JP3408373B2 - ゴム製品の製造方法 - Google Patents
ゴム製品の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、シリカ微粒子に
よって補強されたゴム製品の、新規な製造方法に関する
ものである。 【0002】 【従来の技術】ゴム製品を補強する場合、加硫前のゴム
と、カーボンブラックやシリカ(ホワイトカーボン)等
の補強材とを、たとえばバンバリーミキサ、ニーダー、
ロール等を用いて混練して、そのせん断力によって、ゴ
ム中に補強材を練り込むのが一般的である。 【0003】かかる従来の補強方法(混練法)において
は、補強材粒子の粒径が小さいほど補強効果が向上し
て、加硫後のゴム製品の強度が向上することが知られて
いる。しかし混練法では、粒径の小さい補強材粒子ほど
ゴム中に分散させるのが容易でないため、ゴム製品の補
強効果には自ずと限界があった。とくにシリカは、表面
に親水性の官能基である水酸基が多数存在するために、
シリカ同士の凝集力が高く、かつゴムとの親和性が低い
ので、ゴム中に分散させるのが困難であった。 【0004】ジエチレングリコール等の分散剤やシラン
カップリング剤等を添加して、シリカのゴムへの分散性
の向上と、両者の親和性の改善を図る試みもなされてい
るが、基本的に混練法によっている以上、その効果には
限界があった。そこで近時、従来の混練法に代わるゴム
製品の補強方法として、アルコキシシラン化合物から
の、ゾル−ゲル法によるシリカの生成反応を利用した方
法が提案された。 【0005】すなわち加硫後のゴム製品を、アルコキシ
シラン化合物および水を含む溶液中に浸漬して、当該両
成分をゴム製品中に含有させると、アルコキシシラン化
合物が加水分解したのち重縮合するいわゆるゾル−ゲル
反応によって、ゴム製品中に、混練法では分散させるこ
とが困難な微小粒径のシリカ微粒子が生成、分散される
ため、ゴム製品の強度を、混練法では実現困難な高レベ
ルまで向上できると考えられたのである。 【0006】また近時、上記ゾル−ゲル法を利用したゴ
ム製品の補強方法において、アルコキシシラン化合物や
水のゴム製品中への含有量をコントロールすべく、当該
ゴム製品を、アルコキシシラン化合物および水を溶解す
る溶媒で膨潤させたり、ゴム製品の架橋密度を調整した
り、あるいは矢嶋らの研究〔第6回エラストマー討論会
講演要旨集、第2頁〕のように、ゾル−ゲル反応に使用
する触媒を工夫したりする試みもなされている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の
ゾル−ゲル法によるゴム製品の補強を、たとえば自動車
用タイヤ等の実際の製品に適用しようとすると、以下に
示すような種々の問題を生じることが、発明者らの検討
により明らかとなった。たとえば上記自動車用タイヤ等
のゴム製品においては、その所定部分(タイヤの場合は
トレッドの部分)にのみシリカ微粒子を分散させる必要
があるが、上記の方法では、アルコキシシラン化合物と
水のゴム製品中への浸透という自然現象によっている以
上、シリカ微粒子を分散させる部分とそうでない部分と
の境界を明確に区切ることは容易ではない。よって、従
来のゾル−ゲル法によるゴム製品の補強法では、ゴム製
品の所定部分のみにシリカ微粒子を分散させるのは困難
である。 【0008】またとくにゴム製品の厚みが均一でない場
合に、上記の方法では、その全体に亘って、あるいはシ
リカ微粒子を分散させる所定部分の全体に亘って、アル
コキシシラン化合物と水を均一に含有させるのが難し
く、したがってシリカ微粒子の分散が不均一になるおそ
れがある。さらに上記の方法では、シリカ微粒子を分散
させた後のゴム製品の体積や重量を予測するのが困難で
ある上、加硫後の、すでに形状が定まったゴム製品中に
シリカ微粒子を生成させており、体積の増加によるゴム
製品の反りや変形等を生じるおそれもあるため、寸法精
度が要求されるゴム製品の製造に適さないという問題も
ある。 【0009】また、上記従来のゾル−ゲル法によって補
強したゴム製品の物性を調べたところ、後述する比較例
2の結果にみるように、伸長時の応力は、混練法によっ
て補強した比較例1に比べて向上するものの、引張強さ
や破断伸びは、上記比較例1に比べてかえって低下する
ことが明らかとなった。この原因としては、ゴム製品を
構成する多くのゴムが、アルコキシシラン化合物および
水との親和性が十分でないことがあげられる。 【0010】つまり通常の固形状のゴムの多くは、基本
的にアルコキシシラン化合物や水との親和性が十分でな
いため、従来のゾル−ゲル法による補強では、たとえ前
述したような溶媒による膨潤、架橋密度の調整等の対策
を行ったとしても、上記両成分を、ゴム製品中に均一か
つ安定に分散させることができない。それゆえ、生成す
るシリカ微粒子の濃度にむらが生じたり、あるいはシリ
カ微粒子の粒径が大きくなったりするという現象が生
じ、前者の場合にはシリカ微粒子の濃度の低いところが
ゴム製品全体の強度向上の妨げとなり、また後者の場合
には、前述した小粒径化による補強効果が低下してしま
うため、いずれの場合にもゴム製品の強度が低下するの
である。 【0011】この発明の目的は、従来のゾル−ゲル法に
よる上記種々の問題点を解消して、ゴムの厚み等に関係
なく内部まで均質に分散されたシリカ微粒子によって高
強度に補強されたゴム製品や、シリカ微粒子を分散させ
る部分とそうでない部分との境界が明確に区切られたゴ
ム製品、あるいは寸法精度の要求されるゴム製品を製造
しうる、新規なゴム製品の製造方法を提供することにあ
る。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の、この発明のゴム製品の製造方法は、未加硫のゴムの
有機溶媒溶液中に、一般式(1) : 【0013】 【化2】 【0014】〔式中R1、R2、R3およびR4は、同一ま
たは異なる1価の有機基を示す。ただし、R1、R2、R
3およびR4のうちの少なくとも1つはアルコキシ基であ
る。〕で表されるアルコキシシラン化合物から、ゾル−
ゲル法によってシリカ微粒子を生成する工程と、 上記溶
液から、シリカ微粒子が分散された固形ゴムを得る工程
と、 かかる固形ゴムに少なくとも加硫剤を含む添加剤を
添加し、混練してゴム組成物を作製する工程と、 作製し
たゴム組成物を成形、加硫してゴム製品を製造する工程
と、を有することを特徴としている。 【0015】上記構成からなる、この発明のゴム製品の
製造方法においては、液相である未加硫のゴムの有機溶
媒溶液中に、ゾル−ゲル法によってシリカ微粒子を生成
して分散させているため、固形の加硫ゴム中にアルコキ
シシラン化合物と水を含有させる従来の方法に比べて、
シリカ微粒子が内部まで均質に分散されたゴム組成物を
えることができる。よって、かかるゴム組成物を用いる
ことにより、ゴムの厚み等に関係なく内部まで均質に分
散されたシリカ微粒子によって高強度に補強されたゴム
製品を製造することが可能となる。 【0016】また、上記のようにシリカ微粒子が均質に
分散されたゴム組成物を、ゴム製品中の、シリカ微粒子
によって補強すべき所定の部分のみに用いることによ
り、シリカ微粒子を分散させる部分とそうでない部分と
の境界が明確に区切られたゴム製品を製造することも可
能である。さらにこの発明によれば、上記のごとくあら
かじめシリカ微粒子が分散されたゴム組成物を加硫して
ゴム製品を製造するので、当該ゴム製品の体積や重量の
予測が容易であるとともに、体積の増加による反りや変
形等が生じるおそれもない。よってこの発明の製造方法
は、寸法精度が要求されるゴム製品の製造にも適してい
る。 【0017】 【発明の実施の形態】以下に、この発明を説明する。こ
の発明のゴム製品の製造方法においては、まず前述した
ように未加硫のゴムを適当な有機溶媒に溶解して溶液を
作製し、この溶液中に、アルコキシシラン化合物と水
と、さらに必要に応じてゾル−ゲル反応のための触媒と
を添加して、ゾル−ゲル法によってシリカ微粒子を生成
して分散させる。 【0018】つぎに上記溶液から、有機溶媒、ゾル−ゲ
ル反応の副生成物であるアルコール、および未反応のア
ルコキシシラン化合物等を気化等の方法で除去して、シ
リカ微粒子が分散された固形ゴムをえる。上記各成分を
気化させるには、溶液を減圧あるいは加熱するのが効率
的である。つぎに上記固形ゴムに、固形ゴム配合に用い
る充てん剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、架橋剤、老化
防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延
剤等の、従来同様の添加剤を添加し、混練してゴム組成
物を作製する。 【0019】そして上記ゴム組成物を用いて、従来同様
の方法および条件で成形、加硫すると、前述したように
ゴムの厚み等に関係なく内部まで均質に分散されたシリ
カ微粒子によって高強度に補強されたゴム製品が製造さ
れる。また上記ゴム組成物を、ゴム製品中の、シリカ微
粒子によって補強すべき所定の部分のみに用いてもよ
く、その場合には、シリカ微粒子を分散させる部分とそ
うでない部分との境界が明確に区切られ、しかも上記シ
リカ微粒子を分散させた部分が、当該シリカ微粒子によ
って高強度に補強されたゴム製品が製造される。 【0020】さらにこの発明では、上記のごとくあらか
じめシリカ微粒子が分散されたゴム組成物を加硫してゴ
ム製品が製造されるので、体積や重量の予測が容易であ
るとともに、体積の増加による反りや変形等が生じるお
それもない。よって、寸法精度が要求されるゴム製品の
製造も可能である。この発明に使用する未加硫のゴムと
しては、たとえば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム
(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジ
エン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジ
エン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(C
R)、ふっ素ゴム(FKM)、ブチルゴム(IIR)、
エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン
−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、シリコ
ーンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、
多硫化ゴム(T)、ウレタンゴム(U)等があげられ
る。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を
併用することもできる。 【0021】上記未加硫のゴムを溶解するための有機溶
媒としては、ゴムを良好に溶解しうる、従来公知の種々
の有機溶媒がいずれも使用可能であるが、とくにシリカ
微粒子の分散性を向上するためには、当該シリカ微粒子
の原料であるアルコキシシラン化合物や水等を良好に溶
解するか、またはこれらの成分を良好に分散しうるもの
がとくに好適に使用される。 【0022】かかる好適な有機溶媒としては、これに限
定されないがたとえばn−ペンタン、n−ヘキサン、シ
クロヘキサン、四塩化炭素、キシレン、トルエン、テト
ラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、メチルエチルケ
トン、クロロホルム、アセトン、エタノール等があげら
れる。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上
を併用することもできる。 【0023】上記有機溶媒溶液中における固形分濃度、
すなわち未加硫のゴムの濃度はとくに限定されないが、
1〜50重量%程度であるのが好ましく、5〜20重量
%程度であるのがさらに好ましい。固形分濃度が上記範
囲未満では、相対的に有機溶媒の量が多くなるため、当
該有機溶媒の除去が容易でなくなるおそれがあり、逆に
固形分濃度が上記範囲を超えた場合には、有機溶媒溶液
の粘度が上昇して、アルコキシシラン化合物や水、ひい
てはかかるアルコキシシラン化合物から生成されるシリ
カ微粒子の、ゴム中への均質な分散が容易でなくなるお
それがある。 【0024】上記の、未加硫ゴムの有機溶媒溶液に添加
されるアルコキシシラン化合物は、前述したように、一
般式(1) : 【0025】 【化3】 【0026】〔式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は、
同一または異なる1価の有機基を示す。ただし、R1 、
R2 、R3 およびR4 のうち少なくとも1つはアルコキ
シ基である。〕で表されるものである。上記一般式(1)
において基R1 〜R4 に相当するアルコキシ基として
は、たとえばメトキシ、エトキシ、ノルマルプロポキ
シ、イソプロポキシ、ノルマルブトキシ、イソブトキ
シ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシ、ペンチルオキ
シ、ヘキシルオキシ等の、炭素数1〜6のアルコキシ基
があげられる。 【0027】またアルコキシ基以外の1価の有機基とし
ては、たとえばアルキル基、アリール基、アラルキル基
等があげられる。なお上記基R1 〜R4 は、前述したよ
うにそのうちの少なくとも1つがアルコキシ基であれ
ば、ゾル−ゲル反応によってシリカ微粒子を生成しうる
が、生成されるシリカ微粒子の構造を補強効果にすぐれ
た緻密なものとするには、基R1 〜R4 がいずれもアル
コキシ基であるテトラアルコキシシラン化合物が、より
好適に使用される。 【0028】かかるテトラアルコキシシラン化合物の具
体例としては、これに限定されないがたとえば、テトラ
メトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキ
シシラン、テトラフェノキシシラン等があげられ、中で
もとくに基R1 〜R4 がいずれもエトキシ基である、下
記式(1-1) : 【0029】 【化4】 【0030】で表されるテトラエトキシシラン(以下
「TEOS」とする)が、製造や取り扱いの容易さ、あ
るいは水との反応性等の点から、好適に使用される。ア
ルコキシシラン化合物の添加量は、ゴム製品に要求され
る物性、とくに強度等に応じて、最適な値を設定すれば
よい。水は、アルコキシシラン化合物の加水分解反応を
開始しうる程度の、少量の添加でよい。 【0031】またこの発明では、前述したようにアルコ
キシシラン化合物の加水分解、重縮合反応を促進するた
めに、少量の触媒を添加することもできる。かかる触媒
としては、たとえばアンモニア(NH3 )、n−ブチル
アミン、エチレンジアミン等の塩基性触媒や、あるいは
塩酸等の酸性触媒があげられる。アルコキシシラン化合
物から、ゾル−ゲル法によって生成するシリカ微粒子の
粒径はとくに限定されないが、高強度のゴム製品をえる
には、シリカ微粒子の粒径は300Å以下であるのが好
ましい。シリカ微粒子の粒径を上記範囲内にするには、
ゾル−ゲル反応を実施する際に、アルコキシシラン化合
物や水等の成分を、未加硫ゴムの有機溶媒溶液中にでき
るだけ均一に分散させておくことが必要である。このた
めには、前述したように有機溶媒の種類を選択するのが
有効であるが、たとえば上記の成分を添加する際やゾル
−ゲル反応の際に、有機溶媒溶液をかく拌するのも効果
的である。 【0032】なおシリカ微粒子の粒径は、上記範囲内で
もとくに10〜200Åであるのが好ましく、20〜8
0Åであるのがさらに好ましい。またこの発明において
は、生成したシリカ微粒子の、有機溶媒溶液への分散性
や、あるいはゴムへの親和性を向上するために、シラン
カップリング剤を添加してもよい。シランカップリング
剤は、有機溶媒溶液の製造からゴム組成物の製造に至る
までの、いずれか任意の段階で添加すればよい。 【0033】上記シランカップリング剤としては、分子
中に、ゴム分子とグラフト反応しうるアルコキシ基を有
するものが好適に使用される。かかるシランカップリン
グ剤としては、たとえメルカプトアルコキシシラン類、
ビニルアルコキシシラン類、メタクリロキシアルコキシ
シラン類、アミノアルコキシシラン類、グリシドキシア
ルコキシシラン類等があげられる。これらはそれぞれ単
独で使用される他、2種以上を併用することもできる。 【0034】 【実施例】以下にこの発明を、実施例、比較例に基づい
て説明する。 実施例1 未加硫のSBR〔日本合成ゴム(株)製のSL574〕
をテトラヒドロフラン(THF)に溶解して、固形分濃
度、すなわちSBRの濃度が10重量%の溶液を作製
し、この溶液をかく拌しつつ、当該溶液中のSBRと同
重量のTEOSと、このTEOSの添加量の1重量%の
水と、同じくTEOSの添加量の1重量%のn−ブチル
アミンとを、それぞれ溶液中に添加した。 【0035】つぎにこの混合溶液をかく拌下、2週間、
室温でゾル−ゲル反応させて、溶液中にシリカ微粒子を
生成、分散させたのち、THFを除去して固形ゴムをえ
た。この固形ゴム中のシリカ含有量を、熱重量分析によ
る灰分量測定の結果から算出したところ40phrであ
った。なお上記phrの値は、固形ゴム中に含まれるS
BRの重量を100としたときの、同じ固形ゴム中に含
まれるシリカの重量に相当する。 【0036】つぎに、上記固形ゴム140重量部に下記
の各添加剤を添加し、ロールを用いて混合、混練してゴ
ム組成物を製造し、このゴム組成物を加硫、成形して、
後述する物理特性試験用の試験片の元になる厚み2mm
のシート状、およびシリカ分散性試験用の試験片として
の厚み1cmのシート状の、2種の試料を作製した。加
硫条件は150℃×60分であった。 【0037】 (成 分) (重量部) ・亜鉛華 3 ・ステアリン酸 2 ・シランカップリング剤 4.0 (テグサ社製のSi69) ・硫黄 1.5 ・加硫促進剤 CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド) 1 DPG(1,3−ジフェニルグアニジン) 1 比較例1 ゾル−ゲル法によってシリカ微粒子を生成、分散させた
固形ゴムに代えて、未加硫のSBR〔日本合成ゴム
(株)製のSL574〕100重量部と、微粉状シリカ
〔日本シリカ(株)製のニプシールVN3〕43重量部
とを使用したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組
成物を製造し、このゴム組成物を実施例1と同条件で加
硫、成形して、前記2種の厚みのシート状の試料を作製
した。 【0038】比較例2 ゾル−ゲル法によってシリカ微粒子を生成、分散させた
固形ゴムに代えて、未加硫のSBR〔日本合成ゴム
(株)製のSL574〕100重量部を使用したこと以
外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造し、この
ゴム組成物を実施例1と同条件で加硫、成形して、前記
2種の厚みのシートを作製した。 【0039】つぎに、上記2種の厚みのシートをそれぞ
れ、各シートの重量の9倍量のTEOSと、このTEO
Sの量の1重量%の水と、同じくTEOSの量の1重量
%のn−ブチルアミンとの混合液中に浸漬して2週間、
室温で放置してゾル−ゲル反応させて、溶液中にシリカ
微粒子を生成、分散させたのち、溶液から取り出して試
料とした。 【0040】上記各実施例、比較例で製造した2種の厚
みのシート状の試料を用いて、以下の各試験を行って、
その特性を評価した。 物理特性試験 各実施例、比較例で作製した厚み2mmのシート状の試
料をいわゆるダンベル状に打ち抜いて、JIS K 6
301「加硫ゴム物理試験方法」所載の引張試験方法用
の試験片を作製し、この試験片を用いて、上記の試験方
法に則って、引張強さTB (MPa)、破断伸びE
B (%)、および100%伸長時の応力M10 0 (MP
a)を測定した。 【0041】シリカ分散性試験 各実施例、比較例で作製した厚み1cmのシート状の試
料の表層部(表面と、当該表面から深さ2mmの位置ま
での領域)、および内部(表面から深さ5mmの位置を
中心とする、厚み2mmの領域)におけるシリカ含有量
(phr)を、熱重量分析による灰分量測定の結果から
算出した。なお上記phrの値は、試料の、該当する領
域の加硫ゴム中に含まれるSBRの重量を100とした
ときの、同じ領域の加硫ゴム中に含まれるシリカの重量
に相当する。 【0042】寸法精度評価 各実施例、比較例で作製した厚み1cmのシート状の試
料の反りや変形の有無を、目視にて観察した。以上の結
果を表1に示す。 【0043】 【表1】 【0044】表1の物理特性試験の結果より、この発明
の製造方法である実施例1により製造された試料は、従
来の混練法である比較例1で製造されたものに比べて、
引張強さTB 、破断伸びEB 、および100%伸長時の
応力M100 がいずれも向上しており、また従来のゾル−
ゲル法である比較例2で製造されたものに比べても、引
張強さTB および破断伸びEB が向上していることがわ
かった。また表1のシリカ分散性試験の結果より、上記
実施例1により製造された試料は、比較例2で製造され
たものに比べて、試料表面と内部でのシリカ含有量の差
が小さいことから、ゾル−ゲル法で生成したシリカ微粒
子が、ゴム中に均一に分散されていることがわかった。
さらに表1の寸法精度評価の結果より、上記実施例1に
より製造された試料は、比較例2で製造されたもののよ
うに反りや変形等がないことがわかった。そしてこれら
の結果よりこの発明の製造方法によれば、ゴムの厚み等
に関係なく内部まで均質に分散されたシリカ微粒子によ
って高強度に補強されているとともに、寸法精度にすぐ
れたゴム製品を製造しうることが確認された。 【0045】 【発明の効果】以上、詳述したようにこの発明によれ
ば、ゴムの厚み等に関係なく内部まで均質に分散された
シリカ微粒子によって高強度に補強されたゴム製品や、
シリカ微粒子を分散させる部分とそうでない部分との境
界が明確に区切られたゴム製品、あるいは寸法精度の要
求されるゴム製品を製造できるという特有の作用効果を
奏する。
よって補強されたゴム製品の、新規な製造方法に関する
ものである。 【0002】 【従来の技術】ゴム製品を補強する場合、加硫前のゴム
と、カーボンブラックやシリカ(ホワイトカーボン)等
の補強材とを、たとえばバンバリーミキサ、ニーダー、
ロール等を用いて混練して、そのせん断力によって、ゴ
ム中に補強材を練り込むのが一般的である。 【0003】かかる従来の補強方法(混練法)において
は、補強材粒子の粒径が小さいほど補強効果が向上し
て、加硫後のゴム製品の強度が向上することが知られて
いる。しかし混練法では、粒径の小さい補強材粒子ほど
ゴム中に分散させるのが容易でないため、ゴム製品の補
強効果には自ずと限界があった。とくにシリカは、表面
に親水性の官能基である水酸基が多数存在するために、
シリカ同士の凝集力が高く、かつゴムとの親和性が低い
ので、ゴム中に分散させるのが困難であった。 【0004】ジエチレングリコール等の分散剤やシラン
カップリング剤等を添加して、シリカのゴムへの分散性
の向上と、両者の親和性の改善を図る試みもなされてい
るが、基本的に混練法によっている以上、その効果には
限界があった。そこで近時、従来の混練法に代わるゴム
製品の補強方法として、アルコキシシラン化合物から
の、ゾル−ゲル法によるシリカの生成反応を利用した方
法が提案された。 【0005】すなわち加硫後のゴム製品を、アルコキシ
シラン化合物および水を含む溶液中に浸漬して、当該両
成分をゴム製品中に含有させると、アルコキシシラン化
合物が加水分解したのち重縮合するいわゆるゾル−ゲル
反応によって、ゴム製品中に、混練法では分散させるこ
とが困難な微小粒径のシリカ微粒子が生成、分散される
ため、ゴム製品の強度を、混練法では実現困難な高レベ
ルまで向上できると考えられたのである。 【0006】また近時、上記ゾル−ゲル法を利用したゴ
ム製品の補強方法において、アルコキシシラン化合物や
水のゴム製品中への含有量をコントロールすべく、当該
ゴム製品を、アルコキシシラン化合物および水を溶解す
る溶媒で膨潤させたり、ゴム製品の架橋密度を調整した
り、あるいは矢嶋らの研究〔第6回エラストマー討論会
講演要旨集、第2頁〕のように、ゾル−ゲル反応に使用
する触媒を工夫したりする試みもなされている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の
ゾル−ゲル法によるゴム製品の補強を、たとえば自動車
用タイヤ等の実際の製品に適用しようとすると、以下に
示すような種々の問題を生じることが、発明者らの検討
により明らかとなった。たとえば上記自動車用タイヤ等
のゴム製品においては、その所定部分(タイヤの場合は
トレッドの部分)にのみシリカ微粒子を分散させる必要
があるが、上記の方法では、アルコキシシラン化合物と
水のゴム製品中への浸透という自然現象によっている以
上、シリカ微粒子を分散させる部分とそうでない部分と
の境界を明確に区切ることは容易ではない。よって、従
来のゾル−ゲル法によるゴム製品の補強法では、ゴム製
品の所定部分のみにシリカ微粒子を分散させるのは困難
である。 【0008】またとくにゴム製品の厚みが均一でない場
合に、上記の方法では、その全体に亘って、あるいはシ
リカ微粒子を分散させる所定部分の全体に亘って、アル
コキシシラン化合物と水を均一に含有させるのが難し
く、したがってシリカ微粒子の分散が不均一になるおそ
れがある。さらに上記の方法では、シリカ微粒子を分散
させた後のゴム製品の体積や重量を予測するのが困難で
ある上、加硫後の、すでに形状が定まったゴム製品中に
シリカ微粒子を生成させており、体積の増加によるゴム
製品の反りや変形等を生じるおそれもあるため、寸法精
度が要求されるゴム製品の製造に適さないという問題も
ある。 【0009】また、上記従来のゾル−ゲル法によって補
強したゴム製品の物性を調べたところ、後述する比較例
2の結果にみるように、伸長時の応力は、混練法によっ
て補強した比較例1に比べて向上するものの、引張強さ
や破断伸びは、上記比較例1に比べてかえって低下する
ことが明らかとなった。この原因としては、ゴム製品を
構成する多くのゴムが、アルコキシシラン化合物および
水との親和性が十分でないことがあげられる。 【0010】つまり通常の固形状のゴムの多くは、基本
的にアルコキシシラン化合物や水との親和性が十分でな
いため、従来のゾル−ゲル法による補強では、たとえ前
述したような溶媒による膨潤、架橋密度の調整等の対策
を行ったとしても、上記両成分を、ゴム製品中に均一か
つ安定に分散させることができない。それゆえ、生成す
るシリカ微粒子の濃度にむらが生じたり、あるいはシリ
カ微粒子の粒径が大きくなったりするという現象が生
じ、前者の場合にはシリカ微粒子の濃度の低いところが
ゴム製品全体の強度向上の妨げとなり、また後者の場合
には、前述した小粒径化による補強効果が低下してしま
うため、いずれの場合にもゴム製品の強度が低下するの
である。 【0011】この発明の目的は、従来のゾル−ゲル法に
よる上記種々の問題点を解消して、ゴムの厚み等に関係
なく内部まで均質に分散されたシリカ微粒子によって高
強度に補強されたゴム製品や、シリカ微粒子を分散させ
る部分とそうでない部分との境界が明確に区切られたゴ
ム製品、あるいは寸法精度の要求されるゴム製品を製造
しうる、新規なゴム製品の製造方法を提供することにあ
る。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の、この発明のゴム製品の製造方法は、未加硫のゴムの
有機溶媒溶液中に、一般式(1) : 【0013】 【化2】 【0014】〔式中R1、R2、R3およびR4は、同一ま
たは異なる1価の有機基を示す。ただし、R1、R2、R
3およびR4のうちの少なくとも1つはアルコキシ基であ
る。〕で表されるアルコキシシラン化合物から、ゾル−
ゲル法によってシリカ微粒子を生成する工程と、 上記溶
液から、シリカ微粒子が分散された固形ゴムを得る工程
と、 かかる固形ゴムに少なくとも加硫剤を含む添加剤を
添加し、混練してゴム組成物を作製する工程と、 作製し
たゴム組成物を成形、加硫してゴム製品を製造する工程
と、を有することを特徴としている。 【0015】上記構成からなる、この発明のゴム製品の
製造方法においては、液相である未加硫のゴムの有機溶
媒溶液中に、ゾル−ゲル法によってシリカ微粒子を生成
して分散させているため、固形の加硫ゴム中にアルコキ
シシラン化合物と水を含有させる従来の方法に比べて、
シリカ微粒子が内部まで均質に分散されたゴム組成物を
えることができる。よって、かかるゴム組成物を用いる
ことにより、ゴムの厚み等に関係なく内部まで均質に分
散されたシリカ微粒子によって高強度に補強されたゴム
製品を製造することが可能となる。 【0016】また、上記のようにシリカ微粒子が均質に
分散されたゴム組成物を、ゴム製品中の、シリカ微粒子
によって補強すべき所定の部分のみに用いることによ
り、シリカ微粒子を分散させる部分とそうでない部分と
の境界が明確に区切られたゴム製品を製造することも可
能である。さらにこの発明によれば、上記のごとくあら
かじめシリカ微粒子が分散されたゴム組成物を加硫して
ゴム製品を製造するので、当該ゴム製品の体積や重量の
予測が容易であるとともに、体積の増加による反りや変
形等が生じるおそれもない。よってこの発明の製造方法
は、寸法精度が要求されるゴム製品の製造にも適してい
る。 【0017】 【発明の実施の形態】以下に、この発明を説明する。こ
の発明のゴム製品の製造方法においては、まず前述した
ように未加硫のゴムを適当な有機溶媒に溶解して溶液を
作製し、この溶液中に、アルコキシシラン化合物と水
と、さらに必要に応じてゾル−ゲル反応のための触媒と
を添加して、ゾル−ゲル法によってシリカ微粒子を生成
して分散させる。 【0018】つぎに上記溶液から、有機溶媒、ゾル−ゲ
ル反応の副生成物であるアルコール、および未反応のア
ルコキシシラン化合物等を気化等の方法で除去して、シ
リカ微粒子が分散された固形ゴムをえる。上記各成分を
気化させるには、溶液を減圧あるいは加熱するのが効率
的である。つぎに上記固形ゴムに、固形ゴム配合に用い
る充てん剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、架橋剤、老化
防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延
剤等の、従来同様の添加剤を添加し、混練してゴム組成
物を作製する。 【0019】そして上記ゴム組成物を用いて、従来同様
の方法および条件で成形、加硫すると、前述したように
ゴムの厚み等に関係なく内部まで均質に分散されたシリ
カ微粒子によって高強度に補強されたゴム製品が製造さ
れる。また上記ゴム組成物を、ゴム製品中の、シリカ微
粒子によって補強すべき所定の部分のみに用いてもよ
く、その場合には、シリカ微粒子を分散させる部分とそ
うでない部分との境界が明確に区切られ、しかも上記シ
リカ微粒子を分散させた部分が、当該シリカ微粒子によ
って高強度に補強されたゴム製品が製造される。 【0020】さらにこの発明では、上記のごとくあらか
じめシリカ微粒子が分散されたゴム組成物を加硫してゴ
ム製品が製造されるので、体積や重量の予測が容易であ
るとともに、体積の増加による反りや変形等が生じるお
それもない。よって、寸法精度が要求されるゴム製品の
製造も可能である。この発明に使用する未加硫のゴムと
しては、たとえば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム
(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジ
エン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジ
エン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(C
R)、ふっ素ゴム(FKM)、ブチルゴム(IIR)、
エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン
−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、シリコ
ーンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、
多硫化ゴム(T)、ウレタンゴム(U)等があげられ
る。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を
併用することもできる。 【0021】上記未加硫のゴムを溶解するための有機溶
媒としては、ゴムを良好に溶解しうる、従来公知の種々
の有機溶媒がいずれも使用可能であるが、とくにシリカ
微粒子の分散性を向上するためには、当該シリカ微粒子
の原料であるアルコキシシラン化合物や水等を良好に溶
解するか、またはこれらの成分を良好に分散しうるもの
がとくに好適に使用される。 【0022】かかる好適な有機溶媒としては、これに限
定されないがたとえばn−ペンタン、n−ヘキサン、シ
クロヘキサン、四塩化炭素、キシレン、トルエン、テト
ラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、メチルエチルケ
トン、クロロホルム、アセトン、エタノール等があげら
れる。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上
を併用することもできる。 【0023】上記有機溶媒溶液中における固形分濃度、
すなわち未加硫のゴムの濃度はとくに限定されないが、
1〜50重量%程度であるのが好ましく、5〜20重量
%程度であるのがさらに好ましい。固形分濃度が上記範
囲未満では、相対的に有機溶媒の量が多くなるため、当
該有機溶媒の除去が容易でなくなるおそれがあり、逆に
固形分濃度が上記範囲を超えた場合には、有機溶媒溶液
の粘度が上昇して、アルコキシシラン化合物や水、ひい
てはかかるアルコキシシラン化合物から生成されるシリ
カ微粒子の、ゴム中への均質な分散が容易でなくなるお
それがある。 【0024】上記の、未加硫ゴムの有機溶媒溶液に添加
されるアルコキシシラン化合物は、前述したように、一
般式(1) : 【0025】 【化3】 【0026】〔式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は、
同一または異なる1価の有機基を示す。ただし、R1 、
R2 、R3 およびR4 のうち少なくとも1つはアルコキ
シ基である。〕で表されるものである。上記一般式(1)
において基R1 〜R4 に相当するアルコキシ基として
は、たとえばメトキシ、エトキシ、ノルマルプロポキ
シ、イソプロポキシ、ノルマルブトキシ、イソブトキ
シ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシ、ペンチルオキ
シ、ヘキシルオキシ等の、炭素数1〜6のアルコキシ基
があげられる。 【0027】またアルコキシ基以外の1価の有機基とし
ては、たとえばアルキル基、アリール基、アラルキル基
等があげられる。なお上記基R1 〜R4 は、前述したよ
うにそのうちの少なくとも1つがアルコキシ基であれ
ば、ゾル−ゲル反応によってシリカ微粒子を生成しうる
が、生成されるシリカ微粒子の構造を補強効果にすぐれ
た緻密なものとするには、基R1 〜R4 がいずれもアル
コキシ基であるテトラアルコキシシラン化合物が、より
好適に使用される。 【0028】かかるテトラアルコキシシラン化合物の具
体例としては、これに限定されないがたとえば、テトラ
メトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキ
シシラン、テトラフェノキシシラン等があげられ、中で
もとくに基R1 〜R4 がいずれもエトキシ基である、下
記式(1-1) : 【0029】 【化4】 【0030】で表されるテトラエトキシシラン(以下
「TEOS」とする)が、製造や取り扱いの容易さ、あ
るいは水との反応性等の点から、好適に使用される。ア
ルコキシシラン化合物の添加量は、ゴム製品に要求され
る物性、とくに強度等に応じて、最適な値を設定すれば
よい。水は、アルコキシシラン化合物の加水分解反応を
開始しうる程度の、少量の添加でよい。 【0031】またこの発明では、前述したようにアルコ
キシシラン化合物の加水分解、重縮合反応を促進するた
めに、少量の触媒を添加することもできる。かかる触媒
としては、たとえばアンモニア(NH3 )、n−ブチル
アミン、エチレンジアミン等の塩基性触媒や、あるいは
塩酸等の酸性触媒があげられる。アルコキシシラン化合
物から、ゾル−ゲル法によって生成するシリカ微粒子の
粒径はとくに限定されないが、高強度のゴム製品をえる
には、シリカ微粒子の粒径は300Å以下であるのが好
ましい。シリカ微粒子の粒径を上記範囲内にするには、
ゾル−ゲル反応を実施する際に、アルコキシシラン化合
物や水等の成分を、未加硫ゴムの有機溶媒溶液中にでき
るだけ均一に分散させておくことが必要である。このた
めには、前述したように有機溶媒の種類を選択するのが
有効であるが、たとえば上記の成分を添加する際やゾル
−ゲル反応の際に、有機溶媒溶液をかく拌するのも効果
的である。 【0032】なおシリカ微粒子の粒径は、上記範囲内で
もとくに10〜200Åであるのが好ましく、20〜8
0Åであるのがさらに好ましい。またこの発明において
は、生成したシリカ微粒子の、有機溶媒溶液への分散性
や、あるいはゴムへの親和性を向上するために、シラン
カップリング剤を添加してもよい。シランカップリング
剤は、有機溶媒溶液の製造からゴム組成物の製造に至る
までの、いずれか任意の段階で添加すればよい。 【0033】上記シランカップリング剤としては、分子
中に、ゴム分子とグラフト反応しうるアルコキシ基を有
するものが好適に使用される。かかるシランカップリン
グ剤としては、たとえメルカプトアルコキシシラン類、
ビニルアルコキシシラン類、メタクリロキシアルコキシ
シラン類、アミノアルコキシシラン類、グリシドキシア
ルコキシシラン類等があげられる。これらはそれぞれ単
独で使用される他、2種以上を併用することもできる。 【0034】 【実施例】以下にこの発明を、実施例、比較例に基づい
て説明する。 実施例1 未加硫のSBR〔日本合成ゴム(株)製のSL574〕
をテトラヒドロフラン(THF)に溶解して、固形分濃
度、すなわちSBRの濃度が10重量%の溶液を作製
し、この溶液をかく拌しつつ、当該溶液中のSBRと同
重量のTEOSと、このTEOSの添加量の1重量%の
水と、同じくTEOSの添加量の1重量%のn−ブチル
アミンとを、それぞれ溶液中に添加した。 【0035】つぎにこの混合溶液をかく拌下、2週間、
室温でゾル−ゲル反応させて、溶液中にシリカ微粒子を
生成、分散させたのち、THFを除去して固形ゴムをえ
た。この固形ゴム中のシリカ含有量を、熱重量分析によ
る灰分量測定の結果から算出したところ40phrであ
った。なお上記phrの値は、固形ゴム中に含まれるS
BRの重量を100としたときの、同じ固形ゴム中に含
まれるシリカの重量に相当する。 【0036】つぎに、上記固形ゴム140重量部に下記
の各添加剤を添加し、ロールを用いて混合、混練してゴ
ム組成物を製造し、このゴム組成物を加硫、成形して、
後述する物理特性試験用の試験片の元になる厚み2mm
のシート状、およびシリカ分散性試験用の試験片として
の厚み1cmのシート状の、2種の試料を作製した。加
硫条件は150℃×60分であった。 【0037】 (成 分) (重量部) ・亜鉛華 3 ・ステアリン酸 2 ・シランカップリング剤 4.0 (テグサ社製のSi69) ・硫黄 1.5 ・加硫促進剤 CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド) 1 DPG(1,3−ジフェニルグアニジン) 1 比較例1 ゾル−ゲル法によってシリカ微粒子を生成、分散させた
固形ゴムに代えて、未加硫のSBR〔日本合成ゴム
(株)製のSL574〕100重量部と、微粉状シリカ
〔日本シリカ(株)製のニプシールVN3〕43重量部
とを使用したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組
成物を製造し、このゴム組成物を実施例1と同条件で加
硫、成形して、前記2種の厚みのシート状の試料を作製
した。 【0038】比較例2 ゾル−ゲル法によってシリカ微粒子を生成、分散させた
固形ゴムに代えて、未加硫のSBR〔日本合成ゴム
(株)製のSL574〕100重量部を使用したこと以
外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造し、この
ゴム組成物を実施例1と同条件で加硫、成形して、前記
2種の厚みのシートを作製した。 【0039】つぎに、上記2種の厚みのシートをそれぞ
れ、各シートの重量の9倍量のTEOSと、このTEO
Sの量の1重量%の水と、同じくTEOSの量の1重量
%のn−ブチルアミンとの混合液中に浸漬して2週間、
室温で放置してゾル−ゲル反応させて、溶液中にシリカ
微粒子を生成、分散させたのち、溶液から取り出して試
料とした。 【0040】上記各実施例、比較例で製造した2種の厚
みのシート状の試料を用いて、以下の各試験を行って、
その特性を評価した。 物理特性試験 各実施例、比較例で作製した厚み2mmのシート状の試
料をいわゆるダンベル状に打ち抜いて、JIS K 6
301「加硫ゴム物理試験方法」所載の引張試験方法用
の試験片を作製し、この試験片を用いて、上記の試験方
法に則って、引張強さTB (MPa)、破断伸びE
B (%)、および100%伸長時の応力M10 0 (MP
a)を測定した。 【0041】シリカ分散性試験 各実施例、比較例で作製した厚み1cmのシート状の試
料の表層部(表面と、当該表面から深さ2mmの位置ま
での領域)、および内部(表面から深さ5mmの位置を
中心とする、厚み2mmの領域)におけるシリカ含有量
(phr)を、熱重量分析による灰分量測定の結果から
算出した。なお上記phrの値は、試料の、該当する領
域の加硫ゴム中に含まれるSBRの重量を100とした
ときの、同じ領域の加硫ゴム中に含まれるシリカの重量
に相当する。 【0042】寸法精度評価 各実施例、比較例で作製した厚み1cmのシート状の試
料の反りや変形の有無を、目視にて観察した。以上の結
果を表1に示す。 【0043】 【表1】 【0044】表1の物理特性試験の結果より、この発明
の製造方法である実施例1により製造された試料は、従
来の混練法である比較例1で製造されたものに比べて、
引張強さTB 、破断伸びEB 、および100%伸長時の
応力M100 がいずれも向上しており、また従来のゾル−
ゲル法である比較例2で製造されたものに比べても、引
張強さTB および破断伸びEB が向上していることがわ
かった。また表1のシリカ分散性試験の結果より、上記
実施例1により製造された試料は、比較例2で製造され
たものに比べて、試料表面と内部でのシリカ含有量の差
が小さいことから、ゾル−ゲル法で生成したシリカ微粒
子が、ゴム中に均一に分散されていることがわかった。
さらに表1の寸法精度評価の結果より、上記実施例1に
より製造された試料は、比較例2で製造されたもののよ
うに反りや変形等がないことがわかった。そしてこれら
の結果よりこの発明の製造方法によれば、ゴムの厚み等
に関係なく内部まで均質に分散されたシリカ微粒子によ
って高強度に補強されているとともに、寸法精度にすぐ
れたゴム製品を製造しうることが確認された。 【0045】 【発明の効果】以上、詳述したようにこの発明によれ
ば、ゴムの厚み等に関係なく内部まで均質に分散された
シリカ微粒子によって高強度に補強されたゴム製品や、
シリカ微粒子を分散させる部分とそうでない部分との境
界が明確に区切られたゴム製品、あるいは寸法精度の要
求されるゴム製品を製造できるという特有の作用効果を
奏する。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 杉谷 信
奈良県桜井市大字忍阪294−20
(72)発明者 村岡 清繁
兵庫県神戸市垂水区塩谷町1−6−28−
404
(72)発明者 寺川 克美
兵庫県神戸市西区宮下2丁目14番24号
(56)参考文献 特開 平5−125191(JP,A)
特開 平6−136321(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C08L 9/00 - 21/00
C08K 3/34
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】未加硫のゴムの有機溶媒溶液中に、一般式
(1): 【化1】 〔式中R1、R2、R3およびR4は、同一または異なる1
価の有機基を示す。ただし、R1、R2、R3およびR4の
うちの少なくとも1つはアルコキシ基である。〕で表さ
れるアルコキシシラン化合物から、ゾル−ゲル法によっ
てシリカ微粒子を生成する工程と、 上記溶液から、シリカ微粒子が分散された固形ゴムを得
る工程と、 かかる固形ゴムに少なくとも加硫剤を含む添加剤を添加
し、混練してゴム組成物を作製する工程と、 作製したゴム組成物を成形、加硫してゴム製品を製造す
る工程と、 を有することを特徴とするゴム製品の製造方法。
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