JP3425538B2 - 回転カップ式薄膜塗布装置 - Google Patents

回転カップ式薄膜塗布装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転カップの内部
空間に装填された基板上に薬液を塗布する回転カップ式
薄膜塗布装置に係り、特に回転カップ式薄膜塗布装置で
用いられる薬液の選択性を向上させるのに有効な技術に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の回転カップ式薄膜塗布装
置は、回転カップに上部カップを覆い外部とは遮断した
密閉の閉鎖空間を形成し、その環境下で基板を回転さ
せ、遠心力により薬液を塗布するものが一般的であっ
た。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のこの種の回転カ
ップ式薄膜塗布装置は、カップの回転により閉鎖空間が
減圧されることから風の影響がなくなり、角基板の隅ま
できれいな塗布ができることや、高粘度薬液の塗布が容
易であるとか、表1に示す数々の長所を有している。
【表1】
【0004】しかしながら、上述のように長所が数多い
回転カップ式薄膜塗布装置であっても、低粘度、低揮発
性といった性質の薬液を塗布する場合、塗布膜に風紋が
生じるなどにより、塗布膜の面内均一性が他の薬液と比
べて劣ることがある。そのため、限られた薬液に対して
のみ、回転カップによる塗布が有効であった。
【0005】本発明は、上記問題を解消するもので、塗
布薬液の性質によって、塗布膜の面内均一性が崩れる現
象を解消し、広範囲の薬液を高精度に塗布することがで
きる回転カップ式薄膜塗布装置を提供することを目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1記載の発明は、軸受体に支持された垂直線の
軸線回りに回転可能に支持され、かつ、外周壁部に薬液
排出孔が設けられた回転カップと、上記回転カップの外
周壁部を囲繞し、かつ、上記薬液排出孔に対応した環状
の薬液回収通路を有するケ−シングとを備え、前記回転
カップの内部空間に装填された基板上に薬液を塗布する
回転カップ式薄膜塗布装置において、前記回転カップ
に、その回転で発生する遠心力を利用して、その回転カ
ップの内部空間に外部の気体を流入させる機構とを備
、回転カップは、その内部空間が密閉状態又は亜密閉
状態とされ、回転カップの上部フ−ドが多重構造とさ
れ、該上部フ−ドにより単一又は複数のチャンバ構造を
形成しているものである。
【0007】上記構成において、回転している回転カッ
プ内が遠心力でもって減圧され、そのため、回転カップ
内に外部の気体を流入させる機構を通して、気体を流入
させる。この気流を制御することにより、低粘度、低揮
発性といった性質の薬液を塗布した場合においても、回
転カップ内を密閉閉鎖空間とした場合に比べて、風紋が
生じにくくなり、基板面の全体を均一に塗布することが
できる。
【0008】
【0009】さらには、密閉状態又は亜密閉状態の内部
空間に、多重構造とされ、チャンバ構造を形成した回転
カップの上部フ−ドを通して気体が流入される。その際
の気流の乱れが生じることが抑制される。そのような気
流があることにより低粘度、低揮発性といった性質の薬
液を塗布する際にも基板面の全体を均一に塗布すること
ができる。
【0010】また、請求項2記載の発明は、請求項1記
載の回転カップ式薄膜塗布装置において、前記回転カッ
プは、その内部空間が密閉状態又は亜密閉状態とされ、
回転カップの上部フ−ドの一部又は全部が多孔部材から
なるものである。
【0011】上記構成において、上部フ−ドの多孔部材
を通して空気が流入し、その際の気流に乱れが生じるこ
とが抑制される。そのため、上記と同等の作用が得られ
る。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態につ
いて図面を参照して説明する。図1、図2において、回
転カップ式薄膜塗布装置1は、円盤状の回転カップ2、
この回転カップ2の上面を覆うフード3、上記回転カッ
プ2が嵌装されるケーシング4、フード3の着脱を行う
フード着脱機構5、回転カップ2を回転させるカップ回
転機構6、および回転カップ2を昇降させる昇降機構7
とから構成されている。
【0013】回転カップ2は、中径軸部21と、環状皿
部22とから構成されている。環状皿部22の上面は、
上記中径軸部21の上面と面一、あるいはわずかに低い
面一状になるように寸法設定されており、この面一の面
に塗膜形成を施す基板Bが中径軸部21の中心軸に一致
して載置されるようになっている。上記環状皿部22の
外周縁部には上方に突出した環状堰部22aが設けられ
ており、環状堰部22aでフード3を受けるようになっ
ている。フード3が装着された状態でこの環状堰部22
aによって囲まれた部分に基板載置空間Sが形成され
る。
【0014】環状堰部22aの下部の周面には基板載置
空間Sから外方に向かって斜め下方に傾斜した小径の排
出孔201が所定間隔で複数個穿設されており、この排
出孔201を介して基板載置空間S内の余分な塗布剤を
外部に排出するようになっている。
【0015】中径軸部21の下部には同心の回転軸23
が垂直線の軸線回りに回転可能に支持されている。中径
軸部21および回転軸23の軸心部分にはそれらを貫通
した吸気通路23aが形成されており、不図示の真空ポ
ンプを作動することによって回転軸23の下端部に接続
されたチューブ23bを介して基板Bを中径軸部21に
吸引するようになっている。
【0016】回転カップ2は、中径軸部21の小径部が
筒状の大径軸部24の筒孔に嵌め込まれた状態で大径軸
部24に固定されている。この大径軸部24の上部には
フランジ部が形成され、このフランジ部は上記回転カッ
プ2の環状皿部22が固定されている。
【0017】大径軸部24の下部は、支持架台Pに穿設
された装着孔P1に嵌め込まれ、外周面にフランジ25
aを有する支持筒体25に、ベアリング26を介して嵌
装されている。従って、回転カップ2は、支持架台Pに
対して回転軸23の軸心回りに回転可能になっている。
【0018】上記フード3は、フード本体31、このフ
ード本体31の中心部が上方に突出した円柱状の把持部
32、およびフード本体31の外周縁部が上方に膨出し
た膨出縁部33から構成されている。この膨出縁部33
は上記環状堰部22aに対応して設けられたもので、膨
出縁部33の底面部が環状堰部22aの上面部に当接す
ることによって回転カップ2を閉止するようになってい
る。上記把持部32の頂部には後述するフード着脱機構
5による着脱動作を可能にすべくその下の胴部32aよ
りも径の大きい鍔部32bが形成されている。
【0019】フード本体31は、図3に示されているよ
うに、円柱状の把持部32が形成されたフード上部構成
部材310と、膨出縁部33をなすフード下部構成部材
312と、フード上部構成部材310とフード下部構成
部材312との間に設けられたフード中間部構成部材3
11とからなる多重構造とされ、複数のチャンバ31
3,314が形成され、かつ、フード上部構成部材31
0、フード中間部構成部材311およびフード下部構成
部材312のそれぞれには、回転カップ2とフード3の
回転で発生する遠心力を利用して、その回転カップ2の
内部空間すなわち基板載置空間Sに外部の気体を流入さ
せる複数の孔315,316および317が所定の位置
に形成されている。
【0020】なお、フード上部構成部材310の孔31
5の形成された位置とフード中間部構成部材311の孔
316の形成された位置およびフード下部構成部材31
2の孔317の形成された位置はすべて異ならせてい
る。
【0021】上記ケーシング4は環状体を有し、大径軸
部24が嵌め込まれた状態でフランジ25aに支持固定
され、その上部は回転カップ2を囲繞している。ケーシ
ング4の内部には液を回収するための環状の回収通路4
01が形成されており、この回収通路401の上部に環
状の排出用帯孔41が設けられ、この排出用帯孔41の
開口は上記環状堰部22aに穿設された排出孔201に
対向して設けられている。従って、回転カップ2の基板
載置空間Sから排出された不要物はこの排出用帯孔41
を介して回収通路401内に導入される。回収通路40
1の周方向一部には下方に向かって垂直孔42が設けら
れ、回収通路401に溜まった不要物はこの垂直孔42
から外部に排出されるようになっている。
【0022】また、回転カップ式薄膜塗布装置1には、
フード3を回転カップ2に対して着脱するために、フー
ド着脱機構5が設けられている。このフード着脱機構5
は、ケーシング4に囲繞され、フード3を閉止する蓋体
51、水平腕が蓋体51に固定されたL字アーム52、
およびこのL字アーム52を上下動させるシリンダ53
から構成されている。このシリンダロッド54の上端部
がL字アーム52の垂直腕に固定されている。
【0023】蓋体51の中央部には把持部32の胴部3
2aの外径より大径でかつ鍔部32bよりも小径の嵌入
孔51aが設けられ、また蓋体51の中央部には鍔部3
2bを内部に収容する伏せ腕部51bが設けられてい
る。シリンダ53により蓋体51を上方に引き上げる
と、上記嵌入孔51aの縁部が鍔部32bに係合して、
フード3も上方に引き上げられる。
【0024】また、上記回転カップ2を回転軸23の軸
心回りに回転させるために、支持架台Pの下部にはカッ
プ回転機構6が設けられている。このカップ回転機構6
は、駆動モータ61、この駆動モータ61の駆動軸に共
回りするように設けられた駆動プーリ62、大径軸部2
4およびボールスプライン63aと共回りするように設
けられた従動プーリ63および駆動プーリ62と従動プ
ーリ63との間に張設されたベルト64から構成されて
いる。
【0025】回転軸23の外周面にはスプラインが形成
されており、このスプラインに噛合するボールスプライ
ン63aが大径軸部24の筒孔の下部に噛入固定されて
いる。上記従動プーリ63は大径軸部24およびボール
スプライン63aと共回りするように固定されている。
従って、上記駆動モータ61の回転力は駆動プーリ6
2、ベルト64および従動プーリ63を介して大径軸部
24およびボールスプライン63aに伝達され、また、
上記ボールスプライン63aを介して回転軸23に伝達
され、中径軸部21および環状皿部22からなる回転カ
ップ2が回転するようになっている。
【0026】また、回転軸23の下部には昇降機構7が
設けられている。この昇降機構7は、回転軸23の下端
部近傍に縦置き状態で設けられた第二シリンダ71、こ
の第二シリンダ71のシリンダロッド72の上端部に結
合された昇降ブロック73およびこの昇降ブロック73
の上下動をガイドするための上下方向に延びたガイドレ
ール74から構成されている。
【0027】上記昇降ブロック73は、ベアリング73
aを介して回転軸23の下部に結合されており、第二シ
リンダ71を作動させてシリンダロッド72を上下動さ
せることにより回転軸23を上下動させるようになって
いる。回転軸23が第二シリンダ71の作動によって上
昇させられると、その頂部に設けられた回転カップ2の
中径軸部21と大径軸部24との結合状態が解除され、
中径軸部21のみが環状皿部22に対して上方に移動
し、基板Bの載置や取り上げ動作が容易に行い得るよう
になる。
【0028】上記のように構成された回転カップ式薄膜
塗布装置1において、回転カップ2ともどもフード3を
回転させ、回転中の回転カップ2内と静止している外気
との間に圧力差が生じ、回転カップ2の内部空間に外部
の気体が流入し、流入された気体が低粘度、低揮発性と
いった性質の薬液を押圧しつつ遠心力の作用により基板
上面上を移動させることのよって基板上面全体を均一に
塗布することができる。なお、従来の回転カップ式薄膜
塗布装置1のフードを図5に示す。フード3´のフード
本体31は本実施形態のように多重構成ではなく、外部
の気体を導入させる機構は設けられていない。この従来
のフード3´を用いた場合には、回転カップ2の内部空
間は密閉空間となり、内部に気流が生じない。そのため
塗布しようとする薬液の性質によっては均一な塗布がで
きないものがある。
【0029】本発明の他の実施例としてのフード本体3
1は、図4に示されるように、円柱状の把持部32が形
成されたフード上部構成部材310と、膨出縁部33を
なすフード下部構成部材312からなり、フード上部構
成部材310とフード下部構成部材312との間に垂直
部材318で小室状の複数のチャンバ319が形成さ
れ、かつ、フード上部構成部材310、フード中間部構
成部材311およびフード下部構成部材312のそれぞ
れには、回転カップ2とフード3の回転で発生する遠心
力を利用して、その回転カップの内部空間に外部の気体
を流入させる複数の孔315,320が所定の位置に形
成される。
【0030】フード上部構成部材310に形成された孔
315とフード下部構成部材312に形成された孔32
0とは互いに孔中心が一致した状態とされ、それらの間
に小室状の複数のチャンバ319が形成されている。
【0031】フード本体31は、上記の例の他に図示し
ないが、フード上部の全部または一部がセラミック材の
ような多数の細かな空隙を有する多孔部材から構成する
ことができる。この構成において、その空隙を流入した
きめ細かな気体の流入で、流入時の気体の乱流を抑制し
つつ、流入された気体が低粘度、低揮発性といった性質
の薬液を押圧しつつ遠心力の作用により基板上面全体に
均一に拡げ、均一な塗布膜を形成することができる。
【0032】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、回転カッ
プ密閉内部空間に外部の気体が流入し、この気流の存在
により、基板上に塗布される薬液が低粘度、低揮発性と
いった性質のものであっても、基板面全体に均一に拡が
り、均一な塗布膜が形成される。従って、広範囲の薬液
について高精度に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による回転カップ式薄膜塗
布装置の一部切欠き斜視図である。
【図2】図1のA―A線断面図である。
【図3】本発明のフード全体の一例を示す断面図であ
る。
【図4】本発明のフード全体の他例を示す断面図であ
る。
【図5】従来のフードの例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 回転カップ式薄膜塗布装置 2 回転カップ 3 フード 4 ケーシング 310 フード上部構成部材 311 フード中間部構成部材 312 フード下部構成部材 313 チャンバ 314 チャンバ 315 孔 316 孔 317 孔 319 チャンバ 320 孔 B 基板 S 基板載置空間(内部空間)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸受体に支持された垂直線の軸線回りに
    回転可能に支持され、かつ、外周壁部に薬液排出孔が設
    けられた回転カップと、上記回転カップの外周壁部を囲
    繞し、かつ、上記薬液排出孔に対応した環状の薬液回収
    通路を有するケ−シングとを備え、前記回転カップの内
    部空間に装填された基板上に薬液を塗布する回転カップ
    式薄膜塗布装置において、 前記回転カップに、その回転で発生する遠心力を利用し
    て、その回転カップの内部空間に外部の気体を導入させ
    る機構を備え 前記回転カップは、その内部空間が密閉状態又は亜密閉
    状態とされ、回転カップの上部フ−ドが多重構造とさ
    れ、該上部フ−ドが単一又は複数のチャンバ構造を形成
    している ことを特徴とする回転カップ式薄膜塗布装置。
  2. 【請求項2】 前記回転カップは、その内部空間が密閉
    状態又は亜密閉状態とされ、回転カップの上部フ−ド
    一部又は全部が多孔部材からなることを特徴とする請求
    項1記載の回転カップ式薄膜塗布装置。
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