JP3398833B2 - エスカレーターのステップの方向転換方法および方向転換装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、エスカレーターの
ステップの方向転換方法及び方向転換装置に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】一般に知られているエスカレーターにお
いては、多数のステップは、最上端および最下端部に配
設されたスプロケットに掛け回され駆動スプロケットの
回転により無端状に移動するようチェーンによって連結
され、最上端および最下端部に配設されたスプロケット
の周上で向きを変え、上側と下側では位置関係が反対に
なって移動するように構成されている。

【０００３】そのため、最上端および最下端のスプロケ
ットによる転回部では隣接するステップ間で蹴込み現象
が起きないように、ステップの配設間隔を開ける必要が
あり、これらの理由からスプロケットによる転回部の径
を大きくしており、上側を移動するステップと下側を移
動するステップの間隔が離れることになり、設備が大型
化し、大きな設置スペースを必要としている。

【０００４】近年、老齢者や障害者対策として、駅や公
共の大型ビル（建造物）には、エスカレーターを階段と
併設するか、または別の空間にエスカレーターを設ける
ことが多くなってきているが、既設の建造物では、エス
カレーターは、主として階段脇などに階段のレベルに合
わせて設置される場合が多い。

【０００５】エスカレーターを備えていない既設の建造
物においても、エスカレーター設置の要請が年々高まっ
てきており、簡易な構造で施工が簡単で、あまり設置ス
ペースをとらない構造のエスカレーターの開発が急がれ
ている。

【０００６】既設の建造物にエスカレーターを設置する
場合には、改造費節減、利用の便等の観点から、階段上
に設置するのが簡易な方法であるが、前記従来タイプの
エスカレーターを用いる場合、設置スペースが大きくな
るために、上方の空間が狭くなり設置が不能な場合、あ
るいは、設置が不可能でないにしてもエスカレーターと
天井間の間隔が狭くなり、利用者が圧迫感により不快感
を生じることは避けられない等の不都合を生じることか
ら、大幅な改造を余儀なくされる場合が少なくない。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、方向転換部
でのステップの方向転換径を小さくして、エスカレータ
ーの設置スペースを小さくし、既設の建造物の階段等の
既設構造部への設置を容易にするエスカレーターのステ
ップ方向転換方法と方向転換装置を提供するものであ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の第一の発明は、
エスカレーターのステップ面を形成する多数のステップ
を連結したチェーンの駆動スプロケットを、下部方向転
換部と上部方向転換部間に配設し、各ステップには前輪
と後輪を設けて前輪と後輪を別々に配置した走行レール
で支持させ、下部方向転換部の後輪走行レールと上部方
向転換部の前輪走行レールを自由曲線状として、下部方
向転換部と上部方向転換部で前輪走行レールと後輪走行
レールを干渉しないように交叉させることによって、こ
の方向転換部でステップを所定の角度範囲内で傾け、ス
テップを、ステップ面を上向きにしたまま上側と下側間
で方向転換させることを特徴とするエスカレーターのス
テップの方向転換方法。

【０００９】第二の発明は、（１）エスカレーターのス
テップ面を形成する多数のステップに、該ステップ面に
対して距離の近い前輪と距離の遠い後輪を設け、このス
テップを、中間傾斜部に配設した駆動スプロケットに掛
け回され下部方向転換部と上部方向転換部間を移動する
チェーンに連結し、（２）下部方向転換部と上部方向転
換部間には、ステップの前輪を支持する前輪走行レール
を敷設するとともに、この前輪走行レールの内側に後輪
を支持する後輪走行レールを、前輪走行レールと干渉し
ない位置に敷設し、（３）下部方向転換部では、前輪走
行レールは半円状に敷設し、後輪走行レールは前輪走行
レールの外側で外側に膨らむ自由曲線状に敷設し、前輪
走行レールと後輪走行レールとをこの方向転換部での上
部側で交叉させ、（４）上部方向変換部では、後輪走行
レールを半円状に敷設し、前輪走行レールは後輪走行レ
ールの外側で外側に膨らむ自由曲線状に敷設し、前輪走
行レールと後輪走行レールとをこの方向転換部の下部側
で交叉させ、これによりステップのステップ面を上向き
にしたまま上側と下側間で方向転換可能に構成したこと
を特徴とするエスカレーターのステップの方向転換装置
で、第一の発明を実施する方向転換装置例として位置付
けされるものである。

【００１０】

【発明の実施の形態】本発明では、下部方向転換部と上
部方向転換部間に配設した駆動スプロケットに掛け回さ
れ移動するチェーンに連結した多数のステップを、上部
方向転換部と部方向転換部でステップ面を上向きにした
ままで方向転換可能にしており、このステップの方向転
換部での方向転換径を小さくし、上側を移動するステッ
プと下側を移動するステップ間の間隔を狭くしてエスカ
レーターの設置高さを小さくすることができ、設置スペ
ースを小さくすることにより、既設の建造物の階段等の
既設構造部へのエスカレーターの設置が容易になる。

【００１１】

【実施例】以下に本発明を図１〜図１０に示す実施例に
基づいて説明する。図１〜図８は、下階床面と上階の床
面間に配設された既設の階段の上端部と下端部を一部除
去し、昇り用のエスカレーターを既設の階段の上に設置
した場合のものであり、ここでは、既設の階段はエスカ
レーターを設置した分狭くして残している。

【００１２】図１〜図１０において、１は本発明を適用
したエスカレーターで、下階床面２ｕと上階床面２ｏ間
に配設された既設の階段３の上に設置され、下部水平部
１ｕと中間傾斜部１ｃと上部水平部１ｏからなってい
る。

【００１３】中間傾斜部には、一対のスプロケット６
ａ，６ｂを備えた駆動装置５が配設されている。スプロ
ケット６ａ，６ｂのスプロケットには、無端状チェーン
７が係合されており、このチェーンは駆動装置５の駆動
により、下階床面２ｕ側と上階床面２ｏ側の方向転換部
Ａ−Ｂ間を無端状に移動可能である。このチェーン７に
は、ステップ面８ｆを形成する多数のステップ８が連結
され、このステップは、チェーンの移動により下階床面
側２ｕと上階床面２ｏ側の方向転換部間を移動可能であ
る。このステップ８は、図２に示すようにステップ面８
ｆに対して近い距離にある前輪９と、遠い距離にある後
輪１０が設けられており、チェーン７にはステップ８の
前輪部で連結する。前輪９は前輪走行レール１１に支持
され、後輪１０は後輪走行レール１２に支持され、駆動
装置５により無端状に移動するチェーン７によって移動
する。

【００１４】下階床面２ｕ側と上階床面２ｏ側の方向転
換部間には、図１の主要部拡大図である図３〜図１０に
示すように、ステップ８の前輪９を支持する前輪走行レ
ール１１が敷設され、この前輪走行レール１１の内側に
は、後輪走行レール１２が前輪走行レール１１と干渉し
ないように、その内側に敷設されている。この前輪走行
レール１１と後輪走行レール１２は、図３および図４に
示すように、中間傾斜部１ｃの開始点近傍の基点Ａと中
間傾斜部の終点近傍の基点Ｂ間において、中間傾斜部１
ｃの傾斜角度θのときにステップ８のステップ面８ｆが
上側で水平を維持して移動するとき、一致するように敷
設されており、下側での前輪走行レール１１ｏと後輪走
行レール１２ｏは、上側の前輪走行レール１１と後輪走
行レール１２と一定距離離れて平行になるように敷設さ
れている。

【００１５】しかし、この中間傾斜部１ｃの下側での後
輪走行レール１２ｏは前輪走行レール１１より下に位置
し、ステップ８のステップ面８ｆは移動方向に傾斜、す
なわち、先行ステップの後端部より後行ステップの噛み
込み部の上端位置が下がった状態で移動する。

【００１６】上部方向転換部Ｑでは、図５および図６に
示すように、後輪走行レール１２はは半円状に敷設し、
前輪走行レール１１は後輪走行レール１２の外側で外側
に膨らむ自由曲線状に敷設しており、この上部方向転換
部Ｑの下部側で前輪走行レール１１と干渉しないように
交叉させて、この上部方向転換部Ｑでステップ８を所定
の角度範囲内で傾けるが、ステップ面８ｆを上向きにし
たまま上側から下側に方向転換させる。

【００１７】このステップ８の上部方向転換部Ｑでの動
作手順例を図７（ａ）〜（ｅ）に概念的に示す。上部方
向転換部Ｑに到達した、上側で水平状態（ａ）のステッ
プ８のステップ面８ｆを、（ｂ），（ｃ）の状態を経
て、外側に角度θａを２０度程度まで漸次傾斜させて行
き（ｄ）の状態とし、ここから漸次逆方向に傾斜させて
角度θｂを約５度にした（ｅ）の状態にすることによっ
て、この上部方向転換部Ｑでステップ８のステップ面８
ｆを上向きにしたままステップ８を上側から下側に方向
転換させることができる。この際、前輪９は前輪走行レ
ール１１から前輪走行レール１１ｏに移載され、後輪１
０は後輪走行レール１２ｏに移載される。

【００１８】一方、下部方向転換部Ｐでは、図８および
図９に示すように、前輪走行レール１１は半円状に敷設
し、後輪走行レール１２は前輪走行レールの外側で外側
に膨らむ自由曲線状に敷設する。この後輪走行レール１
２は、この下部方向転換部Ｐの上部側で前輪走行レール
１１と干渉しないように交叉させており、この方向転換
部でステップ８のステップ面８ｆを傾けるが、ステップ
面８ｆを上向きにしたまま、ステップ８を下側から上側
に方向転換させる。

【００１９】このステップ８の下部方向転換部Ｑでの動
作手順例を図１０（ａ）〜（ｅ）に概念的に示す。下部
方向転換部Ｐに到達した、下側で前方に角度θｃが約５
度傾斜した状態（ａ）のステップ８のステップ面８ｆ
を、外側に角度θｄを２０度程度まで傾斜させて行き
（ｂ）の状態とし、（ｃ），（ｄ）の状態を経て角度θ
ｄを０度すなわち水平状態にすることによって、この下
部方向転換部Ｐでステップ８のステップ面８ｆを上向き
にしたままステップ８を下側から上側に方向転換させる
ことができる。この際、前輪９は前輪走行レール１１ｏ
から前輪走行レール１１に移載され、後輪１０は後輪走
行レール１２ｏから後輪走行レール１２に移載される。

【００２０】上記上部方向転換部Ｑと下部方向転換部Ｐ
でのステップ８の方向転換軌跡は、ステップ８の円滑な
方向転換回を実現し、ステップの方向転換径を最小にす
るためには、方向転換部でのステップ面８ｆの傾斜角度
θａ，θｄの範囲を２０度以内に設定し、この範囲内で
漸次角度を変化させるようにすることが望ましい。

【００２１】なお、上部方向転換部Ｑで方向転換されス
テップ面８ｆを前方に角度θｂが５度程度傾斜して上部
水平部１ｏの下側を移動するステップ８は、上側のステ
ップ８と一定距離で平行を保った状態で水平移動し、中
間傾斜部１ｃに移行する過程では、上側のステップと接
近する軌跡を描き、中間傾斜部１ｃでは上側のステップ
８と一定距離で平行を保った状態で移動（下降）する。

【００２２】そして、下側のステップ８が中間傾斜部か
ら下部水平部１ｕに移行する過程では、上側のステップ
８から遠ざかる軌跡を描き、下部水平部１ｕで水平移動
した後ステップ面８ｆを前方に角度θｃが５度程度傾斜
した状態で下部水平部１ｕの下側を移動し、下部方向転
換部Ｐに到達する。

【００２３】なお、上記の例は、昇り用のエスカレータ
ーの場合のものであるが、下り用のエスカレーターの場
合のものは、基本的には、上記の例の場合で、駆動装置
５の回転方向を反対にして、チェーン７の移動方向を反
対にすればよい。この場合、例えば図１１に示すよう
に、上部方向転換部Ｑにエスカレーターの運転を利用し
てステップ８の後部を持ち上げられる昇降装置１３等を
付設することにより、円滑な運転が可能である。

【００２４】このように構成することによって、上部お
よび下部方向転換部でのステップの方向転換に際して、
方向転換径を小さくし、等速移動する隣接するステップ
間でぶつかりがなく、上側を移動するステップと下側を
移動するステップ間の間隔を狭くして、エスカレーター
の厚みを薄くして、例えば既設の階段上への直接的設置
を容易にすることができる。エスカレーターの傾斜角度
θを２０度程度まで小さくすることによって、エスカレ
ーターの全体の厚みをさらに薄くすることが可能であ
る。

【００２５】なお、本発明は、上記の例にのみ限定され
るものではなく、ステップの形状、構造、移動機構等
は、設置場所条件、規模条件等に応じて、上記の請求項
１または請求項２を満足する範囲内で変更されるもので
ある。例えば、ステップを連結するチェーンを無端状に
移動するための駆動装置は、中間傾斜部に１セット配設
したが、必要により複数セット配設してもよい。また、
この駆動装置は、チェーンを下側と上側で移動させるよ
うにしてもよいし、下側または上側のいずれか一方のみ
を移動させるようにしてもよい。また、上記の例では、
下部方向転換部では、前輪走行レールを半円状にし後輪
走行レールを自由曲線状に敷設しているが、これに限定
するものではない。

【００２６】下り用のエスカレーターの場合を含めて、
この前輪走行レールと後輪走行レールは上部および下部
方向転換部でステップを円滑に方向転換できるように、
上部方向転換部と下部方向転換部でのステップの方向転
換軌跡を設定し、これに応じて自由曲線状と半円状ある
いは自由曲線状を選択して敷設することができる。

【００２７】また、前輪走行レールと後輪走行レール
は、方向転換部でそれぞれ２本にして、前輪９を前輪走
行レール１１−１１ｏ間で移載し、後輪１０を後輪走行
レール１２−１２ｏ間で移載するようにしたが、少なく
とも方向転換部では、前輪走行レールと後輪走行レール
を、前輪９，後輪９をそれぞれ上下で支持できるように
敷設してもよい。

【００２８】

【発明の効果】本発明においては、駆動スプロケットに
掛け回され無端状に移動するチェーンに連結した多数の
ステップを、上部および下部方向転換部でステップ面を
上向きにしたまま方向転換可能にしており、このステッ
プの方向転換部での方向転換径を小さくし、上側を移動
するステップと下側を移動するステップ間の間隔を狭く
してエスカレーターの設置高さを小さくすることがで
き、設置スペースを小さくすることにより、既設の建造
物の階段等の既設構造部へのエスカレーターの設置が容
易になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を適用したエスカレーターの全体構成例
を示す側面概念説明図。

【図２】図１で用いられるステップ構造例を示す側面概
念説明図。

【図３】図１におけるエスカレーターの中間傾斜部の拡
大説明図。

【図４】図３のＡａ−Ａ矢視断面概念説明図。

【図５】図１におけるエスカレーターの上部方向転換部
の拡大説明図。

【図６】図５のＢａ−Ｂｂ矢視断面概念説明図。

【図７】図５の上部方向転換部でのステップの方向転換
動作概念説明図。

【図８】図１におけるエスカレーターの下部方向転換部
の拡大説明図。

【図９】図８のＣａ−Ｃｂ矢視断面概念説明図。

【図１０】図８の下部方向転換部でのステップの方向転
換動作概念説明図。

【図１１】下り用のエスカレーターの場合の上部方向転
換部の構造例を示す側面概念説明図。

【符号の説明】

１ エスカレーター １ｕ 下部水平部 １ｃ 中間傾斜部 １ｏ 上部水平部 Ｑ 上部方向転換部 Ｐ 下部方向転換部 ２ｏ 上階床面 ２ｕ 下階床面 ３ 階段 ４ ハンドレール ５ 駆動装置 ６ａ，６ｂ スプロケット ７ チェーン ８ ステップ ８ｆ ステップ面 ９ 前輪 １０ 後輪 １１，１１ｏ 前輪走行レール １２，１２ｏ 後輪走行レール １３ 昇降装置

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エスカレーターのステップ面を形成する
   多数のステップを連結したチェーンの駆動スプロケット
   を、上部方向転換部と下部方向転換部間の中間傾斜部に
   配設し、各ステップには前輪と後輪を設けて前輪と後輪
   を別々に配置した走行レールで支持させ、下部方向転換
   部の後輪走行レールと上部方向転換部の前輪走行レール
   を自由曲線状として、下部方向転換部と上部方向転換部
   で前輪走行レールと後輪走行レールを干渉しないように
   交叉させることによって、この方向転換部でステップを
   所定の角度範囲内で傾け、ステップ面を上向きにしたま
   ま上側と下側間で方向転換させることを特徴とするエス
   カレーターのステップの方向転換方法。
2. 【請求項２】 （１）エスカレーターのステップ面を形
   成する多数のステップに、該ステップ面に対して距離の
   近い前輪と距離の遠い後輪を設け、各ステップを、中間
   傾斜部に配設した駆動スプロケットに掛け回され下部方
   向転換部と上部方向転換部間を移動するチェーンに連結
   し、（２）下部方向転換部と上部方向転換部間には、ス
   テップの前輪を支持する前輪走行レールを敷設するとと
   もに、この前輪走行レールの内側に後輪を支持する後輪
   走行レールを、前輪走行レールと干渉しない位置に敷設
   し、（３）下部方向転換部では、前輪走行レールは半円
   状に敷設し、後輪走行レールは前輪走行レールの外側で
   外側に膨らむ自由曲線状に敷設し、前輪走行レールと後
   輪走行レールとをこの方向転換部の下部側で交叉させ、
   （４）上部方向変換部では、後輪走行レールを半円状に
   敷設し、前輪走行レールは後輪走行レールの外側で外側
   に膨らむ自由曲線状に敷設し、前輪走行レールと後輪走
   行レールとをこの方向転換部の下部側で交叉させ、これ
   によりステップを、ステップ面を上向きにしたまま上側
   と下側間で方向転換可能に構成したことを特徴とするエ
   スカレーターのステップの方向転換装置。