JP3402304B2 - 猫クラミジアワクチンの製造方法 - Google Patents
猫クラミジアワクチンの製造方法Info
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Description
タシイ(Chlamydia psittaci)による猫のクラミジア感
染を予防するワクチンの製造方法に関する。
他の細菌にはない形態学的変化を伴う独特な生活環を通
じて増殖する細胞偏性寄生菌である。すなわち、基本小
体(elementary body:EB)と網様体(reticulate bo
dy:RB)の間の菌形態の変換を伴って増殖する。感染
はEBの宿主細胞への吸着、宿主細胞による吸着EBの
貧食によって成立する。貧食されたEBはRBに変換
後、2分裂増殖し、中間体を経て再びEBに成熟感染
し、細胞外へ放出される。この時期に至っても増殖の同
調性が低いため、放出菌体にはEB、RB及び中間体が
混在するが、EBのみが新たに宿主に感染する。
剤に対する感受性、基本小体(EB)の形態及び染色体
DNAの相同性から、クラミジア・トラコマティス(Ch
lamydia trachomatis)、クラミジア・シッタシイ(Chl
amydia psittaci)、クラミジア・ニューモニエ(Chlam
ydia pneumoniae)及びクラミジア・エコルム(Chlamyd
ia pecorum)の4種に分類される。
taci)の自然宿主域は広く、オウム、インコ類をはじめ
とする鳥類、牛や羊等の反すう類、猫や犬等の伴侶動
物、また、無脊椎動物や、は虫類にも感染する。さらに
病態像も、持続的な不顕性感染、肺炎、流産、関節炎、
脳炎等、多様である。
psittaci)感染症は、結膜炎と上部気道呼吸器疾患を主
徴とする。症状は猫ウイルス性鼻気管炎や猫カリシウイ
ルス症と同様であり、重症例では死亡する場合もある。
国内の猫のクラミジア・シッタシイ(Chlamydia psitta
ci)抗体調査では、採集した血清235検体中85検体
(36%)にIgG抗体が、32検体(14%)にIg
M抗体が検出され、日本の猫にクラミジアが広く蔓延し
ていることが示唆されている。
taci)は、ヒトにオウム病として一括される重篤な呼吸
器感染症を起こす人畜共通伝染病の病原菌であり、公衆
衛生の面からもワクチンの重要性が指摘されているが、
日本国内では猫クラミジア感染症予防のためのワクチン
は販売されていない。一方、米国では、生ワクチン及び
不活化ワクチンが販売されているが、これらは主に発育
鶏卵を用いて培養したクラミジアを抗原としたものであ
る。
は、卵黄嚢を採取し、これを乳剤化してクラミジアを採
取してワクチン液としていた。しかし、卵は多くの異種
蛋白を含んでいるため、発育鶏卵を用いて培養したクラ
ミジアを抗原として製造されたワクチンは、前記異種蛋
白によりアレルギー等の副作用を起こす危険性が高い。
また、多くの蛋白の中からクラミジアのみを精製するこ
とは大変困難である。
あるL929細胞や、ヒト子宮癌由来細胞であるHeL
a229細胞、さらにはマウス線維芽細胞であるMcC
oy細胞等の培養細胞を用いてクラミジアの培養が行わ
れるようになってきた。しかし、これらの細胞は、全て
接着型の細胞であるため、細胞継代及びクラミジア接種
・採取時の操作が複雑で、クラミジアの大量培養には不
向きである。
猫クラミジア感染を予防するためのワクチンの現状に鑑
み、発育鶏卵を用いて培養したクラミジアを抗原として
用いる場合のようにアレルギー等の副作用を起こすおそ
れがなく、また抗原としてのクラミジアを簡単な操作で
大量培養でき、猫クラミジア感染を予防することができ
るワクチンを容易に大量生産可能とすることを目的とす
るものである。
る猫クラミジア感染を予防するためのワクチンの製造方
法は、浮遊型の培養細胞を用いて増殖させた猫クラミジ
アを抗原とし、これを不活化してなることを特徴とする
ものである。前記浮遊型の培養細胞として、マウス線維
芽細胞より作出された細胞を用いることができ、さらに
前記マウス線維芽細胞としてはL929細胞を用いるこ
とができる。本発明の対象とするクラミジアは、猫に感
染するクラミジア・シッタシイ(Chlamydia psittaci)
である。また、本発明の第2は、上記のような方法によ
り製造されたワクチンを用いて、猫のクラミジア感染を
予防するために猫を免疫する方法である。
のクラミジアの培養に浮遊型細胞を用いることにより、
細胞継代や、培養細胞へのクラミジア接種に際して、接
着型細胞のように培養容器から細胞を剥がす必要がない
ため操作が簡単であり、雑菌汚染の機会も少ない。ま
た、浮遊型細胞であるため、例えば大型ジャーを用いて
のクラミジアの培養が可能であり、大量のクラミジアを
効率よく培養することができる。
0.05%トリプシン−0.02%EDTA−PBS
(−)液を用いて培養容器から剥がし、培地(10%牛
胎児血清、3%トリプトース・ホスフェイト・ブロス、
0.03%L−グルタミンを含むイーグルMEM(日水
製薬株式会社、以下「ニッスイ」と記す。)を炭酸水素
ナトリウムでpH=6.8〜7.0に調整したもの)を
用いて細胞数5×105個/mLに調整して回転子を入
れたガラス瓶で回転子の回転速度300〜400rpm
で37℃で培養した。3〜4日後、細胞を含む培養液を
1,000×gで10分間遠心し、その沈渣を新しい培
地に浮遊して細胞数5×105個/mLとなるように調
整し、再び37℃で培養した。この継代培養を50代続
けた。
9細胞は、細胞数を1.5×105個/mL、培養液量
100mLに調整して37℃で培養した場合、3〜4日
後には細胞数約1.0〜2.0×106個/mLに増殖
し、接着型の細胞から浮遊型の細胞に変化したものと判
断された。
5×105個/mLに調整し、マイクロキャリアースピ
ンナーフラスココンプリート内で37℃で3日間培養し
た。この細胞培養液を1,500×gで10分間遠心
し、細胞を沈渣とした後、PBS(+)30mLに再浮
遊した。さらに、この遠心操作を2回行った後、沈渣と
した細胞に4.5log10ELD50のクラミジア(猫由来クラ
ミジアFe/145株、又はB166株)を含むSPG
(sucrose phosphate glutamic acid medium)液3mL
でサスペンドし、37℃で1時間振盪させることにより
細胞にクラミジアを吸着させた。1時間経過後、この吸
着液すべてを0.1mgのシクロヘキシミドを含む維持
用培地(イーグルMEM(ニッスイ)+5%熱非働化牛
胎児血清)100mLに加え、マイクロキャリアースピ
ンナーフラスココンプリート内で37℃で3〜5日間培
養した。
イ)に10%牛胎児血清を加え、炭酸水素ナトリウムで
pH=6.8〜7.0に調整したもの)を用いて細胞数
を1.5×105個/mLに調整し、37℃で静置培養
した。単層シートが形成された培養3〜4日後に培養上
清を吸引除去し、PBS(−)で3回洗浄後、0.00
003%DEAE−デキストラン液を細胞が浸る程度に
加え、室温に放置した。5分後、DEAE−デキストラ
ン液を吸引除去し、クラミジア液(Fe/145株、又
はB166株)を接種(接種量=4.5log10ELD50)し
た。37℃で1時間吸着後、接種したクラミジア液を吸
引し、維持用培地(イーグルMEM(ニッスイ)に5%
牛胎児血清を加え、炭酸水素ナトリウムでpH=6.8
〜7.0に調整したもの)を加え37℃で4〜5日間培
養した。
培養液を一部採取して採取液の感染価を調べた。結果を
表1に示す。この表1から明らかなように、接着型L9
29細胞に較べて、浮遊型L929細胞においてクラミ
ジアの大量な増殖が確認された。
り得られた浮遊型L929細胞を細胞数1.5×105
個/mLに調整し、細胞培養用90Lジャー(尚、以下
の操作中、ジャー内の培養、不活化は回転数50rpm
の撹拌のもとで行った。)内で30Lの増殖用培地(イ
ーグルMEM(ニッスイ)+10%熱非働化牛胎児血
清)で37℃で24時間培養した。その後、毎分100
mLの下部通気を18時間行い、その後、通気量を毎分
1Lに増やして培養開始から合計3日間37℃で培養し
た。約1.2×106個/mLの細胞数に増殖した浮遊
型L929細胞培養液を3,000×gで10分間遠心
し、細胞を集めた。集まった細胞を10LのPBS
(+)に浮遊し、再び3,000×gで10分間遠心し
た。この操作を2回繰り返した後、この細胞沈渣を8.
0log10ELD50のクラミジア(猫由来クラミジアFe/1
45株)を含むSPG(sucrose phosphate glutamic a
cid medium)液と混合し、37℃で1時間振盪させるこ
とにより細胞にクラミジアを吸着させた。1時間経過
後、この吸着液全量を30mgのシクロヘキシミドを含
む維持用培地(イーグルMEM(ニッスイ)+5%熱非
働化牛胎児血清)30Lに加え、細胞培養用90Lジャ
ー内で37℃で培養した。4〜6日間経過後、培養液に
ホルマリンを最終濃度0.2%となるように添加し、3
7℃で1日間感作して不活化した。1日後、これを1
0,000×gで連続遠心し、不活化クラミジア粒子及
び感染細胞を集めた。この沈渣を2LのPBS(−)に
再浮遊し、−80℃に保存した。これを凍結融解後、
3,000×gで10分間遠心して細胞を除いた後、上
清を10,000×gで1時間遠心して不活化クラミジ
ア粒子を沈渣とし、これを250mLのPBS(−)に
再浮遊してワクチン原液とした。このワクチン原液と無
水アンニトールオレイン酸エステル加流動パラフィンを
3:7の比率で混合し、ワクチンとした。
クチンを、以下のように猫に免疫し、その後、クラミジ
アで攻撃することにより、ワクチンの評価を行った。
約1kgの2〜3ヶ月齢の猫6匹を用い、免疫群3匹
(猫番号1〜3)には、上記ワクチンを、1回1mLを
猫の皮下に接種して免疫し、3週間後に同様にして再免
疫した。一方、対照群の3匹(猫番号4〜6)には何も
免疫せずに、免疫群の猫と同じケージで飼育した。再免
疫1週間後に、猫の両目及び鼻に猫由来クラミジアB1
66株を3.0log10ELD50を感染させた。感染後28日
間、毎日、結膜炎の観察及び体温の測定を行った。尚、
結膜炎の程度は、結膜充血、目やに・流涙、結膜腫脹を
左右両眼とも各3点合計で評価した。結果を図1及び図
2に示す。
対照群の猫は3匹ともクラミジア感染4日目から強い結
膜炎が観察されたのに対し、免疫群の猫は3匹とも症状
が弱く、また発症まで8〜11日を要した。また、図2
に示したように、対照群では3匹とも感染12〜18日
目から40℃を超える発熱が観察されたのに対し、免疫
群ではそのように発熱した個体はなかった。以上の結果
より、本発明方法により製造されたワクチンが猫のクラ
ミジア感染症の発症抑制に有効であることが明らかとな
った。
り、従来、大量に培養することが困難であった猫クラミ
ジアを効率よく大量に培養することが可能となり、さら
にこれを不活化することにより、猫クラミジア感染症の
予防に有効なワクチンを製造することが可能となった。
このワクチンを猫に接種することにより、クラミジア感
染症の予防及び蔓延の防止に有効である。また、このワ
クチンは、培養細胞を用いて培養したクラミジアから製
造することから、従来の発育鶏卵を用いて培養したクラ
ミジアから製造したワクチンに較べて異種蛋白量が極め
て少なく、アレルギー等の副作用の起こる危険性も低い
という利点もある。
表すグラフ。
グラフ。
Claims (5)
- 【請求項1】 浮遊型の培養細胞を用いて増殖させた猫
クラミジアを抗原とし、これを不活化してなることを特
徴とする、猫のクラミジア感染を予防するためのワクチ
ンの製造方法。 - 【請求項2】 前記浮遊型の培養細胞として、マウス線
維芽細胞より作出された細胞を用いてなる請求項1記載
のワクチンの製造方法。 - 【請求項3】 前記マウス線維芽細胞がL929細胞で
ある請求項2記載のワクチンの製造方法。 - 【請求項4】 前記猫クラミジアがクラミジア・シッタ
シイ(Chlamydia psittaci)である請求項1〜3のいず
れかに記載のワクチンの製造方法。 - 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の方法に
より製造されたワクチンを用いて、猫のクラミジア感染
を予防するために猫を免疫する方法。
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INFECTION AND IMMUNITY,1987,Vol.55,No.11,pp.2653−2657 |
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