JP3385966B2 - 強度と靱性に優れた鋼材およびその製造方法 - Google Patents

強度と靱性に優れた鋼材およびその製造方法

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JP3385966B2 JP11494998A JP11494998A JP3385966B2 JP 3385966 B2 JP3385966 B2 JP 3385966B2 JP 11494998 A JP11494998 A JP 11494998A JP 11494998 A JP11494998 A JP 11494998A JP 3385966 B2 JP3385966 B2 JP 3385966B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強度と靱性に優れ
た鋼材およびびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼材特に構造用鋼材においては、強度と
靱性の両特性に優れていることが求められる場合が多
い。Ni等の高価な元素を添加することなく前記要求を
満たすために、これまでに調質処理や制御圧延等により
組織を細粒化する方法が、種々提案され採用されてき
た。
【0003】例えば、特公昭55−30050号公報に
は、強靭鋼の製造方法が開示されている。この方法は、
化学組成、スラブの鋳造条件および熱間圧延時のスラブ
加熱条件を規定することにより、AlNを鋼中に微細に
分散させ、このAlNでオーステナイト粒の成長を抑制
して、細粒組織にする方法である。
【0004】この方法によれば、確かに細粒組織を得る
ことが可能であるが、AlNは、連続鋳造の際にスラブ
の横ひび割れの原因となる析出物であり、連続鋳造とい
う効率の高い生産方法の適用が、著しく困難になる。
【0005】特開昭57−131320号公報には、低
温靱性に優れた高張力鋼板の製造方法が開示されてい
る。この製造方法は、圧延終了温度とその後の冷却速度
を規定した方法である。しかし、この方法はオーステナ
イト未再結晶域から2相域に至るまでの温度で圧延する
必要があるため、圧延効率が著しく低下する。また、破
面遷移温度は改善されるものの、セパレーションが発生
しやすくなるため、吸収エネルギーは小さくなる傾向が
強い。そのため、シャルピー衝撃値で一定値以上の吸収
エネルギーが要求されるような場合には、有効な方法と
はいえない。
【0006】また、特開平7−258730号公報およ
び特開平7−258731号公報には、靭性に優れた音
響異方性の少ない構造用厚鋼板の製造方法が開示されて
いる。これらの方法は、音響異方性を低減しつつ靱性を
確保するために、オーステナイトの再結晶による細粒化
を出来るだけ利用して、未再結晶域圧延を行う方法であ
る。
【0007】しかし、この方法は、制御圧延効果は利用
しないとしているものの、実用的に満足の行く靱性を得
るためには、圧延終了温度は900℃前後、あるいはそ
れ以下にコントロールしなければならず、低温圧延に伴
う生産性の低下は避けられない。
【0008】このように、加工熱処理と冷却、再加熱を
巧妙に組み合わせて組織を細粒化することにより必要な
靱性を確保することは可能であるが、どの方法も工業的
規模での生産性が低いのが現状である。。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、生産
性を低下させる制御圧延等による組織の微細化を必要と
することなく製造可能な強度と靭性に優れた鋼材とその
製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】強度と靱性を兼ね備えた
鋼材およびその製造方法に係わる本発明の要旨は、以下
の通りである。
【0011】1)重量%で、C:0.02〜0.15%
未満、Si:1%以下、Mn:0.3〜2.5%、P:
0.05%以下、S:0.004%未満、sol.Al:
0.001〜0.1%、Ti:0.02%以下、N:
0.009%以下を含み、金属組織がマルテンサイトお
よびベイナイトの一方または双方を含む組織、またはこ
れらの焼き戻し組織であり、旧オーステナイト粒のアス
ペクト比の平均値が1.5以下、旧オーステナイト粒の
短径の平均値が60〜700μmで、かつTi、N、S
および旧オーステナイト粒短径dγが下記式(1)また
は(2)を満足していることを特徴とする強度と靱性に
優れた鋼材。
【0012】
【数1】
【0013】
【数2】
【0014】2)重量%で、C:0.02%〜0.15
%未満、Si:1%以下、Mn:0.3〜2.5%、
P:0.05%以下、S:0.004%未満、sol.A
l:0.001〜0.1%、Ti:0.004〜0.0
2%、N:0.001〜0.009%を含み、Ti/N
が0.4〜4で、金属組織がマルテンサイトおよびベイ
ナイトの一方または双方を含む組織、またはこれらの焼
き戻し組織であり、旧オーステナイト粒のアスペクト比
の平均値が1.5以下、旧オーステナイト粒の短径の平
均値が60〜700μmであり、かつTi、N、Sおよ
び旧オーステナイト粒短径dγが下記式(3)および
(4)を満足していることを特徴とする強度と靱性に優
れた大入熱溶接用鋼材。
【0015】
【数3】
【0016】
【数4】
【0017】3)上記1)または2)に記載の化学組成
の鋼を熱間加工するに際し、熱間加工終了時のオーステ
ナイト粒の短径が60〜700μmになるように熱間加
工を950℃以上で終了し、直接焼入れすることを特徴
とする上記1)または2)に記載の強度と靱性に優れた
鋼材の製造方法。
【0018】ここで、オーステナイト粒(以下γ粒と記
す)径とは、熱間加工後冷却して得られた鋼材の金属組
織における旧γ粒径のことを言う。旧γ粒界は、マルテ
ンサイト、ベイナイトを含む鋼ではエッチングによって
容易に現出させることができ、光学顕微鏡で識別可能で
粒径も測定できる。また、鋼材はその形状はどのような
ものでもよく、代表的なものとしては鋼板、鋼管や形鋼
等がある。
【0019】本発明者らは、生産過程で組織を微細化す
る必要がなく、引張強さが400MPa以上で、かつ優
れた靭性を有する鋼材とその製造法を開発すべく、実験
室レベルで、試作試験用の小型圧延機及び熱処理炉を用
いて、様々の条件にて試験をおこない、得られた鋼片の
強度および靱性を調査した。
【0020】検討を開始するに際し、生産能率を高める
ことを目的とし、圧延能率を低下させる制御圧延に頼っ
た細粒化法や、圧延後に再加熱処理工程が必要になる、
再加熱焼き入れによる細粒化法は利用しないことを前提
とした。さらに、生産性向上のため熱間加工の仕上げ温
度を可能な限り高めることを目標とした。
【0021】しかし、制御圧延を利用せず、素材加熱温
度も高めて、圧延仕上げ温度も高くすると、圧延終了時
のγ粒は粗大にならざるを得ない。
【0022】制御圧延を利用するのであれば、比較的粗
大なγ粒であっても最終組織を微細化して靱性を高める
ことは可能だが、制御圧延を利用しないので、γ粒を十
分に細粒化しなければ靱性を確保することは難しい。γ
粒を細粒化するためには、900℃以下の低温まで圧延
を続ける必要があるが、これでは、上記目標は達成でき
ない。
【0023】実際、制御圧延無しの条件で圧延試験を行
うと、シャルピー試験での衝撃の破面遷移温度で−50
℃以下を確保するためには、γ粒を40μm以下にまで
細粒化する必要があった。そのためには、900℃又は
それ以下で圧延を終了するか、α域から再加熱して逆変
態させ、かつAlNやNbCで粒成長をピン止めすれ
ば、950℃程度の加熱で比較的容易に粒径40μm以
下の微細化が達成された。しかし、1000℃を超える
温度では、ピン止め粒子が固溶して失われるため、粗粒
化が起こり、靭性の著しい劣化を招いた。
【0024】本発明者らは、生産過程でのγ粒の細粒化
処理を必要とすることなく製造が可能な強度と靭性を備
えた鋼材を開発すべく検討を重ねた結果、次のような知
見を得た。
【0025】(1)旧γ粒が粗粒になった鋼材は、靱性
は劣化するが、粗粒の状態でSを低減しMnSの析出を
抑制すると、遷移温度及び吸収エネルギーが著しく改善
される。しかし、γ粒が細粒の場合は、この効果はあま
り期待できない。
【0026】(2)鋼中のTiNにも同様の靱性への悪
影響が認められる。NまたはTiを低減して、TiNの
析出量を減らすことにより、遷移温度が改善される。し
かし、γ粒が細粒の場合は改善されない。
【0027】(3)上記(1)、(2)によるMnS、
TiN析出量の削減による清浄化に伴う靱性改善効果
は、鋼材の金属組織が、ベイナイトやマルテンサイト及
びこれらの焼き戻しされた組織を含まない場合には、殆
ど得られない。
【0028】(4)Ca、REM等の介在物形成元素に
ついても、粗大なγ粒では、同様に遷移温度への悪影響
が見られるので、低減するのが好ましい。しかし、悪影
響は、MnSやTiNに比較すると小さく、靱性面から
は、MnSやTiN程にはその削減は重要ではない。
【0029】(5)MnSとTiN析出量を充分に低減
しておけば、γ粒径が60μmを超えても遷移温度の上
昇は軽微である。さらに、粒径が100μmを超える部
位が生じても、遷移温度の上昇は軽微である。
【0030】(6)MnS、TiN析出量に制限を課し
た条件では、γ粒を粗粒にすることにより焼入性が増し
て強度を上げることができるため、γ粒はむしろ60μ
m以上とした方が、低製造コストで高強度の鋼を得るこ
とができる。また、制御圧延の必要がなくなるので、γ
粒が完全に再結晶した状態から変態させることができて
組織を均一にすることができるので、よい製品を安定し
て製造することができる。再結晶状態の目安としては、
γ粒の平均アスペクト比が適当で、この値が1.5以下
であるように製造すればよい。
【0031】(7)γ粒を粗大にする場合、γ粒の短径
dγに応じてMnS、TiNを適切に削減しておく必要
があり、後述の所定の式で規制できγ粒径について広い
範囲で高い靱性を確保することができる。しかし、γ粒
径が700μmを超えると粗大化に伴う靱性への悪影響
が無視できなくなる。
【0032】本発明は、これらの知見に基づきなされた
ものであり、制御圧延や調質処理により組織を微細化す
る必要がなくなるため生産性を高めることができる。
【0033】図1は、γ粒径と靭性との関係を示す図で
ある。Ti:0.019%、S:0.0041%および
N:0.0057%を含む鋼(□印)と、Ti:0.0
06%、S:0.0009%およびN:0.0015%
を含む鋼(■)とを用いて圧延温度を種々変えて熱間圧
延をおこない、シャルピー試験により衝撃破面遷移温度
を調べた結果である。
【0034】図1から明らかなように、Ti、Sおよび
N含有量が多くても少なくても結晶粒が大きくなれば靭
性は低下するが、図中黒四角印で示したようにTi、S
およびN含有量、特にS含有量を低減すると靭性が著し
く向上する。また、γ粒径が大きい場合において靭性の
改善効果が顕著であることが分かる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明における鋼材の化学
組成を限定した理由を説明する(以下、%表示は重量%
を示す)。
【0036】C Cは、強度を確保するするために必要で、0.02%未
満では必要とする強度を確保することができない。一
方、0.15%を超えると、溶接した場合に溶接熱影響
部、母材共に靱性が劣化する。したがって、Cの含有は
0.02〜0.15%とした。
【0037】Si Siは、脱酸作用があり、鋼板の強度上昇にも寄与す
る。しかし、1%を超えて含有させた場合、靭性の低下
をもたらすため、1%を上限とする。また、鋼の脱酸に
支障を来さない限り、Siは幾ら少なくとも問題はな
い。
【0038】Mn Mnは、焼入性を高める効果があり、強度確保に有効な
成分である。含有量が0.3%未満では、焼き入れ性の
不足によって強度、靱性が得られない。一方、2.5%
を超えて含有させる場合は、偏析が増すと共に、焼き入
れ性が高まり過ぎて、溶接時に溶接熱影響部、母材共に
靱性が低下する。したがって、Mnの含有量は0.3〜
2.5%とした。
【0039】P Pは、不純物として鋼中に不可避的に存在する。0.0
5%を超えると、粒界に偏析して靭性が低下するのみな
らず、溶接時に高温割れを招くため、0.05%以下と
した。
【0040】S Sは、Mn、CaやREMと結合してオキシサルファイ
ドを形成し、介在物として鋼中に存在する。鋼の強度が
低い場合、または組織が十分に細粒の場合には、これら
は靱性におおきな悪影響は及ぼさないが、ある程度粗大
な組織である場合は、その含有量は後述の式を満足する
ように制限しなければならない。しかし、式を満足して
も、0.004%以上含有する場合には、靱性への悪影
響は避けられない。より望ましくは、0.003%未満
である。
【0041】sol.Al Alは、脱酸のために必須の元素であり、sol.Alで
0.001%以上含有させなければ、脱酸不足によって
鋼質の劣化を招く。しかし、0.1%を超えて含有させ
ると、母材靭性の劣化や、溶接部靱性の低下を招くため
好ましくない。よって、0.1%を上限とする。
【0042】Ti Tiは、通常鋼中のNを固定して高温延性を改善させる
ための元素として含有させる。しかし、TiNは靱性低
下原因となるため、できるだけTiは添加しないことが
望ましく、靱性面から許容される範囲は、後述する式で
限定される。しかし、式を満足しても、0.02%を超
えて含有させると、靱性の劣化は避けがたい。
【0043】なお、大入熱溶接をおこなう鋼材について
は過度の清浄化は、γ粒の過度の粗大化を招いて靱性の
劣化を招く場合があるため、Tiは0.004%以上含
有させ、かつ、Ti/Nの比を、0.4以上4.0以下
の範囲にコントロールするのがよい。
【0044】N Nは、高温延性低下の原因となる不純物であり、通常
は、Tiを添加してTiNの形で固定することで悪影響
を回避している。しかし、本発明においては、TiNそ
のものが靱性を悪化させる原因となるため、TiNの形
成を抑制する必要がある。そのためNそのものを低減す
るか、あるいは、Ti含有量を低減する。
【0045】優れた靱性を得るためのN含有量の範囲
は、後述の式を満足することが必要であるが、式を満足
しても、Nが0.009%を超えると、TiNによる靱
性低下、あるいは、十分に固定されずに固溶するNによ
る靱性への悪影響が無視できなくなる。また、Nを0.
001%以下とすると、S低減でMnSも殆ど存在して
いない条件下では、γ粒の粒成長が非常に容易になる。
このため、サブマージドアーク溶接法などにより、10
0kJ/cm前後の大入熱にて溶接をおこなう場合、溶
接熱影響部において局部的にγ粒が粗大化することがあ
る。
【0046】本発明の鋼材は、γ粒の粗大化による靱性
劣化を起こしにくい性質を持っているが、大入熱溶接の
熱影響部では、硬度が分布を持ち、結晶粒の大きさにも
不均一が生じるため、靱性面から許容されるγ粒径の上
限は300μm程度となる。このため、大入熱溶接を前
提とする場合には、γ粒成長抑制効果を持つTiNをあ
る程度は含ませなければならず、Nを0.001%以上
含有させるのがよく、併せて、若干のTiも含有させる
のがよい。
【0047】一方、溶接の必要のない鋼材や、40kJ
/cm以下の小入熱溶接しか行わない鋼材については、
経済的に許される限り、Nは可能な限り低減してよい。
【0048】本発明の鋼材は、上記の元素以外に焼入れ
性や強度等を向上させるために必要により下記するよう
な元素を含有させてもよい。
【0049】Cr Crは焼入性を高めるのに有用な元素である。前記した
必須元素のみで最低限必要な焼入性は確保されるが、鋼
材が厚肉の鋼管等の場合には、さらなる焼入性を確保す
るために使用する。Cr含有量を0.02%以上とする
と、焼入性のほかに焼戻し軟化抵抗を高める効果も得ら
れるので0.02%以上とするのが望ましい。しかし、
1.5%を超えると溶接部の靭性が避けられないので
1.5%以下とする。
【0050】Mo 鋼材が厚肉の鋼管等の場合には、さらに焼入性および焼
戻し軟化抵抗を高めるために含有させるのが好ましい。
含有量が0.02%未満では、これらの効果が得られな
いので、0.02%以上とするのが望ましい。しかし、
1%を超えると溶接部の靭性劣化が著しくなるので、上
限は1%とするのがよい。
【0051】B Bは、特にγ粒界の焼入性を高めて強度上昇に寄与す
る。含有量は0.003%以下とするのがよい。
【0052】Nb Nbは、いわゆる制御圧延によって製造される鋼材にお
いては必須の添加元素であるが、本発明においては、制
御圧延を基本的に利用しないため、必須元素ではない。
しかし、強度をさらに高めるのに有効だが、多量に含有
させると1000℃以上の高温で圧延を終了した場合に
は、析出強化を通して靱性を著しく損なう。そのため、
含有量は0.015%以下としなくてはならない。より
好ましくは0.01%以下である。
【0053】V Vは析出強化によって強度を高める効果があり、比較的
靱性への悪影響が小さく、強度アップのためには有効で
ある。含有量を0.01%以上とすると、焼戻し軟化抵
抗のほかに焼入性も向上させる効果も得られるので、
0.01%以上とするのが望ましい。しかし、0.15
%を超えると靭性が大きく劣化するので、上限は0.1
5%以下とするのがよい。
【0054】Cu Cuは強度上昇および耐食性向上に有効なので、より一
層の高降伏強さおよび高耐食性が必要な場合に含有させ
るのがよい。含有量を0.05%以上とすると、直接焼
入れにおける焼入性も高めるので0.05%以上とする
のが望ましい。しかし、1.5%を超えて添加しても、
コスト上昇に見合った性能の改善が見られないため、上
限は1.5%以下とするのがよい。
【0055】Ni Niは、固溶状態において鋼のマトリックス(基地)の
靭性を高める効果があるので、より優れた靭性を安定し
て得る必要がある場合に含有させるのがよい。含有量を
0.05%以上にすると焼入性向上効果も得られるの
で、0.05%以上とすることが望ましい。しかし、4
%を超えると合金コストの上昇に見合った靭性の向上が
得られないので、上限は4%とするのがよい。
【0056】Ca Caは、鋼中のSと反応して溶鋼中で硫酸化物を生成す
る。この硫酸化物は、MnSなどと異なり、圧延加工に
よって圧延方向に伸びることがなく、圧延後も球状であ
る。そのため、延伸した介在物の先端等を割れの起点と
する溶接割れまたは水素誘起割れ(HIC:Hydrogen I
nduced Cracking) を抑制するので、溶接割れまたはH
ICを抑制する場合に含有させるのがよい。含有量を
0.0002%以上とすると溶接部の靭性向上にも効果
があるので0.0002%以上とするのが望ましい。し
かし、0.004%を超えると、清浄度の低下によって
母材靭性が低下する。
【0057】REM REMは、溶接熱影響部の組織の微細化や、Sの固定に
寄与するが、介在物となって清浄度を低下させる。しか
し、REMの添加によって形成される介在物は、比較的
靱性劣化への影響が小さいため、0.004%以下であ
れば含有させても母材の靱性の低下は許容できる。
【0058】次に、金属組織および旧オーステナイト粒
について説明する。
【0059】1)金属組織 鋼材の金属組織は、引張り強度を450MPa以上にす
るために、ベイナイトおよび低温での変態で生成するマ
ルテンサイトの一方または双方を含んだ組織、またはこ
れらの焼き戻し組織とする必要があり、その他にフェラ
イト、パーライトを含む組織である。このような組織
は、熱間圧延後、γ域からの焼き入れを行い、必要に応
じて焼き戻しをおこなうことにより得られる。
【0060】2)旧γ粒のアスペクト比 旧γ粒のアスペクト比の平均値を1.5以下にするの
は、異方性の低減と強度が低下するのを防止するためで
ある。加工を受けて転位を内部に含んだγ粒は、粒内の
転位からもα相が核生成するため、焼入れ性が低下して
強度が低下する。これを防止するために、γ粒を十分再
結晶させて(再結晶が進んだγ粒は、アスペクト比が1
に近づく)から変態させる必要がある。旧γ粒のアスペ
クト比の平均値を1.5以下であれば強度低下を防止す
ることができる。
【0061】また、アスペクト比の平均値は、γ粒が最
も伸長された面を観察することができる方位を選んで光
学顕微鏡用の試料を切り出し、ミクロ組織を現出させ、
画像処理によって旧γ粒を計測し、各γ粒を楕円形にて
近似した場合の長径と短径の比を平均した値である。
【0062】3)旧γ粒の平均短径 本発明においては、生産効率を上げるため、組織の細粒
化のための低温加工をおこなわないため比較的旧γ粒は
粗粒となる。また、粗粒にすることによりTi、Nおよ
びSの低減の靭性および強度に及ぼす効果が顕著にな
る。旧γ粒の平均短径が、60μm未満では目的とする
強度、靭性が得られない。一方700μmを超えると粗
粒になり過ぎ靭性が劣化する。
【0063】4)Ti、N、Sと旧γ粒の短径との関係
式 TiとNの含有比Ti/Nが3.4未満である場合、す
なわちN含有量がTi含有量に比べ多い場合には、下記
式(1)を満足していなければTiおよびS含有量が多
くなり過ぎ、TiNおよびMnSが多量となり靭性が劣
化する。この式は多くの実験によりもとめた式で、旧γ
粒の短径に応じて適したTi、S量を規定するものであ
る。
【0064】
【数1】
【0065】また、TiとNの含有比Ti/Nが3.4
以上である場合、すなわちN含有量がTi含有量に比べ
少ない場合には、下記式(2)を満足しなければ、Nお
よびS含有が多くなり過ぎTiNおよびMnSが多量と
なり靭性が劣化する。
【0066】次に、本発明の鋼材を大入熱溶接用として
用いる場合は、Ti/Nを0.4〜4の範囲とし、かつ
下記式(3)および(4)を満足していなければ溶接部
の熱影響部においてγ粒が粗粒になり過ぎてその部分の
靭性が劣化する。すなわち、大入熱溶接をおこなう場
合、TiおよびN量を少し多くし、TiNやMnSをあ
る程度析出させて熱影響部での粒成長を抑制する必要が
ある。
【0067】
【数3】
【0068】
【数4】
【0069】以下、本発明の鋼材の製造方法について説
明する。
【0070】上記した化学組成の鋼を熱間加工するに際
し、熱間加工終了時のオーステナイト粒の短径が60〜
700μmになるように熱間加工温度を制御して熱間加
工を終了し、直接焼入れすることにより強度と靭性に優
れた鋼材が得られる。
【0071】熱間加工終了時のオーステナイト粒の短径
が60〜700μmになる熱間加工温度は、化学組成や
熱間加工時の加工度によって異なるが、およそ、950
℃以上を確保することが目安となる。なお、旧γ粒径が
700μmを超えない限り、加工仕上げ温度は幾ら高く
ても良好な性能が得られるが、1150℃を超える加工
仕上げ温度を確保することは、実際の製造ラインでは難
しい。また、このような高温では、スケールの発生によ
る鋼材のロスが増える。このような観点から、加工仕上
げ温度は1150℃前後が実質的な上限となる。
【0072】靱性の確保を目的に低温まで熱間圧延を行
う必要はないが、900℃以下の温度域で30%以上の
圧下を行うと、γ粒の細粒化や制御圧延の効果が現れ、
強度が大きく低下する場合がある。このような性質は、
鋼材を量産する場合、品質のバラツキの原因となり好ま
しくないので、低温での加工は避けなければならない。
この悪影響を回避するためには、旧γ粒径が60μmを
下回らないように、また、γ粒が加工硬化していない状
態から水冷されるように、熱間圧延終了温度をコントロ
ールしなければならない。
【0073】加工後の焼入れ処理のための冷却は、必ず
しも水冷である必要はないが、少なくとも変態後の組織
はベイナイト又はマルテンサイト、がミクロ組織上で4
0%以上の面積を占めていることが望ましく、そのよう
になる冷却速度は必要になる。そのような冷却条件はC
CT図から推定することができる。
【0074】
【実施例】真空溶解炉で、表1に示す16種の化学組成
を有する150kg丸型インゴットを溶製した。また、
実機250t転炉で、表2に示す10種の化学組成を有
する鋼を溶製し、連続鋳造により厚さ150〜300m
mのスラブにした。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】インゴットは、表3に示すように鍛造によ
り厚さ120〜170mmの厚板にし、1180〜12
70℃に加熱後、熱間圧延により厚さ25〜50mmの
熱延鋼板とした。
【0078】また、連続鋳造したスラブを表4に示すよ
うに1200〜1250℃に加熱した後、熱間圧延によ
り厚さ25〜40mmの熱延鋼板とした。これら各熱延
鋼板を表3および4に示すような水焼入れ処理と、一部
は焼入れ−焼戻しする熱処理を施した。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】熱処理した各熱延鋼板からは、JIS4号
シャルピー試験片、丸棒引っ張り試験片を採取して、そ
れぞれ、シャルピー衝撃試験、引っ張り試験に供した。
【0082】また、記号17〜26の熱延鋼板について
は、サブマージアーク溶接の溶接継手を作製し、シャル
ピー衝撃試験をおこなった。溶接はV開先の両面一層溶
接とし、溶接入熱は30t以下については70kj/c
m、30tを超える場合は100kj/cmとした。
【0083】図2は、シャルピー衝撃試験片の採取位置
を示す図である。同図に示すように、試験片1の試験後
の破面上(ノッチ部)で溶接金属部1と溶接熱影響部2
がほぼ半々になるようにした。
【0084】各試験結果を表3および表4に併せて示
す。表3から明らかなように、990℃〜1100℃に
わたる高温での圧延を終了した結果としてγ粒は粗大に
なっているにもかかわらず、本発明例では、−50℃以
下の、どのような用途にでも使用できる十分な靱性を示
している。しかも、Nb含有量が少ないか、全く含んで
いない成分であるため、強度確保には不利であるにもか
かわらず、γ粒を粗大化することで焼入性が増している
ため、400から500MPaを超える降伏点強さが得ら
れている。
【0085】表4には、母材の機械的特性の他に、再現
熱サイクル試験の結果を共に示した。
【0086】符号17〜21については、溶接熱影響部
の靭性も良好である。しかし、比較例の記号、22、2
4、25の場合は、熱処理後の靱性は良好であるが、過
度の鋼の清浄化が原因で熱影響部の靱性は大きく劣化し
ている。
【0087】表1に示した記号1〜8の化学成分の鍛造
材については、900℃以下の比較的低温度での熱間圧
延も実施した。圧延条件と熱処理条件を表5に示す。熱
処理した鋼板から上記と同様の各試験をおこなた。その
結果を表5に併せて示す。
【0088】
【表5】
【0089】低温圧延によって細粒化され、若干靱性は
改善しているが、表3と比較して分かるように、強度が
大きく低下している。表3の段階で既に十分な靱性を確
保できていたことを考えれば、このような低温圧延仕上
げは強度を損なうのみでメリットはない。むしろ、表4
で、高温に再加熱し焼入れた鋼が、良好な強度、靱性を
示したことを考慮すれば、表5のように圧延途中で温度
が下がりすぎてしまった鋼は、水冷する前に、再度加熱
炉で1000℃以上にまで加熱して、十分に再結晶さ
せ、γ粒を粗粒化させた後水冷すると、良好な性能を得
ることができる。
【0090】
【発明の効果】本発明によれば、高強度で靱性に優れた
鋼材が、より少ない合金添加量で、しかも、高い生産性
を維持しつつ生産できるようになる。これは、新たな設
備増強をすることなく、高性能の鋼材の生産量を増すこ
とができることを意味し、鋼材生産の上できわめて有益
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】結晶粒径と靭性との関係を示す図である。
【図2】シャルピー衝撃試験片の採取位置を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.02〜0.15%未
    満、Si:1%以下、Mn:0.3〜2.5%、P:
    0.05%以下、S:0.004%未満、sol.Al:
    0.001〜0.1%、Ti:0.02%以下、N:
    0.009%以下を含み、金属組織がマルテンサイトお
    よびベイナイトの一方または双方を含む組織、またはこ
    れらの焼き戻し組織であり、旧オーステナイト粒のアス
    ペクト比の平均値が1.5以下、旧オーステナイト粒の
    短径の平均値が60〜700μmで、かつTi、N、S
    および旧オーステナイト粒短径dγが下記式(1)また
    は(2)を満足していることを特徴とする強度と靱性に
    優れた鋼材。 【数1】 【数2】
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.02%〜0.15%未
    満、Si:1%以下、Mn:0.3〜2.5%、P:
    0.05%以下、S:0.004%未満、sol.Al:
    0.001〜0.1%、Ti:0.004〜0.02
    %、N:0.001〜0.009%を含み、Ti/Nが
    0.4〜4で、金属組織がマルテンサイトおよびベイナ
    イトの一方または双方を含む組織、またはこれらの焼き
    戻し組織であり、旧オーステナイト粒のアスペクト比の
    平均値が1.5以下、旧オーステナイト粒の短径の平均
    値が60〜700μmであり、かつTi、N、Sおよび
    旧オーステナイト粒短径dγが下記式(3)および
    (4)を満足していることを特徴とする強度と靱性に優
    れた大入熱溶接用鋼材。 【数3】 【数4】
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の化学組成の鋼を
    熱間加工するに際し、熱間加工終了時のオーステナイト
    粒の短径が60〜700μmになるように熱間加工を9
    50℃以上で終了し、直接焼入れすることを特徴とする
    請求項1または2に記載の強度と靱性に優れた鋼材の製
    造方法。
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