JP3414444B2 - 固定化用器具、これを用いた生物組織の固定化法および培養法 - Google Patents

固定化用器具、これを用いた生物組織の固定化法および培養法

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JP3414444B2 JP16398593A JP16398593A JP3414444B2 JP 3414444 B2 JP3414444 B2 JP 3414444B2 JP 16398593 A JP16398593 A JP 16398593A JP 16398593 A JP16398593 A JP 16398593A JP 3414444 B2 JP3414444 B2 JP 3414444B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は動・植物細胞、微生物、
ウィルスなどの生物ないし生物組織の固定化、培養、回
収等に好適に用いることが可能な固定化(ないし培養)
用器具に関し、より具体的には、細胞、微生物等のクロ
ーニング、制癌剤等の薬物のスクリーニング、細胞のin
vitroでの形質転換の判別、細胞の分化機構および遺伝
学的解析、細胞の運動能の測定、細胞などへの外来遺伝
子の導入などに好適に用いることが可能な固定化(ない
し培養)用器具、並びにこれを用いる生物組織の固定化
方法および培養方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、細胞、微生物などの培養に、
寒天をはじめとするゲル素材が多く利用されている。こ
れらの半固体状態にあるゲル素材を培養に利用する目的
は、細胞、微生物などが相互に接触することを阻止する
こと、基質ないし基材に接着しにくい細胞、微生物を一
定位置に固定化することなどである。
【0003】寒天を培養器材(素材)として用いた典型
的な例は、細胞、微生物のクローニング法である。従来
より、細胞、微生物を寒天ゲル内あるいは寒天ゲル上に
播種してコロニーを形成させ、クローニングする方法が
行われてきた。寒天は海藻が生産する多糖類であり、ゾ
ルーゲル転移温度を有していて、該転移温度より高い温
度ではゾル状態を示し、該転移温度よりも低い温度でゲ
ル状態に変化する性質を有している。
【0004】寒天のこのような性質を利用して、上記ゾ
ルーゲル転移温度より高い温度のゾル状態で寒天を培養
器具中に流し込み、温度を該転移温度より低く下げるこ
とによりゲル化して、該ゲル上に細胞、微生物を播種し
たり、寒天がゾル状態の時に細胞、微生物を混合し、温
度を該転移温度より低い温度に下げることによって寒天
をゲル化させ、細胞、微生物を寒天ゲル内に包埋し培養
する方法が行われている。しかしながら、寒天には以下
に示すような重大な問題点がある。
【0005】1)寒天ゲルのゾル化温度は非常に高く、
約90°C近辺であるために、寒天ゾルを細胞、微生物
と混合する際に、該細胞等は熱的な損傷を受ける。また
培養した細胞、微生物を寒天ゲルから回収あるいは継代
するために、該ゲルをゾル状態に変える際にも、細胞、
微生物は高温にさらされ非常に大きな熱的損傷を受け
る。したがって、寒天ゲルからの細胞、微生物の回収
は、寒天ゲルの機械的な破砕により行わざるを得ず、該
破砕時に細胞、微生物は大きな機械的な損傷を受けるこ
とになる。
【0006】2)寒天は天然高分子であるため、その物
性、特に細胞、微生物に対する毒性がロットによって非
常にバラツキが大きい。
【0007】3)寒天を細胞、微生物の培養用基材とし
て用いる場合には、上述したように、寒天を培地に添加
し、100°C以上の高温に於て該寒天を溶解させて得
られた混合物を培養容器中に注入した後、冷却してゲル
化させ培養用基材とする。この工程は非常に煩雑である
と同時に、冷却によるゲル化工程は長時間を必要とす
る。細胞、微生物培養に先立って行われる上記した寒天
培地の調製工程は、操作の迅速性を著しく害すると同時
に汚染(コンタミネーション)の危険性を増大させる。
更に、蛋白由来の生理活性物質などの熱的に不安定な物
質を寒天培地に添加する場合には、ゾル状態の寒天温度
の調整が困難であり、該生理活性物質の添加途中に度々
寒天がゲル化し易く混合が不均一になり易い。上記した
寒天培地調製工程の煩雑さを軽減するために、あらかじ
め所定の培地成分が添加され、滅菌され、かつ培養容器
中に封入された寒天ゲルが生培地と称して市販されてい
るが、このものは高価格であると同時に要冷蔵で、しか
も保存期間が短いという問題点を有する。
【0008】上記した寒天培地の問題点は、細胞、微生
物のクローニングの場合のみならず、制癌剤等の薬物の
スクリーニング、細胞のin vitroでの形質転換の判別、
細胞の分化機構および遺伝学的解析、細胞の運動能の測
定の場合においても共通である。
【0009】一方、寒天などのゲル素材を用いずに細胞
を固定化、培養する方法も行われている。最も典型的な
例は、遺伝子工学、細胞工学、発生工学等の分野におけ
る細胞内注入および吸引などの操作である。特に、培養
基材への接着の弱い卵母細胞などへの外来遺伝子の注入
操作は、トランスジェニック(transgenic)動物による
産業動物の育種、有用物質の生産、病態モデル動物の開
発の分野に於て、その重要性を増しつつある。
【0010】従来、卵母細胞などの非接着性細胞内に遺
伝子などを注入する工程はマイクロインジェクション法
と呼ばれ、先端が直径50〜100μmのガラス製ピペ
ットの先を上記細胞の細胞膜に接着させて、ピペット内
を若干陰圧にすることにより該細胞をピペットに物理的
に固定化した後、先端が1〜2μmのガラス製マイクロ
キャピラリーピペットを用いて、細胞内に外来遺伝子溶
液を注入する方法である。この方法の問題点は、細胞を
1個づつ顕微鏡下でマイクロマニュピレーター(microm
anipulator)を用いてガラス製ピペットで固定化しなけ
ればならないため、熟練した技術を必要とするのみなら
ず、細胞を1個1個固定化するために非常に手間がかか
ることである。更に、ガラス製ピペットの先端で陰圧下
に細胞膜を吸引して固定化する際に、細胞膜に重大な物
理的障害を与えることも大きな問題点である。
【0011】上述したように、細胞、微生物などの動・
植物組織を固定化、培養する際に、従来は寒天などのゲ
ル素材、あるいはガラス製ピペットを用いて物理的に固
定化する方法が行われてきたが、これらの方法において
は、上記した問題点が未解決のまま残されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
したように細胞、微生物などを培養基材上に固定化、培
養、回収ないし継代する等の一連の操作に用いられる寒
天ゲル、あるいはピペットを用いる方法の煩雑さ、およ
び細胞、微生物に与える障害性の問題点を解決した固定
化ないし培養方法に好適に使用可能な固定化用器具を提
供することにある。
【0013】本発明の他の目的は、上記固定化用器具を
用いた細胞、微生物などの固定化法を提供することにあ
る。
【0014】本発明の更に他の目的は、上記固定化用器
具を用いた細胞、微生物などの培養、回収あるいは継代
法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意研究の結
果、従来のゲル素材とは全く異なった性質、すなわちそ
の水溶液がゾル−ゲル転移温度を有し、該転移温度より
低い温度で可逆的にゾル状態を示すような高分子化合物
からなる層(例えばコーティング層)を支持体上に設け
た固定化用器具を用いて細胞、微生物の固定化ないし培
養を行うことが、上述した寒天ゲルあるいはピペットを
用いる方法の問題点を解消するのみならず、該固定化用
器具により固定化ないし培養されるべき細胞、微生物へ
の障害性を著しく軽減することを見い出した。
【0016】本発明の固定化用器具は上記の知見に基づ
くものであり、より詳しくは、支持体と、該支持体上に
配置された高分子化合物の層からなる固定化用器具であ
って;該高分子化合物が、曇点を有する複数のブロック
と親水性のブロックとが結合してなり、その水溶液がゾ
ルーゲル転移温度を有し、且つ該水溶液が上記ゾルーゲ
ル転移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状
態)を示す高分子化合物であることを特徴とするもので
ある。
【0017】本発明によれば、更に、支持体と、該支持
体上に配置された高分子化合物の層からなる固定化用器
具であって;該高分子化合物が、曇点を有する複数のブ
ロックと親水性のブロックとが結合してなり、その水溶
液がゾルーゲル転移温度を有し、且つ該水溶液が上記ゾ
ルーゲル転移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾ
ル状態)を示す高分子化合物である固定化用器具の上記
高分子化合物の層に、ゾルーゲル転移温度より高い温度
で、生物組織を接触させ、上記固定化用器具の温度をゾ
ルーゲル転移温度より低い温度に下げることにより上記
高分子化合物の少なくとも一部を溶解させて、上記生物
組織の一部または全部を液体状態の高分子化合物中に包
埋した後、直ちに上記固定化用器具の温度をゾルーゲル
転移温度以上に高めて、液体状態の高分子化合物をゲル
化させることにより、該ゲル中に上記生物組織の一部又
は全部を包埋して該生物組織を固定化用器具上に固定す
ることを特徴とする生物組織の固定化法が提供される。
【0018】本発明によれば、更に、支持体と、該支持
体上に配置された高分子化合物の層からなる固定化用器
具であって;該高分子化合物が、曇点を有する複数のブ
ロックと親水性のブロックとが結合してなり、その水溶
液がゾルーゲル転移温度を有し、且つ該水溶液が上記ゾ
ルーゲル転移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾ
ル状態)を示す高分子化合物である固定化用器具の上記
高分子化合物の層に、ゾルーゲル転移温度より高い温度
で、生物組織を接触させ、上記固定化用器具の温度をゾ
ルーゲル転移温度より低い温度に下げることにより上記
高分子化合物の少なくとも一部を溶解させて、上記生物
組織の一部または全部を液体状態の高分子化合物中に包
埋した後、直ちに上記固定化用器具の温度をゾルーゲル
転移温度以上に高めて、液体状態の高分子化合物をゲル
化させることにより、該ゲル中に上記生物組織の一部又
は全部を包埋して該生物組織を固定化用器具上に固定
し、上記生物組織を培養することを特徴とする生物組織
の培養法が提供される。
【0019】上述した本発明において、上記高分子化合
物の親水性のブロックは、ゾル−ゲル転移温度より低い
温度で該高分子化合物が水溶性になるために必要であ
り、また曇点を有する複数のブロックは、高分子化合物
がゾル−ゲル転移温度より高い温度でゲル状態に変化す
るために必要である。換言すれば、曇点を有するブロッ
クは該曇点より低い温度では水に溶解し、該曇点より高
い温度では水に不溶性に変化するために、曇点より高い
温度で該ブロックはゲルを形成するための架橋点として
の役割を果たす。
【0020】すなわち、疎水性結合に由来する曇点が、
上記高分子化合物のゾル−ゲル転移温度に対応する。た
だし、該曇点とゾル−ゲル転移温度とは必ずしも一致し
なくてもよい。これは、上記した「曇点を有するブロッ
ク」の曇点は、一般に、該ブロックと親水性ブロックと
の結合によって影響を受けるためである。
【0021】本発明に用いる高分子化合物は、疎水性結
合が温度の上昇と共に強くなると同時にその変化が温度
に対して可逆的であるという性質を利用したものであ
る。また、該高分子化合物が「曇点を有するブロック」
を複数個有するということは、1分子内に複数個の架橋
点が形成され、安定性に優れたゲルが形成されるために
必須である。
【0022】一方、上記高分子化合物中の親水性ブロッ
クは、前述したように、該高分子化合物がゾル−ゲル転
移温度よりも低い温度で水溶性に変化するために必要で
あると同時に、上記転移温度より高い温度で疎水性結合
力が増大しすぎて上記高分子化合物が凝集沈澱してしま
うことを防止しつつ、含水ゲルの状態を形成するために
必要である。
【0023】以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本
発明を更に詳細に説明する。
【0024】(ゾルーゲル転移温度)本発明において
「ゾル状態」、「ゲル状態」および「ゾルーゲル転移温
度」は以下のように定義される。この定義については文
献(Polymer Journal.18(5),411−416(1
986))を参照することができる。
【0025】高分子溶液1mLを内径1cmの試験管に
入れ、所定の温度(一定温度)とした水浴中で12時間
保持する。この後、試験管の上下を逆にした場合に、溶
液/空気の界面(メニスカス)が溶液の自重で変形した
場合(溶液が流出した場合を含む)には、上記所定温度
において高分子溶液は「ゾル状態」であると定義する。
一方、上記試験管の上下を逆にしても、上記した溶液/
空気の界面(メニスカス)が溶液の自重で変形しない場
合には、該溶液は、上記所定温度において「ゲル状態」
であると定義する。
【0026】一方、上記測定において、濃度が例えば約
3wt%の高分子溶液を用い、上記した「所定温度」を
徐々に(例えば1℃きざみで)上昇させて「ゾル状態」
が「ゲル状態」に転移する温度を求めた場合、これによ
って求められる転移温度を「ゾルーゲル転移温度」と定
義する(この際、「所定温度」を例えば1℃きざみで下
降させ、「ゲル状態」が「ゾル状態」に転移する温度を
求めてもよい)。
【0027】本発明においては、上記ゾルーゲル転移温
度は0℃より高く、45℃以下であることが好ましく、
更には4℃以上40℃以下であることが、動・植物組織
の熱的損傷を防ぐ点から好ましい。このように好適なゾ
ルーゲル転移温度を有する高分子化合物は、後述するよ
うな具体的な化合物の中から、上記したスクリーニング
方法(ゾルーゲル転移温度測定法)に従って容易に選択
することができる。
【0028】本発明の固定化用器具を用いて動・植物、
微生物等を播種し、固定化し、培養し、および/又は回
収するという一連の操作においては、上記したゾル−ゲ
ル転移温度(a°C)を播種あるいは培養時の温度(b
°C)と、固定化あるいは回収するための冷却時の温度
(c°C)との間に設定することが好ましい。すなわ
ち、上記した3種の温度a°C、b°C、およびc°C
の間には、b>a>cの関係があることが好ましい。よ
り具体的には、(b−a)は1〜40°C、更には2〜
30°Cであることが好ましく、また(a−c)は1〜
40°C、更には2〜30°Cであることが好ましい。
【0029】(高分子化合物)上述したような好適なゾ
ル−ゲル転移温度は、本発明に用いる高分子化合物中の
曇点を有する複数のブロックと親水性のブロックの曇
点、両ブロックの組成および両ブロックの疎水性度、親
水性度、および/又は分子量等をそれぞれ調整すること
によって達成することが可能である。
【0030】その水溶液がゾル−ゲル転移温度を有し、
該転移温度より低い温度で可逆的にゾル状態を示す高分
子化合物の具体例としては、例えば、ポリプロピレンオ
キサイドとポリエチレンオキサイドとのブロック共重合
体などに代表されるポリアルキレンオキサイドブロック
共重合体;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセル
ロースなどのエーテル化セルロース;キトサン誘導体
(K.R.Holme.et al. Macromolecules, 24, 3828 (199
1)) などが知られている。
【0031】ポリアルキレンオキサイドブロック共重合
体として、ポリプロピレンオキサイドの両端にポリエチ
レンオキサイドが結合したプルロニック(Pluronic) F
−127(商品名、BASF Wyandotte Chemicals Co.製)
ゲルが開発されている。
【0032】このプルロニックF−127の高濃度水溶
液は、約20°C以上でハイドロゲルとなり、これより
低い温度で水溶液となることが知られている。しかしな
がら、この材料の場合は約20wt%以上の高濃度でし
かゲル状態にはならず、また約20wt%以上の高濃度
でゲル化温度より高い温度に保持しても、さらに水を加
えるとゲルが溶解してしまう。したがって、プルロニッ
クF−127を支持体にコーティングすることによって
固定化用器具を作製した場合には、細胞、微生物をプル
ロニックF−127ゲルによって固定化して該ゾル−ゲ
ル転移点より高い温度で培養したとしても、プルロニッ
クF−127ゲルは添加した培地中に溶解してしまうた
め、細胞、微生物を該器具上に固定化することが困難に
なる。また、プルロニックF−127は分子量が比較的
小さく、約20wt%以上の高濃度のゲル状態で非常に
高い浸透圧を示すと同時に細胞膜を容易に透過するの
で、細胞、微生物に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0033】一方、メチルセルロース、ヒドロキシプロ
ピルセルロースなどに代表されるエーテル化セルロース
の場合は、ゾル−ゲル転移温度が高く約45°C以上で
ある(N.Sarkar, J.Appl.Polym.Science, 24, 1073, 19
79) 。したがって、このようなエーテル化セルロースを
単に支持体にコーティングすることによって固定化用器
具を作製した場合には、動・植物細胞、微生物の培養は
ほとんど37°C近辺あるいはそれ以下の温度で実施さ
れるため、上記エーテル化セルロースはゾル状態であり
細胞、微生物の固定化培養は不可能である。
【0034】上記したように、その水溶液中がゾルーゲ
ル転移点を有し、且つ該転移温度より低い温度で可逆的
にゾル状態を示す従来の高分子化合物の問題点は、 1)ゾルーゲル転移温度より高い温度で一旦ゲル化して
も、さらに水を添加するとゲルが溶解してしまうこと、 2)ゾルーゲル転移温度が培養温度(37℃近辺又はそ
れ以下)よりも高く、培養温度ではゾル状態であるこ
と、 3)ゲル化させるためには、水溶液の高分子化合物濃度
を非常に高くする必要があること、などである。
【0035】本発明者の検討によれば、曇点を有する複
数のブロックと親水性のブロックが結合してなり、その
水溶液がゾルーゲル転移温度を有し、且つ、ゾルーゲル
転移温度より低い温度で可逆的にゾル状態を示す高分子
化合物を用いて固定化ないし培養用器具を構成した場合
に、上記問題は解決されることが判明した。
【0036】(曇点を有する複数のブロック)曇点を有
するブロックとしては、水に対する溶解度温度係数が負
を示す高分子化合物であることが好ましく、より具体的
には、ポリプロピレンオキサイド、プロピレンオキサイ
ドと他のアルキレンオキサイドとの共重合体、ポリN−
置換アクリルアミド誘導体、ポリN−置換メタアクリル
アミド誘導体、N−置換アクリルアミド誘導体とN−置
換メタアクリルアミド誘導体との共重合体、ポリビニル
メチルエーテル、ポリビニルアルコール部分酢化物から
なる群より選ばれる高分子化合物が好ましく用いられ
る。上記の高分子化合物(曇点を有するブロック)の曇
点が4℃より高く40℃以下であることが、本発明に用
いる高分子化合物(曇点を有する複数のブロックと親水
性のブロックが結合した化合物)のゾルーゲル転移温度
を4℃より高く40℃以下とする点から好ましい。
【0037】ここで曇点の測定は、例えば、上記の高分
子化合物(曇点を有するブロック)の約1wt%の水溶
液を冷却して透明な均一溶液とした後、除々に昇温(昇
温速度約1℃/min)して、該溶液がはじめて白濁す
る点を曇点とすることによって行うことが可能である。
【0038】本発明に使用可能なポリN−置換アクリル
アミド誘導体、ポリN−置換メタアクリルアミド誘導体
の具体的な例を以下に列挙する。
【0039】ポリ−N−アクロイルピペリジン;ポリ−
N−n−プロピルメタアクリルアミド;ポリ−N−イソ
プロピルアクリルアミド;ポリ−N,N−ジエチルアク
リルアミド;ポリ−N−イソプロピルメタアクリルアミ
ド;ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド;ポリ−
N−アクリロイルピロリジン;ポリ−N,N−エチルメ
チルアクリルアミド;ポリ−N−シクロプロピルメタア
クリルアミド;ポリ−N−エチルアクリルアミド 上記の高分子は単独重合体(ホモポリマー)であって
も、上記重合体を構成する単量体と他の単量体との共重
合体であってもよい。このような共重合体を構成する他
の単量体としては、親水性単量体、疎水性単量体のいず
れも用いることができる。一般的には、親水性単量体と
共重合すると生成物の曇点は上昇し、疎水性単量体と共
重合すると生成物の曇点は下降する。従って、これらの
共重合すべき単量体を選択することによっても、所望の
曇点(例えば4℃より高く40℃以下の曇点)を有する
高分子化合物を得ることができる。
【0040】上記親水性単量体としては、N−ビニルピ
ロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアク
リルアミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエ
チルメタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレー
ト、ヒドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメ
チルアクリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタア
クリル酸およびそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチレ
ンスルホン酸など、並びに塩基性基を有するN,N−ジ
メチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチル
アミノエチルメタクリート、N,N−ジメチルアミノプ
ロピルアクリルアミドおよびそれらの塩などが挙げられ
るが、これらに限定されるものではない。
【0041】一方、上記疎水性単量体としては、エチル
アクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタ
クリレート等のアクリレート誘導体およびメタクリレー
ト誘導体、N−n−ブチルメタアクリルアミドなどのN
−置換アルキルメタアクリルアミド誘導体、塩化ビニ
ル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙
げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】(親水性のブロック)一方、上記した曇点
を有するブロックと結合すべき親水性のブロックとして
は、具体的には、メチルセルロース、デキストラン、ポ
リエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリN
−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリ
ルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリN−メチルア
クリルアミド、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポ
リアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン
酸、ポリスチレンスルホン酸およびそれらの塩;ポリ
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリ
N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリ
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよび
それらの塩などが挙げられる。
【0043】曇点を有するブロックと上記の親水性のブ
ロックとを結合する方法は特に制限されないが、例えば
上記いずれかのブロック中に重合性官能基(例えばアク
リロイル基)を導入し、他方のブロックを与える単量体
を共重合させることによって行うことができる。
【0044】また、曇点を有するブロックと上記の親水
性のブロックとの結合物は、曇点を有するブロックを与
える単量体と、親水性のブロックを与える単量体とのブ
ロック共重合によって得ることも可能である。
【0045】また、曇点を有するブロックと親水性のブ
ロックとの結合は、予め両者に反応活性な官能基(例え
ば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート
基など)を導入し、両者を化学反応により結合させるこ
とによって行うこともできる。この際、親水性のブロッ
ク中には通常、反応活性な官能基を複数導入する。
【0046】また、曇点を有するポリプロピレンオキサ
イドと親水性のブロックとの結合は、例えば、アニオン
重合またはカチオン重合で、プロピレンオキサイドと
「他の親水性ブロック」を構成するモノマー(例えばエ
チレンオキサイド)とを繰り返し逐次重合させること
で、ポリプロピレンオキサイドと「親水性ブロック」
(例えばポリエチレンオキサイド)が結合したブロック
共重合体を得ることができる。このようなブロック共重
合体は、ポリプロピレンオキサイドの末端に重合性基
(例えばアクリロイル基)を導入後、親水性のブロック
を構成するモノマーを共重合させることによっても得る
ことができる。
【0047】更には、親水性のブロック中に、ポリプロ
ピレンオキサイド末端の官能基(例えば水酸基)と結合
反応し得る官能基を導入し、両者を反応させることによ
っても、本発明に用いる高分子化合物を得ることができ
る。また、ポリプロピレングリコールの両端にポリエチ
レングリコールが結合した、プルロニック F−127
(商品名、旭電化工業(株)製)のような材料を連結さ
せることによっても、本発明に用いる高分子化合物を得
ることができる。
【0048】本発明の高分子化合物は、曇点より低い温
度においては、分子内に存在する上記「曇点を有するブ
ロック」が親水性のブロックとともに水溶性であるの
で、完全に水に溶解し、ゾル状態を示す。
【0049】しかし、この高分子化合物の水溶液の温度
を上記曇点より高い温度に加温すると、分子内に存在す
る「曇点を有するブロック」が疎水性となり、疎水的相
互作用によって、別個の分子間で会合する。
【0050】一方、親水性のブロックは、この時(曇点
より高い温度に加温された際)でも水溶性であるので、
本発明の高分子化合物は水中において、曇点を有するブ
ロック間の疎水性会合部を架橋点とした三次元網目構造
を持つハイドロゲルを生成する。このハイドロゲルの温
度を再び、分子内に存在する「曇点を有するブロック」
の曇点より低い温度に冷却すると、該曇点を有するブロ
ックが水溶性となり、疎水性会合による架橋点が解放さ
れ、ハイドロゲル構造が消失して、本発明の高分子化合
物は、再び完全な水溶液となる。このように、本発明の
高分子化合物のゾルーゲル転移は、分子内に存在する曇
点を有するブロックの該曇点における可逆的な親水性、
疎水性の変化に基づくものであるので、温度変化に対応
して、完全な可逆性を有する。
【0051】本発明者の知見によれば、本発明に用いる
高分子化合物をそのゾルーゲル転移温度より高い温度で
ゲル化させた後に更に多量(体積比で、ゲルの0.1〜
100倍程度)の水を加えても、該ゲルは溶解すること
はない。このような本発明に用いる高分子化合物の性質
は、該高分子化合物内に曇点を有するブロックが2個以
上(複数個)存在することによって達成される。
【0052】(高分子層の厚さ)上述したような性質を
有する高分子の層の形状あるいは厚さは、該高分子層上
で生物組織の培養が可能である限り特に制限されない
が、高分子層形成の容易性ないしコストの点を考慮すれ
ば、通常、0.5μm〜1.0mmであることが好まし
く、更には1μm〜100μm(特に2μm〜50μ
m)であることが好ましい。
【0053】(支持体)上記高分子の層をその上に設け
るべき支持体の材料、大きさ、ないし形状は、該支持体
上で生物組織の固定化ないし培養が可能である限り特に
制限されない。より具体的には例えば、上記支持体とし
て、従来、生物組織の固定化ないし培養に使用されてい
るディッシュ、シャーレ、マイクロテストプレート(複
数の凹部ないしウェルを表面に有するプレート)、フラ
スコ、培養管あるいは培養瓶などの固定化/培養器具の
培養面を好適に使用することが可能である。
【0054】また平滑なフィルムあるいはシート(好ま
しくは、厚さ10μm〜1mm程度)を支持体として、
上記高分子化合物の層をコーティング等により設けて本
発明の固定化用器具とした後、上記したような従来の種
々の固定化/培養器具の固定化/培養面上に設置するこ
とも可能である。
【0055】支持体の材料ないし材質としては、透明、
半透明又は不透明のいずれの材料を用いてもよいが、裏
面(上記高分子の層を設けた支持体面と反対側の面)か
らの観察ないし光学的測定が容易な点からは、透明性の
良好なガラス、プラスチック(ポリスチレン、ポリメチ
ルメタクリレート、ポリカーボネート等)などが支持体
として好適に用いられる。
【0056】(生物組織)本発明において、「生物組
織」とは、動物、植物、微生物等の生物自体ないしその
組織をいい、組織、器官そのものから組織、器官の断
片、さらには組織、器官から分離した細胞ないしその集
合体を包含する意味で用いる。
【0057】本発明においては、上記生物組織は、上記
した高分子化合物の層中にその一部又は全部が埋められ
る(embed )ことにより固定化される。この固定化を行
う際に、該生物組織の少なくとも一部は上記高分子化合
物層に接触させられるが、このような接触は、生物組織
を直接高分子化合物層上に配置する(例えば、生物組織
を高分子化合物層上にふりかける)ことにより行っても
よく、また、生物組織を適当な液体(例えば、培地)中
に懸濁させた懸濁液を上記高分子化合物層上に乗せ、該
生物組織を高分子化合物層上に沈降させることにより行
ってもよい。生物組織の高分子化合物層上への均等な配
置が容易な点からは、後者の方法を用いることが好まし
い。
【0058】(固定化用器具の製造方法)次に、本発明
の固定化用器具の製造方法の具体的な一例を示す。
【0059】例えば、本発明に用いる高分子化合物を有
機溶媒に溶解するか、該ゾル−ゲル転移温度よりも低い
温度で水に溶解するか、該ゾル−ゲル転移温度より高い
温度でもゲル化しないような低濃度で水に溶解し、該溶
液をソルベントキャスティング(Solvent Casting:溶液
流延)することによって、支持体の上にコーティングし
た後、該有機溶媒あるいは水を蒸散させることによっ
て、乾燥した上記高分子化合物のコーティング層を支持
体上に形成させる。
【0060】上記コーティング層の厚さは、乾燥状態で
通常0.5μm〜1.0mm、更には1μm〜100μ
m(特に2μm〜50μm)であることが好ましい。コ
ーティング層の厚さは、コーティング溶液中の高分子化
合物の濃度、被コーティング支持体上にのせる溶液量等
を調整することによって、自由にコントロールすること
が可能である。
【0061】(固定化用器具の使用方法)次に、本発明
の固定化用器具を実際に使用する際の使用方法(細胞又
は微生物の固定化ないし培養方法)の一例について、具
体的に説明する。
【0062】上記高分子化合物がコーティングされた固
定化用器具(本発明の固定化用器具)中に、上記高分子
化合物水溶液のゾル−ゲル転移温度より高い温度で、細
胞あるいは微生物の培地(液体培地が好ましい)懸濁液
を注入し、上記細胞あるいは微生物を該高分子化合物の
コーティング層上に沈降させて、該コーティング層に上
記細胞あるいは微生物を接触させた後、該固定化用器具
の温度をゾル−ゲル転移温度より低い温度に下げること
により、該コーティング高分子化合物の一部または全部
を溶解させ、該細胞あるいは微生物の一部または全部を
該コーティング高分子化合物の溶液中に埋没させた後、
直ちに固定化用器具の温度をゾル−ゲル転移温度より高
い温度に高めることにより、一旦溶解した上記コーティ
ング高分子化合物を再びゲル化させ、該ゲル中に上記細
胞あるいは微生物の一部または全部を包埋し該固定化用
器具上に固定することができる。
【0063】このように固定した上記細胞あるいは微生
物は、培養操作のみならずマイクロインジェクション法
その他の処理、あるいはバイオリアクター等に好適に用
いることができる。
【0064】さらに上記の方法で固定化用器具上に固定
化(更には必要に応じて培養)した細胞あるいは微生物
に関しては、上記固定化用器具の温度を高分子化合物の
ゾル−ゲル転移温度より低い温度に下げることにより、
コーティング高分子化合物を再びゾル化して、上記細胞
あるいは微生物を固定化用器具上から分離することがで
きる。このようにして固定化ないし培養した上記細胞あ
るいは微生物を、これらに損傷を与えることなく回収あ
るいは継代することが可能である。
【0065】上記の一連の操作(培養に用いる場合)を
模式的に図1(a)〜(f)の断面図に示す。図1にお
ける各図の意味は以下の通りである。
【0066】(a):支持体たるディッシュ1上にコー
ティング用高分子化合物2をコートした本発明の固定化
器具(コートディッシュ)3を示す。
【0067】(b):上記高分子化合物のゾル−ゲル転
移温度より高い温度で、細胞(または微生物)4の培地
5への分散液を、上記コートディッシュ3に注入した状
態を示す。
【0068】(c):上記ゾル−ゲル転移温度より高い
温度で、細胞(または微生物)4が沈降して、膨潤した
コート層2aに接触するまで放置した状態を示す。
【0069】(d):上記ゾル−ゲル転移温度より低い
温度で、膨潤した高分子化合物層2aの一部2bを溶解
し、細胞(または微生物)4を、この溶解した高分子の
層2bの中に沈降させた状態を示す。
【0070】(e):上記ゾル−ゲル転移温度より高い
温度で、溶解した高分子化合物の層2bを再びゲル化さ
せ、細胞(または微生物)4をこのゲル化した高分子の
層2c上に固定した状態を示す。
【0071】(f):上記ゾル−ゲル転移温度より低い
温度で、上記ゲル化層2cをゾル化させ、固定していた
細胞(または微生物)4を培地5a中に再浮遊させた状
態(細胞等の回収が容易な状態)を示す。この(f)の
状態においては、上記コーティング用高分子化合物は、
培地5a中に実質的に溶解ないし拡散している。
【0072】本発明の固定化用器具を用いて細胞あるい
は微生物などのクローニングを行う場合には、上記した
高分子化合物コーティング層上でそれぞれ独立のコロニ
ーが形成可能な程度に濃度を希釈した細胞あるいは微生
物の培地懸濁液を、該コーティング層上に播種し、上記
の方法で播種した細胞あるいは微生物を該コーティング
高分子化合物ゲル上ないしゲル中に固定化した後、培養
し、それぞれのコロニーを形成させればよい。更に、こ
のようにして形成したコロニーは、上記した方法によっ
て容易にかつ該コロニーに何らの損傷を与えることな
く、回収あるいは継代することが可能である。
【0073】本発明の固定化用器具を用いて細胞又は微
生物を固定化すれば、該細胞等に対する薬剤のスクリー
ニングを効率よく行うことができる。例えば、癌細胞に
対する制癌剤のスクリーニング、あるいは微生物に対す
る抗生物質のスクリーニングなどを行う場合には、上記
した方法で癌細胞あるいは微生物の培地懸濁液を本発明
の固定化用器具上に播種、固定化した後、培養してそれ
ぞれのコロニーを形成させた後、各種の制癌剤あるいは
抗生物質を、種々の濃度、時間で液体培地に添加して、
上記コロニー上に配置することにより、上記細胞あるい
は微生物のそれぞのコロニーに対する薬理活性を評価す
ることが可能である。
【0074】本発明の固定化用器具を用いれば、温度コ
ントロールにより、細胞又は微生物を回数の制限なく容
易に固定化/回収できるため、液体培地中の薬剤の種
類、濃度および接触時間などを異ならせることにより、
異なる条件下での薬剤のスクリーニングを容易に行うこ
とができる。
【0075】これに対して、従来の寒天などのゲル培地
を用いた場合には、上記液体培地を用いた場合と異な
り、一度ゲル化させるとゲル中の薬剤の種類、濃度およ
び接触時間などを変えて測定することは困難である。
【0076】本発明の固定化用器具を用いて細胞のin v
itroでの形質転換の判別、細胞の分化機構および遺伝学
的解析、細胞の運動能の測定などを行う場合は、上記し
た方法で該固定化用器具上に細胞を固定化し、培養する
ことによって実施できる。
【0077】本発明の固定化用器具を用いて卵母細胞な
どの細胞に外来遺伝子を導入することも可能である。即
ち、上記した方法で卵母細胞などの細胞を該固定化器具
上に固定化することができるため、従来のマイクロイン
ジェクション法で用いられてきた固定用のガラス製ピペ
ットを使用する必要がない。したがって本発明の固定化
法によれば、固定化の際の細胞に対する機械的損傷が著
しく抑制されると同時に、操作の手間および煩雑性が著
しく軽減される。
【0078】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に
説明するが、本発明の範囲は特許請求の範囲により限定
されるものであり、以下の実施例によって限定されるも
のではない。
【0079】製造例1 (コーティング用高分子化合物No.1の合成)トリメ
チロールプロパン1モルに対し、エチレンオキサイド1
60モルをカチオン重合により付加して、平均分子量約
7000のポリエチレンオキサイドトリオールを得た。
このポリエチレンオキサイドトリオール100gを蒸留
水1000mlに溶解した後、室温で過マンガン酸カリ
ウム12gを徐徐に加えて、そのまま約1時間酸化反応
させた。固形物を濾過により除いた後、生成物をクロロ
ホルムで抽出し、溶媒(クロロホルム)を減圧留去して
ポリエチレンオキサイドトリカルボキシル体90gを得
た。
【0080】このポリエチレンオキサイドトリカルボキ
シル体10gと、ポリプロピレンオキサイドジアミノ体
(プロピレンオキサイド平均重合度約65、米国ジェフ
ァーソンケミカル社製、商品名:ジェファーミンD−4
000、曇点:約9℃)10gとを四塩化炭素1000
mlに溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド1.2
gを加えた後、沸点還流下に6時間反応させた。反応液
を冷却し、固形物を濾過により除いた後、溶媒(四塩化
炭素)を減圧留去し、残さを真空乾燥して、複数のポリ
プロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドとが結
合したコーティング用高分子化合物(高分子化合物N
o.1)を得た。これを氷冷下、5wt%の濃度で蒸留
水に溶解し、そのゾル−ゲル転移温度を測定したとこ
ろ、約16℃であった。
【0081】製造例2 (コーティング用高分子化合物No.2の合成)N−イ
ソプロピルアクリルアミド(イーストマンコダック社
製)96g、N−アクリロキシスクシンイミド(国産化
学(株)製)17g、およびn−ブチルメタクリレート
(関東化学(株)製)7gをクロロホルム4000ml
に溶解し、窒素置換後、N,N’−アゾビスイソブチロ
ニトリル1.5gを加え、60℃で6時間重合させた。
反応液を濃縮した後、ジエチルエーテルに再沈(再沈
殿)した。濾過により固形物を回収した後、真空乾燥し
て、78gのポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−
コ−N−アクリロキシスクシンイミド−コ−n−ブチル
メタクリレート)を得た。
【0082】上記により得たポリ(N−イソプロピルア
クリルアミド−コ−N−アクリロキシスクシンイミド−
コ−n−ブチルメタクリレート)に、過剰のイソプロピ
ルアミンを加えてポリ(N−イソプロピルアクリルアミ
ド−コ−n−ブチルメタクリレート)を得た。このポリ
(N−イソプロピルアクリルアミド−コ−n−ブチルメ
タクリレート)の水溶液の曇点は19℃であった。
【0083】前記のポリ(N−イソプロピルアクリルア
ミド−コ−N−アクリロキシスクシンイミド−コ−n−
ブチルメタクリレート)10g、および両末端アミノ化
ポリエチレンオキサイド(分子量6,000、川研ファ
インケミカル(株)製)5gをクロロホルム1000m
lに溶解し、50℃で3時間反応させた。室温まで冷却
後、イソプロピルアミン1gを加え、1時間放置した
後、反応液を濃縮し、残渣をジエチルエーテル中に沈澱
させた。濾過により固形物を回収した後、真空乾燥し
て、複数のポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ
−n−ブチルメタクリレート)とポリエチレンオキサイ
ドとが結合したコーティング用高分子化合物(高分子化
合物No.2)を得た。このようにして得た高分子化合
物No.2を氷冷下、5wt%の濃度で蒸留水に溶解
し、そのゾル−ゲル転移温度を測定したところ、約21
℃であった。
【0084】製造例3 (コーティング用高分子化合物の滅菌方法)上記した製
造例1又は2により得たコーティング用高分子化合物
(高分子化合物No.1又はNo.2)2.0gを、E
OG(エチレンオキサイドガス)滅菌バッグ(ホギメデ
ィカル社製、商品名:ハイブリッド滅菌バッグ)に入
れ、EOG滅菌装置(イージーパック、井内盛栄堂製)
でEOGをバッグに充填し、室温にて一昼夜放置した。
さらに40℃で半日放置した後、EOGをバッグから抜
き、エアレーションを行った。バッグを真空乾燥器(4
0℃)に入れ、時々エアレーションしながら半日放置す
ることにより滅菌した。この滅菌操作により高分子化合
物のゾル−ゲル転移温度が変化しないことを別途確認し
た。
【0085】実施例1 (コートディッシュの作製)上記製造例3により滅菌し
た高分子化合物(高分子化合物No.1または2)2.
0gを100mlメジューム瓶(予め乾熱滅菌したも
の)に入れ、40mlの蒸留水(予めオートクレーブで
滅菌したもの)を加え、4℃の冷蔵庫中で一晩溶解し、
5%(w/v)の高分子水溶液を得た。この高分子水溶
液1mlを市販の直径35mmφディッシュ(Falc
on 3001,日本ベクトン製)に加え、素早くディ
ッシュ底面に均一に広げてキャストすることにより、該
ディッシュ上に上記高分子化合物の層を形成した。この
ディッシュを10℃の乾燥チャンバーで一晩乾燥し、コ
ートディッシュ(本発明の固定化器具)を作製した。キ
ャストした上記高分子水溶液は、ディッシュの底面に密
着した透明なフィルムとなっていた。乾燥後のコート層
の厚みは約50μmであった。このコート層の厚みは、
上記高分子水溶液の濃度、またはキャストする該溶液の
量を調節することにより変えることができた。また、大
きなディッシュ(直径60mm程度)を用いた場合に
も、同様の手順でコートディッシュを作製することがで
きた。以上の操作はすべて無菌的な環境下で行った。
【0086】実施例2 上記実施例1の方法で作製したコートディッシュを細胞
固定実験に用いた。本実施例においては、高分子化合物
No.2(ゾル−ゲル転移温度21℃)を用いて作製し
たコートディッシュを使用した。コートディッシュのコ
ート層の厚みは、100μm、50μm、25μm、お
よび10μmの4種類とした。
【0087】一方、実験に用いる胆管癌細胞(MEC)
は、予めトリプシン/EDTA溶液で処理して培養フラ
スコから回収し、遠心(220×G、5分)後、上澄み
を除去し、RPMI 1640培地(日水製薬製、10
%牛胎児血清含有)に懸濁した。細胞濃度は1 ×105
cells/mlになるようした。
【0088】上記により得た細胞懸濁液1mlを37℃
に暖めた後、実施例1の方法で作製したコートディッシ
ュ(日本ベクトン製Falcon3001上に高分子化
合物No.2をコートしたもの)に分注し、直ちに37
℃(上記高分子化合物のゾル−ゲル転移温度21℃より
高い温度)のインキュベーター(5%炭酸ガス/95%
空気)に入れ、5分間インキュベートした。この間に、
懸濁していた細胞はすべてディッシュ底面に沈降した。
ディッシュを4℃の冷蔵庫に移し5分間冷却することに
より、(播種した細胞を固定するために)ディッシュに
コートした高分子化合物の一部を一旦溶解した。その
後、該ディッシュを37℃のインキュベーターに10分
間入れ、上記により一部溶解した高分子化合物を再度ゲ
ル化させることにより、細胞の固定を行った。細胞の固
定状態は、目視及び倒立顕微鏡により観察した。
【0089】予め37℃に保温しておいたプレート(マ
イクロウォームプレート、北里サプライ製)上に上記デ
ィッシュを移し、細胞の固定状態を確認した。ディッシ
ュを軽くゆらしても細胞は動かず、ディッシュ底面にし
っかりと固定されていた。一方、加えた培地(コートデ
ィッシュ上に配置したRPMI 1640培地)には何
等変化はなく、溶液の状態のままであった。この結果よ
り、ディッシュ上にコートした高分子化合物の一部が一
旦溶解した後、ゲル化して細胞を固定していることが確
認された。
【0090】次に、上記によりディッシュに固定した細
胞を回収するために、上記ディッシュを4℃の冷蔵庫に
移し、10分間放置した。冷蔵庫より取り出し顕微鏡下
観察したところ、細胞の再浮遊が確認された。ディッシ
ュを軽く揺らすと、細胞はすべて底面より浮遊して揺れ
動いていることが確認できた。
【0091】一方、上記細胞をディッシュに固定した状
態で、そのまま37℃のインキュベーター内で培養する
ことも可能であった。3日間の培養後、上記ディッシュ
を4℃に冷却することにより、培養した細胞をディッシ
ュの底面から浮遊させ回収することができた。この際、
ディッシュ全体を冷却するのではなく、ピンセットを用
いてクローン採取用円筒(ダウコーニング製)を分離す
べき1個のコロニーを取り巻くように置き、この円筒の
中に4℃に冷却した培地をシリンジで加えることによ
り、分離すべき1個のコロニーを無傷で回収することも
できた。これら一連の結果は、高分子コート層の厚み
(100μm、50μm、25μm、および10μm)
に関係なく、どの場合も同様であった。
【0092】上述したように、本実施例においては、コ
ーティング用高分子化合物をコートしたディッシュ(本
発明の固定化器具)を使用することにより、培養細胞を
素早く固定し、その状態で培養することができ、更にデ
ィッシュを冷却することにより、培養した細胞を、何等
ダメージを与えること無く回収することが可能であっ
た。また、培養により形成された複数のコロニー中、分
離すべき1個のコロニーを無傷で回収することもでき
た。したがって、従来は非常に煩雑な操作が必要であっ
たクローニングを、このディッシュを用いて非常に簡便
に行うことが可能となった。
【0093】実施例3 上記した実施例2の方法で作製したコートディッシュ
を、マイクロインジェクション実験に用いた。本実施例
においては、高分子化合物No.1(ゾル−ゲル転移温
度16℃)を使用し、コート層の厚みは60μmとし
た。また、実験に用いる細胞としては、凍結ハムスター
未受精卵(日本農産工製)を使用した。
【0094】30個の凍結ハムスター未受精卵を液体窒
素保存容器より取り出し、室温にて解凍した。これを6
mlのダルベッコ改変イーグル培地(D−MEM、日水
製薬製)に懸濁し、直径90mmφコートディッシュ
(日本ベクトン製Falcon1001に高分子化合物
No.1をコートしたもの)に分注し、室温(約23
℃、高分子化合物No.1のゾル−ゲル転移温度16℃
より高い温度)に放置して、未受精卵を沈降させた。
【0095】次いで、上記ディッシュを4℃の冷蔵庫に
移し10分間冷却し、播種した未受精卵を固定するため
にディッシュにコートされた高分子化合物の全部を一旦
溶解した。その後、ディッシュを室温に戻して10分間
放置することにより、一旦溶解した高分子化合物を再度
ゲル化させ、上記未受精卵の固定を行った。上記培地
(D−MEM)は完全にゲル化して、未受精卵はゲル中
にしっかりと固定されていた。この時のゲル中の高分子
の濃度は約6%であった。
【0096】次にマイクロマニピュレーターを用いて、
ピペットの上記未受精卵への挿入を試みた。
【0097】上記ディッシュを透過型実体顕微鏡(オリ
ンパス製)下にセットした。マイクロピペット作製器
(PB−7、ナリシゲ製)で作製したピペットを、マイ
クロマニピュレーター(MO−203、ナリシゲ製)に
セットし、上記したように固定されている未受精卵にピ
ペット挿入実験を行った。図2〜図5の写真に示すよう
に、未受精卵(写真中央部)はゲル内に固定されている
ために、他のピペット(ホールディングピペット)で固
定することなしに、非常に容易に上記ピペットを未受精
卵に刺し込むことができた。
【0098】図2〜図5の写真は、上記ゲル中のハムス
ター未受精卵へのピペットの挿入操作を示す顕微鏡写真
(倍率:170倍)である。図2〜図5の各図は、以下
の状態を示す。また、図6は図2の像を模式的に示した
図である。
【0099】図2(図6):ピペット11を上記ハムス
ター未受精卵12へ挿入する直前の状態を示す。符号1
3は、上記ゲル内に固定されたエアー(空気)を示す。
【0100】図3:ピペットを上記ハムスター未受精卵
へ挿入した直後の状態を示す。
【0101】図4:上記ハムスター未受精卵へ、ピペッ
トを更に深く刺し込んだ状態を示す。 図5:上記ハム
スター未受精卵から、ピペットを抜いた直後の状態を示
す。
【0102】上記写真(図2〜図5)に示されたエアー
13(写真上方の半球状の像)と、未受精卵12(写真
中央部の球形の像)との相対的位置から明らかなよう
に、ピペット11を挿入したにも関わらず未受精卵12
の位置はまったく変化していなかった。これにより、未
受精卵12が上記ゲルにより確実に固定されているため
に、ピペット11の未受精卵12への挿入が非常に容易
であったことが確認された。また、上記ピペット11を
適当に動かすことにより、未受精卵12の一部を切りと
ることも可能であった。
【0103】上記した一連の操作をした未受精卵を回収
するために、上記ディッシュを4℃の冷蔵庫に移し5分
間放置した。該ディッシュのゲルはゾル状態となり、上
記未受精卵はピペットで簡単に回収することができた。
【0104】上述したように、本実施例においては、コ
ーティング用高分子化合物をコートしたディッシュ(本
発明の固定化器具)を用いることにより、卵母細胞を素
早く固定し、ホールディングピペットを用いることな
く、容易にピペットを卵母細胞に挿入することができ
た。更には、上記ディッシュを冷却することにより、卵
母細胞を、何等ダメージを与えること無く回収すること
ができた。したがって、このディッシュを使用すれば、
従来は非常に熟練した技術が必要とされたマイクロイン
ジェクションを、簡単に実現することが可能となった。
【0105】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、支持体
と、該支持体上に配置された高分子化合物の層からなる
固定化用器具であって;該高分子化合物が、曇点を有す
る複数のブロックと親水性のブロックとが結合してな
り、その水溶液がゾルーゲル転移温度を有し、且つ該水
溶液が上記ゾルーゲル転移温度より低い温度で可逆的に
液体状態(ゾル状態)を示す高分子化合物であることを
特徴とする固定化用器具、並びにこれを用いた細胞、微
生物等の固定化法および培養方法が提供される。
【0106】本発明の固定化用器具を用いれば、細胞、
微生物などを培養基材上に固定化、培養、回収ないし継
代する等の一連の全部又は一部の操作において、従来の
寒天ゲルあるいはピペットを用いる方法の煩雑さのみな
らず、細胞、微生物に与える障害性の問題を解決するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)ないし(f)は、本発明の固定化用
器具を用いた固定化/回収方法の一実施態様における一
連の操作を示す模式断面図である。
【図2】ゲル中のハムスター未受精卵に、ピペットを挿
入する直前の状態を示す顕微鏡写真(倍率:170倍)
である。
【図3】ゲル中のハムスター未受精卵に、ピペットを挿
入した直後の状態を示す顕微鏡写真(倍率:170倍)
である。
【図4】ゲル中のハムスター未受精卵に、ピペットを更
に深く刺し込んだ状態を示す顕微鏡写真(倍率:170
倍)である。
【図5】ゲル中のハムスター未受精卵から、ピペットを
抜いた直後の状態を示す顕微鏡写真(倍率:170倍)
である。
【図6】図2の写真を模式的に示した図である。
【符号の説明】
1…支持体、2…コーティング用高分子化合物のコート
層、2a…膨潤したコート層、2b…一部溶解したコー
ト層、2c…再度ゲル化したコート層、3…コートディ
ッシュ(固定化用器具)、4…細胞または微生物、5…
培地、5a…培地(コートした高分子化合物が溶解・拡
散している)、11…ピペット、12…ゲル中のハムス
ター未受精卵、13…ゲル中のエアー。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−76355(JP,A) 特開 平4−278083(JP,A) 特開 平3−266980(JP,A) 特開 平3−292882(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12M 1/00 - 3/06 C12N 1/00 - 5/00

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持体と、該支持体上に配置された高分
    子化合物の層からなる固定化用器具であって;該高分子
    化合物が、曇点を有する複数のブロックと親水性のブロ
    ックとが結合してなり、その水溶液がゾルーゲル転移温
    度を有し、且つ該水溶液が上記ゾルーゲル転移温度より
    低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)を示す高分子
    化合物であることを特徴とする固定化用器具。
  2. 【請求項2】 前記高分子化合物の層が、上記高分子を
    支持体にコーティングすることにより形成されたコーテ
    ィング層からなる請求項1記載の固定化用器具。
  3. 【請求項3】 前記ゾルーゲル転移温度が0°Cより高
    く45°C以下である請求項1記載の固定化用器具。
  4. 【請求項4】 前記コーティング層の厚さが0.5μm
    以上でかつ1mm以下である請求項1記載の固定化用器
    具。
  5. 【請求項5】 支持体と、該支持体上に配置された高分
    子化合物の層からなる固定化用器具であって;該高分子
    化合物が、曇点を有する複数のブロックと親水性のブロ
    ックとが結合してなり、その水溶液がゾルーゲル転移温
    度を有し、且つ該水溶液が上記ゾルーゲル転移温度より
    低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)を示す高分子
    化合物である固定化用器具の上記高分子化合物の層に、
    ゾルーゲル転移温度より高い温度で生物組織を接触さ
    せ、 上記固定化用器具の温度をゾルーゲル転移温度より低い
    温度に下げることにより上記高分子化合物の少なくとも
    一部を溶解させて、上記生物組織の一部または全部を液
    体状態の高分子化合物中に埋めた後、 上記固定化用器具の温度をゾルーゲル転移温度以上に高
    めて、液体状態の高分子化合物をゲル化させることによ
    り、該ゲル中に上記生物組織の一部又は全部を埋めて該
    生物組織を固定化用器具上に固定することを特徴とする
    生物組織の固定化法。
  6. 【請求項6】 ゾルーゲル転移温度より高い温度で、前
    記固定化用器具の高分子化合物の層上に上記生物組織を
    含む懸濁液を配置し、該生物組織を上記高分子化合物の
    層上に沈降させることにより、上記高分子化合物の層に
    生物組織を接触させる請求項5記載の生物組織の固定化
    法。
  7. 【請求項7】 固定化した生物組織を含む前記ゲルの温
    度をゾルーゲル転移温度より低い温度に下げることによ
    って該ゲルを溶解し、該生物組織の回収を行う請求項6
    記載の生物組織の固定化法。
  8. 【請求項8】 支持体と、該支持体上に配置された高分
    子化合物の層からなる固定化用器具であって;該高分子
    化合物が、曇点を有する複数のブロックと親水性のブロ
    ックとが結合してなり、その水溶液がゾルーゲル転移温
    度を有し、且つ該水溶液が上記ゾルーゲル転移温度より
    低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)を示す高分子
    化合物である固定化用器具の上記高分子化合物の層に、
    ゾルーゲル転移温度より高い温度で生物組織を接触さ
    せ、 上記固定化用器具の温度をゾルーゲル転移温度より低い
    温度に下げることにより上記高分子化合物の少なくとも
    一部を溶解させて、上記生物組織の一部または全部を液
    体状態の高分子化合物中に埋めた後、 上記固定化用器具の温度をゾルーゲル転移温度以上に高
    めて、液体状態の高分子化合物をゲル化させることによ
    り、該ゲル中に上記生物組織の一部又は全部を埋めて該
    生物組織を該固定化用器具上に固定し、 上記生物組織を培養することを特徴とする生物組織の培
    養法。
  9. 【請求項9】 ゾルーゲル転移温度より高い温度で、前
    記固定化用器具の高分子化合物の層上に上記生物組織を
    含む懸濁液を配置し、該生物組織を上記高分子化合物の
    層上に沈降させることにより、上記高分子化合物の層に
    生物組織を接触させる請求項8記載の生物組織の培養
    法。
  10. 【請求項10】 培養した生物組織を含む前記ゲルの温
    度をゾルーゲル転移温度より低い温度に下げることによ
    って該ゲルを溶解し、該生物組織の回収および/又は継
    代を行う請求項8記載の生物組織の培養法。
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