JP3418132B2 - 自動二輪車用タイヤ - Google Patents

自動二輪車用タイヤ

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JP3418132B2 JP37748198A JP37748198A JP3418132B2 JP 3418132 B2 JP3418132 B2 JP 3418132B2 JP 37748198 A JP37748198 A JP 37748198A JP 37748198 A JP37748198 A JP 37748198A JP 3418132 B2 JP3418132 B2 JP 3418132B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チャタリングなど
を抑制し操縦安定性を向上した自動二輪車用タイヤに関
する。
【0002】
【従来の技術】自動二輪車用タイヤにおいては、旋回
中、路面の凹凸あるいはタイヤの弾性変形などに起因し
てタイヤが路面から細く飛び跳ねるような現象、いわゆ
るチャタリング現象が発生することがある。このような
チャタリング現象は、自動二輪車レースなど、高速旋回
走行時にしばしば見受けられ、このようなチャタリング
現象が生じてしまうと、それ以上の旋回速度を上げるこ
とができず、レース競技では致命的である他、一般走行
に際しても、ハンドル操作を損ねるなど走行時の安定性
を欠くという問題がある。
【0003】このようなチャタリング現象については、
未だ十分な力学的解明がなされてはいないものの、発明
者らの種々の実験結果では、概ねタイヤのサイドウォー
ル部に配されるサイドウォールゴムを薄くすることがそ
の抑制策として有効であることが分かった。表1には、
このような実験結果を示しており、自動二輪車用タイヤ
(サイズ:90/80−17)のサイドウォール部を、
バフ研磨により削った後、ミニサーキットにて実車によ
る高速旋回走行を行い、チャタリング、ハンドリング性
能などを評価したものである。なおバフ研磨した領域
は、図4に示す。
【0004】
【表1】
【0005】この実験結果では、サイドウォールゴムを
薄くする場合、サイドウォール部全域に亘り均一に1.
0mm研磨したもの(例2)は、良好な結果が得られるこ
とは概ね予想されていたが、例5に示すように、サイド
ウォール部の内方域のみを研磨したものも、これと同等
の性能が得られることが分かった。
【0006】ところで、タイヤのサイドウォール部を研
磨するのは、タイヤ一本づつの手作業になり能率が悪い
ため、予めサイドウォールゴムを薄くしたタイヤを加硫
金型を用いて成形することが望ましいものである。しか
しながら、例えば、生カバーにおいて、サイドウォール
ゴムを薄肉化すればするほど、加硫金型内でこの部分の
ゴムの流れが少なくなる傾向がある。また、一般に加硫
中にゴム流れが少ないと、金型内の残存空気を円滑に排
気でない傾向があり、このためベアなどの成形不良が生
じやすいという問題があった。
【0007】本発明は、以上のような問題点に鑑み案出
なされたもので、サイドウォール部の内方域の輪郭線を
改善することを基本として、サイドウォールゴムを薄肉
化してもベアなどの加硫不良を低減でき、ひいては耐チ
ャタリング性能を向上することが可能な自動二輪車用タ
イヤを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、トレッド面
が、タイヤ半径方向外側に凸で湾曲するとともにその外
端となるトレッド端E、E間の距離であるトレッド巾T
Wがタイヤ最大巾をなす自動二輪車用タイヤであって、
正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した正規内圧
状態におけるタイヤ子午線断面において、ビード部が前
記正規リムのリムフランジと離間する離間点P1から、
ビードべースラインBLと前記トレッド端Eとの間のタ
イヤ半径方向距離であるトレッド端高さTHの少なくと
40〜65%の距離hを前記ビードベースラインから
タイヤ半径方向外側に隔てるサイドウォール部の外表面
の位置P2までのサイドウォール内方域の輪郭線が、実
質的に直線、又はタイヤ内腔側へ凹んだ凹円弧をなすこ
とを特徴とするものである。
【0009】従来の一般的な自動二輪車用タイヤの輪郭
線(正規内圧状態)を図4に示している。このように、
従来のものでは、サイドウォール部aの内方域bの輪郭
線は、タイヤ軸方向外側に凸となる凸円弧dで形成され
ている。また図5に示す如く、この凸円弧dの部分を成
形する加硫金型mの成形面m1も、これとほぼ同形状の
輪郭線を有している。このように、タイヤをリム組みし
正規内圧を充填した正規内圧状態におけるタイヤの外表
面の輪郭線は、これを加硫成形する金型の成形面の輪郭
線とほぼ対応している。
【0010】ところが、このような従来タイヤでは、図
5に示す如く、生カバーeを加硫金型にて加硫する際、
タイヤ内腔i側からブラダーjを介して圧力が加えられ
るが、このときサイドウォール部aのタイヤ半径方向の
両側f、gが加硫金型の成形面m1に先に当接してしま
うため、これらの間に空気が閉じこめられやすく、しか
もサイドウォール部aの中央部分cは成形面m1との接
触圧力も低くなりがちであるため、この部分のゴム流れ
が生じ難い。つまり、ゴム流れを利用してサイドウォー
ルゴムを薄肉化するのは困難である。また、生カバーの
サイドウォールゴムを薄くした場合にはさらにゴム流れ
量自体が少なくなるため、空気をエアベントなどに押し
出す能力がさらに低下し、より成形不良が生じやすいも
のであった。
【0011】これに対し、本発明ではタイヤのサイドウ
ォール内方域の輪郭線が、実質的に直線、又はタイヤ内
腔側へ凹んだ凹円弧として、従来と全く逆の構成を採用
している。このため、加硫金型もこのサイドウォール内
方域に対応した直線、又はタイヤ内腔側へ凸となる凸円
弧の成形面を有することとなる。このような場合、図2
に示す如く生カバーe′を加硫金型Mにて加硫する段階
では、サイドウォール部のタイヤ半径方向の内方域が、
実線→一点鎖線→二点鎖線のように、そのタイヤ半径方
向の内側から徐々に加硫金型Mの成形面M1に当接する
ことができ、これにより成形面M1との接触圧力も十分
高く確保される他、タイヤ半径方向外側Aへとゴム流れ
を促進でき、空気の残存が防止される。従って、サイド
ウォールゴムを半径方向外側Aと押し流すことにより、
ベアなどの加硫不良を低減しつつサイドウォールゴムを
薄くでき、ひいては耐チャタリング性能を向上しうる。
【0012】なお前記サイドウォール内方域の上限を定
める前記距離hは、好ましくは前記トレッド端高さTH
の45%以上、好ましくは45〜50%の範囲とするこ
とが望ましい。
【0013】また前記「正規リム」とは、タイヤが基づ
いている規格を含む規格体系において、当該規格がタイ
ヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば
「標準リム」、TRAであれば "Design Rim" 、或いは
ETRTOであれば "Measuring Rim" となる。また、
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規
格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧
であり、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAで
あれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATI
ON PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "
INFLATION PRESSURE" とする。
【0014】
【発明の実施の形態】以下本発明の一実施例を図面に基
づき説明する。図1には、自動二輪車用タイヤ(以下、
単に「タイヤ」ということがある)を正規リムJにリム
組みしかつ正規内圧を充填した正規内圧状態におけるタ
イヤ子午線断面を例示している。図において、タイヤ1
は、トレッド部2の表面であるトレッド面2aが、タイ
ヤ半径方向外側に凸で湾曲するとともにその外端となる
トレッド端E、E間の距離であるトレッド巾TWがタイ
ヤ最大巾をなす。このようなトレッド面2aは、旋回時
においてキャンバー角に応じたキャンバースラストを好
適に発生させる。
【0015】前記トレッド端Eは、正規リムJのリム径
位置を通るタイヤ軸方向線であるビードべースラインB
Lからの高さであるトレッド端高さTHが、例えばタイ
ヤ断面高さHの0.5〜0.65倍に設定することがで
き、本例では約0.58倍としたものを例示している。
【0016】またタイヤ1は、トレッド部2からサイド
ウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るト
ロイド状カーカス6と、そのタイヤ半径方向外側かつト
レッド部2の内方に配されたベルト層7とを具えたラジ
アル構造をなすものが例示される。このカーカス6は、
本実施形態では、前記一対のビードコア5、5間を跨っ
てのびる本体部6aと、この本体部の両端に連なりかつ
前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に
向けて折り返された折返し部6bを一体に有する1枚以
上、本例では2枚のカーカスプライ6Aから形成され
る。前記カーカスプライ6Aは、タイヤ赤道Cに対して
80〜90度の角度で傾斜配列したカーカスコードを具
える。このカーカスコードには、本例ではナイロンコー
ドが用いられるが、レーヨン、ポリエステル、アラミド
他の有機繊維コードも好ましく用いうる。
【0017】前記ベルト層7は、本実施形態では2枚の
ベルトプライ7A、7Bからなり、各ベルトプライはナ
イロン、レーヨン、ポリエステル、又はアラミドからな
る有機繊維コード又はスチールコードからなるベルトコ
ードを、タイヤ赤道Cに対して10〜45°程度の角度
で傾けて配列したカットプライからなる。なおベルトコ
ードは、前記ベルトプライ間では互いに交差する向きに
配置される。
【0018】またタイヤ1は、図1に示す正規内圧状態
において、ビード部4が正規リムJのリムフランジJF
と離間する離間点P1から、前記トレッド端高さTHの
少なくとも40%の距離hを該ビードベースラインBL
からタイヤ半径方向外側に隔てるサイドウォール部3の
外表面3aの位置P2までのサイドウォール内方域Yの
輪郭線Xが、本例ではタイヤ内腔i側へと凹んだ凹円弧
をなすものを例示している。
【0019】このようなサイドウォール内方域Yは、図
2に示すように、加硫金型Mの前記内方域Yにほぼ対応
した成形面M1により形成される。すなわち、この成形
面M1は、その輪郭線が、タイヤ内腔i側へ凸となる凸
円弧で形成される。このような場合、図2に示す如く生
カバーe′を加硫金型Mにて加硫する段階では、タイヤ
内腔側からの圧力により、サイドウォール内方域Yの半
径方向内側から半径方向外側へと徐々に前記成形面M1
に当接することができる。これにより、タイヤ生カバー
e′と成形面M1との間の空気などを効率よく半径方向
外側Aへと押し出すことができる他、該内方域Yと成形
面M1とが十分大きな圧力により接触しうる。
【0020】従って、サイドウォール内方域Yのゴム流
れを促進でき、仕上がりタイヤにおいてこの部分のゴム
厚さを減じることが可能となり、かつ空気の残存も防止
されることにより成形不良も抑制しうる。つまり、本発
明の自動二輪車用タイヤは、ベアなどの加硫不良を低減
しつつサイドウォールゴムを薄くでき、従って、耐チャ
タリング性能を向上しうる。
【0021】なお、前記サイドウォール内方域Yでは、
このような輪郭線Xを採用したことにより、前記成形不
良を生じることなしに、例えば従来3.5mm程度であっ
た前記内方域の最小ゴム厚さtを2.0mm以下、より好
ましくは1.0〜1.5mmにまで薄肉化することが可能
になった。なお前記最小ゴム厚さtは、カーカス6の外
面からの最小厚さとして測定する。
【0022】ここで、前記サイドウォール内方域Yのタ
イヤ半径方向の上限となる点P2を定める前記距離h
が、前記トレッド端高さTHの40%未満では、凹円弧
をなすサイドウォール内方域Yが十分な範囲で確保でき
ず、前記成形不良を低減する効果が得られがたい。逆
に、サイドウォール部内方域のタイヤ半径方向に広がり
過ぎると、加硫成形中のゴムの逃げ場が少なくなって該
内方域のゴム厚さを減じる効果に劣る他、自動二輪車用
タイヤの本来有すべきサイドウォール部の撓み特性など
が低下する傾向がある。かかる観点より、前記距離h
は、例えば前記トレッド端高さTHの40〜65%
ましくは40〜60%、より好ましくは45〜60%、
さらに好ましくは例えばハンドリング性能の向上のため
には45〜50%、例えば耐チャタリング性能からは
0〜60%の範囲とするのが望ましい。
【0023】また前記サイドウォール内方域Yを凹円弧
にて形成するとき、単一の円弧、又は複数の円弧を組み
合わせて形成することができる。単一の円弧にてこれを
形成するときには、例えばその曲率半径Raは、前記距
離hとの関係において、下記式(1)の範囲とするのが
好ましい。 Ra≧0.05×(h)2 …(1)
【0024】前記曲率半径Raが、0.05×(h)2
未満になると、曲率半径が過小となって、タイヤ半径方
向に十分なサイドウォール部内方域Yを確保するのが困
難な傾向がある。
【0025】また、本実施形態では、前記サイドウォー
ル部内方域P2のタイヤ半径方向外側には、タイヤ軸方
向外側に向けて凸となるサイドウォール外方域Zが連な
るものを例示している。このとき、サイドウォール内方
域Yと外方域Zとの間を小円弧を介して継ぐこともでき
る。
【0026】図3には、本発明の他の実施形態を示して
いる。この例では、前記サイドウォール内方域Yの輪郭
線Xが実質的に直線をなすものを例示している。このよ
うな実施形態においても、上述した作用を同様に奏する
ことができる。なお「実質的に直線をなす」とは、前記
サイドウォール内方域Yの半径方向の80%以上を占め
る主要部が直線をなし、前記離間点P1との間に小円弧
などを介在させるような態様を包含する趣旨である。
【0027】
【実施例】図1に示す構造をなすタイヤサイズ90/8
0−17のタイヤを表1に示す仕様にて試作するととも
に、該試作タイヤを17×MT2.15のリムに内圧2
50kPaを充填してサーキットにて実車走行テストを
行ない、耐チャタリング性能、ハンドリング性能をそれ
ぞれドライバーによるフィーリングによって5点法で評
価した。点数が高いほど優れており、2.5点以上を合
格レベルとした。テストの結果などを表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、サイ
ドウォール内方域の輪郭線を、直線、又はタイヤ内腔側
へ凹んだ凹円弧に限定したことにより、加硫成形中にお
いてこの部分での大きなゴム流れを確保することがで
き、空気の残存を防止しつつサイドウォールゴムを薄く
できる。従って、ベアなどの加硫不良を低減しつつ耐チ
ャタリング性能を向上しうる自動二輪車用タイヤを提供
しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すタイヤの子午線断面図
(正規内圧状態)である。
【図2】その生カバーを金型投入した時の状態を示す部
分断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示すサイドウォール部
の輪郭図である。
【図4】従来の自動二輪車用タイヤの断面図である。
【図5】その生カバーを金型投入した時の状態を示す部
分断面図である。
【符号の説明】
2 トレッド部 3 サイドウォール部 4 ビード部 5 ビードコア 6 カーカス 7 ベルト層 Y サイドウォール内方域

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】トレッド面が、タイヤ半径方向外側に凸で
    湾曲するとともにその外端となるトレッド端E、E間の
    距離であるトレッド巾TWがタイヤ最大巾をなす自動二
    輪車用タイヤであって、 正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した正規内圧
    状態におけるタイヤ子午線断面において、 ビード部が前記正規リムのリムフランジと離間する離間
    点P1から、 ビードべースラインBLと前記トレッド端Eとの間のタ
    イヤ半径方向距離であるトレッド端高さTHの少なくと
    40〜65%の距離hを前記ビードベースラインから
    タイヤ半径方向外側に隔てるサイドウォール部の外表面
    の位置P2までのサイドウォール内方域の輪郭線が、実
    質的に直線、又はタイヤ内腔側へ凹んだ凹円弧をなすこ
    とを特徴とする自動二輪車用タイヤ。
  2. 【請求項2】前記距離hは、前記トレッド端高さTHの
    45〜50%である請求項1記載の自動二輪車用タイ
    ヤ。
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