JPH0731464A - 細胞培養基材及びその製造方法 - Google Patents

細胞培養基材及びその製造方法

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JPH0731464A
JPH0731464A JP7914393A JP7914393A JPH0731464A JP H0731464 A JPH0731464 A JP H0731464A JP 7914393 A JP7914393 A JP 7914393A JP 7914393 A JP7914393 A JP 7914393A JP H0731464 A JPH0731464 A JP H0731464A
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cells
cell culture
culture substrate
spheroids
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Koichi Ueno
光一 上野
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WR Grace and Co
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Abstract

(57)【要約】 【目的】細胞の接着、増殖面積を規制することができ、
所望の細胞数からなるスフェロイドを容易に形成するこ
とができる細胞培養基材と、その簡便かつ経済的な製造
方法を提供すること。 【構成】LCSTを有する温度感応性高分子化合物と細
胞接着性物質からなる細胞培養基材において、その基材
がほぼ平な面と、その平面に対し45゜以上135°以
下の角度で立ち上がったエッジを有することを特徴とす
る細胞培養基材と、二段階からなるその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、所望の細胞数から構成
される機能細胞集合体(スフェロイド)を形成するため
に適した細胞培養基材に関する。また、本発明はその細
胞培養基材の製造方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】今日、細胞培養技術は、バイオテクノロ
ジーを支える上での重要な基礎技術の1つであると共
に、インターフェロンなどの細胞産生物の生産や、薬剤
の毒性及び薬理活性評価のシュミレーターとして既に広
く利用されている。従って、今後その重要性はますます
高まるものと考えられている。
【0003】この様に、広く利用されている細胞培養技
術ではあるが、従来の細胞培養法(単層培養法)には、
いくつかの問題点があった。その1つは、細胞が生体内
で有している特異的な機能を長期間維持することができ
ない点であり、もう1つは、生体内と同等な組織を再構
築する事ができない、という点であった。
【0004】これらの問題点を解決するための細胞培養
法として、スフェロイド培養法が、非常に注目を集めて
いる。スフェロイド培養法では、細胞が3次元集合体を
形成しているため、単層培養法と比較して、細胞の特異
的な機能を長期間維持でき、かつ、生体内と類似の3次
元構造を作ることができる。この特性を生かし、 1)薬剤の毒性及び薬理活性評価用のシュミレーター、
2)ハイブリッド型人工臓器、3)バイオリアクターな
どの分野で、スフェロイド培養法を利用した研究開発が
活発に行われている。
【0005】しかしながら、従来のスフェロイド形成法
は、細胞非接着性基質:たとえば、アガロース、寒天な
どをコートした培養皿など(J.Carlsson a
ndJ.M.Yunhas,p.p.1−23,RRC
R 95;Spheroids in Cancer
Research,Eds;H.Acker,J.Ca
rlsson R.Durand and R.M.S
utherland,Springer−Verla
g,1984)、または、細胞半接着性基質:たとえ
ば、プロテオグリカンをコートした培養皿、陽性荷電を
付与した培養皿など(N.Koide et al.,
Exp. Cell Res.,186 227,19
90)上で細胞を培養し、細胞が偶発的、または、自発
的に凝集して、スフェロイドを形成するものであった。
従って、スフェロイドを形成する細胞の種類は主に癌細
胞と肝細胞に限定され、かつ、スフェロイドの大きさを
コントロールすることはできず、形成されるスフェロイ
ドの大きさは非常に広い分布を持っていた。
【0006】スフェロイドの大きさは、スフェロイドを
構成する細胞の数に依存する。(竹沢、森、吉里;応用
細胞生物学研究、9:1−11,1991)即ち、従来
のスフェロイド形成法では、細胞数が制御されたスフェ
ロイドを作ることはできなかった。
【0007】以下には細胞数が制御されたスフェロイド
の必要性を述べる。生体は細胞の集合体であるが、細胞
血管が全身をくまなく覆っているために、生体のどの部
分の細胞も、栄養分や酸素の補給と老廃物の除去という
点において、十分な状態に保たれている。しかしなが
ら、現在、形成することのできるスフェロイドの大多数
は、生体の毛細血管に当たる、輸送のための管腔構造を
持たない。従って、大きなスフェロイド(例えば1mm
以上)においては、スフェロイドの中心部の細胞と外表
面の細胞では、酸素、栄養分の供給と老廃物の除去にお
いて大きな差がでてくると考えられる。スフェロイドを
或大きさ(例えば200μm)以下にすれば、スフェロ
イドを構成するすべての細胞をほぼ同じ状態にすること
が可能である。また、同じ大きさのスフェロイドを大量
に作製することができれば、スフェロイド間の細胞の状
態の差をなくすこともできる。
【0008】この様な大きさのそろった(細胞数が制御
された)スフェロイドを多量に製造することができれ
ば、従来の単層培養法に代わる応用分野を開発すること
もできる。
【0009】例えば、薬剤の毒性及び薬理活性評価用シ
ュミレーターを例にとってみると、従来の単層培養法で
は、細胞の生または死によってのみ、薬剤の毒性または
薬理活性を評価してきた。従って、細胞死に至らないよ
うな毒性を正確に評価することができなかった。しかし
ながら、スフェロイドを用いることにより、スフェロイ
ドの生死は勿論のこと、スフェロイド内の細胞が有する
特異的な機能の向上または低下、更に、スフェロイドが
形成する生体と類似の3次元構造に対する組織学的な検
査等により、従来法に代わる、非常に感度の高い薬剤の
毒性及び薬理活性評価用シュミレーターになると考えら
れる。仮にこの様な新しい評価方法が開発されると、現
在行われている動物実験を大幅に削減できものと期待さ
れる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】細胞数が制御されたス
フェロイドの形成方法として、特開平4−278083
号や特開平4−278075号に記載される方法が提案
されている。これらの方法は、温度感応性高分子化合物
と細胞接着性物質の混合物を細胞培養基材として用い、
かつ細胞の接着、増殖できる面積を制御することによ
り、細胞数が制御されたスフェロイドを大量に作製する
事ができるという画期的なものである。しかしながら、
これらのスフェロイド形成法に用いる培養基材は、前者
の場合はその製造工程が複雑であり、後者の場合は一部
の細胞(特に肝細胞)についてあまり効果的でない、と
言う欠点を有していた。そこで本発明はこれらの欠点を
改良した、細胞数が制御されたスフェロイドを形成する
ために用いる細胞培養基材を提供することを目的として
いる。更に、本発明はこのような培養基材の簡単な製造
方法を提供することも目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的は、本発明の細
胞培養基材とその製造方法により達成された。本発明の
細胞培養基材は、LCSTを有する温度感応性高分子化
合物と細胞接着性物質からなり、その基材がほぼ平な面
と、その平面に対し45°以上135°以下の角度で立
ち上がったエッジを有する。即ち、細胞の接着、増殖面
積は、平面より立ち上がったエッジにより規制される。
従って、所望する細胞数になるようにエッジを形成し、
細胞の接着、増殖面積を制御すれば、所望の細胞数から
構成されるスフェロイドを形成するのに適した細胞培養
基材になる。ここで言う平面より立ち上がったエッジと
は、必ずしも一連の壁のようなものでなくてもよく、あ
る程度の連続性を有した複数の壁のようなものからなっ
ていてもよい。
【0012】本発明の細胞培養基材の特徴は、平面に対
し45°以上135°以下の角度で立ち上がったエッジ
にある。この角度が45°未満または135°を越える
と、細胞がエッジを乗り越えてしまい、細胞の接着、増
殖面積を規制する効力がなくなる。この角度が60°以
上120°以下であるとより効果的である。
【0013】ここで言うLCST(Lower Cri
tical Solution Temperatur
e、臨界下限溶液温度)とは、温度感応性高分子化合物
の水和と脱水和の転移温度を言う。従ってLCSTを有
する温度感応性高分子化合物は、LCST以上の温度で
不溶性となって水に溶解せず、LCST以下の温度では
可溶性となって水に溶解する特徴がある。
【0014】本発明に用いることのできるLCSTを有
する温度感応性高分子化合物とは、培養する細胞に対し
毒性を示さないものであれば、特に限定されない。例え
ば、ポリN置換アクリルアミド誘導体、ポリN置換メタ
クリルアミド誘導体、ポリビニルメチルエーテル、ポリ
エチレンオキサイド、エーテル化メチルセルロース、ポ
リビニルアルコール部分酢化物などである。または、こ
れらの高分子同士の共重合体や、これら高分子を主成分
とする他の単量体との共重合体も用いることができる。
特に望ましいのは、ポリN置換アクリルアミド誘導体、
及びポリN置換メタクリルアミド誘導体である。
【0015】また、本発明に使用することができる細胞
接着性物質は、培養する細胞を変性させることなく接着
する物質であればよい。例えば、コラーゲン、フィブロ
ネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、プロテオグリカ
ン、グリコサミノグリカンなどの細胞外マトリクス成分
や、コラーゲンの熱変性物質であるゼラチンやその他コ
ラーゲン誘導体、細胞膜上の糖鎖に親和力を有するコン
カナバリンAなどのレクチン、イガイ由来の接着タンパ
ク質、フィブロネクチンと細胞との接着部位に対応する
接着性オリゴペプチドなどがあげられる。また、これら
の誘導体や変性物でもよいし、これらの混合物であって
もよい。従って、これらを紫外線等で架橋したものであ
ってもよい。
【0016】本発明のエッジにより規制された細胞の接
着、増殖エリアは、1つの平面に対し規則的に分布して
いると、同じサイズのスフェロイドを大量に作製するの
に効果的である。例えば、図1に示すように、同じ大き
さの円形の細胞の接着、増殖エリアが複数個存在してい
たり、図2に示すように格子状に並んでいるようにして
もよい。しかしながら、このパターンは特に限定される
ものではなく、規則性を有していなくても何等問題はな
い。したがって、大きさの異なるものが不規則に存在し
ていてもよい。
【0017】本発明のポイントである平面より立ち上が
ったエッジは、その平均の高さが2μm以上であること
が望ましく、特に望ましくは5μm以上である。2μm
未満であると、細胞がエッジを乗り越えてしまいエッジ
の効果がなくなってしまう。また、エッジの高さは、高
ければその効果が増すというものではなく、2〜30μ
m程度の高さで十分である。前にも述べたように平面よ
り立ち上がったエッジは一連の壁のようなものでなくて
もよく、従って壁の一部が崩れて連続性が損なわれてい
るような構造でも何等かまわない。この場合の平均の高
さとは、壁が崩れて連続性が損なわれたところも含めて
の高さを言う。
【0018】隣り合わせのエッジとエッジの距離は、培
養する細胞の大きさより広くなければならない。なぜな
ら、それ以下の広さであると細胞がエッジを跨いでしま
いエッジの効果がなくなるからである。一般に培養され
る細胞の大きさは20μm程度であるので、隣り合わせ
のエッジとエッジの距離は20μm以上であることが望
ましい。更に望ましくは、50μm以上である。この距
離が20μm未満であると、前にも述べたようにエッジ
が効果的に機能しない場合がある。一般的に形成するこ
とのできる隣り合わせのエッジとエッジの距離は、20
μm〜1mmである。
【0019】本発明の細胞培養基材の製造方法は、
(a)細胞接着性物質と温度感応性高分子化合物を含有
する層を形成する工程と、(b)その層の平面に対し4
5゜以上135°以下の角度で立ち上がったエッジを形
成する工程からなる。
【0020】工程(a)では、キャスト法やディップ法
など層を形成させることができる方法を広く採用するこ
とができる。コーティングされる支持体は、培養する細
胞に毒性を示さない、透明または半透明であるものが好
ましい。特に細胞を顕微鏡下で観察するのに十分な透明
性を有していることが好ましい。例えば、ガラス、ポリ
スチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステ
ル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミ
ド、ポリメチルメタクリレート、アクリル系樹脂などを
あげることができる。また、支持体の形状は、ディッシ
ュ、プレート、ボトル、チューブ、フラスコ、フィルム
などが一般的であるがこれらに限定されるものではな
い。
【0021】工程(b)でも、平面より立ち上がってエ
ッジを形成する方法を広く採用することができる。特に
針などの先端の鋭いものでコート層に傷をつけるように
してコート層の一部を立ち上がらせ、エッジを形成する
方法が、操作も簡便で効果的である。
【0022】以上述べたように、本発明は、所望の細胞
数から構成されるスフェロイドを形成するために、LC
STを有する温度感応性高分子化合物と細胞接着性物質
からなる細胞培養基材において、平面より立ち上がった
エッジにより細胞の接着、増殖面積を規制するところに
特徴がある。さらに本発明の細胞培養基材の製造方法に
よれば、性能が安定した細胞培養基材を簡便な方法で製
造することができる。
【0023】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的
に説明する。本発明の範囲は特許請求の範囲により限定
されるものであり、以下の実施例により限定されるもの
ではない。実施例で用いたコートディッシュの作製法と
培養評価実験法は、下記のとおりである。
【0024】コートディッシュの作製法 0.5%(w/v)牛真皮ペプシン可溶化タイプIコラ
ーゲン溶液(pH3)(KOKEN CELLGEN
I−PC,(株)高研製)と0.5%(w/v)ポリ−
N−イソプロピルアクリルアミド(以下PNIPAA
m、Mn=3.5x106)水溶液(塩酸でpH3に調
整、この溶液はオートクレーブ処理後再溶解したもの)
を、コラーゲンとPNIPAAmの混合比1対19にな
るように混合し、キャスティング溶液を調製した。この
キャスティング溶液の400μlを市販のφ35mmデ
ィッシュ(Falcon #3001、日本ベクトン
製)に分注し、すばやく均一にのばしてコーティングし
た。その後、10℃のインキュベーター内で約5時間乾
燥させた。乾燥後のコート層の厚みは約2μmであっ
た。乾燥後、紫外線照射装置(XX−100、波長25
4nm、フナコシ製)で紫外線を照射した。紫外線の照
射量は、培養評価実験に用いる細胞の種類によって変え
た。即ち、線維芽細胞の場合は2000J/m2、肝細
胞の場合は200J/m2とした。この条件が、それぞ
れの細胞に対し、最も優れた細胞の接着、増殖性と剥離
性を示すことは事前に確認した。これら一連の操作は無
菌環境で行われた。
【0025】培養評価実験法 1:線維芽細胞 ヒト真皮由来の線維芽細胞をダルベッコ改変イーグル培
地(D−MEM、10%牛胎児血清含有、GIBCO社
製)を用いて、最終細胞濃度が約2x105細胞/ml
になるように細胞分散液を作製し、37℃に保温した。
また、ディシュは、あらかじめ37℃に保温しておいた
プレート(マイクロウォームプレート、北里サプライ
製)の上にのせ保温し、細胞分散液を2ml注入した。
これを素早く37℃の炭酸ガスインキュベーター(5%
炭酸ガス)内に移し3日間培養した。
【0026】細胞の接着、増殖性については、37℃の
保温プレート上にディッシュをのせて位相差顕微鏡下で
観察した。
【0027】また、剥離性の観察は、ディッシュを氷上
に移し約3分間放置したのち室温で観察した。
【0028】2:肝細胞 肝実質細胞と非実質細胞は、雄性SD系ラットから、S
eglenのコラゲナーゼ灌流法(Seglen,P.
O.:Meth.Biol.13:29−83,197
6)に準じて分離した。更に、遠心分離法により肝実質
細胞と肝非実質細胞に分離した。こうして得た細胞は、
実質細胞と非実質細胞の混合比が1:5で、最終細胞濃
度が約4x106細胞/mlになるように、ウィリアム
E培地(WE、1%牛胎児血清含有、GIBCO社製)
に懸濁した。以下線維芽細胞と同様の操作をし、細胞培
養を行い、細胞の接着、増殖性と剥離性を観察した。
【0029】(実施例1)先に示した方法で作製したコ
ートディッシュに、市販のデバイスでコートした層に傷
をつけるようにφ5mmの円を描き、φ5mmの細胞の
接着、増殖面の端に、平面より立ち上がったエッジを形
成した。この様にして形成したエッジを電子顕微鏡(日
立製)と表面粗さ測定器(小坂研究所製)により分析し
た。結果を図3と図4に示す。図3に示したようにエッ
ジはコート層の平な面より立ち上がっていた。しかしな
がら、一連の壁のようなものではなく、所々壁が崩れて
連続性が途切れていることがわかった。図4に示したよ
うに、エッジは平らな面より約80°の角度で立ち上が
り、その高さは平均で約5μmであった。隣合ったエッ
ジとエッジの距離は約100μmであった。
【0030】(実施例2)実施例1に示した方法でエッ
ジを形成したディッシュを用いて、先に示した方法に則
り線維芽細胞を用いて培養評価実験を行った。ただし細
胞の培養面積は、φ5mm、φ10mm、φ15mm、
φ20mmとした。細胞の播種密度は、4×104細胞
/cmにした。図5と図6に細胞の接着、増殖性の観
察結果(位相差顕微鏡写真)、及び細胞の剥離性の観察
結果(位相差顕微鏡写真)を示す。図5に示したよう
に、エッジにより細胞の接着、増殖面積がはっきりと規
制されていることが明らかになった。図6に示したよう
に剥離の際に各エリアごとに細胞の剥離が始まり、最終
的には、各細胞の接着、増殖面積に等しい大きさの一枚
の細胞シートが回収できた。これは、デバイスにより形
成したエッジが細胞の接着、増殖面積を非常によく規制
しているためであった。こうして回収した細胞のシート
を疎水性のディッシュ(Falcon #1008、日
本ベクトン製)に移して培養し、スフェロイドを形成さ
せた。得られたスフェロイドの大きさを表1に示す。各
細胞の接着、増殖面積に対応する大きさのスフェロイド
を得ることができた。従って、この方法で作製したエッ
ジが線維芽細胞のスフェロイドのサイズコントロールに
効果的であることが明らかとなった。
【0031】
【表1】 細胞の接着、 回収した細胞 スフェロイド 増殖面積 シートの大きさ の大きさ φ5mm φ5mm 約350μm φ10mm φ10mm 約450μm φ15mm φ15mm 約680μm φ20mm φ20mm 約810μm (実施例3)市販のφ60mmディッシュ(Falco
n #3002、日本ベクトン製)を先に示した方法に
従いコートした。コートの厚みは2μmとした。図1に
示したパターンを打ち抜いたマスク(ポリエチレン製)
を用い、マスクのパターンに沿って、デバイスの芯でマ
スクのパターンと同じようにφ5mmの円を24個描い
た。実施例2と同様に、線維芽細胞を用いて培養評価実
験を行った。細胞の播種密度は、4×104細胞/cm
にした。細胞の剥離を行うため、ディッシュを氷上に
移すと、実施例2と同様に、各エリアごとに細胞の剥離
が始まり、最終的には、φ5mmの同じ大きさの24枚
の細胞シートが1枚のディッシュから回収できた。こう
して回収した24枚の細胞のシートを1枚ずつ疎水性の
ディッシュに移し培養し、スフェロイドを形成させた。
得られたスフェロイドのサイズ分布は352±16μm
であった。従って、この方法で作製したエッジにより、
同じサイズのスフェロイドを1枚のディッシュから複数
個作れることが明らかになった。
【0032】(実施例4)実施例2と同じディッシュを
用い、同じようにエッジを形成した。ただし、細胞の接
着、増殖面積は、φ5mm、φ8mm、φ12mm、φ
18mmの4種類とし、肝細胞を用いて培養評価実験を
行った。細胞の播種密度は、6×10細胞/cm
した。結果を表2に示す。実施例2、3と同様に、それ
ぞれの細胞の接着、増殖面積に等しい大きさの細胞シー
トを回収することができた。これらの細胞シートは、表
2に示したような大きさのスフェロイドとなり、細胞の
接着、増殖面積を制御することによりスフェロイドのサ
イズを制御することができた。従って、この方法で作製
したエッジは、線維芽細胞だけでなく、肝細胞のスフェ
ロイドのサイズコントロールにも有効であることが明ら
かとなった。また、細胞の接着、増殖面積の大きさに関
わり無く有効であることも明らかとなった。
【0033】
【表2】 細胞の接着、 回収した細胞 スフェロイド 増殖面積 シートの大きさ の大きさ φ5mm φ5mm 約470μm φ8mm φ8mm 約540μm φ12mm φ12mm 約770μm φ18mm φ18mm 約1320μm (比較例1)先に示した方法でコートディッシュを作製
する際に、φ12mmの穴があいたポリエチレン製の紫
外線照射マスクをコート面に置き、紫外線の照射を行っ
た。この場合、穴の部分だけ紫外線が照射されることに
なる。この様にして作製したディッシュを用いて培養評
価試験を行った。線維芽細胞の場合、紫外線が照射され
た部分にのみ細胞が接着し、穴と同じ大きさの細胞シー
トを回収することができた。しかしながら、肝細胞の場
合、紫外線が照射されていない部分にまで細胞は接着
し、穴の大きさと同じ大きさの細胞シートを回収するこ
とができなかった。従って、紫外線照射マスク法は、線
維芽細胞には有効であったが、肝細胞には効果がないこ
とが明らかとなった。
【発明の効果】本発明の細胞培養基材は、平面より45
°以上135°以下の角度で立ち上がったエッジを有し
ているために、多くの細胞に対して、その細胞の接着、
増殖面積を規制することができる。したがって、本発明
の細胞培養基材を用いることによって、所望の細胞数か
らなるスフェロイドを容易に形成することができるよう
になった。さらに本発明の細胞培養基材の製造方法によ
れば、性能が安定した細胞培養基材を経済的かつ簡便に
製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エッジにより規制された細胞の接着、増殖エリ
アのパターン例を示した図である。
【図2】エッジにより規制された細胞の接着、増殖エリ
アのパターン例を示した図である。
【図3】平面より立ち上がったエッジの電子顕微鏡写真
である(倍率41倍)。
【図4】平面より立ち上がったエッジを表面粗さ測定器
で分析した結果を示した図である。 Z(たて)×1000 X(よこ)×50 Y(前後)×50
【図5】線維芽細胞の接着、増殖性を示す位相差顕微鏡
写真である(倍率32倍)。
【図6】線維芽細胞の剥離性を示す位相差顕微鏡写真で
ある(倍率32倍)。
【符号の説明】
1−エッジ 2−細胞の接着、増殖エリア

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】LCSTを有する温度感応性高分子化合物
    と細胞接着性物質からなる細胞培養基材において、その
    基材がほぼ平な面と、その平面に対し45゜以上135
    °以下の角度で立ち上がったエッジを有することを特徴
    とする細胞培養基材。
  2. 【請求項2】エッジの高さの平均が2μm以上であるこ
    とを特徴とする請求項1の細胞培養基材。
  3. 【請求項3】隣り合わせのエッジとエッジの距離が20
    μm以上であることを特徴とする請求項1または2の細
    胞培養基材。
  4. 【請求項4】(a)細胞接着性物質と温度感応性高分子
    化合物を含有する層を形成する工程 (b)その層の平面に対し45゜以上135°以下の角
    度で立ち上がったエッジを 形成する工程 からなる請求項1、2または3の細胞培養基材の製造方
    法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009524414A (ja) * 2006-01-24 2009-07-02 ブラウン ユニバーシティ 細胞凝集及び封入デバイス及び方法
WO2020013345A1 (ja) * 2018-07-11 2020-01-16 学校法人松本歯科大学 親水性の違いを利用したスフェロイドの製造方法

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