JP3391536B2 - 高強度歯車用浸炭用鋼 - Google Patents
高強度歯車用浸炭用鋼Info
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Description
る歯車用鋼、なかでも自動車等の駆動伝達用に適用でき
る歯元疲労強度及び耐ピッチング性の高い歯車を製造す
るための浸炭用鋼に関するものである。
には、歯車が広く用いられている。これらの歯車はその
動作時、高速回転下に高い応力が加えられる。そのた
め、従来、歯車の製造においては、耐疲労性や耐摩耗性
を向上させるために、肌焼鋼を用いて成形し、最終工程
にて浸炭処理を施して、表面硬さと圧縮残留応力を高く
してきた。しかし、最近では自動車部品においてはエン
ジン性能の向上と小型化及び軽量化に伴って、従来より
も一層疲労強度に優れた歯車が要求されるに至ってい
る。このような状況のもとで、例えば、特開平1−30
6545号公報に見られるように、疲労強度及びピッチ
ング性を劣化させる表面不完全焼入れ層の生成を抑制し
た歯車用浸炭用鋼や、特開平5−25586号公報の如
く、表面不完全焼入れ層の生成抑制と、歯曲げ疲労強度
を劣化させる鋼材中MnSの延伸性を抑制した歯車用浸
炭用鋼が提案され、一定の成果を収めてきた。
部品の小型化及び軽量化要求は、地球規模での環境保全
の高まりもあり、益々強くなる傾向にあり、歯車用鋼に
おいてもより一層、疲労強度に優れた鋼が要求されるに
至っている。本発明はこのような要請に応じるものであ
り、酸化物系介在物を超微細化し面疲労強度を飛躍的に
向上させると共に、MnSの延伸性も大幅に抑制し歯曲
げ疲労強度の向上も同時に達成するものである。
ろは以下の通りである。重量%で、 C :0.1〜0.4% Si:0.15%以下 Mn:0.3〜2.0% Cr:0.4〜2.0% P :0.03%以下 S :0.005〜0.03% TotalO:0.003%以下を含有し、及び/また
は Mo:0.3〜2.0% Ni:1.0%以下の1種以上を含有し、及び/または V :0.03〜0.30% Nb:0.02〜0.20% Ti:0.01〜0.30% W :0.03〜1.2%の1種以上を含有し、 及び、TotalMg:0.0015〜0.0350%
を含有し、さらに、含有される酸化物及び硫化物が、個
数比として次式を満足することを特徴とする高強度歯車
用浸炭用鋼。 (MgO+MgO・Al2 O3 )個数/全酸化物個数 ≧0.80…(1) 0.20≦(Mn・Mg)Sの個数/全硫化物個数 ≦0.70 …(2)
gを含有させることにある。これにより酸化物系介在物
(主にアルミナ)のサイズが微細化されると共にMnS
の延伸性が抑制される。まず、酸化物系介在物サイズの
微細化機構を述べる。溶鋼中に酸化物系介在物としてA
l2 O3 が存在する状況下でMgを添加すると、酸化物
の組成はAl2 O3 からMgO・Al2 O3 あるいはM
gOへと改質される。この際、MgO・Al2 O3 ある
いはMgOはAl2 O3 と比較して、溶鋼との界面エネ
ルギーが小さいために凝集合体しにくく、微細化が達成
される。鋼材中の酸化物系介在物はそのサイズが大きい
ほど、その部分に応力が集中しやすくなり、疲労破壊に
起点となりやすい。それゆえ酸化物系介在物のサイズを
微細化することにより、この問題は大幅に改善される。
歯車用鋼では、特に面疲労強度が大幅に向上する。
である。溶鋼中に添加されたMgは、Al2 O3 の改質
に続いて、以下のMnSの組成改質が進行する。 MnS+Mg→(Mn・Mg)S ここに生成した(Mn・Mg)SはMnSに比べ、Mg
が複合したために球状化され、さらに延伸時の延伸性が
大幅に抑制される。この効果は(Mn・Ca)Sよりも
大きく、歯車の曲げ疲労強度が顕著に向上する。
alMg(=T.Mg)で表示すると、0.0015〜
0.0350重量%となる。T.Mgが0.0015重
量%未満では、アルミナの微細化が不十分であり、かつ
MnSの球状化がほとんど達成されない。T.Mgが
0.0350重量%を越えて添加しても、それ以上のア
ルミナ微細化、MnS球状化効果が期待されず、逆にM
gS単体の生成が顕著となり、被削性維持のためのMn
Sが減少し好ましくない。
の精錬工程では一部不可避的な混入により、本発明範囲
外、即ちMgO及びMgO・Al2 O3 以外の酸化物が
存在する。この量を個数割合で全体の20%未満とする
ことにより、酸化物系介在物の微細分散が高位安定化さ
れ、さらなる材質向上効果が認められたため、(MgO
+MgO・Al2 O3 )個数/全酸化物個数≧0.80
と規定した。なお、酸化物は一定面積に存在する個数比
であり、そのサイズは円相当直径で1.0μ以上を対象
とした。また酸化物組成の定量分析はX線マイクロアナ
ライザーによった。
発明鋼材中に存在する硫化物としてはMnSと(Mn・
Mg)Sが大部分を占める。MnSは鋼の被削性を高め
るために必要であり、(Mn・Mg)Sは前述の通りM
nSの延伸性を抑制し歯曲げ疲労強度を向上させるため
に必要である。従って、これらの個数比を適正範囲にコ
ントロールすることにより、被削性および歯曲げ疲労強
度を高位に安定化させることが可能である。この点に関
して、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、0.20≦
(Mn・Mg)Sの個数/全硫化物個数≦0.70で、
被削性および歯曲げ疲労強度を高位に安定化することが
可能であることを解明した。(Mn・Mg)Sの個数/
全硫化物個数<0.20では歯曲げ疲労強度が低下し、
(Mn・Mg)Sの個数/全硫化物個数>0.70では
被削性が低下し好ましくない。なお、硫化物も酸化物同
様、一定面積に存在する個数比であり、そのサイズは円
相当直径で1.0μ以上を対象とした。また、X線マイ
クロアナライザーによる定量分析で、Mgを0.5〜2
2重量%複合するMnSを(Mn・Mg)Sとみなし
た。
る。本発明鋼の製造方法は特に限定するものではない。
即ち、母溶鋼の溶製は高炉−転炉法あるいは電気炉法の
いずれでもよい。また、溶鋼へのMg添加方法も特定す
るものではなく、Mg源を自然落下による添加法、不活
性ガスを用い吹込む方法、Mg源を充填した鉄製ワイヤ
ーを溶鋼中へ供給する方法等を採用してよい。添加場所
も溶鋼取鍋、連続鋳造タンディッシュ、連続鋳造モール
ド等を自由に選定してよい。Mg源としては金属Mg、
Mg−Coke、Mg−Al合金、Mg−Si合金、M
g−Si−Mn合金等の粒状品を使用でき、これらとF
e,Al,Fe−Si合金の粒状品を混合して使用する
ことも可能である。さらに、母溶鋼から鋼塊あるいは鋳
片を製造し、圧延する方法も限定するものではない。
述べる。Cは強度を向上させるために少なくとも0.1
重量%以上必要とする。しかし0.4重量%を越えると
切削性等の加工性を損ない好ましくない。Siは粒界酸
化物を生成しやすい元素であり、粒界酸化物の生成は粒
界強度を低下させるので、その添加量は最小限とするの
が望ましいが、0.15重量%までは許容される。Mn
も粒界酸化物を生成しやすい元素であるが、焼入れ性向
上による強度向上、さらには脱酸のため必要であり、
0.3重量%以上添加すべきである。しかし、2.0重
量%を越えて添加すると切削性が劣化する。
すい元素であるが、焼入れ性向上による強度向上のため
必要であり、0.4重量%以上添加すべきである。しか
し、2.0重量%を越えると、炭化物を生成し、さらに
粒界酸化物を生成して、焼入れ性向上効果が飽和する。
Pは粒界強度を低下させ、疲労強度の低下を招くので最
小限とするのが望ましいが、0.03重量%までは許容
される。Sは鋼の切削性を高めるために0.005重量
%以上添加する必要がある。しかし、0.03重量%を
越えると、鋼中の介在物が増加し、冷間加工性に悪影響
を及ぼし好ましくない。T.Oは酸化物介在物量の目安
であり、0.003重量%を越えると、酸化物量増大に
よる疲労強度特性を悪化させ好ましくない。
え、強度及び靱性を向上させるのに必要な元素であり、
1種以上添加する。本発明鋼では前述のSi,Mn,C
r含有量に関する限定のもとで、それ以上の焼入れ性を
与えるために、Moは0.3重量%以上含有させる。し
かし、2.0重量%を越えて含有させても、その効果は
飽和し経済性を損なう結果となる。また、Niは1.0
重量%を越えて含有させても、その効果は飽和するの
で、上限を1.0重量%とする。
し、浸炭結晶粒の微細化に効果がある元素であり、任意
に1種以上添加できる。その効果を十分得るにはVで
0.03重量%以上、Nbで0.02重量%以上、Ti
で0.01重量%以上、Wで0.03重量%以上の添加
が必要である。しかしVで0.3重量%、Nbで0.2
重量%、Tiで0.2重量%、Wで1.2重量%を越え
て添加しても、その効果は飽和する。以下に本発明の実
施例を述べ、本発明の効果について記載する。
学成分の鋳片を製造した。Mg添加は、転炉から排出さ
れた取鍋内溶鋼に、金属Mg粒及びFe−Si合金粒の
混合物を充填した鉄製ワイヤーを供給する方法によっ
た。次に分塊圧延、棒鋼圧延して直径70mmの丸棒
(圧延比50)を製造した。この直径70mmの丸棒の
圧延方向断面の酸化物及び硫化物の個数比を測定した結
果、表2に示すように本発明鋼はすべて適正範囲内にあ
った。さらに酸化物及び硫化物のサイズ、長さも測定し
たが、表2に示すように本発明鋼は比較・従来鋼に比べ
て、極めて良好な成績が得られた。続いて、直径70m
mの丸棒を925℃で焼ならし処理した後、回転曲げ疲
労試験片及び面疲労試験片に機械加工した。回転曲げ疲
労試験片は圧延方向に対して直角方向から切出し、試験
断面直径は9mmとした。また面疲労試験片も圧延方向
に対して直角方向から切出し、試験断面直径を26mm
のローラーピッチング疲労試験片とした。次に各試験片
に対して、浸炭ガス雰囲気中で930℃×5時間加熱→
130℃油焼入れ→180℃×1時間焼戻しを行った。
こうして得られた試験片を小野式回転曲げ疲労試験及び
ローラーピッチング面疲労試験に供した。小野式回転曲
げ疲労試験及びローラーピッチング面疲労試験成績を表
2に示すが、本発明鋼は比較従来鋼に比べて、極めて良
好な成績が得られた。さらに直径70mmの丸棒を熱間
鍛造により直径120mm丸棒とした後、925℃で焼
ならし処理し、歯曲げ疲労試験片に機械加工した。歯車
形状はピッチ半径54mm、歯数27、モジュール4、
歯幅9mm、軸穴半径35mmの平歯車である。その
後、各歯車を同様に浸炭、焼入れし、油圧サーボ式引張
り圧縮試験機による歯曲げ疲労試験を行った。その結
果、表2に示すように本発明鋼は比較・従来鋼に比べ
て、極めて良好な成績となった。本発明鋼において、小
野式回転曲げ疲労試験及びローラーピッチング面疲労試
験成績が良好であった理由は、酸化物系介在物サイズが
微細化されたためであり、歯曲げ疲労試験成績が良好で
あった理由は酸化物系介在物サイズ微細化に加えてMn
Sの延伸性が顕著に抑制されたことによる。これらの効
果はMg添加により達成されたものである。
により、面疲労強度及び歯曲げ疲労強度を飛躍的に向上
しうる歯車用鋼の提供が可能となった。面疲労強度の向
上は主として、酸化物系介在物が微細化され、かつ好ま
しい組成の酸化物個数比が維持されることに起因する。
また歯曲げ疲労試験の向上は、MnSの組成・個数比コ
ントロールによりMnS延伸性も大幅に抑制されたこと
による。これにより、従来のように歯車の大型化あるい
は表面加工を行う必要がなくなり、さらに浸炭を前提と
した軸部品等にも適用できるという優れた効果を有する
もので、その産業上の波及効果は極めて顕著なものがあ
る。
Claims (3)
- 【請求項1】 重量%で、 C :0.1〜0.4% Si:0.15%以下 Mn:0.3〜2.0% Cr:0.4〜2.0% P :0.03%以下 S :0.005〜0.03% TotalO:0.003%以下 TotalMg:0.0015〜0.0350%を含有
し、 かつ、含有される酸化物及び硫化物が、個数比として次
式を満足することを特徴とする高強度歯車用浸炭用鋼。 (MgO+MgO・Al2 O3 )個数/全酸化物個数 ≧0.80…(1) 0.20≦(Mn・Mg)Sの個数/全硫化物個数 ≦0.70 …(2) - 【請求項2】 重量%で、 C :0.1〜0.4% Si:0.15%以下 Mn:0.3〜2.0% Cr:0.4〜2.0% P :0.03%以下 S :0.005〜0.03% TotalO:0.003%以下を含有し、 かつ、Mo:0.3〜2.0% Ni:1.0%以下の1種以上を含有し、 及び、TotalMg:0.0015〜0.0350%
を含有し、 さらに、含有される酸化物及び硫化物が、個数比として
次式を満足することを特徴とする高強度歯車用浸炭用
鋼。 (MgO+MgO・Al2 O3 )個数/全酸化物個数 ≧0.80…(1) 0.20≦(Mn・Mg)Sの個数/全硫化物個数 ≦0.70 …(2) - 【請求項3】 重量%で、 C :0.1〜0.4% Si:0.15%以下 Mn:0.3〜2.0% Cr:0.4〜2.0% P :0.03%以下 S :0.005〜0.03% TotalO:0.003%以下を含有し、 かつ、Mo:0.3〜2.0% Ni:1.0%以下の1種以上を含有し、 及び、V:0.03〜0.30% Nb:0.02〜0.20% Ti:0.01〜0.30% W :0.03〜1.2%の1種以上を含有し、 及び、TotalMg:0.0015〜0.0350%
を含有し、さらに、含有される酸化物及び硫化物が、個
数比として次式を満足することを特徴とする高強度歯車
用浸炭用鋼。 (MgO+MgO・Al2 O3 )個数/全酸化物個数 ≧0.80…(1) 0.20≦(Mn・Mg)Sの個数/全硫化物個数 ≦0.70 …(2)
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JPH07238342A JPH07238342A (ja) | 1995-09-12 |
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