JP3395632B2 - 吊り上げ磁石の遮熱・導風板 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は一般に遮熱・導風板
に関し、特に吊り上げ磁石に使用される遮熱・導風板の
改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の吊り上げ磁石１の正面図を図４
（Ａ）に、図４（Ａ）のＸ−Ｘ断面図を図４（Ｂ）に、
図４（Ａ）の底面部分図を図４（Ｃ）に示す。吊り上げ
磁石（いわゆるリフティングマグネット）１は、長手方
向下部に延びる電磁石の磁極Ｎ、Ｓの下面２′および
３′に、通常鋼板など常温の帯磁性材料を付着して運搬
するのに使用される。しかし、最近では能率向上のため
熱間加工、または熱処理直後などで高温のままの鋼材を
運搬する場合が多くなってきた。このように、高温鋼材
からの輻射熱及び磁極Ｎ、Ｓを介する伝導熱を防ぐとと
もに、高温鋼材や常温鋼材からの冷却効率を上げるため
に、 吊り上げ磁石１の底面１ａに平行に、磁極Ｎ、Ｓ間
の縦方向のほぼ中間に遮熱板５が取り付けられ吊り上げ
磁石１の機能劣化や寿命低下を防止している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】図４（Ａ）、図４
（Ｂ）および図４（Ｃ）とに示されるように、電磁石の
底面１ａに付着された磁極Ｎ、Ｓの縦方向の中間で、電
磁石の磁極ＳとＮの中間に全面的に取り付けられた遮熱
板５は、運搬する被吊り上げ材としての高温鋼板４から
の輻射熱を防ぐことはできるが、通常は磁極Ｓ、Ｎ、Ｓ
の３つの磁極に跨がって介在する遮熱板５により外部空
気の流通が妨げられるため吊り上げ磁石１の冷却の妨げ
になっている。そこで、高温鋼板４からの輻射熱を防ぐ
とともに、常温鋼板に対しても冷却効率の向上を図るこ
とが本発明に課された課題である。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明では、請求項１に
記載のものは、 １）上段に第１の遮熱・導風板１５ａと１５ｂの２種を
長手方向の前後に配置して、両者の中間に中間分割隙間
１５ｃが明けられ、この中間分割隙間１５ｃの下方に段
違いに第２の遮熱・導風板１５ｄを配置して対流効果を
上げるように構成した。 ２）また、請求項２に記載のものは、前記と同様、上段
に第１の遮熱・導風板２５ａと２５ｂとを長手方向の前
後に配置するとともに、両者の中間に中央分割隙間２５
ｃが明けられ、さらに断面形状が逆Ｖ字形の第２の遮熱
・導風板２５ｄを別個に設けて走行風を遮熱・導風板の
分割隙間から吊り上げ磁石の底面と側面とに取り入れる
ように構成した。 ３）さらに、請求項３に記載のものは、中心部にＮ、Ｓ
何れかの極が、 円周部に前記とは異なる極が配置される
シリンダ形の丸形吊り上げ磁石である。 この丸形吊り上げ磁石では、 前記円周部の極部に複数個
の半径方向と軸線方向とに所定の幅を有する開口が設け
られ、これらの開口の軸線方向中間付近にリング状の第
１の遮熱・導風板が水平に極の内周に取り付けられ、前
記中心部の軸状極部の下端近くにリング状の第２の遮熱
・導風板が水平に取り付けられる。 このような構成により、 被吊り上げ鋼板からの輻射熱を
遮断するとともに、前記開口の下外方から導入される冷
却空気が、第１と第２の遮熱・導風板の間を中心に向
い、 第１の遮熱・導風板と中心極部との間を上昇し、磁
石の底部に沿って外方へ向い、前記開口から外上方へと
流れ、遮熱と導風とにより冷却効率が向上される丸形吊
り上げ磁石を開発した。

【０００５】

【発明の実施の形態】図１（Ａ）は、本発明による吊り
上げ磁石の遮熱・導風板の、第１の実施の形態を示す正
面図で、図１（Ｂ）は、図１（Ａ）のＸ−Ｘ断面図であ
る。吊り上げ磁石１１の磁極Ｎ、Ｓの間に、従来技術と
して図４（Ａ）と（Ｂ）に示した遮熱板５と、ほぼ同様
な位置に長手方向の中央部で２分された第１の遮熱・導
風板１５ａと１５ｂとを設けて、これら第１の遮熱・導
風板１５ａと１５ｂの長手方向の内方端の１５ｅと１５
ｆとで区画された中間に、中央分割隙間１５ｃを形成す
るようにした。この中央分割隙間１５ｃの下方に、第２
の遮熱・導風板１５ｄを、前記第１の遮熱・導風板１５
ａ、１５ｂに平行に取り付け、冷却空気が第２の遮熱・
導風板１５ｄの左右両端の上方から、やや中央に向かっ
て流れた後、逆方向に流れを変え第１の遮熱・導風板１
５ａと１５ｂの、それぞれ上方から、左右の両外方に向
かって流れ、矢印ＡとＢに示すように、吊り上げ磁石１
１の両側面に沿って外方に、さらに上方に流れるように
した。即ち、被吊り上げ材としての高温鋼板４により温
度上昇した空気により、第２の遮熱・導風板１５ｄの温
度は上昇するが、第２の遮熱・導風板１５ｄの上面１５
ｄ′と、第１の遮熱・導風板１５ａ、１５ｂの外部の隙
間１５ｇ、１５ｈから導かれる空気とが、中央部で上昇
作用を行うことにより加熱作用を僅かしか受けていない
空気が導かれ冷却作用が得られる。また、常温の被吊り
上げ物でも吊り上げ磁石の自己発熱により空気が上昇作
用を行う。

【０００６】図２（Ａ）は、本発明の第２の実施の形態
を示す正面図で、図２（Ａ）のＸ−Ｘ断面図を図２
（Ｂ）に示す。第１の実施の形態と異なる点は、図１
（Ｂ）の第２の遮熱・導風板１５ｄの代わりに、逆Ｖ字
形をなした第２の遮熱・導風板２５ｄを配置し、中央部
が分断された２枚の第１の遮熱・導風板２５ａと２５ｂ
とが、内方の端部２５ｅと２５ｆとで形成された中央分
割隙間２５ｃが生ずるように形成した点である。なお、
第２の遮熱・導風板２５ｄは、これらの内方の端部２５
ｅと２５ｆとほぼ同じ高さで、その下方に配置され、そ
の外方の両端は斜めに下がって吊り上げ磁石２１の最下
部の両外端２５ｇに至っている。これ以外は、第１の実
施の形態とほぼ同様である。この場合は、吊り上げ磁石
２１が、図２（Ｂ）に示すようにクレーン等で矢印Ｃ
（参照）の方向へ走行すると、上記の図１（Ａ）と図１
（Ｂ）に示す第１の実施の形態で得られる冷却作用に加
えて、矢印Ｃに示す空気の流れが吊り上げ磁石２１の底
面２１ａに新たに追加される。

【０００７】図３（Ａ）は、本発明による第３の実施の
形態として、底面図で見て丸形の吊り上げ磁石の遮熱・
導風板の正面図であり、図３（Ｂ）は底面図、図３
（Ｃ）は図３（Ｂ）のＸ−Ｘ断面図である。丸形吊り上
げ磁石３１の下部中央には、軸状のＮ極、外周にシリン
ダ状のＳ極が備えられ、Ｓ極には半径方向に磁石の底面
３１ａと面一（つらいち）に複数個（この例では４個）
の角形の開口３６ａ、３６ｂ、３６ｃ、３６ｄが等分割
角度に設けられる。Ｓ極の内周の開口の少し下方に、リ
ング状の第１の遮熱・導風板３５ａが水平に取り付けら
れ、一方、軸状のＮ極の下端部近くにリング状の第２の
遮熱・導風板３５ｂが水平に取り付けられる。この構成
により、高温鋼板４の輻射熱を遮断する以外に、丸形吊
り上げ磁石３１に通電されない時は、被吊り上げ材とし
ての高温または常温の鋼板は吊り上げられず、冷却空気
がＮ極とＳ極の中間の下方３５ｄから導入され、第１の
遮熱・導風板３５ａの下面と第２の遮熱・導風板３５ｂ
の上面の間、Ｎ極と第１の遮熱・導風板３５ａの間、磁
石の底面３１ａと、第１の遮熱・導風板３５ａの上面３
５ａ′との間を通って矢印Ｄのように、Ｆから上方へさ
らに外方へ流れ冷却作用を行う。図３（Ａ）に示すよう
に高温鋼板４を吊り下げて、水平方向Ｄに走行する時に
は冷却空気は走行方向前方の開口３６ａから導入され、
磁石の底面３１ａと第１の遮熱・導風板３５ａの上面と
の間を通り、一部はこれと直角の開口３６ｂ、３６ｄか
ら、残部は走行方向の後方の開口３６ｃから、磁石の外
上方に流れ冷却作用を行う。

【０００８】

【発明の効果】上記の通り、本発明の構成によれば、遮
熱・導風板の分割部の隙間による対流効果や、走行風の
導入効果により、吊り上げ磁石の冷却効果が向上し、高
温による被吊り上げ鋼材から発せられる熱と、吊り上げ
磁石から発生する熱による機能劣化、寿命の低下が防止
されるという優れた効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】同図（Ａ）は、本発明による吊り上げ磁石の遮
熱・導風板の第１の実施の形態の正面図で、同図（Ｂ）
は同図（Ａ）のＸ−Ｘ断面図である。

【図２】同図（Ａ）は、第２の実施の形態の正面図で、
同図（Ｂ）は同図（Ａ）のＸ−Ｘ断面図である。

【図３】同図（Ａ）は、丸形吊り上げ磁石の遮熱・導風
板の正面図で、同図（Ｂ）は底面図で、同図（Ｃ）は同
図（Ｂ）のＸ−Ｘ断面図である。

【図４】同図（Ａ）は、従来の吊り上げ磁石の遮熱板の
正面図で、同図（Ｂ）は同図（Ａ）のＸ−Ｘ断面図であ
り、同図（Ｃ）は同図（Ａ）の底面図である。

【符号の説明】

４：被吊り上げ材（鋼板） １１、２１、３１：吊り上げ磁石 １５ａ、１５ｂ、３５ａ：第１の遮熱・導風板 １５ｄ、２５ｄ、３５ｂ：第２の遮熱・導風板 １５ｃ、２５ｃ：中央分割隙間 １５ｇ、１５ｈ：隙間 １１ａ、２１ａ、３１ａ：磁石の底面 ２５ｂ′：第１の遮熱・導風板の上面 ２５ｄ′：第２の遮熱・導風板の上面 ２５ｅ、２５ｆ：内方端部 ２５ｇ：長手方向外方の下端 ３６ａ〜３６ｄ：開口

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 長手軸に平行な両端部に（Ｓ、Ｎ）何れ
   かの極が、中央には上記とは異なる極性の極が平行に配
   置されて、 前記（Ｓ）極と（Ｎ）極およびこの（Ｎ）極
   と前記（Ｓ）極の前記長手軸の中央部に遮熱板（５）が
   配置された吊り上げ磁石において、 前記遮熱板（５）に代わる遮熱・導風板は、 磁石（１
   １）の底面（１１ａ）と前記磁極の下面（１１ｂ）との
   長手方向の中間に中央分割隙間（１５ｃ）を有して前後
   に２分割された第１の遮熱・導風板（１５ａ、１５ｂ）
   と、 前記磁石の下方で前記中央分割隙間（１５ｃ）の下方
   に、所定の隙間を保って長手軸の両端間に配置された第
   ２の遮熱・導風板（１５ｄ）と、 を有し、 冷却空気の流れが、 前記第１の遮熱・導風板（１５ａ、
   １５ｂ）の下方で、 前記第２の遮熱・導風板（１５ｄ）
   の間の前方と後方の隙間（１５ｇ、１５ｈ）から、前記
   の中央分割隙間（１５ｃ）内に進入するとともに、 中央
   部の近くに至って流れの方向が反転されて、 前記第１の
   遮熱・導風板（１５ａ、１５ｂ）の上面（１５ａ′ 、
   １５ｂ′ ）と、前記吊り上げ磁石の底面（１１ａ）と
   の間の中間を、それぞれの前、後の外方（Ａ、Ｂ）に向
   かって流れて遮熱と導風とにより冷却効率が向上される
   ことを特徴とする吊り上げ磁石の遮熱・導風板。
2. 【請求項２】 請求項１記載の吊り上げ磁石の遮熱・導
   風板において、第２の遮熱・導風板（２５ｄ）は、中央
   分割隙間（２５ｃ）とほぼ同一高さで長手方向の全域に
   亙って下部が長手方向の下端（２５ｇ）まで広がり、上
   部が狭い逆Ｖ字形として配置され、前記の長手軸方向
   （Ｃ）に走行する場合に、走行方向前方の吊り上げ磁石
   （２１）の底面（２１ａ）と、第１の遮熱・導風板の上
   面（２５ａ′、２５ｂ′）と第２の遮熱・導風板の上面
   （２５ｄ′）との、間から冷却空気を導入して、前記第
   ２の遮熱・導風板（２５ｄ）の前方の斜面に沿って前記
   第１の遮熱・導風板の進行方向の後側の上面（２５
   ａ′）に向かって誘導し、 前記吊り上げ磁石の機外
   （Ｃ′）に放出し、進行方向が逆になる場合は、これと
   逆になり遮熱と導風とによる冷却効率が向上されること
   を特徴とする吊り上げ磁石の遮熱・導風板。
3. 【請求項３】 中心部にＮ、Ｓ何れかの軸状の極が、円
   周部には前記と異なる極が配置されるシリンダ状の丸形
   吊り上げ磁石（３１）において、 前記円周部の極部に設けられ、半径方向と軸線方向に所
   定の長さを有する複数個の開口（３６ａ、３６ｂ、３６
   ｃ、３６ｄ）と、 前記開口の下方に水平に、遮熱軸線方向の中間付近で、
   Ｎ、Ｓ何れかの極の内周に取り付けられた環状の第１の
   遮熱・導風板（３５ａ）と、 前記中心部の軸状の極部の下端の外周近くに水平に配置
   された環状の第２の遮熱・導風板（３５ｂ）とを有し、
   高温鋼板と常温鋼板とを含む被吊り上げ材（４）からの
   輻射熱を遮断するとともに、 走行方向（Ｄ）の前方の開口（３６ａ）から導入される
   冷却空気は、磁石の底面（３１ａ）と、第１の遮熱・導
   風板（３５ａ）の上面（３５ａ′）との間を通り、一部
   はこれに直角に明けられた開口（３６ｂ、３６ｄ）か
   ら、残部は走行方向後方の開口（３６ｃ）から吊り上げ
   磁石（３１）の外方に放出され、冷却効率が助長される
   ことを特徴とする丸形吊り上げ磁石の遮熱・導風板。