JP3403392B2 - 照明装置 - Google Patents

照明装置

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JP3403392B2
JP3403392B2 JP2001035125A JP2001035125A JP3403392B2 JP 3403392 B2 JP3403392 B2 JP 3403392B2 JP 2001035125 A JP2001035125 A JP 2001035125A JP 2001035125 A JP2001035125 A JP 2001035125A JP 3403392 B2 JP3403392 B2 JP 3403392B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、照明装置に関す
る。特に、放電ガスが封入されたバルブ内部に誘導コイ
ルを用いて電磁界を発生させる放電ランプにおいて用い
られる誘導コイル用コアを用いた照明装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図7は、誘導コイルを用いてプラズマ放
電を発生する照明装置の断面構成を模式的に示してい
る。図示した照明装置は、内部に不活性ガスや金属蒸気
などの放電ガスが封入された透光性のバルブ101と、
バルブ101の中央部に設けられた凹部(キャビティ)
108内に配置された誘導コイル102とを有してい
る。誘導コイル102は、コア(磁性材料)102a
と、コア102aに巻回された巻線102bとから構成
されている。誘導コイル102は、高周波電力を供給す
る高周波電源回路103に電気的に接続されており、誘
導コイル102と高周波電源回路103との間には、両
者のインピーダンスを整合してバルブ101に効率良く
高周波電力を伝達するための整合回路104が設けられ
ている。高周波電源回路103および整合回路104
は、回路ケース105内に収納されている。
【0003】高周波電源回路103から誘導コイル10
2に数MHzから数百MHzの高周波電流を流すと、バ
ルブ101内部にリング状のプラズマ放電106が発生
する。プラズマ放電106が発生すると、紫外線または
可視光が生じ、それによって光出力が得られる。なお、
実用的には、高周波電源回路103の発振周波数は一般
にISM帯の13.56MHzまたは数MHzが用いら
れている。
【0004】このような照明装置に好適なコア102a
として、特開平7−99042号公報に開示された誘導
コイル用コアがある。この公報によると、室温、周波数
3MHz、磁束密度10mTでの測定で、損失が150
mW/cm3以下であるコア102aが示されており、
この条件を満たす材料としてNi−Zn系のフェライト
材料が好適であることが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】Ni−Zn系フェライ
ト材料からなるコア102aを用いる場合、高周波電源
回路103の動作周波数を数MHz(または、数MHz
〜数十MHz)の高周波にすることが、Ni−Zn系フ
ェライト材料の物性の観点から好ましい。しかしなが
ら、このような高周波で動作させる場合には、高周波電
源回路103から発生するラインノイズを抑制するため
のノイズフィルタが大型となり、高周波電源回路103
の体積が非常に大きくなるという問題が生じる。すなわ
ち、Ni−Zn系フェライト材料からなるコア102a
を用いた照明装置の場合、別途大型のノイズフィルタを
設ける必要があるために、照明装置の小型化が困難であ
るという問題が生じる。
【0006】また、装置から放射または伝播されるノイ
ズが高周波ノイズの場合、高周波ノイズには非常に厳し
い規制が法令にて設けられているため、その規制をクリ
アーするには、高価なノイズフィルターを照明装置に使
用する必要がある。このことは、照明装置のコストダウ
ンを図る上で大きな障害となる。
【0007】本発明はかかる諸点に鑑みてなされたもの
であり、その主な目的は、比較的低い周波数(50kH
z以上1MHz以下)の領域で動作可能な誘導コイル用
コアおよびそれを用いた照明装置を提供することにあ
る。また、本発明の他の目的は、そのような誘導コイル
用コアの構成材料となる多結晶フェライトを提供するこ
とにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明による照明装置
は、放電ガスが封入されたバルブと、前記バルブ内部に
周波数50kHz以上1MHz以下の電磁界を発生させ
る誘導コイルと、前記誘導コイルに電力を供給する電源
とを備え、前記誘導コイルは、コアおよび巻線を有し、
前記コアは、添加物としてNiを含むMn−Zn系の多
結晶フェライトから構成されており、かつ、270℃以
上のキュリー温度を有する。
【0009】ある実施形態において、前記キュリー温度
は、290℃以上である。
【0010】ある実施形態において、前記誘導コイル
は、常温、電磁界が100kHz、磁束の方向に垂直な
面の断面積が120mm2の条件下で、600アンペア
・ターン以上の起磁力を印加可能な特性を有する。
【0011】ある実施形態において、前記誘導コイル
は、前記バルブの外壁を凹状にすることによって前記バ
ルブの中心部分に形成された凹入部内に挿入されてお
り、前記バルブの内壁には、蛍光体が塗布されており、
前記放電ガスとして、少なくとも希ガスを含む。
【0012】ある実施形態において、前記照明装置は、
電球形蛍光ランプとして構成されている。
【0013】ある実施形態において、前記コアは、F
e、Mn、NiおよびZnを含み、酸素を除く元素のう
ち1wt%以上6wt%以下がNi元素である。
【0014】ある実施形態において、前記コアは、酸素
を除く元素のうち60wt%以上がFe元素である。
【0015】ある実施形態において、前記コアは、酸素
を除く元素のうち70wt%以上がFe元素である。
【0016】
【発明の実施の形態】まず、本発明の実施の形態を説明
する前に、フェライト材料の説明をする。フェライト材
料は、Mn−Zn系フェライトと、Ni−Zn系フェラ
イト材料とに大別することができる。図8に、10mT
におけるMn−Zn系フェライトとNi−Zn系フェラ
イトの単位体積当たりの損失(Pcv)の周波数特性を
示し、図9に、Mn−Zn系フェライトとNi−Zn系
フェライトの初期透磁率の周波数特性を示す。
【0017】図8に示すように、Mn−Zn系フェライ
ト、Ni−Zn系フェライト材料の両者とも、周波数が
低くなるほど損失が小さくなり、そして、1MHz以下
の周波数の領域では、Mn−Zn系フェライトの方が低
損失であることがわかる。また、図9に示すように、M
n−Zn系フェライトには、周波数が1MHzを超える
高周波領域において透磁率の特性が悪くなる領域が存在
するため、1MHzを超える高周波領域では、一般に、
Ni−Zn系フェライトを用いることが好ましい。しか
し、周波数が1MHz以下の領域では、Ni−Zn系フ
ェライトよりも、Mn−Zn系フェライトの方が低損失
でかつ初期透磁率が高く、加えて、初期透磁率の特性が
安定している範囲が広いことから、一般に、Ni−Zn
系フェライトよりも、Mn−Zn系フェライトを用いる
ことが好ましい。
【0018】しかしながら、周波数が1MHz以下の比
較的低い周波数の領域において、図7に示した誘導コイ
ル用コア102aとしてMn−Zn系フェライトを使用
することは、次に述べる問題から行うことができなかっ
た。それは、Mn−Zn系フェライトの温度がキュリー
温度を超えてしまうという問題である。以下、この問題
について説明する。
【0019】図7に示した照明装置の構成において、放
電プラズマ106を発生・維持するために必要な誘導コ
イル102の磁束(すなわち、コア102aを通る磁
束)は、高周波電源回路103の動作周波数が低いほど
高くなり、この磁束は、周波数にほぼ反比例する。これ
は、プラズマ電圧が磁束密度と周波数の積に比例するこ
とに起因している。
【0020】従って、数MHzで動作する場合には数m
T程度の少ない磁束で放電を開始できるが、1MHz以
下になると非常に大きな磁束が必要となってしまう。す
ると、誘導コイル用コア102aの鉄損が極めて大きく
なってしまい、コア102aの温度が上昇し、その結
果、磁性を示す温度の限界であるキュリー温度を超えて
しまい、結果的に放電を維持することができなくなる。
【0021】従来において研究・開発されていたMn−
Zn系フェライトのキュリー温度は、キュリー温度が高
いものでも、200℃前後である。その理由は、Mn−
Zn系フェライトをチョークコイルやトランス用のコア
等の通常の用途に使用する場合、フェライトの温度は動
作時においてせいぜい100℃程度にしかならないた
め、通常の用途においてMn−Zn系フェライトのキュ
リー温度は200℃程度もあれば充分だからである。一
方、通常の用途と異なり、図7に示した照明装置の構成
において、1MHz以下の比較的低い周波数で動作させ
ると、フェライトの温度は、例えば250℃を超えるよ
うな温度となってしまう。すなわち、この場合、フェラ
イトの温度がキュリー温度を超え、その結果、放電を維
持することができなくなる。しかし、従来において、キ
ュリー温度が例えば250℃を超えるようなMn−Zn
系フェライトは、そのような需要がなかったことに起因
して、開発されなかったのが実情である。
【0022】本願発明者は、高周波での動作により生じ
る問題を回避すべく、1MHz以下の比較的低い周波数
(例えば、50kHz〜1MHz)で動作させることを
目的として、キュリー温度が270℃以上のMn−Zn
系の多結晶フェライトの開発に挑み、キュリー温度27
0℃以上を示すMn−Zn系の多結晶フェライトを完成
させた。本発明によると、1MHz以下の比較的低い周
波数での動作が可能となるため、高周波動作によって生
じる問題を解消することができる。つまり、高周波電源
回路103を構成する部材として、一般電子機器用の電
子部品として使用されている安価な汎用品を使用するこ
とができるとともに、寸法の小さい部材を使用すること
が可能となるため、照明装置のコストダウンおよび小型
化を図ることもできる。
【0023】以下、図面を参照しながら、本発明による
実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態
に限定されない。
【0024】まず、図1を参照する。図1は、本実施形
態にかかる照明装置の断面構成を模式的に示している。
図1に示した照明装置は、電極を有していないランプで
あり、いわゆる無電極放電ランプである。
【0025】本実施形態の照明装置は、バルブ1と、バ
ルブ1内部に電磁界を発生させる誘導コイル2と、誘導
コイル2に電力を供給する電源3とを有している。バル
ブ1の内部には、不活性ガスや金属蒸気などの放電ガス
が封入されており、誘導コイル2によって例えば周波数
50kHz以上1MHz以下の電磁界が発生することに
なる。本実施形態における電源3は、高周波電源回路3
からなり、口金7を介して電力ラインに接続されてい
る。電力ラインから供給された電力は、高周波電源回路
3内部のスイッチング素子をスイッチングすることによ
って、例えば周波数50kHz以上1MHz以下の電力
に変換されることになる。
【0026】高周波電源回路3は、整合回路4を介し
て、誘導コイル2に電気的に接続されている。整合回路
4は、高周波電源回路3と誘導コイル2とのインピーダ
ンスを整合させて、高周波電源回路3から出力された電
力を誘導コイル2に効率良く供給する機能を有してい
る。誘導コイル2は、コア2aおよび巻線2bから構成
されており、高周波電源回路3から誘導コイル2に電力
が供給されると、バルブ1の内部には、誘導コイル2か
ら発生する電磁界によって電磁エネルギーが誘導され、
リング状の放電プラズマ6が発生する。放電プラズマ6
からは、紫外線または可視光が生じ、それによって光出
力を得ることができる。
【0027】本実施形態では、バルブ1の内壁に蛍光体
が塗布されており、それによって紫外光を可視光に変換
できるような構成にしている。ただし、そのような構成
に限定されず、用途によっては、バルブ1の内壁に蛍光
体を設けなくてもよい。
【0028】また、バルブ1は、ほぼバルブ1の中心軸
に沿って空隙部(以下、「キャビティ」と呼ぶ)8を有
しており、そのキャビティ8内に誘導コイル2は配置さ
れている。言い換えると、誘導コイル2は、バルブ1の
外壁を凹状にすることによってバルブの中心部分に形成
された凹入部8内に挿入されて、バルブ1の近傍に配置
されている。誘導コイル2に電気的に接続されている高
周波電源回路3および整合回路4は、回路ケース5内に
収納されている。本実施形態において、照明装置は、キ
ャビティ8に誘導コイル2が挿入されたバルブ1と、回
路ケース5と、口金7とが一体となった電球形蛍光ラン
プとして構成されている。
【0029】本実施形態の誘導コイル用コア2aは、M
n−Zn系の多結晶フェライトから構成されており、か
つ、コア2aを構成するMn−Zn系の多結晶フェライ
トは、270℃以上のキュリー温度を有している。つま
り、コア2aを構成する磁性材料として、キュリー温度
が270℃以上を示すMn−Zn系フェライトを用いて
いる。本明細書において、「Mn−Zn系フェライト」
とは、酸素元素を除く主要な組成成分としてFe、Mn
およびZnを含み、Fe、MnおよびZnのそれぞれの
酸化物を合成・焼結したものであり、さらに酸素元素を
除いて上記3元素が例えば90wt%以上を占めるもの
と定義・理解される。Mn−Zn系フェライトを構成す
るための主要な酸化物(主要原料酸化物)は、例えば、
Fe23、MnO、ZnOであり、本明細書において
は、その組成は、化学量論的なものだけでなく、非化学
量論的なものも含むものとする。また、上記の酸化物の
他に微量の添加物を含んでいても良い。
【0030】Mn−Zn系フェライトを用いる理由は、
50kHz以上1MHz以下の周波数帯において、Ni
−Zn系フェライトよりもMn−Zn系フェライトの方
が鉄損(損失)を小さくすることができるからである
(図8参照)。また、Mn−Zn系フェライトは、50
kHz以上1MHz以下の周波数帯において、Ni−Z
n系フェライトよりも、初期透磁率が高く、そして、初
期透磁率の特性が安定している範囲が広いことからであ
る(図9参照)。Mn−Zn系フェライトとして多結晶
のものを用いるのは、フェライト焼結体の粒界に高抵抗
層を作って、フェライト表面を流れる渦電流による損失
を低く抑えるためである。なお、単結晶フェライトを使
用することも可能であるが、その場合には、フェライト
の導電率が高いために表面に流れる渦電流が大きくな
り、その結果、渦電流損が増加してしまうことになるた
め好ましくない。
【0031】本実施形態のMn−Zn系フェライトは、
270℃以上という極めて高いキュリー温度を有してい
る。このような高いキュリー温度を有しているので、5
0kHz以上1MHz以下の周波数帯での動作によって
コア2aの温度が上昇しても、放電プラズマ6を維持す
ることが可能となる。本実施形態の照明装置を室温で点
灯させる場合は、キュリー温度270℃以上で充分であ
るが、照明装置周囲の温度が室温よりも高い場合を考慮
すると、キュリー温度が290℃以上であることが望ま
しい。キュリー温度とは、上述したように、ある物質が
磁性を示す限界の温度であり、この温度を超えると磁性
材料2aは磁性を失い、誘導コイルのインダクタンスが
大幅に低下して、バルブ1内部に発生する磁束が減少し
て、放電プラズマ6は消失してしまう。
【0032】本実施形態のMn−Zn系フェライトで
は、大きく分けて2つのコンセプトに基づいて、270
℃以上のキュリー温度を実現している。まず一つは、M
n−Zn系フェライト中の鉄の含有量を多くすることに
よるものである。例えば、Fe、MnおよびZnを含む
Mn−Zn系フェライト中、酸素を除く元素のうち例え
ば72wt%以上がFe元素である構成にすることよっ
て実現できる。もう一つは、Mn−Zn系フェライト中
にNi元素(NiO)を添加することによるものであ
る。例えば、Fe、MnおよびZnと、添加物としての
Niとを含む構成を有するMn−Zn系フェライトにす
ることによって実現できる。これらの構成によって、2
70℃以上のキュリー温度を実現できる理由は後述す
る。なお、これらの構成にさらに微量の添加物を含めて
も良い。
【0033】誘導コイル用コア2aを構成するMn−Z
n系フェライトのキュリー温度の上限値は、特に限定さ
れないが、実用上は、フェライト材料の温度よりもむし
ろ巻線2bの絶縁被覆の温度限界によってキュリー温度
の上限値を規定することができる。巻線2bの温度限界
は、動作中の温度に依存するので、温度が高くなるほど
巻線2bの寿命は短くなる。例えば、従来の電球形蛍光
灯と同じ6000時間の放電ランプを実現しようとする
と、最も耐熱性の高い耐熱階級H種の巻線の温度限界は
約280℃になる。したがって、高周波電源回路への入
力電圧が上昇した場合(過負荷状態になった場合)など
においても誘導コイル用コア2aが動作できれば放電プ
ラズマ6を維持できるので、設計マージン等を考慮して
も、Mn−Zn系フェライトのキュリー温度は、340
℃もあれば充分であるといえる。すなわち、Mn−Zn
系フェライトのキュリー温度は、例えば、270℃(好
ましくは290℃)以上で340℃以下であればよい。
【0034】誘導コイル2の巻線2bは、例えば銅から
構成されており、損失抑制のためにリッツ線を用いるこ
とが好ましい。リッツ線は、細かい細線をより合わせた
複合線であり、同じ太さの単線よりも表面積が広いこと
から、高周波における巻線2b間の表皮効果や近接効果
の影響による損失増加を最小限に抑えることができる。
巻線2bは、リッツ線に限らず単線であっても、本実施
形態の誘導コイル用コアの効果を得ることができる。つ
まり、巻線2bが単線であっても、50kHz以上1M
Hz以下の周波数帯で動作させて、放電プラズマ6を維
持することができるという効果を得ることができる。
【0035】図2は、本実施形態の誘導コイル用コア2
aを構成するMn−Zn系フェライトの透磁率μにおけ
る周波数特性を示している。なお、横軸の周波数[kH
z]は、対数目盛で示している。
【0036】図2からわかるように、周波数が1MHz
を超えるとMn−Zn系フェライトの透磁率は急激に低
下する。これは、Mn−Zn系フェライトの物性に起因
している。従って、1MHzを超える高周波領域で本実
施形態の誘導コイル用コア2aを用いると、バルブ1内
部に発生することが可能な電磁界が極端に弱くなる。こ
のため、プラズマ放電6の発生・維持を良好に達成する
ためには、コア2aに供給する電力の周波数を1MHz
以下にすることが好ましい。また、周波数が50kHz
未満になると誘導コイル2における損失が非常に大きく
なる。このため、放電の発生を容易にする観点から、コ
ア2aに供給する電力の周波数は50kHz以上にする
ことが好ましい。したがって、本実施形態の誘導コイル
用コア2aは、50kHz以上1MHz以下の周波数で
用いるのが好適である。また、高周波電源回路3の動作
周波数を下げると、高周波電源回路3のスイッチング素
子におけるスイッチング損失を減少させて、高周波電源
回路3の電力変換効率を高くすることができるため、周
波数は、例えば500kHz以下にすることがより好ま
しい。
【0037】なお、本実施形態の照明装置においては、
コア2aを冷却するための放熱部材を用いていない。一
方、図7に示した従来の照明装置では、コア102aを
冷却するための放熱部材を用いなければ、コア102a
の温度がキュリー温度を超えてしまうことが多いため、
放熱部材を設けることがほぼ必須である。本実施形態で
は、キュリー温度が270℃以上のフェライト材料から
なるコア2aを用いているため、コア2aを冷却するた
めの放熱部材を用いなくとも、照明装置を動作させるこ
とができる。また、従来の構成においては、放熱性を高
めるために、回路ケース105は金属製にされていた
が、本実施形態の構成では、金属製のみならず、他の材
料から構成した回路ケース5を使用することも可能であ
る。なお、本実施形態において、誘導コイル用コア2a
の温度をさらに下げるために放熱部材を接続した構造を
適用しても勿論よく、金属製の回路ケース5を用いるこ
とも好適である。
【0038】次に、本実施形態におけるMn−Zn系フ
ェライト材料の合成方法を説明する。まず、Mn−Zn
系フェライト材料の主原料となるFe2CO3、MnCO
3、ZnOを所定の割合で混合してか焼する。フェライ
ト材料の特性は微量の添加物によって大きく左右される
ことから、上記原料は、純度99.9%以上の高純度で
あることが特に好ましい。また、原料の反応性を高める
ために、原料の平均粒子径が1μm以下の微粉末を用い
ることが望ましい。さらに、原料の反応性を高めるため
のフラックスとして、微量のV25、Bi23、B
25、BaCl2などを混合する場合がある。
【0039】なお、微量元素としてSiO2やCaOな
どを上記原料に加える場合がある。その目的は、フェラ
イト焼結体の粒界にSiを含む高抵抗層を作ることによ
って渦電流を抑えて、高周波損失を抑制するためであ
る。合成後のフェライト材料にこれらの元素が不純物と
して含まれることがあるが、これらの組成割合は通常2
%以下であり、主原料と比べると微量といえるものであ
る。
【0040】次に、か焼した材料は、粉砕、造粒工程を
経た後、円筒形状の型に入れて、圧力を加えながら焼結
させる。最後に、必要に応じて表面を研磨して、本実施
形態の円筒形状のMn−Zn系フェライト(誘導コイル
用コア2a)が得られる。
【0041】本願発明者は、270℃以上のキュリー温
度を有するMn−Zn系フェライトを実現する上で、主
成分の一つである鉄(酸化鉄)の割合を増やすという手
法を行った。これは、本願発明者による次の考えに基づ
くものである。すなわち、酸化鉄のキュリー温度は、一
般的なMn−Zn系フェライトのキュリー温度よりもず
っと高く、そして、Mn−Zn系フェライトのキュリー
温度は、主成分の混合割合や微量添加物によって変化し
得るので、主成分である鉄(酸化鉄)の割合を増やすこ
とによって、Mn−Zn系フェライトの性質を酸化鉄の
性質へ近づけることができ、その結果、キュリー温度を
若干上昇させることが可能ではないかという考えであ
る。この考えにしたがい、本願発明者は、Mn−Zn系
フェライトを構成するためのFe23、MnO、ZnO
のうち、MnOおよびZnOのそれぞれの混合割合を一
定とした上で、Fe23の混合量を増加させた場合にお
いてキュリー温度が上昇する傾向を導き出した。Fe2
3の混合量に対するキュリー温度の変化を図3に示
す。図3中の横軸は、Mn−Zn系フェライトの酸素を
除く元素のうちFe元素が占める重量割合を示してい
る。
【0042】図3からわかるように、Fe元素が占める
割合が多くなるほど、キュリー温度は上昇する傾向にあ
る。本願発明者は、酸素を除く元素のうちFeの組成割
合が例えば72wt%以上にすれば、微量の希土類元素
などを添加する方法等によってキュリー温度を270℃
以上にすることが充分可能であることを確認した。ま
た、本願発明者は、Feの組成割合が例えば84wt%
であれば、フェライトの原料としてFe23、MnO、
ZnOだけからなるMn−Zn系フェライトであって
も、キュリー温度がほぼ270℃を示すことも確認し
た。ただし、Fe元素が占める割合が0.8(80wt
%)を超えると、キュリー温度の上昇はほとんど飽和す
るため、キュリー温度の上昇の効果は少なくなる。逆
に、Fe元素が占める割合が多くなりすぎると、酸化鉄
の性質に近づきすぎて、透磁率が大幅に低下してしまう
ことになる。例えば、Fe元素が84wt%のとき、初
期透磁率は、Fe元素が70wt%のときと比較して、
3分の1まで低下してしまう。したがって、Mn−Zn
系フェライト中の酸素を除く元素のうちFe元素が占め
る重量割合は、72wt%以上84wt%以下であるこ
とが好ましい。
【0043】本願発明者はまた、270℃以上のキュリ
ー温度を有するMn−Zn系フェライトを実現する上
で、Ni元素を加えるという手法も行った。これは、本
願発明者による次の考えに基づくものである。
【0044】フェライトには、Mn−Zn系フェライト
の他に、Ni、Zn、Feを含むNi−Zn系フェライ
トが存在する。Ni−Zn系フェライトは、初期透磁率
が小さいものの、非常に高いキュリー温度を持つものを
合成することが可能である。そこで、本願発明者は、M
n−Zn系フェライトの組成にNi元素(NiO)を加
えることによって、Mn−Zn系フェライトの特性を若
干Ni−Zn系フェライトの性質に引っ張り、キュリー
温度を上昇させることができるのではという考えを思い
ついた。この考えに基づき、本願発明者は、Mn−Zn
系フェライトの主要原料としてのFe23、MnOおよ
びZnOに、添加物としてのNiOを追加することによ
って、270℃以上のキュリー温度を有するNi−Zn
系フェライトを実現した。
【0045】図4は、Ni元素の添加によるMn−Zn
系フェライトのキュリー温度の上昇効果を示している。
図4は、Mn−Zn系フェライトを構成するためのFe
23、MnOおよびZnOのそれぞれの混合量を一定と
した上で、NiOの混合量を変化させた場合のグラフで
あり、図4中の横軸は、Mn−Zn系フェライト中の酸
素を除く元素のうちNi元素が占める重量割合を示して
いる。
【0046】図4から、Ni元素の添加量を増やしてい
くと、キュリー温度が上昇していくことがわかる。ま
た、Ni元素の添加量が少ない領域ではキュリー温度の
上昇が顕著であり、Ni元素の添加量が多い領域ではキ
ュリー温度の上昇が少なくなることもわかる。Ni元素
を増やしすぎると、Ni−Zn系フェライトの特性に近
づきすぎて、50kHz以上1MHz以下の周波数帯に
おける鉄損が増加し、損失面で不利となる。例えば、N
i元素の添加量が6wt%を超えると、コアの損失特性
がNi−Znフェライトの特性に引っ張られすぎて、損
失が従来品(Ni添加量0wt%)の約2倍にまで上昇
した。このことから、Ni元素の添加量は所定の範囲に
制限しておくことが好ましく、実用的観点からは、例え
ば6wt%以下にしておくことが望ましい。したがっ
て、Ni元素の添加量は、例えば、1wt%以上6wt
%以下にしておくことが好ましく、一例を挙げるとする
と、4wt%程度にすることが好適である。
【0047】なお、この場合において、酸素を除く元素
のうちFe元素が占める重量割合は、例えば60wt%
程度以上、好ましくは70wt%程度またはそれ以上に
することができる。また、Ni元素が添加されたMn−
Zn系フェライトに対して、微量の希土類元素などの添
加などを行ってキュリー温度をさらに上げてもよいし、
Ni元素が添加されたMn−Zn系フェライトにおいて
Fe元素が占める割合を増加させて、キュリー温度をさ
らに上げるようにしてもよい。
【0048】上記の方法で合成した270℃以上のキュ
リー温度を有する誘導コイル用コア2aを、室温、周波
数100kHz、磁束150mT、コア2aの長さ方向
の軸に垂直な面の断面積が120mm2の条件において
測定すると、600アンペア・ターンの起磁力を印加す
ることが可能であることがわかった。ここで、600ア
ンペア・ターンの起磁力を印加可能であるとは、600
アンペア・ターンの起磁力を印加してもコア(磁性材
料)2aが飽和しないことを意味する。なお、このとき
コア2aの内部に発生する磁束の向きは、コア2aの長
さ方向の軸に平行な向きである。
【0049】図1に示した照明装置において、始動の際
にコア(磁性材料)2aが飽和してしまうと、誘導コイ
ル2のインダクタンスが低下し、その結果、始動に必要
な磁束を発生させることができなくなって、始動性が確
保できない。このため、コア2aは、飽和しにくいほど
好ましく、例えば、室温、周波数100kHz、磁束1
50mTにおいて、コア2aの長さ方向の軸に垂直な面
の断面積が120mm2のとき600アンペア・ターン
の起磁力を印加することが可能であることが望ましい。
【0050】なお、本実施形態におけるMn−Zn系フ
ェライト(Mn−Zn系多結晶フェライト)は、図1に
示した照明装置の誘導コイル用コア2aの用途以外の他
の用途にも勿論適用することができる。すなわち、本実
施形態のMn−Zn系フェライトは、各種コイルやトラ
ンス(通信用コイル・トランス、電源用トランスな
ど)、磁気ヘッド、偏向ヨークのようなソフトフェライ
トの用途に、キュリー温度が高いという温度安定性に優
れた点を活かして用いることができる。なお、270℃
以上のキュリー温度という特性を活かすという観点から
は、図1に示した照明装置の誘導コイル用コア2aとし
ての用途が特に適していると思われる。また、Mn−Z
n系フェライトには、フィラー等の他の物質を混合して
もよい。
【0051】次に、上述した本実施形態を以下の実施例
でさらに説明する。 (実施例) 図1に示した構成の照明装置において、高周波電源回路
3の周波数を100kHzとし、バルブ1の大きさを直
径60mm、高さ65mmとした。バルブ1の内部にア
ルゴンガス1.1Torr(約147Pa)と水銀(3
mg/cc)を封入し、バルブ1内壁には、蛍光体を塗
布した。キャビティ8は、直径20mm、高さ55mm
とした。なお、消費電力は25Wであった。
【0052】本実施例において、コア2aとして用いた
材料の主要な特性と寸法とを下記表1に示す。
【0053】
【表1】 表1に示した(a)〜(c)の3種類とも、Mn−Zn
系フェライトから構成されている。表1に示した(a)
〜(c)のうち、(a)および(b)は比較例であり、
(c)が実施例である。なお、比較例の(a)および
(b)とも、通常の用途では使用されないほどの極めて
キュリー温度が高い(200℃以上)ものである。ここ
で、Mn−Zn系フェライトとは、上述したように、酸
素元素を除いてFe、Mn、Znを主要な組成成分とし
て含み、Fe、Mn、Znのそれぞれの酸化物を合成・
焼結したものをいう。(a)〜(c)のいずれにおいて
も、フェライト表面を流れる渦電流による損失を低く抑
えるために、多結晶フェライトを用いている。誘導コイ
ル2の巻線2bは、(a)〜(c)のいずれもφ0.0
8mmの細線を60本束ねたリッツ線を用いた。巻数は
いずれも30ターンを2層巻き、合計60ターンとし
た。
【0054】これら(a)〜(c)のコア2aを用いて
照明装置を点灯させた。このときのコア2aの最高温部
の温度および点灯維持の結果を表2に示す。なお、表2
における(a)および(b)の最高温部の温度は、放電
プラズマ6が消失するまでに達した最高温度を示し、
(c)の最高温部の温度は、熱的安定状態までに達した
最高温度を示している。
【0055】
【表2】 コア2aの温度は、点灯時間とともに上昇して、キュリ
ー温度に達すると磁性を失い、放電プラズマ6が消失す
る。キュリー温度の低い(a)と(b)は、最高温度部
の温度が上昇している途中でキュリー温度に達したが、
キュリー温度の高い本実施例の(c)は、放電維持が可
能であった。表2に示したように、放電プラズマ6を維
持できた(c)の最高到達温度は、270℃に達した。
このことから、何らの放熱構造を有しない場合には、コ
ア2aのキュリー温度が少なくとも270℃以上必要で
あることがわかる。
【0056】また、本実施例で用いたコア2aにおける
透磁率の周波数特性は、図2に示したとおりであるの
で、周波数が1MHzを超えると、コア2aの透磁率は
急激に低下する。したがって、1MHz以上の高周波を
用いた場合、バルブ1内部に発生することが可能な磁界
は極端に弱くなるため、プラズマ放電の発生・維持が困
難となる。また、周波数が50kHz未満になると放電
を発生することが極めて難しくなるため、実用的ではな
い。それゆえ、誘導コイル用コア2aは、50kHz以
上1MHz以下の周波数で用いるのが好ましい。
【0057】以上のように、50kHz以上1MHz以
下の周波数で動作する照明装置において、コア2aとし
てキュリー温度270度以上の多結晶フェライトを用い
ることによって、放電プラズマ6の発生・維持をするこ
とが可能となる。
【0058】なお、本実施例では、高周波電源回路3の
動作周波数が100kHzの場合について説明したが、
50kHz以上1MHz以下の周波数であれば、いずれ
の周波数で装置を構成しても差し支えない。また、本実
施例では、電源ラインに電球口金7を係合する電球形タ
イプの照明装置について説明しているが、高周波電源回
路3の電源ラインへの接続方法によって、上述した効果
が左右されるものではない。また、本実施例では、バル
ブ1と回路ケース5とが接続された一体構成を採ってい
るが、一体構成に限定されず、両者を切り離しても、勿
論、上述した効果を得ることができる。さらに、本実施
例で用いたバルブ1の外径は直径60mmであったが、
バルブ1の外径を変化させてもコア2aの温度はあまり
変化しなかった。このことから、バルブ1の形状を変化
させた場合でも本発明の効果を得ることができる。
【0059】また、上記実施例の装置と同一の装置にお
いて、比較例として、Ni−Zn系フェライトから構成
したコア2aを用いて、放電プラズマの発生を試みた。
比較例(d)として使用したNi−Zn系フェライトの
コア2aについての主要な特性を下記表3に示す。な
お、参考のために、比較例(d)とともに、上記比較例
(a)のMn−Zn系フェライトのコア2aもあわせて
表3に示す。ここで、Ni−Zn系フェライトとは、酸
素元素を除いてFe、Ni、Znを主要な組成成分とし
て含み、Fe、Ni、Znのそれぞれの酸化物を合成・
焼結したものをいう。また、比較例(d)の巻線は、上
記実施例と同様に、φ0.08mmの細線を60本束ね
たリッツ線を用いた。巻数はいずれも30ターンを2層
巻き、合計60ターンとした。
【0060】
【表3】 実験の結果、比較例の(d)では、放電プラズマ6を発
生させることが出来なかったことがわかった。その理由
は、50kHz以上1MHz以下の周波数帯において、
コア(d)における損失(鉄損)が大きすぎて、放電に
必要な電力を放電プラズマ6に投入できなかったためで
あると考えられる。参考のため、コア(a)と(d)に
おける損失の周波数特性を図5に示す。なお、測定条件
は室温23℃、磁束密度150mTである。
【0061】図5からわかるように、比較例のコア
(d)は、500kHz以上の場合には飽和してしま
い、それゆえ、150mTの磁束を発生させることが不
可能であった。
【0062】ここで、コア2aの評価条件として150
mTを選択した理由を説明する。それは、3MHzのよ
うな高周波で動作する場合には数mT程度の少ない磁束
で放電を開始できるが、1MHz以下になると非常に大
きな磁束が必要となり、100kHzになると150m
T程度の磁束が必要となるからである。言い換えると、
プラズマ電圧が磁束密度と周波数の積に比例することに
起因して、放電プラズマ4を発生させるのに必要な磁束
は周波数にほぼ反比例するため、この評価条件では、磁
束150mTという大きな値の磁束が選択されている。
【0063】表3および図5の結果から、1MHz以下
の周波数においては、比較例(d)のNi−Zn系のコ
アは、本実施例の照明装置には使用できないことがわか
った。つまり、Mn−Zn系フェライトを用いることに
より、放電プラズマ6の発生・維持が可能となる。
【0064】次に、実施例で使用したコア2aの合成方
法を説明する。まず、Mn−Zn系のフェライト材料の
主成分であるFe2CO3、MnCO3、ZnO、SiO2
の粉末を天秤にて定量し、所定の割合で混合してか焼す
る。通常、上記原料は純度99.9%以上の高純度で、
平均粒子径が1μm以下の微粉末を用いる。なお、Si
2は微量添加物であり、フェライト焼結体の粒界にS
iを含む高抵抗層を作ることによって、高周波損失を抑
制する目的で加えられる。
【0065】か焼した材料は、粉砕、造粒工程を経た
後、円筒形状の型に入れて、圧力を加えながら焼結させ
る。この加圧焼結による製造方法は、通常、ホットプレ
スやHIP法と呼ばれ、広く用いられている手法であ
る。最後に、必要に応じて表面を研磨して、上記実施例
で用いた円筒形状のMn−Zn系フェライトを得た。こ
うして試作したフェライト材料は、いずれもスピネル型
の結晶構造を持つ多結晶フェライトである。
【0066】次に、Mn−Zn系フェライトのFe原子
の組成割合の効果と、Ni元素添加の効果とを例を挙げ
て説明する。上述した(a)、(b)および(c)の組
成を下記表4に示す。また、酸素を除く元素のうち72
wt%以上(例えば84wt%)がFe元素である
(e)の組成も表4に示してある。これらの組成は、焼
結後のサンプルを蛍光X線分析法によって求めた半定量
値であり、Mn−Zn系フェライト中の酸素を除いた各
元素の組成を重量パーセントで示したものである。な
お、サンプルのキュリー温度を測定したところ、
(a)、(b)、(c)および(e)のキュリー温度
は、それぞれ、217℃、252℃、301℃および2
68℃であった。
【0067】
【表4】 一般に、Mn−Zn系フェライト材料のキュリー温度
は、主成分の混合割合や微量添加物によって変化するこ
とが知られている。表4に示すとおり、(a)および
(e)は、Fe23、MnO、ZnOのみで合成したM
n−Zn系フェライトである。(a)と(e)とを比較
すると、Fe原子の組成割合を増加させることによっ
て、キュリー温度を高くすることが可能であることが理
解できる。これは、既に説明したが、酸化鉄のキュリー
温度が極めて高いため、酸化鉄含有率が上がるにつれて
Mn−Zn系フェライトの性質が酸化鉄の性質に徐々に
近づくことによるものと考えられる。さらに、(b)に
示すように、主成分であるFe、Mn、Zn以外の微量
添加物を加えることにより、キュリー温度をさらに高く
できることがわかる。
【0068】また、(c)に示すように、Ni元素を加
えるとキュリー温度がさらに向上させることができるこ
ともわかる。その理由は、上述したように、Mn−Zn
系フェライトの組成にNi元素(NiO)を加えること
によって、材料の特性を若干Ni−Zn系フェライトの
性質に引っ張り、Ni−Zn系フェライトの持つ高キュ
リー温度という特徴をMn−Zn系フェライトに持たせ
ることができたためと考えられる。
【0069】Niなどの微量添加物の組成割合を変えた
場合、Mn−Zn系フェライトのキュリー温度を効果的
に変化させることができる。しかし、キュリー温度を上
げるために、微量元素の含有率をあまりに高くしようと
すると、逆にMn−Zn系フェライト(コア2a)の初
期透磁率が大幅に低下してしまう。初期透磁率が大幅に
低下すると、バルブ1内部に発生する電磁界の大きさが
小さくなるために、結果的に放電プラズマ6を発生でき
なくなる恐れが強くなる。したがって、基本組成の時点
で、Fe元素の割合を少なくとも60wt%以上、好ま
しくは70wt%程度またはそれ以上にして、そのFe
元素増量効果によってある程度のキュリー温度を持つ磁
性材料の組成にしてから、微量添加物によってさらにキ
ュリー温度を上げる手法が好ましいと思われる。このよ
うにすれば、初期透磁率の低下を最小限に抑えながらキ
ュリー温度の高い材料を実現することが可能となる。
【0070】以上の説明したように、Mn−Zn系フェ
ライトにおいて、Fe元素を例えば60wt%以上、好
ましくは70wt%程度またはそれ以上にした構成に対
して、Ni元素を微量添加することによって、キュリー
温度270℃以上のフェライト材料を実現することが望
ましい。
【0071】また、本願発明者は、始動性確保のための
起磁力の条件の検討を行った。具体的には、上記実施例
における照明装置(図1参照)において、放電プラズマ
6の始動性について検討した。なお、ここで検討したコ
ア2aは、上記で説明した表4中の(c)と同一であ
る。コア2aの形状は円筒形とし、高さ50mmおよび
中空部の内径φ6.5mmを固定とし、外径を変化させ
て、本願発明者は、始動性確保に必要なコア2aの断面
積を検討した。
【0072】室温、100kHzで始動性を試験したと
き、巻線2bの巻数を60ターンとすると、始動時には
約10Aの電流が巻線2bに流れた。すなわち、始動時
には600アンペア・ターンの起磁力がコア2aに印加
される。このときコア2a(磁性材料)が飽和してしま
うと、誘導コイル2のインダクタンスが低下し、その結
果、始動に必要な磁束を発生できなくなって、始動性が
確保できなくなる。従って、起磁力600アンペア・タ
ーンを印加しても、コア(磁性材料)2aが飽和しない
ことが重要となる。
【0073】コア2aの外径を変化させて、コア2aの
断面積を変化させることによって、誘導コイル2の直流
重畳特性を調べた。これを基に、誘導コイル2のインダ
クタンスが10%低下する直流電流値をプロットした結
果を図6に示す。
【0074】図6からわかるように、室温、100kH
zにおいて、600アンペア・ターンの起磁力を印加し
た場合、誘導コイル2のインダクタンスが10%低下す
る磁性材料2aの断面積は120mm2である。すなわ
ち、本実施例の誘導コイル用コア2aは、室温、100
kHz、断面積120mm2のとき、コア2aに起磁力
600アンペア・ターンを印加しても飽和しないという
性質を持っていることがわかる。
【0075】ただし、照明装置の再始動時には、コア2
aの温度が270℃付近に達している場合がある。一般
に、コア(磁性材料)2aの飽和磁束密度は温度と共に
低下する傾向があるので、室温の状態と比べて温度が2
70℃付近の状態のときは飽和しやすくなる。そこで、
実際の照明装置では、コア2aの断面積を若干大きくし
て、同じ起磁力を印加した場合に、コア2aの内部に発
生する磁束密度を低下させるようにし、それによって、
コア2aをさらに飽和しにくくすることが望ましい。
【0076】なお、照明装置の始動時におけるコア2a
の飽和条件は、コア2aの長さ方向の軸に垂直な面の断
面積と起磁力の関係によって決定される。従って、コア
2aの長さを変化させても、同一の効果が得られる。ま
た、コア2aの内径を変化させても、同一の効果が得ら
れる。また、バルブ1の形状や巻線2bの巻数が変化し
た場合も上記のコア2aの性質は保存されるため、巻数
やバルブ1の外径によって本発明の効果は左右されな
い。
【0077】
【発明の効果】本発明によると、キュリー温度270℃
以上のMn−Zn系の多結晶フェライトから誘導コイル
用コアが構成されているので、周波数50kHz以上1
MHz以下での範囲にて放電プラズマの始動・維持する
ことができる照明装置を提供することができる。また、
キュリー温度290℃以上のMn−Zn系多結晶フェラ
イトから誘導コイル用コアが構成されている場合、照明
装置周囲の温度が高くなったときでも確実にプラズマ放
電を維持することが可能となる。キュリー温度が270
℃以上のMn−Zn系の多結晶フェライトは、Fe、M
nおよびZnを含み、酸素を除く元素のうち72wt%
以上がFe元素である構成によって実現可能である。ま
た、Fe、MnおよびZnと、添加物としてのNiとを
含むMn−Zn系の多結晶フェライトによっても実現可
能である。また、室温、周波数100kHz、磁束15
0mT、磁束の方向に垂直な面の断面積が120mm2
のとき、600アンペア・ターンの起磁力を印加するこ
とが可能であるため、誘導コイル用コアが飽和せず、そ
の結果、プラズマ放電の始動およびプラズマ放電の維持
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施形態にかかる照明装置の断面
構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明による実施形態における誘導コイル用コ
ア2aの初期透磁率と周波数との関係を示すグラフであ
る。
【図3】Fe元素の割合とキュリー温度の関係を示すグ
ラフである。
【図4】Ni元素の割合とキュリー温度の関係を示すグ
ラフである。
【図5】サンプル(a)および(d)について損失と周
波数との関係を示すグラフである。
【図6】本実施例の誘導コイル用コア2aの断面積と飽
和電流値との関係を示すグラフである。
【図7】従来の照明装置の断面構成を模式的に示す図で
ある。
【図8】Mn−Zn系フェライトおよびNi−Zn系フ
ェライトについて損失と周波数との関係を示すグラフで
ある。
【図9】Mn−Zn系フェライトおよびNi−Zn系フ
ェライトについて初期透磁率と周波数との関係を示すグ
ラフである。
【符号の説明】
1 バルブ 2 誘導コイル 2a 磁性材料 2b 巻線 3 高周波電源回路 4 整合回路 5 回路ケース 6 放電プラズマ 7 口金 8 キャビティ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H05B 41/00 F21Y 103:00 // F21Y 103:00 F21S 5/00 E (72)発明者 竹田 守 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開2000−348683(JP,A) 特開2000−182816(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 65/04 F21S 2/00 F21V 23/00 390 H01F 1/34 H05B 41/00 F21Y 103:00

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 放電ガスが封入されたバルブと、 前記バルブ内部に周波数50kHz以上1MHz以下の
    電磁界を発生させる誘導コイルと、 前記誘導コイルに電力を供給する電源とを備え、 前記誘導コイルは、コアおよび巻線を有し、 前記コアは、添加物としてNiを含むMn−Zn系の多
    結晶フェライトから構成されており、かつ、270℃以
    上のキュリー温度を有する、照明装置。
  2. 【請求項2】 前記キュリー温度が290℃以上であ
    る、請求項に記載の照明装置。
  3. 【請求項3】 前記誘導コイルは、常温、電磁界が10
    0kHz、磁束の方向に垂直な面の断面積が120mm
    2の条件下で、600アンペア・ターン以上の起磁力を
    印加可能な特性を有する、請求項またはに記載の照
    明装置。
  4. 【請求項4】 前記誘導コイルは、前記バルブの外壁を
    凹状にすることによって前記バルブの中心部分に形成さ
    れた凹入部内に挿入されており、前記バルブの内壁に
    は、蛍光体が塗布されており、前記放電ガスとして、少
    なくとも希ガスを含む、請求項に記載の照明装置。
  5. 【請求項5】 電球形蛍光ランプとして構成されてい
    る、請求項に記載の照明装置。
  6. 【請求項6】 前記コアは、Fe、Mn、NiおよびZ
    nを含み、酸素を除く元素のうち1wt%以上6wt%
    以下がNi元素である、請求項1から5までのいずれか
    一つに記載の照明装置。
  7. 【請求項7】 前記コアは、酸素を除く元素のうち60
    wt%以上がFe元素である、請求項1から6までのい
    ずれか一つに記載の照明装置。
  8. 【請求項8】 前記コアは、酸素を除く元素のうち70
    wt%以上がFe元素である、請求項7に記載の照明装
    置。
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