JP3429016B2 - 爪付界磁鉄心及びその製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は車両用交流発電機などに
採用される樹脂磁石付の励磁コイル磁化型爪型界磁鉄心
及びその製造方法に関する。

【０００２】

【従来技術】本出願人の出願にかかる特開昭６０−１３
１０５１号公報は、周方向に隣接する爪形磁極部の間の
各間隙（以下、周方向磁極間隙と呼ぶ）に樹脂などを充
填して風切り音を低減することを開示している。本出願
人の出願にかかる特開昭６１−８５０４５号公報は、周
方向に隣接する爪形磁極部の間の各間隙（以下、周方向
磁極間隙と呼ぶ）に樹脂磁石を接着し、樹脂磁石が各爪
形磁極部を界磁コイルの磁化の場合と同極性に磁化する
車両用交流発電機を開示している。このようにすると、
爪形磁極部間の漏れ磁界を弱めることができる。

【０００３】本出願人の出願にかかる特開平４−４９８
３６号公報は、ボス部中央で２分された一対の半界磁鉄
心を界磁コイル巻装後、接合してなる爪型界磁鉄心にお
いて、片方の半界磁鉄心を金型内にセットして樹脂磁石
をインサート成形し、この樹脂磁石付の半界磁鉄心に他
方の半界磁鉄心を接着して爪型界磁鉄心を作製してい
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
界磁コイル巻装済み爪型界磁鉄心を金型内にセットして
周方向磁極間隙に高温で流動状態の樹脂や樹脂磁石を充
填するインサート成形を行う場合、各部が高温となるの
で、界磁コイルの絶縁性や耐久性が低下する不安があ
る。さらに、樹脂磁石は、未磁化のものをインサート成
形した後にこの未磁化の樹脂磁石を磁化する必要がある
が、磁化時に磁束が爪型界磁鉄心のディスク部及びボス
部をバイパスするので、爪形磁極部間の周方向磁極間隙
の樹脂磁石の磁化が困難である。

【０００５】また、樹脂磁石を接着剤を用いて爪形磁極
部に室温で接着する場合、爪形磁極部や樹脂磁石の寸法
ばらつきにより、両者の接着面が部分的に離れすぎる場
合があり、爪形磁極部と樹脂磁石との接着強度が低下す
る不安がある。すなわち、上記した接着剤を用いて両爪
形磁極部と樹脂磁石とを接着する場合、これら両爪形磁
極部及び埋設部の寸法ばらつきにより両者間の隙間が大
きい部位が生じ、この部分の接着強度が低下する。ま
た、接着剤を複雑な形状をもつ接着部位全面に均一な厚
さで塗布し、接着するまで保持することは工程管理が簡
単でない。

【０００６】更に上記したように一方の半界磁鉄心に樹
脂磁石をインサート成形で接合し、界磁コイルを巻装し
てから他方の半界磁鉄心の爪形磁極部を樹脂磁石の表面
に接着する場合、両半界磁鉄心のバランスが悪く、ま
た、接着される方の半界磁鉄心と樹脂磁石との接着強度
には以前として上記した接着強度低下の不安が残ってし
まう。

【０００７】本発明の第１の目的は上記問題点に鑑みな
されたものであり、樹脂又は樹脂磁石からなる埋設部と
両側の爪形磁極部との接合強度や信頼性向上を可能とす
るにもかかわらず、界磁コイルの電気絶縁性の低下の心
配が無い爪型界磁鉄心の製造方法を提供することにあ
る。また本発明の第２の目的は上記第１の目的に加え
て、埋設部を構成する樹脂磁石の磁化が容易な爪型界磁
鉄心及びその製造方法を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の爪型界磁鉄心
は、界磁コイルが巻装、固定される円筒形状のボス部
と、前記ボス部より径大な外径をもつディスク形状を有
し前記ボス部の両端に配設される一対のディスク部と、
周方向等間隔で前記ディスク部の一方の外周端から前記
ディスク部の他方へ向けて軸方向へ配設される複数の爪
をもつ第１爪形磁極部と、周方向等間隔で前記ディスク
部の他方の外周端から前記ディスク部の一方へ向けて軸
方向へ配設され前記第１爪形磁極部の前記爪に対して周
方向へ所定間隔を隔てて交互に配列される複数の爪をも
つ第２爪形磁極部と、前記両爪形磁極部間の周方向間隙
に埋設される樹脂磁石とを備え、前記ボス部、ディスク
部、両爪形磁極部及び樹脂磁石は、少なくとも前記第
１、第２爪形磁極部及び前記樹脂磁石が一体接合されて
なるとともに少なくとも一方の端面に前記界磁コイルを
挿入可能な開口をもつ外筒部と、前記外筒部と別体に形
成され前記外筒部に嵌合する残部とからなり、 前記外筒
部を前記ディスク部の外周の複数箇所に嵌合して前記開
口を遮蔽し、かつ、前記外筒部を前記一対のディスク部
それぞれの外周の複数箇所に接合したことを特徴として
いる。

【０００９】本発明の爪型界磁鉄心の製造方法は、界磁
コイルが巻装、固定される円筒形状のボス部と、前記ボ
ス部より径大な外径をもつディスク形状を有し前記ボス
部の両端に配設される一対のディスク部と、周方向等間
隔で前記ディスク部の一方の外周端から前記ディスク部
の他方へ向けて軸方向へ配設される複数の爪をもつ第１
爪形磁極部と、周方向等間隔で前記ディスク部の他方の
外周端から前記ディスク部の一方へ向けて軸方向へ配設
され前記第１爪形磁極部の前記爪に対して周方向へ所定
間隔を隔てて交互に配列される複数の爪をもつ第２爪形
磁極部と、前記両爪形磁極部間の周方向間隙に埋設され
る埋設部とを備える爪型界磁鉄心の製造方法において、
前記第１、第２爪形磁極部及び前記埋設部を熱エネルギ
を用いて直接に接合して少なくとも一方の端面に開口を
もつ外筒部を形成し、前記界磁コイルを前記開口から前
記外筒部内に嵌入した後、前記外筒部と別体に形成され
て前記外筒部とともに爪型界磁鉄心を構成する残部を前
記外筒部に嵌合し、 前記外筒部を前記ディスク部の外周
の複数箇所に嵌合して前記開口を遮蔽し、かつ、前記外
筒部を前記一対のディスク部それぞれの外周の複数箇所
に接合したことを特徴としている。前記爪型界磁鉄心の
好適態様では、前記ディスク部及び前記界磁コイルの外
周部と前記外筒部との間に通風路を確保しつつ前記外筒
部は前記ディスク部の外周の複数箇所に嵌合される。

【００１０】前記製造方法の第１態様において、前記埋
設部は、前記両爪形磁極部を前記界磁コイルの磁化時と
同極性に磁化する樹脂磁石からなる。前記第１態様の好
適態様において、未磁化の前記樹脂磁石を有する前記外
筒部を磁化した後、前記外筒部と前記残部とを接合する
方法が採用される。前記第１態様の好適態様において、
前記樹脂磁石を除く前記外筒部の部分を金型のキャビテ
イにセットし、前記キャビティ内に所定形状の磁界を形
成しつつ、硬磁性粉末混入の樹脂を注入して前記樹脂磁
石をインサート成形する方法が採用される。

【００１１】前記第１態様の好適態様において、複数の
爪状溝部が外周面に凹設された略円筒形状に前記樹脂磁
石を硬磁性粉末混入の樹脂で成形し、前記両爪形磁極部
が前記爪状溝部に当接した状態で前記樹脂磁石を軟化さ
せて前記両爪状溝部と前記樹脂磁石とを接合する方法が
採用される。埋設部は、樹脂、樹脂磁石、アルミニウム
などの非磁性金属などを採用できる。

【００１２】

【作用及び発明の効果】本発明の爪型界磁鉄心の製造方
法では、第１、第２爪形磁極部及び埋設部が一体接合さ
れてなる外筒部の開口から界磁コイルを挿入した後、外
筒部と別体に形成される残部と嵌合させて組立られる。
したがって、両爪形磁極部と埋設部とを接着剤の介在な
しに直接に接合することができ、接着剤で単に接着する
場合（この場合も界磁コイルに熱的影響を与えるのを防
止できる）に比べ、格段の接合部位の強度向上、信頼性
向上、工数削減が実現する。また、風切り音を低減でき
る。

【００１３】しかも、インサート成形、埋設部の熱融着
又は超音波融着など、両爪形磁極部と埋設部とを熱エネ
ルギを利用して両者を直接に接合して外筒部を形成して
も、界磁コイルを被覆する絶縁樹脂膜の絶縁性能が上記
熱エネルギの影響で劣化することがない。一方、本発明
の爪型界磁鉄心では、上記爪型界磁鉄心の製造方法に適
用される構造を有する爪型界磁鉄心において、埋設部を
樹脂磁石としたものである。

【００１４】このようにすれば、上記と同様の理由によ
り界磁コイルの電気絶縁性能の熱的劣化防止、爪形磁極
部と樹脂磁石との接合強度の増大を図ることができる
他、磁化に際して磁束がボス部をバイパスするのを防止
することができるので樹脂磁石の強力な磁化を実現する
ことができる。

【００１５】

【実施例】（実施例１）本発明の一実施例を、図面を参
照して説明する。図１は本実施例を適用した車両用交流
発電機の回転子を示す。この回転子は、回転軸１に嵌着
された界磁コイル５巻装の爪型界磁鉄心２を有してい
る。

【００１６】爪型界磁鉄心２は、回転軸１に嵌着された
ボス部２０及び一対のディスク部２１、２２と、ディス
ク部２１、２２に嵌着された第１爪形磁極部２３及び第
２爪形磁極部２４と、両爪形磁極部２３、２４間の周方
向磁極間隙に充填された樹脂磁石４と、両爪形磁極部２
３、２４に嵌着された非磁性のリング２５とからなる。
第１爪形磁極部２３、第２爪形磁極部２４、永久磁石４
及び非磁性のリング２５は本発明でいう外筒部２ｂ（図
２参照）を構成している。

【００１７】ディスク部２１、２２は、略ディスク形状
に形成されており、ボス部２０の両端に個別に配設され
ている。第１爪形磁極部２３は、ディスク部２１に嵌着
された基筒部からディスク部２２へ向けて軸方向へ延び
る複数の爪を有しており、各爪は基筒部とともに全体と
して王冠形状に形成されている。

【００１８】第２爪形磁極部２４は、ディスク部２２に
嵌着された基筒部からディスク部２１へ向けて軸方向へ
延びる複数の爪を有しており、各爪は基筒部とともに全
体として王冠形状に形成されている。両爪形磁極部２
３、２４の各爪は周方向へ交互に配設されており、それ
らの間の周方向間隔（以下、周方向磁極間隙という）は
等しくされている。

【００１９】両爪形磁極部２３、２４の側面及び底面
（内径側表面）に接して円筒状の樹脂磁石４が接合され
ており、樹脂磁石４は図３に示すように、第１爪形磁極
部２３の爪が嵌め込まれる爪状溝４１と、第２爪形磁極
部２４の爪が嵌め込まれる爪状溝４２とが周方向交互に
凹設されている。樹脂磁石４はフェライト系の硬磁性粉
末が混入された樹脂成形体からなり、これにより両爪形
磁極部２３、２４の間の周方向磁極間隙には樹脂磁石４
の一部である間隙充填部４３が配設されることになる。
樹脂磁石４の間隙充填部４３は第１爪形磁極部２３の周
囲がＮ極となり、第２爪形磁極部２４の周囲がＳ極とな
るように磁化されている。

【００２０】更に、第１爪形磁極部２３の基端外周面と
第２爪形磁極部２４の先端外周面とにまたがって非磁性
ステンレスからなるリング２５が嵌着されており、同様
に第２爪形磁極部２４の基端外周面と第１爪形磁極部２
３の先端外周面とにまたがって非磁性ステンレスからな
るリング２５が嵌着されている。リング２５は爪形磁極
部２１、２２の耐遠心力を増強する。

【００２１】一方、各ボス部２０には界磁コイル５が巻
装されており、界磁コイル５に界磁電流を通電すると、
第１爪形磁極部２３がＮ極、第２爪形磁極部２４がＳ極
となる。その結果、界磁コイル５により爪形磁極部２
３、２４間の周方向磁極間隙（すなわち樹脂磁石４の間
隙充填部４３）に形成される磁界（界磁コイル磁界とい
う）は、樹脂磁石４の残留磁界と反対となり、間隙充填
部４３を通過する界磁コイル磁界の漏れ磁束は大幅に低
減され、固定子に向かう磁界が強化され、発電性能が向
上する。なお、樹脂磁石４の残留磁界はこの界磁コイル
磁界により反転しないだけの保磁力をもつものとする。

【００２２】また、ディスク部２１の外周面には隣接す
る第１爪形磁極部２３の二つの爪の中間に位置して、す
なわち第２爪形磁極部２４の爪と同じ周方向位置におい
て、励磁コイル５冷却用の通風孔２６が軸方向に貫孔さ
れている。同様に、ディスク部２２の外周面には隣接す
る二つの第２爪形磁極部２４の中間に位置して、すなわ
ち第１爪形磁極部２３と同じ周方向位置において、励磁
コイル５冷却用の通風孔（図示せず）が軸方向に貫孔さ
れている。また、この通風孔２６は、ステータコア側を
経由せずに爪形磁極部２３とディスク部２２との間で、
また、ステータコア側を経由せずに爪形磁極部２４とデ
ィスク部２１との間で、磁束がバイパスするのを低減す
る。

【００２３】更に、第１爪形磁極部２３及びディスク部
２１の端面には冷却ファン６のディスク部６１が溶接さ
れており、第２爪形磁極部２４及びディスク部２２の端
面には冷却ファン７のディスク部７１が溶接されてい
る。これら冷却ファン６、７は異なる送風特性を有して
おり、この特性差に基づいて図１に示す冷却風が励磁コ
イル５の外周面に沿って軸方向に流入し、リヤ側の冷却
ファン７により遠心方向に排出される。

【００２４】次に、上記回転子の組付方法を説明する。
図２に示すように、回転軸１に図中、左側からディスク
部２２、界磁コイル５巻装のボス部２０、ディスク部２
１の順に回転軸１の径大部１１までスプライン嵌着し、
締結リング２７を押入し、かしめて爪型界磁鉄心２の内
筒部（本発明でいう残部）２ａを形成し、この内筒部２
ａを上述した爪型界磁鉄心２の外筒部２ｂに嵌入し、溶
接する。もちろん、ディスク部２１、２２の外周面に軸
方向に伸びる線状溝を設け、この線状溝に両爪形磁極部
２３、２４の内周面に設けた線状突部を嵌合させて、デ
ィスク部２１、２２と両爪形磁極部２３、２４との相対
回転を規制してもよい。 したがって、この実施例では
界磁コイル５の外周面は、外筒部２ｂの内周面よりも径
小に形成されている。

【００２５】なお、内筒部２ａの軸方向への挿入を容易
とするとともにディスク部２２と第２爪形磁極部２４の
内周面との嵌合を緊密にするため、組付後、ディスク部
２２の外周面と密接する第２爪形磁極部２４の内周面部
を、第２爪形磁極部２４の他の内周面部や永久磁石４の
内周面や、第１爪形磁極部２３の内周面よりも径小に形
成してもよい。

【００２６】次に、爪型界磁鉄心２の外筒部２ｂの製造
方法を説明する。外筒部２ｂは爪形磁極部２３、２４を
金型７（図６参照）内のキャビティＣにセットし、フェ
ライト系の硬磁性粉末を混入されたＰＰＳ樹脂（大日本
インキ化学ｋｋ製のＦＰＰＳ１６４）が磁場中でインサ
ート成形される。図６に金型７を示す。

【００２７】金型７は、強磁性の可動型７１、非磁性の
可動型７２、７３、非磁性の固定型７４、強磁性の可動
型７５を順に配設してなり、可動型７３の内部に爪形磁
極部２３、２４がセット可能な円筒状のキャビティＣが
形成されている。７６はランナであり、型７５、７４、
７３を通じてキャビティＣに連通している。７７はエジ
ェクタ用のピンである。なお、非磁性の可動型７２、７
４の内部にはキャビティＣの両端面と強磁性の型７１、
７５の端面に密接する強磁性の輪板７２ａ、７４ａが嵌
められている。

【００２８】次に、金型７が装着される磁場中射出成形
機８について図５を参照して説明する。この磁場中射出
成形機８は、日本製鋼ｋｋ製のＪＳＷ５０００であっ
て、配向起磁力５００００ＡＴ、型締力５トンの定格を
有する。磁場中射出成形機８のヨークを兼ねる固定板８
０には固定型７４、７５が固定され、磁場中射出成形機
８のヨークを兼ねる可動板８１には可動型７１、７２、
７３が固定されている。可動型７１、７２、７３は型締
リンク８２及びタイバー８３により図５中左右方向に往
復可能となっている。固定板８０及び可動板８１には図
５に示す磁束Φを形成するための磁化コイル８４が巻装
されている。

【００２９】この磁場中射出成形機８の成形動作を説明
する。まず非磁性のリング２５が嵌着された爪形磁極部
２３、２４を型温度摂氏１５０度に余熱した後、キャビ
ティＣ内に装填し、磁化コイル８６に通電する。その結
果、配向起磁力５００００ＡＴが可動板８１、型７１、
輪板７２ａ、爪形磁極部２３（図示せず）、爪形磁極部
２４（図示せず）、輪板７４ａ、固定板８０、タイバー
８３、可動板８１からなる閉磁路に印加され、磁束Φが
形成され、キャビティＣ内において両爪形磁極部２３、
２４間の周方向磁極間隙４３には図４中矢印で図示され
る磁界が形成される。

【００３０】次に、プラスチック磁石原料を、磁場中射
出成形機８のノズル先端温度３３５℃にて磁場中へ射出
して成形した後、可動型７１、７２、７３を後退させ、
プッシュロッド８５でピン７７を押して外筒部２ｂすな
わち爪形磁極部２３、２４と樹脂磁石４との一体成形物
を排出する。この時、樹脂磁石４中の硬磁性粒子は磁界
方向が磁化容易軸となるように異方性化されている。

【００３１】次に、図７に示す着磁ヨーク９に外筒部２
ｂ（図示せず）を嵌入して樹脂磁石４を着磁した。この
着磁ヨーク９は、軟鉄円筒からなり樹脂筒９０が被覆す
るヨーク９１と、ヨーク９１の内周面に軸方向へ凹設さ
れたスロット９２に巻装された磁化コイル９３とからな
る。スロット９２の周方向ピッチは爪形磁極部２３、２
４の各爪の周方向ピッチに等しい。磁化コイル９３への
ワンパルス通電又は直流通電によりスロット９１間の各
磁極部９４はＮ極及びＳ極に周方向交互に磁化される。

【００３２】ここでＮ極に磁化された磁極部９４は第２
爪形磁極部２４の位置に配置され、Ｓ極に磁化された磁
極部９４は第１爪形磁極部２３の位置に配置される。こ
のようにすると、樹脂磁石４の第２爪形磁極部２４近傍
がＳ極に、樹脂磁石４の第１爪形磁極部２３近傍がＮ極
に磁化される。界磁コイル５は第２爪形磁極部２４をＳ
極に、第１爪形磁極部２３をＮ極に磁化するので、樹脂
磁石４の残留磁界は界磁コイル５により周方向磁極間隙
に漏れる磁束を低減することとなる。

【００３３】このヨーク９１及び磁界コイル９３からな
る樹脂磁石４の磁化は構成、磁化動作が簡単という利点
をもつ。なおこの実施例では、磁化コイル９３にパルス
電圧を印加するパルス電源として３０００μＦ、最大印
加電圧２５００Ｖの装置（電子磁気工業ｋｋ製）を用
い、１２００Ｖで着磁した。

【００３４】その後、図２に示す外筒部２ｂと内筒部２
ａとの嵌合を行い、交流発電機を構成した。この交流発
電機の発電特性を図８及び図９に示す。破線で示す本実
施例品は、同じ構造で樹脂磁石４を充填しないものに比
べて無負荷飽和電圧及び出力電流の点で格段の向上が可
能となった。

【００３５】また本実施例によれば、両爪形磁極部２
３、２４と樹脂磁石４とのインサート成形により製作公
差による隙間がそれらの間に生じることがなく、接合を
強固にでき、かつ、界磁コイル５の絶縁性能の劣化も無
く、磁化に必要な電力も低減できる。 （実施例２）他の実施例を図１０を参照して説明する。

【００３６】この実施例は、実施例１の着磁方法を変更
したものであり、この実施例では図１０に示すように２
００ターンの空芯コイル９６内に外筒部２ｂを同軸配置
し、着磁電圧１２００Ｖでパルス着磁を行った。この場
合も、第１爪形磁極部２３近傍の樹脂磁石４の領域がＮ
極に、第２爪形磁極部２４近傍の樹脂磁石４の領域がＳ
極になるように磁化する。

【００３７】次に、実施例１の着磁ヨ−ク９を用いて着
磁電圧１２００Ｖで外筒部２ｂの樹脂磁石４を、第１爪
形磁極部２３近傍の樹脂磁石４の領域がＮ極に、第２爪
形磁極部２４近傍の樹脂磁石４の領域がＳ極になるよう
に磁化する。以上のように、２段階で磁化すると、図９
に示すように、更に取り出し得る最大の出力電流値が向
上した。

【００３８】この実施例によっても実施例１と同じ効果
を奏することができる。 （実施例３）他の実施例を以下に説明する。この実施例
は、樹脂磁石４だけを金型成形するもので、具体的に説
明すれば、図６の金型７において、固定型７４の輪板部
７４ａに第１爪形磁極部２３と同形の突起を設け、可動
型７２の輪板部７２ａに第２爪形磁極部２４と同形の突
起を設けて磁場中樹脂成形を行うものである。

【００３９】次に、このようにして成形された樹脂磁石
４を摂氏３１０度まで加熱した状態でそれぞれ王冠形状
の両爪形磁極部２３、２４を樹脂磁石４に嵌着し、熱に
より軟化可能な樹脂磁石４に密着固定し、その後、冷却
する。このようにすれば、インサート成形しなくても両
爪形磁極部２３、２４と樹脂磁石４との強力な接合が可
能となる。すなわち、たとえ樹脂磁石４と爪形磁極部２
３、２４との接合面に隙間があっても樹脂磁石４の塑性
変形によりこれら隙間は解消され、それにより強力な接
合が実現する。その後、この外筒部２ｂを実施例１又は
実施例２の方法で２５００Ｖで着磁し、そして外筒部２
ｂに内筒部２ａを組付けた。

【００４０】この実施例によっても実施例１と同じ効果
を奏することができる。 （変形態様）実施例３の変形態様を説明する。この実施
例は、実施例３で採用した成形済みの樹脂磁石４の熱軟
化の代わりに超音波溶着を用いて爪形磁極部２３、２４
と樹脂磁石４との接合を行うものである。

【００４１】すなわち、樹脂磁石４に爪形磁極部２３、
２４を嵌着した状態で爪形磁極部２３、２４に超音波を
加えつつ加圧した。これにより樹脂磁石４の界面部は溶
融し、樹脂磁石４を爪形磁極部２３、２４間に密着固定
することができた。この実施例によっても実施例１と同
じ効果を奏することができる。 （実施例４）この実施例は上記実施例において、樹脂磁
石４の耐遠心力向上を図ったものであり、インサート成
形により樹脂磁石４に補強リング１０を嵌着、接合した
ものである。図１１、図１２に示すように、この補強リ
ング１０は厚さ約２ｍｍの非磁性ステンレス板からなり
凹凸が周方向へ一定ピッチで形成された凹凸リング部１
０ａと、凹凸リング部１０ａの頂面にスポット溶接され
て軸方向やや斜めに延在する非磁性ステンレス平板から
なるプレート部１０ｂとからなる。

【００４２】この補強リング１０を金型のキャビティに
インサートして樹脂磁石４が樹脂成形される。凹凸リン
グ部１０ａは樹脂磁石４の軸方向中央部の外周面に沿っ
て周方向に接合しており、その結果、凹凸リング部１０
ａの凹凸は樹脂磁石４の爪状溝部４１、４２の表面に沿
った凹凸を有している。そして、プレート部１０ｂは樹
脂磁石４の間隙充填部４３の外側に周方向磁極間隙に沿
って配設される。

【００４３】この実施例で用いる爪形磁極部２３、２４
は図１３で示すように外周端部から周方向両側に鍔２３
ａ、２４ａが突設されており、この鍔２３ａ、２４ａが
プレート部１０ｂを係止する構造となっている。このよ
うにすれば、高温高速回転時に樹脂磁石４が軟化して遠
心方向に逸脱するのを防止することができる。

【００４４】以上説明した上記各実施例において、両爪
形磁極部２３、２４と樹脂磁石４との熱エネルギによる
直接接合完了後に界磁コイル５をボス部２０に巻装可能
であれば、爪型界磁鉄心の分割方式は自由である。例え
ば、断面コ字状で外筒部２ｂとディスク部２１とボス部
２０とをインサート成形で一体化し、ボス部２０に界磁
コイル５を巻装し、その後、ディスク部２２を嵌合して
もよい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の爪型界磁鉄心の一実施例を示す断面図
である。

【図２】本発明の爪型界磁鉄心の製造方法の一実施例を
示す組付断面図である。

【図３】図１の樹脂磁石の斜視図である。

【図４】実施例１で用いる磁化方法を示す一部拡大平面
図である。

【図５】実施例１で用いる磁場中射出成形機の側面図で
ある。

【図６】（ａ）は実施例１で用いる金型の断面図であ
り、（ｂ）はそのＡ−Ａ線矢視図である。

【図７】実施例１で用いる着磁ヨークの断面図ある。

【図８】実施例１の爪型界磁鉄心を用いた交流発電機の
励磁電流と無負荷飽和電圧との関係を示す特性図であ
る。

【図９】実施例１、実施例２の爪型界磁鉄心を用いた交
流発電機の回転数と最大出力電流との関係を示す特性図
である。

【図１０】実施例２で用いる着磁ヨークの模式断面図で
ある。

【図１１】実施例４で用いる補強リングの模式断面図で
ある。

【図１２】実施例４で用いる補強リングの模式平面図で
ある。

【図１３】図１０の補強リングを用いた樹脂磁石の断面
図である。

【符号の説明】

１は回転軸、２ａは内筒部、２ｂは外筒部ｂ、４は樹脂
磁石、５は界磁コイル、２０はボス部、２１、２２はデ
ィスク部、２３、２４は爪形磁極部。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梅田 敦司 愛知県刈谷市昭和町１丁目１番地 日本 電装株式会社内 (56)参考文献 特開 平４−251553（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−49836（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−207158（ＪＰ，Ａ) 特開 昭54−116610（ＪＰ，Ａ) 特開 昭64−8849（ＪＰ，Ａ) 実開 昭62−191365（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H02K 1/00 - 1/34 H02K 15/00 - 15/16

Claims (7)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】界磁コイルが巻装、固定される円筒形状の
   ボス部と、前記ボス部より径大な外径をもつディスク形
   状を有し前記ボス部の両端に配設される一対のディスク
   部と、周方向等間隔で前記ディスク部の一方の外周端か
   ら前記ディスク部の他方へ向けて軸方向へ配設される複
   数の爪をもつ第１爪形磁極部と、周方向等間隔で前記デ
   ィスク部の他方の外周端から前記ディスク部の一方へ向
   けて軸方向へ配設され前記第１爪形磁極部の前記爪に対
   して周方向へ所定間隔を隔てて交互に配列される複数の
   爪をもつ第２爪形磁極部と、前記両爪形磁極部間の周方
   向間隙に埋設される樹脂磁石とを備え、 前記ボス部、ディスク部、両爪形磁極部及び樹脂磁石
   は、少なくとも前記第１、第２爪形磁極部及び前記樹脂
   磁石が一体接合されてなるとともに少なくとも一方の端
   面に前記界磁コイルを挿入可能な開口をもつ外筒部と、
   前記外筒部と別体に形成され前記外筒部に嵌合する残部
   とからなり、 前記外筒部を前記ディスク部の外周の複数箇所に嵌合し
   て前記開口を遮蔽し、かつ、前記外筒部を前記一対のデ
   ィスク部それぞれの外周の複数箇所に接合したことを特
   徴とする爪型界磁鉄心。
2. 【請求項２】界磁コイルが巻装、固定される円筒形状の
   ボス部と、前記ボス部より径大な外径をもつディスク形
   状を有し前記ボス部の両端に配設される一対のディスク
   部と、周方向等間隔で前記ディスク部の一方の外周端か
   ら前記ディスク部の他方へ向けて軸方向へ配設される複
   数の爪をもつ第１爪形磁極部と、周方向等間隔で前記デ
   ィスク部の他方の外周端から前記ディスク部の一方へ向
   けて軸方向へ配設され前記第１爪形磁極部の前記爪に対
   して周方向へ所定間隔を隔てて交互に配列される複数の
   爪をもつ第２爪形磁極部と、前記両爪形磁極部間の周方
   向間隙に埋設される埋設部とを備える爪型界磁鉄心の製
   造方法において、 前記第１、第２爪形磁極部及び前記埋設部を熱エネルギ
   を用いて直接に接合して少なくとも一方の端面に開口を
   もつ外筒部を形成し、前記界磁コイルを前記開口から前
   記外筒部内に嵌入した後、前記外筒部と別体に形成され
   て前記外筒部とともに爪型界磁鉄心を構成する残部を前
   記外筒部に嵌合し、 前記外筒部を前記ディスク部の外周の複数箇所に嵌合し
   て前記開口を遮蔽し、 かつ、前記外筒部を前記一対のデ
   ィスク部それぞれの外周の複数箇所に接合したことを特
   徴とする爪型界磁鉄心の製造方法
3. 【請求項３】 前記ディスク部及び前記界磁コイルの外
   周部と前記外筒部との間に通風路を確保しつつ前記外筒
   部を前記ディスク部の外周の複数箇所に嵌合してなる請
   求項１記載の爪型界磁鉄心。
4. 【請求項４】 前記埋設部は、前記両爪形磁極部を前記
   界磁コイルの磁化時と同極性に磁化する樹脂磁石からな
   る請求項２記載の爪型界磁鉄心の製造方法。
5. 【請求項５】未磁化の前記樹脂磁石を有する前記外筒部
   を磁化した後、前記外筒部と前記残部とを接合する請求
   項４記載の爪型界磁鉄心の製造方法。
6. 【請求項６】前記樹脂磁石を除く前記外筒部の部分を金
   型のキャビテイにセットし、前記キャビティ内に所定形
   状の磁界を形成しつつ、硬磁性粉末混入の樹脂を注入し
   て前記樹脂磁石をインサート成形する請求項４記載の爪
   型界磁鉄心の製造方法。
7. 【請求項７】複数の爪状溝部が外周面に凹設された略円
   筒形状に前記樹脂磁石を硬磁性粉末混入の樹脂から成形
   し、前記両爪形磁極部が前記爪状溝部に当接した状態で
   前記樹脂磁石を軟化させて前記両爪状溝部と前記樹脂磁
   石とを接合する請求項４記載の爪型界磁鉄心の製造方
   法。