JP3390101B2 - 滞留熱安定性に優れる熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

滞留熱安定性に優れる熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法

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JP3390101B2 JP03524495A JP3524495A JP3390101B2 JP 3390101 B2 JP3390101 B2 JP 3390101B2 JP 03524495 A JP03524495 A JP 03524495A JP 3524495 A JP3524495 A JP 3524495A JP 3390101 B2 JP3390101 B2 JP 3390101B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐衝撃性および、溶融加
工時並びに成型加工時の滞留熱安定性に優れ、かつ製品
ロット間における滞留熱安定性のバラツキが小さい熱可
塑性樹脂組成物、並びに熱可塑性樹脂組成物の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリカーボネート樹脂は高強度、高剛
性、耐衝撃性および耐熱性に優れる熱可塑性樹脂である
が耐薬品性に欠点がある。また、溶融粘度が高いために
複雑な形状の射出成型品において残留応力が生じやす
く、成型後に特定の薬品との接触によって成型品が破損
する等の問題が頻繁に発生する。
【0003】ポリカーボネート樹脂における上述の欠点
に対しては、ポリエスエル樹脂やABS樹脂を配合、ア
ロイ化することによって耐薬品性や成型性が改良でき
る。特にポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、グ
ラフト共重合体の3成分(特公昭55−9435号公報
等)またはポリカーボネート樹脂、ABS樹脂の2成分
からなる熱可塑性樹脂組成物はアロイ化によってポリカ
ーボネート樹脂の欠点が改良され、耐衝撃性、耐熱性、
耐薬品性において優れた物性バランスが達成される。
【0004】一般的なアロイ化手法は押出機を用いた溶
融混練法である。しかし、ポリエステル樹脂、グラフト
共重合体あるいはABS樹脂における残留金属が、溶融
混練中にポリカーボネート樹脂に作用して化学反応が始
まるため、造粒した組成物の製造工程において、また射
出あるいは押出成形等によって溶融成型加工する際に、
シリンダー内における滞留熱安定性の悪さが大きな問題
であった。しかし、上記組成物を製造する際に特定のリ
ン化合物を添加することによって滞留熱安定性が著しく
向上する(特公昭51−44551号公報等)ことが見
い出され、自動車部品、電気・電子機器部品用途におい
て広く利用されるようになった。
【0005】このような用途においては成型品の大型
化、成型品寸法の高精度化はもちろん、成型工程の全自
動化等も急速に進展しており、樹脂に対してより厳しい
品質安定性が要求されてきている。そこで上記組成物に
対してもさらに滞留熱安定性に優れることが要求され、
改良効果の高いリン化合物が次々に提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】改良効果の高いリン化
合物を効果的に利用するために、溶融混練する前に組成
物を構成する樹脂とともにタンブラー、ヘンシェルミキ
サー等の混合機で均一に混ぜる操作が必要である。とこ
ろが上記混合機による混合工程から押出機等による溶融
混練工程まで徹底した水分混入防止措置をとらない限
り、添加したリン化合物が水分と接触してしまう。その
ため、この状態のまま溶融混練工程において加熱される
と、リン化合物の一部は組成物を構成する樹脂に作用す
る前に加水分解してしまい、組成物の滞留熱安定性が不
充分となる。したがって、例えば製造日の湿度のような
環境要因によって、製品ロットごとに滞留熱安定性にバ
ラツキが生じてしまう。その結果、成型工程の段階で不
良品発生率の増加などの問題が発生する。
【0007】本発明の目的は、上記に述べたような特に
ポリカーボネート樹脂、特定のグラフト共重合体、およ
びポリエステル樹脂またはビニル系重合体からなる熱可
塑性樹脂組成物に特定のリン化合物を添加したものが有
する従来の欠点、すなわち製造ロット間の品質にバラツ
キが生じるという問題を解決することである。そこで鋭
意検討の結果本発明者らは、ポリカーボネート樹脂、グ
ラフト共重合体、およびポリエステル樹脂またはビニル
系重合体からなる熱可塑性樹脂組成物に特定のリン化合
物と疎水性有機化合物を添加することによって、組成物
の製品ロット間に発生する滞留熱安定性のバラツキを著
しく抑制できることを見い出し、本発明を完成するに至
った。
【0008】
【課題を解決しようとする手段】本発明は熱可塑性樹脂
組成物に関するものであり、上記の課題を解決するた
め、(A)ポリカーボネート樹脂20〜87重量%、
(B)ゴム状重合体に、芳香族ビニル単量体、シアン化
ビニル単量体、メタクリル酸エステルより成る群から選
ばれたビニル系単量体の1種以上をグラフト共重合した
グラフト共重合体3〜40重量%、(C)(イ)熱可塑
性ポリエステル樹脂または(ロ)芳香族ビニル単量体、
シアン化ビニル単量体、メタクリル酸エステルから選ば
れたビニル系単量体の1種以上を単独または共重合した
重合体10〜77重量%、並びに(A)+(B)+
(C)=100重量部あたり、(D)リン化合物0.0
1〜1.0重量部および(E)疎水性有機化合物0.0
1〜1.0重量部から成りかつ、(D)リン化合物と
(E)炭素数5〜10のアルカンまたはアレーンから選
ばれた少なくとも1種の化合物である疎水性有機化合物
の割合が重量比1:2〜2:1の範囲である(A)、
(B)、(C)、(D)および(E)を混合することを
特徴とする熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法並び
に、(D)リン化合物と(E)疎水性有機化合物を予め
混合した混合物を(A)ポリカーボネート樹脂、(B)
グラフト共重合体および(C)(イ)熱可塑性ポリエス
テルまたは(ロ)ビニル系重合体とともに混合すること
を特徴とする熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法を提
供するものである。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で
使用できる(A)ポリカーボネート樹脂は芳香族ヒドロ
キシ化合物を原料とし、ホスゲン法またはエステル交換
法によって得られる重合体または共重合体であれば特に
限定はしない。上記の芳香族ヒドロキシ化合物として
は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−
ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4
−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキ
シフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒド
ロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス
(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン
のようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサ
ンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン
類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,
4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ
ーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,
4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルス
ルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド
類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニ
ルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホ
キシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホ
ン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフ
ェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホ
ン類等が挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上
混合して使用されるが、これらの他にピペラジン、ジピ
ペリジル、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジ
ヒドロキシジフェニル等を混合して使用しても良い。こ
れらを原料としたポリカーボネート樹脂の中では、2,
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビス
フェノールA型)ポリカーボネートが特に好ましい。ポ
リカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、衝撃強度の点
から15000以上であることが必要であり、2000
0〜40000の範囲が好ましい。
【0010】本発明で使用できる(B)グラフト共重合
体は、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、メ
タクリル酸エステルより成る群から選ばれた1種以上の
ビニル系単量体をゴム状重合体にグラフト共重合させた
グラフト共重合体である。
【0011】ゴム状重合体としては、ブタジエン重合
体、ブタジエンとこれと共重合可能なビニル単量体との
共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブ
タジエンと芳香族ビニルとのブロック共重合体、アクリ
ル酸エステル共重合体およびアクリル酸エステルとこれ
と共重合可能なビニル単量体との共重合体等が用いられ
る。
【0012】芳香族ビニル単量体としては、例えばスチ
レン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチ
ルスチレン、クロロスチレン等のスチレン単量体および
その置換単量体が挙げられる。特にスチレン、α−メチ
ルスチレンが好ましい。
【0013】シアン化ビニル単量体としては、例えばア
クリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアク
リロニトリル等が挙げられる。特にアクリロニトリルが
好ましい。また、メタクリル酸エステルとしては、メタ
クリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
特にメタクリル酸メチルが好ましい。
【0014】上記(B)グラフト共重合体は、芳香族ビ
ニル単量体0〜70モル%、シアン化ビニル単量体0〜
60モル%およびメタクリル酸エステル0〜100モル
%の単量体混合物20〜70重量部がゴム状重合体30
〜80重量部とグラフト共重合したABS共重合体、M
BS共重合体、AESグラフト共重合体の単独または上
記共重合体のうち2種類以上の混合物でもよく、特にA
BSまたはMBSグラフト共重合体が好ましい。
【0015】本発明で使用できる(C)(イ)熱可塑性
ポリエステル樹脂は、アルキレンテレフタレート繰り返
し単位を主成分とするものであれば特に制限はない。ア
ルキレンテレフタレート繰り返し単位としては、エチレ
ンテレフタレート、テトラメチレンテレフタレート、
1,4−シクロヘキシレンテレフタレート等が挙げら
れ、共重合可能な成分としてはイソフタル酸等のジカル
ボン酸や1,3−プロパンジオール等のジオールが挙げ
られる。具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリ
ブチレンテレフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレ
ンテレフタレートであり、特にポリエチレンテレフタレ
ートまたはポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0016】ポリエチレンテレフタレートまたはポリブ
チレンテレフタレートの固有粘度はフェノール/テトラ
クロロエタン=6/4(重量比)を溶媒として30℃で
測定した値が0.5〜1.5の範囲のものが用いられ、
ポリエチレンテレフタレートの場合は0.6〜1.1、
ポリブチレンテレフタレートの場合は0.8〜1.4の
範囲が特に好ましい。
【0017】本発明で使用できる(C)(ロ)ビニル系
重合体は、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量
体、メタクリル酸エステルよりなる群から選ばれたビニ
ル系単量体の1種類以上を単独または共重合した重合体
である。
【0018】芳香族ビニル単量体としては、例えばスチ
レン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチ
ルスチレン、クロロスチレン等のスチレン単量体および
その置換単量体が挙げられる。特にスチレン、α−メチ
ルスチレンが好ましい。
【0019】シアン化ビニル単量体としては、例えばア
クリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアク
リロニトリル等が挙げられる。特にアクリロニトリルが
好ましい。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル
酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
【0020】本発明で使用できる(D)リン化合物は、
下記一般式 P(OX)3 (i) P(OH)(OX)2またはO=PH(OX)2 (ii) O=P(OH) n (OX)3-n (iii) (n=1または2、X:炭素数4〜20のアルキル基、
またはアリール基)のいずれかで表されるホスファイト
類またはホスフェイト類が好ましい。また、上記一般式
においてXで表される置換基は、炭素数4〜20のアル
キル基、またはアリール基が好ましい。具体的には、ト
リオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、ト
リイソデシルホスファイト、トリステアリルホスファイ
トに代表される第3級アルキルホスファイト類、トリフ
ェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリ
ス(ノニルフェニル)ホスファイトに代表される第3級
アリールホスファイト類、ジ−2−エチルヘキシルハイ
ドロゼンホスファイト、ジラウリルハイドロゼンホスフ
ァイト、ジオレイルハイドロゼンホスファイトに代表さ
れる第2級アルキルホスファイト類、ブチルアシッドホ
スフェイト、ラウリルアシッドホスフェイト、ステアリ
ルアシッドホスフェイトに代表される酸性リン酸エステ
ル類が挙げられる。特にトリデシルホスファイト、トリ
イソデシルホスファイト、ジラウリルハイドロゼンホス
ファイト、ステアリルアシッドホスフェイトが好まし
い。炭素数4未満のアルキル基ではリン化合物の熱分解
温度が低く、炭素数20を越えると樹脂との相溶性が悪
くなる。
【0021】本発明における(E)疎水性有機化合物
は、20℃における水に対する溶解度が0.2重量%以
下の有機化合物であり、上記リン化合物の有する置換基
Xに類似した構造を有するもので、オクタン、ヘキサ
ン、ヘプタン、ノナン、デカン等の炭素数5〜10のア
ルカン、ベンゼン、トルエン、クロルベンゼン、ニトロ
ベンゼン等のアレーンが好ましく、特にヘプタン、トル
エンが好ましい。炭素数5未満のアルカンでは溶融混練
工程で水より先に揮発してしまい、上記リン化合物が水
分と接触して加水分解しやすくなる。また、炭素数10
を越えると樹脂およびリン化合物との相溶性が悪くな
る。
【0022】本発明における熱可塑性樹脂組成物の割合
は、(A)ポリカーボネート樹脂20〜87重量%、
(B)グラフト共重合体3〜40重量%、(C)(イ)
熱可塑性ポリエステル樹脂または(ロ)ビニル系重合体
10〜77重量%が好適である。
【0023】(A)ポリカーボネート樹脂が20重量%
未満では組成物に十分な耐衝撃強度が得られず、87重
量%を越えると流動性が不足する。(B)グラフト共重
合体が3重量%未満では、やはり組成物に十分な耐衝撃
強度が得られず、40重量%を越えると流動性の低下と
耐熱性の低下につながる。(C)(イ)ポリエステル樹
脂または(ロ)ビニル系重合体が10重量%未満では流
動性が不足し、77重量%を越えると耐衝撃強度が低下
する。
【0024】本発明で使用できる(D)リン化合物の添
加量は、上記(A)+(B)+(C)=100重量部あ
たり0.01〜1.0重量部が好ましい。(D)リン化
合物が0.01重量部未満の場合、組成物の滞留熱安定
性不良となり、1.0重量部を越えると成型時の揮発分
増加や耐衝撃性、耐熱性等の物性低下を招く。
【0025】本発明で使用できる(E)疎水性有機化合
物の添加量は、上記(A)+(B)+(C)=100重
量部あたり0.01〜1.0重量部が好ましい。(E)
疎水性有機化合物が0.01重量部未満の場合、(D)
リン化合物が水分と接触して加水分解しやすくなるため
製品ロット間における滞留熱安定性のバラツキが顕著に
なる。また、1.0重量部を越えると成型時の揮発分増
加や耐衝撃性、耐熱性等の物性低下を招く。
【0026】(D)リン化合物と(E)疎水性有機化合
物の添加量の割合は、(D)と(E)の重量比1:2〜
2:1の範囲が良い。重量比1:2よりも(E)疎水性
有機化合物の方が多い場合は揮発分増加や耐衝撃性、耐
熱性等の物性低下を招き、重量比2:1よりもリン化合
物が多くなると、混合物中のリン化合物が加水分解しや
すくなるため製品ロット間における組成物の滞留熱安定
性のバラツキが顕著になる。さらに、(D)リン化合物
と(E)疎水性有機化合物として、両者を予め混合した
混合物を使用することで、本発明における滞留熱安定性
に優れる熱可塑性樹脂組成物の、製品ロット間における
滞留熱安定性のバラツキの抑制効果を、著しく向上する
ことができる。
【0027】本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際
の溶融混練方法は、溶融樹脂に対して充分にせん断力が
かかる混練方法であれば、特に限定するものではない。
通常用いられている混練機、例えばバンバリーミキサ
ー、ブラベンダー、混練ロール、1軸または2軸押出機
による溶融混練により製造することができる。またその
製造方法は、(A)ポリカーボネート樹脂、(B)グラ
フト共重合体、(C)(イ)熱可塑性ポリエステル樹脂
または(ロ)ビニル系重合体および(D)リン化合物と
(E)疎水性有機化合物を一括して溶融混練して作製し
ても良いが、(D)リン化合物と(E)疎水性有機化合
物を予め混合した混合物を、(A)ポリカーボネート樹
脂、(B)グラフト共重合体、および(C)(イ)熱可
塑性ポリエステル樹脂または(ロ)ビニル系重合体と溶
融混練することによって、優れた本発明の熱可塑性樹脂
組成物の物性・特性を発現し、また製品ロット間に発生
する滞留熱安定性のバラツキを更に著しく抑制できる。
【0028】具体的には、まず(D)リン化合物と
(E)疎水性有機化合物の混合物を作製する。続いて
(A)ポリカーボネート樹脂、(B)グラフト共重合
体、(C)(イ)熱可塑性ポリエステル樹脂または
(ロ)ビニル系重合体に対して(D)リン化合物と
(E)疎水性有機化合物の混合物を添加した後、あるい
は添加しながらヘンシェル、タンブラーに代表される混
合機で均一に混合し、1軸または2軸押出機、混練ロー
ル、ブラベンダー、バンバリーミキサー等で溶融混練し
て造粒することにより製造することができる。
【0029】また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、
さらに酸化防止剤、熱安定剤、酸無水物、難燃剤、帯電
防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤、ガラス繊維、無
機フィラー、金属粉等を添加することも可能である。
【0030】また、目的に応じて他の樹脂を添加するこ
とができる。具体的には、スチレン−マレイミド共重合
体、ポリアリレート樹脂、熱可塑性液晶ポリマー等が挙
げられる。これらの樹脂の添加量は上記(A)+(B)
+(C)=100重量部に対して、50重量部以下好ま
しくは0〜30重量部が望ましい。
【0031】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらによって何ら制限されるもので
はない。なお特別なことわり書きのない場合、添加量に
ついて使用した単位は重量%または重量部を意味してい
る。 実施例1〜6および比較例1〜4 本発明で使用した熱可塑性樹脂および添加剤を示す。 (1)組成物の原料 (A)ポリカーボネート樹脂:市販のビスフェノールA
型ポリカーボネート樹脂「パンライトL−1250」
[帝人化成(株)製](粘度平均分子量25000)を
用い、これをA−1とする。
【0032】(B)グラフト共重合体:ポリブタジエン
ラテックス80部(固形分50%、平均粒径0.35μ
m、ゲル含有率90%)、ステアリン酸ナトリウム1
部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.
1部、EDTAテトラナトリウム塩0.08部、硫酸第
一鉄0.003部および水200部を窒素ガスで置換さ
れたオートクレーブに仕込んだ。温度65℃に加熱した
後、アクリロニトリル25%およびスチレン75%より
なる単量体混合物50部、t−ドデシルメルカプタン
0.3部、キュメンハイドロパーオキシド0.2部を4
時間で連続添加し、さらに添加終了後65℃で2時間重
合させた。グラフト率は78%、重合率は97%であっ
た。得られたラテックスに酸化防止剤を添加した後、塩
化カルシウムで塩析し、水洗、乾燥後、白色粉末状のA
BSグラフト共重合体を得た。このABSグラフト共重
合体をB−1とする。また、市販のMBSグラフト共重
合体「パラロイドEXL−2602」[呉羽化学工業
(株)製]を用い、これをB−2とする。
【0033】(C)(イ)熱可塑性ポリエステル樹脂:
市販のポリエチレンテレフタレート「NEH−205
0」[ユニチカ(株)製](固有粘度:0.78、溶媒
フェノール/テトラクロロエタン=6/4(重量比)、
温度30℃で測定)を用い、これをC−1とする。ま
た、市販のポリブチレンテレフタレート「ノバドゥール
5010S」[三菱エンジニアリングプラスチック
(株)製](固有粘度:1.1、溶媒フェノール/テト
ラクロロエタン=6/4(重量比)、温度30℃で測
定)を用い、これをC−2とする。
【0034】(C)(ロ)ビニル系重合体:オートクレ
ーブに純水100部、過硫酸カリウム0.2%水溶液
2.5部、第三リン酸カルシウム0.07部、アクリロ
ニトリル25部、スチレン30部、t−ドデシルメルカ
プタン0.6部および過酸化ベンゾイル0.1部を加え
窒素雰囲気下にて撹拌した内容物を100℃に保ち、そ
の後スチレン45部を100℃で2時間、103℃で2
時間、107℃で3時間の計7時間かけて連続添加し
た。添加終了後、117℃に昇温して2時間撹拌して重
合を完了させて、冷却後重合液に塩酸を加えて中和、脱
水、乾燥して重合体を得た。この重合体をC−3とす
る。
【0035】(D)リン化合物:市販のジラウリルハイ
ドロゼンホスファイト(構造式:(C1225O)2PH
O)「Chelex H12」[堺化学工業(株)製]
を用い、これをD−1とする。
【0036】(E)疎水性有機化合物:市販のN−ヘプ
タン(特級試薬)[和光純薬工業(株)製]を用い、こ
れをE−1とする。
【0037】(F)混合物:D−1とE−1を約40℃
で重量比2:3および3:2の割合で撹拌混合して作製
した混合物をそれぞれF−1、F−2とする。 (F)リン化合物としてトリイソデシルホスファイト
(構造式:(C1021O) 3P)「Chelex T
D」[堺化学工業(株)製]を使用し、また(E)疎水
性有機化合物として市販のトルエン(特級試薬)[和光
純薬工業(株)製]を使用し、それらを重量比2:3の
割合で撹拌混合して作成した混合物をF−3とした。
【0038】(G)純水を使用し、これをG−1とす
る。
【0039】(2)熱可塑性樹脂組成物の製造方法 実施例1〜6および比較例1〜4における熱可塑性樹脂
組成物の製造方法は、表1および表2記載のそれぞれの
配合割合でヘンシェルミキサーによって混合した。この
際本発明の効果であるリン化合物の加水分解防止効果を
はっきり現すためにあえて純水を0.5部添加した。こ
れによって溶融混練時に水蒸気が発生し、リン系化合物
が加水分解するのに十分な環境湿度を作ることができ
る。次いで、40mm単軸押出機「MS40−32V」
[IKG(株)製]を使用して260℃で溶融混練押出
し、ペレット化した。ペレットから射出成型機「IS−
55EPN」[東芝機械(株)製]により、表3に示す
条件で物性評価用の試験片を作製した。さらに溶融・成
型加工時の滞留熱安定性を評価するために、同射出成型
機により表4に示す条件で、高温かつ長時間シリンダー
内で滞留させた後に成形することによって、物性評価用
の試験片を作製した。それぞれの実施例および比較例に
ついて、日を変えて上記と同条件で1ロット分ずつ、合
計5ロット分製造して平均物性値および標準偏差につい
て評価した結果を表1および表2に示す。
【0040】(3)測定および評価 表1および表2中の各種物性の測定方法は次の通りであ
る。 (a)耐衝撃強度:ASTM D−256に従い、表3
および表4の条件で作製した厚さ1/8”の射出成型品
に対し、雰囲気温度23℃、湿度50%のJIS標準状
態でノッチ付アイゾットを測定した。これを上記製造方
法にて作製した5ロット分について行い、平均値および
標準偏差を算出した。表1および表2において、滞留後
の耐衝撃強度値が低下するほど組成物の滞留熱安定性が
悪く、また標準偏差値が大きいほど製品ロット間におけ
る滞留熱安定性のバラツキが大きいことを示す。
【0041】(b)滞留後の変色度ΔE:厚さ1/8”
の射出成型品の表面に対し、簡易色差計「CR−30
0」[ミノルタ(株)製]を用い、表3の条件による成
型品を基準として、表4の条件による滞留後の成型品の
色差を5ロット分測定し、平均色差ΔEを求めた。表1
および表2において、ΔE値が小さいほど組成物の滞留
熱安定性に優れることを示す。
【0042】(c)滞留後のシルバー発生:表4の条件
で成型した滞留後の厚さ1/8”の射出成型品の表面を
目視し、成形した20枚の試験片の内1枚でもシルバー
の発生が認められるときは「有」、認められないときは
「無」とした。組成物の滞留熱安定性が悪い場合、滞留
中に組成物を構成する(A)ポリカーボネート樹脂が分
解して炭酸ガスが発生するため、成型品にシルバーが現
れる。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】比較例4の場合、表4の条件で滞留後の射
出成型品を作製することを試みたが、樹脂の変質が激し
く、均一な形状の成型品を得ることが不可能であった。
【0048】
【発明の効果】表1に示すように、本発明の熱可塑性樹
脂組成物は、滞留熱安定性に優れるため、製品ロット間
のバラツキが少なく、これを成型加工した製品において
は、安定した耐衝撃強度を有し、かつ水分の存在下にお
いても滞留による色相劣化が少なく、またシルバー発生
による表面外観の低下もみられない。このため自動車部
品、電気・電子機器部品用途を中心に進展した大型成
型、精密成型、全自動成型等、樹脂に対して厳しい品質
安定性が要求される成型法に極めて有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 67/02 C08L 67/02 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 51/04 C08L 55/02 C08L 67/00 - 67/02 C08L 69/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)ポリカーボネート樹脂20〜87重
    量%、(B)ゴム状重合体に、芳香族ビニル単量体、シ
    アン化ビニル単量体、メタクリル酸エステルより成る群
    から選ばれたビニル系単量体の1種以上をグラフト共重
    合したグラフト共重合体3〜40重量%、(C)(イ)
    熱可塑性ポリエステル樹脂または(ロ)芳香族ビニル単
    量体、シアン化ビニル単量体、メタクリル酸エステルか
    ら選ばれたビニル系単量体の1種以上を単独または共重
    合した重合体10〜77重量%、並びに(A)+(B)
    +(C)=100重量部あたり(D)リン化合物0.0
    1〜1.0重量部および(E)炭素数5〜10のアルカ
    ンまたはアレーンから選ばれた少なくとも1種の化合物
    である疎水性有機化合物0.01〜1.0重量部から成
    り、かつ(D)リン化合物と(E)疎水性有機化合物の
    割合が重量比1:2〜2:1の範囲にある(A)、
    (B)、(C)、(D)および(E)を混合することを
    特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  2. 【請求項2】(D)リン化合物と(E)炭素数5〜10
    のアルカンまたはアレーンから選ばれた少なくとも1種
    の化合物である疎水性有機化合物を予め混合した混合物
    として用いることを特徴とした請求項1記載の熱可塑性
    樹脂組成物の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2記載の製造方法よ
    り得られる熱可塑性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】(D)リン化合物が下記一般式のいずれか
    で表されるホスファイト類またはホスフェイト類から選
    ばれた少なくとも1種の化合物であり、かつ疎水性有機
    化合物が炭素数5〜10のアルカンまたはアレーンから
    選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1または
    請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 P(OX)3 (i) P(OH)(OX)2またはO=PH(OX)2 (ii) O=P(OH) n (OX)3-n (iii) (n=1または2、X:炭素数4〜20のアルキル基、
    またはアリール基)
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