号である場合を示す。実際に
全ての観測ベクトルは誤信号である可能性があるとし、
【数2】 次に、1≦t≦Nk-1 の各列は既存航跡に対応する。観
測ベクトルZ,j(j=1,2・・・ mk )が既存航跡
t (t=1,2・・・ Nk-1 )のゲートに含まれる場合
に、
【数3】 また、含まれない場合に、
【数4】 さらに、Nk-1 +1≦t≦Nk の各列は時刻tk で新た
に現れた航跡に対応する。これらは、全ての観測ベクト
ルがそれぞれ新たに発見された目標である可能性を表現
するための列であり、1個の観測ベクトルが1本の新航
跡に対応するよう要素を設定する。すなわち、j=t−
k-1 の場合は、
【数5】 逆にj ≠t−Nk-1 −1の場合は、
【数6】 と設定する。
【0008】次に、航跡相関行列算出部11が、クラス
タ内ゲート内判定行列10からすべてのクラスタ内航跡
相関行列12を算出する。クラスタ内航跡相関行列12
は、実際に仮説として取り得る観測ベクトルと航跡の相
関関係を示すものである。一般に1つのクラスタ内ゲー
ト内判定行列10から複数の航跡相関行列が生成され
る。時刻tk におけるクラスタ内航跡相関行列12はク
ラスタ内ゲート内判定行列10から次のように定義され
る。
【数7】 ここで、クラスタ内ゲート内判定行列10と同様に、上
記クラスタ内航跡相関行列12の各行は時刻tk での観
測ベクトル、各列は航跡に対応する。また、行列の各要
素はそれぞれの観測ベクトルがそれぞれの航跡と相関し
ているか否かを示すもので、具体的には以下のように定
義する。すなわち、観測ベクトルZk ,j(j=1,2
・・・ mk )が既存航跡Tt (t=1,2・・・ Nk )と相
関がある場合に、
【数8】 相関がない場合に、
【数9】 とする。実際にクラスタ内ゲート内判定行列10からク
ラスタ内航跡相関行列12を作成する際には、次の3つ
の基準に従い、3者を同時に満たす全ての組み合わせ
を、それぞれ別のクラスタ内航跡相関行列として算出す
る。 (ア)クラスタ内ゲート内判定行列10において1であ
る要素に対応するクラスタ内航跡相関行列12の要素の
みを1とでき、その他の要素は0とする。 (イ)クラスタ内航跡相関行列12のt=0の列以外の
全ての列では、高々1つの要素のみを1とし他の要素は
0とする。 (ウ)クラスタ内航跡相関行列12の全ての行では、必
ず1つの要素を1とし他の要素は0とする。
【0009】次に、仮説更新部13において、前時刻t
k-1 までの仮説に上記算出したクラスタ内航跡相関行列
12を組み合わせて、現時刻tk の仮説に更新する。こ
こで、クラスタ内航跡相関行列12においていずれかの
観測ベクトルと相関があるとされている既存航跡が仮説
内に含まれていない場合は、両者を組み合わせることは
できない。その他の全ての組み合わせにより、仮説内の
既存航跡に対しこの航跡と相関のある新しい観測ベクト
ルを追加して航跡をのばすこと、新航跡とされた航跡を
仮説に追加すること、ある観測ベクトルを誤信号として
扱うことにより仮説が更新される。ここで、多くの場合
1つの仮説が複数のクラスタ内航跡相関行列12と組み
合わされ、複数の仮説に更新される。このため、仮説を
更新する度に仮説数は増加する。最後に航跡決定部18
では要求があったときに、何らかの手法で仮説のうちの
1つを選択し、目標数と航跡を一意に決定する。
【0010】次に、上記動作を行う基本の目標追尾装置
構成に対し、仮説縮小部19を付加した場合の動作を説
明する。上記述べた基本の目標追尾装置構成の動作を各
時刻に行い、仮説の構築を繰り返すと、仮説数は急激に
増加する。このため、仮説構築に伴う処理量とデータ量
が非常に大きくなり、目標追尾装置の性能限界を越えて
しまう可能性がある。仮説縮小部19は任意の時点でク
ラスタ内仮説状況データ群14を入力し、何らかの方式
で仮説の尤もらしさの評価を行って評価値の低い仮説を
削除したり、あるいは、互いに似た仮説を統合して、そ
の結果を戻すものである。このように仮説の縮小を行っ
て、目標追尾装置の性能限界を越えるのを防ぐことを目
的とする。具体的な仮説の縮小方法としては例えば以下
のようなものが挙げられる。 (ア)最も評価値の高い仮説のみを残す。 (イ)評価値がある基準値以上の仮説のみを残す。 (ウ)過去N時刻分の航跡が同一の仮説を統合する。 (エ)航跡数が同じで、各航跡の位置、速度などの平滑
結果がほぼ同一である仮説を統合する。
【0011】次に、さらに目標追尾装置にクラスタ分離
部20を付加した場合の動作を説明する。前述したよう
に、この目標追尾装置の動作によって仮説の構築を繰り
返すと、クラスタ新設統合部7において、複数のクラス
タが共通の観測ベクトルと相関を持つことにより統合さ
れることがあるものの、クラスタの分離は原理上起こら
ない。しかし、上記仮説縮小部19による仮説の縮小を
行った場合はクラスタの分離が可能となる。クラスタを
分離するとそれぞれの仮説の規模が縮小し、目標追尾装
置全体として仮説の更新に必要な処理量を削減する効果
がある。クラスタ分離部20では、目標追尾装置内のク
ラスタの分離判定を行いクラスタの分離処理を行う。図
14はクラスタ分離部20のさらに詳細な構成を示す構
成図であり、図において、23は航跡の同値関係からク
ラスタ分離を判定するクラスタ分離判定部、24はクラ
スタを分離し、分離したクラスタの仮説を再構築する分
離クラスタ仮説生成部である。図14に示したクラスタ
分離部20は以下のように動作する。まず、クラスタ分
離判定部23はクラスタ内仮説状況データ群14を入力
し、以下のクラスタの定義に従いクラスタ内の全航跡の
関係を調べ、クラスタが分離可能であるか否かを判定す
る。すなわち、航跡Ti とTj が少なくとも1つの観測
ベクトルを共有する場合に限り、航跡Ti とTj を類似
航跡と呼び、 Ti 〜Tj (10) と書く。航跡Ti とTj において、 Ti =Ti1〜Ti2〜・・・〜Tin=Tj (11) となるTi1,Ti2・・・ Tinが存在する場合に限り、 Ti ≡Tj (12) と定義する。この関係は、反射律、対象律、および推移
律を満足しており、すなわち同値関係にある。任意の時
刻において、全航跡は同値関係により分類することがで
き、複数の互いに素な類に分けることができる。厳密に
は、この類のことをクラスタと呼ぶ。次に、分離クラス
タ仮説生成部24が、上記クラスタ分離判定部23の判
定結果により分離可能となった航跡群を新たなクラスタ
として分離し、この新クラスタ内の仮説を以下の3つの
手順で再構築する。すなわち、まず第1のステップで旧
クラスタに含まれていた全ての仮説に対して、新クラス
タの航跡を含んでいるかどうかを調べ、含んでいるもの
については、これら含まれている航跡のみからなる新た
な仮説を新クラスタ内に生成する。次に第2のステップ
で、上記第1のステップで新クラスタの航跡を全く含ま
ない旧仮説があった場合に限り、誤信号だけからなる仮
説を新クラスタ内に生成する。さらに第3のステップで
上記第1、第2のステップで作成した新仮説の内で内容
が同一のものを統合する。なお、上記3つの手順で新ク
ラスタの仮説が構築できるためには、旧クラスタの仮説
において、同一仮説内に観測ベクトルを共有する複数の
航跡は存在しないとの条件が満足されていることが必要
である。前述したこの従来の装置の仮説構築法に依れ
ば、上記の条件が満足される。
【0012】次に、さらに動作指示装置3および誤信号
有無判定部21が付加された場合の動作を説明する。使
用者が動作指示装置3により誤信号有無判定部21に動
作を指示すると、誤信号有無判定部21は目標観測装置
2からの信号を入力し、誤信号が存在するか否かの判定
を行う。これにより誤信号がないと判定された場合は、
ゲート内判定行列算出部9、航跡相関行列算出部11、
クラスタ分離部20が以下のように処理内容を変更す
る。まずゲート内判定行列算出部9では、基本の目標追
尾装置構成の場合に、式(1)の誤信号に対応する列
(t=0の列)を必ず1に設定し、式(2)としていた
のに対し、誤信号が無いと判定された場合にはこれを逆
に必ず0とする。すなわち、
【数10】 とする。また、航跡相関行列算出部11では、航跡相関
行列を生成する基準は基本の目標追尾装置構成の場合と
変わりないものの、クラスタ内ゲート内判定行列10の
算出方法が上記のように変更されたことにより、結果的
に誤信号に対応するt=0の列に1が設定されたクラス
タ内航跡相関行列12は1つも導かれないことになる。
この結果、仮説の数が減少する。さらに、クラスタ分離
部20では、分離クラスタ仮説生成部24がその処理内
容における前述の第2のステップの処理を省略し、第1
および第3のステップのみを実行する。以上のように処
理内容を変更することにより、誤信号が得られないこと
が判明している場合に、誤信号の存在を仮定した無駄な
仮説が構築されないよう配慮されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】従来の目標追尾装置は
以上のように構成されているので、目標以外の誤信号が
得られる可能性や、目標の観測に失敗して目標の観測ベ
クトルが得られない可能性、さらに、既存の航跡のゲー
ト内に新たな目標が現れる可能性を考慮して仮説を構築
していた。また、仮説数の増大を抑えるため、仮説縮小
部19を設け、尤もらしさの評価値が小さい仮説を削除
する等の処理を行っていた。さらに、誤信号が存在しな
い場合に無駄な仮説を作ることがないよう誤信号有無判
定部21を設けるなどしていた。しかしながら、実際の
観測条件においては、事実上、誤信号が得られる可能性
や、目標の観測に失敗する可能性、既存航跡のゲート内
に新たな目標が現れる可能性を無視できる場合も多く存
在する。例えば、気象レーダ等の気象センサによる観測
データに基づいて抽出した雷雲域の代表点を追尾する場
合、雷雲域は通常十分な空間的な広がりを持っており、
これの観測に失敗したり、誤信号を得る可能性は極めて
低い。また、1個の雷雲域が複数に千切れて分離する可
能性はあるものの、既存の航跡のゲート内に新たな雷雲
域が発生することは少ない。このような観測条件に対し
従来の目標追尾装置を適用すると、考慮する必要のない
可能性を仮説として作るため、時間の経過に伴い仮説の
数が急激に増大して、処理効率が悪化するなどの課題が
あった。また、仮説縮小部19により仮説の削減を行う
場合にも、各仮説の評価値の算出精度が劣化すると、本
来削除すべきでない仮説を削除したり、逆に削除すべき
仮説を残してしまうなどの誤りを生じやすい。さらに、
誤信号が存在しない場合に対処するよう誤信号有無判定
部21を設けても、目標の観測に失敗する可能性や既存
航跡のゲート内に新たな目標が現れる可能性は捨ててい
ないため、仮説数の増大を押さえる効果が十分ではない
などの課題があった。
【0014】この発明は上記のような課題を解決するた
めになされたもので、誤信号が得られる可能性、目標の
観測に失敗する可能性、既存航跡のゲート内に新たな目
標が現れる可能性は無いとの条件(以下、このような観
測条件を自由空間と呼ぶ)で仮説を構築することによ
り、仮説数の増大を抑制し、装置の処理効率を高める目
標追尾装置を得ることを目的とする。また、この発明は
上記変更によって既存航跡と観測ベクトルの対応関係に
矛盾を起こすことのないよう、追尾中の目標が消滅する
可能性、複数の目標が1つに融合する可能性、1つの目
標が複数の目標に分離する可能性を考慮して仮説の構築
を行う目標追尾装置を得ることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】この発明に係る目標追尾
装置は、観測ベクトル選択部により選択された観測ベク
トルのうち既存の各クラスタ毎に、それらクラスタ内に
既存の航跡が存在し且つそれらクラスタ内の既存の航跡
と対応づけられた観測ベクトルが存在する場合に、それ
ら各観測ベクトルがそれらクラスタ内のいずれの航跡と
対応する可能性があるかを示すゲート内判定行列を算出
する自由空間用ゲート内判定行列算出部と、その算出さ
れたゲート内判定行列からそれぞれが仮説の1つの拡張
方法を示す複数の航跡相関行列を算出する自由空間用航
跡相関行列算出部と、その作成された新クラスタに対し
て新規に仮説を生成すると共に、既存のクラスタに対し
て算出された航跡相関行列とクラスタ内の既存の仮説に
応じて新しい仮説を作成する自由空間用仮説更新部と、
各クラスタ毎に、それら各クラスタに含まれる各航跡が
それら各クラスタ内のいずれかの仮説に含まれるかを調
べ、いずれの仮説にも含まれない航跡である場合にその
航跡をそのクラスタ内から削除する航跡削除部とを備え
たものである。
【0016】この発明に係る目標追尾装置は、自由空間
用仮説更新部により作成された仮説を評価してその評価
に応じてそれら仮説を削減する仮説縮小部を備えたもの
である。
【0017】この発明に係る目標追尾装置は、クラスタ
内の各航跡に対し、それら各航跡に含まれる時系列の観
測ベクトルを平滑化して現在の目標の位置、速度等の運
動諸元を算出する平滑化処理部と、上記クラスタ内の各
仮説が、それら各仮説内に観測ベクトルを共有する複数
の航跡を含むか否かを調べ、観測ベクトルを共有する複
数の航跡を含む場合に、これを含まないように仮説を是
正する仮説是正部と、仮説縮小部による仮説縮小時にク
ラスタの分離可能であるか調べ、分離可能であればその
クラスタを分離するクラスタ分離部とを備えたものであ
る。
【0018】この発明に係る目標追尾装置は、仮説是正
部において、仮説内に観測ベクトルを共有する複数の航
跡が存在する場合にその仮説を是正する是正処理部と、
その是正処理の結果で同一内容となったクラスタ内の航
跡を統合する航跡統合部と、その是正処理の結果で同一
内容となったクラスタ内の仮説を統合する仮説統合部と
を備えたものである。
【0019】この発明に係る目標追尾装置は、是正処理
部において、1つの航跡から複数の航跡が分離したとす
る仮説を是正するために、1つの航跡と最も相関の強い
観測ベクトルをその航跡を引き継ぐ観測ベクトルとして
選択し、他の観測ベクトルを1つの航跡より分離した別
の航跡として定義するものである。
【0020】この発明に係る目標追尾装置は、是正処理
部において、1つの航跡から複数の航跡が分離したとす
る仮説を是正するために、1つの航跡の存在期待領域内
のみに存在し他の航跡の存在期待領域には含まれない観
測ベクトルを優先的に選択し、他の観測ベクトルを上記
1つの航跡より分離した別の航跡として定義するもので
ある。
【0021】この発明に係る目標追尾方法は、観測ベク
トル選択工程により選択された観測ベクトルのうち既存
の各クラスタ毎に、それらクラスタ内に既存の航跡が存
在し且つそれらクラスタ内の既存の航跡と対応づけられ
た観測ベクトルが存在する場合に、それら各観測ベクト
ルがそれらクラスタ内のいずれの航跡と対応する可能性
があるかを示すゲート内判定行列を算出する自由空間用
ゲート内判定行列算出工程と、その算出されたゲート内
判定行列からそれぞれが仮説の1つの拡張方法を示す複
数の航跡相関行列を算出する自由空間用航跡相関行列算
出工程と、その作成された新クラスタに対して新規に仮
説を生成すると共に、既存のクラスタに対してその航跡
相関行列とクラスタ内の既存の仮説に応じて新しい仮説
を作成する自由空間用仮説更新工程と、各クラスタ毎
に、それら各クラスタに含まれる各航跡がそれら各クラ
スタ内のいずれかの仮説に含まれるかを調べ、いずれの
仮説にも含まれない航跡である場合にその航跡をそのク
ラスタ内から削除する航跡削除工程とを備えたものであ
る。
【0022】この発明に係る記録媒体は、観測ベクトル
選択工程により選択された観測ベクトルのうち既存の各
クラスタ毎に、それらクラスタ内に既存の航跡が存在し
且つそれらクラスタ内の既存の航跡と対応づけられた観
測ベクトルが存在する場合に、それら各観測ベクトルが
それらクラスタ内のいずれの航跡と対応する可能性があ
るかを示すゲート内判定行列を算出する自由空間用ゲー
ト内判定行列算出工程と、その算出されたゲート内判定
行列からそれぞれが仮説の1つの拡張方法を示す複数の
航跡相関行列を算出する自由空間用航跡相関行列算出工
程と、その作成された新クラスタに対して新規に仮説を
生成すると共に、既存のクラスタに対してその航跡相関
行列とクラスタ内の既存の仮説に応じて新しい仮説を作
成する自由空間用仮説更新工程と、各クラスタ毎に、そ
れら各クラスタに含まれる各航跡がそれら各クラスタ内
のいずれかの仮説に含まれるかを調べ、いずれの仮説に
も含まれない航跡である場合にその航跡をそのクラスタ
内から削除する航跡削除工程とを備えたものである。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の一形態を
説明する。 実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1による目
標追尾装置を示す全体構成図であり、図において、1は
目標追尾装置、2は空間中の目標を観測して観測ベクト
ルを得るセンサとしての目標観測装置である。目標追尾
装置1内において、4はクラスタ内にある全ての航跡に
対して次の観測ベクトル入力時刻における観測ベクトル
の存在期待領域を算出するゲート算出部(ゲート算出工
程)、5は目標観測装置2から目標追尾装置1に入力さ
れた観測ベクトル全体からゲート算出部4により算出さ
れた各航跡のゲートに含まれる観測ベクトルを選択する
観測ベクトル選択部(観測ベクトル選択工程)、6は目
標追尾装置1内全体のクラスタの状態を示すシステム内
クラスタ表である。7は観測ベクトル選択部5の出力と
システム内クラスタ表6に示された既存のクラスタの関
係から既存のクラスタを統合し、また、新しいクラスタ
を作成しクラスタ内観測ベクトル表を作成するクラスタ
新設統合部(クラスタ新設統合工程)、8はクラスタ内
に含まれる観測ベクトルの全体を示すクラスタ内観測ベ
クトル表である。31はクラスタ内観測ベクトル表8と
クラスタ内の仮説の状況を示すデータ群を入力とし、各
クラスタ毎に、クラスタ内に既存の航跡が存在し且つク
ラスタ内の既存の航跡と対応づけられた観測ベクトルが
存在する場合に、各観測ベクトルがクラスタ内のいずれ
の航跡と対応する可能性があるかを示すクラスタ内ゲー
ト内判定行列を算出する自由空間用ゲート内判定行列算
出部(自由空間用ゲート内判定行列算出工程)、10は
クラスタ内の観測ベクトルと航跡の関係を示すクラスタ
内ゲート内判定行列である。32はクラスタ内ゲート内
判定行列10を入力とし、クラスタ内の航跡相関行列を
算出する自由空間用航跡相関行列算出部(自由空間用航
跡相関行列算出工程)、12はクラスタ内で仮説の拡張
可能性を示すクラスタ内航跡相関行列である。33は前
時刻までの観測ベクトルによる仮説の状況とクラスタ内
航跡相関行列12から現時刻に入力した観測ベクトルに
対応して仮説を更新する自由空間用仮説更新部(自由空
間用仮説更新工程)である。
【0024】14はクラスタ内仮説状況データ群であ
り、15はクラスタ内にある全ての仮説を示したクラス
タ内仮説表、16は各仮説ごとに仮説内にある全ての航
跡を示した仮説内航跡表、17はクラスタ内にある全て
の航跡に対して航跡を構成する観測ベクトルを示したク
ラスタ内航跡−観測ベクトル表である。34はクラスタ
内仮説状況データ群14を入力し、各クラスタ毎に、各
クラスタに含まれる各航跡が各クラスタ内のいずれかの
仮説に含まれるかを調べ、いずれの仮説にも含まれない
航跡である場合にその航跡をそのクラスタ内から削除す
る航跡削除部(航跡削除工程)、18はクラスタ内に複
数の仮説が存在する場合に、その中から最善の仮説を1
つ選択して目標の数とその航跡を決定する航跡決定部
(航跡決定工程)である。22はディスプレイ上に航跡
を表示し目標の状態を使用者に示す目標表示装置であ
る。
【0025】また、図2は目標追尾装置をコンピュータ
により実現した場合を示す構成図であり、図において、
51は目標追尾装置全体を演算制御するCPU、52は
基本ソフトウェアを記憶したROM、53は途中の演算
結果等を記憶するRAM、54はキー入力を行うキーボ
ード、55は目標追尾装置のソフトウェアを記憶したハ
ードディスク(記録媒体)、56は目標追尾装置のソフ
トウェアを記憶したフロッピーディスク(記録媒体)、
57はディスプレイであり、上記目標表示装置22に相
当する。58はプリンタ、59はバスである。
【0026】次に動作について説明する。まず、ある時
刻に観測ベクトルが入力すると、ゲート算出部4では、
全てのクラスタに含まれる全ての航跡に対して、現時刻
における観測ベクトルの存在期待領域であるゲートを算
出する。ここで、通常、ゲートの算出にはカルマンフィ
ルタ等を応用した追尾フィルタが使用される。追尾フィ
ルタは航跡の平滑化を行う機能を持っている。図13は
時刻tk におけるゲート算出部4の動作を示すフローチ
ャートである。図において、まず、航跡に含まれる前時
刻tk-1 までの一連の観測ベクトルを平滑化することに
より、前時刻tk-1 での目標の真の位置や速度等の運動
諸元を推定した結果である平滑ベクトルを算出する(ス
テップST−1)。次に上記推定した時刻tk-1 の平滑
化位置を目標運動モデル(等速直進運動等を仮定する)
を使用して単位時間分外挿化することにより、現時刻t
k での目標の予測位置を算出する(ステップST−
2)。最後にゲートを上記算出した予測位置を中心とす
る空間領域として算出する(ステップST−3)。次に
観測ベクトル選択部5では、各航跡のゲート内にいずれ
の観測ベクトルが存在するかを調べることにより、各航
跡に相関し得る観測ベクトルを決定する。クラスタ新設
統合部7では、まず、いずれのクラスタ内の航跡とも相
関し得ない孤立した観測ベクトルについて、この観測ベ
クトルにより構成される新たなクラスタを新設し、シス
テム内クラスタ表6に定義する。さらに、このクラスタ
のクラスタ内観測ベクトル表6に上記観測ベクトルを書
き込む。一方、ある観測ベクトルが互いに異なるクラス
タに含まれる複数の航跡のゲート内に存在した場合、こ
れらのクラスタを1つのクラスタとして統合する。
【0027】次に、自由空間用ゲート内判定行列算出部
31は、クラスタ内の今回の各観測ベクトルと既存航跡
(前時刻tk-1 までに作成された航跡)との相関可能性
を示すクラスタ内ゲート内判定行列10を算出する。時
刻tk での観測ベクトル数がmk 、既存航跡数がNk-1
である場合、クラスタ内ゲート相関行列10は次のよう
に定義される。
【数11】 ここで、上記行列の各行は時刻tk での観測ベクトルZ
k,j (j=1,2・・・mk )に対応し、各列は時刻tk
での既存航跡Tt (t=1,2・・・ Nk-1 )に対応す
る。式(14)の定義が、従来装置のときの式(1)と
異なる点は、式(14)の行列には既存航跡に対応する
列のみが存在し、式(1)における誤信号に対応するt
=0の列、および、新航跡に対応するNk-1 +1≦t≦
k-1 −1+mk の列が存在しない点である。これは、
式(14)のクラスタ内ゲート内判定行列10が、既存
航跡のゲート内に誤信号が得られる可能性および新たな
目標が発見される可能性を考慮しないことを示す。行列
の各要素の設定方法は従来装置の既存航跡に対する列の
場合と同様である。すなわち、観測ベクトルZk,j (j
=1,2・・・ mk )が既存航跡Tt (t=1,2・・・ N
k-1 )のゲートに含まれる場合に、
【数12】 また、含まれない場合に、
【数13】 とする。なお、この自由空間用ゲート内判定行列算出部
31はクラスタ内に既存航跡が1つも存在しない場合
(Nk-1 =0の場合)、および、クラスタ内に現時刻の
観測ベクトルが1つも得られなかった場合(mk =0の
場合)はクラスタ内ゲート内判定行列10を作成せずに
処理を終了する。ここで、クラスタ内に既存航跡が1つ
も存在しない場合は、このクラスタが今回新設されたク
ラスタである場合に相当する。
【0028】次に、自由空間用航跡相関行列算出部32
が、上記クラスタ内ゲート内判定行列10が作成された
場合に限り、このクラスタ内ゲート内判定行列10か
ら、実際に仮説として取り得る観測ベクトルと航跡の相
関関係を示すクラスタ内航跡相関行列12を全て算出す
る。クラスタ内ゲート内判定行列10が作成されていな
い場合は以下に示す処理を行わずに終了する。時刻tk
におけるクラスタ内航跡相関行列12は次のように定義
される。
【数14】 ここで、クラスタ内ゲート内判定行列10と同様に、上
記行列の各行は時刻t k での観測ベクトルに、各列は時
刻tk での既存航跡に対応する。また、行列の各要素は
それぞれの観測ベクトルがそれぞれの航跡と相関してい
るか否かを表し、観測ベクトルZk,j (j=1,2・・・
k )が既存航跡Tt (t=1,2・・・Nk-1 )と相関
がある場合に、
【数15】 相関がない場合に、
【数16】 と定義する。図3はゲート内判定行列より航跡相関行列
を算出する具体的手順を示すフローチャートであり、図
3において、まず、変数rを1に設定する(ステップS
T−11)。次に、以下の3つの基準を同時に満たす全
ての組み合わせを、それぞれ別のクラスタ内航跡相関行
列12として算出する(ステップST−12)。 (ア)クラスタ内ゲート内判定行列10において1であ
る要素に対応するクラスタ内航跡相関行列12の要素の
みを1とでき、その他の要素は0とする。 (イ)クラスタ内航跡相関行列12の全ての列では、高
々r個の要素を1とし他の要素は0とする。 (ウ)クラスタ内航跡相関行列12の全ての行では、必
ず1つの要素を1とし他の要素は0とする。 さらに、上記ステップST−12の処理で1個以上のク
ラスタ内航跡相関行列12が作成されたか否かを判定す
る(ステップST−13)で、1個以上のクラスタ内航
跡相関行列12が作成された場合には処理を終了し、作
成されなかった場合にはステップST−14でrの値に
1を加算したのち、ステップST−12に戻る。
【0029】次に、自由空間用仮説更新部33で、クラ
スタ内の仮説の更新を行う。まず、上記までの処理によ
り1個以上のクラスタ内航跡相関行列12が作成されて
いる場合を説明する。この場合、前時刻tk-1 までの仮
説に上記算出したクラスタ内航跡相関行列12を組み合
わせて、現時刻tk の仮説に更新する。ここで、クラス
タ内航跡相関行列12においていずれかの観測ベクトル
と相関があるとされた既存航跡の全てがある仮説の中に
含まれている場合に限り、このクラスタ内航跡相関行列
12と仮説の両者を組み合わせることができる。ただ
し、一般には1つの仮説が複数のクラスタ内航跡相関行
列12と組み合わせ可能な場合がある。この場合、1つ
の仮説が複数の仮説に更新される。一方、ある仮説が組
み合わせ可能なクラスタ内航跡相関行列12を1つも持
たないこともあり得る。まず、組み合わせ可能なクラス
タ内航跡相関行列12と仮説に対しては、次の3つの手
順に従い仮説の更新を行う。 (ア)仮説内の既存航跡に対し、この航跡と相関のある
現時刻の観測ベクトルが存在しない場合、この既存航跡
を仮説から削除する。 (イ)仮説内の既存航跡に対し、この航跡と相関のある
現時刻の観測ベクトルが1個のみ存在する場合、この既
存航跡に上記観測ベクトルを追加する。 (ウ)仮説内の既存航跡に対し、この航跡と相関のある
現時刻の観測ベクトルがr(r≧2)個存在する場合、
この既存航跡にそれぞれ異なる1個の観測ベクトルを追
加したr個の航跡を仮説内に生成する。 一方、組み合わせ可能なクラスタ内航跡相関行列12が
1つもない仮説に対しては、この仮説そのものをクラス
タ内より削除する。ところで、上記仮説更新の方法が従
来装置の場合と異なる点は、相関のある観測ベクトルが
得られなかった仮説内の既存航跡は仮説から削除すると
いう点と、複数の観測ベクトルと相関がある仮説内の既
存航跡はそれぞれ別の航跡に分離するという点である。
これは、航跡のゲート内に誤信号や新目標が現れる可能
性を排除した結果として、観測ベクトルが得られなかっ
た航跡は、消滅したかあるいは他の航跡と1つに融合し
たと考え、また、複数の観測ベクトルが得られた航跡
は、複数の航跡に分離したと考えることによるものであ
る。次に、クラスタ内にクラスタ内航跡相関行列12が
1つも作成されなかった場合を説明する。この場合、ま
ず、クラスタ内観測ベクトル表8によりこのクラスタの
現時刻の観測ベクトルが存在するか否か調べる。クラス
タ内に現時刻tk の観測ベクトルが存在しない場合、こ
のクラスタは既に前時刻tk-1 までに作成されたクラス
タであり、今回観測ベクトルが1つも得られなかったク
ラスタである。このとき、クラスタ内の全ての航跡は消
滅したと判断し、当該クラスタをシステム内クラスタ表
6より削除し、また、当該クラスタに係わるクラスタ内
仮説状況データ群14を削除する。一方、クラスタ内に
現時刻tk の観測ベクトルが存在した場合、このクラス
タは今回新設されたクラスタであり、クラスタ内には他
のクラスタのいずれの航跡とも相関し得ない孤立した1
個の観測ベクトルが登録されている。この場合、このク
ラスタのクラスタ内仮説状況データ群14を新たに作成
するため、上記観測ベクトル1個で構成される航跡をク
ラスタ内航跡−観測ベクトル表17に記載し、この航跡
1個で構成される仮説を仮説内航跡表16に記載し、さ
らに、この仮説1個をクラスタ内仮説表15に登録す
る。
【0030】次に、航跡削除部34では、クラスタ内航
跡−観測ベクトル表17に登録されている各航跡につい
て、この航跡が仮説内航跡表16に記載されているいず
れかの仮説の航跡として含まれているか否かを調べ、い
ずれの仮説にも含まれない航跡である場合に限り、この
航跡をクラスタ内航跡−観測ベクトル表17より削除す
る。最後に航跡決定部18では要求があったときに、何
らかの手法で仮説のうちの1つを選択し、目標数と航跡
を一意に決定する。以上がこの実施の形態1の動作内容
である。
【0031】次に、図4に示す観測ベクトルが得られた
場合を例に、この実施の形態1の動作をより具体的に説
明する。図4(a)は3つの時刻t1,t2,t3で得
られた観測ベクトルの例を示している。このような観測
ベクトル群に対し、この実施の形態1は以下のように動
作する。まず、時刻t1の観測ベクトルZ1,1 、Z1,2
を入力する。この状況では既存のクラスタ、仮説、およ
び航跡は存在しないので、観測ベクトル選択部5は観測
ベクトルZ1,1 、Z1,2 を共に既存のクラスタとは関係
しない孤立した観測ベクトルとしてクラスタ新設統合部
7に送る。クラスタ新設統合部7は、まず、観測ベクト
ルZ1,1 を含むクラスタ1を新設し、これをシステム内
クラスタ表6に登録すると共に、クラスタ1のクラスタ
内観測ベクトル表8に観測ベクトルZ1,1 を書き込む。
また、観測ベクトルZ1,2を含むクラスタ2を新設し、
システム内クラスタ表6に登録すると共に、クラスタ2
のクラスタ内観測ベクトル表8に観測ベクトルZ1,2
書き込む。この時点で、システム内クラスタ表6には2
つのクラスタが登録され、各クラスタのクラスタ内観測
ベクトル表8にはそれぞれ現時刻t1の観測ベクトルが
1個ずつ記載される。
【0032】次に、自由空間用ゲート内判定行列算出部
31に進む。ここでは、クラスタ1,2とも観測ベクト
ル数mk が1、既存航跡数Nk-1 が0である。両クラス
タとも、既存航跡が1つも存在しないため、クラスタ内
ゲート内判定行列10の作成は行わない。同様に、自由
空間用航跡相関行列算出部32でも、両クラスタとも、
クラスタ内航跡相関行列12の作成は行わない。次に、
自由空間用仮説更新部33では、まず、クラスタ1のク
ラスタ内観測ベクトル表8を調べ、クラスタ1の現時刻
の観測ベクトルZ1,1 が1つのみ記載されていることよ
り、クラスタ1が今回新設されたクラスタであることを
判断し、観測ベクトルZ1,1 のみで構成される新航跡T
1 を作成してクラスタ1のクラスタ内航跡−観測ベクト
ル表17に記載する。ここではこれを、 T1 =[Z1,1 ] (20) と記述する。また、航跡T1 のみで構成される新たな仮
説X1,1 を作成し、クラスタ1の仮説内航跡表16に記
載する。これを、 X1,1 =[T1 ] (21) と記述する。さらに、クラスタ1のクラスタ内仮説表1
5に仮説X1,1 を登録する。同様にクラスタ2について
も、次式に示す新航跡T1 、仮説X1,1 が作成され、そ
れぞれクラスタ2のクラスタ内航跡−観測ベクトル表1
7、仮説内航跡表16、クラスタ内仮説表15に書き込
む。 X1,1 =[T1 ] T1 =[Z1,2 ] (22) 次に、航跡削除部34に進むが、この状況では、クラス
タ1,2ともいずれの仮説にも含まれない航跡はクラス
タ内に存在しないので、航跡の削除は行わない。以上で
時刻t1の処理を終了する。
【0033】次に、時刻t2に移り、観測ベクトルZ
2,1 が入力される。まず、ゲート算出部4では、クラス
タ1の航跡T1 、およびクラスタ2の航跡T2 に対し
て、それぞれ時刻t2の観測ベクトルの存在期待領域で
あるゲートを算出する。次に、観測ベクトル選択部5が
各ゲートと観測ベクトルの関係を調べる。その結果、こ
こでは、図4(b)に示すように、クラスタ1の航跡T
1 とクラスタ2の航跡T2 の両方のゲート内に観測ベク
トルZ2,1 が入っていたとする。次にクラスタ新設統合
部7に進み、ここでは互いに別のクラスタであるクラス
タ1およびクラスタ2に属する複数の航跡のゲート内に
観測ベクトルが存在したため、これらのクラスタの統合
を行う。例えば、クラスタ1とクラスタ2を統合した新
たなクラスタとしてクラスタ3を作成してシステム内ク
ラスタ表6に登録するとともに、クラスタ1およびクラ
スタ2をシステム内クラスタ表6より削除する。また、
クラスタ3のクラスタ内航跡−観測ベクトル表17に、 T1 =[Z1,1 ],T2 =[Z1,2 ] (23) を記載し、クラスタ3の仮説内航跡表16に、 X1,1 =[T1 ,T2 ] (24) を記載する。クラスタ3のクラスタ内仮説表15には仮
説X1,1 を登録する。併せて、クラスタ1,2のクラス
タ内航跡−観測ベクトル表17、仮説内航跡表16、ク
ラスタ内仮説表15は削除しておく。上記によりシステ
ム内にはクラスタ3の1つのみが存在する状況となる。
次に、自由空間用ゲート内判定行列算出部31が、時刻
t2におけるクラスタ3のクラスタ内ゲート内判定行列
10を次の通り算出する。 Ω(H2 )=[1 1] (25) ここで、上記クラスタ内ゲート内判定行列10の行は観
測ベクトルZ2,1 に対応し、また、第1列、第2列はそ
れぞれ航跡T1 、T2 に対応する。次に、自由空間用航
跡相関行列算出部32が、上記クラスタ内ゲート内判定
行列10より、時刻t2におけるクラスタ内航跡相関行
列12を次の通り算出する。 Ω(H2,1 )=[1 0],Ω(H2,2 )=[0 1] (26) これらのクラスタ内航跡相関行列12は、図3のフロー
チャートにおいてr=1と設定した段階で算出される。
これらは、観測ベクトルZ2,1 が航跡T1 と相関がある
とする場合と航跡T2 と相関があるとする場合の2つの
場合を示している。次に、自由空間用仮説更新部33が
仮説を更新する。ここでは、上記算出した2つのクラス
タ内航跡相関行列12がいずれも仮説X1,1 と組み合わ
せ可能である。この結果、上記1個の仮説X1,1 が次に
示す2個の仮説X2,1 、X2,2 に更新される。 Ω(H2,1 )=[1 0] X2,1 =[T1 ] T1 =[Z1,1 ,Z2,1 ] (27) Ω(H2,2 )=[0 1] X2,2 =[T2 ] T2 =[Z1,2 ,Z2,1 ] (28) ここで、仮説X2,1 は既存航跡T1 に新たな観測ベクト
ルZ2,1 を追加して航跡を延ばし、既存航跡T2 は消滅
したとする仮説であり、また、仮説X2,2 は既存航跡T
2 に新たな観測ベクトルZ2,1 を追加して航跡を延ば
し、既存航跡T1は消滅したとする仮説である。次に、
航跡削除部34であるが、この時点では、上記仮説更新
後の2つの航跡T1 、T2 がクラスタ内航跡−観測ベク
トル表17に記載されており、また、仮説内航跡表16
には上記2つの仮説X2,1 、X2,2 が記載されている。
2つの航跡は共に、いずれかの仮説に含まれるため、航
跡の削除は行われない。以上で時刻t2の処理が終了す
る。
【0034】さらに、時刻t3に移り、観測ベクトルZ
3,1 が入力される。まず、ゲート算出部4では、航跡T
1 、T2 のゲートを算出する。次に、観測ベクトル選択
部5で各ゲートと観測ベクトルZ3,1 の関係を調べる。
この結果、ここでは図4(c)に示すように、観測ベク
トルZ3,1 が航跡T1 のゲート内に入り、航跡T2 のゲ
ート内には入らなかったとする。次に、クラスタ新設統
合部7に進むが、この状況ではクラスタの新設統合は行
われない。次に、自由空間用ゲート内判定行列算出部3
1が、クラスタ3のクラスタ内ゲート内判定行列10を
次の通り算出する。 Ω(H3 )=[1 0] (29) ここで、行は観測ベクトルZ2,1 に、また、第1列、第
2列はそれぞれ航跡T 1 、T2 に対応する。さらに、自
由空間用航跡相関行列算出部32が、クラスタ内航跡相
関行列12を次の通り算出する。 Ω(H3,1 )=[1 0] (30) このクラスタ内航跡相関行列12は、図3のフローチャ
ートにおいてr=1と設定した段階で算出される。次
に、自由空間用仮説更新部33に進む。ここでは、上記
算出した1個のクラスタ内航跡相関行列12が仮説X
2,1 と組み合わせ可能である。この結果、仮説X2,1
次に示すX3,1 に更新される。 Ω(H3,1 )=[1 0] X3,1 =[T1 ] T1 =[Z1,1 ,Z2,1 ,Z3, 1 ] (31) 一方、仮説X2,2 は上記算出したクラスタ内航跡相関行
列12と組み合わせることができない。この結果、仮説
2,2 と組み合わせ可能なクラスタ内航跡相関行列12
が存在しないため、仮説X2,2 をクラスタ3のクラスタ
内仮説表15、仮説内航跡表16より削除する。これに
より、クラスタ3のクラスタ内仮説表15、仮説内航跡
表16には仮説X3,1 のみが記載されていることにな
る。次に、航跡削除部34に進む。この時点でクラスタ
3のクラスタ内航跡−観測ベクトル表17には、上記自
由空間用仮説更新部33で更新された式(31)の航跡
1 に加え、自由空間用仮説更新部33で更新されなか
った式(28)の航跡T2 が残っている。ここで、航跡
1 はクラスタ3の中に存在する唯一の仮説X3,1 に含
まれるものの、航跡T2 はこれに含まれていない。この
結果、航跡削除部34はこの航跡T2 をクラスタ内航跡
−観測ベクトル表17より削除する。以上で時刻t3の
処理を終了する。以降、時刻が進み新たな観測ベクトル
が入力される度に上記一連の処理が繰り返される。
【0035】続いて、図5に示す観測ベクトルが得られ
た場合の例についてこの実施の形態1の動作を説明す
る。図5(a)は3つの時刻t1、t2、t3において
得られた観測ベクトル群の例を示している。以下では、
時刻t1とt2における動作を具体的に説明する。ま
ず、時刻t1の観測ベクトルZ1,1 、Z1,2 が入力す
る。時刻t1の処理は上記図4の例の場合と同様であ
る。すなわち、時刻t1の処理が終了した時点で、クラ
スタ1、クラスタ2の2つが生成され、それぞれ以下の
仮説と航跡が作成される。 クラスタ1: X1,1 =[T1 ] T1 =[Z1,1 ] (32) クラスタ2: X1,1 =[T1 ] T1 =[Z1,2 ] (33) 次に時刻t2に移り、観測ベクトルZ2,1 、Z2,2 、Z
2,3 が入力する。まず、ゲート算出部4ではクラスタ1
の航跡T1 およびクラスタ2の航跡T2 の2つの航跡に
対して、時刻t2のゲートを算出する。観測ベクトル選
択部5がこれらの各ゲートと観測ベクトルの関係を調べ
る。その結果、ここでは、図5(b)に示すように、観
測ベクトルZ2,1 、Z2,2 がクラスタ1の航跡T1 のゲ
ート内に、また、観測ベクトルZ2,2 、Z2,3 がクラス
タ2の航跡T1 のゲート内に入っていたとする。すなわ
ち、観測ベクトルZ2,2 が両方の航跡のゲート内に入っ
ていたとする。
【0036】クラスタ新設統合部7では、観測ベクトル
2,2 が互いに別のクラスタに属する複数の航跡のゲー
ト内に存在するため、クラスタの統合が行われる。この
処理は図4の例の場合と同様である。すなわち、クラス
タ1とクラスタ2を統合した新たなクラスタ3を生成
し、クラスタ1、2に係わるデータは目標追尾装置内か
ら削除する。クラスタ3のクラスタ内航跡−観測ベクト
ル表17には、 T1 =[Z1,1 ],T2 =[Z1,2 ] (34) を記載し、また、クラスタ3の仮説内航跡表16には、 X1,1 =[T1 ,T2 ] (35) を記載する。クラスタ3のクラスタ内仮説表11には仮
説X1,1 を登録する。これによりシステム内にはクラス
タ3の1つのみが存在する状況となる。次に、自由空間
用ゲート内判定行列算出部31が、時刻t2のクラスタ
3のクラスタ内ゲート内判定行列10を次の通り算出す
る。
【数17】 ここで、上記クラスタ内ゲート内判定行列10の第1
行、第2行、第3行はそれぞれ観測ベクトルZ2,1 、Z
2,2 、Z2,3 に対応し、また、第1列、第2列はそれぞ
れ航跡T1 、T2 に対応する。次に、自由空間用航跡相
関行列算出部32が、時刻t2のクラスタ内航跡相関行
列12を次の通り算出する。
【数18】
【0037】これらのクラスタ内航跡相関行列12は、
図3のフローチャートにおいてr=2と設定した段階で
算出される。これらは、Z2,1 、Z2,2 の2つが航跡T
1 と相関があり、Z2,3 の1つが航跡T2 と相関がある
とする場合と、Z2,1 の1つが航跡T1 と相関があり、
2,2 とZ2,3 の2つが航跡T2 と相関があるとする場
合の2つの場合を示している。ここで、前者は航跡T1
が分離した場合を表し、後者は航跡T2 が分離した場合
を表す。次に、自由空間用仮説更新部33で仮説を更新
する。ここでは、上記算出した2つのクラスタ内航跡相
関行列12がいずれも仮説X1,1 と組み合わせ可能であ
る。この結果、上記1個の仮説X1,1 が次に示す2個の
仮説X2,1 、X2,2 に更新される。
【数19】 ここで、仮説X2,1 は既存航跡T1 が観測ベクトルZ
2,1 、Z2,2 により2つの航跡T1 、T3 に分離し、既
存航跡T2 が観測ベクトルZ2,3 により伸長したとする
仮説であり、また、仮説X2,2 は既存航跡T1 が観測ベ
クトルZ2,1 により伸長し、既存航跡T2 が観測ベクト
ルZ2,2 、Z2,3 により2つの航跡T2 、T4 に分離し
たとする仮説に相当する。なお、この仮説更新処理で新
たに生成された航跡T3 、T4 はクラスタ3のクラスタ
内航跡−観測ベクトル表17に追記しておく。次に航跡
削除部34であるが、この時点では、上記仮説更新後の
4つの航跡T 1 、T2 、T3 、T4 がクラスタ内航跡−
観測ベクトル表17に記載されており、また、仮説内航
跡表16には上記2つの仮説X2,1 、X2,2 が記載され
ている。4つの航跡は共に、2つの仮説のいずれかに含
まれるため、航跡の削除は行われない。以上で時刻t2
の処理が終了する。以降、時刻が進み、新たな観測ベク
トルが入力される度に上記一連の処理が繰り返される。
【0038】以上のように、この実施の形態1によれ
ば、センサから誤信号が得られる可能性、センサが目標
の観測に失敗する可能性、および既存の航跡のゲート内
に新たな目標が現れる可能性が無いものとして仮説を構
築しているため、仮説数が無駄に増大することを抑制す
ることができる。一例として、この実施の形態1による
目標追尾装置では、上記説明した図5の例の時刻t2の
処理では、式(35)の1つの仮説X1,1 が式(3
8),(39)の2つの仮説X2,1 、X2,2 に拡張され
た。これに対し、仮に従来の目標追尾装置の仮説構築方
法を適用した場合、ここには詳しく述べないものの、合
計30個の仮説に拡張されるとの結果になる。また、こ
の実施の形態1による目標追尾装置では、上記述べた3
つの可能性を排除したことで、ゲート内の観測ベクトル
と既存航跡との対応関係に矛盾をきたすことがないよ
う、必要最低限の可能性として、既存航跡が消滅する可
能性や複数の既存航跡が1つに融合する可能性、1つの
既存航跡が複数の航跡に分離する可能性を考慮している
ため、航跡推定に誤りが生じにくい。
【0039】実施の形態2.上記実施の形態1の目標追
尾装置では、従来の目標追尾装置の場合に比べると仮説
数の増大が大幅に抑制されるものの、目標が頻繁に融合
や分離を繰り返す状況では、依然として仮説数が増大す
る場合がある。このような状況では、従来の目標追尾装
置の場合と同様に仮説縮小部を設けることが有効であ
る。この実施の形態2では、上記実施の形態1に仮説縮
小部を付加した場合の目標追尾装置について説明する。
図6はこの実施の形態2による目標追尾装置を示す全体
構成図であり、図において、19は仮説に対して何らか
の評価を行い、その結果によって一部の仮説を削除する
ことにより仮説数を縮小する仮説縮小部である。その他
の部位は実施の形態1で説明した図1の目標追尾装置と
同じ構成である。
【0040】次に動作について説明する。実施の形態1
と同様の動作により仮説の構築を繰り返した場合、目標
が頻繁に融合や分離を行うと、仮説の数が増大し、目標
追尾装置の処理効率が悪化する可能性がある。仮説縮小
部19は、従来の目標追尾装置の場合と同様に、任意の
時点でクラスタ内仮説状況データ群14を入力し、何ら
かの方法で仮説の尤もらしさの評価を行って評価値の低
い仮説を削除したり、あるいは、互いに似た仮説を統合
して、その結果を戻す。具体的な方法としては、例えば
従来の目標追尾装置で示したものが利用できる。すなわ
ち、 (ア)最も評価値の高い仮説のみを残す。 (イ)評価値がある基準値以上の仮説のみを残す。 (ウ)過去N時刻分の航跡が同一の仮説を統合する。 (エ)航跡数が同じで、各航跡の位置、速度などの平滑
結果がほぼ同一である仮説を統合する。 である。
【0041】以上のように、この実施の形態2によれ
ば、このように仮説の縮小を行うことにより、目標が頻
繁に融合や分離を繰り返す状況においても、目標追尾装
置の処理効率の悪化を防ぐことができる。
【0042】実施の形態3.この実施の形態3では上記
実施の形態2に、さらにクラスタ分離を行うための部位
を付加した場合の目標追尾装置を説明する。クラスタを
分離するとそれぞれの仮説の規模が縮小し、目標追尾装
置全体として処理効率が向上する。上記実施の形態2で
仮説縮小部19による仮説の縮小を行った場合、従来の
目標追尾装置の場合と同様にクラスタの分離が可能とな
る。ここで、従来の目標追尾装置における図14のクラ
スタ分離部20を上記実施の形態2の目標追尾装置に付
加しようとする場合、従来装置の説明の際に述べたよう
に、分離クラスタ仮説生成部24が正常に動作するため
の条件として、分離前のクラスタの各仮説内に、観測ベ
クトルを共有する複数の航跡が存在しないことが必要で
ある。しかしながら、実施の形態1で説明した目標追尾
装置の仮説構築方法では、上記の条件が満足されない場
合が生じ得る。このため、この発明の目標追尾装置では
クラスタ分離を行う前に仮説の是正処理が必要である。
例を用いて説明する。実施の形態1の動作説明で使用し
た図5のケースでは、時刻t2の処理が終了した時点
で、式(38),(39)に示した仮説X2,1 、X2,2
が構築される。ここで、仮説X2,1 内の航跡T1 とT3
は観測ベクトルZ 1,1 を共有し、また、仮説X2,2 内の
航跡T2 とT4 は観測ベクトルZ1,2 を共有している。
この例が示すように、この発明の目標追尾装置では、1
つの航跡が複数の観測ベクトルと相関することにより複
数の航跡に分離した場合に、上記述べた条件が満足され
ない状況が発生する。したがって、クラスタ分離を行う
場合、まず、上記条件を満足するよう仮説の是正が必要
である。上記の例では、例えば次のように是正すること
が必要である。 X2,1 =[T1 ,T2 ,T3 ] T1 =[Z1,1 ,Z2,1 ] T2 =[Z1,2 ,Z2,3 ] T3 =[Z2,2 ] (40) X2,2 =[T1 ,T2 ,T4 ] T1 =[Z1,1 ,Z2,1 ] T2 =[Z1,2 ,Z2,3 ] T4 =[Z2,2 ] (41) ここで、上記仮説X2,1 では、式(38)の航跡T3
り観測ベクトルZ1,1を除いたものを改めて航跡T3
し、仮説X2,2 では、式(39)の航跡T4 より観測ベ
クトルZ1,2 を除いたものを改めて航跡T4 としてい
る。この結果、上記条件が満足される。
【0043】以下、この実施の形態3について詳しく説
明する。図7はこの発明の実施の形態3による目標追尾
装置を示す全体構成図であり、図において、41は航跡
に含まれる現時刻までの一連の観測ベクトルを平滑化し
て航跡の平滑ベクトルを算出する平滑化処理部、42は
クラスタ内にある全ての航跡に対し、現時刻の目標の真
の位置、速度等の運動諸元を推定した結果である平滑ベ
クトルを示したクラスタ内航跡−平滑ベクトル表であ
る。43はクラスタ内の各仮説に対し、仮説内に観測ベ
クトルを共有する複数の航跡が存在しないとの条件が満
足されているかどうかを調べ、満足されないものについ
て仮説を是正する仮説是正部である。20は仮説を縮小
した際にクラスタを分離できるかどうかを評価し、クラ
スタが分離できる場合にそれぞれのクラスタの仮説を再
構成するクラスタ分離部である。他の部位は図6で説明
した実施の形態2の目標追尾装置の場合と同じ構成とな
っている。
【0044】次に動作について説明する。ある時刻に観
測ベクトルが入力した際のこの実施の形態3の一連の動
作を説明する。まず、観測ベクトルが入力すると、ゲー
ト算出部4が、全てのクラスタの全ての航跡に対し、ク
ラスタ内航跡−平滑ベクトル表42より航跡の平滑ベク
トルを読み出し、これを基に航跡のゲートを算出する。
ここで、この実施の形態3のゲート算出部4は図13の
フローチャートのステップST−1を除き、ステップS
T−2、およびステップST−3のみを実行する。次
に、観測ベクトル選択部5、クラスタ新設統合部7、自
由空間用ゲート内判定行列算出部31、自由空間用航跡
相関行列算出部32、および自由空間用仮説更新部33
までの動作は実施の形態1の場合と同様である。ここま
での動作によりクラスタ内航跡−観測ベクトル表17に
は、航跡が融合したり、分離したりする場合を含む種々
の可能性を表した航跡が記載されている。次に平滑化処
理部41に進む。平滑化処理部41では、追尾フィルタ
の機能を使用し、クラスタ内の全ての航跡の平滑化を行
う。すなわち、各航跡に含まれる一連の観測ベクトルを
平滑化することにより現時刻の目標の真の位置、速度等
の運動諸元を推定した結果である平滑ベクトルを算出
し、これをクラスタ内航跡−平滑ベクトル表42に記載
する。ここで、通常、追尾フィルタの処理は、前時刻の
平滑ベクトルを、現時刻に追加された観測ベクトルを使
用して新たな平滑ベクトルに更新する逐次処理の形式で
実現される。このため、平滑化処理部41の具体的な処
理手順は、まず、クラスタ内航跡−平滑ベクトル表42
より前時刻に算出した平滑ベクトルを読み出し、次に、
クラスタ内航跡−観測ベクトル表17より航跡に含まれ
る現時刻の観測ベクトルを読み出し、上記平滑ベクトル
を上記観測ベクトルで更新し、この結果をクラスタ内航
跡−平滑ベクトル表42に戻すとの手順となる。
【0045】次に仮説是正部43が、クラスタ内の各仮
説に対し、仮説内に観測ベクトルを共有する複数の航跡
が存在しないとの条件が満たされているかどうかを調
べ、満たされていないものについて仮説を是正する。具
体的には、仮説内の複数の航跡が観測ベクトルを共有す
る場合に、これらの航跡のいずれか1つを除く他の航跡
から共有された観測ベクトルを取り除くことにより、上
記条件を満足させるための処理を行う。次に、例えばこ
の時点で、仮説縮小部19により仮説の縮小が行われ
る。最後に、クラスタ分離部20が、仮説の縮小が行わ
れた場合にクラスタが分離可能かどうかを調べ、可能で
ある場合にクラスタの分離処理を行う。このクラスタ分
離部20は従来の目標追尾装置の説明で述べた図14の
構成を持ち、従来の目標追尾装置の、誤信号有無判定部
21により誤信号が存在しないと判定された場合のクラ
スタ分離部20と同様に動作する。よって、クラスタ分
離部20は以下のように動作する。まず、クラスタ分離
判定部23はクラスタ内仮説状況データ群14を入力
し、以下のクラスタの定義に従いクラスタ内の全航跡の
関係を調べ、クラスタが分離可能であるか否かを判定す
る。すなわち、航跡Ti とTj が少なくとも1つの観測
ベクトルを共有する場合に限り、航跡Ti とTj を類似
航跡と呼び、 Ti 〜Tj (10) と書く。航跡Ti とTj において、 Ti =Ti1〜Ti2〜・・・〜Tin=Tj (11) となるTi1,Ti2・・・ Tinが存在する場合に限り、 Ti ≡Tj (12) と定義する。この関係は、反射律、対象律、および推移
律を満足しており、すなわち同値関係にある。任意の時
刻において、全航跡は同値関係により分類することがで
き、複数の互いに素な類に分けることができる。厳密に
は、この類のことをクラスタと呼ぶ。次に、分離クラス
タ仮説生成部24が、上記クラスタ分離判定部23の判
定結果により分離可能となった航跡群を新たなクラスタ
として分離し、この新クラスタ内の仮説を以下の3つの
手順で再構築する。すなわち、まず第1のステップで旧
クラスタに含まれていた全ての仮説に対して、新クラス
タの航跡を含んでいるかどうかを調べ、含んでいるもの
については、これら含まれている航跡のみからなる新た
な仮説を新クラスタ内に生成する。さらに第3のステッ
プで上記第1のステップで作成した新仮説の内で内容が
同一のものを統合する。
【0046】以上がこの実施の形態3の動作手順であ
る。これを実施の形態1の説明で使用した図5の例にお
いて、時刻t2での処理の場合にあてはめると、以下の
様になる。まず、ゲート算出部4から自由空間用仮説更
新部33までの処理により、実施の形態1の場合と同様
に、クラスタ内に式(38),(39)に示した仮説X
2,1 、X2,2 と、これらに含まれる4つの航跡T1 、T
2 、T3 、T4 が生成される。次に平滑化処理部41
が、上記4つの航跡T1 、T2 、T3 、T4 の平滑化を
行い、現時刻t2の各航跡の平滑ベクトルを算出してク
ラスタ内航跡−平滑ベクトル表42に書き込む。ここ
で、上記算出された平滑ベクトルは、各々航跡内に含ま
れる2つの観測ベクトルを平滑化して得られた結果であ
る。次に仮説是正部43に進む。前述のように、式(3
8),(39)の仮説X2, 1 、X2,2 はともに観測ベク
トルを共有する複数の航跡を含む。このため仮説の是正
が行われる。その結果、例えば前述の式(40),(4
1)のように仮説が是正される。ここで、上記航跡T3
では式(38)の航跡T3 より観測ベクトルZ1,1 が取
り除かれ、また、航跡T4 では式(39)の航跡T4
り観測ベクトルZ1,2 が取り除かれた。すなわち、是正
処理後の航跡T3 、T4 は前時刻までの観測ベクトルと
は別の新たな航跡として再定義された。しかしながら、
航跡T 3 、T4 の平滑ベクトルは是正前の航跡より既に
上記平滑化処理部41で算出済みであり、過去の観測情
報は平滑ベクトルの中に保持されている。さらに、上記
述べたように平滑化処理部41の処理動作は逐次処理の
形式であるため、過去の観測情報は次時刻以降も平滑ベ
クトルの内部に引き継がれていく。最後に仮説縮小部1
9が仮説の縮小を行い、クラスタ分離部20が可能であ
ればクラスタの分離を行う。
【0047】以上のように、この実施の形態3によれ
ば、一連の動作により構築された仮説が、仮説内に観測
ベクトルを共有する複数の航跡が存在しないとの条件を
満足しない場合に、この条件が満足されるように仮説を
是正し、その結果として、クラスタ分離部20によりク
ラスタを分離することができる。クラスタの分離によ
り、それぞれの仮説の規模が縮小し、目標追尾装置全体
として処理効率を向上させることができる。また、上記
仮説の是正により前時刻までの観測ベクトルとは切り離
された航跡が発生した場合にも、前時刻までの一連の観
測ベクトルの情報を使用した平滑ベクトルを計算し、過
去の観測情報を次時刻以降の平滑ベクトルに引き継ぐこ
とができる。この結果、次時刻以降のゲートの算出にお
いて、過去の観測情報をも加味した予測位置が算出され
て適切な位置にゲートが張られため、誤った相関が為さ
れる可能性を抑えることができる。
【0048】実施の形態4.図8はこの発明の実施の形
態4による仮説是正部の詳細を示す構成図であり、図に
おいて、44は仮説内に観測ベクトルを共有する複数の
航跡が存在するか否かを調べ、存在する場合にこの仮説
を是正する是正処理部、45は是正処理の結果、同一の
内容となった航跡を統合する航跡統合部、46は是正処
理の結果、同一の内容となった仮説を統合する仮説統合
部である。
【0049】次に動作について説明する。仮説是正部4
3がクラスタ内仮説状況データ群14を入力し、是正処
理部44に与える。是正処理部44は、クラスタ内の全
ての仮説に対し仮説の是正処理を行う。具体的には、各
仮説について、仮説内の複数の航跡が1つ以上の観測ベ
クトルを共有するかどうかを調べ、共有する場合には、
仮説内のこれら航跡のうちのいずれか1つを除く他の航
跡から上記共有された観測ベクトルの全てを取り除く。
次に、航跡統合部45は、クラスタ内航跡−観測ベクト
ル表17により上記是正処理によって内容が同一となっ
た複数の航跡が存在するか否かを調べ、存在した場合に
は、これら航跡を同一航跡番号の航跡として改めてクラ
スタ内航跡−観測ベクトル表17に記載する。さらに、
上記複数の航跡の平滑ベクトルをクラスタ内航跡−平滑
ベクトル表42より読み出し、これらを、ここには記述
されない何らかの方法で1つの平滑ベクトルに統合し、
改めてクラスタ内航跡−平滑ベクトル表42に記載す
る。さらに、仮説統合部46は、仮説内航跡表16によ
り上記是正処理によって内容が同一となった複数の仮説
が存在するか否かを調べ、存在した場合には、これら仮
説を同一仮説番号の仮説として改めて仮説内航跡表16
に記載する。仮説是正部43は上記一連の処理で更新さ
れたクラスタ内仮説状況データ群14を出力する。
【0050】実施の形態3の場合と同様に、上記動作を
図5の例の時刻t2の処理の場合にあてはめて説明す
る。式(38),(39)の仮説を是正する場合とす
る。まず、是正処理部44が、実施の形態3で述べたの
と同様に、式(38),(39)の仮説X2,1 、X2,2
のそれぞれについて、仮説内の一部の航跡から観測ベク
トルを取り除くことにより仮説の是正処理を行う。例え
ば、式(40),(41)のように仮説を是正する。次
に航跡統合部45に進む。是正後の仮説である式(4
0),(41)において、航跡T3 とT4 はいずれも1
つの観測ベクトルZ2,2 より構成されており、内容が同
一となった。このため、これらの航跡を同一視し、改め
て1つの航跡T 3 としてクラスタ内航跡−観測ベクトル
表17に記載する。この結果、式(40),(41)の
仮説は以下のように修正される。 X2,1 =[T1 ,T2 ,T3 ] T1 =[Z1,1 ,Z2,1 ] T2 =[Z1,2 ,Z2,3 ] T3 =[Z2,2 ] (42) X2,2 =[T1 ,T2 ,T3 ] T1 =[Z1,1 ,Z2,1 ] T2 =[Z1,2 ,Z2,3 ] T3 =[Z2,2 ] (43) 一方、式(40),(41)の航跡T3 、T4 の平滑ベ
クトルは、前述のように、是正前の式(38),(3
9)の航跡より、過去の観測ベクトルの情報も使用して
算出されており、航跡T3 、T4 で互いに違う値を持っ
ている。航跡統合部45は、これらの値をクラスタ内航
跡−平滑ベクトル表42より読み出して1つの平滑ベク
トルに統合した後、上記同一視された航跡T3 の平滑ベ
クトルとして改めてクラスタ内航跡−平滑ベクトル表4
2に記載する。次に、仮説統合部46が仮説の統合を行
う。上記航跡統合部45の処理の結果、式(42),
(43)が示すように2つの仮説X2,1 、X2,2 は同一
内容の仮説となった。このため、これらの仮説を同一視
し、改めて1つの仮説X2,1 としてクラスタ内仮説表1
5と仮説内航跡表16に記載する。この結果、式(4
2),(43)の仮説は以下のように1つに統一され
る。 X2,1 =[T1 ,T2 ,T3 ] T1 =[Z1,1 ,Z2,1 ] T2 =[Z1,2 ,Z2,3 ] T3 =[Z2,2 ] (44)
【0051】以上のように、この実施の形態4によれ
ば、仮説の是正処理の結果で内容が同一となった航跡を
統一すると共に、これらの航跡の平滑ベクトルを統合す
ることにより、クラスタ内の航跡の数を減らすことがで
きる。また、この航跡の統合処理の結果で内容が同一と
なった仮説を統一することにより、クラスタ内の仮説の
数を減らすことができる。これらの処理により、クラス
タ内の仮説の規模が減少し、処理の効率をさらに向上さ
せることができる。
【0052】実施の形態5.この実施の形態5では、是
正処理部44において、1つの航跡から複数の航跡が分
離したとする仮説を是正するために、1つの航跡と最も
相関の強い観測ベクトルをその航跡を引き継ぐ観測ベク
トルとして選択し、他の観測ベクトルを1つの航跡より
分離した別の航跡として定義するようにしたものであ
る。
【0053】次に動作について説明する。図9はこの発
明の実施の形態5による是正処理部の動作を示すフロー
チャートであり、この図9に沿い、この実施の形態5の
動作を説明する。是正処理部44は、システム内の各ク
ラスタに対し以下の処理を実行する。まず、クラスタ内
の1つの仮説を選択する(ステップST−21)。次
に、この仮説を作成するのに使用したクラスタ内航跡相
関行列12を入力する(ステップST−22)。次に、
航跡相関行列の1つの列に着目する(ステップST−2
3)。次に、クラスタ内航跡相関行列12の当該列の中
の、値が1の要素の数をカウントする(ステップST−
24)。ここで、1の要素が1個であった場合は、この
列に対応する既存航跡が複数の航跡に分離されていない
場合である。この場合は、次の列の処理に移るため後述
のステップST−19に進む。一方、値が場合である。
この場合はステップST−26に進む(ステップST−
25)。次1の要素が複数個であった場合は、この列の
既存航跡が複数の航跡に分離されたに、値が1の要素の
各行に対応する観測ベクトルの各々について、この観測
ベクトルと当該列の既存航跡との相関の強さを何らかの
方法で評価し、その評価値を算出する(ステップST−
26)。評価の方法としては、例えば、既存航跡のゲー
トの中心位置と観測ベクトルの示す位置が近い程、高い
評価値となるようにする方法などが考えられる。次に、
上記評価値が最も高い観測ベクトルを1個選択する(ス
テップST−27)。次に、選択した観測ベクトル以外
の観測ベクトルと既存航跡が組み合わされたことによる
仮説内の各航跡について、この航跡から既存航跡に含ま
れていた全観測ベクトルを取り除く(ステップST−2
8)。これにより、上記各航跡は現時刻の観測ベクトル
1個のみから成る航跡に修正される。次に、クラスタ内
航跡相関行列12の全ての列を処理したか否かを判断
し、残余列がある場合にはステップST−23に戻る。
一方、残余列がない場合にはステップST−30に移
り、全てに仮説を処理したか否かを判断する(ステップ
ST−29)。残余仮説がある場合にはステップST−
21に戻り、無ければ仮説の是正処理を終了する(ステ
ップST−30)。
【0054】次に、上記動作を式(38)の仮説X2,1
の場合にあてはめて具体的に説明する。まず、仮説X
2,1 を選択する(ステップST−21)。次に、式(3
8)に示されたクラスタ内航跡相関行列Ω(H2,1 )を
クラスタ内航跡相関行列12より入力する(ステップS
T−22)。そして、Ω(H2,1 )の第1列に着目する
(ステップST−23)。この列は式(34)の既存航
跡T1 に対応する列である。Ω(H2,1 )の第1列の1
の要素をカウントすると、観測ベクトルZ2,1 とZ2,2
の行に対応する2個の要素であることがわかる(ステッ
プST−24)。従って、ステップST−25の判定で
ステップST−26に進む。そして、観測ベクトルZ
2,1 と既存航跡T1 、観測ベクトルZ2,2 と既存航跡T
1 のそれぞれの相関の強さを示す評価値を算出する(ス
テップST−26)。この結果、例えば観測ベクトルZ
2,1 の評価値の方が大きい値であったとする。従って、
この場合、観測ベクトルZ2,1 が選択される(ステップ
ST−27)。次に、上記で選択されなかった観測ベク
トルZ2,2 と既存航跡T1 から生成された式(38)の
航跡T3 より、既存航跡に含まれていた観測ベクトルZ
1,1 を取り除く(ステップST−28)。次に、Ω(H
2,1 )の第2列の処理に進む。第2列には1の要素が1
個であるため、ステップST−26〜ST−28の処理
は行われない。以上で、仮説X2,1 の是正処理が終了す
る。これにより、以下の結果が得られる。 X2,1 =[T1 ,T2 ,T3 ] T1 =[Z1,1 ,Z2,1 ] T2 =[Z1,2 ,Z2,3 ] T3 =[Z2,2 ] (45) 一方、上記第1列のステップST−26の処理で、上記
とは逆に観測ベクトルZ2,2 の評価値の方が大きい値と
なった場合には、処理結果は以下のようになる。 X2,1 =[T1 ,T2 ,T3 ] T1 =[Z1,1 ] T2 =[Z1,2 ,Z2,3 ] T3 =[Z1,1 ,Z2,2 ] (46) すなわち、処理結果は、既存航跡より分離した複数の観
測ベクトルのうちの、いずれが既存航跡と相関が強いか
によって変わる結果となる。
【0055】以上のように、この実施の形態5によれ
ば、1つの既存航跡から複数の航跡が分離したとする仮
説を是正する場合に、上記既存航跡と最も相関の強い観
測ベクトルがこの既存航跡を引き継ぐ観測ベクトルとし
て選択され、他の観測ベクトルは上記既存航跡より分離
した別の航跡として定義される。これにより、1つの目
標が複数に分離した場合に、分離したものの中で分離前
の目標と最も関係の強い目標が過去の航跡を引き継ぐこ
とができる。
【0056】実施の形態6.この実施の形態6では、是
正処理部44において、1つの航跡から複数の航跡が分
離したとする仮説を是正するために、1つの航跡の存在
期待領域内のみに存在し他の航跡の存在期待領域には含
まれない観測ベクトルを優先的に選択し、他の観測ベク
トルを1つの航跡より分離した別の航跡として定義する
ようにしたものである。
【0057】次に動作について説明する。図10はこの
発明の実施の形態6による是正処理部の動作を示すフロ
ーチャートであり、この図10に沿い、この実施の形態
6の動作を説明する。是正処理部44は、システム内の
各クラスタに対し以下の処理を実行する。まず、クラス
タ内ゲート内判定行列10を入力する(ステップST−
31)。次に、クラスタ内の1つの仮説を選択する(ス
テップST−32)。さらに、この仮説を作成するのに
使用したクラスタ内航跡相関行列12を入力する(ステ
ップST−33)。次に、クラスタ内航跡相関行列12
の1つの列に着目する(ステップST−34)。そし
て、クラスタ内航跡相関行列12の当該列の中の1の要
素のうち、この要素の対応する観測ベクトルのクラスタ
内ゲート内判定行列10の行が、当該列以外に1の要素
を持たないとの条件を満たすもののみを抽出して、この
要素数をカウントする(ステップST−35)。ここで
カウントされた数は、当該列に相当する既存航跡のゲー
ト内にのみ含まれ、他の既存航跡のゲート内には含まれ
ない観測ベクトルの数に相当する。次に、上記カウント
した要素数が0個であった場合は後述のステップST−
32に進む。一方、要素数が1個以上であった場合はス
テップST−37に進む(ステップST−36)。そし
て、上記抽出した要素が対応する観測ベクトルの各々と
当該列の既存航跡の相関の強さを示す評価値を何らかの
方法で算出する(ステップST−37)。次に、上記評
価値が最大の観測ベクトルを選択する(ステップST−
38)。ここで、上記抽出した要素が1個の場合は、こ
れに対応する1個の観測ベクトルが選択される。さら
に、上記評価値を算出した観測ベクトルのうちの上記選
択した観測ベクトル以外のものと既存航跡が組み合わさ
れたことによる仮説内の各航跡について、この航跡から
既存航跡の観測ベクトルを取り除く(ステップST−3
9)。これにより、上記各航跡は現時刻の観測ベクトル
1個のみから成る航跡に修正される。次に、ステップS
T−33で入力したクラスタ内航跡相関行列12からス
テップST−34で着目した列を削除する(ステップS
T−40)。さらに、ステップST−31で入力したク
ラスタ内ゲート内判定行列10からステップST−35
で抽出した各要素の観測ベクトルに対応する行を全て削
除する(ステップST−41)。次に、クラスタ内航跡
相関行列12に列が残存しているかを調べ、残存してい
る場合にはステップST−34に戻る。一方、残存して
いない場合はステップST−43に進む(ステップST
−42)。さらに、クラスタ内ゲート内判定行列10に
行が残存しているかを調べ、残存していない場合にはス
テップST−45に進み、残存している場合にはステッ
プST−44に移る(ステップST−43)。さらに、
クラスタ内ゲート内判定行列10に残存している行に対
応する観測ベクトルといずれかの既存航跡とが組み合わ
されたことによる仮説内の各航跡から、既存航跡の観測
ベクトルを取り除く(ステップST−44)。最後にス
テップST−42で全ての仮説を処理したかどうかを調
べ、残余仮説が有る場合にはステップST−31に戻
り、無い場合には処理を終了する(ステップST−4
5)。
【0058】次に、上記動作を式(38)の仮説X2,1
の場合にあてはめて具体的に説明する。まず、式(3
6)のクラスタ内ゲート内判定行列Ω(H2 )を入力す
る(ステップST−31)。次に、仮説X2,1 を選択し
(ステップST−32)、式(38)のクラスタ内航跡
相関行列Ω(H2,1 )を入力する(ステップST−3
3)。さらに、クラスタ内航跡相関行列Ω(H2,1 )の
例えば第1列に着目する(ステップST−34)。この
列は式(34)の既存航跡T1 に対応する列である。次
に、クラスタ内航跡相関行列Ω(H2,1 )の第1列の1
の要素は第1行と第2行の2つであるが、このうち第2
行は、クラスタ内ゲート内判定行列10のこの行が第1
列のみならず第2列にも1の要素を持っている。このた
め、ここでは、観測ベクトルZ2,1 に対応する第1行の
要素のみが抽出される(ステップST−35)。次に、
ステップST−35で1個の要素が抽出されたので、ス
テップST−37に進む(ステップST−36)。次
に、観測ベクトルZ2,1 と既存航跡T1 の相関の強さを
示す評価値を計算する(ステップST−37)。ただ
し、ここでは抽出された要素数が1個のため、この処理
を省略することも可能である。次に、観測ベクトルZ
2,1 を選択する(ステップST−38)。次に、1個の
観測ベクトルZ2,1 の評価値が算出され、これがステッ
プST−38で選択されたため、選択されなかった観測
ベクトルは存在しない。このため、仮説内の航跡から観
測ベクトルを取り除く処理は行われない(ステップST
−39)。次に、クラスタ内航跡相関行列Ω(H2,1
より第1列が削除され(ステップST−40)、クラス
タ内ゲート内判定行列Ω(H2 )より観測ベクトルZ
2,1 の行が削除される(ステップST−41)。さら
に、ステップST−34に戻り(ステップST−4
2)、クラスタ内航跡相関行列Ω(H2,1 )の第2列の
処理に入る。第2列に対する処理も上記第1列に対する
処理とほぼ同様である。第2列では、第3行の要素のみ
が抽出され(ステップST−35)、この要素に対応す
る観測ベクトルZ2,3 が選択される(ステップST−3
8)。さらに、仮説内の航跡から観測ベクトルを削除す
る処理は行われない(ステップST−39)。クラスタ
内航跡相関行列Ω(H2,1 )より第2列が削除され(ス
テップST−42)、クラスタ内ゲート内判定行列Ω
(H 2 )より観測ベクトルZ2,3 の行が削除される(ス
テップST−41)。以上でステップST−42までの
処理が終了し、ステップST−43に移る。クラスタ内
ゲート内判定行列Ω(H2 )は、上記までの処理により
2,1 の行とZ2,3 の行が削除され、Z2,2 の行のみが
残る。従って、Z2,2 と既存航跡から成る航跡が修正さ
れる(ステップST−44)。すなわち、式(38)の
航跡T 3 がZ2,2 と式(34)の既存航跡T1 より作成
された航跡であるため、航跡T 3 から既存航跡の観測ベ
クトルZ1,1 が取り除かれる。この結果、仮説X2,1
最終的に以下の様に是正される。 X2,1 =[T1 ,T2 ,T3 ] T1 =[Z1,1 ,Z2,1 ] T2 =[Z1,2 ,Z2,3 ] T3 =[Z2,2 ] (47) さらに、上記動作を式(39)の仮説X2,2 にあてはめ
た場合について結果のみを示す。以下のようになる。 X2,2 =[T1 ,T2 ,T4 ] T1 =[Z1,1 ,Z2,1 ] T2 =[Z1,2 ,Z2,3 ] T4 =[Z2,2 ] (48) この結果、式(47),(48)では、2つの航跡T3
とT4 が同一内容となった。
【0059】以上のように、この実施の形態6によれ
ば、1つの既存航跡から複数の航跡が分離したとする仮
説を是正する場合に、上記既存航跡のゲート内のみに存
在し他の既存航跡のゲートには含まれない観測ベクトル
が優先的に選択される。この結果、複数の既存航跡のゲ
ート内に含まれる観測ベクトルは、既存航跡を引き継が
ない分離した航跡となる可能性が高くなる。このため、
航跡統合部45、仮説統合部46を使用して航跡や仮説
の統合を行える場合が多くなり、目標追尾装置の処理効
率を向上することができる。
【0060】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、既存
の各クラスタ毎に、クラスタ内に既存の航跡が存在し且
つクラスタ内の既存の航跡と対応づけられた観測ベクト
ルが存在する場合に、ゲート内判定行列を算出する自由
空間用ゲート内判定行列算出部と、そのゲート内判定行
列から複数の航跡相関行列を算出する自由空間用航跡相
関行列算出部と、新クラスタに対して新規に仮説を生成
すると共に、既存のクラスタに対して航跡相関行列とク
ラスタ内の既存の仮説に応じて新しい仮説を作成する自
由空間用仮説更新部と、各クラスタ毎に、各クラスタに
含まれる各航跡が各クラスタ内のいずれかの仮説に含ま
れるかを調べ、いずれの仮説にも含まれない航跡である
場合にその航跡をそのクラスタ内から削除する航跡削除
部とを備えるように構成したので、目標観測装置から誤
信号が得られる可能性、目標観測装置が目標の観測に失
敗する可能性、および既存の航跡のゲート内に新たな目
標が現れる可能性が無いものとして仮説を構築している
ため、仮説数が無駄に増大することを抑制することがで
きる。また、上記述べた3つの可能性を排除したこと
で、ゲート内の観測ベクトルと既存航跡との対応関係に
矛盾をきたすことがないよう、必要最低限の可能性とし
て、既存航跡が消滅する可能性や複数の既存航跡が1つ
に融合する可能性、1つの既存航跡が複数の航跡に分離
する可能性を考慮しているため、航跡推定に誤りが生じ
にくいなどの効果が得られる。
【0061】この発明によれば、自由空間用仮説更新部
により作成された仮説を評価してその評価に応じて仮説
を削減する仮説縮小部を備えるように構成したので、仮
説の縮小を行うことにより、目標が頻繁に融合や分離を
繰り返す状況においても、目標追尾装置の処理効率の悪
化を防ぐことができる効果が得られる。
【0062】この発明によれば、クラスタ内の各航跡に
対し、各航跡に含まれる時系列の観測ベクトルを平滑化
して現在の目標の位置、速度等の運動諸元を算出する平
滑化処理部と、クラスタ内の各仮説が、仮説内に観測ベ
クトルを共有する複数の航跡を含むか否かを調べ、観測
ベクトルを共有する複数の航跡を含む場合に、これを含
まないように仮説を是正する仮説是正部と、仮説縮小時
にクラスタの分離可能であるか調べ、分離可能であれば
そのクラスタを分離するクラスタ分離部とを備えるよう
に構成したので、一連の動作により構築された仮説が、
仮説内に観測ベクトルを共有する複数の航跡が存在しな
いとの条件を満足しない場合に、この条件が満足される
ように仮説を是正し、その結果として、クラスタ分離部
によりクラスタを分離することができる。クラスタの分
離により、それぞれの仮説の規模が縮小し、目標追尾装
置全体として処理効率を向上させることができる。上記
仮説の是正により前時刻までの観測ベクトルとは切り離
された航跡が発生した場合にも、前時刻までの一連の観
測ベクトルの情報を使用した平滑ベクトルを計算し、過
去の観測情報を次時刻以降の平滑ベクトルに引き継ぐこ
とができる。この結果、次時刻以降のゲートの算出にお
いて、過去の観測情報をも加味した予測位置が算出され
て適切な位置にゲートが張られため、誤った相関が為さ
れる可能性を抑えることができる効果が得られる。
【0063】この発明によれば、仮説是正部において、
仮説内に観測ベクトルを共有する複数の航跡が存在する
場合にその仮説を是正する是正処理部と、その是正処理
の結果で同一内容となったクラスタ内の航跡を統合する
航跡統合部と、その是正処理の結果で同一内容となった
クラスタ内の仮説を統合する仮説統合部とを備えるよう
に構成したので、仮説の是正処理の結果で内容が同一と
なった航跡を統一すると共に、これらの航跡の平滑ベク
トルを統合することにより、クラスタ内の航跡の数を減
らすことができる。また、この航跡の統合処理の結果で
内容が同一となった仮説を統一することにより、クラス
タ内の仮説の数を減らすことができる。これらの処理に
より、クラスタ内の仮説の規模が減少し、処理の効率を
さらに向上させることができる効果が得られる。
【0064】この発明によれば、是正処理部において、
1つの航跡から複数の航跡が分離したとする仮説を是正
するために、1つの航跡と最も相関の強い観測ベクトル
をその航跡を引き継ぐ観測ベクトルとして選択し、他の
観測ベクトルを1つの航跡より分離した別の航跡として
定義するように構成したので、1つの既存航跡から複数
の航跡が分離したとする仮説を是正する場合に、上記既
存航跡と最も相関の強い観測ベクトルがこの既存航跡を
引き継ぐ観測ベクトルとして選択され、他の観測ベクト
ルは上記既存航跡より分離した別の航跡として定義され
る。これにより、1つの目標が複数に分離した場合に、
分離したものの中で分離前の目標と最も関係の強い目標
が過去の航跡を引き継ぐことができる効果が得られる。
【0065】この発明によれば、是正処理部において、
1つの航跡から複数の航跡が分離したとする仮説を是正
するために、1つの航跡の存在期待領域内のみに存在し
他の航跡の存在期待領域には含まれない観測ベクトルを
優先的に選択し、他の観測ベクトルを上記1つの航跡よ
り分離した別の航跡として定義するように構成したの
で、1つの既存航跡から複数の航跡が分離したとする仮
説を是正する場合に、上記既存航跡のゲート内のみに存
在し他の既存航跡のゲートには含まれない観測ベクトル
が優先的に選択される。この結果、複数の既存航跡のゲ
ート内に含まれる観測ベクトルは、既存航跡を引き継が
ない分離した航跡となる可能性が高くなる。このため、
航跡統合部、仮説統合部を使用して航跡や仮説の統合を
行える場合が多くなり、目標追尾装置の処理効率を向上
することができる効果が得られる。
【0066】この発明によれば、既存の各クラスタ毎
に、クラスタ内に既存の航跡が存在し且つクラスタ内の
既存の航跡と対応づけられた観測ベクトルが存在する場
合に、ゲート内判定行列を算出する自由空間用ゲート内
判定行列算出工程と、そのゲート内判定行列から複数の
航跡相関行列を算出する自由空間用航跡相関行列算出工
程と、新クラスタに対して新規に仮説を生成すると共
に、既存のクラスタに対して航跡相関行列とクラスタ内
の既存の仮説に応じて新しい仮説を作成する自由空間用
仮説更新工程と、各クラスタ毎に、各クラスタに含まれ
る各航跡が各クラスタ内のいずれかの仮説に含まれるか
を調べ、いずれの仮説にも含まれない航跡である場合に
その航跡をそのクラスタ内から削除する航跡削除工程と
を備えるように構成したので、目標観測装置から誤信号
が得られる可能性、目標観測装置が目標の観測に失敗す
る可能性、および既存の航跡のゲート内に新たな目標が
現れる可能性が無いものとして仮説を構築しているた
め、仮説数が無駄に増大することを抑制することができ
る。また、上記述べた3つの可能性を排除したことで、
ゲート内の観測ベクトルと既存航跡との対応関係に矛盾
をきたすことがないよう、必要最低限の可能性として、
既存航跡が消滅する可能性や複数の既存航跡が1つに融
合する可能性、1つの既存航跡が複数の航跡に分離する
可能性を考慮しているため、航跡推定に誤りが生じにく
いなどの効果が得られる。
【0067】この発明によれば、既存の各クラスタ毎
に、クラスタ内に既存の航跡が存在し且つクラスタ内の
既存の航跡と対応づけられた観測ベクトルが存在する場
合に、ゲート内判定行列を算出する自由空間用ゲート内
判定行列算出工程と、そのゲート内判定行列から複数の
航跡相関行列を算出する自由空間用航跡相関行列算出工
程と、新クラスタに対して新規に仮説を生成すると共
に、既存のクラスタに対して航跡相関行列とクラスタ内
の既存の仮説に応じて新しい仮説を作成する自由空間用
仮説更新工程と、各クラスタ毎に、各クラスタに含まれ
る各航跡が各クラスタ内のいずれかの仮説に含まれるか
を調べ、いずれの仮説にも含まれない航跡である場合に
その航跡をそのクラスタ内から削除する航跡削除工程と
を備えるように構成したので、目標観測装置から誤信号
が得られる可能性、目標観測装置が目標の観測に失敗す
る可能性、および既存の航跡のゲート内に新たな目標が
現れる可能性が無いものとして仮説を構築しているた
め、仮説数が無駄に増大することを抑制することができ
る。また、上記述べた3つの可能性を排除したことで、
ゲート内の観測ベクトルと既存航跡との対応関係に矛盾
をきたすことがないよう、必要最低限の可能性として、
既存航跡が消滅する可能性や複数の既存航跡が1つに融
合する可能性、1つの既存航跡が複数の航跡に分離する
可能性を考慮しているため、航跡推定に誤りが生じにく
いなどの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による目標追尾装置
を示す全体構成図である。
【図2】 目標追尾装置をコンピュータにより実現した
場合を示す構成図である。
【図3】 ゲート内判定行列より航跡相関行列を算出す
る具体的手順を示すフローチャートである。
【図4】 真の航跡と観測ベクトルとの関係、およびゲ
ートと観測ベクトルとの関係を示す説明図である。
【図5】 真の航跡と観測ベクトルとの関係、およびゲ
ートと観測ベクトルとの関係を示す説明図である。
【図6】 この発明の実施の形態2による目標追尾装置
を示す全体構成図である。
【図7】 この発明の実施の形態3による目標追尾装置
を示す全体構成図である。
【図8】 この発明の実施の形態4による仮説是正部の
詳細を示す構成図である。
【図9】 この発明の実施の形態5による是正処理部の
動作を示すフローチャートである。
【図10】 この発明の実施の形態6による是正処理部
の動作を示すフローチャートである。
【図11】 従来の目標追尾装置を示す全体構成図であ
る。
【図12】 得られた観測ベクトル群と仮説との関係を
示す説明図である。
【図13】 時刻におけるゲート算出部の動作を示すフ
ローチャートである。
【図14】 クラスタ分離部のさらに詳細な構成を示す
構成図である。
【符号の説明】
1 目標追尾装置、4 ゲート算出部(ゲート算出工
程)、5 観測ベクトル選択部(観測ベクトル選択工
程)、7 クラスタ新設統合部(クラスタ新設統合工
程)、18 航跡決定部(航跡決定工程)、19 仮説
縮小部、20 クラスタ分離部、31 自由空間用ゲー
ト内判定行列算出部(自由空間用ゲート内判定行列算出
工程)、32 自由空間用航跡相関行列算出部(自由空
間用航跡相関算出工程)、33 自由空間用仮説更新部
(自由空間用仮説更新工程)、34 航跡削除部(航跡
削除工程)、41 平滑化処理部、43 仮説是正部、
44 是正処理部、45 航跡統合部、46 仮説統合
部、55 ハードディスク(記録媒体)、56 フロッ
ピーディスク(記録媒体)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−105965(JP,A) 特開 平8−271617(JP,A) 特開 平10−104348(JP,A) 特開 平10−104349(JP,A) 特開 平10−104350(JP,A) 特開 平10−104351(JP,A) 特開 平10−160830(JP,A) 特開 平10−227872(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01S 7/00 - 7/42 G01S 13/00 - 13/95

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 既存の各クラスタに含まれる既存の航跡
    から次に入力される観測ベクトルの存在期待領域を算出
    するゲート算出部と、上記ゲート算出部により算出され
    た存在期待領域に応じて入力された全体の観測ベクトル
    から上記既存の各クラスタ毎の航跡対応の観測ベクトル
    を選択する観測ベクトル選択部と、上記入力された全体
    の観測ベクトルのうち上記既存の各クラスタ内の航跡と
    対応がとれない観測ベクトルがある場合に、その観測ベ
    クトルに応じて新クラスタを作成し、複数の既存のクラ
    スタ内の航跡と対応づけられた観測ベクトルがある場合
    に、それら複数の既存のクラスタを統合するクラスタ新
    設統合部と、上記観測ベクトル選択部により選択された
    観測ベクトルのうち上記既存の各クラスタ毎に、それら
    クラスタ内に既存の航跡が存在し且つそれらクラスタ内
    の既存の航跡と対応づけられた観測ベクトルが存在する
    場合に、それら各観測ベクトルがそれらクラスタ内のい
    ずれの航跡と対応する可能性があるかを示すゲート内判
    定行列を算出する自由空間用ゲート内判定行列算出部
    と、上記自由空間用ゲート内判定行列算出部により算出
    されたゲート内判定行列からそれぞれが仮説の1つの拡
    張方法を示す複数の航跡相関行列を算出する自由空間用
    航跡相関行列算出部と、上記クラスタ新設統合部により
    作成された新クラスタに対して新規に仮説を生成すると
    共に、上記既存のクラスタに対して上記自由空間用航跡
    相関行列算出部により算出された航跡相関行列と上記ク
    ラスタ内の既存の仮説に応じて新しい仮説を作成する自
    由空間用仮説更新部と、上記各クラスタ毎に、それら各
    クラスタに含まれる各航跡がそれら各クラスタ内のいず
    れかの仮説に含まれるかを調べ、いずれの仮説にも含ま
    れない航跡である場合にその航跡をそのクラスタ内から
    削除する航跡削除部と、上記自由空間用仮説更新部によ
    り作成された複数の仮説から1つを選択し航跡を決定す
    る航跡決定部とを備えた目標追尾装置。
  2. 【請求項2】 自由空間用仮説更新部により作成された
    仮説を評価してその評価に応じてそれら仮説を削減する
    仮説縮小部を備えたことを特徴とする請求項1記載の目
    標追尾装置。
  3. 【請求項3】 クラスタ内の各航跡に対し、それら各航
    跡に含まれる時系列の観測ベクトルを平滑化して現在の
    目標の位置、速度等の運動諸元を算出する平滑化処理部
    と、上記クラスタ内の各仮説が、それら各仮説内に観測
    ベクトルを共有する複数の航跡を含むか否かを調べ、観
    測ベクトルを共有する複数の航跡を含む場合に、これを
    含まないように仮説を是正する仮説是正部と、仮説縮小
    部による仮説縮小時にクラスタの分離可能であるか調
    べ、分離可能であればそのクラスタを分離するクラスタ
    分離部とを備えたことを特徴とする請求項2記載の目標
    追尾装置。
  4. 【請求項4】 仮説是正部は、仮説内に観測ベクトルを
    共有する複数の航跡が存在する場合にその仮説を是正す
    る是正処理部と、上記是正処理部による是正処理の結果
    で同一内容となったクラスタ内の航跡を統合する航跡統
    合部と、上記是正処理部による是正処理の結果で同一内
    容となったクラスタ内の仮説を統合する仮説統合部とを
    備えたことを特徴とする請求項3記載の目標追尾装置。
  5. 【請求項5】 是正処理部は、1つの航跡から複数の航
    跡が分離したとする仮説を是正するために、上記1つの
    航跡と最も相関の強い観測ベクトルをその航跡を引き継
    ぐ観測ベクトルとして選択し、他の観測ベクトルを上記
    1つの航跡より分離した別の航跡として定義することを
    特徴とする請求項4記載の目標追尾装置。
  6. 【請求項6】 是正処理部は、1つの航跡から複数の航
    跡が分離したとする仮説を是正するために、上記1つの
    航跡の存在期待領域内のみに存在し他の航跡の存在期待
    領域には含まれない観測ベクトルを優先的に選択し、他
    の観測ベクトルを上記1つの航跡より分離した別の航跡
    として定義することを特徴とする請求項4記載の目標追
    尾装置。
  7. 【請求項7】 既存の各クラスタに含まれる既存の航跡
    から次に入力される観測ベクトルの存在期待領域を算出
    するゲート算出工程と、上記ゲート算出工程により算出
    された存在期待領域に応じて入力された全体の観測ベク
    トルから上記既存の各クラスタ毎の航跡対応の観測ベク
    トルを選択する観測ベクトル選択工程と、上記入力され
    た全体の観測ベクトルのうち上記既存の各クラスタ内の
    航跡と対応がとれない観測ベクトルがある場合に、その
    観測ベクトルに応じて新クラスタを作成し、複数の既存
    のクラスタ内の航跡と対応づけられた観測ベクトルがあ
    る場合に、それら複数の既存のクラスタを統合するクラ
    スタ新設統合工程と、上記観測ベクトル選択工程により
    選択された観測ベクトルのうち上記既存の各クラスタ毎
    に、それらクラスタ内に既存の航跡が存在し且つそれら
    クラスタ内の既存の航跡と対応づけられた観測ベクトル
    が存在する場合に、それら各観測ベクトルがそれらクラ
    スタ内のいずれの航跡と対応する可能性があるかを示す
    ゲート内判定行列を算出する自由空間用ゲート内判定行
    列算出工程と、上記自由空間用ゲート内判定行列算出工
    程により算出されたゲート内判定行列からそれぞれが仮
    説の1つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出す
    る自由空間用航跡相関行列算出工程と、上記クラスタ新
    設統合工程により作成された新クラスタに対して新規に
    仮説を生成すると共に、上記既存のクラスタに対して上
    記自由空間用航跡相関行列算出工程により算出された航
    跡相関行列と上記クラスタ内の既存の仮説に応じて新し
    い仮説を作成する自由空間用仮説更新工程と、上記各ク
    ラスタ毎に、それら各クラスタに含まれる各航跡がそれ
    ら各クラスタ内のいずれかの仮説に含まれるかを調べ、
    いずれの仮説にも含まれない航跡である場合にその航跡
    をそのクラスタ内から削除する航跡削除工程と、上記自
    由空間用仮説更新工程により作成された複数の仮説から
    1つを選択し航跡を決定する航跡決定工程とを備えた目
    標追尾方法。
  8. 【請求項8】 既存の各クラスタに含まれる既存の航跡
    から次に入力される観測ベクトルの存在期待領域を算出
    するゲート算出工程と、上記ゲート算出工程により算出
    された存在期待領域に応じて入力された全体の観測ベク
    トルから上記既存の各クラスタ毎の航跡対応の観測ベク
    トルを選択する観測ベクトル選択工程と、上記入力され
    た全体の観測ベクトルのうち上記既存の各クラスタ内の
    航跡と対応がとれない観測ベクトルがある場合に、その
    観測ベクトルに応じて新クラスタを作成し、複数の既存
    のクラスタ内の航跡と対応づけられた観測ベクトルがあ
    る場合に、それら複数の既存のクラスタを統合するクラ
    スタ新設統合工程と、上記観測ベクトル選択工程により
    選択された観測ベクトルのうち上記既存の各クラスタ毎
    に、それらクラスタ内に既存の航跡が存在し且つそれら
    クラスタ内の既存の航跡と対応づけられた観測ベクトル
    が存在する場合に、それら各観測ベクトルがそれらクラ
    スタ内のいずれの航跡と対応する可能性があるかを示す
    ゲート内判定行列を算出する自由空間用ゲート内判定行
    列算出工程と、上記自由空間用ゲート内判定行列算出工
    程により算出されたゲート内判定行列からそれぞれが仮
    説の1つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出す
    る自由空間用航跡相関行列算出工程と、上記クラスタ新
    設統合工程により作成された新クラスタに対して新規に
    仮説を生成すると共に、上記既存のクラスタに対して上
    記自由空間用航跡相関行列算出工程により算出された航
    跡相関行列と上記クラスタ内の既存の仮説に応じて新し
    い仮説を作成する自由空間用仮説更新工程と、上記各ク
    ラスタ毎に、それら各クラスタに含まれる各航跡がそれ
    ら各クラスタ内のいずれかの仮説に含まれるかを調べ、
    いずれの仮説にも含まれない航跡である場合にその航跡
    をそのクラスタ内から削除する航跡削除工程と、上記自
    由空間用仮説更新工程により作成された複数の仮説から
    1つを選択し航跡を決定する航跡決定工程とをコンピュ
    ータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュ
    ータ読み取り可能な記録媒体。
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