JP3422603B2 - ダンパーディスク組立体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ダンパーディスク
組立体に関する。

【０００２】

【従来の技術】車輌のクラッチに用いられるクラッチデ
ィスク組立体は、主に、入力側部材としてのクラッチプ
レート及びリテーニングプレートと、出力側部材として
のハブフランジと、ハブフランジの窓孔とプレートの切
り起こし部に円周方向両端を支持されるコイルスプリン
グと、プレートとハブフランジが相対回転するときに摩
擦を発生するための摩擦発生機構とから構成されてい
る。クラッチディスク組立体には、コイルスプリングの
捩じり剛性を低く抑えるとともに捩じり角を広くするた
めに、１つの窓孔内に２個のコイルスプリングを円周方
向に直列に作用するように配置したものがある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】クラッチディスク組立
体が回転すると遠心力の作用でコイルスプリングは径方
向外方に移動する。そのような状態でコイルスプリング
が圧縮されると、コイルスプリングはフランジの窓孔外
周及びクラッチプレート及びリテーニングプレートの切
り起こし部に摺動する。その結果、これら部材が磨耗し
てやがて破損する。

【０００４】特に近年は車両を高速状態で用いることが
多くなり、クラッチの操作が少なくなっているため、摩
擦フェーシングの磨耗が少なくなっている。そこでクラ
ッチの寿命を延ばすためには、クラッチディスク組立体
の窓孔部分の磨耗を減らすことが重要になっている。本
発明の課題はダンパーディスク組立体において弾性部材
による他の部材の磨耗を減らすことにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】請求項１に記載のダンパ
ーディスク組立体は、第１回転部材と、コイルスプリン
グと、第２回転部材と、第３回転部材と、一対のスプリ
ングシートとを備えている。第１回転部材は窓孔を有す
る。コイルスプリングは窓孔内に配置されている。第２
回転部材は、第１回転部材に軸方向に対向して配置さ
れ、コイルスプリングの円周方向両端を支持する支持部
を有する。第３回転部材は、第１回転部材を第２回転部
材との軸方向間に挟むように配置され、第２回転部材に
固定され、コイルスプリングの円周方向両端を支持する
支持部を有する。一対のスプリングシートは、コイルス
プリングの円周方向両端に係合し、さらに窓孔の円周方
向両端及び支持部の円周方向両端に支持されている。窓
孔及び支持部の円周方向端には、スプリングシートを収
納するための円周方向に凹んだ凹部が形成され、それに
より、コイルスプリングの円周方向両端は前記窓孔及び
前記支持部の円周方向端に接している。

【０００６】第２及び第３回転部材が回転すると、コイ
ルスプリングを介して第１回転部材にトルクが伝達され
る。第２及び第３回転部材に捩じり振動が入力される
と、第１回転部材と第２及び第３回転部材はコイルスプ
リングを介して周期的な相対回転を行う。このとき、コ
イルスプリングには遠心力が作用するが、スプリングシ
ートにより両端が径方向外方への移動を制限されてい
る。具体的に述べると、第２及び第３回転部材が第１回
転部材に対して一方向に回転すると、回転方向反対側の
スプリングシートは第２及び第３回転部材の支持部の凹
部に収納された状態でともに移動し第１回転部材の窓孔
から離れる。回転方向側のスプリングシートは窓孔の凹
部に収納された状態で係合したままであり、そこから第
２及び第３回転部材が離れる。以上の状態で一対のスプ
リングシートはコイルスプリングの両端に係合し、径方
向外方への移動を制限している。その結果、コイルスプ
リングは第１回転部材や第２及び第３回転部材等の他の
部材に摺動しにくくなり、それら部材の磨耗が少なくな
る。スプリングシートは窓孔及び支持部の円周方向端の
凹部に収納されているため、コイルスプリングの円周方
向両端は窓孔及び支持部の円周方向端に接している。

【０００７】請求項２に記載のダンパーディスク組立体
では、請求項１において、スプリングシートは、凹部に
配置される係止部と、コイルスプリング内に延びる挿入
部とを有している。 請求項３に記載のダンパーディスク
組立体では、請求項１又は２において、スプリングシー
トは、第２回転部材と前記第３回転部材の軸方向間に挟
まれた突出部を有している。このようにスプリングシー
トは第１回転部材と第３回転部材との間に挟まれている
ため、軸方向へずれにくくなっている。

【０００８】

【０００９】請求項４に記載のダンパーディスク組立体
は、第１回転部材と、一対のコイルスプリングと、フロ
ート体と、第２回転部材と、第３回転部材と、一対のス
プリングシートとを備えている。第１回転部材は、円周
方向に延びる窓孔を有する。一対のコイルスプリング
は、窓孔内に円周方向に並んで配置されている。フロー
ト体は、前記窓孔内で前記一対のコイルスプリング間に
配置されている。第２回転部材は、第１回転部材に軸方
向に対向して配置され、一対のコイルスプリングのそれ
ぞれ円周方向外側端を支持する支持部を有する。第３回
転部材は、第１回転部材を第２回転部材との軸方向間に
挟むように配置され、第２回転部材に固定され、一対の
コイルスプリングのそれぞれ円周方向外側端を支持する
支持部を有する。一対のスプリングシートは、一対のコ
イルスプリングの円周方向外側端に係合し、さらに窓孔
の円周方向両端及び支持部の円周方向両端に支持されて
いる。窓孔及び支持部の円周方向端には、スプリングシ
ートを収納するための円周方向に凹んだ凹部が形成さ
れ、それにより、一対のコイルスプリングの円周方向外
側端は窓孔及び支持部の円周方向端に接している。

【００１０】第２及び第３回転部材が回転すると、一対
のコイルスプリングを介して第１回転部材にトルクが伝
達される。第２及び第３回転部材に捩じり振動が入力さ
れると、第１回転部材と第２及び第３回転部材は一対の
コイルスプリングを介して周期的な相対回転を行う。こ
のとき得られる広い捩じり角度が捩じり振動の減衰に効
果がある。一対のコイルスプリングには遠心力が作用す
るが、スプリングシートにより径方向外方への移動を制
限されている。具体的に述べると、第２及び第３回転部
材が第１回転部材に対して一方向に回転すると、回転方
向反対側のスプリングシートは第２及び第３回転部材の
支持部の凹部に収納された状態でともに移動し第１回転
部材の窓孔から離れる。回転方向側のスプリングシート
は窓孔の凹部に収納された状態で係合したままであり、
第２及び第３回転部材から離れる。以上の状態で一対の
スプリングシートはそれぞれ一対のコイルスプリングの
径方向外方への移動を制限している。その結果、コイル
スプリングは第１回転部材や第２及び第３回転部材等の
他の部材に摺動しにくくなり、それら部材の磨耗が少な
くなる。スプリングシートは窓孔及び支持部の円周方向
端の凹部に収納されているため、一対のコイルスプリン
グの円周方向外側端は窓孔及び支持部の円周方向端に接
している。

【００１１】請求項５に記載のダンパーディスク組立体
では、請求項４において、スプリングシートは、凹部に
配置される係止部と、コイルスプリング内に延びる挿入
部とを有している。 請求項６に記載のダンパーディスク
組立体では、請求項４又は５において、スプリングシー
トは、第２回転部材と前記第３回転部材の軸方向間に挟
まれた突出部を有している。このようにスプリングシー
トは第１回転部材と第３回転部材との間に挟まれている
ため、軸方向へずれにくくなっている。

【００１２】

【００１３】

【００１４】

【００１５】

【発明の実施の形態】第１実施形態 図１及び図２に示す本発明の第１実施形態としてのクラ
ッチディスク組立体１は、図１の左側に配置されたエン
ジン（図示せず）からのトルクを図１の右側に配置され
たトランスミッション（図示せず）に伝達及び遮断する
ための装置である。図１においては、Ｏ−Ｏがクラッチ
ディスク組立体１の回転軸線である。

【００１６】このクラッチディスク組立体１は、主に、
出力側部材としてのハブフランジ２と、入力側部材とし
てのクラッチプレート３及びリテーニングプレート４
と、ハブフランジ２とプレート３，４とを円周方向に連
結するコイルスプリング５と、プレート３，４とハブフ
ランジ２との間で相対回転が生じるときに所定の摩擦を
発生させる摩擦発生機構６とから構成されている。

【００１７】ハブフランジ２は、クラッチディスク組立
体１の中心に配置されている。ハブフランジ２の内周側
にはスプライン孔２ａが形成されており、トランスミッ
ション側から延びるシャフト（図示せず）に係合してい
る。ハブフランジ２の外周にはフランジ１０が一体に形
成されている。フランジ１０は、図２から明らかなよう
に、外周縁に切り欠かかれた４つの切欠き１０ｃ間であ
る４つの突出部１０ａを有している。各突出部１０ａに
は、円周方向に延びる窓孔１０ｂが形成されている。ま
た、図４に示すように、窓孔１０ｂにおいて円周方向両
端の径方向中間部分には係合凹部１０ｅが形成されてい
る。係合凹部１０ｅは、円周方向外側に向かうに従って
徐々に幅が狭くなった切欠きである。

【００１８】クラッチプレート３及びリテーニングプレ
ート４は、中心孔を有する概ね円板状の一対の部材であ
り、ハブフランジ２の外周側に回転自在に嵌合してお
り、フランジ１０の両側方に配置されている。クラッチ
プレート３及びリテーニングプレート４は外周部で４本
の当接ピン１１により互いに固定されている。この当接
ピン１１はフランジ１０の切欠き１０ｃ内を挿通してい
る。当接ピン１１と切欠き１０ｃの円周方向端面との間
には円周方向に所定の隙間が確保されているため、プレ
ート３，４とフランジ１０とは所定角度範囲内で相対回
転可能である。

【００１９】クラッチプレート３の外周には、摩擦連結
部７が配置されている。摩擦連結部７は、主に、円環状
のクッショニングプレート１２と、２枚の摩擦フェーシ
ング１３とから構成されている。クッショニングプレー
ト１２は、当接ピン１１によりクラッチプレート３に固
定されている環状部１２ａと、環状部１２ａの外周側に
設けられた複数のクッショニング部１２ｂとから構成さ
れている。クッショニング部１２ｂの両面には摩擦フェ
ーシング１３が固定されている。なお、摩擦連結部７の
図１左側にはエンジン側のフライホイール（図示せず）
が配置されている。摩擦連結部７がフライホイール側に
圧接されると、クラッチディスク組立体１にエンジン側
のトルクが入力される。

【００２０】クラッチプレート３及びリテーニングプレ
ート４には、フランジ１０の窓孔１０ｂに対応した位置
に、それぞれ窓孔３ａ，４ａが形成されている。窓孔３
ａ，４ａは、径方向両側に形成された切り起こし部３
ｂ，４ｂからなり、この中にコイルスプリング５が収容
されている。また、各窓孔３ａ，４ａの円周方向両端に
おいては、図５に示すように、係合凹部３ｄ，４ｄが形
成されている。係合凹部３ｄ，４ｄは円周方向外側に行
くに従って徐々に幅が狭くなっている。なお、係合凹部
３ｄ，４ｄは係合凹部１０ｅより円周方向の長さが短く
なっている。

【００２１】コイルスプリング５は合計４個であり、そ
れぞれが大コイルスプリング５ａと小コイルスプリング
５ｂとの組み合わせからなる。コイルスプリング５の円
周方向両端は、窓孔１０ｂ，３ａ，４ａの円周方向両端
に当接している。係合凹部１０ｅ，３ｄ，４ｄには、ス
プリングシート２１が配置されている。スプリングシー
ト２１は、図４及び図５に詳細に示すように、当接部２
１ａと係合部２１ｂと挿入部２１ｃとからなる部材であ
る。当接部２１ａは軸方向に長く延び大コイルスプリン
グ５ａ及び小コイルスプリング５ｂの円周方向両端に当
接している。挿入部２１ｃは、当接部２１ａから延び、
小コイルスプリング５ｂ内に挿入されている。係合部２
１ｂは当接部２１ａから挿入部２１ｃとは反対側に延
び、当接部２１ａ及び係合部２１ｂは係合凹部１０ｅ内
に挿入されている。プレート３，４の係合凹部３ｄ，４
ｄはそれぞれスプリングシート２１の当接部２１ａに係
合している。この状態で、スプリングシート２１の係合
部２１ｂはプレート３，４間に挟まれた状態になってい
る。すなわち、スプリングシート２１は円周方向にはプ
レート３，４及びフランジ２から離脱は可能であるが、
径方向及び軸方向には移動不能になっている。

【００２２】プレート３，４の内周側には、摩擦発生機
構６の一部（後述）が係合するための孔３ｃ，４ｃ（図
３）がそれぞれ円周方向等間隔で４つ形成されている。
摩擦発生機構６は、第１摩擦部材１５とコーンスプリン
グ１６と第２摩擦部材１７とから構成されている。第１
摩擦部材１５とコーンスプリング１６は、フランジ１０
の内周端とリテーニングプレート４の内周端との間に配
置されている。第１摩擦部材１５は、リテーニングプレ
ート４と一体回転するようにかつ軸方向には移動自在に
なっている。コーンスプリング１６は、第１摩擦部材１
５とリテーニングプレート４の内周端との軸方向間に配
置されている。第２摩擦部材１７はクラッチプレート３
に相対回転不能にかつ軸方向に移動自在になっている。

【００２３】次に、クラッチディスク組立体１の動作に
ついて説明する。このクラッチディスク組立体１に対し
てエンジン側のフライホイールからトルクが入力される
と、摩擦連結部７からプレート３，４にトルクが伝達さ
れる。トルクはプレート３，４からはさらにコイルスプ
リング５を介してハブフランジ２に伝達され、トランス
ミッションのシャフト（図示せず）に出力される。

【００２４】クラッチディスク組立体１に捩じり振動が
伝達されると、プレート３，４とハブフランジ２との間
で周期的な相対回転が生じる。このとき、コイルスプリ
ング５は円周方向に圧縮され、第１摩擦部材１５及び第
２摩擦部材１７がハブフランジ２のフランジ１０に対し
て摩擦摺動することでヒステリシスが発生する。この結
果、捩じり振動が減衰される。

【００２５】大コイルスプリング５ａ及び小コイルスプ
リング５ｂには、クラッチディスク組立体１全体の回転
による遠心力が作用する。しかし、スプリングシート２
１により大コイルスプリング５ａ及び小コイルスプリン
グ５ｂは径方向外方への移動を制限されている。そのた
め、大コイルスプリング５ａは切り起こし部３ｂ，４ｂ
等に摺動しにくくなっている。

【００２６】スプリングシート２１の機能についてさら
に具体的に説明する。例えば、図４の状態からプレート
３，４がハブフランジ２に対してＲ2 側に捩じれたとす
る。すると、各窓孔１０ｂ内でのＲ2 側のスプリングシ
ート２１は係合凹部１０ｅ側に係止されたままであり、
そのスプリングシート２１からプレート３，４がＲ2側
に離れている。一方、Ｒ1 側のスプリングシート２１
は、プレート３，４とともにＲ2 側に移動し、フランジ
１０のＲ1 側の係合凹部１０ｅから離れる。以上の状態
でＲ1 側とＲ2 側の両スプリングシート１１は大コイル
スプリング５ａ及び小コイルスプリング５ｂの両端に係
合している。以上に説明したように、スプリングシート
２１はプレート３，４に対してもフランジ２に対しても
円周方向に離脱可能に形成されているため、コイルスプ
リング５ａ，５ｂが圧縮されているときでもコイルスプ
リング５ａ，５ｂ両端に係合して、それによりコイルス
プリング５ａ，５ｂの径方向外方への移動を制限してい
る。その結果、大コイルスプリング５ａは窓孔１０ｂの
外周部やプレート３，４の切り起こし部３ｂ，４ｂに摺
動しにくくなり、それら部材の磨耗が少なくなる。第２実施形態 図６及び図７は、本発明の第２実施形態としてのクラッ
チディスク組立体１０１を示している。図２のＯ−Ｏが
クラッチディスク組立体１０１の回転軸である。

【００２７】このクラッチディスク組立体１０１の中心
には、トランスミッションのシャフト（図示せず）に連
結されるハブフランジ１０２が配置されている。ハブフ
ランジ１０２は、筒状のボス１０２ａと、ボス１０２ａ
から径方向外方に延びるフランジ１０２ｂとを有してい
る。ボス１０２ａの中心には、前述したトランスミッシ
ョンのシャフトが係合するスプライン孔が形成されてい
る。フランジ１０２ｂには、円周方向に長く形成された
径方向外側が切り欠かれた窓孔１０２ｃが３か所形成さ
れている。各窓孔１０２ｃの円周方向両端で軸方向外側
には、各窓孔１０２ｃの円周方向中心側に延びる飛び出
し防止部１０２ｄが形成されている。また、窓孔１０２
ｃにおいて円周方向両端の径方向中間部分には係合凹部
１０２ｅが形成されている。係合凹部１０２ｅは、円周
方向外側に向かうに従って徐々に幅が狭くなった切欠き
である。

【００２８】フランジ１０２ｂの軸方向両側には、クラ
ッチプレート１０３とリテーニングプレート１０４が配
置されている。両プレート１０３，１０４は円板状のプ
レート部材であり、それぞれボス１０２ａの回りに回転
自在に嵌合する中心孔を有している。なお、クラッチプ
レート１０３はフランジ１０２ｂのエンジン側（図７の
左側）に配置され、リテーニングプレート１０４はフラ
ンジ１０２ｂのトランスミッション側（図７の右側）に
配置されている。クラッチプレート１０３とリテーニン
グプレート１０４とは、外周部分で複数のリベット１１
０により固定されている。また、クラッチプレート１０
３には、リベット１１０により複数のクッショニングプ
レート１２３が固定されている。クッショニングプレー
ト１２３の両面には、摩擦フェーシング１２４が固定さ
れている。

【００２９】プレート１０３，１０４において窓孔１０
２ｃに対応する部分には、円周方向に長く延びる窓孔１
０３ａ（図７），１０４ａが形成されている。各窓孔１
０３ａ，１０４ａの内周部分と外周部分には、軸方向に
切り起こされた切り起こし部１０３ｂ，１０４ｂが形成
されている。また、各窓孔１０３ａ，１０４ａの円周方
向両端においては、係合凹部１０３ｄ，１０４ｄが形成
されている。係合凹部１０３ｄ，１０４ｄは円周方向外
側に行くに従って徐々に幅が狭くなっている。なお、係
合凹部１０３ｄ，１０４ｄは係合凹部１０２ｅより円周
方向の長さが短くなっている。

【００３０】各窓孔１０２ｃ，１０３ａ，１０４ａ内の
空間には、それぞれ１対の大コイルスプリング１２０が
配置されている。両大コイルスプリング１２０内には、
小コイルスプリング１２１が配置されている。各大コイ
ルスプリング１２０及び小コイルスプリング１２１の円
周方向外側端面は、フランジ１０２の窓孔１０２ｃの円
周方向端面に当接している。また、各窓孔内のコイルス
プリング１２０，１２１間にはフロート体１１３が配置
されており、各コイルスプリングの円周方向内側端面は
フロート体１１３に支持されている。

【００３１】フロート体１１３は、図から明らかなよう
に、略三角形の形状をしている。フロート体１１３の径
方向内側には回動連結部１１３ａが設けられている。回
動連結部１１３ａの径方向内側端は、１対の第１サブプ
レート１０６と第２サブプレート１０７に回動自在に固
定されている。第１及び第２サブプレート１０６，１０
７は環状のプレート部材であり、フランジ１０２ｂの外
周に配置され、固定ピン１１４により互いに固定されて
いる。

【００３２】フロート体１１３の円周方向両側面は、各
コイルスプリング１２０，１２１の円周方向内側面に当
接する当接面１１３ｂとなっている。フロート体１１３
は、三角形の部分から径方向両側に延びる飛び出し防止
部１１３ｃを有している。この飛び出し防止部１１３ｃ
は、フランジ１０２の窓孔１０２ｃ両側に形成された飛
び出し防止部１０２ｄと共にコイルスプリング１２０，
１２１の径方向外側への移動を制限している。さらに、
フロート体１１３は軸方向に長く延びる軸方突出部１１
３ｄを有している。この軸方向突出部１１３ｄは、スプ
リング１２０，１２１に対して軸方向に全面的に当接し
ている。

【００３３】係合凹部１０２ｅ，１０３ｄ，１０４ｄに
は、スプリングシート１１１が配置されている。スプリ
ングシート１１１は、図８に詳細に示すように、当接部
１１１ａと係合部１１１ｂと挿入部１１１ｃとからなる
部材である。当接部１１１ａは軸方向に長く延び大コイ
ルスプリング１２０及び小コイルスプリング１２１の円
周方向両端に当接している。挿入部１１１ｃは、当接部
１１１ａから延び、小コイルスプリング１２１内に挿入
されている。係合部１１１ｂは当接部１１１ａから挿入
部１１１ｃとは反対側に延び、係合凹部１０２ｅ内に挿
入されている。プレート１０３，１０４の係合凹部１０
３ｄ，１０４ｄはそれぞれスプリングシート１１１の当
接部１１１ａに係合している。この状態で、スプリング
シート１１１の係合部１１１ｂはプレート１０３，１０
４間に挟まれた状態になっている。すなわち、スプリン
グシート１１１は円周方向にはプレート１０３，１０４
及びフランジ１０２から離脱は可能であるが、径方向及
び軸方向には移動不能になっている。

【００３４】クラッチプレート１０３の内周部とフラン
ジ１０２ｂの内周部との間には、第１フリクションワッ
シャー１１５が配置されている。また、フランジ１０２
ｂとリテーニングプレート１０４の内周部との間には、
フランジ１０２ｂ側から第２フリクションワッシャー１
１６，フリクションプレート１１７及びコーンスプリン
グ１１８が配置されている。第２フリクションワッシャ
ー１１６はフランジ１０２ｂの内周部に当接している。
フリクションプレート１１７はリテーニングプレート１
０４に相対回転不能に係合している。コーンスプリング
１１８はフリクションプレート１１７とリテーニングプ
レート１０４との間で圧縮された状態で配置されてお
り、フリクションプレート１１７をエンジン側に付勢
し、リテーニングプレート１０４をトランスミッション
側に付勢している。

【００３５】次に動作について説明する。摩擦フェーシ
ング１２４が例えば図示しないプレッシャープレートに
よりフライホイールに圧接されると、プレート１０３，
１０４から大コイルスプリング１２０及び小コイルスプ
リング１２１を介してフランジ１０２にトルクが伝達さ
れ、さらにハブフランジ１０２からトランスミッション
のシャフト（図示せず）にトルクが出力される。

【００３６】このクラッチディスク組立体１０１にエン
ジン側から捩じり振動が伝達されると、プレート１０
３，１０４とハブフランジ１０２とが大コイルスプリン
グ１２０及び小コイルスプリング１２１を介して周期的
な相対回転を行う。このとき、大コイルスプリング１２
０及び小コイルスプリング１２１が圧縮され、第１フリ
クションワッシャー１１５及び第２フリクションワッシ
ャー１１６がフランジ１０２ｂと両プレート１０３，１
０４との間で摩擦摺動する。これにより、捩じり角度と
トルクとの関係においてヒステリシスが生じ、捩じり振
動が減衰される。

【００３７】大コイルスプリング１２０及び小コイルス
プリング１２１には、クラッチディスク組立体１０１全
体の回転による遠心力が作用する。しかし、スプリング
シート１１１により大コイルスプリング１２０及び小コ
イルスプリング１２１は径方向外方への移動を制限され
ている。そのため、大コイルスプリング１２０は切り起
こし部１０３ｂ，１０４ｂ等に摺動しにくくなってい
る。

【００３８】スプリングシート１１１の機能についてさ
らに具体的に説明する。例えば、図６の状態からプレー
ト１０３，１０４がハブフランジ１０２に対してＲ2 側
に捩じれたとする。すると、各窓孔１０２ｃ内でのＲ2
側のスプリングシート１１１はＲ2 側に係止されたまま
であり、そのスプリングシート１１１からプレート１０
３，１０４がＲ2 側に離れる。この状態でＲ2 側の大コ
イルスプリング１２０及び小コイルスプリング１２１は
Ｒ2 側のスプリングシート１１１に係合している。一
方、Ｒ1 側のスプリングシート１１１は、プレート１０
３，１０４とともにＲ2 側に移動し、Ｒ1 側のフランジ
１０２ｂの係合凹部１０２ｅから離れる。この状態でＲ
1 側のスプリングシート１１１はＲ1 側の大コイルスプ
リング１２０及び小コイルスプリング１２１に係合して
いる。以上に説明したように、スプリングシート１１１
はプレート１０３，１０４に対してもフランジ１０２に
対しても円周方向に離脱可能に形成されているため、両
側のコイルスプリングの径方向外方への移動を制限して
いる。その結果、大コイルスプリング７はプレート１０
３，１０４の切り起こし部１０３ｂ，１０４ｂに摺動し
にくくなり、それら部材の磨耗が少なくなる。

【００３９】また、フロート体１１３には軸方向突出部
１１３ｄが形成されているため、大コイルスプリング１
２０はは軸方向にわたってフロート体１１３に支持され
ている。これにより、圧縮時に大コイルスプリング１２
０が軸方向に折れ曲がる等の変形が少なくなる。その結
果、大コイルスプリング１２０が他の部材に干渉しにく
くなり、それら部材の磨耗が少なくなる。

【００４０】

【発明の効果】本発明に係るダンパーディスク組立体で
は、第１回転部材と第２及び第３回転部材が相対回転す
るときにコイルスプリングの円周方向両端は常にスプリ
ングシートに係合し、径方向外方への移動を制限されて
いる。その結果、コイルスプリングは第１回転部材や第
２回転部材等の他の部材に摺動しにくくなり、それら部
材の磨耗が少なくなる。

【００４１】一対のコイルスプリングを１つの窓孔内に
直列に配置したダンパーディスク組立体では、第１回転
部材と第２及び第３回転部材が相対回転するときに一対
のコイルスプリングの円周方向外側端は、常にスプリン
グシートに係合し、径方向外側への移動を制限されてい
る。その結果、一対のコイルスプリングは第１回転部材
や第２回転部材等の他の部材に摺動しにくくなり、それ
ら部材の磨耗が少なくなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施形態としてのクラッチディス
ク組立体の縦断面図。

【図２】クラッチディスク組立体の一部切欠き平面図。

【図３】図１の部分分解図。

【図４】図１の部分拡大図。

【図５】図４のV-V 断面図。

【図６】本発明の第２実施形態としてのクラッチディス
ク組立体の一部切欠き平面図。

【図７】図６のVII-O 断面図。

【図８】図６の部分拡大図。

【符号の説明】

１，１０１ クラッチディスク組立体 ２，１０２ ハブフランジ ３，１０３ クラッチプレート ４，１０４ リテーニングプレート ２１，１１１ スプリングシート ２１ａ，１１１ａ 当接部 ２１ｂ，１１１ｂ 係合部 ２１ｃ，１１１ｃ 挿入部 １３ フロート体 ５ａ，２０ 大コイルスプリング ５ｂ，２１ 小コイルスプリング

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平６−129443（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−166723（ＪＰ，Ａ) 実開 平５−77624（ＪＰ，Ｕ) 実開 平７−23825（ＪＰ，Ｕ) 実開 平５−89967（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F16F 15/123 F16D 11/00 - 23/14

Claims (6)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】窓孔を有する第１回転部材と、 前記窓孔内に配置されたコイルスプリングと、 前記第１回転部材に軸方向に対向して配置され、前記コ
   イルスプリングの円周方向両端を支持する支持部を有す
   る第２回転部材と、 前記第１回転部材を前記第２回転部材との軸方向間に挟
   むように配置され、前記第２回転部材に固定され、前記
   コイルスプリングの円周方向両端を支持する支持部を有
   する第３回転部材と、 前記コイルスプリングの円周方向両端に係合し、さらに
   前記窓孔の円周方向両端及び前記支持部の円周方向両端
   に支持された一対のスプリングシートとを備え、 前記窓孔及び前記支持部の円周方向端には、前記スプリ
   ングシートを収納するための円周方向に凹んだ凹部が形
   成され、それにより、前記コイルスプリングの円周方向
   両端は前記窓孔及び前記支持部の円周方向端に接してい
   る、 ダンパーディスク組立体。
2. 【請求項２】前記スプリングシートは、前記凹部に配置
   される係止部と、前記コイルスプリング内に延びる挿入
   部とを有している、請求項１に記載のダンパーディスク
   組立体。
3. 【請求項３】前記スプリングシートは、前記第２回転部
   材と前記第３回転部材の軸方向間に挟まれた突出部を有
   している、請求項１又は２に記載のダンパーディスク組
   立体。
4. 【請求項４】円周方向に延びる窓孔を有する第１回転部
   材と、 前記窓孔内に円周方向に並んで配置された一対のコイル
   スプリングと、 前記窓孔内で前記一対のコイルスプリング間に配置され
   たフロート体と、 前記第１回転部材に軸方向に対向して配置され、前記一
   対のコイルスプリング のそれぞれ円周方向外側端を支持
   する支持部を有する第２回転部材と、 前記第１回転部材を前記第２回転部材との軸方向間に挟
   むように配置され、前記第２回転部材に固定され、前記
   一対のコイルスプリングのそれぞれ円周方向外側端を支
   持する支持部を有する第３回転部材と、 前記一対のコイルスプリングの円周方向外側端に係合
   し、さらに前記窓孔の円周方向両端及び前記支持部の円
   周方向両端に支持された一対のスプリングシートとを備
   え、 前記窓孔及び前記支持部の円周方向端には、前記スプリ
   ングシートを収納するための円周方向に凹んだ凹部が形
   成され、それにより、前記一対のコイルスプリングの円
   周方向外側端は前記窓孔及び前記支持部の円周方向端に
   接している、 ダンパーディスク組立体。
5. 【請求項５】前記スプリングシートは、前記凹部に配置
   される係止部と、前記コイルスプリング内に延びる挿入
   部とを有している、請求項４に記載のダンパーディスク
   組立体。
6. 【請求項６】前記スプリングシートは、前記第２回転部
   材と前記第３回転部材の軸方向間に挟まれた突出部を有
   している、請求項４又は５に記載のダンパーディスク組
   立体。