JP3405743B2 - 騒音キャンセル方式 - Google Patents

騒音キャンセル方式

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JP3405743B2
JP3405743B2 JP19522092A JP19522092A JP3405743B2 JP 3405743 B2 JP3405743 B2 JP 3405743B2 JP 19522092 A JP19522092 A JP 19522092A JP 19522092 A JP19522092 A JP 19522092A JP 3405743 B2 JP3405743 B2 JP 3405743B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は騒音キャンセル方式に係
わり、特に自動車内の複数の位置(観測点)における騒
音をキャンセルして快適なオ−ディオ音声の受聴ができ
る騒音キャンセル方式に関する。
【0002】
【従来の技術】騒音対策としては、従来より吸音材を用
いる方法(パッシブ制御)が知られている。しかし、吸
音材を用いる方法では、騒音が小さい静音エリアを形成
するのが面倒であると共に、低音を効果的に消せない問
題がある。特に、自動車の車室内の騒音を防止するに
は、自動車の重量が増大すると共に、騒音を効果的に消
せない問題がある。このため、騒音と逆位相の騒音キャ
ンセル音をスピ−カから放射して騒音を低減する方法
(アクティブ制御)が脚光を浴び、工場やオフィスなど
の室内空間の一部に実用化されつつある。又、自動車の
車室内においてもアクティブ制御により騒音を低減する
方式が提案されている。
【0003】図13は従来の騒音キャンセルを実現する
装置の構成図であり、11は騒音源であるエンジン、1
2はエンジン回転数Rを検出する回転数センサ、13は
エンジン回転数Rに応じた周波数を有する一定振幅の正
弦波信号を参照信号SNとして発生する参照信号発生部
である。14は騒音キャンセルコントローラであり、参
照信号発生部13から発生する参照信号SNを入力され
ると共に、車室内の騒音キャンセル位置(観測点であり
例えば運転者の耳元近傍)における騒音Snとキャンセ
ル音Scの合成音信号をエラ−信号Erとして入力され、
該エラ−信号が最小となるように適応信号処理を行って
騒音キャンセル信号Ncを出力する。騒音キャンセルコ
ントローラ14は、適応信号処理部14aと、デジタル
フィルタ構成の適応フィルタ14bと、適応フィルタ出
力をアナログの騒音キャンセル信号Ncに変換するD/
Aコンバータ14cと、スピーカから騒音キャンセル点
までのキャンセル音伝搬系(二次音伝搬系)の伝達関数
に基づいて作成したフィルタ14dと、アナログのエラ
ー信号をデジタル信号に変えるA/Dコンバータ14e
とを有している。15は騒音キャンセル信号Ncを増幅
するパワ−アンプ、16は騒音キャンセル音Scを放射
するキャンセルスピ−カ、17は騒音キャンセル点に配
置され、騒音Snとキャンセル音Scの合成音を検出し、
合成音信号をエラ−信号Erとして出力するエラ−マイ
クである。
【0004】適応信号処理部14aは騒音キャンセル点
におけるエラー信号Erとフィルタ14dを介して入力
される騒音に応じた参照信号SN′を入力され、これら
信号を用いて騒音キャンセル点における騒音をキャンセ
ルするように適応信号処理を行って適応フィルタ14b
の係数を決定する。例えば適応信号処理部14aは周知
のLMS(Least Mean Square)適応アルゴリズムに従っ
て、エラ−マイク17から入力されたエラ−信号Erが
最小となるように適応フィルタ14bの係数を決定す
る。適応フィルタ14bは適応信号処理部14aにより
決定された係数に従って参照信号SNにデジタルフィル
タ処理を施してDAコンバータ14cより騒音キャンセ
ル信号NCを出力する。尚、参照信号SNは、消去したい
騒音Snと相関の高い信号でなくてはならず、参照信号
と相関のない音は消去されない。エンジン11が回転す
ると、その回転数Rは回転数センサ12により検出さ
れ、参照信号発生部13はエンジン回転数Rに応じた周
波数の参照信号SN(図14(a)参照)を発生し、騒音キ
ャンセルコントローラ14に入力する。この時、エンジ
ン11から発生した周期性を有するエンジン音(周期性
ノイズ)は、所定の伝達関数を有する騒音伝搬系(一次
音伝搬系)を有する空中を伝播して騒音キャンセル点に
至る。従って、該騒音キャンセル点における騒音(エン
ジン音)Snはレベルが若干弱まり、かつ遅延して図1
4(b)に示すようになる。
【0005】最初、騒音キャンセルコントローラ14は
例えば参照信号SNと位相が逆の騒音キャンセル信号Nc
を出力し、キャンセルスピ−カ16より図14(c)に示
すキャンセル音Scを出力する。しかし、騒音Snのレベ
ルと位相がずれているため、キャンセル音Scにより騒
音はキャンセルされず、エラ−信号Erが発生する。騒
音キャンセルコントローラ14は該エラ−信号Erが最
小となるように適応信号処理を行って適応フィルタ14
bの係数を決定し、理想的な場合、最終的に図14(d)
に示すようにキャンセル音Scの位相を騒音Snの位相と
逆相にし、かつレベルを一致させ騒音をキャンセルす
る。
【0006】以上は説明を簡単にするために、騒音源を
1個、キャンセル音発生源(スピーカ)を1個、騒音キ
ャンセル点(観測点)を1箇所とした例である。しか
し、実際には騒音源は複数存在し、又、騒音をキャンセ
ルしたい地点(観測点)も複数存在し、このため1つの
スピーカでは各観測点の騒音をキャンセルできず、スピ
ーカも複数存在する。図15は騒音源がK個、スピーカ
がM個、観測点がL箇所の場合における従来の騒音キャ
ンセル装置の構成図である。21は各観測点における騒
音をキャンセルするように動作する騒音キャンセルコン
トローラ、22は各騒音源(図示せず)から各観測点ま
で騒音が伝搬する系を表現した一次音仮想伝搬系(騒音
伝搬系)、23はスピーカ(図示せず)の特性を含め、
各スピーカから各観測点までのキャンセル音が伝搬する
系を表現する二次音伝搬系(キャンセル音伝搬系)、2
4は各観測点におけるマイクの機能を表現する信号合成
部で、加算部241〜241′は第1観測点におけるマイ
クに相当し、加算部242〜242′は第2観測点におけ
るマイクに相当し、・・・加算部24L〜24L′は第L
観測点におけるマイクに相当する。dd1n〜ddLnは各観
測点におけるキャンセル対象でない外部雑音である。
【0007】騒音キャンセルコントローラ21におい
て、21aは各騒音源から発生する騒音に応じた参照信
号xa1n〜xaKn(図示しない参照信号発生部から出力さ
れる)を入力され、騒音キャンセル信号ya1n〜yaMn
各スピーカに入力する多入力−多出力適応フィルタ(以
後単に適応フィルタと言う)、21bは二次音伝搬系2
3の伝達関数マトリックスの各要素(伝搬要素)を用い
て作成したフィルタードX信号作成用のフィルタであ
り、騒音源から発生する騒音に応じた参照信号xa1 n
aKnを入力されるもの、21cは各観測点における合
成音信号(エラー信号)e1n〜eLnとフィルタードX信
号作成用フィルタ21bから出力されるフィルタードX
信号r111n〜rLMKnを入力され、これら信号を用いて各
観測点における騒音をキャンセルするように適応信号処
理を行って適応フィルタ21aの係数を決定する適応信
号処理部である。
【0008】図16は一次音仮想伝搬系22の説明図で
あり、図16(a)に示すようにK個の各騒音源NG1〜N
Kから発生する騒音は所定の周波数・位相特性を有する
一次音伝搬系22を伝搬して各観測点に設けたマイク
(MIC1〜MICL)に到達する。従って、第i番目の
騒音源NGiからの騒音が第j番目のマイクMICjに到
る伝搬系の伝達特性をHjiとすると、一次音仮想伝搬系
22は図16(b)に示すように表現され、その伝達関数
マトリックス(H)は以下のようになる。
【0009】
【数1】
【0010】伝達関数マトリックス(H)の各要素Hij
図17に示すFIR型デジタルフィルタによりモデル化
される。すなわち、入力信号を順次1サンプリング時間
遅延する遅延要素DLと、各遅延要素出力に係数h0
1,h2,・・・を乗算する乗算部MLと、各乗算部出
力を加算する加算部ADより成るデジタルフィルタでモ
デル化される。図18は二次音伝搬系23の説明図であ
り、図18(a)に示すように各スピーカSP1〜SPM
ら発生する騒音キャンセル音は所定の周波数・位相特性
を有する二次音伝搬系23を伝搬して各観測点に設けた
マイクMIC1〜MICLに到達する。従って、第i番目
の騒音キャンセル信号yainに基づくキャンセル音が第
j番目のマイクMICjに到る二次音伝搬系の伝達特性
をCjiとすると、二次音伝搬系23は図18(b)に示す
ように表現され、その伝達関数マトリックス(C)は以下
のようになる。
【0011】
【数2】
【0012】伝達関数マトリックス(C)の各要素は一次
音仮想伝搬系22の場合と同様に、図17に示すFIR
型デジタルフィルタによりモデル化される。すなわち、
入力信号を順次1サンプリング時間遅延する遅延要素D
Lと、各遅延要素出力に係数c0,c1,c2,・・・を
乗算する乗算部MLと、各乗算部出力を加算する加算部
ADより成るデジタルフィルタでモデル化される。図1
9は二次音伝搬系23の伝達関数マトリックス(C)の各
要素Cijを用いて作成したフィルタードX信号作成用フ
ィルタ21bの構成図である。適応信号処理部21cは
参照信号xa1n〜xaKnと、各観測点における騒音とキャ
ンセル音との合成音信号e1n〜eLnとに基づいて適応信
号処理を実行して適応フィルタの係数を更新し、適応フ
ィルタ21aは参照信号xa1n〜xaKnを入力されて騒音
キャンセル信号ya1n〜yaMnを発生してスピーカに入力
し、各観測点の騒音をキャンセルする。ところで、適応
フィルタ21aから出力される騒音キャンセル信号y
a1n〜yaMnは観測点にそのまま到達するのでなく、二次
音伝搬系23の周波数・位相特性を付与されて到達す
る。このため、適応信号処理部21cは、参照信号x
a1n〜xaKnをそのまま使用せず、参照信号に二次音伝搬
系23の特性を付加した信号を用いるフィルタードX
LMS(MEFX LMS)アルゴリズムを採用し、より
高度な騒音キャンセル制御を行っている。すなわち、フ
ィルタードX LMSアルゴリズムでは、適応フィルタ
21aに入力される参照信号xa1n〜xaKnをフィルタ2
1bによりフィルタリングした信号r11In〜rLMKn(フ
ィルタードX信号)と各観測点における合成音信号とを
用いて適応フィルタ21aの係数更新を行う。
【0013】図19において、Cijは二次音伝搬系23
における伝達関数マトリックス(C)の各要素Cij(図
18参照)を実現するFIR型デジタルフィルタであ
る。フィルタードX信号作成用フィルタ21bは各参照
信号xa1n〜xaKnに全ての伝搬要素を作用させて(全て
の伝搬要素に対応するフィルタを通過させて)フィルタ
ードX信号r111n〜rLMKnを出力するようになってい
る。すなわち、参照信号x a1nに第1番目のスピーカか
ら全観測点までの伝搬要素C11〜CL1を作用させてフィ
ルタードX信号r111n〜rL11nを出力し、参照信号x
a1nに第2番目のスピーカから全観測点までの伝搬要素
12〜CL2を作用させてフィルタードX信号r 121n〜r
L21nを出力し、・・・参照信号xa1nに第M番目のスピ
ーカから全観測点までの伝搬要素C1M〜CLMを作用させ
てフィルタードX信号r1M1n〜rLM1nを出力し、以下同
様に、参照信号xa2n〜xaKnに全ての伝搬要素を作用さ
せる。尚、 R11=(r111n,r211n,・・・rL11n) R21=(r121n,r221n,・・・rL21n) ・・・ RM1=(r1M1n,r2M1n,・・・rLM1n) ・・・ RMK=(r1MKn,r2MKn,・・・rLMKn) と表現する。
【0014】図20は多入力−多出力の適応フィルタ2
1aの構成図であり、一次音仮想伝搬系22や二次音伝
搬系23と同様の構造を有している。A11n〜AMKnはF
IR型デジタルフィルタで構成され、例えば、入力信号
を順次1サンプリング時間遅延する遅延要素DL1、D
L2と、各遅延要素出力に係数a0,a1,a2を乗算す
る乗算部ML1〜ML3と、各乗算部出力を加算する加
算部AD1〜AD2で実現される。尚、遅延段数は2段
に限らない。各参照信号xa1n〜xaKnをデジタルフィル
タA11n〜A1Knに入力して加算することにより第1番目
のスピーカに入力する騒音キャンセル信号ya1nが得ら
れ、各参照信号xa1n〜xaKnをデジタルフィルタA21n
〜A2Knに入力して加算することにより第2番目のスピ
ーカに入力する騒音キャンセル信号ya2nが得られ、・
・・・各参照信号xa1n〜xaKnをデジタルフィルタA
M1n〜AMKnに入力して加算することにより第M番目のス
ピーカに入力する騒音キャンセル信号yaMnが得られ
る。
【0015】適応フィルタ21aにおける各FIR型デ
ジタルフィルタA11n〜AMKnを3個の係数(2段遅延)
で構成する時、適応信号処理部21cは各FIR型デジ
タルフィルタA11n〜AMKnの3つの係数毎に適応信号処
理を行って係数値を決定する。すなわち、1つのFIR
型デジタルフィルタAijnの係数a0,a1,a2について
次式の演算を行って係数a0,a1,a2を決定する。
【0016】
【数3】
【0017】(1)式において、(n)は現サンプリング時刻
の値、(n-1)は1サンプリング時刻前の値、(n-2)は2サ
ンプリング時刻前の値、(n+1)は現時刻から次サンプリ
ング時刻までの値を意味している。又、μは1以下の定
数、Rijはフィルタ21bの出力信号、enは各観測点
の騒音とキャンセル音の合成音信号であり、それぞれ以
下のように表現される。
【0018】
【数4】
【0019】かかる騒音キャンセル装置によれば、適応
信号処理部21cはフィルタ21bの出力であるフィル
タードX信号r111n〜rLMKnと、各観測点における騒音
とキャンセル音との合成音信号e1n〜eLnとに基づいて
適応信号処理を実行して適応フィルタ21aを構成する
各FIR型デジタルフィルタA11n〜AMKnの係数を決定
し、適応フィルタ21aは参照信号xa1n〜xaKnを入力
されて騒音キャンセル信号ya1n〜yaMnを発生してスピ
ーカSP1〜SPM(図18)に入力し、各スピーカはキ
ャンセル音を発生して各観測点の騒音をキャンセルする
ように作用する。
【0020】図21は騒音源数K=2、スピーカ数M=
2、観測点数(マイク数)L=2の場合の具体的な従来
の騒音キャンセル装置の構成図であり、21aは4つの
FIR型デジタルフィルタA11,A21,A12,A22で構
成された適応フィルタ、21bは二次伝搬系の伝達関数
マトリックス(C)の各伝搬要素C11,C21,C12,C
22をデジタルフィルタで構成したフィルタードX信号作
成用フィルタ、21c-1〜21c-4は適応信号処理部(MEF
X LMSアルゴリズム)、SP1,SP2はスピーカ、
MC1,MC2は観測点に設置されたマイクである。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】従来の騒音キャンセル
装置によれば、上述のように騒音キャンセル信号ya1n
〜yaMnを発生して各スピーカSP1〜SPMに入力し、
各スピーカはキャンセル音を発生して各観測点の騒音を
キャンセルするように作用する。しかし、従来の騒音キ
ャンセル装置では二次音伝搬系に、通常全てのアクチュ
エータ(スピーカ)から全てのセンサ(マイク)に到る
キャンセル音の伝達経路が存在している(図18参
照)。このような系は干渉系と呼ばれているが、干渉系
は制御対象として望ましくなく以下のような問題が発生
する。すなわち、二次音伝搬系の特性によっては、幾つ
かのアクチュエータ出力(キャンセル音)が幾つかの観
測点で互いに正反対の作用をする場合があり、かかる場
合には、各観測点における騒音(振動)が交互に繰返し
大きくなったり、小さくなったりする問題が生じる。
【0022】例えば、所定のスピーカがそれに対応する
観測点における騒音を十分にキャンセルするようにキャ
ンセル音を出力している場合であっても、干渉系のため
他のスピーカからのキャンセル音が到来しており、この
ため騒音キャンセル装置は該観測点で更に騒音をキャン
セルするように制御を行ってスピーカに新たな騒音キャ
ンセル信号を入力する。しかし、この新たな騒音キャン
セル信号は騒音をキャンセルしない方向に作用して騒音
が大きくなる。これにより、騒音キャンセル装置は次に
騒音を減小する方向に騒音キャンセル信号を発生して騒
音をキャンセルするように作用する。以後かかる動作を
繰返し、観測点における騒音(振動)が交互に繰返し大
きくなったり、小さくなったりして、騒音を常時キャン
セルすることができない。かかる現象は特に、急速な適
応制御を行っているような場合に顕著に現れる。元来、
適応制御システムは、適応を行うことによって外部の系
の特性変動に追従し、常に最適な制御を行おうとするも
のであるため、上記のような現象は適応制御システムに
おいて特に大きな欠点となる。
【0023】又、騒音キャンセル装置は適応信号処理を
行って適応フィルタの係数を順次決定し、最終的に所定
の係数値(最適値)に収束させ騒音をキャンセルする。
ところで、適応フィルタの係数の初期値が収束すべき値
(最適値)から大きくずれていると、適応フィルタが最
適値に到達するまでに要する時間が長くなり、騒音キャ
ンセルの追従性が悪くなる問題が生じる。従来の騒音キ
ャンセル装置ではかかる点に考慮がなされていないた
め、騒音をキャンセルするまでに長時間を要し、しか
も、騒音状態が変化する場合には該変化に追従できず騒
音を十分にキャンセルできない問題があった。以上か
ら、本発明の第1の目的は干渉系に起因する問題、すな
わち、観測点で騒音が大きくなったり小さくなったりす
る現象を解決できる騒音キャンセル方式を提供すること
である。本発明の第2の目的は追従性の良好な騒音キャ
ンセル方式を提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】上記課題は、複数の観測
点における騒音をそれぞれキャンセルするためにキャン
セル音を出力するキャンセル音発生源(スピーカ)と、
各観測点における騒音とキャンセル音との合成音を検出
するセンサ(マイク)と、各観測点における合成音信号
と騒音に応じた参照信号を用いて各観測点における騒音
をキャンセルするように適応信号処理を行い、適応フィ
ルタの係数を決定する適応信号処理部と、参照信号に該
係数に基づいたデジタルフィルタ処理を施して複数の騒
音キャンセル信号を発生しスピーカに入力する適応フィ
ルタと、適応フィルタの前後に設けた第1、第2のデジ
タルフィルタにより達成される。
【0025】
【作用】複数の観測点における騒音をそれぞれキャンセ
ルするためにスピーカよりキャンセル音を出力し、各観
測点における騒音とキャンセル音との合成音をマイクに
より検出する。適応信号処理部は各観測点における合成
音信号と騒音に応じた参照信号を用いて各観測点におけ
る騒音をキャンセルするように適応信号処理を行って適
応フィルタの係数を決定し、適応フィルタは決定された
係数値に基づいて第2のデジタルフィルタを介して入力
された参照信号にデジタルフィルタ処理を施して複数の
騒音キャンセル信号を発生し、該騒音キャンセル信号を
第1のデジタルフィルタを介してスピーカに入力する。
第1のデジタルフィルタの特性は、適応フィルタ出力端
から各観測点までのキャンセル音伝搬系がそれぞれ互い
に非干渉となるように設定されているから、あるキャン
セル音伝搬系に対して他のキャンセル音伝搬系の騒音キ
ャンセル信号は悪影響を与えず観測点における音の大小
の繰返しがなくなり、騒音を常時キャンセルできる。
又、第2のデジタルフィルタの特性は、第2デジタルフ
ィルタと係数が初期設定された適応フィルタと第1デジ
タルフィルタと各キャンセル音発生源から各観測点まで
の全体のキャンセル音伝搬系との総合特性が、騒音伝搬
系特性の逆符号特性と略等しくなるように設定されてい
るから、換言すれば第2のデジタルフィルタの係数値を
適応フィルタの係数が収束する値(最適値)に近い値に
設定しているから、追従性の良好な騒音キャンセルを行
うことができる。
【0026】各キャンセル音伝搬系を互いに非干渉とす
るには、第1のデジタルフィルタと各スピーカから全観
測点までの全体のキャンセル音伝搬系との総合特性を表
す伝達関数マトリックスの対角項のゲインが非対角項の
ゲインより相当大きくなるようにすればよい。この場
合、第1のデジタルフィルタ特性をキャンセル音伝搬系
の逆特性(逆フィルタ特性)にすれば非干渉系にできる
と共に、第1のデジタルフィルタとキャンセル音伝搬系
との総合伝達関数マトリックスの対角項を遅延要素で表
せ、フィルタードX信号作成用フィルタを単なる遅延要
素のみで実現でき、従来のフィルタードX信号作成のた
めの畳込み演算が不要となり、その演算量を削減でき
る。
【0027】
【実施例】
(a) 本発明の第1の実施例全体の構成 図1は本発明の実施例である騒音キャンセルシステムの
構成図であり、騒音源がK個存在し、又、スピーカがM
個、観測点(マイク)がL個存在する場合である。図
中、21は各観測点における騒音をキャンセルするよう
に動作する騒音キャンセルコントローラ、22はK個の
騒音源(図示せず)からL個の各観測点まで騒音が伝搬
する系(騒音伝搬系)を表現した一次音仮想伝搬系、2
3はスピーカ(図示せず)の特性を含め、M個の各スピ
ーカから各観測点までのキャンセル音が伝搬する系を表
現する二次音伝搬系(キャンセル音伝搬系)、24は各
観測点におけるマイクの機能を表現する信号合成部で、
加算部241〜241′は第1観測点におけるマイクに相
当するもの、加算部242〜242′は第2観測点におけ
るマイクに相当するもの、・・・加算部24L〜24L
は第L観測点におけるマイクに相当するものであり、d
d1n〜ddLnは各観測点におけるキャンセル対象でない外
部雑音である。
【0028】騒音キャンセルコントローラ21におい
て、21aは騒音キャンセル信号ya1 n〜yaNnを出力す
る多入力−多出力の適応フィルタ、21bはフィルター
ドX信号作成用フィルタであり、キャンセルしたい騒音
に応じた参照信号xa1n〜xaKn(図示しない参照信号発
生部から出力される)を後述する第2のデジタルフィル
タを介して入力されるもの、21cは各観測点における
合成音信号e1n〜eLnとフィルタードX信号作成用フィ
ルタ21bから出力されるフィルタードX信号r 11〜r
NKを入力され、これら信号を用いて各観測点における騒
音をキャンセルするように適応信号処理を行って適応フ
ィルタの係数を更新する適応信号処理部、21dは適応
フィルタ21aの後段に設けた多入力−多出力の第1の
デジタルフィルタであり、適応フィルタから各観測点ま
でのそれぞれの二次音伝搬系が互いに非干渉となるよう
に特性が設定されるもの、21eは適応フィルタ21a
の前段に設けた多入力−多出力の第2のデジタルフィル
タである。第2のデジタルフィルタ21eと、係数が初
期値に設定された適応フィルタ21aと、第1のデジタ
ルフィルタ21dと、二次音伝搬系23との総合特性は
一次音仮想伝搬系22の伝搬特性の逆符号特性と略等し
くなるように設定されている。一次音仮想伝搬系22と
二次音伝搬系23は従来と同一の構造を備え、具体的に
はそれぞれ図16、図18に示す構造を備えている。
【0029】第1のデジタルフィルタ 第1のデジタルフィルタ21dは図2に示すように多数
のFIR型デジタルフィルタB11〜BMNで構成されてい
る。尚、B11〜BMNはデジタルフィルタ21dの特性を
伝達関数マトリックスで表現した時の各要素である。F
IR型デジタルフィルタB11〜BMNはそれぞれ入力信号
を順次1サンプリング時間遅延する遅延要素DL1,D
L2・・と、各遅延要素出力に係数b0,b1,b2・・
・を乗算する乗算部ML1,ML2,ML3・・と、各
乗算部出力を加算する加算部AD1,AD2・・で実現
される。適応フィルタ21aから出力される騒音キャン
セル信号ya1n〜yaNnはそれぞれFIR型デジタルフィ
ルタB11〜B1Nに入力され、それらの出力を加算するこ
とにより第1番目のスピーカに入力する騒音キャンセル
信号yb1nが得られ、又、各騒音キャンセル信号ya1n
aNnをそれぞれFIR型デジタルフィルタB21〜B2N
に入力して加算することにより第2番目のスピーカに入
力する騒音キャンセル信号yb2nが得られ、・・・・各
騒音キャンセル信号ya1n〜yaNnをそれぞれデジタルフ
ィルタBM1〜BMNに入力して加算することにより第M番
目のスピーカに入力する騒音キャンセル信号ybMnが得
られる。
【0030】この第1のデジタルフィルタ21dを構成
する各FIR型デジタルフィルタB 11〜BMNの係数
0,b1,b2・・・は、適応フィルタ21aの出力端
から各観測点までの二次音伝搬系がそれぞれ互いに非干
渉となるように決定される。具体的には、各スピーカか
ら全観測点までの全体の二次音伝搬系23と第1のデジ
タルフィルタ21dの総合特性を表現する伝達関数マト
リックスの対角項のゲインが非対角項のゲインより相当
大きくなるように、各係数を決定する。図3は第1のデ
ジタルフィルタ21dにおける各FIR型デジタルフィ
ルタB 11〜BMNの係数値決定方法の説明図である。スピ
ーカ数M=2,観測点数L=2とすれば、第1のデジタ
ルフィルタ21d及び二次音伝搬系23の伝達関数マト
リックス(B),(C)はそれぞれ2行2列のマトリッ
クスで表現でき、又、第1のデジタルフィルタと二次音
伝搬系の総合特性を示す伝達関数マトリックス(P)も
2行2列のマトリックスで表現でき(2)式が成立する。
【0031】
【数5】
【0032】(2)式において、二次音伝搬系23の伝達
関数マトリックス(C)は測定により既知であり、又、
総合伝達関数マトリックス(P)の各要素は「対角項P
11,P22のゲインが非対角項P12,P21より相当大きい
(対角項のゲイン≫非対角項のゲイン)」という条件を
満足するように定めればよく、既知である。例えば、非
対角項のゲインを0にする。従って、(2)式よりデジタ
ルフィルタ21dの各要素B11〜B22が求まり、これら
要素を実現するFIR型デジタルフィルタの各係数を決
定できる。
【0033】図4は適応フィルタ21aの出力端から各
観測点までの総合二次音伝搬系の説明図であり、適応フ
ィルタ21aから出力される騒音キャンセル信号ya1n
〜ya Nnはそれぞれ独自の二次音伝搬系23-1〜23-L(伝達
関数はP11〜PLN)を介して観測点に到達してyc1n〜y
cLnとなる。そして、この場合、各二次音伝搬系は他の
二次音伝搬系から互いに非干渉となっており、ある二次
音伝搬系に他の系の騒音キャンセル信号yainが干渉す
ることがない。すなわち、騒音キャンセル信号ya in
第i観測点のみの騒音をキャンセルするように動作し、
他の観測点に何等影響を与えず、非干渉系が形成され
る。
【0034】第2のデジタルフィルタ 第2のデジタルフィルタ21eは図5に示すように多数
のFIR型デジタルフィルタW11〜WNKで構成されてい
る。各FIR型デジタルフィルタW11〜WNKはそれぞれ
入力信号を順次1サンプリング時間遅延する遅延要素D
L1,DL2・・と、各遅延要素出力に係数w0,w1
2・・・を乗算する乗算部ML1,ML2,ML3・
・と、各乗算部出力を加算する加算部AD1,AD2,
・・で構成されている。各FIR型デジタルフィルタの
係数w0,w1,w2・・・は、適応フィルタ21aの係
数が最適値に短時間で収束するように後述する方法によ
り決定され、これにより追従性の良好な騒音キャンセル
を行えるようになっている。参照信号xa1nをFIR型
デジタルフィルタW11〜WN1に入力することによりそれ
ぞれから信号yw11n〜ywN1nが得られ、又、参照信号x
a2nをFIR型デジタルフィルタW12〜WN2に入力する
ことによりそれぞれから信号yw12n〜ywN2nが得られ、
・・・、参照信号xaNnをFIR型デジタルフィルタW
1K〜WNKに入力することにより信号yw1Kn〜ywNKnが得
られる。
【0035】適応フィルタ 適応フィルタ21aは図6に示すように多数のFIR型
デジタルフィルタA11〜ANKと加算器AD1〜ADN
構成され、各FIR型デジタルフィルタには第2のデジ
タルフィルタ21eから出力される信号yw11n〜ywNKn
が入力され、FIR型デジタルフィルタAij(j=1〜
K)の出力を加算器ADi加算することにより第i番目
の騒音キャンセル信号yainが得られる。
【0036】フィルタードX信号作成用フィルタ フィルタードX信号作成用フィルタ21bは図7に示す
構造を有し、第1のデジタルフィルタ21dと二次音伝
搬系23の総合伝達関数マトリックス(P)の対角項
(非対角項は0とする)の伝達関数を実現するFIR型
デジタルフィルタP11,P22,・・・PNNの組をK組設
けて構成されている。第2のデジタルフィルタ21eか
ら出力される信号yw11n〜ywN1nが第1組目のFIR型
デジタルフィルタP11,P22,・・・PNNに入力されて
フィルタードX信号r11〜rN1が得られ、信号yw12n
ywN2nが第2組目のFIR型デジタルフィルタP11,P
22,・・・PNNに入力されてフィルタードX信号r12
N2が得られ、・・・、信号yw1Kn〜ywNKnが第K組目
のFIR型デジタルフィルタP 11,P22,・・・PNN
入力されてフィルタードX信号r1K〜rNKが得られる。
【0037】適応信号処理部と他の部分との関連 騒音源数を2、スピーカ数を2、観測点数を2とする
と、騒音キャンセルコントローラ21は図8に示す構成
となる(第1のデジタルフィルタは省略)。図中、21
aは適応フィルタ、21bはフィルタードX信号作成用
フィルタ21c-11,21c-21,21c-12,21c-22は適応信号処理
部(LMS)、21eは第2のデジタルフィルタであ
る。各適応信号処理部21c-11,21c-21,21c-12,21c-22
は、適応フィルタ21aにおけるFIR型デジタルフィ
ルタA11,A21,A12,A22の係数を決定する。たとえ
ば、適応信号処理部21c-ij(i,j=1,2)はFIR
型デジタルフィルタAijの3つの係数a0,a1,a2
次式の演算を行って決定する。
【0038】
【数6】
【0039】(1)′式において、(n)は現サンプリング時
刻の値、(n-1)は1サンプリング時刻前の値、(n-2)は2
サンプリング時刻前の値、(n+1)は現時刻から次サンプ
リング時刻までの値を意味している。又、μは1以下の
定数、rijはフィルタードX信号作成要フィルタ21b
の出力信号、einは各i観測点におけるエラー信号(合
成音信号)である。
【0040】第2のデジタルフィルタの特性決定法 仮りに、適応フィルタ21aの全要素Aijの伝達関数を
1に設定し、該適応フィルタにまったく適応を行わせな
かったとしても、第2のデジタルフィルタ21eの係数
を最適値に近い値に設定しておけば、ある程度の騒音キ
ャンセルを行うことができる。従って、予め、第2のデ
ジタルフィルタ21eの係数値を演算して設定してお
き、適応制御により適応フィルタ21aの係数を1より
更新すれば、短時間で適応フィルタ21aの係数は最適
値に収束し、追従性の良好な騒音キャンセルを行うこと
ができるようになる。図9は第2のデジタルフィルタ2
1eにおける各FIR型デジタルフィルタW 11〜WNK
係数値決定方法の説明図である。適応フィルタ21aの
伝達関数を全て1に設定すると、換言すれば、適応フィ
ルタ21aを構成する各FIR型デジタルフィルタAij
の係数a0〜a2を伝達関数が1となるように初期設定す
ると、騒音キャンセルシステムは図9に示すようにな
る。但し、騒音源の数、スピーカの数、騒音キャンセル
点(観測点)の数はそれぞれ2であるとしている。かか
るシステムにおいて、騒音がキャンセルされる場合を考
えると次式が成立する。
【0041】
【数7】
【0042】(3)、(3)′式より次式 (H)+(C)(B)(A)(W)=0 ・・・(4) (H)+(P)(A)(W)=0 ・・・(4)′ (但し、(P)=(C)(B))が成立する。(4)式におい
て、(H)、(C)は測定により既知、(B)は既に求め
てあるから既知、又、(A)はその伝達関数を全て1に
設定してあるから既知である。従って、(4)式より第2
のデジタルフィルタ21eの各要素W11〜WNKが求ま
り、該要素を実現するFIR型デジタルフィルタの各係
数を決定できる。たとえば、騒音源数K=2、スピーカ
数M=2,観測点数L=2とすれば、第1デジタルフィ
ルタ21dの伝達関数マトリックス(B)、第2デジタ
ルフィルタ21eの伝達関数マトリックス(W)、一次
音仮想伝搬系22の伝達関数マトリックス(H)、二次
音伝搬系23の伝達関数マトリックス(C)、適応フィ
ルタ21aの伝達関数マトリックスの伝達関数マトリッ
クス(A)それぞれ以下のようにマトリックスで表現で
きる。
【0043】
【数8】
【0044】これらを(4)式に代入して第2のデジタル
フィルタ21eの各要素W11〜W22を求める。このよう
に、第2のデジタルフィルタ21eの各伝達関数要素を
求めて設定すれば、該第2のデジタルフィルタの係数
が、適応フィルタ21aの係数が最終的に収束すべき値
(最適値)に近い値になり、追従性を良好にできる。図
10は第2のデジタルフィルタ21eの特性説明図であ
る。(4)′式より第2のデジタルフィルタ21eと初期
値が設定された適応フィルタ21aと非干渉系(図4参
照)の総合特性は (P)(A)(W)=−(H) となり、上記総合特性は一次音仮想伝搬系22の逆符号
特性と等価となる。
【0045】全体の動作 複数の観測点における騒音をそれぞれキャンセルするた
めにスピーカよりキャンセル音を出力する。信号合成部
24は各観測点における騒音とキャンセル音との合成音
信号e1n〜eLnを検出して適応信号処理部21cに入力
する。第2のデジタルフィルタ21eは予め設定されて
いる係数値(固定)に基づいて、入力されている参照信
号xa1n〜xaKnにFIR型デジタルフィルタ処理を施し
て複数の信号yw11n〜ywNKnを発生してフィルタードX
信号作成用フィルタ21bと適応フィルタ21aに入力
する。フィルタードX信号作成用フィルタ21bは入力
信号yw11n〜ywNKnに非干渉系マトリックス(P)の要
素Pijに応じたフィルタリング処理を施してフィルター
ドX信号r11〜rNKを発生して適応信号処理部21cに
入力する。適応信号処理部21cはフィルタードX信号
作成用フィルタ21bの出力信号r11〜rNKと、各観測
点における騒音とキャンセル音との合成音信号e1n〜e
Lnとに基づいて(1)′式に従って適合アルゴリズム処理
を実行し、適応フィルタ21aを構成する各FIR型デ
ジタルフィルタA11〜ANK(図6参照)の係数を決定し
て更新する。
【0046】適応フィルタ21aは適応信号処理により
決定された係数値に基づいて、第2デジタルフィルタ2
1eから入力されている信号yw11n〜ywNKnにFIR型
デジタルフィルタ処理を施して複数の騒音キャンセル信
号ya1n〜yaNnを発生して第1のデジタルフィルタ21
dに入力する。第1のデジタルフィルタ21dは予め設
定されている係数値(固定)に基づいて、入力された騒
音キャンセル信号ya1n〜yaNnにFIR型デジタルフィ
ルタ処理を施して複数の騒音キャンセル信号yb1n〜y
bMnを発生してそれぞれM個のスピーカに入力する。こ
れにより各スピーカはキャンセル音を出力し、各観測点
における騒音をキャンセルするように作用し、以後上記
動作を繰り返す。
【0047】この場合、第1のデジタルフィルタ21d
の特性は、適応フィルタ出力端から各観測点までのキャ
ンセル音伝搬系がそれぞれ互いに非干渉となるように設
定されているから、あるキャンセル音伝搬系に対して他
のキャンセル音伝搬系の騒音キャンセル信号は干渉せず
観測点における騒音の大小の繰返しがなくなり、騒音を
常時キャンセルできる。又、第2のデジタルフィルタ2
1eの特性は、第2のデジタルフィルタ21eと係数が
初期設定された適応フィルタ21aと第1のデジタルフ
ィルタ21dと二次音伝搬系23との総合特性が、一次
音仮想伝搬系22の伝搬特性の逆符号特性と略等しくな
るように設定されているから、換言すれば第2のデジタ
ルフィルタ21eの係数値を、適応フィルタ21aの係
数が収束する値(最適値)に近い値に設定しているか
ら、追従性の良好な騒音キャンセル制御を行うことがで
きる。
【0048】(b) 本発明の第2の実施例 以上では、第1のデジタルフィルタ21dと二次音伝搬
系23の総合伝達関数マトリックス(P)において、
「対角項のゲインは非対角項より相当大きい(対角項の
ゲイン≫非対角項のゲイン)」という条件を満足するよ
うに、デジタルフィルタ21dの特性を決定した。この
条件を満足する特別の場合として、第1のデジタルフィ
ルタ21dの特性を二次音伝搬系23の逆特性(逆フィ
ルタ特性)にすればよい。このようにすれば、非干渉系
にできると共に、第1のデジタルフィルタ21dと二次
音伝搬系23との総合伝達関数マトリックスの対角項を
遅延要素で表現できるようになり、従って、フィルター
ドX信号作成用フィルタ21bを単なる遅延要素のみで
実現でき、従来のフィルタードX信号作成のための畳込
み演算が不要となり、その演算量を削減できる。尚、 (B)(C)=(P) 但し
【0049】
【数9】
【0050】が成立する時、(B)は(C)の逆特性
(逆フィルタ特性)であると云われる。図11は逆フィ
ルタ特性にした場合における適応フィルタ出力端から各
観測点までの総合二次音伝搬系説明図である。適応フィ
ルタ21aから出力される騒音キャンセル信号ya1n
aNnはそれぞれ独自の二次音伝搬系23-1〜23-Lを介し
て各観測点に到達してyc1n〜ycLnとなる。そして、各
二次音伝搬系23-1〜23-Lの伝達関数は定数pijとΔij
ンプリング時間の遅延項との積となる。この場合、各二
次音伝搬系は他の二次音伝搬系から互いに非干渉となっ
ており、ある二次音伝搬系に他の系の騒音キャンセル信
号yainが干渉することがなく、非干渉系が形成されて
いる。又、総合伝達関数マトリックス(P)の対角項は遅
延要素となり、このため、フィルタードX信号作成用フ
ィルタ21bの各フィルタを遅延要素のみで実現でき
る。
【0051】以上のように、第1のデジタルフィルタ2
1dの伝達関数マトリックス(B)を二次音伝搬系23の
伝達関数マトリックス(C)の逆特性にすると(4)′式よ
り、 (P)(A)(W)=−(H) となる。従って、第2のデジタルフィルタ21eと初期
値が設定された適応フィルタ21aと非干渉系(図11
参照)との総合特性は図12に示すように一次音仮想伝
搬系22の伝搬特性の逆符号特性−Hと等価となる。以
上、本発明を実施例により説明したが、本発明は請求の
範囲に記載した本発明の主旨に従い種々の変形が可能で
あり、本発明はこれらを排除するものではない。
【0052】
【発明の効果】以上本発明によれば、適応フィルタの後
段に第1のデジタルフィルタを設け、適応フィルタから
各観測点までのキャンセル音伝搬系をそれぞれ互いに非
干渉となるようにしたから、あるキャンセル音伝搬系に
対して他のキャンセル音伝搬系の騒音キャンセル信号は
非干渉となり観測点における騒音の大小の繰返しがなく
なり、騒音を常時キャンセルできる。又、適応フィルタ
の前段に第2のデジタルフィルタを設け、該第2のデジ
タルフィルタと初期値が設定された適応フィルタと第1
のデジタルフィルタと二次音伝搬系との総合特性が、一
次音伝搬系の伝搬特性の逆符号特性と略等しくなるよう
に設定したから、第2のデジタルフィルタの係数値を適
応フィルタの係数が収束する値(最適値)に近い値に設
定でき、追従性の良好な騒音キャンセルを行うことがで
きる。
【0053】更に本発明によれば、第1のデジタルフィ
ルタ特性を二次音伝搬系の逆フィルタ特性にして非干渉
系を形成するように構成したから、第1のデジタルフィ
ルタと二次音伝搬系の総合伝達関数マトリックスの対角
項は遅延要素のみとなり、このため、騒音キャンセルコ
ントローラにおけるフィルタードX信号作成用フィルタ
を単なる遅延要素のみで実現でき、従来のフィルタード
X信号作成のための畳込み演算が不要となり、その演算
量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例構成図である。
【図2】第1のデジタルフィルタの構成図である。
【図3】第1のデジタルフィルタの特性決定法説明図で
ある。
【図4】適応フィルタから観測点までの総合二次音伝搬
系説明図である。
【図5】第2のデジタルフィルタの構成図である。
【図6】本発明の適応フィルタの構成図である。
【図7】本発明のフィルタードX信号作成用フィルタの
構成図である。
【図8】騒音源、スピーカ、観測点が2個の場合におけ
る本発明の騒音キャンセルコントローラの構成図であ
る。
【図9】第2のデジタルフィルタの特性決定法説明図で
ある。
【図10】第2のデジタルフィルタの特性説明図であ
る。
【図11】逆フィルタ特性にした場合の総合二次音伝搬
系説明図である。
【図12】第2のデジタルフィルタの特性説明図であ
る。
【図13】従来の騒音キャンセル装置の構成図である。
【図14】騒音キャンセル動作説明用波形図である。
【図15】騒音源、スピーカ、観測点が複数存在する場
合の従来の騒音キャンセル装置の構成図である。
【図16】一次音仮想伝搬系の説明図である。
【図17】伝達関数マトリックスの各要素を実現するデ
ジタルフィルタの構成図である。
【図18】二次音伝搬系の説明図である。
【図19】フィルタードX信号作成用フィルタの構成図
である。
【図20】適応フィルタの構成図である。
【図21】騒音源、スピーカ、観測点が2個存在する場
合の従来の騒音キャンセル装置の構成図である。
【符号の説明】
21・・騒音キャンセルコントローラ 21a・・適応フィルタ 21b・・フィルタードX信号作成用フィルタ 21c・・適応信号処理部 21d・・第1のデジタルフィルタ 21e・・第2のデジタルフィルタ 22・・一次音仮想伝搬系 23・・二次音伝搬系 24・・信号合成部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 沢田 秀司 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (56)参考文献 特開 平3−274897(JP,A) 特開 平4−43799(JP,A) 特開 平6−27972(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10K 11/178 H03H 17/02 601 H03H 21/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の観測点における騒音をそれぞれキ
    ャンセルするためにキャンセル音を出力すると共に、各
    観測点における騒音とキャンセル音との合成音を検出
    し、各観測点における合成音信号と騒音源から発生する
    騒音に応じた参照信号を入力され、これら信号を用いて
    前記各観測点における騒音をキャンセルするように適応
    信号処理を行って適応フィルタの係数を決定し、該適応
    フィルタに騒音信号を入力して得られる複数の騒音キャ
    ンセル信号をそれぞれキャンセル音発生源に入力する騒
    音キャンセル方式において、 適応フィルタの前後に第1、第2のデジタルフィルタを
    設け、 適応フィルタから各観測点までのキャンセル音伝搬系が
    それぞれ互いに非干渉となるように、適応フィルタの後
    段に設けた第1のデジタルフィルタの特性を設定し、
    又、 第2のデジタルフィルタと、係数が初期値に設定された
    適応フィルタと、第1のデジタルフィルタと、各キャン
    セル音発生源から各観測点までの全体のキャンセル音伝
    搬系との総合特性が、各騒音源から各観測点までの全体
    の騒音伝搬系の伝搬特性の逆符号特性と略等しくなるよ
    うに第2のデジタルフィルタの特性を設定することを特
    徴とする騒音キャンセル方式。
  2. 【請求項2】 前記第1のデジタルフィルタ特性を、各
    キャンセル音発生源から各観測点までの全体のキャンセ
    ル音伝搬系の逆フィルタ特性に設定することを特徴とす
    る請求項1記載の騒音キャンセル方式。
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