JP3428318B2 - 深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法Info
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Description
深絞り成形性に優れた冷延鋼板の製造方法に関する。
び及びr値ならびに成形時に侵入型固溶元素の存在によ
る降伏伸びに起因したストレッチャーストレインの発生
抑制が要求されるが、このような特性を有する鋼板の製
造においては、従来、製鋼段階に侵入型元素であるC,
Nを低減した極低炭素鋼にTi,Nbなどの炭窒化物形
成元素を添加した、いわゆるIF鋼による製造をしてい
る。ここで、C,Nなどの侵入型元素は前述のストレッ
チャーストレインの発生による成形後の製品のしわ発生
に影響するだけでなく、冷間圧延前の熱延板段階で固溶
状態で存在することにより、冷延後、焼鈍段階での集合
組織形成時に深絞り性に有害な結晶方位の核生成を促す
ため、優れた深絞り性を実現するためには、IF鋼にお
いても熱延板段階において固溶C,N量を低減すること
が重要であり、従来、鋼中のC,N量に当量以上のT
i,Nbを添加した極低炭素鋼のスラブを再加熱後熱延
し、高温で巻き取り、巻き取りの冷却段階で炭窒化物の
析出反応を促進し、固溶C,N量を低減する方法が開示
されている。
含有量が0.0045重量%以下である極低炭素鋼を、特定の
熱延条件で熱間圧延を施し、その後に冷間圧延を行う深
絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法が開示されている。
しかし、この発明では、加熱から仕上げ圧延までの析出
状況など、冷延鋼板の加工性を左右する析出物や組織に
着目した検討が十分にされておらず、得られる冷延鋼板
の深絞り性は最良のものとは言い難い。
の製造において、その製造方法の簡略化による製造コス
トの低減が検討されており、特開平3-28326 号公報では
連続鋳造スラブをAr3 点以下に冷却することなく直ち
に熱間圧延を施すことにより、スラブの再加熱にかかる
エネルギーコストを節約した技術を開示している。
続鋳造後のスラブをその冷却段階に熱延する、いわゆる
直接熱延においては、炭窒化物の析出が熱延と同時に進
行するため、析出物の凝集粗大化反応が十分でないた
め、冷延後の焼鈍段階での粒成長性が低く、従来のスラ
ブ再加熱法に比較し、焼鈍後のフェライト組織が細か
く、伸びの低下及びr値の低下を招く。本発明の目的
は、Ti添加極低炭素鋼スラブの直接熱延法の適用に際
して、冷延後の焼鈍段階でのフェライト粒成長性の低下
を招くことなく優れた深絞り性を有し、しかも低廉価で
品質性能の良好な冷延鋼板を製造することのできる方法
を提供するものである。
達成するために、本発明は以下に示す手段を用いてい
る。 (1)本発明の製造方法は、重量%(以下%は重量%を
示す)で、C:0.003%以下と、Si:0.3%以
下と、Mn:0.3%以下と、P:0.03%以下と、
sol.Al:0.01〜0.1%と、S:0.001〜
0.015%と、N:0.005%以下と、Ti:Ti
%=((C%/12+N%/14+S%/32)×4
8)%以上0.15%以下と、残部Fe及び不可避的不
純物からなる冷延鋼板の製造方法において、連続鋳造直
後のスラブをAr3 点以下に冷却することなく直ちに合
計圧下率を50%以上で粗圧延を施して粗バーとした
後、この粗バー全体を、Ar3 点以上の温度から加熱速
度2℃/秒以上加熱時間10秒以上で最高到達温度11
50℃以下まで加熱し、次いで熱間仕上げ圧延を施しA
r3点以上で終了し、引き続き圧下率50〜95%の冷
間圧延を行い、600〜900℃で焼鈍することを特徴
とする深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法である。 (2)本発明の製造方法は、(1)の組成の連続鋳造直
後のスラブをAr3 点以下に冷却することなく直ちに合
計圧下率を50%以上で粗圧延を施して粗バーとした
後、この粗バーを一旦巻取り、Ar3点以上の温度範囲
で0.5〜10分保持した後、次いで巻き戻しながら再
び粗バー全体をAr3 点以上の温度から加熱速度2℃/
秒以上加熱時間10秒以上で最高到達温度1150℃以
下まで加熱し、次いで熱間仕上げ圧延を施しAr3 点以
上で終了し、引き続き圧下率50〜95%の冷間圧延を
行い、600〜900℃で焼鈍することを特徴とする深
絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法である。 (3)本発明の製造方法は、連続鋳造により得られるス
ラブが長さ12m〜40mであることを特徴とする上記
(1)または(2)に記載の深絞り性に優れた冷延鋼板
の製造方法である。 (4)本発明の製造方法は、重量%で、B:0.000
2〜0.0015%及びNb:0.005〜0.05%
のうち1種または2種をさらに含有することを特徴とす
る、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の深絞り性
に優れた冷延鋼板の製造方法である。
スラブの直接熱延法の適用に際して、冷延後の焼鈍段階
でのフェライト粒成長性の低下を招くことなく優れた深
絞り性を有し、しかも低廉価で品質性能の良好な冷延鋼
板の製造方法について、鋭意研究を重ねた。
は、冷延後の焼鈍段階でのフェライト粒成長性が良好で
あるほど鋼板が軟質化するとともに、深絞り成形性に良
好な{111}方位粒の集積度が高くなるため、熱延粗
圧延後の粗バー全体を熱間仕上げ圧延前に加熱すること
により、熱延段階で析出する粒子径の大きなTi系炭硫
化物としてSを固定することが鋼板の成形性の改善に非
常に有効であるという知見が得られた。
鋳造後にスラブが冷却される段階で熱延を施す直接熱延
法により、従来汎用的に行われていた冷片スラブの再加
熱工程を省略し、製造にかかるエネルギーコストを大幅
に低減できることを確認した。
るTi系硫化物が溶解しており、熱延段階で微細に析出
し、以下に詳細に述べるように粗バー加熱段階でTi系
硫化物からより粒子径の大きなTi系炭硫化物への変移
に際して析出の反応面積が増大し、むしろ直接熱延法の
方が効果的にTi系炭硫化物への変移反応が進行する。
ラブを再加熱して熱延を施す場合、スラブの冷却段階に
おいて徐冷されるためTiを含む窒化物、硫化物及び炭
化物が析出し、粗大化し、スラブの加熱段階においても
溶解温度の高い窒化物だけでなく、再加熱温度より溶解
温度の低い硫化物も完全に溶解せずに残留している。そ
のため、これらの未溶解析出物の粒子径は熱延前からす
でに大きく、焼鈍段階でのこれら析出物による粒成長性
への阻害効果は小さい。一方、連続鋳造後の冷却段階に
直接熱延を行う場合には、析出温度の高い窒化物は析出
を完了しているが、硫化物及び炭化物は熱延前段階にお
いては完全に固溶しているため、熱延時にオーステナイ
ト域の高温から順に硫化物(TiS)、炭硫化物(Ti
4 C2 S2 )、さらにフェライト域において炭化物(T
iC)が析出し、これら析出物の粒子径はスラブ再加熱
法に比較し微細であり、冷延後の焼鈍段階においてこれ
ら微細な析出物によるフェライト粒成長性が低くなり、
同一焼鈍温度においてフェライト粒径が細かく、伸び及
びr値が低くなる。ここで、これら析出物は同じ粒子径
ではなく、炭硫化物、硫化物、炭化物の順に微細とな
り、焼鈍段階の粒成長性を劣化させることになる。
定する際に、粒子径の大きい炭硫化物として析出させ、
微細な硫化物及び炭化物の析出量の低減を図ることが焼
鈍時の粒成長性を良好にするためには望ましい。このよ
うなC,Sの析出物を制御するためには、粒成長性への
影響の最も小さい炭硫化物の析出を促進する。そのため
には、より高温で析出する硫化物の析出の抑制及び炭硫
化物の析出温度領域の高温域での保持が必要となる。
極低炭素鋼の直接熱延法の適用に際して、熱延粗圧延後
の粗バーを仕上げ圧延前においてオンラインでの加熱に
より析出物の形態を制御するようにして、冷延後の焼鈍
段階でのフェライト粒成長性の改善により優れた成形性
を有し、しかも低廉価で品質性能の良好な冷延鋼板の製
造方法を見出だし、本発明を完成させた。
特定することにより、連続鋳造したスラブの直接熱延法
の適用に際して、冷延後の焼鈍段階でのフェライト粒成
長性の低下を招くことなく優れた深絞り性を有し、しか
も低廉価で品質性能の良好な冷延鋼板を得ることができ
る。
定理由、及び製造条件の限定理由について説明する。 (1)成分組成範囲 C:鋼中のC量は0.003%以下である。C量が0.
003%を越えて鋼中に存在すると、Tiの炭化物及び
炭硫化物としての析出量が増大し、析出強化作用による
鋼板の強度上昇及び伸びの低下が著しいだけでなく、最
終焼鈍段階でこれら析出物による粒界移動のピンニング
効果によりフェライト粒成長性が低下するため、鋼板の
r値が低下し、深絞り成形性が劣化する。 Si:Siは鋼中に0.3%を越えて存在すると固溶強
化作用により鋼板の強度上昇を引き起こし、鋼板の伸び
の低下を招くため、0.3%以下である。
%を越えて存在すると固溶強化作用により鋼板の強度上
昇を引き起こし、鋼板の伸びの低下を招くため、0.3
%以下である。 P:Pも鋼中に0.03%を越えて存在すると固溶強化
作用により鋼板の強度上昇を引き起こし、鋼板の伸びの
低下を招くため、0.03%以下である。
Cを粒子径の大きなTi系炭硫化物として形態制御する
ために不可欠な元素であり、このようなTi系炭硫化物
を形成させるためには0.001%以上が必要である。
またSが0.015%を越えて存在すると硫化物の析出
量が増大し、冷延後の焼鈍段階におけるフェライト粒成
長性が低下しr値が劣化するだけでなく、析出物による
強度上昇に伴う伸びの低下が著しくなるため、上限は
0.015%である。
おいては、Nを固定するだけの目的であれば、連続鋳造
が可能な範囲内でその含有量を低減できる。しかしなが
ら、本発明では、sol.Alで脱酸することによって、T
iの酸化を抑制し、Ti系析出物に有効な固溶Tiの確
保が必要である。sol.Alの含有量が0.01%未満で
はAl脱酸が不十分でありTi酸化物を生成してしま
う。一方、sol.Alが0.1%を越えると脱酸生成物で
ある介在物の量が増加して(即ちアルミナ増加により)
清浄度が悪化する。従って、sol.Alの含有量は0.0
1〜0.1%の範囲である。 N:NはIF鋼の材質特性を発揮させるために、その含
有量は低い方が望ましい。本発明の成分範囲内の鋼で
は、連続鋳造後の冷却及び続く直接熱延段階において、
Ti系窒化物が最も高温で析出を開始するため、本発明
において重要な鋼中C,SをTi系の析出物として析出
させるために有効なTi量は、N量の増加に伴い減少す
る。従って、N量が0.005%を越えて鋼中に存在す
ると、Ti添加量が増大し経済的でないばかりでなく、
窒化物の析出量の増加に伴い析出物による強度上昇に伴
う伸びの低下が著しくなるため、上限は0.005%で
ある。
Ti系析出物として熱延板段階で固定することにより、
冷圧後の焼鈍段階で深絞り成形性に好ましい{111}
方位粒の集積度を増大し鋼板の深絞り成形性を良好にす
るため、Tiは重要な元素である。従って、Ti量は鋼
中C,N,S量に対する当量値、すなわち、((C%/
12+N%/14+S%/32)×48)%以上を含ま
なければならない。Ti量が((C%/12+N%/1
4+S%/32)×48)%未満では、鋼中CがTi系
析出物として完全に固溶されず、熱延板段階において固
溶Cとして存在するため、焼鈍後の鋼板の深絞り性が低
下する。一方、Ti量が0.15%を越えて鋼中に存在
すると、過剰な固溶Tiが存在してしまい、焼鈍段階に
おける鋼板の再結晶温度が上昇してしまい、再結晶後の
進行する粒成長時間が短くなるため、同一焼鈍温度にお
いてフェライト粒径が小さくなり、これに伴い鋼板の強
度が上昇し、伸びが低下してしまう。従って、上限は
0.15%である。
じて含有させる。B含有量が0.0002%に満たない
とその効果がなく、一方、0.0015%を越えて含有
させると深絞り性が劣化するため、0.0002〜0.
0015%の範囲である。 Nb:Nbは熱延段階での組織の細粒化を促進するた
め、熱延後の再結晶において深絞り性に好ましい{11
1}粒の核発生を促進することができるため、必要に応
じて含有させる。Nb含有量が0.005%に満たない
とその効果がなく、一方、0.05%を越えて含有させ
ると再結晶温度が上昇し、経済的でないため、0.00
5〜0.05%の範囲である。上記成分組成範囲に調整
することにより、高いr値を有する深絞り成形性に優れ
た冷延鋼板を得ることが可能である。
することができる。 (2)鋼板製造工程 まず、本発明においては鋼を溶製し、連続鋳造によりス
ラブとした後、図1aに示すように、Ar3 点以下に冷
却することなく直ちに50%以上の合計圧下率で粗圧延
を施す。
スラブの冷却段階において熱間圧延を施すことにより、
従来の冷却されたスラブを均熱炉に挿入し再加熱するよ
りエネルギーコストが大幅に低減できるためである。た
だし、スラブ表面あるいはコーナー部での温度低下を補
償するために、エッヂヒーターによるオンラインでの軽
加熱処理(粗バー対象)あるいは、短時間の再加熱炉で
の軽加熱処理(スラブ対象)はスラブ全体の温度を均一
にするために有効な手段であり、本発明において採用す
ることができる。
は、Ar3 未満の温度すなわちフェライト温度域で圧延
を開始すると、熱延板の組織が粗大化し、冷延後の焼鈍
時の鋼板の再結晶段階において、深絞り性に好ましい
{111}方位粒の優先核発生サイトである旧熱延板段
階でのフェライト粒界の面積が減少してしまい、最終焼
鈍後の{111}方位粒の集積度が低下に伴いr値が低
下し、鋼板の深絞り性が低下するためである。
ブを50%以上の合計圧下率で粗圧延するのは、粗圧延
によりスラブへの加工歪みの導入及び組織の細粒化をす
ることにより、Ti系硫化物の歪み誘起析出により析出
反応を促進させ、また、細粒化によりもう一つの優先析
出サイトであるオーステナイト粒界への析出も促進さ
れ、短時間に炭硫化物の析出反応が達成されるためであ
る。さらに、粗圧延時の圧下率が50%未満では、圧延
時に導入された歪みの蓄積が不十分であり、導入された
歪みにより加工誘起粒成長が起こってしまい、逆にオー
ステナイト粒径が粗大化してしまい、前述の析出促進が
できないためである。
にAr3 点以上の温度から最低2℃/秒以上の加熱速度
で加熱時間10秒以上で最高到達温度1150℃以下ま
で粗バー全体を昇温加熱する。
を開始する理由は、Ar3 点未満の温度から加熱昇温を
開始すると、粗バーがフェライトに変態し前述同様に熱
延板の組織が粗大化するため最終焼鈍後の深絞り性が劣
化するだけでなく、フェライト温度域ではTiCの溶解
度が低いため、粗バーがAr3 点を下回ると同時にTi
Cが単独で析出を開始してしまうためである。TiCは
Ti系析出物の中では最も粒子径が小さいため、このよ
うな微細な析出物の存在により、冷延後の焼鈍段階での
フェライト粒成長が低下してしまい、鋼板が硬質化する
だけでなく{111}方位粒の集積度が低下してしま
い、深絞り性の改善が困難となる。
本発明において非常に重要な技術である。従来の直接熱
延法において極めて困難であった熱延段階における析出
物の粗大化を粗バーの加熱昇温段階で、比較的粗大に析
出するTi系炭硫化物に固定することにより達成し、冷
延後の焼鈍段階でのフェライト粒成長を改善し鋼板の軟
質化及びr値改善による深絞り性の改善を図ろうとする
技術である。
析出反応は、まず粗圧延の前段階においてTiNが析出
し、続いてTi系硫化物、TiSが析出を開始し、これ
に続いてTi4 C2 S2 を主体とするTi系炭硫化物が
析出する。ここで、Ti系炭硫化物は1150℃以下の
オーステナイト低温域で安定となるため、このオーステ
ナイト低温域でのTiSから粗大なTi系炭硫化物への
変移を促進することにより硫化物を粗大化できるばかり
か、鋼中Cも粗大析出物として安定化することができ
る。このようなTi系炭硫化物の析出促進反応がない
と、仕上げ圧延終了後のフェライト温度域で微細に析出
するTiCの析出により冷延後の焼鈍段階においてフェ
ライト粒成長性が低下し、鋼板が硬質化するばかりかr
値が低下し鋼板の深絞り性が改善されない。
熱延工程においては一旦オーステナイト低温域まで粗バ
ー温度が下がることによりTi系炭硫化物の過飽和度が
増大し、炭硫化物の析出核数を増大させた後、昇温する
ことによりTi,C,Sの拡散速度が飛躍的に増大し、
これら微細な析出核の成長を促進できるためである。
間を10秒以上とした理由は、加熱速度が2℃/秒未満
あるいは、加熱時間が10秒未満では前述のTi系炭硫
化物の粗大化反応が不十分となり、最終焼鈍後の鋼板の
深絞り性が改善されないためである。
℃とした理由は、加熱温度が1150℃を越えると再び
Ti系炭硫化物が溶解する場合があるためである。さら
に、このような粗バーの加熱昇温は粗バー全体に施され
なければならず、従来のエッヂヒーターのような部分的
な加熱は適当ではない。また、近年採用されつつあるコ
イルボックスは加熱能力がなく、粗バー温度の均一保持
が主目的であり、本発明の技術には単独では適しない。
従って、このような粗バー加熱は近年開発された高周波
による全体加熱が必須でかつ、前述のコイルボックスや
エッヂヒーターと組み合わせることによりさらに前述の
Ti系炭硫化物の析出が促進されより効果的となる。こ
こで、コイルボックスを利用する場合、粗バーの長さが
10m未満では保熱能力が低く不十分である。また、4
0mを越えると、現状ではコイルボックスが巨大化して
しまい物理的に不能となる。
持すると、前述のように巻き取り保持段階においてTi
系炭硫化物の析出核数が増大し、引き続く粗バー加熱段
階における析出物の粗大化がさらに促進され、冷延後の
焼鈍段階における粒成長性がさらに改善され高延性、高
r値化を図ることができる。このような効果を期待する
ためには、巻き取り時の保持時間を0.5分以上としな
ければ、粗バー全体での前述のTi系炭硫化物の析出促
進効果が得られず、製品全体での均一な機械的特性値が
得られない。一方、10分を超える巻き取り保持をする
と、Ti系炭硫化物の析出効果は十分達成されるが、粗
バー表面の酸化によるスケールロスが無視できなくな
り、歩留まりが低下するばかりか、鋼板の表面性状も低
下するため、望ましくない。
圧延により所定の板厚にAr3 点以上の温度で仕上げら
れる。Ar3 点以上の温度で仕上げる理由は、仕上げ温
度がAr3 点未満では熱延組織が粗大化するため、前述
のように焼鈍時の{111}方位粒の集積度が低下する
ため、鋼板の深絞り成形性が低下してしまうためであ
る。
圧延機入側において粗バー後端部が待機している間に粗
バー温度が低下してしまい、仕上げ終了温度がAr3 点
以下となり、鋼板の延性を劣化させる粗大組織が発達し
てしまう。このため、従来のスラブ長さには制約があっ
た。しかし、本発明法によれば仕上げ圧延機入側で、粗
バー全体を加熱し昇温できるため、従来のスラブ長さよ
り長い12m以上のスラブ長さで良好な表面性状及び延
性を確保することができる。ただし、スラブ長さが40
m超と極端に長くなると、粗バーの温度低下が大きくな
り必要な加熱エネルギーが増大し好ましくない。
とした後、前述のように、この粗バーを一旦コイルボッ
クスに巻取り、図1bに示すように、Ar3 点以上の温
度範囲で0.5〜10分保持し、このことにより粗バー
の先端及び後端の温度差を低減し、引き続いて巻き戻し
ながら再び粗バーをAr3 点以上の温度から加熱速度2
℃/秒以上で加熱時間10秒以上で最高到達温度115
0℃以下まで加熱し、次いで熱間仕上げ圧延を施すこと
により、さらに表面性状及び延性の均一化を促進するこ
とができる。
より鋼板の深絞り性が改善されるだけでなく、仕上げ圧
延時の開始温度が上昇できるため、従来よりスタンド間
のデスケールを強化しても仕上げ温度を確保することが
可能となり、熱延板のデスケール不良による鋼板の表面
性状欠陥の低減することも付随的に可能である。
は以後巻取りされ、冷却した後、冷間圧延により圧下率
50〜95%に減厚された後、加工組織の再結晶及び粒
成長のため600〜900℃で焼鈍される。
理由は、50%未満あるいは95%越えでは続く焼鈍時
の再結晶段階において深絞り性に良好な{111}方位
粒の集積度が低く、鋼板の深絞り性改善に好ましくない
ためである。
理由は、600℃未満では鋼板の再結晶反応が不十分で
あるため、鋼板に加工組織が残存し鋼板の伸びが低下
し、また、900℃越えて焼鈍すると、オーステナイト
に変態してしまい、熱延段階で析出していた炭化物が再
溶解してしまうため、鋼中の固溶C量が増加し伸びが低
下してしまうためである。
融亜鉛めっきラインの加熱のいずれを採用してもかまわ
ない。また、本発明においては、粗大なTi系炭硫化物
の積極的な析出処理を熱延段階で施しているため、従来
の直接熱延法に比較し、析出物粒子径が大きく、これに
伴い焼鈍段階でのフェライト粒成長性が良好となってい
るため、従来レベルの深絞り成形性を有する鋼板の製造
に対しても焼鈍温度を従来法に比較して大幅に下げられ
るといった製造コスト低減にも大きな効果が得られる。
の表面粗度調整を目的とした調質圧延を3%以下で施す
ことも可能である。以下に本発明の実施例を挙げ、本発
明の効果を立証する。
の鋼を溶製した後、これを65mmのスラブに鋳造し
た。これらのスラブを1100℃以上で抽出し、直ちに
粗圧延を施し1030℃で終了し、厚さ30mmの粗バ
ーとし、その後スラブの冷却段階で970℃に到達した
時点で高周波誘導加熱炉を用いて加熱速度5℃/秒で3
0秒間加熱昇温した後、仕上げ圧延において3.2mm
に920℃で仕上げて熱延板とした後、630℃に到達
したところで630℃の炉中に挿入し、その後炉冷によ
り巻取りシミュレート処理を施した。これらの熱延板を
酸洗し、板厚0.7mmに冷間圧延を施してから780
℃×2分間の連続焼鈍処理を施した。
S5号引張り試験片を採取し、引張試験による降伏強度
(YP)、引張強度(TS)及び伸び(El)、さらに
r値(mean-r)及び耐二次加工脆性(Tc)を調査し
た。その結果を表2に示す。
圧延方向、圧延直角方向及び圧延45°方向に採取し、
15%予歪みを引張りにより付与した時のr値、r0 、
r90、r45から、mean-r=(r0 −2r45+r90)/2
により算出された値で、mean-rが高いと深絞り成形性が
良好となる。耐二次加工脆性の評価は、鋼板から直径1
05mmの円形ブランクを採取し、内径50mmの円筒
絞り加工によりカップ成形をした後、落重試験により各
試験温度でカップの端面割れの有無を評価し、脆性割れ
を生じない限界温度をTcとして評価した。
成分の鋼(No.13 〜20)は、比較例(No.1〜12)に比べ
優れた伸び及びr値を示しており、このような鋼板は極
めて優れた深絞り性を有している。
No.14の鋼を用いて、これを65mmのスラブに鋳
造した。表3に示す熱履歴により仕上げ圧延を施し、6
30℃に到達したところで630℃の炉中に挿入し、そ
の後炉冷により巻取りシミュレート処理を施した。これ
らの熱延板を酸洗し、表3に示す冷圧率で冷圧した後、
800℃で1分間の焼鈍処理を施した。実施例1と同様
に焼鈍板の引張試験により機械的特性値を評価した。そ
の結果を表4に示す。
成分の鋼(No.14)に本発明の範囲の製造方法(No.10 〜
20)を適用すると、比較例(No.1〜9)に比べ優れた伸び
及びr値を示しており、このような鋼板は極めて優れた
深絞り性を有している。特に、粗バーを一旦巻き取り表
3に示す条件で保持した本発明の範囲の製造方法(No.1
8 〜20)は、さらに優れた深絞り性を有している。
特定することにより、r値の高い深絞り成形性に優れた
冷延鋼板を従来より低コストで安定して製造することが
できるなど、産業上極めて有用な効果がもたらされる。
図。aは請求項1に記載の製造工程を示す模式図。bは
請求項3に記載の製造工程を示す模式図。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.003%以下と、S
i:0.3%以下と、Mn:0.3%以下と、P:0.
03%以下と、sol.Al:0.01〜0.1%と、S:
0.001〜0.015%と、N:0.005%以下
と、Ti:Ti%=((C%/12+N%/14+S%
/32)×48)%以上0.15%以下と、残部Fe及
び不可避的不純物からなる冷延鋼板の製造方法におい
て、連続鋳造直後のスラブをAr3 点以下に冷却するこ
となく直ちに合計圧下率を50%以上で粗圧延を施して
粗バーとした後、この粗バー全体を、Ar3 点以上の温
度から加熱速度2℃/秒以上加熱時間10秒以上で最高
到達温度1150℃以下まで加熱し、次いで熱間仕上げ
圧延を施しAr3 点以上で終了し、引き続き圧下率50
〜95%の冷間圧延を行い、600〜900℃で焼鈍す
ることを特徴とする深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方
法。 - 【請求項2】重量%で、C:0.003%以下と、S
i:0.3%以下と、Mn:0.3%以下と、P:0.
03%以下と、sol.Al:0.01〜0.1%と、S:
0.001〜0.015%と、N:0.005%以下
と、Ti:Ti%=((C%/12+N%/14+S%
/32)×48)%以上0.15%以下と、残部Fe及
び不可避的不純物からなる冷延鋼板の製造方法におい
て、連続鋳造直後のスラブをAr3 点以下に冷却するこ
となく直ちに合計圧下率を50%以上で粗圧延を施して
粗バーとした後、この粗バーを一旦巻取り、Ar3 点以
上の温度範囲で0.5〜10分保持した後、次いで巻き
戻しながら再び粗バー全体をAr3 点以上の温度から加
熱速度2℃/秒以上加熱時間10秒以上で最高到達温度
1150℃以下まで加熱し、次いで熱間仕上げ圧延を施
しAr3 点以上で終了し、引き続き圧下率50〜95%
の冷間圧延を行い、600〜900℃で焼鈍することを
特徴とする深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項3】 連続鋳造により得られるスラブは長さ1
2m〜40mであることを特徴とする請求項1または2
に記載の深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 重量%で、B:0.0002〜0.00
15%及びNb:0.005〜0.05%のうち1種ま
たは2種をさらに含有することを特徴とする、請求項1
乃至3のいずれかに記載の深絞り性に優れた冷延鋼板の
製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27469896A JP3428318B2 (ja) | 1996-10-17 | 1996-10-17 | 深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP27469896A JP3428318B2 (ja) | 1996-10-17 | 1996-10-17 | 深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH10121144A JPH10121144A (ja) | 1998-05-12 |
JP3428318B2 true JP3428318B2 (ja) | 2003-07-22 |
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Family Applications (1)
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JP (1) | JP3428318B2 (ja) |
-
1996
- 1996-10-17 JP JP27469896A patent/JP3428318B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH10121144A (ja) | 1998-05-12 |
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