JP3398457B2 - 量子化スケールファクタ生成方法、逆量子化スケールファクタ生成方法、適応量子化回路、適応逆量子化回路、符号化装置及び復号化装置 - Google Patents

量子化スケールファクタ生成方法、逆量子化スケールファクタ生成方法、適応量子化回路、適応逆量子化回路、符号化装置及び復号化装置

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JP3398457B2
JP3398457B2 JP03952394A JP3952394A JP3398457B2 JP 3398457 B2 JP3398457 B2 JP 3398457B2 JP 03952394 A JP03952394 A JP 03952394A JP 3952394 A JP3952394 A JP 3952394A JP 3398457 B2 JP3398457 B2 JP 3398457B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は量子化スケールファク
タ生成方法、逆量子化スケールファクタ生成方法、適応
量子化回路、適応逆量子化回路、符号化装置及び復号化
装置に関し、例えば、ADPCM(適応差分PCM)符
号化方式に適用し得るものである。
【0002】
【従来の技術】近年、音声信号や音響信号や、その他の
アナログ信号(例えば、モデム信号や、ファクシミリ信
号など)に対する高能率符号化方式が研究・開発されて
いる。
【0003】そして、従来のADPCM装置では、入力
信号と予測信号の差である予測残差信号に対してスケー
ルファクタで正規化を行い、その信号を量子化すること
で、量子化の際のオーバーフローやアンダーフローなど
の発生を避けていた。このスケールファクタが予測残差
信号のパワーを適切に反映していれば、量子化誤差を少
なくすることでき、復号側の再生信号の品質を向上させ
ることができていた。
【0004】そして、最適なスケールファクタを決定す
る方法としては、例えば、文献1:『音声の高能率符号
化』、著者:中田和男、出版社:森北出版、のページ4
6〜50などに一例が示されている。
【0005】そして、未来の予測残差信号D(n+1)
に対する最適なスケールファクタu(u+1)は、現在
及び過去のサンプル値に対する最適なスケールファクタ
u(n)、u(n−1)、u(n−2)、・・・・、及
び量子化の結果I(n)、I(n−1)、I(n−
2)、・・・・などから、隣接信号の相関を利用して決
定されるものである。
【0006】更に、伝送誤りに対する耐性を考慮したス
ケールファクタの決定方法として、次の文献2に示され
ている手順による方法が従来提案されていた。文献2:
IEEE Transactions on Comm
unications、COM−23、1975年11
月、ページ1362−1365、『A RobustA
daptive Quantizer』、著者D.J.
Goodman and R.M.Wilkinso
n、などに一例が示されていた。
【0007】この文献2による方法は、現在(時刻
(n))の予測残差信号D(n)に対するスケールファ
クタをu(n)、その量子化結果をI(n)とする。こ
のときに、次(未来)のサンプル(時刻(n+1))の
予測残差信号D(n+1)に対する量子化の幅u(n+
1)を次式(1)、(2)によって決定される。
【0008】 y(n+1)=(1−δ)*y(n)+δ*W(I(n)) ……(1) u(n+1)=exp(y(n+1)) ……(2) 尚ここで、y(n)(=log(u(n)))は、対数
スケールファクタであり、δはリーク係数でありこのδ
は1より小さい(δ<1)、正の整数である。そして、
更新関数Wは信号の性質によって理論的又は実験的に決
められる値である。そして、更にこのWはADPCM符
号化出力信号I(n)に対する数値処理によって得るこ
ともできるし、又はI(n)に対して表の値で置き換え
て得ることもできる。そして、このWを求める仕組み
は、ADPCM符号化側と復号化側で共通して備える仕
組みである。
【0009】上述のような方法では、I(n)を更新関
数Wで変換し、1次の巡回形ローパスフィルタでフィル
タリングすることによって対数スケールファクタyを得
ていた。ここで、リーク係数δが定数であるためこのフ
ィルタの特性は不変であった。即ち、上述の方法は固定
予測によって過去の信号から現在のスケールファクタu
を対数領域でyとして得ていると解釈できるものであっ
た。
【0010】また、y(n)の係数(1−δ)によって
適応化の過程において過去の影響が有限となるため、伝
送符号誤りがあったとしても符号化回路と復号化回路の
内部状態は一致するように収束するものである。
【0011】上述のような手順によってスケールファク
タ算出方法を用いて、ある程度までは伝送誤りに対して
耐性を有し、良好な音声再生を行い得ることができた。
例えば、64kbit/sの伝送速度を持つμ則PCM
による音声情報を半分の伝送速度32kbit/sで伝
送するような実現した場合に、ビット誤り率0.01%
程度まではMOS3.5程度の主観評価を得ることもで
きていた。
【0012】このMOS3.5のデータについては、例
えば、文献3:IEEE Transactions
on Communications、1988年、ペ
ージ400〜407、『HIGH−PERFOMANC
E ADPCM CODECFOR VOICE AN
D VOICEBANND DATA AND ITS
APPLICATION TO DCME』のFig
3を参考とすることができる。
【0013】尚、このMOSとは、Mean Opin
ion Scoreの略であり、平均オピニオン値と呼
んでいるものである。この平均オピニオン値とは、通話
の満足性の観点から被測定系の総合的な品質を表した評
価尺度である。そして、この評価を例えば、レベル1
(非常に悪い)からレベル5(非常に良い)までで表す
ものである。
【0014】そして、上述のMOSについての、一般的
な解説は例えば、文献4:電子情報通信学会誌1992
年2月、『通信の品質(1)、音声品質の主観評価』の
ページ185に示されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、例え
ば、無線伝送路などの伝送誤りが比較的に高い率で起き
得る伝送系へ、上述のADPCM方式を適用すると、受
信側の再生信号には針状の波形の歪みが生じていた。こ
れは、例えば、無線伝送路におけるマルチパスやフェー
ジング(例えば、周波数選択性フェージング)や、局間
信号の干渉や、符号間干渉、その他の要因によるものと
考えられる。
【0016】このような針状の雑音は、僅かなS/Nの
変化に対しも主観評価に大きく影響を与え、聴取され易
いことが報告されており、通話品質を著しく劣化させて
いた。
【0017】従って、例えば、無線伝送路などにおける
伝送誤り率が高い系へ従来のADPCM符号化方式をそ
のまま適用することは困難であった。
【0018】以上のようなことから、伝送路の符号誤り
率が悪い場合でも強い耐性で良好な再生信号を再生し得
る仕組みの提供が要請されていた。
【0019】
【課題を解決するための手段】そこで、(1)入力信号
(例えば、PCM信号)から適応量子化を行って適応量
子化信号を得るために用いられるファクタであって、量
子化ステップをスケーリングするための量子化用スケー
ルファクタを上記適応量子化信号から求める量子化スケ
ールファクタ生成方法において、この発明は、入力原信
号と予測信号との差分である残差信号(若しくは誤差信
号)の大きさに対応した更新信号であって、サンプリン
グごとに得られる適応量子化信号から上記更新信号を生
成する。
【0020】そして、この更新信号から適応フィルタ手
段によって上記量子化用スケールファクタを生成するも
のであって、前(例えば、前回又はそれ以前)に求めた
量子化用スケールファクタから上記適応フィルタ手段の
フィルタ係数を更新し、新たな量子化用スケールファク
タを求めることで上述の課題を解決しようとするもので
ある。
【0021】また、(2)適応量子化信号から適応逆量
子化を行って量子化信号を得るために用いられるファク
タであって、逆量子化ステップをスケーリングするため
の逆量子化用スケールファクタを上記適応量子化信号か
ら求める逆量子化スケールファクタ生成方法において、
この発明は、上記適応量子化信号から上記更新信号を生
成し、この更新信号から適応フィルタ手段によって上記
量子化用スケールファクタを生成するものであって、前
(例えば、前回又はそれ以前)に求めた量子化用スケー
ルファクタから上記適応フィルタ手段のフィルタ係数を
更新し、新たな量子化用スケールファクタを求めるもの
であって、量子化用スケールファクタ生成方法と同じよ
うな仕組みで生成することで上述の課題を解決しようと
するものである。
【0022】更に、(3)入力信号(例えば、PCM信
号)から量子化スケールファクタを用いて適応量子化を
行って適応量子化信号を得る適応量子化器と、上記適応
量子化信号から上記量子化用スケールファクタを求める
量子化スケールファクタ生成回路とを備えた適応量子化
回路において、この発明の量子化スケールファクタ生成
回路は、入力原信号と予測信号との差分である残差信号
(若しくは誤差信号)の大きさに対応した更新信号であ
って、サンプリングごとに得られる適応量子化信号に対
して上記更新信号を生成する更新信号生成手段と、この
更新信号から上記量子化用スケールファクタを生成する
適応フィルタ手段と、前に求めた量子化用スケールファ
クタから上記適応フィルタ手段のフィルタ係数を更新さ
せる係数更新手段とを備える。
【0023】そして、この適応量子化器は、更新された
量子化用スケールファクタを用いて適応量子化を行うこ
とで、上述の課題を解決するものである。
【0024】更にまた、(4)適応量子化信号から逆量
子化スケールファクタを用いて適応逆量子化を行って量
子化信号を得る適応逆量子化器と、上記適応量子化信号
から逆量子化スケールファクタを求める逆量子化スケー
ルファクタ生成回路とを備えた適応逆量子化回路におい
て、この発明は、逆量子化スケールファクタ生成回路
は、適応量子化信号から更新信号を生成する更新信号生
成手段と、この更新信号から上記逆量子化用スケールフ
ァクタを生成する適応フィルタ手段と、前に求めた逆量
子化用スケールファクタから上記適応フィルタ手段のフ
ィルタ係数を更新させる係数更新手段とを備える。
【0025】そして、適応逆量子化器は、更新された逆
量子化用スケールファクタを用いて適応逆量子化を行う
もので、上述の量子化スケールファクタ生成回路と同じ
ような仕組みで構成することで上述の課題を解決するも
のである。
【0026】尚、上述の更新信号生成手段は、残差信号
の大きいレベルに対する適応量子化信号には大きい値の
更新信号を与え、残差信号の小さいレベルに対する適応
量子化信号には小さい値の更新信号を与えることが好ま
しい。
【0027】(5)そして、上述の構成の適応量子化回
路と符号化回路とを備えて符号化装置に適用することが
好ましい。尚、この符号化器は、入力信号(例えば、ア
ナログ信号)に対して直線符号化(例えば、直線A/D
変換など)を行い上記適応量子化回路に与える直線符号
化回路、又は入力非線形信号(例えば、LogPCM信
号)を線形信号(例えば、PCM信号)に変換し上記適
応量子化回路に与える信号変換回路のいずれかを備える
ことが好ましい。
【0028】(6)更に、上述の構成の適応逆量子化回
路と復号化回路とを備えて復号化装置に適用することが
好ましい。尚、この復号化回路は、適応逆量子化器で得
られた量子化信号に対して直線復号化(例えば、直線D
/A変換など)を行う直線復号化回路、又は適応逆量子
化器で得られた量子化信号に対して線形信号(例えば、
PCM信号)から非線形信号(例えば、LogPCM信
号)への信号変換を行う信号変換回路のいずれかを備え
ることが好ましい。
【0029】
【作用】この発明によれば、残差信号の大きさに応じて
更新信号が更新され、この更新信号を適応フィルタ手段
でフィルタンリングを行い、量子化用及び逆量子化用の
スケールファクタを同じ仕組みで生成するものであっ
て、このスケールファクタによって残差信号が修正され
ると共に、前のスケールファクタをもとに適応フィルタ
手段の係数も逐次(サンプリングごとに)更新される。
【0030】つまり、適応フィルタ手段の特性が更新さ
れる。つまり、スケールファクタの大きさによって係数
更新が逐次制御される。そして、適応量子化回路への入
力信号の大きさに応じて量子化用又は逆量子化用のスケ
ールファクタの変動を抑制させたり、鋭敏に変化させる
することもできる。
【0031】例えば、適応量子化回路への入力信号のパ
ワーが比較的に大きい場合、残差信号は大きな値をと
り、スケールファクタも大きな値をとる。そして、この
スケールファクタに対応して、適応フィルタ手段で例え
ばローパスフィルタの係数を、通過帯域が狭くなるよう
に制御される。このためスケールファクタは緩やかに変
動することとなり、入力信号のパワーの速い変動を反映
しにくくなる。この速い変動が抑制されたスケールファ
クタを用いることによって、伝送路での符号誤りがあっ
たとしても、大きな誤差が抑制され、品質を劣化させて
いた針状の波形歪みを低減させることもできる。
【0032】一方、適応量子化回路への入力信号のパワ
ーが比較的に小さい場合は、残差信号は小さな値をと
り、スケールファクタも小さな値をとる。このときにス
ケールファクタの変動を抑制すると量子化誤差による雑
音(オーバフロー雑音)が多くなる。そこで、スケール
ファクタの値に対応して適応フィルタ手段を、例えば、
ローパスフィルタとして形成し通過帯域が広くなるよう
に係数更新が制御される。これによってスケールファク
タは鋭敏に変動し、量子化による雑音を減少させること
ができ得る。
【0033】以上のような仕組みによって、スケールフ
ァクタが大きいときは、スケールラクタの変動を抑制す
ることによって、伝送路の符号誤りによる再生信号に生
じる針状の波形歪みを低減させことができる。また、ス
ケールファクタが小さい場合は、スケールファクタの変
動を鋭敏にさせることで、例えばオーバーロード雑音な
どを低減させることができる。
【0034】上述の適応量子化回路と符号化回路とを備
えた符号化装置を送信側に設け、上述の適応逆量子化回
路と復号化回路とを備えた復号化装置を受信側に備える
ことで送信側と受信側との間の伝送路において、雑音な
どの影響による符号誤りを受けても受信側の再生信号に
波形歪みやオーバロード雑音などが起きないようにさせ
ることができる。
【0035】
【実施例】次にこの発明をADPCM符号化装置及びA
DPCM復号化装置に適用した場合の好適な一実施例を
図面を用いて説明する。
【0036】『符号化装置の構成』:図1は一実施例の
ADPCM符号化装置の機能構成図である。この図1に
おいて、ADPCM符号化装置20はアナログ/デジタ
ル変換(A/D)器29と、適応量子化器(Q)22
と、差分器21と、適応逆量子化器(IQ)23と、加
算器24と、適応予測器(AP)25と、量子化スケー
ルファクタ適応部27とから構成されている。
【0037】そして、特徴的な構成の量子化スケールフ
ァクタ適応部27は、更新関数変換器271と、対数ス
ケールファクタ算出器272と、係数適応器273とか
ら構成されている。
【0038】そして、アナログ信号(例えば、音声信号
や音響信号など)が、直線符号化器である、A/D変換
器29に与えられると例えば、サンプリング周波数8k
Hz程度でサンプリングを行い、そして例えば直線符号
化を行い1サンプリング信号に対して16ビットで符号
化を行って、この線形デジタル信号(PCM信号)を出
力する。この離散的な線形デジタル信号は、差分器21
に与えられ、ここで予測信号Seとの差分を求め、この
差分信号を予測誤差(予測残差)信号Dとして適応量子
化器(Q)22に与える。
【0039】そして、図1の適応量子化器(Q)22
は、対数スケールファクタy(n)を使用して、2
y(n)=uとし、更に、D/uを求めて予測残差信号
Dの正規化を行う。そして、この正規化された予測誤差
信号Dは、予め決められたテーブルに従って例えば、1
5レベルに量子化され、4ビットのADPCM符号Iを
出力する。この信号Iは伝送路へ出力される。
【0040】そして、このADPCM符号Iは次の時刻
の予測信号Se及び対数スケールファクタy(n)を求
めるために、量子化スケールファクタ適応部27と適応
逆量子化器(IQ)23とに与えられる。そして、適応
逆量子化器(IQ)23はADPCM符号Iから、予め
決められたテーブルに従って逆量子化を行い、更にスケ
ールファクタu(=2y(n))を乗算して再生予測残
差信号Dqを出力する。この再生予測残差信号Dqは加
算器24に与えられ、予測信号Seとの加算を行い、こ
の加算結果を再生信号Sqとして適応予測器(AP)2
5に与える。
【0041】そして、図1の適応予測器(AP)25
は、主に適応デジタルフィルタで構成され、このフィル
タ係数は再生信号Sqの相関に従って逐次制御される。
そして、フィルタの構成法や係数の制御方法として、例
えば、適応零点10次、適応極4次、固定極16次のト
ランスバーサル形で構成し、このフィルタ係数を例え
ば、簡易グラジェント法によって更新するものとする。
【0042】更にこの適応予測器(AP)25において
は、適応デジタルフィルタの極を常に監視し、安定領域
(z平面上の単位円内)を逸脱したと判定される場合に
は、フィルタ係数を更新しないようにするものである。
【0043】一方、量子化スケールファクタ適応部27
の更新関数変換器271は、ADPCM符号Iから更新
関数Wを求めるものである。具体的には、予め用意され
ている変換テーブルTB1(図3に示している。)を用
いてWを出力する。この変換テーブルTB1は、例え
ば、正規化残差信号の大きい振幅レベルに対応するAD
PCM符号Iに対しては、Wを大きな値を持つように設
定してある。
【0044】また、この変換テーブルTB1は、更に正
規化残差信号の小さい振幅レベルに対応するADPCM
符号Iに対してはWを小さな値を持つように設定してあ
る。この図3の変換テーブルの数値は、具体的には信号
の性質や、ADPCM符号Iのビット数やサンプリング
周波数などの要素から判断して、理論的又は実験的に決
定することが好ましい。
【0045】この図3においては、変換テーブルTB1
は、ADPCM符号Iの絶対値0〜7に対して、Wを−
15.968、−10.9376、−7.1872、−
6.2528、−4.5312、8.2816、31.
2512、81.248としている。
【0046】このようにして与えられたWの値は、対数
スケールファクタ算出器272に与えられる。この対数
スケールファクタ算出器272は、主に1次の巡回形の
デジタルローパスフィルタで構成され、このフィルタで
対数スケールファクタy(n)を生成する。そして、こ
のフィルタのフィルタ係数は、係数適応器273から与
えられるリーク係数δ(n)によって設定される。
【0047】次のサンプル時刻に対する対数スケールフ
ァクタy(n+1)は、次の式(3)によって求められ
る。 y(n+1)=[1−δ(n)]*y(n)+δ(n)*W(I(n)) ……(3) 尚ここで、δ(n)は0<δ(n)<1とし、このδ
(n)は係数適応器273によって逐次更新制御され
る。そして、この更新された対数スケールファクタy
(n+1)は適応量子化器(Q)22に与えられる。
【0048】そして、図1の係数適応器273は係数δ
(n)を対数スケールファクタy(n)の単調減少関数
として更新制御を行う。例えば、係数δ(n)を次の式
(4)で表す関数として更新制御を行うものである。
【0049】係数δ(n)=2 A=−(a*(y(n)−ymin)/(ymax−ymin)+b) ……(4) ここで、a、bは予め決められた正の定数であり、ym
in、ymaxはy(n)の最大値、最小値である。そ
して、この一実施例では、aを4とし、bを6とした。
このような設定によると、y(n)が最小値から最大値
に増加するにつれて係数δ(n)は2−6から2−10
へと減少する。このように係数δ(n)を更新制御する
ことによって、1次の巡回形ローパスフィルタの通過帯
域が、スケールファクタに対応して制御される。
【0050】『復号化装置の構成』:図2は一実施例の
ADPCM復号化装置の機能構成図である。この図2に
おいて、ADPCM復号化装置60は、適応逆量子化回
路(IQ)63と、加算器64と、適応予測器(AP)
65と、逆量子化スケールファクタ適応部67と、D/
A変換器69とから構成されている。更に、逆量子化ス
ケールファクタ適応部67は、更新関数変換器671
と、対数スケールファクタ算出器672と、係数適応器
673とから構成されている。
【0051】入力されたADPCM符号Iは、適応逆量
子化回路(IQ)63と更新関数変換器671とに与え
られる。そして、適応逆量子化器(IQ)63は、予め
決められたテーブルに従って、更に対数スケールファク
タy(n)を使用して2y( n)=uから予測誤差信号
Dを求め、加算器64に与える。
【0052】一方、逆量子化スケールファクタ適応部6
7は、上述のADPCM符号化装置20の量子化スケー
ルファクタ適応部27と同様な構成である。従って、更
新関数変換器671は、上述の更新関数変換器271と
同様に例えば、テーブルTB1(図3)を備えて、入力
されたADPCM符号Iから更新関数Wを出力するもの
である。
【0053】そして、対数スケールファクタ算出器67
2も上述の対数スケールファクタ算出器272と同様
に、主に1次の巡回形のデジタルローパスフィルタで構
成され、このフィルタで対数スケールファクタy(n)
を生成する。そして、このフィルタのフィルタ係数は、
係数適応器673から与えられるリーク係数δ(n)に
よって設定される。そして、サンプル時刻に対する対数
スケールファクタy(n+1)は、上述の式(3)によ
って求められる。そして、δ(n)は係数適応器273
によって逐次更新制御される。そして、この更新された
対数スケールファクタy(n+1)は適応逆量子化器
(IQ)63に与えられる。
【0054】そして、図2の係数適応器673は係数δ
(n)を対数スケールファクタy(n)の単調減少関数
として更新制御を行う。例えば、係数δ(n)を上述の
式(4)で表す関数として更新制御を行うものである。
【0055】そして、この一実施例では、aを4とし、
bを6としていので、このような設定によると、y
(n)が最小値から最大値に増加するにつれて係数δ
(n)は2−6から2−10へと減少する。このように
係数δ(n)を更新制御することによって、1次の巡回
形ローパスフィルタの通過帯域が、スケールファクタに
対応して制御される。
【0056】このようにして得られた対数スケールファ
クタy(n+1)は適応逆量子化回路(IQ)に与えら
れ、ここで、ADPCM符号Iから予測残差信号Dを求
め、加算器64に与える。そして、加算器64は、適応
予測器(AP)からの予測信号Seと予測残差信号Dと
を加算して、加算結果Sqを得る。この加算結果はデジ
タル再生信号Sqである。このデジタル再生信号SはD
/A変換器69に与えられると共に、次の時刻の予測信
号Seを得るために適応予測器(AP)65に与える。
【0057】そして、適応予測器(AP)65は上述の
適応予測器(AP)25と同様な構成で実現されてい
て、予測信号Seを生成して加算器64に与える。
【0058】一方、D/A変換器69は、直線復号化器
として、デジタル再生信号Sqから例えば直線D/A変
換を行って再生アナログ信号を得るものである。
【0059】以上のような動作によって、符号化装置2
0への入力信号のパワーが比較的に大きい場合には、予
測残差信号は大きな値をとり、スケールファクタuも大
きい値を示す。そして、このスケールファクタuに対応
してローパスフィルタの係数δ(n)が、通過帯域が狭
くなるように制御される。このため、スケールファクタ
は緩やかな変動となり、入力信号のパワーの速い変動を
反映しにくくなる。そして、速い変動が抑制されたスケ
ールファクタuを用いることによって、伝送路に符号誤
りがあったときでも大きな誤差が抑制され、復号化装置
60の再生品質を劣化させる針状の波形歪みを低減させ
ることができる。
【0060】一方、符号化装置20への入力信号のパワ
ーが比較的に小さい場合には、予測残差信号は小さな値
をとり、スケールファクタuも小さな値を示す。このと
きに、スケールファクタuの変動を抑制すると量子化誤
差による雑音(オーバーロード雑音)が多く生じる。従
って、スケールファクタuの値に対応してローパスフィ
ルタは通過帯域が広くなるように係数δ(n)が制御さ
れる。これによって、スケールファクタuは鋭敏に変動
し、量子化による雑音を減少させることができる。
【0061】ここで、スケールファクタuが小さい値を
とるときには伝送路の誤りによる雑音は、復号化装置6
0の再生信号の品質の劣化にはほとんど影響を与えない
と考えられる。
【0062】(再生特性): 図4はこの一実施例の
各部の波形図である。この図4において、伝送路の符号
誤り率を0.3%程度とした。そして、この図4(e)
は伝送路におけるビット誤りのパターン805を表して
いる。そして、図4(c)は従来の方法によるリーク係
数δを固定(δ=2−6)とした場合の再生信号803
の波形図である。図4(d)は上記図4(c)における
従来の方法による送受信間の対数スケールファクタの誤
差の波形804を表している。この図4(d)から対数
スケールファクタの誤差が非常に大きいことを表してい
る。
【0063】そして、図4(a)は、上述の一実施例に
よる再生信号801の波形図である。この図から従来の
波形図803に比べ針状の波形が抑制されていることが
表されている。そして、図4(b)は、上記図4(a)
における送受信間の対数スケールファクタの誤差の波形
802を表している。この図から従来の対数スケールフ
ァクタの誤差の波形804に比べ非常に誤差が小さくな
っていることが表されている。
【0064】(一実施例の効果): 以上の一実施例
のADPCM符号化装置と復号化装置とによれば、リー
ク係数をδ(n)として前回の対数スケールファクタy
(n−1)から最適に求めて更新し、この更新されたリ
ーク係数δ(n)で対数スケールファクタ算出器272
の適応フィルタの係数更新を行うようにしたので、スケ
ールファクタが大きいときには、スケールファクタの変
動を抑制させることができ、伝送路での符号誤りによる
再生信号に生じていた針状の波形歪みを低減できた。更
に、スケールファクタが小さい場合にはスケールファク
タの変動を鋭敏(敏感)にさせることができ、オーバー
ロード雑音を低減することができた。
【0065】従って、この一実施例のADPCM符号化
装置と、復号化装置によれば、伝送路の符号誤り率が悪
い場合でも強い耐性で良好な再生信号を再生し得る。こ
れによって、例えば、無線伝送路などにおける符号誤り
率が悪い場合に非常に再生信号の品質を改善させること
ができるものと考えられる。
【0066】(他の実施例): (1)尚、以上の一
実施例の装置は、無線伝送路に適用するだけでなく、有
線伝送路や、音響伝送路などにも適用して効果があると
考えられる。
【0067】(2)上述の一実施例では、対数スケール
ファクタ算出器272を1次の巡回型デジタルローパス
フィルタとして構成したが、他の構成として、例えば、
(ア)非巡回形で構成することもできるし、また、
(イ)高次の巡回形で構成することもできるし、また、
上記(ア)と(イ)との構成を組み合わせることでも、
上述のような効果を得ることもできる。
【0068】(3)また、上述の一実施例の更新関数変
換器271、672では、テーブルを使用してWを求め
たが、他に例えば、ADPCM符号Iから所定のアルゴ
リズムをDSPで求める構成をとることも好ましい。
【0069】(4)更に、上述の一実施例では、直線符
号化回路(A/D変換器29)と直線復号化回路(D/
A変換器69)と備えたが、他に入力非線形信号(例え
ば、LogPCM信号)を線形信号(PCM信号)へ変
換する信号変換回路を備えて、線形信号に変換して、こ
のPCM信号を適応量子化器(Q)63に与え、復号化
側も再生信号Sqに対して線形信号から非線形信号(例
えば、LogPCM信号)への変換を行って出力するこ
とでも好ましい。
【0070】(5)更にまた、入力信号を帯域分割し
て、この帯域ごとに上述のADPCMを行うことにも適
用することができ、この場合には、量子化スケールファ
クタ適応部をそれぞれの帯域に持つことで対応すること
もできる。
【0071】(6)また、ADPCMだけでなく、他に
DPCMやADM(適応デルタ変調)やCADM(複合
ADM)やAPC(適応予測符号化)などにも適用する
ことができる。
【0072】(7)更に、入力信号としては、音声信
号、音響信号だけでなく、他にモデム信号や、ファクシ
ミリ信号などのアナログ信号などでも使用することがで
きる。
【0073】(8)更にまた、上述の一実施例では、対
数スケールファクタy(n)として、対数領域で求める
例を示したが、他に線形領域で求めて処理する場合は、
スケールファクタu(n+1)を直接求める次の式
(5)で処理方法を表すことができる。
【0074】 u(n+1)=(u(n)[1−δ(n)])*(M(I(n))δ(n)) M(I(n))=2(W(I(n))) ……(5) このような式(5)に対応するように量子化及び逆量子
化スケールファクタ算出器の適応フィルタと係数適応器
とを構成することで直接u(n+1)を求め適応量子化
器と適応逆量子化器とで用いることができる。
【0075】
【発明の効果】以上述べた様にこの発明によれば、入力
信号と予測信号との差分である残差信号の大きさに対応
した更新信号であって、サンプリングごとに得られる適
応量子化信号から更新信号を生成し、この更新信号から
適応フィルタ手段によって上記量子化用スケールファク
タを生成するものであって、前に求めた量子化用スケー
ルファクタから適応フィルタ手段のフィルタ係数を更新
し、新たな量子化用スケールファクタを求めるようにし
ているので、このような方法を適応量子化回路や適応逆
量子化回路に適用することで、入力信号の大きさに応じ
て最適な量子化と逆量子化を行うことができ、伝送路で
の符号誤りが比較的に頻繁に起きるような場合でも受信
側での再生信号の品質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例のADPCM符号化装置の
機能構成図である。
【図2】一実施例のADPCM復号化装置の機能構成図
である。
【図3】一実施例の更新関数変換器で使用するテーブル
の説明図である。
【図4】一実施例の波形図である。
【符号の説明】
20…ADPCM符号化装置、21…差分器、22…、
適応量子化器(Q)、23、63…適応逆量子化器(I
Q)、24、64…加算器、25、65…適応予測器
(AP)、27…量子化スケールファクタ適応部、29
…A/D変換器、40…、50…、60…ADPCM復
号化装置、67…逆量子化スケールファクタ適応部、6
9…D/A変換器、271、671…更新関数変換器、
272、672、…対数スケールファクタ算出器、27
3、673…係数適応器。
フロントページの続き (72)発明者 深沢 敦司 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電 気工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−324900(JP,A) 特開 平2−174322(JP,A) 特開 昭63−300300(JP,A) 特開 昭63−110821(JP,A) 特開 昭63−263831(JP,A) 特開 平2−131038(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10L 19/00

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入力信号から適応量子化を行って適応量
    子化信号を得るために用いられるファクタであって、量
    子化ステップをスケーリングするための量子化用スケー
    ルファクタを上記適応量子化信号から求める量子化スケ
    ールファクタ生成方法において、 入力信号と予測信号との差分である残差信号の大きさに
    対応した更新信号であって、サンプリングごとに得られ
    る適応量子化信号から上記更新信号を生成し、 この更新信号から適応フィルタ手段によって上記量子化
    用スケールファクタを生成するものであって、前に求め
    た量子化用スケールファクタから上記適応フィルタ手段
    のフィルタ係数を更新し、新たな量子化用スケールファ
    クタを求めることを特徴とした量子化スケールファクタ
    生成方法。
  2. 【請求項2】 適応量子化信号から適応逆量子化を行っ
    て量子化信号を得るために用いられるファクタであっ
    て、逆量子化ステップをスケーリングするための逆量子
    化用スケールファクタを上記適応量子化信号から求める
    逆量子化スケールファクタ生成方法において、 上記適応量子化信号から上記更新信号を生成し、 この更新信号から適応フィルタ手段によって上記量子化
    用スケールファクタを生成するものであって、前に求め
    た量子化用スケールファクタから上記適応フィルタ手段
    のフィルタ係数を更新し、新たな量子化用スケールファ
    クタを求めることを特徴とした逆量子化スケールファク
    タ生成方法。
  3. 【請求項3】 入力信号から量子化スケールファクタを
    用いて適応量子化を行って適応量子化信号を得る適応量
    子化器と、上記適応量子化信号から上記量子化用スケー
    ルファクタを求める量子化スケールファクタ生成回路と
    を備えた適応量子化回路において、 上記量子化スケールファクタ生成回路は、入力信号と予
    測信号との差分である残差信号の大きさに対応した更新
    信号であって、サンプリングごとに得られる適応量子化
    信号に対して上記更新信号を生成する更新信号生成手段
    と、 この更新信号から上記量子化用スケールファクタを生成
    する適応フィルタ手段と、 前に求めた量子化用スケールファクタから上記適応フィ
    ルタ手段のフィルタ係数を更新させる係数更新手段とを
    備え、 上記適応量子化器は、更新された量子化用スケールファ
    クタを用いて適応量子化を行うことを特徴とする適応量
    子化回路。
  4. 【請求項4】 上記請求項3に記載の適応量子化回路に
    おいて、 上記更新信号生成手段は、 残差信号の大きいレベルに対する適応量子化信号には大
    きい値の更新信号を与え、残差信号の小さいレベルに対
    する適応量子化信号には小さい値の更新信号を与えるこ
    とを特徴とした適応量子化回路。
  5. 【請求項5】 適応量子化信号から逆量子化スケールフ
    ァクタを用いて適応逆量子化を行って量子化信号を得る
    適応逆量子化器と、上記適応量子化信号から逆量子化ス
    ケールファクタを求める逆量子化スケールファクタ生成
    回路とを備えた適応逆量子化回路において、 上記逆量子化スケールファクタ生成回路は、 上記適応量子化信号から更新信号を生成する更新信号生
    成手段と、 この更新信号から上記逆量子化用スケールファクタを生
    成する適応フィルタ手段と、 前に求めた逆量子化用スケールファクタから上記適応フ
    ィルタ手段のフィルタ係数を更新させる係数更新手段と
    を備え、 上記適応逆量子化器は、更新された逆量子化用スケール
    ファクタを用いて適応逆量子化を行うことを特徴とする
    適応逆量子化回路。
  6. 【請求項6】 上記請求項5に記載の適応逆量子化回路
    において、 上記更新信号生成手段は、 残差信号の大きいレベルに対する適応量子化信号には大
    きい値の更新信号を与え、残差信号の小さいレベルに対
    する適応量子化信号には小さい値の更新信号を与えるこ
    とを特徴とした適応逆量子化回路。
  7. 【請求項7】 請求項3又は4に記載の上記適応量子化
    回路を備え、更に入力信号に対して直線符号化を行い上
    記適応量子化回路に与える直線符号化回路、又は入力非
    線形信号を線形信号に変換し上記適応量子化回路に与え
    る信号変換回路のいずれかを備えたことを特徴とした符
    号化装置。
  8. 【請求項8】 請求項5又は6に記載の上記適応逆量子
    化回路を備え、更に適応逆量子化器で得られた量子化信
    号に対して直線復号化を行う直線復号化回路、又は適応
    逆量子化器で得られた量子化信号に対して線形信号から
    非線形信号への信号変換を行う信号変換回路のいずれか
    を備えたことを特徴とした復号化装置。
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