JP3428312B2 - 酸化チタン膜の形成方法 - Google Patents

酸化チタン膜の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒活性を有す
る酸化チタン膜の形成方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、チタンフッ化水素酸を含有し、さ
らにほう酸又は塩化アルミニウムを添加した溶液に基材
を浸漬して、該基材表面に酸化チタン(TiO2 )膜を
形成する方法が特開昭59−141441号や特開平1
−93443号に開示されている。また、チタンフッ化
アンモニウムを含有し、さらにほう酸又は塩化アルミニ
ウムを添加した溶液に基材を浸漬して、該基材表面にT
iO2 膜を形成する方法が特開平3−285822号や
特開平3−285821号、特開平4−130017号
に開示されている。これらの方法によれば、任意形状の
基材の表面にTiO2 膜を形成できるという利点を有し
ているものであって、このようにしてTiO2 膜を形成
した基材は、光触媒活性を有する光触媒体としての用途
が期待されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記よ
うに液相における析出現象により基材上に形成されたT
iO2 膜は、結晶度が低いために光触媒活性が十分では
ないものであった。これに対し、さらに300℃以上の
高温で焼成することによりTiO2 膜の結晶性を高め、
光触媒活性の向上を図っていたが、この場合、焼成工程
が必要となる分だけ手間がかかって製造コストを上昇さ
せる要因となるものであり、また、耐熱性の低い基材は
使用できなくなるという問題があった。 【0004】本発明は、上記の事実に鑑みてなされたも
ので、焼成工程を要することなく基材表面に良好な光触
媒活性を有するTiO2 膜を形成できる酸化チタン膜の
形成方法を提供するものである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る
酸化チタン膜の形成方法は、チタンフッ化アンモニウム
を含む水溶液に、この水溶液にて成立する下記反応式 (NH42TiF6+2H2O ⇔ TiO2+4HF+2NH4F で表される平衡を右に進める添加剤を添加し、TiO2
が過飽和となった水溶液に基材を接触させ、該基材の表
面にTiO2膜を形成するにあたって、上記基材表面に
予めアナターゼ型チタニアゾルをコーティングすること
を特徴とするものである。 【0006】 【0007】 【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。 【0008】本発明に係る酸化チタン複合膜の形成方法
では、チタンフッ化アンモニウムを含む水溶液に、この
水溶液中にて成立する下記反応式 (NH4)2 TiF6 +2H2 O ⇔ TiO2 +4HF
+2NH4 F で表される平衡を右に進める添加剤を添加し、TiO2
が過飽和となった水溶液を作製する。 【0009】上記添加剤としては、チタンフッ化アンモ
ニウムの水溶液を上記反応式に示す平衡状態をTiO2
が過飽和となる方向に移動させる作用を有するものであ
れば、特に限定されないが、例えば、ほう酸、金属アル
ミニウム等が例示される。特に、ほう酸を用いる場合に
は、より均一なTiO2 膜を形成できる点で好ましいも
のである。 【0010】上記添加剤としてほう酸を用いる場合にあ
たっては、溶液全量に対するチタンフッ化アンモニウム
の濃度を0.05〜0.2mol/リットルとし、ほう
酸の濃度を0.05mol/リットル以上となるように
調製することが好ましい。すなわち、上記ほう酸の濃度
が溶液全量に対して0.05mol/リットル未満の場
合には、基材表面へのTiO2 膜の形成に時間がかか
る。また、チタンフッ化アンモニウムの濃度が溶液全量
に対して0.2mol/リットルを越える場合には、N
4 TiOF3 とTiOF2 とが混合された膜が形成さ
れるため、TiO 2 膜が形成され難くなり、一方、0.
05mol/リットル未満では膜厚が薄くなり、光触媒
機能が低下するためである。 【0011】本発明では、上記水溶液に基材を浸漬し
て、該基材表面にTiO2 膜が形成されるものである。
ここで、上記基材としては、上記水溶液中のチタンフッ
化アンモニウムやほう酸等と反応しないものであれば特
に限定されないが、例えばガラス、酸化物、金属、無機
塗料を塗布した基材、有機物や有機塗料を塗布した基材
であればより好ましい。因みに、形成されるTiO2
の厚みは100nm以上とすることが好ましく、この膜
厚は、チタンフッ化アンモニウムの濃度、ほう酸の濃
度、基材の接触時間等でコントロールすることができ
る。 【0012】ここで、光触媒活性を向上させる参考手法
として、基材を浸漬する前に、上記水溶液に予めアナタ
ーゼ型チタニアゾルを添加する方法について説明する。
上記水溶液にアナターゼ型チタニアゾルを添加するにあ
たっては、上記水溶液中における該アナターゼ型チタニ
アゾル中のTiO2粒子の分散濃度が0.05 〜0.2
5g/Lとなるように添加するのが好ましい。すなわ
ち、上記水溶液中における該アナターゼ型チタニアゾル
のTiO2粒子の分散濃度がこの範囲よりも少ないと、
光触媒活性の改善効果が小さく、一方、上記TiO2粒
子の分散濃度が大きいと、水溶液中で過飽和となったT
iO2が上記TiO2粒子を核として粒成長し、基材表面
へのTiO2膜形成が阻害されることが懸念されるから
である。 【0013】この場合、予めアナターゼ型チタニアゾル
を含有させた上記水溶液に基材を浸漬することにより、
その表面には、上記水溶液中で過飽和となって析出した
TiO2 の他に、アナターゼ型チタニアゾル中のTiO
2 粒子が混合し分散したTiO2 膜が形成される。ま
た、アナターゼ型チタニアゾル中のTiO2 粒子は、そ
れ自身では基材表面への密着性が低いものであるが、こ
の場合、水溶液中で過飽和となって析出したTiO2
バインバーの役割を果して良好な密着力でTiO 2 膜に
保持される。 【0014】このようにして基材表面に形成されたTi
2 膜は、結晶度が高いアナターゼ型チタニアゾルのT
iO2 粒子を含むことから、光触媒活性が高いものとな
る。したがって、上記水溶液に基材を浸漬して形成され
たTiO2 膜は、洗浄し、乾燥すれば、焼成処理を行わ
なくとも光触媒活性が向上したものとなる。なお、必要
に応じて焼成処理を行っても差し支えないことは言うま
でもない。 【0015】本発明においては、光触媒活性を向上させ
手法として、基材を上記水溶液に浸漬する前に、該基
材表面に予めアナターゼ型チタニアゾルのコーティング
を行っている。この基材表面にアナターゼ型チタニアゾ
ルのコーティングする方法としては、例えばディップコ
ート、スピンコート、スプレーコート等の手法により行
うことができる。この場合、アナターゼ型チタニアゾル
がコーティングされた基材を上記水溶液に浸漬すること
により、上記基材表面にはアナターゼ型チタニアゾルの
TiO2粒子と上記水溶液中で過飽和となって析出した
TiO2とからなるTiO2膜が形成される。このとき、
基材表面に予めコーティングされたアナターゼ型チタニ
アゾルのTiO2粒子は、水溶液中で過飽和となって析
出したTiO2がバインダーの役割を果して密着力が向
上し剥離しがたいものとなる。 【0016】この本発明の手法においても、上述した
考手法と同様に、基材表面に形成されたTiO2膜は、
結晶度が高いアナターゼ型チタニアゾルのTiO2粒子
を含むことから、光触媒活性が高いものとなる。したが
って、上記水溶液に基材を浸漬して形成されたTiO2
膜は、洗浄し、乾燥すれば、焼成処理を行わなくとも光
触媒活性が向上したものとなる。なお、この場合にあっ
ても必要に応じて焼成処理を行っても差し支えないこと
は言うまでもない。 【0017】 【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。 【0018】−参考例− フッ化アンモニウム0.4mol/L水溶液62.5m
Lとホウ酸0.5mol/L水溶液100mLとを混合
し、これに水を加えて250mLとし、さらに固形分濃
度6重量%のアナターゼ型チタニアゾル(多木化学社
製、品名:タイノックM−6)を0.5g添加して処理
用の水溶液を調製した。この水溶液に、基材としてよく
洗浄したガラス基板をその表面に形成されるTiO2膜
の膜厚が100nmとなるまで浸漬した。このTiO2
膜が形成されたガラス基板を十分に洗浄した後、100
℃で乾燥した。 【0019】−実施例− フッ化アンモニウム0.4mol/L水溶液62.5m
Lとホウ酸0.5mol/L水溶液100mLとを混合
し、これに水を加えて処理用の水溶液250mLを調製
した。この水溶液に、基材として予め上記参考例に用い
たものと同じアナターゼ型チタニアゾルをスピンコート
したガラス基板をその表面に形成されるTiO2 膜の膜
厚が100nmとなるまで浸漬した。このTiO2膜が
形成されたガラス基板を十分に洗浄した後、100 ℃
で乾燥した。 【0020】−比較例1− アナターゼ型チタニアゾルを添加することなく処理用の
水溶液を調製した他は、上記参考例と同様にして基材表
面にTiO2膜を作製した。 【0021】−比較例2−参考例 にて用いたものと同じアナターゼ型チタニアゾル
を水で希釈してTiO2 濃度が3 重量%となるように
調製した溶液に、良く洗浄したガラス基板を浸漬し、1
0〜30cm/minの速度で引き上げディップコート
し、100℃で乾燥した後、500℃で焼成した。この
場合、基材表面に形成されたTiO2膜が剥離しやす
く、光触媒体活性の測定サンプルとすることができなか
った。 【0022】性能の評価参考例、実施例、 及び比較例1にて得られたTiO2膜
の光触媒活性性能の評価を次のようにして行った。すな
わち、すなわち、TiO2膜が形成されたガラス基板を
50mm×50mmに切り取って300ccの容器内に
設置し、この容器内に約50ppmの濃度となるように
アセトアルデヒドを注入した後、ブラックライトを照射
して、アセトアルデヒドの半減期を測定することにより
光触媒性能を評価した。その結果を(表1)に示す。 【0023】 【表1】 【0024】(表1 )の結果から、参考例、実施例の
TiO2膜は比較例1のものに比べてアセトアルデヒド
の半減期が短いことから、光触媒性能が高いことがわか
る。この場合、100℃で乾燥しているものの焼成させ
ていないことから、参考例および実施例では焼成工程を
要することなく良好な光触媒性能が得られることがわか
る。また、参考例と実施例とを比較すると、参考例では
処理用の水溶液にアナターゼ型チタニアゾルのTiO2
粒子を分散させる必要があるのに対し、実施例ではその
必要がないため、水に安定に分散しないアナターゼ型チ
タニアゾルを使用する場合に有利である。なお、比較例
2においてはTiO2膜が剥離しやすく、光触媒体とし
て用いることは困難であると言える。 【0025】 【発明の効果】本発明の請求項1に係る酸化チタン膜の
形成方法によると、焼成を行なわずとも、基材表面に光
触媒活性の優れたTiO2膜を形成することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−285822(JP,A) 特開 平4−130017(JP,A) 特開 平5−246717(JP,A) 特開 平9−249418(JP,A) 国際公開98/11020(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 23/04 - 23/08 B01J 21/00 - 38/74

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 チタンフッ化アンモニウムを含む水溶液
    に、この水溶液にて成立する下記反応式 (NH42TiF6+2H2O ⇔ TiO2+4HF+2NH4F で表される平衡を右に進める添加剤を添加し、TiO2
    が過飽和となった水溶液に基材を接触させ、該基材の表
    面にTiO2膜を形成するにあたって、上記基材表面に
    予めアナターゼ型チタニアゾルをコーティングすること
    を特徴とする酸化チタン膜の形成方法。
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