JP3406367B2 - ミネラル吸収促進効果を有する大豆蛋白質の製造法 - Google Patents

ミネラル吸収促進効果を有する大豆蛋白質の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大豆蛋白質含有原料か
らフィチン酸及びその塩を効率的に除去して、ミネラル
吸収促進効果を有する大豆蛋白質を製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】現在、日本人の栄養摂取状況は良好で、
栄養成分の欠乏症はほとんどないと言われている。しか
しながら、毎年行われている国民栄養調査によると、カ
ルシウムだけは、その所要摂取量が充足されないでい
る。こうしたカルシウム摂取量の不足を補うため、乳製
品、小魚、海藻等のカルシウム補給食品の摂取が奨励さ
れており、一方において、各種カルシウム剤や、カルシ
ウム強化食品などの開発が盛んに行われている。
【0003】しかしながら、カルシウムをはじめとする
ミネラルには、一般に難吸収性のものが多いために、単
に食品中のミネラルを強化しただけでは、充分なミネラ
ル補給効果が得られない。また、1種類のミネラルだけ
を強化した食品は、他のミネラルの吸収を拮抗阻害し、
却って微量ミネラルの欠乏状態を引き起こす虞れがある
ことが指摘されている(Dairy Council Digest, Vol.60
(3) )。
【0004】このため、近年、摂取が不足しがちなミネ
ラル、特にカルシウムの吸収を促進させる各種吸収促進
剤の開発が行われている。例えば、ホスホセリンを含む
アミノ酸数20程度のペプチドであるカゼインホスホペプ
チド(CPP)は、消化管内におけるカルシウムの不溶
化を抑制してカルシウムの吸収を促進させることが知ら
れている。
【0005】一方、大豆蛋白質は、主として11s、7
s、2.8sなどのグロブリンからなる蛋白質であり、
β−カゼインとは異なり、リン酸基を持つホスホセリン
はほとんど含まれていない。また、大豆蛋白質には、フ
ィチン酸及びその塩が相当量含まれており、こうしたフ
ィチン酸及びその塩は、ミネラル、特にカルシウムの体
内吸収を阻害することが知られている(早川利郎、第1
回新潟県食品バイオテクノロジー懇談会別冊)。このよ
うな理由から、これまで大豆蛋白質にはミネラル吸収促
進効果はないとされてきた(日本栄養食糧学会、45
(4)333(1992))。
【0006】また、大豆蛋白質から限外濾過膜を用いて
フィチン酸及びその塩を0.14%まで除去できたという報
告がなされている(Rham and Jost, J.Food Sci. 44
(2) 596 (1979))。しかし、フィチン酸及びその塩を除
去した大豆蛋白質がミネラル吸収促進効果を有するとい
う報告はこれまでになされていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、CPP
がカルシウム吸収促進効果を有することが知られている
が、CPPはカゼイン中に50分の1程度の量しか含まれ
ていないため、非常に高価であるという問題があった。
また、CPPは、アミノ酸数20程度のペプチドであるた
め、胃液や腸液に含まれる蛋白質分解酵素により消化さ
れると、カルシウムの可溶化に必要な分子構造が破壊さ
れ、目的とする効果が得られないという虞れがあった。
【0008】また、前記のように、大豆蛋白質から限外
濾過膜を用いてフィチン酸及びその塩を除去するという
報告がなされているが、フィチン酸及びその塩が0.14%
までしか除去されておらず、それ以上に除去する方法は
知られていなかった。更に、そのようにして得られた大
豆蛋白質がミネラル吸収促進効果を有するという知見は
まったくなかった。
【0009】したがって、本発明の目的は、大豆蛋白質
含有原料から、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩
による沈殿法と、電気透析法とを組み合わせることによ
り、フィチン酸及びその塩を効率よく除去して、ミネラ
ル吸収促進効果を有する大豆蛋白質を容易に、高収率
で、かつ安価に製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、大豆蛋白
質に含まれるフィチン酸及びその塩について研究する過
程で、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩による沈
殿法と、電気透析法とを組み合わせることにより、大豆
蛋白質含有原料からフィチン酸及びその塩を効率よく除
去できること、及び、そうして得られた低フィチン酸及
びその塩の大豆蛋白質が優れたミネラル吸収促進効果を
有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】すなわち、本発明のミネラル吸収促進効果
を有する大豆蛋白質の製造法は、大豆蛋白質含有原料
に、食塩濃度が7.5重量%以上であって、カルシウム
塩及び/又はマグネシウム塩を前記食塩量に対して0.
5〜2重量%含む食塩溶液を加えて大豆蛋白質を抽出す
る工程と、この抽出液を電気透析処理してフィチン酸及
びその塩を除去する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】以下、本発明について好ましい態様を挙げ
て詳細に説明する。
【0013】まず、大豆蛋白質を抽出する工程について
説明すると、大豆蛋白質含有原料の種類は、特に限定さ
れず、脱脂大豆粉、濃縮大豆蛋白質、分離大豆蛋白質、
豆乳など、各種のものが使用できる。これらの原料は、
各種市販のものを用いても、原料大豆から調製してもよ
い。なお、蛋白質の抽出率を高くする点から、上記原料
は変性の少ないものが好ましく、具体的には、NSI
(可溶性窒素化率)80%以上のものが好ましい。
【0014】上記原料に加える食塩溶液は、食塩濃度が
7.5重量%以上のものであり、それ未満の濃度では大
豆蛋白質を効率よく抽出することができない。また、カ
ルシウム塩及び/又はマグネシウム塩の添加量は、上記
食塩量に対して0.5〜2重量%である。カルシウム塩
及び/又はマグネシウム塩の添加量が上記よりも少ない
と、フィチン酸及びその塩を効果的に沈殿させることが
できず、また、同添加量が上記よりも多いと、大豆蛋白
質の沈殿が生じて収率が減少するという問題があり好ま
しくない。
【0015】抽出に使う食塩溶液の量は、特に限定され
ないが、収量、製造コスト等を考えると、大豆蛋白質含
有原料に対して5〜20倍容量が好ましい。抽出温度及び
抽出時間についても、特に限定されないが、室温で、0.
5 〜1時間程度抽出するのが好ましい。抽出時のpHは
6〜9の範囲が好ましい。pHが6よりも低いと、大豆
蛋白質が溶解しにくく、pHが9よりも高いと、蛋白質
が一部アミノ酸に分解するという問題があるので好まし
くない。なお、抽出後における抽出液の固液分離法は、
デカンテーション、遠心分離、濾過法等、特に限定され
ない。
【0016】次に、抽出液からフィチン酸及びその塩を
除去するための電気透析処理工程について説明すると、
この電気透析処理はイオン交換膜や分子篩膜などの分離
膜を用いた電気透析装置を用いて行うのが好ましい。
【0017】図1には、このような電気透析装置の一例
が示されている。すなわち、陽極1と陰極3との間に、
陰イオン交換膜5と陽イオン交換膜6とが多数交互に配
置され、陽極1側から見て陰イオン交換膜5、陽イオン
交換膜6の順序で配列された膜間が、被処理液が流れる
脱塩室7とされ、陽イオン交換膜6、陰イオン交換膜5
の順序で配列された膜間が、被処理液中の陽イオン及び
陰イオンが集められるイオン回収室8とされている。
【0018】陽極室2及び陰極室4には、電極液流路1
0を通してポンプ11により電極液が循環され、脱塩室
7には、被処理液流路12を通してポンプ13により被
処理液、すなわち上記抽出液が循環される。更に、イオ
ン回収室8には、回収液流路14を通してポンプ15に
より回収液が循環される。
【0019】そして、陽極1と陰極3との間に電圧を加
えると、抽出液中の陽イオンは、陽イオン交換膜6を通
して回収室8に集められ、抽出液中の陰イオンは、陰イ
オン交換膜5を通して回収室8に集められる。なお、大
豆蛋白質自体もイオン化するが、その分子量が大きいた
め、イオン交換膜を透過することができず、脱塩室7内
に残される。こうして、抽出液中のフィチン酸及びその
塩等が除去され、脱塩室7側から精製された抽出液を得
ることができる。
【0020】上記において、イオン交換膜5、6として
は、大豆蛋白質自体の透過を阻止し、フィチン酸及びそ
の塩等を選択的に透過させるため、フィチン酸及びその
塩が透過でき、かつ、分画分子量が5000以下である
イオン交換膜又は分子篩膜が好ましく用いられる。この
ようなイオン交換膜又は分子篩膜としては、例えば「AC
-230-800」(カートリッジ名、旭化成工業株式会社製)
等を用いることができる
【0021】また、イオン回収液としては、各種無機塩
溶液等が使用できるが、中でも食塩溶液を用いるのが好
ましく、その濃度は0.1 〜1.0 重量%程度が好ましい。
【0022】上記電気透析処理の時間は、原料の種類
や、抽出液の量、濃度などに応じて適宜決定されるが、
抽出液中の食塩濃度が大体0.25〜1.5 重量%程度になる
まで行うのが好ましい。食塩濃度が1.5 重量%よりも高
いと、精製が不充分な虞れがあり、食塩濃度が0.25重量
%未満になると、脱塩により大豆蛋白質が凝集を生じる
ので好ましくない。
【0023】また、電気透析処理は、大豆蛋白質全体に
対するフィチン酸及びその塩の含量が、固形分比で0.1
重量%以下になるまで行うのが好ましく、0.05重量%以
下になるまで行うのがより好ましい。フィチン酸及びそ
の塩の含量が0.1 重量%よりも多いと、充分なミネラル
吸収促進効果が得られないので好ましくない。
【0024】こうして脱塩室7側から回収された、フィ
チン酸及びその塩を除去された抽出液に塩酸溶液等を滴
下して、pHを4.5 〜5.5 程度に調整すれば、大豆蛋白
質が等電点沈殿するので、抽出液から大豆蛋白質を分離
することができる。
【0025】こうして分離された大豆蛋白質は、適当な
濃度となるように水等に溶解してそのまま製品化するこ
ともできるが、水等に溶解した後、更に乾燥粉末化して
製品化するのが、製品の安定性の点から好ましい。乾燥
方法としては、スプレードライ法、凍結乾燥法など各種
の方法が採用できる。なお、上記いずれの方法で製品化
する場合においても、102 〜120 ℃で5〜15分程度加熱
処理を行って、大豆蛋白質の消化に問題となるトリプシ
ンインヒビターを失活させておくのが好ましい。
【0026】こうして得られた大豆蛋白質は、高蛋白質
で、かつ、ミネラル吸収促進効果を有する素材として、
粉乳などの乳製品や、豆乳、各種植物性蛋白質の代わり
に使用でき、例えば、植物蛋白乳飲料、乳酸飲料、イン
スタントスープ、豆乳等の各種飲料や、チョコレート、
ケーキ、キャラメル等の各種菓子類、パン、豆腐、ハ
ム、ソーセージ、ハンバーグ等の加工食品、ちくわ、か
まぼこ等の水産練製品などの各種食品類に添加して使用
することができる。
【0027】
【作用】本発明によれば、大豆蛋白質含有原料から大豆
蛋白質を抽出する際に、食塩濃度が7.5重量%以上で
あって、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩を前記
食塩量に対して0.5〜2重量%含む食塩溶液を用いる
ことにより、抽出液中のフィチン酸及びその塩を不溶化
して沈殿させることができ、この抽出液を通常の手段で
固液分離することで、フィチン酸及びその塩を容易に除
去することができる。
【0028】そして、上記工程に続いて、抽出液を電気
透析法により脱塩処理することにより、抽出液中に残存
するフィチン酸及びその塩などの成分を更に効率的に除
去することができ、例えばフィチン酸及びその塩の含量
を0.1 重量%以下にすることができる。
【0029】こうして得られた、フィチン酸及びその塩
の含有量の少ない大豆蛋白質は、後述する試験例に示さ
れるように、カゼインよりも優れたミネラル吸収促進効
果を有している。
【0030】また、本発明の方法によれば、大豆蛋白質
自体のアミノ酸組成や、大豆に本来含有されるイソフラ
ボン類等の各種有用成分の含量に影響を与えずに、フィ
チン酸及びその塩を除去することができる。
【0031】大豆に含有されるイソフラボン類、特にダ
イゼイン、ゲニステイン、ダイジイン、ゲニスチンに
は、女性ホルモンであるエストロゲンと同様の生理活性
効果があるとの報告があり(Cheng et al., Science 11
8 164 (1953); Brigger et al., Biochem. J. 58 278
(1954) )、例えば骨塩の溶出を抑制する効果などを有
するとされている。
【0032】このため、本発明の製造方法で得られた製
品には、ミネラル吸収促進効果だけでなく、大豆が本来
有する、エストロゲン効果等の各種生理活性効果をも期
待することができる。
【0033】
【実施例】実施例1 市販の脱脂大豆フレーク(商品名「不二宝豆」、不二製
油株式会社製、NSI(可溶性窒素化率)80以上)
8kgを、食塩溶液(イオン交換水72kgに精製塩8
kg、塩化カルシウム40g、硫酸マグネシウム30g
を溶解したもの)に懸濁させ、ゆっくりと攪拌しながら
2N−水酸化ナトリウム溶液を滴下して、30分間かけ
てpH8.0に調整した後、更に30分間撹拌して大豆
蛋白質を抽出した。抽出液を籠型連続遠心分離機(国産
遠心器株式会社製)にかけて、おから等の大きめの不溶
性残渣を除去し、次いで、バッチ型遠心分離機(商品名
「J6−HC」、BECKMAN社製)を用いて400
0rpm、30分間遠心分離し不溶物を完全に除去し
た。
【0034】こうして得られた大豆蛋白質抽出液を、市
販の電気透析装置(商品名「マイクロアシライザー G
4DX」、旭化成株式会社製)を用いて6〜7時間、す
なわち、食塩濃度が0.2〜0.3重量%程度になって
大豆蛋白質が凝集を生じる直前まで精製を行い、フィチ
ン酸及びその塩を除去した。なお、電気透析装置の膜カ
ートリッジとしては、分画分子量1000のイオン交換
膜である「AC−230−800」(カートリッジ名、
旭化成株式会社製)を使用し、イオン回収液としては、
0.3重量%食塩水を使用した。
【0035】上記精製後の抽出液に水を加えて3〜4倍
容量に希釈した後、泡立てないようにゆっくりと撹拌し
つつ、1N−塩酸を少しづつ滴下し、pH5.5 に調整し
て30分間静置し、大豆蛋白質を等電点沈殿させた後、デ
カンテーションして上澄みを除去し、次いで、上記バッ
チ型遠心分離機により4000rpm 、10分間遠心分離して、
得られた沈殿物に10倍量の水を加えてよく懸濁させ、ホ
モミキサーで強く撹拌しつつ2N−水酸化ナトリウム又
は水酸化カリウムを加えてpH7.0 に調整し、大豆蛋白
質含有溶液を得た。
【0036】実施例2 実施例1で得られた大豆蛋白質含有溶液2kgを、3kg容
のスタンディングパウチ(膜構成:12μPET/25μNY/9μ
Al/100μCPP )に充填し、高圧調理殺菌装置(商品名
「PCS-40」、株式会社日阪製作所製)を用いて101 ℃で
40分間加熱して、トリプシンインヒビターを失活させた
後、ゼリー状になった大豆蛋白質をトレー上に広げて凍
結乾燥し、粉末状の大豆蛋白質を得た。
【0037】実施例3 実施例1で得られた大豆蛋白質含有溶液に水を加えて2
倍量に希釈した後、スプレードライ法により粉末状の大
豆蛋白質を得た。
【0038】試験例1 実施例2で得られた大豆蛋白質(以下「本発明品」と記
載する)の化学組成及びフィチン酸含量を測定し、市販
の分離大豆蛋白質(商品名「ニューフジプローR」、不
二製油株式会社製、以下「市販品」と記載する)と比較
した。その結果を表1に示す。なお、化学組成は常法に
より測定し、フィチン酸含量はMOHAMEDらの方法
(A.MOHAMED et al.,Cereal
Chemistry 63,475,1986)により
測定した。
【0039】
【表1】
【0040】表1から明らかなように、本発明の方法に
より、大豆蛋白質中のフィチン酸及びその塩の含量を、
原料である市販品の約400 分の1にまで減少させること
ができた。
【0041】試験例2 試験例1で用いたのと同様の本発明品及び市販品につい
て、蛋白質中のアミノ酸組成を分析、比較した。その結
果を表2に示す。なお、アミノ酸組成の分析は、「改訂
・日本食品アミノ酸組成表」(科学技術庁資源調査会
編)に記載の方法により行った。
【0042】
【表2】
【0043】表2に示されるように、本発明の方法によ
り得られた大豆蛋白質は、原料である市販の大豆蛋白質
とほぼ同様のアミノ酸組成を有しており、本発明の製造
方法が、大豆蛋白質中のアミノ酸組成にほとんど影響を
及ぼさないことが明らかになった。
【0044】試験例3 試験例1で用いたのと同様の本発明品及び市販品につい
て、イソフラボン類の含量を測定し、比較した。その結
果を表3に示す。なお、イソフラボン含量の測定につい
ては、試料からの抽出条件が定量値に影響するので、大
久保ら(Agr.Bio.Chem.55(9),22
27(1991))の方法により抽出した値として測定
した。すなわち、本発明品及び市販品を10倍量の70
%エタノール水溶液に懸濁させ、80℃で15時間抽出
した後定容し、その濾液を常法に従いHPLC法で分析
した。なお、標品としては、OHTAらの方法(N.O
HTA et al.,Agric.Biol.Che
m.43(7),1415,1979)により調製した
グイジイン、ゲニスチン、ダイゼイン及びゲニステイン
を用いた。
【0045】
【表3】
【0046】表3に示されるように、本発明の方法によ
り得られた大豆蛋白質は、原料である市販の大豆蛋白質
に近い量のイソフラボン類を含有しており、本発明の製
造方法が、大豆蛋白質中のイソフラボン含量にほとんど
影響を及ぼさないことが明らかになった。
【0047】試験例4 試験例1で用いたのと同様の本発明品を用いて、表4に
示すような組成の飼料を調製した(試験区)。また、比
較のために、市販のカゼイン蛋白質(精製飼料用、日本
農産工業株式会社製)を用いて、表4に示すような組成
の飼料を調製した(対照区)。
【0048】
【表4】
【0049】なお、対照区の飼料において、蛋白質源と
してカゼイン蛋白質を使用した理由は、カゼイン蛋白質
が、ラットの飼育試験において通常使用される蛋白質源
であることと、普通の大豆蛋白質等よりもミネラルの吸
収促進性に優れているとされていることから、本発明品
のミネラル吸収促進効果を評価する上での比較材料とし
て最適であると思われたためである。
【0050】試験区及び対照区のそれぞれについて、4
週令のウィスターラット(雄)30匹を、各群の平均体重
が等しくなるように、1群6匹の計5群に分け、ステン
レス製代謝ゲージ内で個別飼育(6匹を一緒に飼育する
のではなく、1つのゲージに1匹づつ入れて飼育)し、
表4の各飼料を4週間投与した。飼育は室温22±2℃、
湿度60±10%で、12時間ごとの明暗サイクルの条件下で
行い、飼料及び飲料水は自由摂取とした。
【0051】各飼料の投与開始後2週目及び4週目に当
たる週について、各7日間の糞及び尿を毎日採取した。
糞は採取後直ちに冷凍し、各ラットの個体毎に1週間分
をまとめて、5%塩酸を噴霧後、50〜60℃で通風乾燥し
た。乾燥した糞は、乾燥重量を測定した後粉砕し、ミネ
ラル分析に供した。一方、尿は濃硫酸を1滴入れた採尿
用シリンダーに集め、1週間分をまとめて定容した後、
−20℃の冷凍庫内で冷凍保存し、ミネラル分析に供し
た。
【0052】糞及び尿中のミネラル分析は、上記各試料
をHNO3-HClO4(4:1, V/V)を用いて高圧湿式灰化した後、
希釈して原子吸光分析装置「AA-975型」(商品名、Vari
an社製)により、カルシウム、マグネシウム、亜鉛の含
量をそれぞれ測定した。
【0053】ラットの給餌量から計算した各ミネラルの
摂取量から、上記測定により得られた、各ミネラルの糞
への排出量を差し引いて、吸収率を求めた。その結果
を、表5に示す。なお、対照区における4週時の吸収率
は、2週時の値とほとんど変わらなかったので、表5へ
の記載を省略した。また、表5において、**は、試験
区の値と、対照区(2週時)の値との間に、危険率1%
で有意差が生じたことを示している。
【0054】
【表5】
【0055】表5に示されるように、対照区におけるカ
ルシウム吸収率が2週時において39%であったのに対
し、試験区では2週時で84.9%、4週時で77.3%という
高い吸収率を得た。なお、この差は統計的にも危険率1
%で有意であった。また、マグネシウムにおいても、カ
ルシウムと同様に有意差が認められ、亜鉛についても、
カルシウムやマグネシウムに比べてその差こそ少ないも
のの、有意差が認められた。
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
大豆蛋白質含有原料からフィチン酸及びその塩を効率的
に除去することができ、ミネラル吸収促進効果の高い大
豆蛋白質を容易にかつ低コストで製造することができ
る。また、大豆蛋白質中のアミノ酸組成やイソフラボン
含量などに影響を与えずにフィチン酸及びその塩を除去
できるので、大豆蛋白質が本来有する栄養価や各種生理
活性効果を損なうことなく、ミネラル吸収効果の高い大
豆蛋白質を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用される電気透析装置の一例を示す
概略説明図である。
【符号の説明】
1 陽電極 2 陽電極室 3 陰電極 4 陰電極室 5 陰イオン交換膜 6 陽イオン交換膜 7 脱塩室 8 イオン回収室 10 電極液流路 12 被処理液流路 14 回収液流路 11、13、15 ポンプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−86250(JP,A) 特開 平4−53471(JP,A) 特開 昭61−86250(JP,A) 特開 昭57−72915(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23J 1/14 - 3/34 C07K 1/24 A23L 1/304 - 1/305

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 大豆蛋白質含有原料に、食塩濃度が7.
    5重量%以上であって、カルシウム塩及び/又はマグネ
    シウム塩を前記食塩量に対して0.5〜2重量%含む
    塩溶液を加えて大豆蛋白質を抽出する工程と、この抽出
    液を電気透析処理してフィチン酸及びその塩を除去する
    工程とを含むことを特徴とするミネラル吸収促進効果を
    有する大豆蛋白質の製造法。
  2. 【請求項2】 前記大豆蛋白質含有原料が、脱脂大豆
    粉、濃縮大豆蛋白質、分離大豆蛋白質、豆乳から選ばれ
    た少なくとも1種である請求項1記載のミネラル吸収促
    進効果を有する大豆蛋白質の製造法。
  3. 【請求項3】 前記抽出をpH6〜9の条件下で行う請
    求項1又は2に記載のミネラル吸収促進効果を有する大
    豆蛋白質の製造法。
  4. 【請求項4】 前記抽出液を、分画分子量が5000以
    下のイオン交換膜又は分子篩膜を用いて電気透析処理す
    る請求項1〜3のいずれか1つに記載のミネラル吸収促
    進効果を有する大豆蛋白質の製造法。
  5. 【請求項5】 前記フィチン酸及びその塩の含量が0.
    1重量%以下になるように除去する請求項1〜4のいず
    れか1つに記載のミネラル吸収促進効果を有する大豆蛋
    白質の製造法。
JP04055894A 1994-02-15 1994-02-15 ミネラル吸収促進効果を有する大豆蛋白質の製造法 Expired - Fee Related JP3406367B2 (ja)

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