JP3403472B2 - 蛋白質加水分解物の呈味改善方法 - Google Patents

蛋白質加水分解物の呈味改善方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は蛋白質材料の加水分解物
(以下、ペプチドと称することがある)の呈味改善方
法、特に蛋白質材料の加水分解物から苦味を除去する方
法に関し、更に詳しくは、蛋白質材料のアルカリ、酸又
は酵素による分解物をイカ肝臓より得られる酸性カルボ
キシペプチダーゼ(以下、イカ肝臓カルボキシペプチダ
ーゼと称することがある)を単独、あるいは該ペプチダ
ーゼとイカ肝臓以外の任意の動植物及び/又は微生物起
源の1種以上のエキソペプチダーゼからなる混合ペプチ
ダーゼを用いて処理することにより、該加水分解物の呈
味を改善する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】蛋白質は人間が生きていくための最も重
要な栄養素の一つであり、動植物あるいは微生物起源の
蛋白質は食品産業のあらゆる分野において利用されてい
る。蛋白質を部分的に加水分解して、ペプチドに転換し
ておくことが蛋白質の溶解性を改善し、用途を広げる上
において有利であるばかりか、ジ及びトリペプチドの吸
収速度が同一組成のアミノ酸混合物からの吸収速度より
速いことが報告されて以来、その重要性が見直されてい
る。更に近年、健康食品あるいは機能性食品に対する消
費者ニーズが高まり、ペプチドの需要も急激に増加して
いる。 【0003】しかしながら、蛋白質を加水分解すると一
般には苦味ペプチドをはじめとして、著しいオフフレー
バーが生成することが避けられない。従って、苦味物質
の生成しない蛋白質の酵素分解方法または分解後のペプ
チドから苦味物質を除去する方法に関して多くの研究が
なされている。 【0004】例えば、アミノペプチダーゼによりカゼイ
ン分解物の苦味を除去する方法[日本農芸化学会誌第4
3巻、第5号、286〜291(1969)];エキソペプチダーゼ
により末端疎水性アミノ酸を遊離することにより苦味の
軽減を図る方法[Agric.Biol.Chem.,36,1423(1972)及び
J.Agric.Food Chem.31,50(1983)];また活性炭、疎水性
吸着剤などにより苦味ペプチド、異味異臭成分を吸着除
去する方法[J.Food Sci.,48,897(1983)];プラステイ
ン反応により、苦味ペプチドの官能基をより高分子化す
ることにより苦味を取り除く方法[荒井、加藤、藤巻
ら;昭和45年日本農芸化学会年会講演要旨集382〜383
(1980)];さらにアミノ酸、有機酸、糖類、高分子多糖
類の添加または修飾により苦味をマスキングする方法
[ Chemistry of foods and beverage Recent developm
ents,Academic Press,New York,149〜169(1982)]等が
報告されている。 【0005】上記した如きの報告において、エキソペプ
チダーゼとは蛋白質分解酵素のうちペプチド鎖の末端の
アミノ酸に作用する酵素群の名称であり、内部のペプチ
ド鎖を切断するエンドペプチダーゼと区別して用いられ
る。エキソペプチダーゼとしてはペプチドのカルボキシ
末端のアミノ酸に作用しこれを切断するカルボキシペプ
チダーゼ、およびアミノ末端のアミノ酸に作用しこれを
切断するアミノペプチダーゼ等が知られている。 【0006】また実用面においては、例えば、アスペル
ギルス属、ペニシリウム属その他の微生物の培養物又は
それより得た酵素をミルクカゼインまたはミルクホエイ
の蛋白分解酵素による部分分解物に作用させる苦味物質
の除去方法(特公昭51-16506号公報);タンパク質の水
性懸濁液をpH約1〜5にて加熱して該タンパク質を部分
的に可溶化し、次いでプロテアーゼを用いて加水分解す
る可溶性タンパク質の製造方法(特公昭53-6237号公
報);蛋白質水溶液に、特定の活性を有する乳酸菌菌体
破壊物又は該菌体破壊物から抽出した酵素、パンクレア
チン及びアスペルギルス属に属する菌株から得られた蛋
白分解酵素の3種の酵素混合物により全窒素量の少なく
とも40%の量のアミノ態窒素を生成するまで加水分解
する苦味及び抗原性のない蛋白質の製造法(特公昭 54-3
6235号公報)が提案されている。 【0007】さらに5〜20%の基質濃度である大豆蛋
白質に、微生物アルカリプロテイナーゼをpH7〜10
において作用させ、8〜15%の範囲内の分解度が達成
されるまで蛋白質を加水分解後、pH2〜7として酵素
を失活させ、活性炭で処理する低蛋白質酸性食品用添加
物として有用なポリペプチドの製造方法(特公昭56-525
43号公報);タン白水溶液を加水分解し、加水分解生成
物を加熱処理して、変性タン白を限外濾過により除去す
るタン白およびマクロペプチドを含まないタン白加水分
解物の製造方法(特公昭58-58061号公報);大豆ホエー
蛋白原料を酵素分解し、低分子画分を除去するいずれか
の段階において加熱する工程を含むことを特徴とする大
豆ホエーペプチド混合物の製造方法(特開昭61-254153
号公報);蛋白を、エンド型プロテアーゼ及びエキソ型
プロテアーゼ共存水系下に、0.5〜10時間酵素分解し、苦
味の極めて少ない平均鎖長3〜10のオリゴペプチドを得
ることを特徴とするオリゴペプチド混合物の製造法(特
開昭62−143697号公報);さらに蛋白質材料の加水分解
により得られるペプチドに酵母の細胞壁及び外皮並びに
これら細胞壁または外皮を含む物質よりなる群から選ば
れるカルボキシペプチダーゼ源を反応させる蛋白質加水
分解物からの苦味除去方法(特開平2-5829号公報)等多
数の提案がなされている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
蛋白質の酵素分解によって得られる分解物、殊に蛋白源
として豊富なミルクカゼイン又は大豆蛋白等の疎水性ア
ミノ酸含有量の多い蛋白質を出発原料として得られるペ
プチドは、苦味の生成が避けられず、これら苦味の生成
抑制がペプチド製造における重大な課題となっている。
即ち、上記のごとき従来方法によって得られるペプチド
は、苦味が完全に除かれていないか、或いは逆に苦味を
感じさせない程度にまで加水分解されたものは遊離アミ
ノ酸の生成による呈味が現れる等、必ずしも満足できる
ものではなかった。 【0009】更に、従来提案方法によって調製されるペ
プチドは、飲料などに配合した場合に、ペプチドの二次
的な凝集に起因する濁り、オリ(沈殿)が生成するとい
う重大な欠点がある。 【0010】一方、ペプチドの苦味の除去にプラステイ
ン反応の利用も提案されている。しかしながらプラステ
インは、溶解性が低く、無味・無臭で保存性に優れてい
る等の食品の品質改善に有利である反面安全性が確立さ
れておらず、実用化には至っていない。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明者らは先に、イカ
肝臓より得られたプロテアーゼによる蛋白質材料の加水
分解物が、高食塩含有飲食品及び/又は高酸類含有飲食
品のストレートなもしくは丸みに乏しい鹹味及び/又は
酸味を和らげ、丸みに富んだマイルドでかつコク味のあ
る好ましい呈味感に改善する飲食品の風味改善方法を提
案した(特開昭62-11060号公報)。 【0012】イカ肝臓に存在する蛋白質分解酵素は、従
来カテプシン系の酵素群であろうと言われており、例え
ば、Comp.Biochem.Physiol.B.,70,791,(1981);Agr
ic.Biol.Chem.,40(6)1159〜1165(1976);日本水産学会
誌 ,26,500,504(1960);及び同27,85(1961)等に詳細に記
載されている。 【0013】本発明者らのその後の研究により、イカ肝
臓中にエキソペプチダーゼである強力なカルボキシペプ
チダーゼ活性を有する酵素が存在することが分かり、研
究の結果、該酵素が新規酸性カルボキシペプチダーゼで
あることが判明し、同一出願人により既に特許を出願し
ている(特願平3-94767号)。さらに、研究を進めた結
果、該カルボキシペプチダーゼを利用して、苦味を有す
る蛋白質材料の加水分解物を処理したところ、苦味が効
果的に除去され、しかも、遊離アミノ酸の呈味がほとん
ど生成されないことを見いだした。 【0014】さらに上記イカ肝臓から得られるカルボキ
シペプチダーゼと、従来既知のイカ肝臓以外の動植物及
び/又は微生物起源の任意の1種以上のエキソペプチダ
ーゼとを組み合わせて、苦味を有する蛋白質材料の加水
分解物を処理したところ、苦味がほぼ完全に除去され、
異味異臭もなく一層優れたペプチド精製物が得られるこ
とを見いだし本発明を完成した。 【0015】従って本発明の目的は、従来文献に記載の
ないイカ肝臓由来の酸性カルボキシペプチダーゼ単独、
あるいは該ペプチダーゼとイカ肝臓以外の動植物及び/
又は微生物起源の1種以上のエキソペプチダーゼを併用
して、蛋白質材料の加水分解物を処理することにより、
苦味がなく且つ遊離アミノ酸に起因する不都合な異味異
臭も伴わない精製ペプチドを提供するにある。以下、本
発明の態様について更に詳しく説明する。 【0016】本発明において利用することのできる蛋白
質材料の加水分解物としては、動植物起源の蛋白質材料
の、酸又はアルカリ加水分解物或いは蛋白質分解酵素に
よる分解物を挙げることができる。かかる蛋白質材料と
しては、例えば、家禽及び畜肉類、魚介類、カゼイン、
ホエー蛋白質、大豆蛋白質、ゼラチン及び血液蛋白質そ
の他任意の蛋白質を挙げることができる。殊に市場で容
易に入手でき且つ比較的安価に流通している大豆蛋白質
の酵素による部分加水分解物(以下、大豆ペプチドと称
することがある)及びカゼイン分解物を好ましく挙げる
ことができる。 【0017】また、本発明において利用するイカ肝臓由
来の酸性カルボキシペプチダーゼとしては、例えば、ア
カイカ、スルメイカ、アオリイカ、ヤリイカ、ケンサキ
イカ、コウイカ、ヒナイカ、ミミイカ、ホタルイカ、ド
スイカ、ダイオウイカ、ソデイカ等の各種のイカ類の肝
臓から分離採取される酸性カルボキシペプチダーゼを挙
げることができる。 【0018】その使用形態としては、例えば、生鮮イ
カ、冷凍イカ又は塩蔵したイカの肝臓を分別し、これを
磨砕処理した後、磨砕物1重量部に対して約1〜約10
重量部の水もしくはpH約2〜pH約5の緩衝液をを加
えて撹拌抽出し、得られる抽出水層部を遠心分離し、脂
肪を分離除去し、更にこの水層部をケイソウ土、セルロ
ースなどの助剤を用いて濾過し、清澄化して得られる粗
酵素液を得る方法を例示することができる。得られる粗
酵素液は、凍結濃縮、減圧濃縮、限外濾過などの適宜な
濃縮手段を用いて該酵素の活性低下をきたさない温度、
例えば、約50℃以下の温度で濃縮することにより粗酵
素濃縮物とすることもできる。 【0019】更に酵素の安定な形態として、該濃縮物を
直接あるいはデキストリン類、糖、塩などを適宜添加し
て真空乾燥、凍結乾燥等によって乾燥し粉末化したもの
を挙げることができる。また、上記濃縮物を、例えば、
アセトン沈殿法あるいはアルコール沈殿法によって粗酵
素を分離後、乾燥したものも挙げることができる。 【0020】更に、別の形態としては、イカの肝臓を軟
化させた後、遠心分離などによって脂肪を分離するかも
しくはせずして、例えばイカ肝臓の2〜5倍重量のアセ
トンなどを用いて1〜5回程度繰り返し抽出脱脂した
後、前記の如き乾燥手段によって得られる粗酵素粉末を
挙げることができる。 【0021】一方、上記した如くして得られる粗酵素液
または粗酵素濃縮液は、通常酵素の精製手段として用い
られる各種精製法により、さらに精製度を上げるかまた
は単離し使用することができる。例えば、イオン交換ク
ロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、等電点ク
ロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィ
ー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの手段を用いて精
製し、溶液の形あるいは乾燥しそのままあるいは安定化
のためにデキストリン類、糖、塩などの成分を添加して
粉末等の形で使用することができる。 【0022】本発明で利用することのできるイカ肝臓由
来の酸性カルボキシペプチダーゼは、精製した酵素の作
用至適pHが3〜6の酸性側にあり、ペプチドのカルボ
キシ末端から逐次アミノ酸を遊離する。また、安定pH
範囲はpH約2〜pH約6の範囲であり、作用温度は約
30〜約50℃である。精製酵素の分子量はディスク電
気泳動の結果、約42000と推定された。さらに、種
々の合成基質に作用させて基質特異性を調べたところ、
カルボキシ末端のアミノ酸の種類に関わりなくアミノ酸
(プロリンを含む)を遊離した。特に、ロイシン、グリ
シン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、グルタ
ミン酸が結合する場合にはこれをよく遊離した。苦味ペ
プチドはカルボキシ末端が疎水性のアミノ酸であること
が多く、これにカルボキシペプチダーゼが作用すると苦
味が低減されるか消失することが知られているが、本発
明で利用することのできる新規カルボキシペプチダーゼ
は、その作用が非常に強いことが実験により確かめられ
た。 【0023】さらに本発明で利用することのできるイカ
肝臓カルボキシペプチダーゼ以外のエキソペプチダーゼ
としては、動物由来、植物由来、微生物由来のいずれの
ものでも利用することができる。かかるカルボキシペプ
チダーゼとして、例えば植物起源のカルボキシペプチダ
ーゼとしては、柑橘類の果皮[Nature(LONDON),201,613
(1964)]、柑橘類の葉[Hoppe-Seylers Z.Physiol.Che
m., 352,1524(1971)]、インゲンマメの葉の酵素[J.Bio
l.Chem., 247,5573(1972)]、発芽大麦の酵素[Eu.J.Bio
chem.,7,193(1969)]、発芽小麦の酵素[Plant Physio
l., 58,516(1976)]、発芽綿実の酵素[J.Biol.Chem.,24
7,5034,5041(1972)]、トマトの酵素[Agric.Biol.Che
m.,38,1901(1974)]、スイカの酵素[同 38,1891,(197
4)]、小麦及び/又は小麦ふすまから得られるカルボキ
シペプチダーゼ(特公昭57-53073号公報)及びブロメラ
イン粉末中の酵素[J. Biochem.75,881(1974)]等が知ら
れており、その作用至適pHはpH5〜pH6の弱酸性
にある。 【0024】また、微生物起源のエキソペプチダーゼと
して、例えば、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus
saitoi)の酵素[Biochim. Biophs. Acta 258,274(197
2)]、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryza
e)の酵素[ Agric. Biol. Chem.36,1343,1474,1481(187
2),同 37,1237,(1973)、特開昭47-29577号公報]、アス
ペルギルス属(Aspergillus)の酵素(特開昭47-25382号
公報,特開昭51-95182号公報、特開昭48-82068号公
報)、ペニシリウム属(Penicillium)の酵素(特開昭48
-35084号公報、特公昭 49-13987号公報)、モナスカス属
(Monascus)の酸性カルボキシペプチダーゼ(特開昭 62-
158482号公報)等の既知の酵素を挙げることができる。 【0025】更に動物起源の酸性カルボキシペプチダー
ゼとして、牛膵臓[Method in Enzymology,19,475(193
7)]、豚膵臓[同19,504(1970)]などから得られる酵素を
挙げることができる。 【0026】本発明においては、イカ肝臓より得られる
酸性カルボキシペプチダーゼ(A)と上記の如き動植物
又は微生物起源の1種又はそれ以上のエキソペプチダー
ゼ(B)とを併用して、苦味を有するペプチドを処理す
る場合には、酵素(A)と(B)の混合割合は、処理を
行うペプチドの種類にもよるが、重量比で例えば、
(A):(B)=1:約0.1〜1:約10、好ましく
は1:約0.1〜1:約2とすることができる。 【0027】次に、蛋白質材料の加水分解により得られ
る分解物から苦味を除去する具体的態様を説明する。ま
ず蛋白分解物を軟水に溶解し、約5〜約30重量%溶液
を調製し、次いで約20℃〜約50℃に加熱して溶解
後、例えば、塩酸、クエン酸、酢酸、乳酸などのごとき
無機酸または有機酸、あるいは水酸化カリウム、水酸化
ナトリウム、水酸化カルシウム等のごときアルカリを用
いて上記混合物のpHを、例えばpH約2〜pH約8、
好ましくはpH約4〜pH約6に調整し、イカ肝臓カル
ボキシペプチダーゼ単独、またはこれとその他の既知の
カルボキシペプチダーゼ混合物を蛋白分解物に対して、
例えば、約0.01〜約1重量%、好ましくは約0.0
5〜約0.5重量%添加し、均一に混合後、静置もしく
は撹拌条件下に、例えば、約15〜約45℃の範囲内の
温度、好ましくは約30〜約40℃で約1〜約24時
間、好ましくは約2〜約5時間酵素処理を行う。 【0028】酵素処理を終了した処理物は、約70〜約
90℃で約10〜約30分間加熱処理して酵素を失活さ
せ、所望により、珪藻土その他の濾過助剤を用いて濾過
し、不溶性固形物を除去する。酵素処理を終了したペプ
チドは、苦味がほぼ完全に除去されており、そのまま各
種飲食品に好適に配合することができるが、一般的には
醗酵臭、加熱臭、褐変物質の除去及び二次沈殿の防止を
目的として吸着剤による脱色、脱臭処理を行うことが好
ましい。 【0029】使用し得る吸着剤としては、通常は固体吸
着剤が用いられ、例えば、活性炭、アルミナ、シリカゲ
ル、モンモリロナイト、活性白土、酸性白土等の吸着剤
等を挙げることができる。これらの吸着剤の使用量は適
宜選択することができるが、例えば、ペプチドの重量に
対して約1〜約20%の範囲がしばしば採用される。 【0030】また、上記吸着剤処理は酸性条件下に行う
ことが望ましい。具体的には、クエン酸、リンゴ酸、乳
酸及び酒石酸などの有機酸又は塩酸、燐酸などの無機酸
を用いて、例えば、pH約2〜約6程度、好ましくはp
H約3〜pH約5程度の範囲に調整して吸着剤処理す
る。かかる処理の方法としては、例えば、pH調整した
ペプチドの酵素処理液に吸着剤を添加して撹拌又は静置
条件下に、約20〜約60℃程度の温度範囲で、約30
分〜約3時間程度処理するのがよい。また、上記態様に
変えて、前記した如き吸着剤をカラムに充填し、そこへ
ペプチドの酵素処理液を流して処理することもできる。
その際の温度及び接触時間などは前記のごとき条件とほ
ぼ同じでよい。 【0031】このようにして得られるペプチドの酵素処
理液は、最後に珪藻土、粉末セルロース等の濾過助剤を
用いて濾過することにより、澄明な水溶液として得るこ
とができる。更に所望により、保存性を高める目的で、
例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機
酸;塩酸、燐酸などの無機酸を添加して、pH約3〜約
5程度の酸性にすることができる。かくして得られるペ
プチドは、苦味がなくまたアミノ酸に由来する旨味など
の異味異臭がない極めてフラットな呈味を示し、あらゆ
る飲食品に好適に配合することができる。 【0032】本発明により得られるペプチドは、前記の
ごとき酵素処理液として得られるが、その使用目的に応
じて種々の形態にすることができ、例えば、減圧濃縮す
ることによりペプチド濃縮液とするか或いは更に真空乾
燥、凍結乾燥、噴霧乾燥など既知の乾燥手段により乾燥
粉末とすることができる。またその際に、例えば、澱粉
類、デキストリン、糖類等のキャリヤーを加えることも
でき、キャリヤーの添加量もペプチドの使用目的によっ
て任意に選択することができる。 【0033】また本発明によって得られるペプチドに
は、所望により他の添加物を配合することもできる。そ
のような添加物しとては、例えば、着香料、着色料、保
存料、呈味料、天然果汁、醗酵乳、乳原料等を挙げるこ
とができる。 【0034】以下、参考例、実施例により本発明の数態
様について更に具体的に説明する。 【0035】 【実施例】 実施例1 アカイカの肝臓2Kgに水14Kgを加え、かき混ぜて
均一にした後1N−塩酸を用いてpH4.0に調整し、
そのまま2時間静置した。上層部の油層を分離後得られ
た水層を珪藻土を用いてろ過し、ろ液10Kgを得た。
次いでろ液を減圧条件下に濃縮し、濃縮液1Kgを得
た。この濃縮液をpH4.0においてカルボベンゾキシ
−フェニルアラニル−ロイシンを基質としてカルボキシ
ペプチダーゼ活性を測定したところ、141nKat
(ナノ・カタール)/gであった[以下、カルボキシペ
プチダーゼ(1)という]。 【0036】実施例2 実施例1で得られたカルボキシペプチダーゼ(1)1K
gに硫酸アンモニウム353gを加えて溶解し、4℃で
15時間静置した後、遠心分離により不溶物を除き分離
液1316gを得た。この分離液に更に硫酸アンモニウ
ム318gを加えて溶解させ、40℃で15時間静置
し、生成した塩析物36gを得た。この塩析物をpH
4.0の0.01M酒石酸緩衝液70gに溶解し、透析
チューブ(ユニオンカーバイド製)を用いて、同じ酒石
酸緩衝液を外液として透析脱塩し、酵素液126gを得
た。この酵素液のカルボキシペプチダーゼ活性は188
nKat/gであった。 【0037】この酵素液5gをあらかじめpH5.0の
0.01M酢酸緩衝液で平衡化したφ3.2cm×23cm
のカルボキシメチルセルロースカラムに通し、同じ緩衝
液で塩化ナトリウム濃度が0〜1.5Mまでのグラジエ
ントを行い、カルボキシペプチダーゼ活性画分10gを
得た。この分画物のカルボキシペプチダーゼ活性は50
nKat/gであった[以下、カルボキシペプチダーゼ
(2)という]。 【0038】実施例3 pH8.0の0.1Mトリス−塩酸緩衝液に溶解した3
%カゼイン溶液(Hammersten Casein; Merck社製)1k
gに100mgのトリプシンを加え、37℃、6時間反
応を行う。反応後、95℃、15分間の加熱により酵素
を失活させ、沈殿物を濾別した。濾液は強い苦みを呈し
ており、凍結乾燥により粉末とした。この粉末を0.1
Mトリス−塩酸緩衝液(pH5)を用い10%水溶液と
した(以下、カゼイン−トリプシン処理液と呼ぶ)。 【0039】比較例1 実施例3で得られたカゼイン−トリプシン処理液100
0gにクエン酸(結晶)18.0gを添加してpH4.
4に調整後、市販の小麦由来のカルボキシペプチダーゼ
W(ぺんてる製:酵素活性50nKat/g)1gを水
道水10gに溶解して加え、40℃で5時間撹拌し脱苦
味処理した。得られた処理物を85℃,15分間加熱し
て酵素を失活させカゼイン酵素処理液1を得た。 【0040】比較例2 比較例1においてカルボキシペプチダーゼW1gの代わ
りに、カルボキシペプチダーゼY(シグマ製:酵素活性
1700nKat/g)の3%溶液(W/W液)1gを
使うほかは同様の処理を行い、カゼイン酵素処理液2を
得た。 【0041】実施例4 比較例1においてカルボキシペプチダーゼW1gの代わ
りに、実施例1で得られたイカ肝臓カルボキシペプチダ
ーゼ(1)0.35gを使うほかは同様の処理を行い、
カゼイン酵素処理液3を得た。 【0042】実施例5 比較例1においてカルボキシペプチダーゼW1gの代わ
りに、実施例2で得られたイカ肝臓カルボキシペプチダ
ーゼ(2)1gを使うほかは同様の処理を行い、カゼイ
ン酵素処理液4を得た。 【0043】実施例6 比較例1においてカルボキシペプチダーゼW1gの代わ
りに、市販の小麦由来のカルボキシペプチダーゼW0.
5gと実施例1で得られたイカ肝臓カルボキシペプチダ
ーゼ(1)175mgを使うほかは同様の処理を行い、
カゼイン酵素処理液5を得た。 【0044】実施例7 比較例1においてカルボキシペプチダーゼW1gの代わ
りに、カルボキシペプチダーゼYの3%溶液(W/W
液)0.5gと実施例1で得られたイカ肝臓カルボキシ
ペプチダーゼ(1)175mgを使うほかは同様の処理
を行い、カゼイン酵素処理液6を得た。 【0045】比較例3 比較例1においてカルボキシペプチダーゼW1gの代わ
りに、カルボキシペプチダーゼW0.5gおよびカルボ
キシペプチダーゼYの3%溶液(W/W液)0.5gを
使うほかは同様の処理を行い、カゼイン酵素処理液7を
得た。 【0046】カゼイン処理液の官能評価 比較例1〜3及び実施例4〜7で得られたカゼイン酵素
処理液について、よく訓練された15名のパネルにより
官能評価を行った。その結果を表1に示す。なお対照と
しては実施例3で得られたカゼイン−トリプシン処理液
100gに水道水10gを添加したものをpH4.4に
調整後、酵素無添加で40℃において5時間インキュベ
ートした液を用いた。 【0047】 【表1】 *苦味度の説明 +++++:脱苦味前の苦味が極めて強いことを示す。 ++++ :苦味がかなり強い。 +++ :苦味がやや強い。 ++ :苦味が感じられる。 + :苦味がわずかに感じられる。 − :苦味なし。 【0048】表1の結果から明らかな如く、従来の市販
カルボキシペプチダーゼによって脱苦味処理を行った比
較例1及び比較例2のカゼイン処理液は、強い苦味が感
じられた。また、カルボキシペプチダーゼWとカルボキ
シペプチダーゼYを併用した比較例3も同様に強い苦味
が感じられた。これに対して、イカ肝臓カルボキシペプ
チダーゼによって処理した実施例4および実施例5のカ
ゼイン処理液は、ほとんど苦味が感じない程度にまで脱
苦味されており、更にイカ肝臓カルボキシペプチダーゼ
と市販のカルボキシペプチダーゼを併用した実施例6及
び実施例7のカゼイン処理液は、わずかに苦味を感じる
程度まで苦味が低減されていた。 【0049】実施例8 市販大豆たんぱく1200gを水道水4800gに少量
ずつ加えてかき混ぜ、40〜50℃に加温して溶解し
た。次いで85℃で15分間加熱殺菌し50℃まで冷却
後、アクチナーゼAS(科研製薬製)12gを水道水6
0gに溶解して加え、50℃に保持したまま10時間か
き混ぜて酵素分解を行った。酵素分解終了後、85℃で
15分間加熱し酵素を失活させ、ろ紙ろ過を行って52
00gの大豆たんぱく加水分解物(以下、粗製大豆ペプ
チド液と称する)を得た。この粗製大豆ペプチド液は非
常に強い苦味を有していた。 【0050】比較例4 実施例8で得られた粗製大豆ペプチド液1000gにク
エン酸(結晶)17.5gを添加してpH4.4に調整
後、カルボキシペプチダーゼW1gを水道水20gに溶
解して加え、40℃で5時間かき混ぜ処理した。得られ
た処理物を75℃,15分間加熱して酵素を失活させ大
豆ペプチド液1を得た。 【0051】比較例5 比較例4においてカルボキシペプチダーゼW1gの代わ
りに、カルボキシペプチダーゼYの3%溶液(W/W
液)1gを使うほかは同様の処理を行い、大豆ペプチド
液2を得た。 【0052】実施例9 比較例4においてカルボキシペプチダーゼW1gの代わ
りに、実施例2で得られたイカ肝臓カルボキシペプチダ
ーゼ(2)1gを使うほかは同様の処理を行い、大豆ペ
プチド液3を得た。 【0053】実施例10 比較例4においてカルボキシペプチダーゼW1gの代わ
りに、市販の小麦由来のカルボキシペプチダーゼW0.
5gと実施例2で得られたイカ肝臓カルボキシペプチダ
ーゼ(2)0.5gを使うほかは同様の処理を行い、大
豆ペプチド液4を得た。 【0054】実施例11 比較例4においてカルボキシペプチダーゼW1gの代わ
りに、カルボキシペプチダーゼYの3%溶液(W/W
液)0.5gと実施例2で得られたイカ肝臓カルボキシ
ペプチダーゼ(2)0.5gを使うほかは同様の処理を
行い、大豆ペプチド液5を得た。 【0055】比較例6 比較例4においてカルボキシペプチダーゼW1gの代わ
りに、カルボキシペプチダーゼW0.5gとカルボキシ
ペプチダーゼYの3%溶液(W/W液)0.5gを使う
ほかは同様の処理を行い、大豆ペプチド液6を得た。 【0056】大豆ペプチド液の官能評価 比較例4〜6及び実施例8〜11で得られた大豆ペプチ
ド液について、よく訓練された15名のパネルにより官
能評価を行った。その結果を表1に示す。なお対照とし
ては実施例8で得られた粗製大豆ペプチド液1000g
に水道水20gを加えた液をpH4.4に調整後、酵素
無添加で40℃において5時間インキュベートした大豆
ペプチド液を用いた。 【0057】 【表2】 *苦味度の説明 +++++:脱苦味前の苦味が極めて強いことを示す。 ++++ :苦味がかなり強い。 +++ :苦味がやや強い。 ++ :苦味が感じられる。 + :苦味がわずかに感じられる。 − :苦味なし。 【0058】表2の結果から明らかな如く、従来の市販
カルボキシペプチダーゼによって脱苦味処理を行った比
較例4及び比較例5の大豆ペプチド液は、強い苦味が感
じられた。また、カルボキシペプチダーゼWとカルボキ
シペプチダーゼYを併用した比較例6も同様に強い苦味
が感じられた。これに対してイカ肝臓カルボキシペプチ
ダーゼによって処理した実施例9の大豆ペプチド液は苦
味は感じられなかった。また、イカ肝臓カルボキシペプ
チダーゼと市販のカルボキシペプチダーゼを併用した実
施例10及び実施例11の大豆ペプチド液は、わずかに
苦味を感じる程度であった。 【0059】 【発明の効果】本発明によって製造された蛋白質材料の
加水分解物は、ほとんど苦味を有せず、ほとんど無味、
無臭で且つ着色及び濁りもなく極めてフラットな風味を
有している。更に特筆すべき点は、飲料などに配合した
場合においても濁りの変化及び二次沈殿を生成すること
がなく、各種飲食品に栄養価の高い添加物として広く使
用できることである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23J 3/10 - 3/34 C12P 21/06

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 イカ肝臓より得られる酸性カルボキシペ
    プチダーゼとイカ肝臓以外の任意の動植物及び/又は微
    生物起源の1種以上のエキソペプチダーゼからなる混合
    ペプチダーゼを、蛋白加水分解物に作用させることを特
    徴とする蛋白質材料の加水分解物の呈味改善方法。
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