JP3417061B2 - 貴金属積層絶縁性基板の製造法 - Google Patents

貴金属積層絶縁性基板の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、貴金属積層絶縁性基板
の製造法に関する。更に詳しくは、センサ用電極として
有効に使用される貴金属積層絶縁性基板の製造法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来から、各種センサに用いられる電極
には、大気中で酸化物を形成し難く、安定性の高い金、
白金、パラジウム等の貴金属が電極材料として用いられ
ている。これらの貴金属電極材料は、絶縁性基板、一般
にはSiO2、Al2O3等の酸化物基板上に薄膜状に堆積さ
れ、電極を形成するが、酸化物基板と貴金属薄膜とは付
着性に乏しく、加工途中あるいは経時的に剥がれるとい
う問題がある。その原因については、これらの酸化物と
貴金属との間で金属酸化物を形成し難いためであるとい
う説もあるが定かではない。
【0003】これら両者間の付着性を改善する方法とし
ては、酸化物基板との付着力の強い金属層を設けること
が一般に行われている。このとき、それが電極として用
いられるセンサの作製段階あるいは使用段階において高
温に曝されることがなければそこに格別の配慮はいら
ず、付着力の強いクロムを利用することが多い。
【0004】しかしながら、一部のセンサではセンサの
作製段階においてアニールが施され、また温度センサで
は高温で使用されることが多く、ガスセンサに至っては
高温動作しなければならないなど、電極部分を含めたセ
ンサが高温に曝される場合も非常に多い。
【0005】ところで、付着力の強い金属層を介在させ
た貴金属薄膜電極が高温に曝されると、金属相互間の拡
散が顕著となり、抵抗率に変化を及ぼすようになる。更
に、雰囲気が大気などの酸化性雰囲気の場合には、貴金
属中に拡散した金属の酸化が起こり、これもまた抵抗率
に影響を及ぼすようになる。従って、付着力の強い層を
電極と同材質の貴金属で構成させることができれば、高
温での相互拡散、酸化等の問題もなくなることになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、酸化
物基板等の絶縁性基板上に貴金属薄膜を電極として積層
させるに際し、その間に付着力の強い層を電極と同材質
の貴金属で構成させる貴金属積層絶縁性基板の製造法を
提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる本発明の目的は、
絶縁性基板上を、 (1)塩化白金酸またはその塩あるいは(2)(NH4)2PdCl4
たは[Pd(NH3)4]Cl2・H2Oを緩衝液中に溶解させた溶液と
接触、吸着させた後、約600〜800℃の温度に保持し、次
いで絶縁性基板上に貴金属を堆積させた後、約700〜900
℃の温度に保持して貴金属積層絶縁性基板を製造するこ
とによって達成される。
【0008】絶縁性基板としては、アルミナ、シリカ、
石英、ガラスなどの板状体が一般に用いられる。これら
の絶縁性基板は、(1)または(2)の錯体化合物を任意のpH
の緩衝液中に溶解させた溶液とまず接触させる。 (1)塩化白金酸またはその塩 H2PtCl6・6H2O [ヘキサクロロ白金(IV)酸・6水和物] (NH4)2PtCl6 [ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウム] K2PtCl6 [ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム] (NH4)2PtCl5 [ペンタクロロ白金(III)酸アンモニウム] (NH4)2PtCl4 [テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム] [Pt(NH3)4]Cl2 [テトラアンミン白金(II)塩化物] (2) (NH4)2PdCl4 [テトラクロロパラジウム(II)酸アン
モニウム] [Pd(NH3)4]Cl2・H2O [テトラアンミンパラジウム(II)塩
化物・1水和物]
【0009】これらのPtまたはPdの錯体化合物は、それ
らの絶縁性基板への吸着に伴いpHが変化するため、緩衝
液中に約10-3〜100モル/L、好ましくは約10-2〜10-1
ル/Lの濃度で溶解させた溶液(貴金属錯体溶液)として用
いられる。用いられる緩衝液としては、上記各種のPtま
たはPdの錯体化合物において、例えばアンモニウム塩に
ついては塩基性領域で、また塩化物については酸性領域
でそれぞれ沈殿を生ずることがあり、このような事態を
避けるため、それぞれに適したpHのものが選択される。
【0010】絶縁性基板と貴金属錯体溶液との接触は、
一般に貴金属錯体溶液を絶縁性基板を浸漬させた同じpH
の緩衝液中に滴下することによって行われるが、貴金属
錯体溶液中に直接絶縁性基板を浸漬することによっても
行うことができる。この際の接触は、一般に室温下で行
われるが加温条件下でも行うことができ、ただし貴金属
錯体化合物の分解が懸念される約80℃以下に設定され
る。また、それの接触時間は、吸着が約1時間程度で飽
和に達すると考えられるので、少なくとも1時間程度は
必要と考えられる。
【0011】このような接触処理後溶液はロ別され、絶
縁性基板を水洗し、約80〜110℃で約1時間程度乾燥さ
せた後、約600〜800℃の温度に約0.5〜5時間程度保持す
る。これ以下の温度では、系外から付着してきたと考え
られる有機質成分を熱分解して除去することができず、
一方これ以上の高温では、貴金属の蒸発が懸念されるよ
うになる。
【0012】次いで、絶縁性基板上には電極を形成させ
る貴金属である金、白金、パラジウム等の堆積が行わ
れ、その後約700〜900℃の温度に保持される。貴金属の
堆積は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレー
ティング法等任意の方法で行うことができる。その後の
高温処理においては、約700℃以下では形成された貴金
属薄膜の付着強度が十分ではなく、一方約900℃以上で
は貴金属薄膜自身の粒成長が著しくなる。
【0013】
【発明の効果】酸化物基板等の絶縁性基板上に貴金属薄
膜を電極として積層させるに際し、電極と同材質の貴金
属(ただし、貴金属である限り異なる材質のものであっ
てもよい)で付着力の強い層をその間に形成させること
により、これを高温雰囲気に曝した場合においても、電
極形成貴金属との相互拡散や酸化等に伴う抵抗率変化の
問題を解消させることができ、従ってこのようにして
縁性基板上に積層された貴金属膜は、温度センサ、ガス
センサを始めとする各種センサの電極として有効に使用
される。
【0014】
【実施例】次に、実施例について本発明を説明する。
【0015】実施例1 H2PtCl6・6H2Oを、pH1の緩衝液(HCl-KCl混合物水溶
液)、pH3の緩衝液(HCl-フタル酸水素カリウム混合物水
溶液)、pH5の緩衝液(フタル酸水素カリウム-NaOH混合物
水溶液)またはpH7の緩衝液(KH2PO4-Na2HPO4混合物水溶
液)の各緩衝液中に、4×10-3モル/Lの濃度で溶解させ
た。これらの各溶液を、洗浄したアルミナ平板(10×10
×0.65mm)を浸漬させた等量の同じpHの緩衝液中に滴下
し、滴下終了後1時間室温で撹拌した。その後、溶液を
ロ別し、アルミナ平板を蒸留水で洗浄、110℃で1時間乾
燥した後、700℃の大気中に5時間保持した。
【0016】得られたH2PtCl6吸着アルミナ平板の表面
に、基板温度室温、蒸着速度0.2mm/秒の条件下で白金を
真空蒸着させ、膜厚300nmの白金薄膜を堆積させた後、
これを700℃の大気中に5時間保持した。この白金積層膜
について、引張試験による付着力を測定(平板の薄膜面
側にエポキシ系接着剤を用いて直径2.5mmのAlピンを接
着し、平板に対して垂直方向に引張り、平板から薄膜が
剥がれたときの力を測定)すると、次のような結果が得
られた。緩衝液pH 付着力(kgf/cm2) 1 286 3 241 5 99 7 185
【0017】なお、白金薄膜蒸着後の高温大気中での保
持を行わないものの付着力は、いずれも0であった。
【0018】実施例2 (NH4)2PtCl6を、pH1の緩衝液、pH3の緩衝液、pH5の緩衝
液(以上実施例1のそれらと同じ)またはpH7の緩衝液
(クエン酸-Na2HPO4混合物水溶液)中に、4×10-3モル/L
の濃度で溶解させた。これらの各溶液を、洗浄したアル
ミナ平板を浸漬させた等量の同じpHの緩衝液中に滴下
し、滴下終了後1時間25℃の恒温槽中で撹拌した。その
後、溶液をロ別し、アルミナ平板を蒸留水で洗浄、110
℃で1時間乾燥した後、700℃の大気中に5時間保持し
た。
【0019】得られた(NH4)2PtCl6吸着アルミナ平板に
ついて、実施例1と同様に白金の真空蒸着を行い、膜厚
300nmの白金薄膜を積層させたアルミナ平板を得、これ
を700℃の大気中に5時間保持した。この白金積層膜につ
いて付着力の測定を行って次のような結果を得た。緩衝液pH 付着力(kgf/cm2) 1 88 3 73 5 57 7 213
【0020】実施例3 [Pt(NH3)4]Cl2を、pH7の緩衝液(実施例2のそれと同
じ)、pH9の緩衝液(ホウ酸-KCl-NaOH混合物水溶液)、pH1
1の緩衝液(NaOH-Na2HPO4混合物水溶液)またはpH13の緩
衝液(NaOH-KCl混合物水溶液)中に、4×10-3モル/Lの濃
度で溶解させた。これらの各溶液を、洗浄したアルミナ
平板を浸漬させた等量の同じpHの緩衝液中に滴下し、滴
下終了後1時間25℃の恒温槽中で撹拌した。その後、溶
液をロ別し、アルミナ平板を蒸留水で洗浄、110℃で1時
間乾燥した後、700℃の大気中に5時間保持した。
【0021】得られた[Pt(NH3)4]Cl2吸着アルミナ平板
について、実施例1と同様に白金の真空蒸着を行い、膜
厚300nmの白金薄膜を積層させたアルミナ平板を得、こ
れを700℃の大気中に5時間保持した。この白金積層膜に
ついて付着力の測定を行って次のような結果を得た。緩衝液pH 付着力(kgf/cm2) 7 72 9 67 11 39 13 105
【0022】実施例4 (NH4)2PdCl4を、pH1の緩衝液、pH3の緩衝液、pH5の緩衝
液(以上実施例1のそれらと同じ)またはpH7の緩衝液
(実施例2のそれと同じ)中に、4×10-3モル/Lの濃度で
溶解させた。これらの各溶液を、洗浄したアルミナ平板
を浸漬させた等量の同じpHの緩衝液中に滴下し、滴下終
了後1時間25℃の恒温槽中で撹拌した。その後、溶液を
ロ別し、アルミナ平板を蒸留水で洗浄、110℃で1時間乾
燥した後、700℃の大気中に5時間保持した。
【0023】得られた(NH4)2PdCl4吸着アルミナ平板に
ついて、実施例1と同様に白金の真空蒸着を行い、膜厚
300nmの白金薄膜を積層させたアルミナ平板を得、これ
を700℃の大気中に5時間保持した。この白金積層膜につ
いて付着力の測定を行って次のような結果を得た。緩衝液pH 付着力(kgf/cm2) 1 70 3 132 5 146 7 122
【0024】実施例5 実施例3において、[Pt(NH3)4]Cl2の代わりに[Pd(N
H3)4]Cl2・H2Oを用い、得られた[Pd(NH3)4]Cl2吸着アル
ミナ平板について白金積層膜の付着力を測定し、次のよ
うな結果を得た。緩衝液pH 付着力(kgf/cm2) 7 271 9 313 11 262 13 175
【0025】比較例 各実施例で用いられたアルミナ平板に膜厚300nmの白金
薄膜を堆積させた後、700℃の大気中に5時間保持して積
層させた。この白金薄膜積層アルミナ平板について白金
積層膜の付着力を測定すると、堆積後の付着力100kgf/c
m2が大気中保持後47kgf/cm2に迄低下していた。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/02 C23C 14/58 G01N 27/00 G01N 27/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絶縁性基板を、塩化白金酸またはその塩
    を緩衝液中に溶解させた溶液と接触、吸着させた後、60
    0〜800℃の温度に保持し、次いで絶縁性基板上に貴金属
    を堆積させた後、700〜900℃の温度に保持することを特
    徴とする貴金属積層絶縁性基板の製造法。
  2. 【請求項2】 絶縁性基板を、(NH4)2PdCl4または[Pd(N
    H3)4]Cl2・H2Oを緩衝液中に溶解させた溶液と接触、吸
    着させた後、600〜800℃の温度に保持し、次いで絶縁性
    基板上に貴金属を堆積させた後、700〜900℃の温度に保
    持することを特徴とする貴金属積層絶縁性基板の製造
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の方法で絶縁性基
    板上に積層された貴金属膜よりなるセンサ用電極。
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