JP3067990B2 - 大豆蛋白質の製造方法 - Google Patents

大豆蛋白質の製造方法

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    • A23JPROTEIN COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS; WORKING-UP PROTEINS FOR FOODSTUFFS; PHOSPHATIDE COMPOSITIONS FOR FOODSTUFFS
    • A23J1/00Obtaining protein compositions for foodstuffs; Bulk opening of eggs and separation of yolks from whites
    • A23J1/14Obtaining protein compositions for foodstuffs; Bulk opening of eggs and separation of yolks from whites from leguminous or other vegetable seeds; from press-cake or oil-bearing seeds

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大豆蛋白質含有原
料から、比較的濃度の低いアルカリ金属塩の水溶液を用
いて大豆蛋白質を抽出し、この抽出液から、脱塩処理を
行うことなく、フィチン酸及びその塩を効率的に除去し
て、フィチン酸及びその塩の含量の低い大豆蛋白質を製
造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、日本人の栄養摂取状況は良好で、
栄養成分の欠乏症はほとんどないと言われている。しか
しながら、毎年行われている国民栄養調査によると、カ
ルシウムだけは、その所要摂取量が充足されないでい
る。こうしたカルシウム摂取量の不足を補うため、乳製
品、小魚、海藻等のカルシウム補給食品の摂取が奨励さ
れており、一方において、各種カルシウム剤や、カルシ
ウム強化食品などの開発が盛んに行われている。
【0003】しかしながら、カルシウムをはじめとする
ミネラルには、一般に難吸収性のものが多いために、単
に食品中のミネラルを強化しただけでは、充分なミネラ
ル補給効果が得られない。また、1種類のミネラルだけ
を強化した食品は、他のミネラルの吸収を拮抗阻害し、
却って微量のミネラルの欠乏状態を引き起こす虞れがあ
ることが指摘されている(Dairy Council Digest, Vol.
60(3) )。
【0004】このため、近年、摂取が不足しがちなミネ
ラル、特にカルシウムの吸収を促進させる各種吸収促進
剤の開発が行われている。例えば、ホスホセリンを含む
アミノ酸数20程度のペプチドであるカゼインホスホペプ
チド(CPP)は、消化管内におけるカルシウムの不溶
化を抑制してカルシウムの吸収を促進させることが知ら
れている。
【0005】しかしながら、CPPはカゼイン中に50分
の1程度の量しか含まれていないため、非常に高価であ
るという問題があった。また、CPPは、アミノ酸数20
程度のペプチドであるため、胃液や腸液に含まれる蛋白
質分解酵素により消化されると、カルシウムの可溶化に
必要な分子構造が破壊され、目的とする効果が得られな
いという虞れがあった。
【0006】一方、大豆蛋白質は、主として11s 、7 s
、2.8 s などのグロブリンからなる蛋白質であり、β
−カゼインとは異なり、リン酸基を持つホスホセリンは
殆ど含まれていない。また、大豆蛋白質には、フィチン
酸及びその塩が相当量含まれており、こうしたフィチン
酸及びその塩は、ミネラル、特にカルシウムの体内吸収
を阻害することが知られている(早川利郎、第1回新潟
県食品バイオテクノロジー懇談会別冊)。このような理
由から、これまで大豆蛋白質にはミネラル吸収促進効果
はないとされてきた(日本栄養食糧学会誌、45(4)333(1
992))。
【0007】また、大豆蛋白質含有原料から、例えば8.
5 %の食塩水を用いて大豆蛋白質を抽出し、この抽出液
を限外濾過膜を用いて処理することにより、フィチン酸
及びその塩を0.14%まで除去できたという報告がなされ
ている(Rham and Jost, J.Food Sci. 44(2)596(1979)
)。
【0008】上記知見に対し、本発明者らは、大豆蛋白
質に含まれるフィチン酸及びその塩について研究する過
程で、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩による沈
殿法と、電気透析法とを組み合わせることにより、大豆
蛋白質含有原料からフィチン酸及びその塩を効率よく除
去できること、及び、そうして得られたフィチン酸及び
その塩の含量の低い大豆蛋白質が優れたミネラル吸収促
進効果を有することを見いだし、特開平7-227215号、特
開平7-228540号としてすでに出願している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、大豆蛋
白質含有原料から、フィチン酸及びその塩の含有量の低
い大豆蛋白質を得ようとする場合、例えば、前述のRham
and Jost の報告において、食塩水濃度が8.5 %の場合
には、フィチン酸及びその塩が除去されるが、7%の場
合には、充分には除去されないと記載されているよう
に、塩濃度が低い場合には、フィチン酸及びその塩の除
去が困難であるとされていた。しかし、高濃度の塩溶液
で抽出した場合、脱塩処理に時間がかかり、生産性が悪
く、製造コストが高くなるという問題があった。
【0010】そこで、本発明者らは、大豆蛋白質含有原
料から、1.0 重量%以上で7.5 重量%未満の濃度の無機
塩溶液を用いて大豆蛋白質を抽出し、この抽出液を電気
透析又は限外濾過により脱塩処理した後、等電点沈殿に
よりフィチン酸及びその塩を除去して大豆蛋白質を製造
する方法を見いだし、すでに、特願平6-337321号として
出願した。
【0011】この方法によれば、抽出液の塩濃度が比較
的低くても、電気透析又は限外濾過と、等電点沈殿とを
組合せることにより、充分にフィチン酸及びその塩を除
去することができ、脱塩処理を短時間で行うことができ
るので、経済的にも有利にフィチン酸及びその塩の含量
の低い大豆蛋白質を製造することができる。
【0012】しかしながら、上記の方法は、抽出液の塩
濃度は低くても、やはり電気透析や限外濾過等の脱塩処
理を必要とするため、そのための設備投資や処理コスト
がかかるという問題があった。また、塩濃度が比較的低
くなったとはいえ、大豆蛋白質含有原料から大豆蛋白質
を抽出した残渣であるおからを、飼料等として利用しよ
うとした場合には、なお塩含量が高く、塩を除去しなけ
ればならないという問題があった。
【0013】本発明は上記問題点に鑑みてなされたもの
で、その目的は、電気透析や限外濾過などの脱塩処理を
必要とすることなく、フィチン酸及びその塩の含量の低
い大豆蛋白質を製造でき、それによって設備投資や処理
コストを低減させることができ、更に、大豆蛋白質含有
原料からの抽出残渣を、塩の除去操作を行うことなくそ
のまま飼料等に用いることができるようにした大豆蛋白
質の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の大豆蛋白質の製造方法の一つは、大豆蛋白
質含有原料に0.05〜3.0重量%のアルカリ金属塩
の水溶液を添加し、pH7.5〜9.0になるように調
整して大豆蛋白質を溶解させ、不溶性成分を除去して抽
出液を得る抽出工程と、上記抽出液を、塩濃度0.2〜
1.0重量%、pH5.0〜5.7になるように調整し
て酸沈殿させ、沈殿物を採取する酸沈殿処理工程と、上
記沈殿物に水又は1.0重量%以下のアルカリ金属塩
水溶液を添加し、pH5.0〜5.7になるように調整
し、撹拌して沈殿物を採取する工程を少なくとも1回以
上行う洗浄工程とを含むことを特徴とする。
【0015】また、本発明の大豆蛋白質の製造方法のも
う一つは、大豆蛋白質含有原料に0.05〜3.0重量
%のアルカリ金属塩の水溶液を添加し、pH7.5〜
9.0になるように調整して大豆蛋白質を溶解させ、不
溶性成分を除去して抽出液を得る抽出工程と、上記抽出
液を、塩濃度0.2〜1.0重量%、pH5.0〜5.
7になるように調整して酸沈殿させ、沈殿物を採取する
第1酸沈殿処理工程と、上記沈殿物に0.2〜1.0重
量%のアルカリ金属塩の水溶液を添加し、pH7.5〜
9.0になるように調整して大豆蛋白質を再溶解させた
後、pH5.0〜5.7になるように調整して再び酸沈
殿させ、沈殿物を採取する第2酸沈殿処理工程とを含む
ことを特徴とする。
【0016】本発明によれば、大豆蛋白質含有原料から
大豆蛋白質を抽出する際に、0.05〜3.0重量%の
アルカリ金属塩の水溶液を用い、pHが7.5〜9.0
になるように調整して大豆蛋白質を溶解させることによ
り、抽出液中のフィチン酸及びその塩の一部を不溶化し
て沈殿させることができ、この抽出液を通常の手段で固
液分離することで、フィチン酸及びその塩の一部を除去
することができる。
【0017】また、上記工程に続いて、上記抽出液を、
塩濃度0.2 〜1.0 重量%、pH5.0〜5.7 になるように
調整して酸沈殿(等電点沈殿)させ、沈殿物を採取する
ことにより、抽出液中に残存するフィチン酸及びその塩
を更に効率的に除去することができる。
【0018】更に、得られた沈殿物に、水又は1.0重
量%以下のアルカリ金属塩の水溶液を添加し、pH5.
0〜5.7になるように調整し、撹拌して沈殿物を採取
する工程を少なくとも1回以上行うか(第1の発明)、
又は、酸沈殿による沈殿物に0.2〜1.0重量%の
ルカリ金属塩の水溶液を添加し、pH7.5〜9.0に
なるように調整して大豆蛋白質を再溶解させた後、pH
5.0〜5.7になるように調整して再び酸沈殿させ、
沈殿物を採取することにより(第2の発明)、残存する
フィチン酸及びその塩を更に徹底的に除去することがで
き、フィチン酸及びその塩の含量の極めて少ない、ある
いは実質的に存在しない大豆蛋白質を製造することがで
きる。
【0019】このように、本発明によれば、電気透析や
限外濾過等の脱塩工程を行う必要がないので、脱塩のた
めの特殊な設備も必要がなく、製造が容易で、製造コス
トも安価となり、経済的にも有利である。
【0020】また、大豆蛋白質含有原料から、大豆蛋白
質を抽出する際に、0.05〜3.0重量%と低濃度の
アルカリ金属塩の水溶液を用いるので、おから等の抽出
残渣を、脱塩の必要なくそのまま飼料等に利用すること
ができる。
【0021】こうして得られたフィチン酸及びその塩の
含有量の少ない、あるいは実質的に存在しない大豆蛋白
質は、カゼインよりも優れたミネラル吸収促進効果を有
している。
【0022】また、本発明の方法によれば、大豆蛋白質
自体のアミノ酸組成や、大豆に本来含有されるイソフラ
ボン類等の各種有用成分の含量に影響を与えずに、フィ
チン酸及びその塩を除去することができる。
【0023】大豆に含有されるイソフラボン類、特にダ
イゼイン、ゲニステイン、ダイジイン、ゲニスチンに
は、女性ホルモンであるエストロゲンと同様の生理活性
効果があるとの報告があり(Cheng et al., Science 11
8 164 (1953); Brigger et al., Biochem. J. 58 278
(1954) )、例えば骨塩の溶出を抑制する効果などを有
するとされている。
【0024】このため、本発明の製造方法で得られた製
品には、ミネラル吸収促進効果だけでなく、大豆が本来
有する、エストロゲン効果等の各種生理活性効果をも期
待することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明において大豆蛋白質含有原
料としては、特に限定されず、脱脂大豆粉、濃縮大豆蛋
白質、分離大豆蛋白質、豆乳など、各種のものが使用で
きる。これらの原料は、各種市販のものを用いても、原
料大豆から調整してもよい。なお、これらの大豆蛋白質
含有原料は、変性の少ないもの、具体的には、変性率
(可溶性窒素化率)NSI80以上のものを用いると、蛋
白質の抽出率を高くすることができるので好ましい。
【0026】上記原料に加えるアルカリ金属塩の水溶液
は、濃度が0.05〜3.0重量%のものを用いる。
ルカリ金属塩の水溶液の濃度が0.05重量%未満の場
合は、原料から大豆蛋白質を抽出する効果が乏しく、
3.0重量%を超えると、後に行う酸沈殿処理の際の希
釈倍率が高くなり、また、抽出残渣を飼料等に利用する
際に脱塩処理をしなければならなくなるので好ましくな
い。
【0027】アルカリ金属塩としては、食塩、塩化カリ
ウム、硫酸ナトリウム等から選ばれるものを用いるのが
好ましい。
【0028】抽出に使うアルカリ金属塩の水溶液の量
は、特に限定されないが、収量、製造コスト等を考える
と、大豆蛋白質含有原料に対して5〜20容量倍が好ま
しい。抽出温度及び抽出時間についても、特に限定され
ないが、室温で、0.5〜1時間程度抽出するのが好ま
しい。
【0029】抽出時のpHは、7.5 〜9.0 とする。pH
が7.5 未満の場合は、大豆蛋白質が溶解しにくくなっ
て、抽出効率が悪くなり、pHが9.0 を超えるとアミノ
酸の一部が分解するという問題があるので好ましくな
い。
【0030】抽出後における抽出液の固液分離法は、デ
カンテーション、遠心分離、濾過等、特に制限されな
い。
【0031】次に、抽出液を、塩濃度0.2〜1.0重
量%、pH5.0〜5.7となるように調整して酸沈殿
させ、沈殿物を採取する。塩濃度が0.2重量%未満の
場合には、フィチン酸及びその塩を除去する効果が乏し
く、1.0重量%を超えると蛋白質収量が低くなる。な
お、塩濃度をこの範囲に調整するには、上記アルカリ金
属塩を添加するか、又は水を加えて希釈する。
【0032】また、pHが5.0 未満の場合は、フィチン
酸及びその塩を除去する効果が乏しく、pHが5.7 を超
えると蛋白質収量が低くなる。なお、pHの調整は、例
えば塩酸溶液等の酸溶液を滴下して行うことができる。
【0033】酸沈殿により得られた沈殿物は、洗浄工程
を行うか、又は再び酸沈殿処理(第2酸沈殿)を行っ
て、残存するフィチン酸及びその塩を徹底的に除去す
る。
【0034】洗浄工程は、沈殿物に水又は1.0重量%
以下のアルカリ金属塩の水溶液を添加し、pHが5.0
〜5.7になるように調整し、撹拌して沈殿物を採取す
ることにより行われる。なお、洗浄工程は、少なくとも
1回行い、必要に応じて2回以上行ってもよい。アルカ
リ金属塩の水溶液の濃度が1.0重量%を超えると、蛋
白質の一部が可溶化して蛋白質収量が悪くなる。また、
pHが5.0未満の場合は、フィチン酸及びその塩を除
去する効果が乏しく、pHが5.7を超えると、蛋白質
の一部が可溶化して蛋白質収量が低くなるので好ましく
ない。更に、撹拌を行う時間は特に限定されないが、
0.25〜1.0時間とするのが好ましい。
【0035】酸沈殿により得られた沈殿物を、再び酸沈
殿処理する場合には、1回目の酸沈殿により得られた沈
殿物に、0.2〜1.0重量%のアルカリ金属塩の水溶
液を添加し、pH7.5〜9.0になるように調整して
大豆蛋白質を再溶解させた後、1回目の酸沈殿処理と同
様な条件下で酸沈殿を行う。
【0036】こうして分離された大豆蛋白質は、適当な
濃度となるように水等に溶解してそのまま製品化するこ
ともできるが、水を加え、pHを7.5 〜8.5 に調整して
大豆蛋白質を溶解させた後、この水溶液をpH6.5 〜7.
0 に調整し、粉末化して製品化させるのが、製品の安定
性、風味等の点から好ましい。粉末化させる方法は、特
に限定されず、凍結乾燥、スプレードライ等の方法が採
用できる。なお、上記いずれの方法で製品化する場合に
おいても、102 〜120 ℃で5〜15分間程度加熱処理を行
って、大豆蛋白質の消化に問題となるトリプシンインヒ
ビターを失活させておくのが好ましい。
【0037】こうして得られた大豆蛋白質は、高蛋白質
で、かつ、ミネラル吸収促進効果を有する。なお、フィ
チン酸及びその塩を除去した大豆蛋白質のミネラル吸収
促進効果については、前述したように、本発明者らがす
でに出願した特開平7-227215号、特開平7-228540号に詳
述されている。
【0038】したがって、本発明の製造方法により得ら
れる大豆蛋白質は、そのまま経口摂取してもよく、ま
た、ミネラル吸収促進効果を有する素材として、粉乳な
どの乳製品や、豆乳、各種植物性蛋白質の代わりに使用
することもでき、例えば、植物蛋白乳飲料、乳酸飲料、
インスタントスープ、豆乳等の各種飲料や、チョコレー
ト、ケーキ、キャラメル等の各種菓子類、パン、豆腐、
ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の加工食品、ちくわ、
かまぼこ等の水産練製品などの各種食品類に添加して使
用することができる。食品への添加方法に制限はなく、
水溶液として添加する方法、粉末として添加する方法な
ど、いずれを用いてもよい。
【0039】
【実施例】以下に示す実施例において、大豆蛋白質含有
原料としては、市販の脱脂大豆フレークである「不二宝
豆」(商品名、不二製油株式会社製、変性率(可溶性窒
素化率)NSI80以上)を用いた。また、アルカリ金
属塩の水溶液としては、食塩又は塩化カリウムをイオン
交換水に所定の濃度となるように溶解させたものを用い
た。
【0040】また、蛋白質量はケルダール法(ケルテッ
ク社製、自動窒素分析装置)により測定し、フィチン酸
量は、MOHAMED 法により測定した。
【0041】実施例1 脱脂大豆フレーク「不二宝豆」10kgを、1重量%食塩水
90kgに懸濁させた後、1時間撹拌し、撹拌開始直後、撹
拌開始後30分、及び撹拌終了直前に、5規定の水酸化ナ
トリウム溶液を用いてpH8.0 に調整して大豆蛋白質を
抽出し、懸濁抽出液を得た。
【0042】次に、この懸濁抽出液を、籠型連続遠心分
離機(国産遠心分離機株式会社製)を用いて遠心分離し
て、おから等の比較的大きい不溶残渣を除去した後、バ
ッチ型遠心分離機である「J6-HC 」(商品名、BECKMAN
社製)を用いて、4000rpm で30分間遠心分離して、微細
な不溶残渣を除去して、不溶物を完全に除去した大豆蛋
白質抽出液を得た。この抽出液の蛋白質回収率は、原料
の脱脂大豆フレーク中の蛋白質に対して69.5重量%であ
り、フィチン酸及びその塩の含量は、抽出液中の蛋白質
に対して2.51重量%であった。
【0043】次いで、得られた大豆蛋白質抽出液100 容
量部に、水200 容量部を加えて3倍希釈して、希釈液の
食塩濃度を0.33重量%にし、泡を立てないようにゆっく
り撹拌しながら、5規定の塩酸溶液を少量ずつ滴下し
て、pH5.5 に調整し、1時間撹拌した。撹拌終了後、
この希釈液を、上記と同様のバッチ型遠心分離機「J6-H
C 」を用いて、4000rpm で10分間遠心分離し、酸沈殿物
として大豆蛋白質カードを得た。この大豆蛋白質カード
の蛋白質回収率は、原料の脱脂大豆フレーク中の蛋白質
に対して46.3重量%であり、フィチン酸及びその塩の含
量は、大豆蛋白質カード中の蛋白質に対して0.41重量%
であった。
【0044】続いて、得られた大豆蛋白質カードに、食
塩と水300 容量部とを加えて、上記希釈液と同量で、同
様な食塩濃度0.33重量%の懸濁液とした後、5規定の塩
酸溶液を用いてpH5.5 に調整し、ホモミキサーで1時
間撹拌洗浄を行った。撹拌洗浄終了後、バッチ型遠心分
離機「J6-HC 」を用いて、4000rpm で10分間遠心分離
し、沈殿物として精製大豆蛋白質カードを得た。この精
製大豆蛋白質カードの蛋白質回収率は、原料の脱脂大豆
フレーク中の蛋白質に対して46.1重量%であり、フィチ
ン酸及びその塩の含量は、精製大豆蛋白質カード中の蛋
白質に対して0.04重量%であった。
【0045】その後、得られた精製大豆蛋白質カード10
重量部に、10倍量の水100 重量部を加え、ホモミキサー
で撹拌して、均一な懸濁液とし、2規定の水酸化ナトリ
ウム溶液を滴下してpH8.0 に調整して、精製大豆蛋白
質カードを完全に溶解させた後、5規定の塩酸溶液を用
いてpHを6.8 に再調整し、凍結乾燥して大豆蛋白質粉
末を得た。
【0046】実施例2 実施例1において、脱脂大豆フレークから大豆蛋白質を
抽出する際に用いた1重量%食塩水を2重量%塩化カリ
ウム水溶液に代え、酸沈殿のときの塩化カリウム水溶液
の濃度(3倍希釈したときの濃度)を0.66重量%とし、
更に洗浄の際の0.33重量%食塩水を0.66重量%塩化カリ
ウムに代え、あとは実施例1と同様に操作して大豆蛋白
質粉末を得た。
【0047】その結果、脱脂大豆フレークから2重量%
塩化カリウム水溶液で大豆蛋白質を抽出した抽出液の蛋
白質回収率は、原料の脱脂大豆フレーク中の蛋白質に対
して66.4重量%であり、フィチン酸及びその塩の含量
は、抽出液中の蛋白質に対して2.55重量%であった。
【0048】また、酸沈殿で得られた大豆蛋白質カード
の蛋白質回収率は、原料の脱脂大豆フレーク中の蛋白質
に対して43.5重量%であり、フィチン酸及びその塩の含
量は、大豆蛋白質カード中の蛋白質に対して0.19重量%
であった。
【0049】更に、洗浄処理して得られた精製大豆蛋白
質カードの蛋白質回収率は、原料の脱脂大豆フレーク中
の蛋白質に対して42.2重量%であり、フィチン酸及びそ
の塩の含量は、精製大豆蛋白質カード中の蛋白質に対し
て0.00重量%であった。
【0050】実施例3 実施例1において、脱脂大豆フレークから大豆蛋白質を
抽出する際に用いた1重量%食塩水を3重量%食塩水に
代え、酸沈殿のときの食塩濃度(3倍希釈したときの濃
度)を1重量%とし、食塩水洗浄の際の懸濁液の食塩濃
度も1重量%にして、あとは実施例1と同様に操作して
大豆蛋白質粉末を得た。
【0051】その結果、脱脂大豆フレークから3重量%
食塩水で大豆蛋白質を抽出した抽出液の蛋白質回収率
は、原料の脱脂大豆フレーク中の蛋白質に対して65.5重
量%であり、フィチン酸及びその塩の含量は、抽出液中
の蛋白質に対して2.21重量%であった。
【0052】また、酸沈殿で得られた大豆蛋白質カード
の蛋白質回収率は、原料の脱脂大豆フレーク中の蛋白質
に対して37.6重量%であり、フィチン酸及びその塩の含
量は、大豆蛋白質カード中の蛋白質に対して0.10重量%
であった。
【0053】更に、洗浄処理して得られた精製大豆蛋白
質カードの蛋白質回収率は、原料の脱脂大豆フレーク中
の蛋白質に対して36.5重量%であり、フィチン酸及びそ
の塩の含量は、精製大豆蛋白質カード中の蛋白質に対し
て0.00重量%であった。
【0054】以上の実施例1、2、3は、抽出液を3倍
希釈して酸沈殿させ、酸沈殿及び洗浄処理の際のpHを
5.5 にした点で共通するが、抽出に用いた水溶液が、そ
れぞれ1重量%食塩水、2重量%塩化カリウム水溶液、
3重量%食塩水であり、洗浄の際に実施例1、3は食塩
水、実施例2は塩化カリウム水溶液を用いた点が異なっ
ている。
【0055】実施例1、2、3における抽出液、酸沈殿
により得られた大豆蛋白質カード、洗浄により得られた
精製大豆蛋白質カードの、原料の脱脂大豆フレーク中の
蛋白質に対する蛋白質回収率と、それぞれの蛋白質中の
フィチン酸及びその塩の含量とをまとめて表1に示す。
【0056】なお、以下の実施例、比較例においても、
抽出液、大豆蛋白質カード、精製大豆蛋白質カードの蛋
白質回収率は、原料の脱脂大豆フレーク中の蛋白質に対
する回収率を意味する。また、フィチン酸及びその塩の
含量は、抽出液、大豆蛋白質カード、精製大豆蛋白質カ
ードのそれぞれに含まれる蛋白質量に対する割合を意味
する。
【0057】また、表1において、Aは蛋白質回収率、
Bはフィチン酸及びその塩の含量を表し、大豆蛋白質カ
ードは酸沈殿物、精製大豆蛋白質カードは洗浄処理物と
表示した。これらは、以下に示す表2〜5においても同
様である。
【0058】
【表1】
【0059】表1の結果から、抽出液の塩濃度が高くな
るほど、蛋白質回収率Aは低下するが、フィチン酸含量
及びその塩の含量Bも低下し、効率よく脱フィチンされ
ることがわかる。
【0060】実施例4 実施例1において、酸沈殿及び食塩水での洗浄の際のp
Hを5.3 に代え、あとは実施例1と同様にして大豆蛋白
質粉末を得た。脱脂大豆フレークから大豆蛋白質を抽出
する際に用いた水溶液は、1重量%食塩水である。
【0061】その結果、脱脂大豆フレークからの大豆蛋
白質抽出液の蛋白質回収率は68.2重量%であり、フィチ
ン酸及びその塩の含量は2.55重量%であった。
【0062】また、酸沈殿物である大豆蛋白質カードの
蛋白質収率は49.9重量%であり、フィチン酸及びその塩
の含量は0.60重量%であった。
【0063】更に、洗浄処理物である精製大豆蛋白質カ
ードの蛋白質収率は46.9重量%であり、フィチン酸及び
その塩の含量は0.33重量%であった。
【0064】実施例5 実施例4において、脱脂大豆フレークから大豆蛋白質を
抽出する際に用いる水溶液を2重量%食塩水に代えたほ
かは、実施例4と同様にして大豆蛋白質粉末を得た。
【0065】その結果、脱脂大豆フレークからの大豆蛋
白質抽出液の蛋白質回収率は69.8重量%であり、フィチ
ン酸及びその塩の含量は2.46重量%であった。
【0066】また、酸沈殿物である大豆蛋白質カードの
蛋白質回収率は47.7重量%であり、フィチン酸及びその
塩の含量は0.36重量%であった。
【0067】更に、洗浄処理物である精製大豆蛋白質カ
ードの蛋白質回収率は45.9重量%であり、フィチン酸及
びその塩の含量は0.005 重量%であった。
【0068】実施例6 実施例4において、脱脂大豆フレークから大豆蛋白質を
抽出する際に用いる水溶液を3重量%食塩水に代え、酸
沈殿及び食塩水での洗浄の際のpHを5.0 に代えたほか
は、実施例4と同様にして大豆蛋白質粉末を得た。
【0069】その結果、脱脂大豆フレークからの大豆蛋
白質抽出液の蛋白質回収率は65.4重量%であり、フィチ
ン酸及びその塩の含量は2.19重量%であった。
【0070】また、酸沈殿物である大豆蛋白質カードの
蛋白質回収率は43.3重量%であり、フィチン酸及びその
塩の含量は0.42重量%であった。
【0071】更に、洗浄処理物である精製大豆蛋白質カ
ードの蛋白質回収率は43.1重量%であり、フィチン酸及
びその塩の含量は0.04重量%であった。
【0072】以上の実施例4、5、6は、抽出に用いた
食塩水の食塩濃度を1重量%、2重量%、3重量%と
し、酸沈殿及び食塩水での洗浄の際のpHを、実施例
4、5は5.3 、実施例6は5.0 とした点が異なってい
る。なお、酸沈殿のときの3倍希釈液の食塩濃度、及び
洗浄処理液の食塩濃度は、実施例4が0.33重量%、実施
例5が0.66重量%、実施例6が1重量%である。
【0073】実施例4、5、6における抽出液、酸沈殿
物(大豆蛋白質カード)、洗浄処理物(精製大豆蛋白質
カード)の蛋白質回収率と、フィチン酸及びその塩の含
量とを表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】表2の結果と表1の結果とを比較すると、
酸沈殿及び洗浄処理時のpHを下げると、蛋白質回収率
はやや増加する傾向があるが、フィチン酸及びその塩の
含量もやや増加する傾向があることがわかる。
【0076】比較例1 実施例1において、脱脂大豆フレークから大豆蛋白質を
抽出する際に用いた1重量%食塩水を水(食塩濃度0重
量%)に代え、酸沈殿の前に希釈を行わず、食塩水洗浄
1回を水洗浄2回に代え、あとは実施例1と同様にして
大豆蛋白質粉末を得た。なお、脱脂大豆フレークから大
豆蛋白質を水で抽出した後、そのまま酸沈殿を行ったの
で、酸沈殿時の食塩濃度は0重量%である。
【0077】その結果、脱脂大豆フレークからの大豆蛋
白質抽出液の蛋白質回収率は71.2重量%であり、フィチ
ン酸及びその塩の含量は3.13重量%であった。
【0078】また、酸沈殿物である大豆蛋白質カードの
蛋白質回収率は40.2重量%であり、フィチン酸及びその
塩の含量は0.92重量%であった。
【0079】更に、1回洗浄後の精製大豆蛋白質カード
の蛋白質回収率は37.7重量%であり、フィチン酸及びそ
の塩の含量は0.55重量%であった。
【0080】更にまた、2回洗浄後の精製大豆蛋白質カ
ードの蛋白質回収率は38.1重量%であり、フィチン酸及
びその塩の含量は0.44重量%であった。
【0081】実施例7 実施例1において、酸沈殿の前に希釈を行わず、食塩水
洗浄1回を水洗浄2回に代え、あとは実施例1と同様に
して大豆蛋白質粉末を得た。蛋白質抽出及び酸沈殿の際
の食塩水の濃度は、いずれも1重量%である。
【0082】その結果、脱脂大豆フレークからの大豆蛋
白質抽出液の蛋白質回収率は69.5重量%であり、フィチ
ン酸及びその塩の含量は2.97重量%であった。
【0083】また、酸沈殿物である大豆蛋白質カードの
蛋白質回収率は25.5重量%であり、フィチン酸及びその
塩の含量は0.61重量%であった。
【0084】更に、1回洗浄後の精製大豆蛋白質カード
の蛋白質回収率は23.5重量%であり、フィチン酸及びそ
の塩の含量は0.10重量%であった。
【0085】更にまた、2回洗浄後の精製大豆蛋白質カ
ードの蛋白質回収率は25.5重量%であり、フィチン酸及
びその塩の含量は0.09重量%であった。
【0086】比較例2 実施例1において、脱脂大豆フレークから大豆蛋白質を
抽出する際に用いた1重量%食塩水を2重量%食塩水に
代えて大豆蛋白質の抽出を行い、この抽出液を希釈せず
に食塩濃度2重量%のまま酸沈殿を行ったところ、大豆
蛋白質を沈殿させることができなかった。
【0087】なお、脱脂大豆フレークから2重量%食塩
水で大豆蛋白質を抽出した抽出液の蛋白質回収率は66.0
重量%であった。
【0088】以上の比較例1、実施例7、比較例2は、
抽出液を希釈せずに酸沈殿し、水による洗浄を2回行
い、酸沈殿及び洗浄の際のpHを5.5 とした点が共通す
るが、比較例1では抽出液の食塩濃度を0重量%
(水)、実施例7では1重量%、比較例2では2重量%
とした点が異なっている。なお、抽出液をそのまま酸沈
殿させたので、酸沈殿時の食塩濃度は、それぞれ0重量
%、1重量%、2重量%となる。
【0089】実施例7、比較例1、2における抽出液、
酸沈殿物(大豆蛋白質カード)、1回洗浄処理物(精製
大豆蛋白質カード)、2回洗浄処理物(精製大豆蛋白質
カード)の蛋白質回収率と、フィチン酸及びその塩の含
量とを表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】比較例3、実施例8、9 比較例1、実施例7、比較例2において、酸沈殿処理の
際に抽出液を水で3倍希釈し、あとは比較例1、実施例
7、比較例2と同様にして大豆蛋白質粉末を得た。比較
例1と同様に水を用いて抽出したものを比較例3、実施
例7と同様に1重量%食塩水を用いて抽出したものを実
施例8、比較例2と同様に2重量%食塩水を用いて抽出
したものを実施例9とする。
【0092】なお、比較例2においては、酸沈殿の際に
沈殿しなかったので、そのあとの工程は行わなかった
が、実施例9においては、比較例2と異なり、食塩濃度
が3倍に希釈されたため酸沈殿物が形成されたので、比
較例1、実施例7と同様に、水洗浄処理を2回行った。
【0093】以上の比較例3、実施例8、9は、抽出液
を水で3倍希釈して酸沈殿し、水を用いて洗浄処理を2
回行い、酸沈殿及び洗浄の際のpHを5.5 とした点が共
通し、大豆蛋白質抽出の際の食塩濃度を0重量%
(水)、1重量%、2重量%とした点が異なっている。
なお、酸沈殿時の希釈液の食塩濃度は、比較例3が0重
量%、実施例8が0.33重量%、実施例9が0.66重量%と
なる。
【0094】比較例3、実施例8、9における抽出液、
酸沈殿物(大豆蛋白質カード)、1回洗浄処理物(精製
大豆蛋白質カード)、2回洗浄処理物(精製大豆蛋白質
カード)の蛋白質回収率と、フィチン酸及びその塩の含
量とを、上記と同様に測定した結果を表4に示す。
【0095】
【表4】
【0096】上記表3、4の結果から、酸沈殿時に抽出
液を水で希釈して塩濃度を低くした方が、大豆蛋白質の
回収率が向上し、フィチン酸含量も低くなることがわか
る。また、酸沈殿時における塩濃度が2重量%では沈殿
物が形成されないため、酸沈殿時における塩濃度は1重
量%以下にすることが必要であることがわかる。
【0097】比較例4、実施例10、実施例11 比較例1、実施例7、比較例2において、酸沈殿処理の
際に抽出液を水で5倍希釈し、あとは比較例1、実施例
7、比較例2と同様にして大豆蛋白質粉末を得た。比較
例1と同様に水を用いて抽出したものを比較例4、実施
例7と同様に1重量%食塩水を用いて抽出したものを実
施例10、比較例2と同様に2重量%食塩水を用いて抽出
したものを実施例11とする。
【0098】なお、比較例2においては、酸沈殿の際に
沈殿しなかったので、そのあとの工程は行わなかった
が、実施例11においては、酸沈殿物が形成されたので、
比較例1、実施例7と同様に、水洗浄処理を2回行っ
た。
【0099】以上の比較例4、実施例10、11は、抽出液
を水で5倍希釈して酸沈殿し、水を用いて洗浄処理を2
回行い、酸沈殿及び洗浄の際のpHを5.5 とした点が共
通し、大豆蛋白質抽出の際の食塩濃度を0重量%
(水)、1重量%、2重量%とした点が異なっている。
なお、酸沈殿時の希釈液の食塩濃度は、比較例4 が0重
量%、実施例10が0.20重量%、実施例11が0.40重量%と
なる。
【0100】比較例4、実施例10、11における抽出液、
酸沈殿物(大豆蛋白質カード)、1回洗浄処理物(精製
大豆蛋白質カード)、2回洗浄処理物(精製大豆蛋白質
カード)の蛋白質回収率と、フィチン酸及びその塩の含
量とを、上記と同様に測定した結果を表5に示す。
【0101】
【表5】
【0102】上記表5と前記表4とを比較すると、酸沈
殿時における塩濃度を低くすることにより、蛋白質回収
率は向上するが、フィチン酸及びその塩の含量は高くな
る傾向があることがわかる。
【0103】比較例5 実施例1において、脱脂大豆フレークから大豆蛋白質を
抽出する際に用いた1重量%食塩水を水(食塩濃度0重
量%)に代えて、あとは実施例1と同様にして大豆蛋白
質抽出及び1回目の酸沈殿を行った。
【0104】次いで、得られた大豆蛋白質カードに、水
300 容量部を添加し、ホモミキサーを用いて均一に分散
させ、2規定の水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを
8.0に調整して、大豆蛋白質を完全に溶解(再溶解)さ
せた後、泡立てないようにゆっくり撹拌しながら、5規
定の塩酸溶液を少しずつ滴下してpHを5.5 に調整し、
1時間撹拌を続けた。その後、バッチ型遠心分離機を用
いて、4000rpm で、10分間遠心分離し、2回目の酸沈殿
物である精製大豆蛋白質カードを得た。
【0105】得られた精製大豆蛋白質カードを、実施例
1と同様にして粉末化させ、大豆蛋白質粉末を得た。
【0106】脱脂大豆フレークから水で大豆蛋白質を抽
出した抽出液の蛋白質回収率は72.6重量%であり、フィ
チン酸及びその塩の含量は2.76重量%であった。
【0107】また、1回目の酸沈殿で得られた大豆蛋白
質カードの蛋白質回収率は45.0重量%であり、フィチン
酸及びその塩の含量は0.69重量%であった。
【0108】更に、上記大豆蛋白質カードを再溶解さ
せ、2回目の酸沈殿を行って得られた精製大豆蛋白質カ
ードの蛋白質回収率は42.7重量%であり、フィチン酸及
びその塩の含量は0.40重量%であった。
【0109】実施例12 実施例1と同様にして、脱脂大豆フレークから1重量%
食塩水を用いて大豆蛋白質を抽出し、この抽出液を3倍
に希釈し、1回目の酸沈殿を行って大豆蛋白質カードを
得るまでの工程を行った。なお、抽出液を3倍希釈して
行ったので、酸沈殿時の食塩濃度は0.33重量%である。
【0110】得られた大豆蛋白質カードに、上記希釈液
と同量で、同じ食塩濃度、すなわち0.33重量%となるよ
うに食塩と水とを加え、あとは比較例5と同様にして、
2回目の酸沈殿を行い、精製大豆蛋白質カードを得た。
この精製大豆蛋白質カードを、実施例1と同様に処理し
て大豆蛋白質粉末を得た。
【0111】脱脂大豆フレークから水で大豆蛋白質を抽
出した抽出液の蛋白質回収率は69.7重量%であり、フィ
チン酸及びその塩の含量は2.66重量%であった。
【0112】また、1回目の酸沈殿で得られた大豆蛋白
質カードの蛋白質回収率は37.3重量%であり、フィチン
酸及びその塩の含量は0.43重量%であった。
【0113】更に、2回目の酸沈殿により得られた精製
大豆蛋白質カードの蛋白質回収率は36.3重量%であり、
フィチン酸及びその塩の含量は0.05重量%であった。
【0114】実施例13 実施例12において、脱脂大豆フレークから大豆蛋白質を
抽出する際に用いた1重量%食塩水を2重量%食塩水に
代え、あとは実施例12と同様にして大豆蛋白質粉末を得
た。なお、抽出液を3倍希釈して1回目の酸沈殿を行
い、2回目の酸沈殿は上記希釈液と同量で、同濃度とな
るように食塩と水とを添加して行ったので、酸沈殿時の
食塩濃度はいずれも0.66重量%である。
【0115】脱脂大豆フレークから水で大豆蛋白質を抽
出した抽出液の蛋白質回収率は69.2重量%であり、フィ
チン酸及びその塩の含量は2.54重量%であった。
【0116】また、1回目の酸沈殿で得られた大豆蛋白
質カードの蛋白質回収率は37.3重量%であり、フィチン
酸及びその塩の含量は0.25重量%であった。
【0117】更に、上記大豆蛋白質カードを再溶解さ
せ、2回目の酸沈殿を行って得られた精製大豆蛋白質カ
ードの蛋白質回収率は32.9重量%であり、フィチン酸及
びその塩の含量は0.00重量%であった。
【0118】以上の比較例5、実施例12、13は、抽出液
を3倍希釈して1回目の酸沈殿を行い、得られた大豆蛋
白質カードに上記希釈液と同量で、同濃度となるように
食塩と水とを添加して2回目の酸沈殿を行い、1、2回
目の酸沈殿時のpHをいずれも5.5 にした点で共通する
が、抽出の際に用いる食塩水の濃度をそれぞれ0重量
%、1重量%、2重量%とした点が異なっている。
【0119】比較例5、実施例12、13で得られた抽出
液、1回目酸沈殿物(大豆蛋白質カード)、2回目酸沈
殿物(精製大豆蛋白質カード)の蛋白質回収率と、フィ
チン酸及びその塩の含量を表6に示す。
【0120】
【表6】
【0121】表6の結果から、抽出液の塩濃度が低いほ
ど、蛋白質の回収率は高くなるが、フィチン酸及びその
塩の含量は多くなることがわかる。
【0122】比較例6、実施例14、実施例15 比較例5、実施例12、13において、1回目及び2回目の
酸沈殿の際のpHを5.0 に代え、あとは比較例5、実施
例12、13と同様にして大豆蛋白質粉末を得た。脱脂大豆
フレークから大豆蛋白質を抽出する際に、比較例5と同
様に水(食塩濃度0重量%)を用いたものを比較例6、
実施例12と同様に1重量%食塩水を用いたものを実施例
14、実施例13と同様に2重量%食塩水を用いたものを実
施例15とする。
【0123】以上の比較例6、実施例14、16は、抽出液
を3倍希釈して1回目の酸沈殿を行い、得られた大豆蛋
白質カードに上記希釈液と同量で、同濃度となるように
食塩と水とを添加して2回目の酸沈殿を行い、1、2回
目の酸沈殿時のpHをいずれも5.0 にした点で共通する
が、抽出の際に用いる食塩水の濃度をそれぞれ0重量
%、1重量%、2重量%とした点が異なっている。
【0124】比較例6、実施例14、15で得られた抽出
液、1回目酸沈殿物(大豆蛋白質カード)、2回目酸沈
殿物(精製大豆蛋白質カード)の蛋白質回収率と、フィ
チン酸及びその塩の含量を表7に示す。
【0125】
【表7】
【0126】上記表7と前記表6と比較すると、酸沈殿
時におけるpHを低くするほど大豆蛋白質の回収率は向
上するが、フィチン酸及びその塩の含量は高くなること
がわかる。
【0127】また、以上の表1〜7の結果から、本発明
の大豆蛋白質の製造方法に基づいた実施例1〜15におい
ては、比較例1〜6と比較して、大豆蛋白質の回収率を
十分に維持しながら、フィチン酸及びその塩を効率的に
除去できることがわかる。
【0128】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
大豆蛋白質含有原料から、0.05〜3.0重量%の低
濃度のアルカリ金属塩の水溶液を用いて大豆蛋白質を抽
出しても、フィチン酸及びその塩を効率的に除去するこ
とができる。また、電気透析や限外濾過等の脱塩処理を
行う必要がないので、工業的に大量生産することがで
き、設備コストも低減されるので、経済的にも有利であ
る。更に、大豆蛋白質含有原料から低濃度のアルカリ金
属塩の水溶液を用いて大豆蛋白質を抽出することができ
るので、おから等の抽出残渣を、脱塩処理を行うことな
くそのまま飼料等に利用することもできる。なお、フィ
チン酸及びその塩を除去した大豆蛋白質は、ミネラル吸
収促進効果が高いので、ミネラル吸収促進剤又はミネラ
ル吸収促進効果を有する食品素材としての用途が期待さ
れる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23J 3/16 A23J 3/30 - 3/32

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 大豆蛋白質含有原料に0.05〜3.0
    重量%のアルカリ金属塩の水溶液を添加し、pH7.5
    〜9.0になるように調整して大豆蛋白質を溶解させ、
    不溶性成分を除去して抽出液を得る抽出工程と、 上記抽出液を、塩濃度0.2〜1.0重量%、pH5.
    0〜5.7になるように調整して酸沈殿させ、沈殿物を
    採取する酸沈殿処理工程と、 上記沈殿物に水又は1.0重量%以下のアルカリ金属塩
    の水溶液を添加し、pH5.0〜5.7になるように調
    整し、撹拌して沈殿物を採取する工程を少なくとも1回
    以上行う洗浄工程とを含むことを特徴とする大豆蛋白質
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記洗浄工程の後、前記洗浄工程で得ら
    れた前記沈殿物に水を加え、pH7.5〜8.5になる
    ように調整して大豆蛋白質を溶解させた後、この水溶液
    をpH6.5〜7.0に調整して、粉末化する請求項1
    記載の大豆蛋白質の製造方法。
  3. 【請求項3】 大豆蛋白質含有原料に0.05〜3.0
    重量%のアルカリ金属塩の水溶液を添加し、pH7.5
    〜9.0になるように調整して大豆蛋白質を溶解させ、
    不溶性成分を除去して抽出液を得る抽出工程と、 上記抽出液を、塩濃度0.2〜1.0重量%、pH5.
    0〜5.7になるように調整して酸沈殿させ、沈殿物を
    採取する第1酸沈殿処理工程と、 上記沈殿物に0.2〜1.0重量%のアルカリ金属塩
    水溶液を添加し、pH7.5〜9.0になるように調整
    して大豆蛋白質を再溶解させた後、pH5.0〜5.7
    になるように調整して再び酸沈殿させ、沈殿物を採取す
    る第2酸沈殿処理工程とを含むことを特徴とする大豆蛋
    白質の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第2酸沈殿処理工程の後、前記第2
    酸沈殿処理工程で得られた前記沈殿物に水を加え、pH
    7.5〜8.5になるように調整して大豆蛋白質を溶解
    させた後、この水溶液をpH6.5〜7.0に調整し
    て、粉末化する請求項3記載の大豆蛋白質の製造方法。
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