JP3408718B2 - 金属材表面被膜構造の形成方法 - Google Patents
金属材表面被膜構造の形成方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属材表面の被膜
構造の形成方法に関する。 【0002】 【従来の技術】外観を良くし、耐食性を向上させる塗装
方法として知られている代表的なものはつぎの通りであ
る。 1. エポキシ粉体プライマー+溶剤有色塗料+溶剤クリ
ヤー 2. ポリエステル粉体プライマー+溶剤有色塗料+溶剤
クリヤー 3. エポキシ・ポリエステルハイブリッド粉体プライマ
ー+溶剤有色塗料+溶剤クリヤー 4. 上記1.2.3.において溶剤クリヤーを粉体(ポリエス
テル、エポキシ、アクリル)クリヤーにしたもの 上記のうち溶剤塗料の塗り重ね(上記1.、2.、3.のよう
に溶剤有色塗料+溶剤クリヤー)は広く使用されている
が、外観的に品質が少々落ちるので、高級な商品性を求
める最近の傾向から粉体を使用した上記4.の塗装系が使
用されるようになってきている。上記4.の塗装系の中
で、塗装性能面で判断すると、トップコートにエポキ
シ、またはポリエステル、またはエポキシ・ポリエステ
ルハイブリッド系粉体塗料を用いたものは糸錆の発生が
見られ、対候性に難点がある。また、プライマーとして
使用している粉体塗料にエポキシまたはポリエステルを
使用したものは、密着性や耐食性で必ずしも十分とはい
えず、現在もっとも信頼できる、粉体塗料を使用した塗
装系は、 4'. エポキシ・ポリエステルハイブリッド粉体プライマ
ー+アクリル系溶剤有色塗料+アクリル系粉体クリヤー であるとされている(たとえば、特開平5−20231
9号公報、特開平5−209140号公報、特開平5−
209141号公報参照)。なお、従来のアルミホイー
ル粉装用前処理(アルミ下地処理)は、上に列記の公報
に開示されているように、以下の形態が一般に採用され
ている。 水洗→脱脂→水洗→化成処理→水洗 そして、脱脂に用いられる薬品はシリケート系の弱アル
カリ洗剤が主である。また、化成処理はクロム酸による
クロメート処理が一般的である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、下地前処理に
ついてはつぎの問題がある。すなわち、前処理において
最重要ポイントはアルミ表面へのクロム付着量である
が、従来の下地処理ではこの付着量にバラツキが発生す
ることが確認されている。原因の1としては脱脂段階で
必ずしも前工程(例えば切削工程)の油分、ゴミ、大気
中からの汚染吸着物質が完全に除去されないこと。2と
して、アルミホイール表面上の酸化物の被覆、あるいは
クロメート処理液への雑イオンの持込み等によりアルミ
ホイール表面へのクロム付着が阻害され、クロメート処
理本来の性能が十分に発揮されないことにある。上記問
題点を解決するために出願人は、先に、特願平8ー27
4585のなかで、プライマー層を形成する工程の前に
金属材の素地の下地処理工程を設け、化成処理工程の前
に酸洗処理工程を設けることにより、クロメート処理を
安定化させ、クロム被膜量を安定化させることにより、
塗装性能を向上させる方法を提案した。しかし、この下
地処理方法は、塗装性能を向上させることができるが、
工程の詳細としては、水洗→脱脂→水洗→酸洗→水洗→
化成処理→水洗となるため各工程の設備費用と処理費用
がかさむため、一方での要求であるコストダウンには対
応できなかった。本発明の目的は、下地処理を安定化さ
せることにより塗装性能を向上させた金属材表面被膜構
造の形成方法を低価格で提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明はつぎの通りである。アルミホイールからなる金属材
の素地上に、アクリル系粉体塗料からなるプライマー層
を形成する工程と、前記プライマー層上に、有色溶剤系
塗料からなるベースコート層を形成する工程と、前記ベ
ースコート層上に、アクリル系粉体クリヤー塗料からな
るトップコート層を形成する工程と、からなる金属材表
面被膜構造の形成方法であって、前記プライマー層を形
成する工程の前に、金属材の素地の下地処理工程を設
け、この下地処理工程は、酸洗効果を付与した脱脂処理
工程、クロメート処理工程の順に行うことを特徴とする
金属材表面被膜構造の形成方法。 【0005】上記本発明の方法では、酸洗効果を付与し
た脱脂処理工程としたので、クロメート処理において、
クロム被膜量が均一かつ安定的に形成され、その上に形
成される塗膜が安定するとともに、酸洗工程を省略で
き、設備費用、工程処理費用を削減できる。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明の金属材表面被膜構造の形
成方法は、図2に示すように、金属材の素地1上に形成
されたアクリル系粉体塗料からなるプライマー層2と、
プライマー層2上に形成された有色溶剤系塗料からなる
ベースコート層3と、ベースコート層3上に形成された
アクリル系粉体クリヤー塗料からなるトップコート層4
と、からなる金属材表面被膜構造を形成するものであ
る。金属材素地1は、たとえばアルミニウム合金、マグ
ネシウム合金、鉄などからの金属からなる任意の部材で
あり、たとえば、アルミニウム合金ホイール(アルミホ
イール)からなる。 【0007】プライマー層2のアクリル系粉体塗料に
は、トップコート層4のアクリル系粉体クリヤー塗料と
同じ粉体塗料を用いることが望ましい。これは、トップ
コート層4形成時にブース内にこぼれ落ちた塗料をプラ
イマー層2用のアクリル系粉体塗料用に回収、再利用す
るためである。アクリル系粉体塗料からなるプライマー
層2の厚さは、20〜40μm(1μmは10-6m)程
度である。これは、素地1の鋳肌を出さずさび止めを果
たし素地の凹凸を埋めて平坦面とするには20μm程度
以上が望ましく、塗料量の消費を少なくする上から40
μm程度以下が望ましいからである。なお、粉体塗装で
は、塗料粒の大きさは通常3〜6μm程度であり、必要
厚さの層を速やかに形成することができる。 【0008】ベースコート層3の有色溶剤系塗料には、
溶剤量を減じて環境問題を起こさないようにするために
ハイソリッド(固形成分が40重量%以上)と、メタリ
ック塗料(アルミニウム微粉末は平均径が5〜15μm
程度の鱗片状のものが望ましい)の見栄えの良さ(光沢
のある金属感)を持つためとから、アクリルハイソリッ
ドメタリック塗料が用いられることが望ましい。ベース
コート層3の厚さは10〜30μm程度である。これは
アルミニウム微粉末の表面への突出を抑えるためには少
なくとも10μm程度が必要であること、および、塗料
量の消費を少なくする上から30μm程度以下が望まし
いからである。ベースコート層3の色は、トップコート
層4がクリヤー(透明)のため、ベースコート層3の色
がそのまま外から見えるため、金属材表面被膜構造に要
求される色と同じ色とする。 【0009】トップコート層4のアクリル系粉体クリヤ
ー塗料は、熱硬化性アクリル樹脂を主成分としたもので
ある。熱硬化性アクリル樹脂は、アクリル酸およびメタ
クリル酸エステル、スチレンの他、各種活性官能基をも
つアクリルモノマーの鎖状共重合ポリマーである。グリ
シジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−
メチルグリシジルアクリレート、β−メチルグリシジル
メタクリレート、トリグリシジルイソシアヌレートアク
リレートなどのアクリルグリシジル系樹脂などは、熱硬
化性アクリル樹脂に含まれる。これらのプレポリマーを
単独または共反応樹脂(アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ア
ルキド樹脂、ポリアミン、2塩基酸無水物など)と混合
して塗膜主要素とする。加熱(焼付け)によりアクリル
樹脂同士あるいは共反応樹脂と橋かけ重合して編目構造
塗膜が形成される。トップコート層4の厚さは10〜5
0μm程度が望ましい。これは、50μm程度より厚く
しても保護機能は増さないし形成に時間がかかるだけで
あり、10μm程度より薄いと保護機能が十分でなくな
るからである。トップコート層4は、アクリル系の樹脂
塗料を静電塗装(エアー吹きつけ塗装でもよい)するこ
とにより、形成される。 【0010】本発明の金属材表面被膜構造の形成方法
は、図1の工程図に示すように金属材(たとえば、アル
ミホイール)の素地1上にアクリル系粉体塗料からなる
プライマー層2を形成する工程101と、プライマー層
2上に有色溶剤系塗料(望ましくは、メタリック塗料)
からなるベースコート層3を形成する工程102と、ベ
ースコート層3上にアクリル系粉体クリヤー塗料からな
るトップコート層4を形成する工程103と、からな
る。なお、プライマー層2を形成する工程の前に金属材
の素地1の下地処理工程が設けられる。プライマー層2
の樹脂塗料にはトップコート層4の樹脂塗料と同じもの
を用いることが望ましい。それは、これは、トップコー
ト層4形成時にブース内にこぼれ落ちた塗料をプライマ
ー層2用のアクリル系粉体塗料用に回収、再利用するた
めである。 【0011】下地処理工程では、クロムを安定的かつ均
一に付着させるため、酸洗効果を付与した脱脂処理→水
洗処理→化成処理→水洗処理の工程で行う。つぎに、プ
ライマー層2を静電粉体塗装(エアー吹きつけでもよ
い)により形成する。プライマー層2の形成工程では、
静電粉体塗装の場合は、接地した被塗物(金属材の素地
1)とガンの電極との間に直流高電圧(30〜90k
V)を印加し、一方、アクリル系クリアー粉体塗料(粒
径は約3〜6μm)を空気力によってガンから噴射す
る。空気中に分散した粉体粒子はガンの電極で起こるコ
ロナ放電によって発生するイオン化空気と衝突して荷電
し、ガンと被塗物間の静電場の作用と空気流によって被
塗物に向かい、静電気力で被塗物表面に吸着する。プラ
イマー層2の厚さは20〜40μm程度に形成する。塗
装後、炉内にて、約150〜200°Cで、約10〜4
0分、焼付け、乾燥する。焼付けにおいて、塗料は橋か
け重合して編目構造塗膜が形成される。 【0012】ベースコート層3の形成工程では、アクリ
ル系有色溶剤塗料(平均径が5〜15μmのアルミニウ
ム微粉末を含むメタリック塗料で、かつ、固形成分が約
40重量%以上のハイソリッド塗料であることが望まし
い)をプライマー層2の上に厚さ10〜30μm程度塗
布した後、130〜190℃で焼付けする。 【0013】トップコート層4の形成工程では、ブース
内にて、アクリル系粉体塗料(プライマー層2の塗料と
同じもの)を用いて、被塗物のベースコート層3の上
に、静電粉体塗装(エアー吹きつけでもよい)により、
厚さ20〜50μmに、塗装する。その後、130〜2
00℃で15〜60分間焼付けする。かくして形成され
たトップコート層4はベースコート層3の保護層として
機能する。 【0014】下地処理工程で言う酸洗効果を付与した脱
脂処理の作用とは、脱脂のみでは完全に除去されない前
工程(例えば切削工程)の油分、ゴミ、大気中からの汚
染吸着物質、酸化被膜の除去等により、アルミホイール
表面へのクロムの付着を促進し、クロメート処理本来の
性能を最大限に発揮させることを意味する。 【0015】 【実施例】自動車用アルミホイール素地の上にアクリル
系粉体プライマー層(トップコート層と同じ種類の樹
脂)、溶剤有色系ベースコート層、アクリル系粉体クリ
ヤートップコート層をこの順で形成した本発明実施例品
と、アルミニウム素地の上にエポキシ・ポリエステルハ
イブリッド粉体プライマー層、溶剤有色系ベースコート
層、アクリル系粉体クリヤートップコート層をこの順で
形成した比較品とを作製し、塗装性能テスト(耐候性試
験、糸錆試験、外観試験)を行うとともに、塗料歩留り
を調べた。 【0016】耐候性試験では、サンシャインウエザオメ
ータにより600時間暴露試験し、その後、50℃、相
対湿度98%において240時間保持し、24時間放置
した後で、碁盤目試験(1mm×1mmの碁盤目100
個)を行い、各碁盤目の剥離、変色を調べた。糸錆試験
では、表面にナイフによりクロスカットを入れ、5重量
%の塩水を35℃で24時間噴霧し、その後40℃で相
対湿度82%に240時間保持するサイクルを3回繰り
返して腐食の度合い(錆、塗膜のふくれの発生の有無)
を調べた。外観試験では、目視によりトップコート層表
面の平滑度を調べた。塗料歩留りでは、クリヤートップ
コート層のアクリル系粉体塗料の歩留りを調べた。クリ
ヤートップコート層形成時にブース内にこぼれ落ちた塗
料のうち回収されてプライマー層の塗料として利用でき
たものは、利用された塗料(廃棄されなかった塗料)と
してカウントした。比較品ではこぼれ落ちた塗料は、
(種類が違うため)プライマー層には利用できないの
で、廃棄した。 【0017】試験結果は、本発明実施例品の塗装性能
(耐候性、糸錆発生抑制、外観)は酸洗工程を単独に設
けたものに比較して同等であることが確認された。ま
た、外観試験では、本発明の方法では十分な平滑面を得
ることができることが確認された。 【0018】つぎに、下地処理における酸洗効果を付与
した脱脂処理の効果を見るために、本発明の方法を実施
した製品とクロメート処理前に酸洗工程を単独で設けた
場合との製品との比較を行った。それぞれについてサン
シャインテスト(ただし、1200時間暴露とし他は前
記と同条件)、糸錆試験(前記と同じ、3サイクルクロ
スカット)、複合腐食試験(塩水噴霧4時間、60°C
2時間乾燥、50°C相対湿度95%2時間保持を、1
0サイクル繰り返し、クロスカット周辺のふくれ、錆の
長さを見る)を行った。 【0019】下地処理において、クロメート化成処理前
に酸洗効果を付与した脱脂処理工程を設けたので、、塗
装が安定し、錆発生、ふくれなどが抑制されることが確
認された。 【0020】 【発明の効果】本発明の方法によれば、酸洗効果を付与
した脱脂処理工程としたので、クロメート処理におい
て、クロム被膜量が均一かつ安定的に形成され、その上
に形成される塗膜が安定するとともに、酸洗工程を省略
でき、設備費用、工程処理費用を削減できる。プライマ
ー層形成前の下地素地処理工程において、化成処理前に
酸洗工程を設けたので、化成処理でクロム被膜量を安定
的に形成でき、その上に形成される塗膜の塗装性能を向
上することができる。
構造の形成方法に関する。 【0002】 【従来の技術】外観を良くし、耐食性を向上させる塗装
方法として知られている代表的なものはつぎの通りであ
る。 1. エポキシ粉体プライマー+溶剤有色塗料+溶剤クリ
ヤー 2. ポリエステル粉体プライマー+溶剤有色塗料+溶剤
クリヤー 3. エポキシ・ポリエステルハイブリッド粉体プライマ
ー+溶剤有色塗料+溶剤クリヤー 4. 上記1.2.3.において溶剤クリヤーを粉体(ポリエス
テル、エポキシ、アクリル)クリヤーにしたもの 上記のうち溶剤塗料の塗り重ね(上記1.、2.、3.のよう
に溶剤有色塗料+溶剤クリヤー)は広く使用されている
が、外観的に品質が少々落ちるので、高級な商品性を求
める最近の傾向から粉体を使用した上記4.の塗装系が使
用されるようになってきている。上記4.の塗装系の中
で、塗装性能面で判断すると、トップコートにエポキ
シ、またはポリエステル、またはエポキシ・ポリエステ
ルハイブリッド系粉体塗料を用いたものは糸錆の発生が
見られ、対候性に難点がある。また、プライマーとして
使用している粉体塗料にエポキシまたはポリエステルを
使用したものは、密着性や耐食性で必ずしも十分とはい
えず、現在もっとも信頼できる、粉体塗料を使用した塗
装系は、 4'. エポキシ・ポリエステルハイブリッド粉体プライマ
ー+アクリル系溶剤有色塗料+アクリル系粉体クリヤー であるとされている(たとえば、特開平5−20231
9号公報、特開平5−209140号公報、特開平5−
209141号公報参照)。なお、従来のアルミホイー
ル粉装用前処理(アルミ下地処理)は、上に列記の公報
に開示されているように、以下の形態が一般に採用され
ている。 水洗→脱脂→水洗→化成処理→水洗 そして、脱脂に用いられる薬品はシリケート系の弱アル
カリ洗剤が主である。また、化成処理はクロム酸による
クロメート処理が一般的である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、下地前処理に
ついてはつぎの問題がある。すなわち、前処理において
最重要ポイントはアルミ表面へのクロム付着量である
が、従来の下地処理ではこの付着量にバラツキが発生す
ることが確認されている。原因の1としては脱脂段階で
必ずしも前工程(例えば切削工程)の油分、ゴミ、大気
中からの汚染吸着物質が完全に除去されないこと。2と
して、アルミホイール表面上の酸化物の被覆、あるいは
クロメート処理液への雑イオンの持込み等によりアルミ
ホイール表面へのクロム付着が阻害され、クロメート処
理本来の性能が十分に発揮されないことにある。上記問
題点を解決するために出願人は、先に、特願平8ー27
4585のなかで、プライマー層を形成する工程の前に
金属材の素地の下地処理工程を設け、化成処理工程の前
に酸洗処理工程を設けることにより、クロメート処理を
安定化させ、クロム被膜量を安定化させることにより、
塗装性能を向上させる方法を提案した。しかし、この下
地処理方法は、塗装性能を向上させることができるが、
工程の詳細としては、水洗→脱脂→水洗→酸洗→水洗→
化成処理→水洗となるため各工程の設備費用と処理費用
がかさむため、一方での要求であるコストダウンには対
応できなかった。本発明の目的は、下地処理を安定化さ
せることにより塗装性能を向上させた金属材表面被膜構
造の形成方法を低価格で提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明はつぎの通りである。アルミホイールからなる金属材
の素地上に、アクリル系粉体塗料からなるプライマー層
を形成する工程と、前記プライマー層上に、有色溶剤系
塗料からなるベースコート層を形成する工程と、前記ベ
ースコート層上に、アクリル系粉体クリヤー塗料からな
るトップコート層を形成する工程と、からなる金属材表
面被膜構造の形成方法であって、前記プライマー層を形
成する工程の前に、金属材の素地の下地処理工程を設
け、この下地処理工程は、酸洗効果を付与した脱脂処理
工程、クロメート処理工程の順に行うことを特徴とする
金属材表面被膜構造の形成方法。 【0005】上記本発明の方法では、酸洗効果を付与し
た脱脂処理工程としたので、クロメート処理において、
クロム被膜量が均一かつ安定的に形成され、その上に形
成される塗膜が安定するとともに、酸洗工程を省略で
き、設備費用、工程処理費用を削減できる。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明の金属材表面被膜構造の形
成方法は、図2に示すように、金属材の素地1上に形成
されたアクリル系粉体塗料からなるプライマー層2と、
プライマー層2上に形成された有色溶剤系塗料からなる
ベースコート層3と、ベースコート層3上に形成された
アクリル系粉体クリヤー塗料からなるトップコート層4
と、からなる金属材表面被膜構造を形成するものであ
る。金属材素地1は、たとえばアルミニウム合金、マグ
ネシウム合金、鉄などからの金属からなる任意の部材で
あり、たとえば、アルミニウム合金ホイール(アルミホ
イール)からなる。 【0007】プライマー層2のアクリル系粉体塗料に
は、トップコート層4のアクリル系粉体クリヤー塗料と
同じ粉体塗料を用いることが望ましい。これは、トップ
コート層4形成時にブース内にこぼれ落ちた塗料をプラ
イマー層2用のアクリル系粉体塗料用に回収、再利用す
るためである。アクリル系粉体塗料からなるプライマー
層2の厚さは、20〜40μm(1μmは10-6m)程
度である。これは、素地1の鋳肌を出さずさび止めを果
たし素地の凹凸を埋めて平坦面とするには20μm程度
以上が望ましく、塗料量の消費を少なくする上から40
μm程度以下が望ましいからである。なお、粉体塗装で
は、塗料粒の大きさは通常3〜6μm程度であり、必要
厚さの層を速やかに形成することができる。 【0008】ベースコート層3の有色溶剤系塗料には、
溶剤量を減じて環境問題を起こさないようにするために
ハイソリッド(固形成分が40重量%以上)と、メタリ
ック塗料(アルミニウム微粉末は平均径が5〜15μm
程度の鱗片状のものが望ましい)の見栄えの良さ(光沢
のある金属感)を持つためとから、アクリルハイソリッ
ドメタリック塗料が用いられることが望ましい。ベース
コート層3の厚さは10〜30μm程度である。これは
アルミニウム微粉末の表面への突出を抑えるためには少
なくとも10μm程度が必要であること、および、塗料
量の消費を少なくする上から30μm程度以下が望まし
いからである。ベースコート層3の色は、トップコート
層4がクリヤー(透明)のため、ベースコート層3の色
がそのまま外から見えるため、金属材表面被膜構造に要
求される色と同じ色とする。 【0009】トップコート層4のアクリル系粉体クリヤ
ー塗料は、熱硬化性アクリル樹脂を主成分としたもので
ある。熱硬化性アクリル樹脂は、アクリル酸およびメタ
クリル酸エステル、スチレンの他、各種活性官能基をも
つアクリルモノマーの鎖状共重合ポリマーである。グリ
シジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−
メチルグリシジルアクリレート、β−メチルグリシジル
メタクリレート、トリグリシジルイソシアヌレートアク
リレートなどのアクリルグリシジル系樹脂などは、熱硬
化性アクリル樹脂に含まれる。これらのプレポリマーを
単独または共反応樹脂(アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ア
ルキド樹脂、ポリアミン、2塩基酸無水物など)と混合
して塗膜主要素とする。加熱(焼付け)によりアクリル
樹脂同士あるいは共反応樹脂と橋かけ重合して編目構造
塗膜が形成される。トップコート層4の厚さは10〜5
0μm程度が望ましい。これは、50μm程度より厚く
しても保護機能は増さないし形成に時間がかかるだけで
あり、10μm程度より薄いと保護機能が十分でなくな
るからである。トップコート層4は、アクリル系の樹脂
塗料を静電塗装(エアー吹きつけ塗装でもよい)するこ
とにより、形成される。 【0010】本発明の金属材表面被膜構造の形成方法
は、図1の工程図に示すように金属材(たとえば、アル
ミホイール)の素地1上にアクリル系粉体塗料からなる
プライマー層2を形成する工程101と、プライマー層
2上に有色溶剤系塗料(望ましくは、メタリック塗料)
からなるベースコート層3を形成する工程102と、ベ
ースコート層3上にアクリル系粉体クリヤー塗料からな
るトップコート層4を形成する工程103と、からな
る。なお、プライマー層2を形成する工程の前に金属材
の素地1の下地処理工程が設けられる。プライマー層2
の樹脂塗料にはトップコート層4の樹脂塗料と同じもの
を用いることが望ましい。それは、これは、トップコー
ト層4形成時にブース内にこぼれ落ちた塗料をプライマ
ー層2用のアクリル系粉体塗料用に回収、再利用するた
めである。 【0011】下地処理工程では、クロムを安定的かつ均
一に付着させるため、酸洗効果を付与した脱脂処理→水
洗処理→化成処理→水洗処理の工程で行う。つぎに、プ
ライマー層2を静電粉体塗装(エアー吹きつけでもよ
い)により形成する。プライマー層2の形成工程では、
静電粉体塗装の場合は、接地した被塗物(金属材の素地
1)とガンの電極との間に直流高電圧(30〜90k
V)を印加し、一方、アクリル系クリアー粉体塗料(粒
径は約3〜6μm)を空気力によってガンから噴射す
る。空気中に分散した粉体粒子はガンの電極で起こるコ
ロナ放電によって発生するイオン化空気と衝突して荷電
し、ガンと被塗物間の静電場の作用と空気流によって被
塗物に向かい、静電気力で被塗物表面に吸着する。プラ
イマー層2の厚さは20〜40μm程度に形成する。塗
装後、炉内にて、約150〜200°Cで、約10〜4
0分、焼付け、乾燥する。焼付けにおいて、塗料は橋か
け重合して編目構造塗膜が形成される。 【0012】ベースコート層3の形成工程では、アクリ
ル系有色溶剤塗料(平均径が5〜15μmのアルミニウ
ム微粉末を含むメタリック塗料で、かつ、固形成分が約
40重量%以上のハイソリッド塗料であることが望まし
い)をプライマー層2の上に厚さ10〜30μm程度塗
布した後、130〜190℃で焼付けする。 【0013】トップコート層4の形成工程では、ブース
内にて、アクリル系粉体塗料(プライマー層2の塗料と
同じもの)を用いて、被塗物のベースコート層3の上
に、静電粉体塗装(エアー吹きつけでもよい)により、
厚さ20〜50μmに、塗装する。その後、130〜2
00℃で15〜60分間焼付けする。かくして形成され
たトップコート層4はベースコート層3の保護層として
機能する。 【0014】下地処理工程で言う酸洗効果を付与した脱
脂処理の作用とは、脱脂のみでは完全に除去されない前
工程(例えば切削工程)の油分、ゴミ、大気中からの汚
染吸着物質、酸化被膜の除去等により、アルミホイール
表面へのクロムの付着を促進し、クロメート処理本来の
性能を最大限に発揮させることを意味する。 【0015】 【実施例】自動車用アルミホイール素地の上にアクリル
系粉体プライマー層(トップコート層と同じ種類の樹
脂)、溶剤有色系ベースコート層、アクリル系粉体クリ
ヤートップコート層をこの順で形成した本発明実施例品
と、アルミニウム素地の上にエポキシ・ポリエステルハ
イブリッド粉体プライマー層、溶剤有色系ベースコート
層、アクリル系粉体クリヤートップコート層をこの順で
形成した比較品とを作製し、塗装性能テスト(耐候性試
験、糸錆試験、外観試験)を行うとともに、塗料歩留り
を調べた。 【0016】耐候性試験では、サンシャインウエザオメ
ータにより600時間暴露試験し、その後、50℃、相
対湿度98%において240時間保持し、24時間放置
した後で、碁盤目試験(1mm×1mmの碁盤目100
個)を行い、各碁盤目の剥離、変色を調べた。糸錆試験
では、表面にナイフによりクロスカットを入れ、5重量
%の塩水を35℃で24時間噴霧し、その後40℃で相
対湿度82%に240時間保持するサイクルを3回繰り
返して腐食の度合い(錆、塗膜のふくれの発生の有無)
を調べた。外観試験では、目視によりトップコート層表
面の平滑度を調べた。塗料歩留りでは、クリヤートップ
コート層のアクリル系粉体塗料の歩留りを調べた。クリ
ヤートップコート層形成時にブース内にこぼれ落ちた塗
料のうち回収されてプライマー層の塗料として利用でき
たものは、利用された塗料(廃棄されなかった塗料)と
してカウントした。比較品ではこぼれ落ちた塗料は、
(種類が違うため)プライマー層には利用できないの
で、廃棄した。 【0017】試験結果は、本発明実施例品の塗装性能
(耐候性、糸錆発生抑制、外観)は酸洗工程を単独に設
けたものに比較して同等であることが確認された。ま
た、外観試験では、本発明の方法では十分な平滑面を得
ることができることが確認された。 【0018】つぎに、下地処理における酸洗効果を付与
した脱脂処理の効果を見るために、本発明の方法を実施
した製品とクロメート処理前に酸洗工程を単独で設けた
場合との製品との比較を行った。それぞれについてサン
シャインテスト(ただし、1200時間暴露とし他は前
記と同条件)、糸錆試験(前記と同じ、3サイクルクロ
スカット)、複合腐食試験(塩水噴霧4時間、60°C
2時間乾燥、50°C相対湿度95%2時間保持を、1
0サイクル繰り返し、クロスカット周辺のふくれ、錆の
長さを見る)を行った。 【0019】下地処理において、クロメート化成処理前
に酸洗効果を付与した脱脂処理工程を設けたので、、塗
装が安定し、錆発生、ふくれなどが抑制されることが確
認された。 【0020】 【発明の効果】本発明の方法によれば、酸洗効果を付与
した脱脂処理工程としたので、クロメート処理におい
て、クロム被膜量が均一かつ安定的に形成され、その上
に形成される塗膜が安定するとともに、酸洗工程を省略
でき、設備費用、工程処理費用を削減できる。プライマ
ー層形成前の下地素地処理工程において、化成処理前に
酸洗工程を設けたので、化成処理でクロム被膜量を安定
的に形成でき、その上に形成される塗膜の塗装性能を向
上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の金属表面被膜構造形成方法
の工程図である。 【図2】本発明の一実施例の方法により形成した金属材
表面被膜構造の拡大断面図である。 【符号の説明】 1 金属材の素地 2 プライマー層 3 ベースコート層 4 トップコート層
の工程図である。 【図2】本発明の一実施例の方法により形成した金属材
表面被膜構造の拡大断面図である。 【符号の説明】 1 金属材の素地 2 プライマー層 3 ベースコート層 4 トップコート層
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI
B32B 15/08 102 B32B 15/08 102Z
C23C 22/24 C23C 22/24
(56)参考文献 特開 平5−146752(JP,A)
特開 平4−41565(JP,A)
特開 平5−302042(JP,A)
特開 平7−278464(JP,A)
特開 平10−24524(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
B05D 7/14
B05D 3/10
B05D 7/24 301
B05D 7/24 302
C23C 22/24
B32B 15/08
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 アルミホイールからなる金属材の素地上
に、アクリル系粉体塗料からなるプライマー層を形成す
る工程と、前記プライマー層上に、有色溶剤系塗料から
なるベースコート層を形成する工程と、前記ベースコー
ト層上に、アクリル系粉体クリヤー塗料からなるトップ
コート層を形成する工程と、からなる金属材表面被膜構
造の形成方法であって、 前記プライマー層を形成する工程の前に金属材の素地の
下地処理工程を設け、この下地処理工程は、酸洗効果を
付与した脱脂処理工程、クロメート化成処理工程の順に
行われることを特徴とする金属材表面被膜構造の形成方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13828597A JP3408718B2 (ja) | 1997-05-28 | 1997-05-28 | 金属材表面被膜構造の形成方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13828597A JP3408718B2 (ja) | 1997-05-28 | 1997-05-28 | 金属材表面被膜構造の形成方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10323618A JPH10323618A (ja) | 1998-12-08 |
JP3408718B2 true JP3408718B2 (ja) | 2003-05-19 |
Family
ID=15218334
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP13828597A Expired - Fee Related JP3408718B2 (ja) | 1997-05-28 | 1997-05-28 | 金属材表面被膜構造の形成方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3408718B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105728302A (zh) * | 2016-04-07 | 2016-07-06 | 太仓吉达喷涂有限公司 | 一种铝型材表面静电喷涂粉末涂料的方法 |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7297397B2 (en) | 2004-07-26 | 2007-11-20 | Npa Coatings, Inc. | Method for applying a decorative metal layer |
MY170538A (en) * | 2013-01-18 | 2019-08-15 | Nippon Light Metal Co | Process for producing metal-resin bonded object. |
-
1997
- 1997-05-28 JP JP13828597A patent/JP3408718B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105728302A (zh) * | 2016-04-07 | 2016-07-06 | 太仓吉达喷涂有限公司 | 一种铝型材表面静电喷涂粉末涂料的方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH10323618A (ja) | 1998-12-08 |
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