JP3408377B2 - 圧力流体のエネルギー変換装置及びその方法 - Google Patents

圧力流体のエネルギー変換装置及びその方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高圧の圧力水を噴射
し、この噴射された圧力水のエネルギーを利用して固塊
物やこれを含む流体等を吸引して流送したり、吸引脱水
装置の負圧を形成したり、低位置から高所に移送したり
するための圧力流体のエネルギー変換方法及びその装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】スラリーやコンクリートミルク等の固塊
物を含むものを吸引して流送する場合にはチューブポン
プ等の圧送装置が一般的に使用され、吸引脱水装置の負
圧を形成したりする場合にはベンチュリー式の負圧形成
装置が使用される。
【0003】この固塊物を含むものを流送するチューブ
ポンプ式の圧送装置は、弾性チューブをローラで潰して
容積変化させ、チューブ内のスラリーやコンクリートミ
ルクを加圧して押出し流送させるように構成されたもの
であり、また、ベンチュリー式の負圧形成装置は、加圧
された流体をベンチュリー部に噴射し、ここで流速を高
め、ベンチュリ部に負圧を形成するようにしたもので
ある。
【0004】ところが、チューブポンプ式の圧送装置で
は弾性チューブをローラで潰して容積変化させる構造の
ために、潰した弾性チューブ内に固塊物が噛み込み易
く、耐久性に劣るうえ、間歇的な送りとなり、多量の流
送量を確保出来ないという問題があった。また、チュー
ブポンプ式のような容積変化形式の圧送装置には空気
(気体)は絶対にタブーである、如何なる状態でも斯か
る圧送装置等に一旦空気が吸引されると、この空気が圧
縮されてしまい、その圧送効率が極端に低下するか、圧
送できなくなってしまう、これは全世界の工業界がポン
プ誕生から今日まで数十年もの期間疑うことのない常識
として認識されていることであった。
【0005】一方、ベンチュリー式の負圧形成装置は、
加圧された流体を噴射ノズルから噴射し、この圧力流体
を亜音速でベンチュリー部若しくはスロート部を流送さ
せた時、当該部分にベルヌーイの定理による減圧(負
圧)を形成し、この形成された負圧を取り出して利用す
るようにした構造であることから、斯かる構造の液体ジ
ェットポンプはベンチュリー部若しくはスロート部での
乱流やキャビテーション等による障害を非常に受けやす
いものであった。
【0006】従って、ベンチュリー部若しくはスロート
部の口径と此処を流走する圧力流体の流走径とは常時一
定の関係に保たなくては液体ジェットポンプの良好な効
率を維持することができない。その為、ベンチュリー部
若しくはスロート部の口径と、此処を流走する圧力流体
の流速並びに流走径を設定する場合には、圧力流体を噴
射する噴射ノズルの口径並びに加圧ポンプの圧力等の設
定も個々の作業の種類に合わせて同時に行わなくては成
らないと言う問題があった。
【0007】また、作業の種類に合わせてベンチュリー
部若しくはスロート部の口径、圧力流体を噴射する噴射
ノズルの口径、並びに圧力流体を形成するため加圧ポン
プの圧力、等を個々に設定しても、負圧がベンチュリー
部若しくはスロート部でのみ形成されることから、ベン
チュリー部若しくはスロート部に背圧として作用する吸
引負圧が、吸引物の量の変化により常時変動し、液体ジ
ェットポンプの良好な負圧形成効率を維持することがで
きない。
【0008】従って、ベンチュリー部若しくはスロート
部の口径と此処を流走する圧力流体の流走径とを設定す
ることが難しく、かかる部位の設定は、液体ジェットポ
ンプが誕生してから今日に至る数十年もの間実験による
データを利用したり、積み重ねられた経験に頼るにとど
まっている。
【0009】加えて、負圧がベンチュリー部若しくはス
ロート部で形成されるために、このベンチュリー部若し
くはスロート部から外れた部分で形成される負圧等を計
算しようとする場合、圧力流体が流走する管径が広がる
テーパー状に形成されていることに加えて、流走する圧
力流体の流走径も徐々に広がっており、両者の計算上の
基準位置が定まらず、実用に対する作業量の計算式が立
たない。従って、こうした点からも、上述したように液
体ジェットポンプを設計する際の資料としては、専ら実
験値や経験則に頼らざるをえないのが現状である。
【0010】更に、液体ジェットポンプを浚渫等におけ
る固塊物を含んだスラリーの吸引・搬送などに利用する
と、固塊物を含んだスラリーの比重が大きくなり、キャ
ビテーションの発生や、固塊物のノズルやスロート部へ
の接触や衝突による損傷が激しく、噴射圧力を高めれば
高める程その損傷の程度は対数的に急増することにな
る。
【0011】従って液体ジェットポンプはジェットポン
プのキャビテーションによる障害や固塊物による損傷を
防ぐ為、利用圧力(吸引用負圧力及び搬送用圧力)は比
較的低い圧力範囲でしか利用することができないという
問題もあった。こうした一定条件下に限定されている従
来の液体ジェットポンプの構造では上述したように“噴
射ノズルの噴射圧力・噴射ノズルの口径・スロート口径
・噴射ノズルの噴射口とスロート開口始端との距離”の
何れを変えても性能に不安定を来たす。
【0012】ましてや圧力流体の噴射圧力を高めた場合
には、忽ち圧力流体によるキャビテーションで圧力流体
の流走径が膨らみ、スロート部開口断面積を超え、その
一部の圧力流体が減圧室内で逆流し、逆流する圧力流体
に含まれる固塊物でスロートの開口端部等の損傷が著し
くなってしまう。そのためスロートの開口端部等の口径
及び噴射ノズル噴射口径とのバランス関係が非常にデリ
ケートで、1つの構造の液体ジェットポンプに対する使
用範囲は限定されてしまうことになる。このことは液体
ジェットポンプ単体の使用範囲が所定の使用目的に限ら
れてしまう結果となる。
【0013】そこで、本出願人は、圧縮や圧送装置等の
容積変化による圧力機器には空気の混入は絶対にタブー
であり、如何なる状態でもこれらの装置に空気が吸引さ
れると、この空気が圧縮されてしまい、その圧送効率が
極端に低下するか、圧送できなくなってしまうのは当然
のことであるとして見向きもされなかった事象を改めて
見直し、特に水ジェットポンプ及び水中に於ける水ジェ
ットの働きと、混入された空気の動き等を具に研究した
結果、上記従来の液体ジェットポンプの有する諸問題を
一挙に解決するものとして、1980年代に混気ジェッ
トポンプを開発して提案した。
【0014】この混気ジェットポンプを開発して以来、
約20年が経過したが、その間、数多くの用途開発がな
され、上記従来の液体ジェットポンプの有する諸問題で
ある、不安定さ・摩耗・圧力流体で発生するキャビテー
ションによる障害等は見事に解消されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところが、本出願人が
先に発明し、種々開発して開示した混気ジェットポンプ
は、概念的な構造や用途のみを開示しただけであって、
この構造に理論付けされた設計に供するための計算方法
が一切示されておらず、斯かる混気ジェットポンプにお
いても工業界では従来の液体ジェットポンプ同様、実験
結果のデータや、経験範囲内の利用に止まっている。
【0016】それはこの混気ジェットポンプがこれまで
にない新奇な構造であり、この新奇な構造による働き
を、理論的な裏付け計算でその仕事量を保証出来るよう
な液体若しくは混気ジェットポンプの理論的裏付けが存
在しなかったことによる。また、従来のジェットポンプ
における空気の介在は、ジェットポンプにとって余りに
も受け入れ難い存在なので、本出願人が先に発明し、種
々開発して開示した混気ジェットポンプは、その新奇な
構造による特性と、運動効果、特に作用の説明をして
も、普遍的な理論的裏付けの開示がなければ、工業界も
受け入れ難く、広く、且つ一般的に利用する事が出来な
い。
【0017】そこで本発明は、今まで世の中に存在しな
かった新奇な構造の混気ジェットポンプの理論的裏付け
について、此処で敢えてその開示をなし、この理論的な
裏付けに基づき、確実で安定した仕事量を簡単に算出可
能な混気ジェットポンプを提供できるようにして、混気
ジェットポンプをより広く、且つ一般的にも利用できる
ようにすることを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明に係る圧力流体のエネルギー変換装置は、加圧
ポンプで加圧された圧力流体を噴射する噴射ノズルと、
噴射ノズルの下手側に変換エネルギー第1取り出し口を
介在させた状態で配設したエネルギー変換チューブとを
備え、エネルギー変換チューブの圧力流体下手側部分に
変換エネルギー第2取り出し口を設けて成り、噴射ノズ
ルから噴射された高圧の流体をその周囲に空気層を形成
した状態でエネルギー変換チューブ内の空気を加圧しな
がら流走させて変換エネルギー第2取り出し口から揚程
圧力として取り出されるものであって、空気層形成管を
噴射ノズルの口径より大径の略直管状に形成し、エネル
ギー変換チューブを空気層形成管の口径より大径で略ス
トレート状に形成するとともに、エネルギー変換チュー
ブの面積と噴射ノズルの面積との面積比で圧力流体の圧
力を除し、これに密度変化率を乗じた時に所望の揚程圧
力が得られる関係となるように噴射ノズルからの圧力及
びその口径並びにエネルギー変換チューブの内径を設定
したことを特徴とするものである。
【0019】尚、噴射ノズルと変換エネルギー第1取り
出し口との間に、吸気口を形成した空気層形成管を設
け、噴射ノズルを空気層形成管の一端に臨ませて設け、
噴射ノズルから噴射された圧力流体により吸気口から吸
引された空気で圧力流体の周囲に空気層を形成するよう
にしたり、エネルギー変換チューブのストレート部分の
管長をエネルギー変換チューブの口径の3倍以上にした
ことも特徴とするものである。
【0020】また、本発明に係る圧力流体のエネルギー
変換方法は、空気層形成管を噴射ノズルの口径より大径
の略直管状に形成し、エネルギー変換チューブを空気層
形成管の口径より大径で略ストレート状に形成するとと
もに、エネルギー変換チューブの面積と噴射ノズルの
積との面積比で圧力流体の圧力を除し、これに密度変化
率を乗じた時に所望の揚程圧力が得られる関係となるよ
うに噴射ノズルからの圧力及びその口径並びにエネルギ
ー変換チューブの内径を設定された圧力流体のエネルギ
ー変換装置の噴射ノズルから噴射した圧力流体の周囲に
空気層を形成し、空気層を形成した圧力流体をエネルギ
ー変換チューブ内を流走させ、流走する圧力流体の下手
側の圧力により圧力流体をエネルギー変換チューブ内一
杯に押し広げ、当該圧力流体がエネルギー変換チューブ
内一杯に押し広げられた部分にエネルギー変換チューブ
内をその出口側部分に向けて連続して作用する仮想ピス
トンを形成し、該仮想ピストンにより噴射ノズル側部分
に負圧を形成するとともに、仮想ピストンの作用方向下
手側で加圧された圧力を流体もしくは液体の揚程圧力と
して取り出すようにしたことを特徴とするものである。
【0021】更に、噴射ノズルから空気層形成管に噴射
し、この圧力流体で吸気口から空気層形成管に空気を吸
引して圧力流体の周囲に空気層を形成するようにしたこ
とも特徴の1つである。
【0022】
【発明の実施の形態】以下本発明にかかる圧力流体のエ
ネルギー変換方法及び圧力流体のエネルギー変換装置を
図面に基づいて説明する。図1は浚渫プラントの概略側
面図であって、図中符号Pはこの浚渫プラントを全体的
に示す。
【0023】この浚渫プラントPは、固塊物を含む汚泥
を吸引して固・気・液を分離する吸引搬送装置Vと、吸
引搬送装置Vから供給された汚泥を脱水する脱水装置D
とからなり、吸引搬送装置Vは吸引負圧とこの吸引負圧
で吸引された固塊物を含む汚泥を遠心式の固・気・液分
離装置C及び脱水装置Dに送給するための混気ジェット
ポンプ1を備えてなる。
【0024】この混気ジェットポンプ1は、図1及び図
2に示すように、貯水槽2と、この貯水槽2に貯溜され
た水(流体)3を加圧する加圧ポンプ4と、加圧ポンプ
4で加圧された圧力水を噴射する噴射ノズル5と、噴射
ノズル5の噴射方向下手側部分に空気層形成管6と、空
気層形成管6の下手側に変換エネルギー第1取り出し用
空間7を介在させて配設されたエネルギー変換チューブ
8とからなる。
【0025】上記噴射ノズル5と空気層形成管6とはケ
ーシング9に一体形成されている。
【0026】即ち、噴射ノズル5は、丸棒状されたケー
シング9の一端からケーシング9の略中間位置に小径の
噴口10を透設して形成したもので、空気層形成管6
は、ケーシング9の他端部から噴射ノズル5の噴口10
より大径のジェット流走孔11を穿設し、ジェット流走
孔11の噴射ノズル5側端部に吸気管12を備えた吸気
口13を設けて構成されている。
【0027】尚、この実施の形態では噴射ノズル5と空
気層形成管6とをケーシング9に一体形成するようにし
てあるが、これを例えば図3に示すように、夫々別体で
形成し、吸気管12の支持部材17に噴射ノズル5と空
気層形成管6とを支持させるようにすることができるの
は勿論である。
【0028】上記エネルギー変換チューブ8は、空気層
形成管6より大径の直管状に形成され、その直管(スト
レート)部分は入口側の口径に対してその3倍以上の長
さにしてある。空気層形成管6側部分はエネルギー変換
チューブ8内で発生させた負圧を取り出す変換エネルギ
ー第1取り出し口14となり、エネルギー変換チューブ
8の後述する仮想連続ピストンより下手側で吐出口(図
示せず)側には変換エネルギー第2取り出し口15が形
成される。
【0029】尚、図中符号16は、空気層形成管6とエ
ネルギー変換チューブ8とを連結する連結部材である。
【0030】上記のように形成された混気ジェットポン
プ1の作用を次に説明する。先ず、加圧ポンプ4が駆動
されて貯水槽2に貯溜された水3をストレーナ20から
吸引して加圧し、この加圧された高圧の圧力流体を噴射
ノズル5から空気層形成管6内に噴射する(図2参
照)。こうして高圧の圧力流体が噴射ノズル5から空気
層形成管6内に噴射されると、空気層形成管6内を流走
するジェット流(圧力流体)21の速度により空気層形
成管6のジェット流走孔11内がベルヌーイの定理によ
り負圧になり、外気を吸気管12から吸気口13を通じ
て空気層形成管6内に吸引する。
【0031】空気層形成管6内に吸引された空気は、こ
こを流走するジェット流21に吸着され、ジェット流2
1とともに流走するので、ジェット流21は、図2に想
像線で示すように、その周囲に空気層22を形成した状
態となり、エネルギー変換チューブ8に突入する。エネ
ルギー変換チューブ8に突入したジェット流21は、そ
の周囲に形成された空気層22により、その外方の静止
している空気層並びにエネルギー変換チューブ8の内周
面部分との間の摩擦を減じるのでその流走径は広がら
ず、周囲の空気層22の厚みが徐々に薄くなりながら
も、ジェット流21の流勢が減衰するのを防止する。
【0032】こうしてジェット流21がエネルギー変換
チューブ8内を流走する場合、図2中にエネルギー変換
チューブ8内の点線矢印で示す抵抗25に打ち勝ちなが
ら流走し、周囲の空気層22の厚みがなくなったり、エ
ネルギー変換チューブ8内の抵抗25が強くジェット流
21が一気に広げられると、此処にエネルギー変換チュ
ーブ8内に点線編目模様部分にその出口方向に連続して
作用する仮想ピストン26が形成される。
【0033】ここで、仮想ピストン26が形成される過
程を詳述する。空気層形成管6から周囲に空気層22を
形成した状態でエネルギー変換チューブ8を流走するジ
ェット流21がエネルギー変換チューブ8内の抵抗25
で一気に広げられた状態では図4に示すように、無数の
ミスト19・19・・・として飛翔する。この時、各ミ
スト19の飛翔(流走)方向下手側(前面)部分の空気
27は点描しているように加圧された状態となる。
【0034】この無数のミスト19・19・・・の各前
面部分で加圧された空気27の隣接するもの同士が連続
すると、全体として此処にエネルギー変換チューブ8の
出口方向に連続して作用する仮想ピストン26が形成さ
れるのである。この仮想ピストン26が形成されるエネ
ルギー変換チューブ8の位置は、エネルギー変換チュー
ブ8内の抵抗25により変化するが、エネルギー変換チ
ューブ8がストレート状に形成されていることから、従
来のようにテーパー状に形成されたディフューザーの場
合のような口径の変化により形成される負圧や仮想ピス
トン26による揚程力が不安定になるような急激な変化
はない。
【0035】換言するならば、こうした性質を利用する
と、例えば図5に示すようにエネルギー変換チューブ8
の出口側部分28にリフレクター29を設け、ここで反
射させる時に抵抗25を形成したり、図6に示すように
エネルギー変換チューブ8の出口側部分28を閉塞し、
その手前部分の側壁に吐出口30を形成してジェット流
21を反転させる時に抵抗25を形成したり、図7に示
すようにエネルギー変換チューブ8の出口側部分28を
液体32中に埋没させこの液体の重量で抵抗25を形成
したりして、エネルギー変換チューブ8内を飛翔するジ
ェット流21に作用する抵抗25を強くすることによ
り、エネルギー変換チューブ8内で仮想ピストン26が
形成される位置を空気層形成管6側に寄せることがで
き、エネルギー変換チューブ8の長さを短くし、装置全
体を小型にすることもできるのである。
【0036】斯くして仮想ピストン26の上手側部分に
は負圧が形成され、仮想ピストン26のジェット流21
の下手側部分はその空間部分が圧縮される。仮想ピスト
ン26の上手側部分で形成された負圧は変換エネルギー
第1取り出し口14から吸引負圧として取り出され、浚
渫汚泥の吸引や脱水機Dの吸引負圧として利用されるの
である。
【0037】また、仮想ピストン26のジェット流21
の下手側部分で圧縮された加圧力は、吸引された汚泥を
変換エネルギー第2取り出し口15から遠心式の固・気
・液分離装置Cに圧送したり、固・気・液分離装置Cか
ら離れたり、高所に設置された脱水装置Dに揚げたりす
るのに利用されるのである。
【0038】変換エネルギー第2取り出し口15から高
所に設置された脱水装置Dに揚げる時の揚程圧力を算出
する方法を次に説明する。変換エネルギー第2取り出し
口15からの揚程圧力は、エネルギー変換チューブ8の
面積と噴射ノズルの面積との面積比で圧力流体の圧力を
除し、これに密度変化率を乗じてあらわされる。
【0039】これを数式で表すとつぎのようになる。
【0040】駆動源としてのジェット噴射圧力pの単位
をkg /cm2 で入力する場合には 揚程h=〔p×10/(m/a)〕×avとなり、 駆動ポンプの揚程phの単位をmとして入力する場合に
は 揚程ph=〔p/(m/a)〕×avとなる。 上記数式で使用する記号のmはエネルギー変換チューブ
の断面積でその単位はm2、aは噴射ノズルの断面積で
あって単位はm2、avはエネルギー変換チューブ内で
の圧縮開放による気体膨張並びに速度エネルギー慣性力
を加味した混気ジェットの密度変化率である。
【0041】ここで、avにおける圧縮開放での気体膨
張並びに速度エネルギー慣性力を説明しておく。
【0042】先ず、図2において、仮想ピストン26が
形成された部分では図4で説明したように、空気27は
圧縮された状態となり、飛翔するミスト19とともに出
口側部分28、即ち変換エネルギー第2取り出し口15
に到達すると、圧縮された空気は開放され、体積膨張す
る。その結果、変換エネルギー第2取り出し口15部分
でのジェット流の比重は軽くなり、本例においてはその
変化率はav=1.85となる。
【0043】一方、空気の体積膨張によりミスト19等
の速度は加速され、変換エネルギー第2取り出し口15
での揚程圧力は見かけ上増大するが、比重が水だけのも
のに比べて軽いために実効揚程力はこれよりも減少する
のである。
【0044】そして、上記数式を用いて例えば加圧ポン
プの揚程力p=3000m(ジェット流噴射圧力換算で
300kg /cm2 )の高圧で噴射ノズルの口径a=5mm
φエネルギー変換チューブの口径m=100mmφの圧力
流体のエネルギー変換装置の揚程hを算出すると、〔3
00×10/(0.00785/0.00001962
5)〕×1.85=13.875mとなる。即ち、1
3.875mの揚程力を得ることが出来るのである。
【0045】因みに、この場合の揚水量qの算出は、揚
水量q=〔(m−a)×(√(h×19.6))〕×q
xで表される。
【0046】上記計算式におけるqxは、流走管内の抵
抗等を勘案した液体スリップ率であって、本例ではqx
=0.5556である。従って本例の揚水量q=
〔(0.0078304)×(√(13.875×1
9.6))〕×60×0.556=4.3047m3/
minとなる。これらを基に圧力流体のエネルギー変換
装置の構造及び機能の数値を算出すると下記の通りとな
る。
【0047】 (1).噴射ノズル口径・・・・・・・・・・・・・・・・・5.00mm (2).ジェット噴射圧力・・・・・・・・・・・・300.00kg /cm2 (3).使用ジェット水量・・・・・・・・・・・285.36l/min (4).エネルギー変換チューブ口径・・・・・・・・・100.00mm (5).最大揚程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13.88m (6).最大汲み上げ量・・・・・・・・・・・・・4.30m3/min (7).真比重・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.60 (8).空隙率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.60 (9).見かけ比重・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.56 (10).全比重・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.96 (11).吸引含砂率・・・・・・・・・・・・・・・・・・30.00% (12).排出含砂率・・・・・・・・・・・・・・・・・・28.13% (13).比重損失・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.95m (14).ジェット水量・・・・・・・・・・・・・・0.29m3/min (15).全水量及び全流送量・・・・・・・・・・・3.67m3/min (16).流送管長・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50.00m (17).流送管口径・・・・・・・・・・・・・・・・・200.00mm (18).流送管内摩擦係数・・・・・・・・・・・・・・・・0.80 (19).流送管内流速・・・・・・・・・・・・・・1.95m/sec (20).流送管内抵抗等による損失水頭・・・・・・・・・・0.87m (21).全実揚程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.82m (22).利用可能な揚程((5)−(21))・・・・・・・・10.05m (23).ヘッドバランス・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05m (24).最終汲揚量・・・・・・・・・・・・・・・3.12m3/min (25).揚土砂量毎分・・・・・・・・・・・・・・0.94m3/min (26).1日(8時間連続)揚土砂量・・・・・・・449.03m3/日
【0048】次に、加圧ポンプの揚程力p=50m(ジ
ェット流噴射圧力換算で5kg /cm)の低圧で噴射ノズ
ルの口径a=50mmφ、エネルギー変換チューブの口径
m=100mmφの圧力流体のエネルギー変換装置の揚程
hを算出すると、〔5×10/(0.00005/0.
000019625)〕×1.85=23.125mと
なる。即ち、23.125mの揚程力を得ることが出来
るのである。
【0049】またこの場合の揚水量qは、揚水量q=
〔(0.0058875)×(√(23.125×1
9.6))〕×60×0.556=4.1784m3/
minとなり、これらを基に圧力流体のエネルギー変換
装置の構造及び機能の数値を上記の例に合わせて算出す
ると下記の通りとなる。
【0050】 (1).噴射ノズル口径・・・・・・・・・・・・・・・・50.00mm (2).ジェット噴射圧力・・・・・・・・・・・・・・5.00kg /cm2 (3).使用ジェット水量・・・・・・・・・・3683.92l/min (4).エネルギー変換チューブ口径・・・・・・・・・100.00mm (5).最大揚程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23.13m (6).最大汲み上げ量・・・・・・・・・・・・・4.18m3/min (7).真比重・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.60 (8).空隙率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.60 (9).見かけ比重・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.56 (10).全比重・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.96 (11).吸引含砂率・・・・・・・・・・・・・・・・・・30.00% (12).排出含砂率・・・・・・・・・・・・・・・・・・15.94% (13).比重損失・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.07m (14).ジェット水量・・・・・・・・・・・・・・3.68m3/min (15).全水量及び全流送量・・・・・・・・・・・7.31m3/min (16).流送管長・・・・・・・・・・・・・・・・・・100.00m (17).流送管口径・・・・・・・・・・・・・・・・・200.00mm (18).流送管内摩擦係数・・・・・・・・・・・・・・・・・0.80 (19).流送管内流速・・・・・・・・・・・・・・3.88m/sec (20).流送管内抵抗等による損失水頭・・・・・・・・・・6.91m (21).全実揚程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9.98m (22).利用可能な揚程((5)−(21))・・・・・・・・13.15m (23).ヘッドバランス・・・・・・・・・・・・・・・・・3.15m (24).最終汲揚量・・・・・・・・・・・・・・・2.38m3/min (25).揚土砂量毎分・・・・・・・・・・・・・・0.71m3/min (26).1日(8時間連続)揚土砂量・・・・・・・340.80m3/日
【0051】以上で明らかなように、本発明の流体エネ
ルギー変換装置では加圧ポンプの揚程力(噴射ノズルの
圧力)が高い場合には噴射ノズルの口径を絞り、低い場
合には噴射ノズルの口径を大きくするだけで十分な揚程
力や揚水量を確保することができ、揚程力の計算も簡単
に且つ正確に行えるのである。換言するならば、噴射ノ
ズルの口径やこれと相対的な管径にあるエネルギー変換
チューブの口径を変更するだけで所望する機能を発揮で
きる流体エネルギー変換装置を得ることができるととも
に、本発明の流体エネルギー変換装置ではそのポンプ効
率をこれまでにない高効率のものにすることができるの
である。
【0052】尚、上記実施の形態では噴射ノズル5から
一旦空気層形成管内に噴射し、ここでジェット流21に
空気層22を形成するようにしてあるが、こうしたもの
に限られず、噴射ノズル5からエネルギー変換チューブ
8に直接噴射し、ここで空気層22を形成するようにし
てもよいことは勿論である。
【0053】
【発明の効果】本発明は以上に説明したように、空気層
形成管は噴射ノズルの口径より大径の略直管状に、エネ
ルギー変換チューブは空気層形成管の口径より大径で略
ストレート状に夫々形成し、エネルギー変換チューブの
圧力流体下手側部分に設けた変換エネルギー第2取り出
し口から揚程圧力として取り出される揚程圧力が、エネ
ルギー変換チューブの面積と噴射ノズルとの面積比で圧
力流体の圧力を除し、これに密度変化率を乗じて計算す
ることができるので、従来のように形成や実験結果のデ
ータに頼ることなく、確実で正確な揚程圧力を算出する
ことができるという利点がある。
【0054】これにより、今まで世の中に存在しなかっ
た変換効率に優れた新奇な構造の混気ジェットポンプを
より広く、且つ一般的にも利用できると言う利点があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】浚渫システムの概略を示す側面図である。
【図2】ジェットポンプノズル部分の拡大断面図であ
る。
【図3】ジェットポンプノズル部分の変形例を示す拡大
断面図である。
【図4】仮想ピストンの形成過程の説明図である。
【図5】仮想ピストンの形成時の抵抗形成のための変形
例を示す拡大断面図である。
【図6】仮想ピストンの形成時の抵抗形成のための変形
例を示す拡大断面図である。
【図7】仮想ピストンの形成時の抵抗形成のための変形
例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
4・・・加圧ポンプ 5・・・噴射ノズル 8・・・エネルギー変換チューブ 14・・・変換エネルギー第1取り出し口 15・・・変換エネルギー第2取り出し口 26・・・仮想ピストン 28・・・出口側部分

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】加圧ポンプで加圧された圧力流体を噴射す
    る噴射ノズルと、噴射ノズルの下手側に変換エネルギー
    第1取り出し口を介在させた状態で配設したエネルギー
    変換チューブとを備え、エネルギー変換チューブの圧力
    流体下手側部分に変換エネルギー第2取り出し口を設け
    て成り、噴射ノズルから噴射された高圧の流体をその周
    囲に空気層を形成した状態でエネルギー変換チューブ内
    の空気を加圧しながら流走させて変換エネルギー第2取
    り出し口から揚程圧力として取り出されるものであっ
    て、空気層形成管を噴射ノズルの口径より大径の略直管
    状に形成し、エネルギー変換チューブを空気層形成管の
    口径より大径で略ストレート状に形成するとともに、エ
    ネルギー変換チューブの面積と噴射ノズルの面積との面
    積比で圧力流体の圧力を除し、これに密度変化率を乗じ
    た時に所望の揚程圧力が得られる関係となるように噴射
    ノズルからの圧力及びその口径並びにエネルギー変換チ
    ューブの内径を設定したことを特徴とする圧力流体のエ
    ネルギー変換装置。
  2. 【請求項2】噴射ノズルと変換エネルギー第1取り出し
    口との間に、吸気口を形成した空気層形成管を設け、噴
    射ノズルを空気層形成管の一端に臨ませて設け、噴射ノ
    ズルから噴射された圧力流体により吸気口から吸引され
    た空気で圧力流体の周囲に空気層を形成するようにした
    ことを特徴とする請求項1に記載の圧力流体のエネルギ
    ー変換装置。
  3. 【請求項3】エネルギー変換チューブのストレート部分
    の管長をエネルギー変換チューブの口径の3倍以上にし
    たことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧
    力流体のエネルギー変換装置。
  4. 【請求項4】空気層形成管を噴射ノズルの口径より大径
    の略直管状に形成し、エネルギー変換チューブを空気層
    形成管の口径より大径で略ストレート状に形成するとと
    もに、エネルギー変換チューブの面積と噴射ノズルの
    積との面積比で圧力流体の圧力を除し、これに密度変化
    率を乗じた時に所望の揚程圧力が得られる関係となるよ
    うに噴射ノズルからの圧力及びその口径並びにエネルギ
    ー変換チューブの内径を設定された圧力流体のエネルギ
    ー変換装置の噴射ノズルから噴射した圧力流体の周囲に
    空気層を形成し、空気層を形成した圧力流体をエネルギ
    ー変換チューブ内を流走させ、流走する圧力流体の下手
    側の圧力により圧力流体をエネルギー変換チューブ内一
    杯に押し広げ、当該圧力流体がエネルギー変換チューブ
    内一杯に押し広げられた部分にエネルギー変換チューブ
    内をその出口側部分に向けて連続して作用する仮想ピス
    トンを形成し、該仮想ピストンにより噴射ノズル側部分
    に負圧を形成するとともに、仮想ピストンの作用方向下
    手側で加圧された圧力を流体もしくは液体の揚程圧力と
    して取り出すようにしてなる圧力流体のエネルギー変換
    方法。
  5. 【請求項5】噴射ノズルから空気層形成管に噴射し、こ
    の圧力流体で吸気口から空気層形成管に空気を吸引して
    圧力流体の周囲に空気層を形成するようにしたことを特
    徴とする請求項4に記載の圧力流体のエネルギー変換方
    法。
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