JP3389337B2 - ボールペン - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、太径の軸筒内に粘性の
低いインクが充填されたインクの直・逆流防止機構付き
のボールペンに関する。

【０００２】

【従来の技術】同出願人は実公平４ー５２０６７号でボ
ールを遊嵌した弁室を設けたボールペンのインクの逆流
防止機構を開示している。此のものは、樹脂製の口プラ
（先軸部）にボール弁を遊嵌する弁室内にボール弁を抜
出不能とする突条を所要数設けて、筆記時には突条と突
条との間に形成される隙間を連通してチップにインクが
流動されるように成されている。又、粘性の低いインク
又は筆記時の先端ボールの回転で粘性が低下してインク
が流出される剪断減粘性を有したインクを使用したボー
ルペンが知られている。

【０００３】一般に粘性の低いインク又は剪断減粘性を
有したインクを使用したボールペンは、インクの流出量
が多く（筆記濃度を上げるため）インク収容管の径を太
くしてインクの搭載量を多くしている。又、インクの粘
度は油性ボールペンのインクに比べて小さいのでインク
収容管に対する流動抵抗は小さい。従って、インクの自
重や衝撃によりインク漏れ（インク収容管の後端にイン
クが逆流する）が生じやすい。その為に、通常はインク
の後端に筆記時のインクの消耗に追随して移動するが、
インクの自重や衝撃に対してインクの逆流を抑制するグ
リース状のフォロアが、又、必要によりフォロア棒がフ
ォロア内に遊挿されて設けられている。しかしながら、
フォロアを設けても上向き筆記をした時にはチップのボ
ール直下のインクが無くなると、インクのヘッドが直に
加わる為に顕著な逆流が生じて手や衣服を汚す危険があ
る。又、インクの粘度が低く流出量が多いが故に、チッ
プ側を下向きにした場合に先端ボールとチップ抱持部の
隙間が生じるとインクが滲みでる（直流）問題が存在す
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、粘性
の低いインク又は筆記時のボールの回転で粘性が低下し
てインクが流出される剪断減粘性を有するインクを使用
した太軸でインク容量大のボールペンであって、合理的
なインクの直・逆流防止構造で上向き筆記や衝撃によっ
て生じるインクの逆流とチップ側を下向きに置いた時の
直流を防止し、ボールペンの軸筒内や手、衣服の汚損を
を防止可能とする。又、上向き筆記、衝撃が加わった時
の先端ボール直下の空気巻き込みに伴うインク切れで起
きる筆記掠れを防止可能とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成する為に
案出された本発明のボールペンは、先軸の先端にボール
ペンのチップを、先軸の後方にインクが充填された軸筒
を圧着して成るボールペンであって、チップ内孔に内挿
されたスプリングの先端で先端ボールを押圧して、先端
ボールがチップのボール抱持部の内縁を密接してインク
の直流と逆流を阻止すると共に、軸筒の先端内孔の後端
にボール受け座とインク収容部に連通して導孔が形成さ
れ、ボール受け座の前方に延設して先軸内孔の中心に位
置する軸部とその内孔に弁室が形成されて更に弁室の前
方に所要箇所で突条が形成され、ボール弁がボール受け
座と突条との間に遊嵌されると共に軸筒の先端内孔に先
軸の後方軸部が圧着され、且つ、その内孔部に弁室を有
した軸部が密嵌されてその側圧によりボール弁が突条で
強固に抜出不可と成される。チップ上向きの際にボール
弁がボール受け座に密接してその後方に位置する大容量
のインクヘッドを支えて、上記先端ボールの密接状態が
不完全（チップのボール抱持部の加工バラツキ、固形物
の付着に係わる）であってもインクの逆流が防止可能と
なる。又、大きなインクヘッドが支えられることで上向
き筆記、衝撃が加わった時の先端ボール直下の空気巻き
込みが抑制されるので筆記掠れの防止が可能となる。

【０００６】

【実施例】図１及び図２は本発明の実施例を示してい
る。先ず、図１に示すように本願のボールペンはチップ
１３、先軸９、軸筒１、尾栓２０で外観上構成され、筆
記具の最終形態としては先軸部位を被嵌するキャップ
（図示せず）を具備する。軸筒１は樹脂成形品（通常は
透明樹脂）で、先端に内孔５が形成され、内孔５の後端
にはテーパー状又は球面状のボール受け座２とボール受
け座２の後方にインク収容部と連通して導孔３が形成さ
れている。

【０００７】又、前記ボール受け座２の前方に延設して
内孔５の中心に位置する軸部６が形成されている。又、
軸部６の内孔後端に上記ボール受け座２が位置し、その
前方は弁室４となっている。弁室４の前方に位置する軸
部６の外周には軸方向の所要箇所にスリ割り部７を設け
て径方向に拡縮可能な複数の弾性片６ａが形成され、弾
性片６ａの内面に夫々突条８が形成されている。弁室４
内にはボール弁１２が自由に或いは少なくとも弾性変位
により突条８を容易に乗り越えて嵌挿され、突条８で抜
出不能に遊嵌される。

【０００８】先軸９は先方に先細テーパー状の外周部を
有し、後方に軸部１１を一体に有した樹脂成形品で形成
されている。又、先端から内孔１０ａが、軸部１１の後
端側から内孔１０ｂが形成されて相互の内孔は連通して
いる。前記軸筒１先端の内孔５に先軸９後方の軸部１１
が圧着され、軸部１１の内孔に軸部６が密嵌される。こ
の状態でボール弁１２は突条８で強固に抜出不可とな
る。又、弁室４とチップ１３の後端孔は連通している。

【０００９】一方、チップ１３はインク流入可能なチャ
ンネルを有した座に先端ボール１４が略当接した状態で
先端ボール１４が回転自在に抱持されるようカシメられ
ている。又、チップ内孔１５にスプリング１８が内挿さ
れチップ後方の軸部１６の後端が適宜カシメられてスプ
リング１８の後端が抜出不能に設けられている。又、ス
プリング１８の先方には直立状の棒軸部１９が形成さ
れ、当該棒軸部１９の先端が先端ボール１４の後端に押
圧状に当接している。尚、先端ボール１４はその押圧で
チップ１３のボール抱持部（カシメ等で形成）の内縁に
密接状態と成される。又、チップ１３は前記先軸９先端
の内孔１０ａに圧着される。

【００１０】以上により、チップ側が下向きの時に前記
ボール弁１２が前記突条８の後端に当接して、インクが
導孔３、弁室４、突条と突条の間の隙間を通じてチップ
内孔１５に流入し先端ボール１４の後端まで導通する。

【００１１】又、軸筒１は前記導孔３の後方に延設され
たインク収容部を有しており、インク収容部内には粘性
の低いインク又は静的には高い粘性を有し、筆記時の先
端ボールの回転で粘性が低下してインクが流出可能とな
る剪断減粘性を有したインク２２が充填され、インク２
２の後端にインク面に接触してインクの消耗と共に追随
して移動可能なグリース状のフォロア２３が充填され
る。又、フォロア２３内に樹脂製のフォロア棒２４が遊
挿される。尚、フォロア棒２４は必要により（インク収
容部断面径が大きく、インクのヘッドが大きくなる。
又、インクの粘性が低く、インクのヘッドが支えきれな
い等の場合）設けられる。又、軸筒１の後端には外気と
連通する通気孔２１を有した尾栓２０が圧着される。

【００１２】

【作用】先ず、図１はチップ１３を上向きにした状態を
示しており、その時ボール弁１２が弁室４のボール受け
座２に密接して導孔３を密閉するので、上向き筆記で先
端ボール１４直下のインクがなくなってもインクが逆流
しない。従って、チップ１３を下向きにした時にインク
が即流出可能となり、筆記で掠れが防止される。（因み
にボール弁を有しない構造では、上向き筆記でインクの
ヘッドが逆流方向に作用するのでチップ内に空気を巻き
込み、下向き筆記で即インクが追随せず掠れが生じる。
又、上向き筆記の繰り返しで空気の巻き込みが徐々に累
積される）

【００１３】図２のチップ１３を下向きにした筆記前の
状態では、ボール弁１２が弁室前方の突条８後端に当接
状態となり、導孔３が開放される。インク収容部から導
孔３を経て弁室４に入ったインク２２は突条と突条との
間に形成された隙間を通じてチップ内孔１５に流入し、
先端ボール１４の後端まで導通される。尚、この状態で
はスプリング１８の棒軸部１９の押圧で先端ボール１４
がチップ抱持部の内縁に密接されるのでインク２２の直
流が防止される。又、筆圧により先端ボール１４が微小
に後退するので隙間を生じてインクが流出可能となり、
筆記により先端ボール１４の回転でインクが流出されて
筆記が可能となる。

【００１４】尚、先端ボール１４の直下にはチャンネル
（チップ内孔に向かって貫通したインク流入溝を複数箇
所に有した先端ボールの受け座）がありチャンネルの中
心孔にはスプリング１８の棒軸部１９が貫通する。チッ
プ内のインクは上記インク流入溝及び中心孔と棒軸部１
９との間の隙間を通じて先端ボール１４直下に誘導され
る。

【００１５】又、先端ボール１４は常時チップ抱持部の
内縁に密接しているので先端部位の乾燥で筆記掠れが防
止される。又、先端ボール１４とボール弁１２の共同作
用で上向き筆記や衝撃が加わっても空気の巻き込みが緩
和されるので筆記掠れが防止される。尚、インクの直流
及び逆流はスプリング１８による先端ボール１４への押
圧で果たされるが、上記チップ抱持部の加工バラツキに
よる先端ボール１４との密接不完全状態や、チップ抱持
部と先端ボール１４との隙間に固形物が付着した場合の
密接不完全状態を補足して、ボール弁による逆流機構部
はインクの大きなヘッドを支えてインクの逆流を確実に
防止することと空気巻き込みの緩和（掠れ防止）をする
ようスプリング１８による先端ボール押圧機構と共同す
る。

【００１６】又、軸筒１先方の弁室４内にボール弁１２
が容易に嵌挿されて抜出不能となるので軸筒水平上の連
続自動組み立てが可能となり合理的である。（ボール弁
が強固に嵌挿される条件では組み立て性が悪くなること
と軸筒の成形加工時に突条部が大きなアンダーカットと
なり離型不良や突条のムシレが起きて必要な寸法形状が
設定できない問題が生じる）又、インク充填とチップ１
３、先軸９、尾栓２０圧着後に脱泡のため遠心処理され
るが、その際には突条を有した軸部６の外周が先軸の軸
部１１の側圧で強固に固定されるので遠心力でボール弁
１２が突条８から抜出するのを防止できる。

【００１７】

【発明の効果】本発明のボールペンの構成及び作用は以
上の如くであり、粘性の低いインク又は剪断減粘性を有
したインクを太径の軸筒に充填したボールペンであって
も、インクの逆流や下向きに置かれた時に直流が防止さ
れ、軸筒内や手や衣服等を汚す事故が防止される。又、
上向き筆記や衝撃後にインクが即追随して筆記掠れが防
止される。又、ボール弁によるインクの逆流防止機構を
備えたボールペンの合理的な自動組み立てが可能とな
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例であるボールペンの縦断面図
で、チップが上向きの状態を示している。

【図２】実施例であるボールペンの縦断面図で、チップ
が下向きの状態を示している。

【符号の説明】

１ 軸筒 ２ ボール受け座 ３ 導孔 ４ 弁室 ５ 内孔 ６ 軸部 ６ａ 弾性片 ７ スリ割り部 ８ 突条 ９ 先軸 １０ａ 内孔 １０ｂ 内孔 １１ 軸部 １２ ボール弁 １３ チップ １４ 先端ボール １５ チップ内孔 １６ 軸部 １７ カシメ部 １８ スプリング １９ 棒軸部 ２０ 尾栓 ２１ 通気孔 ２２ インク ２３ フォロア ２４ フォロア棒

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 先軸の先端にボールペンのチップを、先
   軸の後方にインクが充填された軸筒を圧着して成るボー
   ルペンであって、チップ内孔にスプリングが内挿されて
   スプリングがチップ後端より抜出不能に設けられ、スプ
   リングの先方でチップ先端部に回転自在に抱持された先
   端ボールの後端を押圧して、先端ボールがチップのボー
   ル抱持部の内縁に密接されてインクの流出が阻止される
   ものに於いて、軸筒の先端内孔の後端にボール受け座と
   インク収容部に連通して導孔が形成され、ボール受け座
   の前方に延設して先端内孔の中心に位置する軸部とその
   内孔に弁室が形成されて更に弁室の前方に所要箇所で突
   条が形成され、ボール弁が上記ボール受け座と突条の間
   で弁室内に遊嵌されると共に上記軸筒の先端内孔に先軸
   の後方軸部が圧着され、且つ、その内孔部に上記弁室を
   有した軸部が密嵌されてその側圧によりボール弁が突条
   で強固に抜出不可と成されて、チップ上向きでボール弁
   がボール受け座に密接し、チップ下向きでボール弁が突
   条の後端部に当接して突条と突条との間に形成される隙
   間よりインクがチップ内孔に疎通可能に構成されたこと
   を特徴とするボールペン。
2. 【請求項２】 上記弁室を有した軸部の外周には弁室の
   前方に所要箇所にスリ割り部を有して弾性変位可能な弾
   性片が形成され弾性片の内面に突条が形成され、自由に
   或いは少なくとも弾性変位によりボール弁が突条を容易
   に乗り越えて弁室内に嵌挿され、軸部外周に先軸が密嵌
   されて外周が拘束された状態でボール弁が強固に抜出不
   可となるように構成された上記請求項１記載のボールペ
   ン。