JP3417164B2 - アルカリ二次電池の電極 - Google Patents

アルカリ二次電池の電極

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、ニッケル−カド
ミウム電池、ニッケル−水素電池などのアルカリ二次電
池の電極に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、ニッケル−カドミウム電池、ニ
ッケル−水素電池などのアルカリ二次電池の電極は、図
2に示されるように、Ni金属からなる骨格部分2が網
目状に連続的に三次元的につながって構成した空孔部分
1を有するスポンジ状多孔質金属基体に、活物質粉末を
1〜2%のCMC(カルボキシメチルセルロース)また
はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含む粘性
水溶液と混練してペースト状としたものを含浸させ、乾
燥後、圧延して製造される。この従来のアルカリ二次電
池の電極を製造するための空孔部分1と骨格部分2から
なるスポンジ状多孔質金属基体は、発泡ウレタンにNi
メッキしたのち、発泡ウレタンを燃焼させて得られる。
この発泡ウレタンを燃焼させて得られたスポンジ状多孔
質金属基体は、通常、平均孔径:400〜600μm、
気孔率:93〜97%、比表面積:40cm2 /cm3
を有する。 【0003】アルカリ二次電池のうち、ニッケル−カド
ミウム電池では正極活物質として水酸化ニッケル粉が、
負極活物質として水酸化カドミウム粉が使用され、一
方、ニッケル−水素電池では正極活物質として水酸化ニ
ッケル粉が、負極活物質として水素吸蔵合金粉末が使用
されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】図2に示されるスポン
ジ状多孔質金属基体の空孔部分1に活物質3を充填した
従来の電極を内蔵した密閉型アルカリ二次電池に充放電
を繰り返すと、その特性は次第に劣化し、その充放電使
用寿命は500〜1000回が限度であった。この密閉
型アルカリ二次電池の劣化の原因は、セパレータ中の電
解液枯渇による内部抵抗の上昇によるものであり、この
電解液の枯渇は、合金腐食による電解液の固定化、およ
び正極の膨潤に伴う電解液分布の変化などによって引き
起こされると言われている。 【0005】合金腐食とは、電池の缶などの金属部材の
腐食、およびニッケル−水素電池の場合には水素吸蔵合
金の腐食などであり、腐食によって電解質の一部が腐食
生成物となって固定化し電解液量そのものが減少する現
象である。 【0006】また、正極の膨潤とは、充放電を繰り返す
と、正極活物質の水酸化ニッケルが充電時:β−NiO
OH、放電時:β−Ni(OH)2 の結晶構造変化を経
てγ−NiOOHが生成するが、その際に正極活物質粉
末表面にメソ孔と呼ばれる微細孔が形成され、毛細管現
象によってメソ孔に電解液が浸透し、電解液が正極に偏
在するようになり、セパレータ中の電解液が減少するこ
とによって起こるものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、充放電を
繰り返して使用するアルカリ二次電池の寿命を従来より
も一層延ばすべく研究を行った結果、図1に示すよう
に、空孔部分1と骨格部分2からなるスポンジ状多孔質
金属基体の骨格部分2を、空孔部分1の孔径よりも微細
な微細空孔11を有する微細多孔質焼結金属で構成し、
この微細多孔質焼結金属で構成された骨格部分2に電解
液保持性能を持たせ、前述の正極活物質粉末表面にメソ
孔が形成されて比表面積が増加することによって消費さ
れる電解液をあらかじめスポンジ状多孔質金属基体の微
細多孔質焼結金属からなる骨格部分2の微細空孔11に
毛細管力により保持させておき、電解液が不足すると骨
格部分2の微細空孔11の電解液が適宜染み出し、それ
によってセパレー中の電解液の枯渇を防止し、アルカリ
二次電池の長寿命化を達成することができるという知見
を得たのである。 【0008】この発明は、かかる知見にもとづいて成さ
れたものであって、基体全体の気孔率:90〜98%を
有しかつ空孔部分1と骨格部分2からなるスポンジ状多
孔質金属基体の空孔部分1に活物質3が充填されたアル
カリ二次電池の電極において、前記骨格部分2は、平均
微細孔径が0.5〜20μmの微細空孔11を有し気孔
率が10〜55%である微細多孔質焼結金属からなるア
ルカリ二次電池の電極に特徴を有するものである。この
発明のアルカリ二次電池の電極を構成する骨格部分が微
細多孔質焼結金属からなるスポンジ状多孔質金属基体の
比表面積は300〜1500cm2 /cm3 であって、
従来の発泡ニッケルによるスポンジ状多孔質金属基体の
比表面積がせいぜい40cm2 /cm3 であるに対し、
格段に優れている。 【0009】この発明のアルカリ二次電池の電極を構成
するスポンジ状多孔質金属基体の骨格部分の平均微細孔
径が0.5μm未満では毛細管力が大きくなり過ぎて電
解液保持能力が大きくなり過ぎ、電解液の染み出しが悪
くなるので好ましくなく、一方、平均微細孔径が20μ
mを越えると、電解液保持能力が不足して好ましくな
い。また、骨格部分の微細多孔質焼結金属の気孔率が1
0%未満では電解液保持量が不十分であり、一方、55
%を越えると、スポンジ状多孔質金属基体としての強度
が不足するので好ましくない。したがって、この発明の
アルカリ二次電池の電極の骨格部分を微細多孔質焼結金
属で構成したスポンジ状多孔質金属基体の骨格部分の平
均微細孔径は0.5〜20μm(一層好ましくは、1〜
5μm)、気孔率は10〜55%(一層好ましくは、1
5〜35%)に定めた。 【0010】この発明のアルカリ二次電池の電極を構成
する骨格部分が微細多孔質焼結金属からなるスポンジ状
多孔質金属基体は、通常、Niが使用されるが、特にN
iに限定されるものではなく、耐食性および導電性に優
れた金属または合金であればいかなる組成のものでもよ
い。またこの発明のアルカリ二次電池の電極を構成する
骨格部分が微細多孔質焼結金属からなるスポンジ状多孔
質金属基体全体の気孔率は90〜98%(一層好ましく
は、95〜97%)、比表面積は300〜1500cm
2 /cm3 (一層好ましくは、400〜800cm2
cm3 )であることが好ましい。 【0011】 【発明の実施の形態】平均粒径:9μmの純Ni粉末、
水溶性メチルセルロース、グリセリン、界面活性剤、ヘ
キサン、および水を表1に示す配合組成に混合してスラ
リーとし、ドクターブレード法により厚さ:0.4mm
に成形し、ついで温度:40℃、湿度:95%の雰囲気
中、表1に示す時間保持して発泡処理を行ったのち、ヒ
ーター温度:150℃に設定した遠赤外線乾燥機中で水
分を乾燥してグリーンシートを製造し、ついでグリーン
シートを空気中、500℃に1時間保持して脱バインダ
ー処理を行った後、H2 −N2 (5〜95%)の混合ガ
ス雰囲気中、表1に示す温度、時間に保持して焼結し、
微細多孔質焼結金属からなる骨格部分を有するスポンジ
状多孔質金属基体a〜jを製造した。得られたスポンジ
状多孔質金属基体a〜jの骨格部分の平均微細孔径およ
び気孔率、並びにスポンジ状多孔質金属基体全体の気孔
率および比表面積を測定し、その結果を表1に示した。
ここで骨格部分の平均微細孔径および気孔率は試料断面
を画像解析して測定し、スポンジ状多孔質金属基体全体
の気孔率は試料の寸法および重量から測定し、スポンジ
状多孔質金属基体全体の比表面積はBET法で測定し、
体積当たり数値に換算した(BET法では重量当たりの
比表面積値が得られる。)。 【0012】比較のために、平均孔径:500μmの発
泡ウレタンに、厚さ:20μmのNiを無電解メッキ
し、ついで空気中、500℃に0.5時間保持した後、
2 −N2 (5〜95%)の混合ガス雰囲気中、950
℃に1時間に保持してウレタン成分を燃焼させ、従来発
泡ニッケルを製造し、得られた従来発泡ニッケルの全体
の気孔率および比表面積を表1に示した。 【0013】 【表1】 【0014】次に、平均粒径:10μmの水酸化Ni粉
末、平均粒径:18μmの水酸化Co粉末、カルボキシ
メチルセルロース、テフロン粉末、および水を重量比で
100:5:0.5:4:41の割合で混合してペース
ト状とし、このペースト状混合物を表1のスポンジ状多
孔質金属基体a〜jに塗布して浸透させ、大気中、温
度:105℃に2時間保持して乾燥した後、プレス圧延
して厚さ:0.5mmとし、ついで10cm×4cmに
切り出して、本発明アルカリ二次電池の正極電極(以
下、本発明電極という)1〜10を製造した。得られた
本発明電極1〜10の水酸化Ni粉末の充填量、骨格部
分の平均微細孔径および気孔率を測定し、その結果を表
2に示した。さらに比較のために、表1に示した従来発
泡ニッケルを用い、同様にして従来アルカリ二次電池の
正極電極(以下、従来電極という)を製造し、水酸化N
i粉末の充填量を測定し、その結果を表2に示した。 【0015】 【表2】【0016】これら本発明電極1〜10および従来電極
を正極とし、所定の位置に端子をスポット溶接し、公知
のカドミウム負極と公知のセパレータを介して倦巻し、
35%水酸化カリウム水溶液電解液とともに封缶して単
三型サイズのニッケル−カドミウム二次電池を製造し
た。 【0017】得られた全てのニッケル−カドミウム二次
電池について、まず、10時間充電、2時間放電の条件
の充放電を5回繰り返すことによって初期活性化を施
し、ついで、5時間充電、2時間放電の条件の完全充放
電を2,000回繰り返すことにより寿命試験を行っ
た。この寿命試験において、それぞれの電池の寿命試験
第1回の放電容量および寿命試験第2,000回後の放
電容量をそれぞれ測定し、それらの結果を表3に示し
た。なお、寿命試験が2,000回に到達できずに放電
容量が第1回の放電容量の80%を下回った時点をその
電池の寿命とし、寿命試験を中止してその電池について
の寿命回数を表3に示した。また寿命試験後の電池を解
体し、セパレータに含まれる電解液の含浸率を測定し、
それらの結果を表3に示した。 【0018】 【表3】【0019】表3に示される結果から、本発明電極1〜
10を組み込んだニッケル−カドミウム二次電池1〜1
0は、従来電極を組み込んだニッケル−カドミウム二次
電池11に比べて、寿命回数が多く、長寿命になること
が明らかである。 【0020】なお、この発明の実施の形態では、本発明
電極1〜10をニッケル−カドミウム二次電池に組み立
てて寿命試験を行ったが、表2のスポンジ状多孔質金属
基体a〜jからなる本発明電極1〜10をニッケル−水
素二次電池に組み込んで寿命試験を行っても長寿命化
し、さらに表1のスポンジ状多孔質金属基体a〜jをニ
ッケル−カドミウム二次電池の負極またはニッケル−水
素二次電池の負極に用いても、長寿命化が達成できるこ
とが分かった。 【0021】 【発明の効果】上述のように、この発明のアルカリ二次
電池の電極を用いると、(1)アルカリ二次電池内部に
電解液が不足すると、微細多孔質焼結金属からなる骨格
部分の微細孔に保持された電解液が染み出してきて、電
解液を補充するので電池の寿命が延びる、(2)密閉型
アルカリ二次電池の缶には負極が接していて、缶の腐食
によって電解液が固定されて不足すると、負極に用いた
スポンジ状多孔質金属基体の骨格部分の微細孔に保持さ
れた電解液が染み出してきて、電解液を補充するので電
池の寿命が延びる、(3)正極活物質粉末表面に形成さ
れるメソ孔が増加して膨潤が開始すると、正極に用いた
スポンジ状多孔質金属基体の微細多孔質骨格部分からそ
の膨潤に使用される分の電解液が染み出してきて電解液
の枯渇を防止するので、電池が長寿命化する、などのす
ぐれた効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】 【図1】この発明のアルカリ二次電池の電極の断面構造
を示す説明図である。 【図2】従来のアルカリ二次電池の電極の断面構造を示
す説明図である。 【符号の説明】 1 空孔部分 2 骨格部分 3 活物質 11 微細空孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 駒田 紀一 埼玉県大宮市北袋町1−297 三菱マテ リアル株式会社 総合研究所内 (56)参考文献 特開 平5−247502(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/80 B22F 5/00

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 基体全体の気孔率:90〜98%を有し
    かつ空孔部分と骨格部分からなるスポンジ状多孔質金属
    基体の空孔部分に活物質が充填されたアルカリ二次電池
    の電極において、 前記骨格部分は、平均微細孔径が0.5〜20μmの微
    細空孔を有し気孔率が10〜55%である微細多孔質焼
    結金属からなることを特徴とするアルカリ二次電池の電
    極。
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