JP3397278B2 - ストリップ冷却装置のラミナーヘッダー - Google Patents

ストリップ冷却装置のラミナーヘッダー

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【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼材冷却装置、特
にホットストリップ圧延設備のストリップ冷却装置にお
けるラミナーヘッダーに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】図３において、ストリップ冷却装置のラ
ミナーヘッダー１は一端から冷却水が流入し、円形断面
を有する長尺パイプ上部にＵベンドを介して取り付けら
れている複数のラミナーノズル２からストリップ上へ注
水する。また、ラミナーヘッダーの他端はエンドカバー
３により閉鎖された構造となっている。当該ラミナーノ
ズル１本から注水される流量は、ラミナーヘッダー内の
圧力ヘッドとノズル長さに関するサイフォンヘッドで決
定される（数１）。
【０００３】
【数１】
【０００４】サイフォンヘッドＨsはラミナーヘッダー
長さの関数であり、各ラミナーノズルの長さが同一であ
れば同一効果（一定）となる。一方、ラミナーヘッダー
長手方向の任意の各ラミナーノズル位置におけるラミナ
ーヘッダー内圧Ｈiはラミナーヘッダー管の管摩擦抵抗
による圧力損失Δｈ1iと流速損失ヘッドΔｈ2iの両エネ
ルギー損失を伴うので、ラミナーヘッダー入口の流入ヘ
ッドＨ0は先端へ行くほど低下する（数２）。
【０００５】
【数２】
【０００６】管摩擦抵抗による圧力損失Δｈ1i、流速損
失ヘッドΔｈ2iは、ラミナーヘッダーの長さ及びラミナ
ーヘッダー管内流速ｖiのそれぞれ関数であり、数３と
なる。
【０００７】
【数３】
【０００８】ラミナーヘッダー管内流速ｖiはラミナー
ヘッダーの入口で最も速く、その先端へ行くほどラミナ
ーノズル個数が減るため、当該部位の断面を通過する流
量が減少し、ラミナーヘッダー管内流速ｖiは徐々にに
減速していく。従って、流速損失ヘッドΔｈ2iは、ラミ
ナーヘッダー管内流速Ｖiに比例しラミナーヘッダー先
端へ行くほど小さくなる。
【０００９】又、管摩擦抵抗による圧力損失Δｈ1iは、
ラミナーヘッダー管内流速ｖiが減少する一方Ｌiがラミ
ナーヘッダー先端へ行くほど大きくなるため増加する
（図４参照）。この現象による影響を小さくする対策と
して、特開昭５６−１９５６２号や実開平６−７１３２
７号がある。
【００１０】
【発明が解決しようとする課題】一般にホットストリッ
プ圧延設備のストリップ冷却設備における使用水量の範
囲では流速損失ヘッドΔｈ2iＭＡＸの方が管摩擦抵抗に
よる圧力損失Δｈ1iＭＡＸよりも大きいのでラミナーヘ
ッダーの内圧Ｈiは先端の方が大きくなる。その結果数
１よりラミナーヘッダーからの注水量ｑiは、ラミナー
ヘッダー入口部で少なく先端部で多くなる。これが従来
ラミナーヘッダー固有の長手方向流量分布が不均一にな
るという問題点である。
【００１１】ラミナーヘッダーの長手方向流量分布が不
均一になるとストリップの板幅方向の温度分布が不均一
になり、ホットストリップ成品の板幅方向材質不均一
や、ホットランテーブルでの走行安定性に弊害を及ぼし
ストリップの巻取形状への悪影響を与える要因となり問
題視されている。
【００１２】これらの問題に対して、先に挙げた特開昭
５６−１９５６２号で提示されるようなラミナーヘッダ
ーの長手方向の２ヵ所から冷却水を分割流入させる方法
や、実開平６−７１３２７号で提示される二重管ラミナ
ーヘッダーを用いる方法が考案されているが、ラミナー
ヘッダーの応答特性への悪影響或いはメンテナンス性の
悪化等が懸念され、かつその実現のためには従来ラミナ
ーヘッダー本体及び冷却水配管系統を大幅に改造する必
要がありその費用面にも大きな障壁がある。従って、経
済的な方法でラミナーヘッダーの長手方向の流速分布を
均一化する技術が必要である（課題１）。
【００１３】また、長期間使用したラミナーヘッダー内
の底面にはダスト等が堆積するため、ラミナーヘッダー
は定期的に清掃する必要がある。従って、ラミナーヘッ
ダーのメンテナンス性を損なうような構造に改造するこ
とは回避しなければならなく、むしろ、その清掃作業の
負荷を軽減する必要がある（課題２）。
【００１４】
【課題を解決するための手段】（課題１）を解決するた
め、熱間圧延鋼材の冷却工程のストリップ冷却装置ラミ
ナーヘッダーにおいて、各ラミナーノズルからの注水量
を均一化できるラミナーヘッダー管内流速分布均一化斜
板を組み込んだ構造とする。又、ラミナーヘッダー内の
損失分布を均一化するためラミナーヘッダーの断面積が
ラミナーヘッダーの入口から先端方向へ徐々に縮少する
構造にする。更に、ラミナーヘッダーの断面が円形状で
あるため、該ラミナーヘッダー管内流速分布均一化斜板
の上面板を長楕円形状を有する構造とする。
【００１５】（課題２）を解決するため、該ラミナーヘ
ッダー管内流速分布均一化斜板の固定部をラミナーヘッ
ダー先端部のエンドカバー部に設け、メンテナンス性の
向上を図り、かつ従来ラミナーヘッダーを改造する場合
にも経済的にそのラミナーヘッダー管内流速分布均一化
効果を実現することを可能とする。また、ラミナーヘッ
ダー内部の清掃作業負荷を軽減する目的で、該ラミナー
ヘッダー管内流速分布均一化斜板の中央および先端に装
入時の位置決め、使用時の振れ防止機能を兼ね、ヘッダ
ー内に堆積するダストも排除可能なスクレーパーを設け
た構造とする。
【００１６】基本的な考え方として、ラミナーヘッダー
長手方向に各ラミナーノズルの流量が不均一となること
を解決するためにラミナーノズル流量差が発生する支配
的な要因となっているラミナーヘッダー管内の損失分布
を均一化する。すなわち、ヘッダー内の損失分布に応じ
てラミナーヘッダー内の断面積を変化させ、流体の速度
圧Δｈ2iと管摩擦抵抗による圧力損失Δｈ1iとの和がラ
ミナーヘッダーの全長で等しくなるようにする。従っ
て、ラミナーヘッダーの流入口でラミナーヘッダー管内
の断面積が広く、先端へ行くほど断面積が狭くなりΔｈ
1i＋Δｈ2iがどの断面でも等しくなるような軌跡を有す
る構造の斜板をラミナーヘッダー管内に装入する（図
１）。
【００１７】次にその具体的な方法を述べる。図１はラ
ミナーヘッダー管内流速分布均一化斜板を装着した時の
ラミナーヘッダー内を透視した図であり、ラミナーヘッ
ダー１は一端にエンドカバー３を有し長尺円形のパイプ
構造である。ラミナーノズル２は上部が１８０°曲がっ
た小径パイプ形状でラミナーヘッダー１の長手方向上部
に開けられた穴に複数取り付けられる（図５参照）。冷
却水はラミナーヘッダー１の図面右手側から流入し図面
左手方向へ流れ、各ラミナーノズル２から流出する。
【００１８】図６のラミナーヘッダー管内流速分布均一
化斜板本体は、図１、図２に示す通り各断面がＴ字型で
長手方向に上面が斜めになった曲線形状をしている。上
面板４ａには、縦リブ４ｂが溶接され一体構造となって
いる。又、縦リブ４ｂの中央及び先端には堆積物掻き出
し用のスクレーパー４ｃが、その一端にはＬ型の固定座
４ｄが溶接され取り付けてある。
【００１９】図７において、ラミナーヘッダー管内流速
分布均一化斜板本体側の固定座４ｄはラミナーヘッダー
のエンドカバー３に斜板固定ボルト５で締結され一体構
造となる。
【００２０】ラミナーヘッダー管内流速分布均一化斜板
の装着方法は、ラミナーヘッダー１内へラミナーヘッダ
ー管内流速分布均一化斜板４装入し、図８に示すエンド
カバー３とラミナーヘッダー１のフランジ１ａとをフラ
ンジボルト６で締結固定すれば、図９のように一体構造
となる。
【００２１】
【作用】ラミナーヘッダー管内流速分布均一化斜板装入
後のラミナーヘッダー内の冷却水の流路断面積は、流入
側で広くエンドカバー端で狭くなっている。このラミナ
ーヘッダーの断面積の変化の割合が、各ラミナーノズル
位置のラミナーヘッダー内の管摩擦抵抗による圧力損失
Δｈ1iと流速損失ヘッドΔｈ2iの和の変化の割合と等し
くなるようにラミナーヘッダー管内流速分布均一化斜板
を図６の形状に形成すれば、ラミナーノズル部の内圧ヘ
ッドＨｉがラミナーヘッダー１の長手方向の各部位で等
しくなり、各ラミナーノズルの注水流が一定となりラミ
ナーヘッダー長手方向の流量分布の均一化が図ることが
できる。
【００２２】また、ラミナーヘッダー入口圧力ヘッドＨ
0が２倍或いは１／２倍程度増減変化した場合でもラミ
ナーヘッダー１の長手方向の流量分布はほぼ同じ均一形
態となる。このことは操業ニーズ等によりラミナーヘッ
ダーの所要流入流量が変化しても、ラミナーヘッダー１
の長手方向の流量分布の均一化が保持できることを意味
している。
【００２３】また、ラミナーヘッダーをメンテナンスす
る際、ラミナーヘッダーからラミナーヘッダー管内流速
分布均一化斜板を引き抜くと同時にその先端にあるスク
レーパー４ｃがラミナーヘッダー内底面の堆積物を自然
に掻き出すことにより、ヘッダー内部の清掃作業の省力
化を図ることができる。
【００２４】
【発明の効果】本発明のラミナーヘッダーと従来のラミ
ナーヘッダーとのラミナーヘッダー長手方向流量分布を
図１０に示す。従来ラミナーヘッダーの流量分布はバラ
ツキが大きい、これに対し本発明ラミナーヘッダーの流
量分布のバラツキはラミナーヘッダー入口から先端部の
全長において±２．５％以内の範囲で均一化が図られて
いる。ここで±２．５％のバラツキは実験に用いたラミ
ナーヘッダー管内流速分布均一化斜板の形状を製作コス
ト削減の観点で直線近似して製作したため発生したもの
で、製作コストを無視すれば流量分布のバラツキを理論
上ゼロにすることは可能である。
【００２５】また、ラミナーヘッダーの入口流量が変化
してもラミナーヘッダー長手方向の流量分布差は変化せ
ず、所要流量の５０％及び２００％の流量を流した場合
でもラミナーヘッダー長手方向流量分布差は所要流量同
様±２．５％以内範囲で流量分布の均一化が保持される
（図１１、図１２参照）。
【００２６】このことは例えば数１においてサイフォン
ヘッドＨsを可変させて流量分布の均一化図ることを指
向した場合、所要流量に対しては均一化の目的を計算通
り達成できるが、所要流量で設定した可変ラミナーノズ
ルに所要流量以外の流量が流入した場合図１３、図１４
に示す通り流量分布は不均一になる欠点に対して、本発
明がラミナーヘッダーの入口流量の変動に対しても優れ
た自由度を有している。
【００２７】又、従来ラミナーヘッダーの流量分布均一
化方法として、ラミナーヘッダーの入口部と先端部とで
設置レベル差を付与するという位置ヘッドを利用した考
案も考えられるが、ラミナーヘッダーの圧力損失曲線の
変化に対して、直線近似でヘッド差を与えるため流量分
布均一化の精度が悪く、かつラミナーヘッダーの応答性
へも悪影響与えてしまう欠点がある（図１５参照）。
【００２８】以上により、本発明品はストリップのの幅
方向流量分布の均一化を図ることができストリップの幅
方向の材質均一化と、幅方向の温度差も無くなりホット
ランテーブルでのストリップ走行安定性の向上に大きく
寄与することができた。
【００２９】又、既存ラミナーヘッダーの外観形状を変
更することなく、エンドカバーの一部を加工するだけで
簡単に斜板を組み込むことが可能な構造であり、経済的
な費用で改造の実現が可能となった。
【００３０】更に、斜板先端のスクレーパーにより、ヘ
ッダー内清掃時の作業負荷も軽減する効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図１】は、ラミナーヘッダー管内流速分布均一化斜板
装着時のラミナーヘッダー内透視図。
【図２】は、ラミナーヘッダー管内流速分布均一化斜板
装着時のラミナーヘッダー内断面図。
【図３】は、ラミナーヘッダーによるストリップ冷却状
態図。
【図４】は、既存ラミナーヘッダーの圧力損失を示す概
念図。
【図５】は、ラミナーヘッダーの外観図。
【図６】は、ラミナーヘッダー管内流速分布均一化斜板
の単体図。
【図７】は、ラミナーヘッダーのエンドカバー部詳細
図。
【図８】は、ラミナーヘッダーのエンドカバー部の外観
図。
【図９】は、ラミナーヘッダー管内流速分布均一化斜板
装着時のラミナーヘッダー内透視図。
【図１０】は、ラミナーヘッダーの長手方向流量分布の
状態を示す図。
【図１１】は、本発明品の入口流量変化に対する管内流
速分布の理論値を示す図。
【図１２】は、本発明品の入口流量変化に対する管内流
速分布の実験値を示す図。
【図１３】は、サイフォンヘッド可変方式の入口流量変
化に対する管内流速分布の理論値を示す図。
【図１４】は、サイフォンヘッド可変方式の入口流量変
化に対する管内流速分布の実験値を示す図。
【図１５】は、位置ヘッド可変方案の説明図。
【符号の説明】
１：ラミナーヘッダー、 １ａ：ラミナーヘッダー側フ
ランジ、 ２：ラミナーノズル、 ３：エンドカバー、
４：ラミナーヘッダー管内流速分布均一化斜板、 ４
ａ：上面板、 ４ｂ：縦リブ、 ４ｃ：スクレーパー、
４ｄ：固定座、 ５：斜板固定ボルト、 ６：フラン
ジボルト。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永末 信靱 千葉県君津市人見1036の１ 太平工業株 式会社君津支店内 (72)発明者 鈴木 義高 千葉県君津市人見1036の１ 太平工業株 式会社君津支店内 (56)参考文献 特開 平６−71327（ＪＰ，Ａ) 実開 平４−129506（ＪＰ，Ｕ) 実開 平６−23607（ＪＰ，Ｕ) 実開 平５−18713（ＪＰ，Ｕ) 実開 平３−85104（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名) B21B 45/02 320

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】熱間圧延鋼材の冷却工程のストリップ冷却
    装置ラミナーヘッダーにおいて、各ラミナーノズルから
    の注水量を均一にすることを可能にするラミナーヘッダ
    ー管内流速分布均一化斜板を組み込んだことを特徴とす
    るストリップ冷却装置のラミナーヘッダー。
  2. 【請求項２】請求項１のラミナーヘッダーの断面積がラ
    ミナーヘッダー流入口側から先端側のラミナーヘッダー
    の長手方向に徐々に減少変化する形状としたことを特徴
    とするストリップ冷却装置のラミナーヘッダー。
  3. 【請求項３】請求項１のラミナーヘッダー管内流速分布
    均一化斜板の本体形状が長楕円形状を有することを特徴
    とするストリップ冷却装置のラミナーヘッダー。
  4. 【請求項４】請求項１のラミナーヘッダーにおいて、該
    ラミナーヘッダー管内流速分布均一化斜板の固定部分を
    ラミナーヘッダー先端のエンドカバーに設け、取付・取
    外しが容易なボルトナット締結方式とし、斜板本体のラ
    ミナーヘッダー内での位置決め、及び確実に、かつ固定
    を容易にしたことを特徴とするストリップ冷却装置のラ
    ミナーヘッダー。
  5. 【請求項５】請求項１の該ラミナーヘッダー管内流速分
    布均一化斜板の中央及び先端に装入時の位置決め、使用
    時の振れ止め、並びにラミナーヘッダー内に堆積したダ
    スト等も排除可能なスクレーパーを複数取り付けたこと
    を特徴とするストリップ冷却装置のラミナーヘッダー。
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DE102018205684A1 (de) * 2018-04-13 2019-10-17 Sms Group Gmbh Kühleinrichtung und Verfahren zu deren Betrieb
CN112191698B (zh) * 2020-09-29 2023-01-24 太原科技大学 一种用于热轧h型钢高压水除鳞装置

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