JP3408574B2 - 合成石英ガラスの吸収係数の測定方法 - Google Patents

合成石英ガラスの吸収係数の測定方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、合成石英ガラスにKr
Fエキシマレーザーを照射したときに誘起される吸収係
数の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年エキシマレーザーを用いた超LSI
製造プロセスやエキシマレーザーを用いたCVDプロセ
スなどが発展し、エキシマレーザー用光学材料に対する
要求が特に強まって来ている。
【0003】エキシマレーザーは、主として紫外線領域
で発振する高出力のパルスレーザーで、ガスの組合せに
より主なものとして、XeF(350nm)、XeCl
(308nm)、F2(157nm)などがある。この
うち、リソグラフィーや光CVD関係で注目されている
のは、KrF及びArFエキシマレーザーで、特に、半
導体製造用のリソグラフィー工程では、KrFエキシマ
レーザーを中心に開発が進められている。
【0004】ArF及びKrFエキシマレーザーは、従
来の水銀ランプ、重水素ランプなどの紫外線光源と比較
すると、エネルギー密度が高くパワーがはるかに高いた
め、石英ガラスに損傷を与える可能性が高い。また、フ
ォトマスク基板等の光学系材料としての合成石英ガラス
では、製造過程におけるスパッタリングやプラズマエッ
チングにより、650nmに発光帯、260nmに吸収
帯が出現して紫外線領域での透過性能が低下する場合が
あり、まして、従来の水銀ランプに替えてエキシマレー
ザー光(KrF、248nm)を半導体製造用リソグラ
フィー工程での露光用光源として使用した場合には、こ
の透過率の低下は非常に大きなものとなる。
【0005】フォトマスク製造過程で変質して透過性能
が低下するような基板材料は、事前に検査して排除しな
ければならないが、事前にそれを知る方法がなく、スパ
ッタリングやプラズマエッチングをした後に一枚づつ基
板の蛍光特性や吸収特性を測定しなければならず、手間
がかかり、又、費用もかかるので現実的でなく、簡易な
方法で合成石英ガラスの吸収特性の変質を予測する手段
の開発が要望されていた。
【0006】このため、本出願人は、何らかの方法で促
進試験ができれば予め材料を選別することができるとの
見地から、合成石英ガラスの吸収特性の変質を検査する
方法として、エキシマレーザー光を合成石英ガラスに照
射すると、フォトマスク基板として使用された合成石英
ガラスが、その製造過程においてスパッタリングやプラ
ズマエッチングなどによって変質して起こるのと同様の
吸収特性の変化が起こるとともに約650nmの赤色の
蛍光を発することを発見し、KrFエキシマレーザーの
照射時の赤色発光の有無により選別する検査方法を見出
した(特開平1−189654号公報)。
【0007】赤色発光の有無により、超LSIパターン
転写用のレチクル作製工程で生じる260nmにピーク
を持つ吸収帯の有無を判別する方法で、この吸収帯の生
成は、四塩化珪素の酸水素火炎中での加水分解に際し
て、火炎中の水素の供給量を化学量論的必要量よりも過
剰にすることにより防止できるものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、エキシ
マレーザーの照射を長時間繰り返すと、220nmにピ
ークを持つ吸収帯が生成することによりエキシマレーザ
ーに対する透過率が低下する。このように、短期間の使
用では問題がなくても、長時間使用すると石英ガラスが
劣化し、吸収帯が生じるという問題がある。そして、2
20nmの吸収帯の生成の有無は、ArFエキシマレー
ザー照射時には比較的短時間で判別できるが、KrFエ
キシマレーザー照射時には生成しにくく106ショット
程度の照射でようやく顕著となり、吸収係数の測定には
長時間を要して効率が悪かった。
【0009】以上述べたように、KrFエキシマレーザ
ー照射時に生じる吸収帯は、非常に弱く、長時間のエキ
シマレーザー照射によりはじめて顕著となるため、検査
には数日から数週間の時間を要し実用的には実施が困難
であるため、促進試験が求められていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】合成石英ガラスへのAr
Fエキシマレーザー照射による220nmの吸収帯の生
成と、KrFエキシマレーザーによる220nmの吸収
帯の生成に相関関係があることを見出し、ArFエキシ
マレーザーの照射によってKrFエキシマレーザー照射
時の吸収係数を短時間で測定できるように、ショット数
で言えば、ArFエキシマレーザーを照射した場合は、
KrFエキシマレーザーを照射した場合に較べて約2桁
少ないショット数の照射で良いため、KrFエキシマレ
ーザーの約100分の1という短時間で測定できるよう
にしたものである。
【作用】
【0011】5〜30mm程度の厚さの試料片の平行平
面を鏡面に研磨し、この試料片にエキシマレーザービー
ムを照射する部分の分光透過率をエキシマレーザーを照
射する前に分光光度計で測定し、しかるのち、エキシマ
レーザービームを所定の条件(エネルギー密度、繰り返
し周波数、ショット数)で照射する。照射した部分の分
光透過率を照射終了後ただちに測定し、220nmにお
ける照射前後の吸収係数の差を求め、吸収の程度の指標
とする。このとき、予めKrF及びArFエキシマレー
ザー照射時の吸収の生成程度の異なる試料に対して較正
曲線を求めておき、それに基づいて検査を行う。
【0012】エキシマレーザーを長時間照射したとき、
220nm付近にピークを持つ吸収帯が生成する。この
220nmにピークを持つ吸収帯の生成については、エ
キシマレーザーの他に、γ線、X線、中性子線などの照
射によっても生成する。この吸収帯は、電子スピン共鳴
(ESR)スペクトルの解析から、E’センターと呼ば
れる≡Si・構造によるものであることが確認され、E
SRの信号強度から求められたスピンの濃度と220n
mの吸収帯強度は比例する。
【0013】エキシマレーザーを照射したときのE’中
心の前駆体としては種々のものが考えられている。ひと
つは、≡Si−O−Si≡ でエキシマレーザーの照射
により
【化1】 または、
【化2】 の機構による生成が考えられる。ここで
【化3】 は3つの酸素分子と結合した平面構造である。
【0014】この他に、≡Si−H H−O−Si≡構
造が考えられる。
【化4】
【0015】何れの機構でも、光子の吸収によりE’中
心が生成する。石英ガラスのバンドのエネルギーギャッ
プは約9eVである。KrFエキシマレーザーの光子エ
ネルギーは5.0eV、ArFエキシマレーザーの光子
エネルギーは6.4eVであるので、欠陥が生成するた
めには、何れの場合も2光子吸収が考えられる。従っ
て、ArFエキシマレーザーのほうが光子エネルギーが
高いため生成の効率がよいものと考えられる。実際、数
種類のサンプルに対してArF(100mJ/cm2
50Hz、104ショット)及びKrFエキシマレーザ
ー(200mJ/cm2、100Hz、106ショット)
照射による吸収の程度を比較したところ、ArFエキシ
マレーザーを照射した場合は約2桁少ないショット数の
照射でKrFエキシマレーザー照射時とほぼ同等の吸収
が生じた。
【0016】合成石英ガラスとしては、四塩化珪素を酸
・水素火炎中で加水分解により直接堆積ガラス化したも
のがエキシマレーザーの波長領域での透過特性等のエキ
シマレーザー耐性に優れている。また、酸水素火炎中で
の加水分解物を、化学量論的必要量より水素過剰で製造
したものが、260nmの吸収帯の生成、及びそれに伴
う650nmの赤色発光防止のために有効である。
【0017】
【実施例】実施例1 試料として、四塩化珪素を酸・水素火炎中での加水分解
による直接堆積ガラス化することにより製造し、OH濃
度がそれぞれ、A:450ppm、B:650ppm、
C:850ppm、D:1120ppm、E:1300
ppmを含む5種類のものを選別し、KrFエキシマレ
ーザー(200mJ/cm2、100Hz、106ショッ
ト)、及び、ArFエキシマレーザー(100mJ/c
2、50Hz、106ショット)照射時の吸収の程度を
測定した。その結果を表1に示す。なお、各サンプル
は、30mm×10mm×10mmの形状に2個ずつ切
り出し、厚さが10mmになるように2面を鏡面研磨し
た。また、エキシマレーザーのショット数は、繰り返し
周波数と照射時間の積で与えられるので、KrFエキシ
マレーザーの照射時間は、106ショット/100Hz
=10000秒、ArFエキシマレーザーの照射時間
は、104ショット/50Hz=200秒である。
【0018】
【表1】
【0019】表1の結果から、KrFとArFエキシマ
レーザーによる吸収係数は、互いに比例関係にあること
が判明した。これを式で表すと下記(4)式のようにな
る。この例では、KrFエキシマレーザーが100Hz
で106ショットであることから、106/100Hz=
10000秒(約2.8時間)必要になるのに対し、A
rFエキシマレーザーは、50Hzで104ショットで
あるので、104/50Hz=200秒(約3.3分)
の照射時間で同等の吸収係数が得られることが判る。こ
のように、ArFエキシマレーザーを用いれば、照射条
件(エネルギー密度、繰り返し周波数)にもよるが、K
rFエキシマレーザー100分の1程度のショット数
(レーザーパルス数)で照射時の吸収係数を測定するこ
とによりKrFエキシマレーザー照射時の吸収係数を測
定することができる。 αArF=1.2αKrF (4)
【0020】実施例2 実施例1に準じて合成した石英ガラスから異なるロット
のものを5個選び出し、それぞれ実施例1に準じて30
mm×10mm×10mmの形状に2個づつ切り出し、
厚さが10mmになるように2面を鏡面研磨した。その
うちの一つのサンプルに実施例1に準じてArFエキシ
マレーザーを照射し、220nmにおける吸収係数を測
定した。その結果をもとに、(4)式から、KrFエキ
シマレーザーを実施例1に準じて照射した場合の220
nmにおける吸収係数の値を予測した。その後、他方の
サンプルにKrFエキシマレーザーを実施例1に準じて
照射したのち220nmにおける吸収係数を測定した。
その結果を表2に示す。表2の結果から、予測値と実測
値がよく一致していることが判り、このことから、本発
明による測定方法が有効であることを示している。
【表2】
【0021】
【効果】合成石英ガラスにArFエキシマレーザーを短
時間照射することによって、KrFエキシマレーザー光
を長時間透過させたときの吸収係数を測定できる。ま
た、この測定値を利用することによって合成石英ガラス
のKrFエキシマレーザー照射による吸収帯の生成の有
無を判別することに応用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−109233(JP,A) 特開 平3−88743(JP,A) レーザー研究,日本,Vol.19,N o.2,177−184 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 21/00 - 21/01 G01N 21/17 - 21/61 JICSTファイル(JOIS) 実用ファイル(PATOLIS) 特許ファイル(PATOLIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】合成石英ガラスのKrFエキシマレーザー
    の照射による吸収係数の測定方法であって、ArFエキ
    シマレーザーを照射して誘起される220nmにおける
    吸収係数を測定し、この吸収係数と予め求めた相関関係
    に基づいて吸収係数を求める測定方法。
  2. 【請求項2】合成石英ガラスのKrFエキシマレーザー
    の照射による吸収係数の測定方法であって、ArFエキ
    シマレーザーを照射して誘起される220nmにおける
    吸収係数を測定し、この測定値を1.2倍する測定方
    法。
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