JP3385164B2 - 分光装置の操作方法 - Google Patents

分光装置の操作方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の利用分野】本発明は、分光装置の操作方法に関
する。特に、本発明はラマン分光に有用であるが、例え
ば狭線の光ルミネッセンス、蛍光ルミネッセンスまたは
陰極線ルミネッセンスを用いた他の分光の形態において
も同等に使用され得るものである。
【0002】
【従来の技術】ラマン効果とは、サンプルが与えられる
周波数の入射光を、この入射光とサンプルを組成する分
子との相互作用によって生じた線を有するある周波数の
スペクトルに散乱する現象をいう。異なる分子種は異な
る特徴的なラマンスペクトルを有している結果、そのラ
マン効果は、存在する分子種を分析するのに用いられ得
る。
【0003】従来のラマン分析装置は、論文“レーザ励
起を用いたラマンマイクロプローブおよび顕微鏡”(ラ
マン分光誌,1975年第3巻、33−43頁、M.D
elhayeとP.Dhamelincourtによ
る)に記述されている。サンプルにはレーザからの単色
光が照射され、その散乱光は、結果として得られたラマ
ンスペクトルのうちの特定の線を選択するためにモノク
ロメータに通される。このモノクロメータは、上記分析
装置の光学システムが照光された点の像または上記サン
プルの線の焦点を合わせる対象としての入射スリット
(entranceslit)を含む。他の光学システ
ムは上記入射スリットの像の焦点を出射スリット(ex
it slit)に合わせる。入射スリットと出射スリ
ットとの間に、上記モノクロメータは回折格子などの分
散光学形デバイスを有する。回折格子は、振動数に依存
する角度のある範囲に、回折格子に入ってくるラマンス
ペクトルを分岐する機能を有するものである。従って、
出射スリットと回折格子との相対位置はラマンスペクト
ルのうち関心のある所望の線を選択する。すなわち、従
来の分析装置では、例えばラマンスペクトルのうちの所
望の線スペクトルを選択したい場合には、出射スリット
と回折格子との相対位置を変えなければならない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、所望
の線スペクトルの選択に際して光学部品間の相対位置の
変動などを必要としない新規な分光装置の操作方法を提
供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明による分光装置の操作方法は、サンプルを照光
して該サンプルから散乱光のスペクトルを得る照光手段
と、前記散乱光を検出する検出器とを含み、前記検出器
は少なくとも一列または一行の検出要素と、前記サンプ
ルから受光された前記スペクトルを分析しかつ該スペク
トルを前記検出要素の列または行に沿って分散する分散
光学デバイスとを含む分光装置の操作方法であって、
前記一つの検出要素から次の検出要素へ列または行に沿
って連続して通過する各要素からのデータを含む、前記
検出要素の列または行の一端からのデータを連続して読
込むステップと、該ステップと同時に、前記データの通
過と同期して前記検出要素の列または行を横切るような
分散スペクトルを生じさせるステップとを含むことを特
徴とする。
【0006】本発明による分光装置の操作方法におい
、検要素が電荷結合素子であってよい
【0007】ペクトルラマン散乱光のスペクトルで
ってよい
【0008】データの通過と同期して検出要素の列また
は行を横切るような分散スペクトルを生じさせるため、
分散光学系デバイスを回転テーブルに取り付けることが
できる
【0009】検出要素の列または行の数をmとした場
合、(m−1)個の第一の検出要素から読み取られるデ
ータを無視または捨てることができる
【0010】サンプルからのレーリー散乱光を遮断する
ため、ホログラフィックフィルタを用いることができ
【0011】検出要素の列または行に沿って分散光学系
デバイスがスペクトルを分散する第1のモードと、所定
波長のレーリー散乱光でサンプル上の2次元領域が検出
要素に映し出される第2のモードとを含むことができ
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】ここで、さらに、本発明の背景等を説明す
る。本出願人は、先に出願した国際特許出願明細書WO
90/07108においてラマン分析装置を開示して
いる。この装置はモノクロメータ(入射スリット、出射
スリットおよび回折格子を備えた)が多層膜誘電体干渉
フィルタなどの整調可能な非分散光学フィルタに置き
換えられたものである。また、上記明細書は上記多層膜
誘電体干渉フィルタの代わりにファブリ−ペロ干渉計を
用いてもよいと開示する。この参照された明細書は、そ
の参照によって本明細書に組み込まれるものである。
【0017】上述したように、本発明はいくつかの新規
な面(aspect)をもっている。
【0018】その一つは、所望の振動数のスペクトルを
選択するための少なくとも二つの異なるタイプの選択手
段を有し、その選択手段のうち少なくとも一つは光路へ
の挿入および光路からの排除を行えるものであるという
点である。この点は、ユーザーが使用する選択手段の対
応を選択できることになるから、本分光装置のフレキシ
ビリティを増大させるものである。選択的に、二つの異
なるタイプの選択手段を直列にして使用することも可能
である。
【0019】本発明の他の新規な面は、サンプルから受
光されたレーリー散乱光を遮断するために光路にホロ
グラフィックフィルタ手段を備え、上記ホログラフィッ
クフィルタ手段が照光をサンプルに向ける角度で、サン
プルを照らすための光は上記ホログラフィックフィルタ
手段に向けられているという特徴を有している点にあ
る。
【0020】本発明のさらに他の新規な面は、分光装置
の新規な操作方法を提供する点にある。
【0021】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細
に説明する。
【0022】図1のラマン分析装置は、国際特許出願明
細書WO 90/07108に開示された装置の改良タ
イプである。レーザ入力ビーム10は、ビームの質を改
良するために空間フィルタ(例えば、ピンホール41)
を含めることができるレンズシステム40を通過する。
【0023】上記空間フィルタはオリジナルのレーザビ
ーム中の不要な欠陥を除去するものである。その結果と
は、例えば反射によって発生するものであり、この欠陥
はレーザビームの焦点をサンプル上のあるスポットに合
わせる際に干渉効果を引き起こすものである。
【0024】レーザビーム10はその後にミラー42に
よって、図2と関連して後述する二色性フィルタ配列1
8に向けて反射される。このフィルタ配列18は、入力
ビームの振動数を有する光を反射するが、他の振動数の
光については透過する。上記レーザ光はフィルタ配列1
8によって90°まで反射し、他のミラー46を経て顕
微鏡対物レンズ20に達する。この対物レンズ20はサ
ンプル14上の小さなスポットにレーザ光の焦点を合わ
せるためのものである。ミラー46および対物レンズ2
0は従来の光学顕微鏡48の部分として提供される。ミ
ラー46を取り外せば、例えば組み立てやサンプルにつ
いての通常の光学的試験などの顕微鏡48の通常時の使
用が可能となる。これらの目的のために、顕微鏡48
は、サンプルを照らすための白色光源50をミラー46
の直上位置に有している。変形例では、光源50の直上
へミラー46の位置を変えてもよい。この構成例は、改
善された安全特性を有し、また後述の光検出器アレイ
(例えば、CCD)12上にサンプルの白色像が形成さ
れることを可能にする。サンプル14は可動テーブル5
2上に置かれる。この可動テーブル52は焦点合わせを
目的とした垂直方向への移動のみならず、水平x−y方
向への移動も可能なものであってもよい。これは、スポ
ット照射されるべきサンプルの表面上の異なる点につい
てのx−yスキャニングを可能にする。また、入ってく
るレーザビームの焦点は、サンプル14上のある領域を
照らすために、例えばレンズシステム40を調節するこ
とによってぼかされてもよい。
【0025】サンプル表面上の照射スポットからのサン
プルによる散乱光は、顕微鏡対物レンズ20およびミラ
ー46を経てフィルタ18まで戻る。このフィルタ18
はラマンスペクトルを透過するが、入力レーザビームと
同じ振動数のレーリー散乱光を遮断するものである。透
過したラマンスペクトルは後述する種々の光学的構成要
素を経て、その焦点は電荷結合素子(CCD)の形態を
とる二次元光検出器アレイ12にレンズ34によって合
わせられる。コンピュータ120は、後続のデータ処理
のためのデータを上記CCD12から取得すると共に、
上記分析装置の他の多くの部分の運転を制御する。
【0026】国際特許出願明細書WO 90/0710
8に記述されているように、上記フィルタ配列18は、
入ってくるレーザ光を顕微鏡に向かって90°まで反射
するために、光路に対して45°の向きに配置して使用
することができる。また、二色性フィルタに向かって4
5°の向きにホログラフィックブラッグ回折フィルタを
配置して使用することもできる。しかしながら、好まし
い実施態様では、図2を参照しつつ以下に説明される新
規な方法においてホログラフィックブラッグ回折フィル
タが使用される。
【0027】論文“ラマン分光におけるレーリー線遮断
(line rejection)のためのホログラフ
ィックブラッグ回折フィルタの利用”(応用分光,19
90年44巻、No.9,1558−1561頁,Mi
chael M.Carrabbaらによる)は、レー
リー散乱光を遮断し、かつラマンスペクトルを透過する
目的のためのホログラフィックブラッグ回折フィルタの
有利な特徴について議論している。
【0028】そのようなフィルタは元来通常、光路への
使用か、あるいは非常に小さい入射角での使用かのいず
れかが予定されている。最近の技術的進歩によれば、国
際特許出願明細書中の二色性フィルタのために提案され
た方法において、上記フィルタは光路に対して45°の
角度で使用され得る。しかしながら、上記フィルタを4
5°の角度で使用したとき、そのフィルタは入ってくる
レーザービームの偏向状態およびラマン散乱光の偏向状
態に対する感受性を示す。さらに、45°の角度では、
上記フィルタが通常の入射角またはそれに近似する入射
角で使用された際よりもレーリー線に近いラマン散乱光
を、上記フィルタが受光する可能性は少ない。
【0029】図2は、前述したカラッバらによる論文に
記載されたタイプのホログラフィックブラッグフィルタ
18Aが図1のフィルタ18に使用されていることを示
している。しかし、新規な構成例では、適当なフィルタ
はフィジカルオプティクスコーポレーション(Phys
ical Optics Corporation:米
国カリフォルニア州90505トーランス,スィート
B,W.237番通り2545)またはカイザーオプテ
ィカルシステムズ(Kaiser Optical S
ystems Inc.,:米国ミシガン州48106
アン アーバー,P.O.Box983,パークランド
プラザ371)から購入できる。これらのフィルタは、
またホログラフィックエッジフィルタまたはホログラフ
ィックノッチフィルタとして販売されている。
【0030】図2におけるホログラフィックフィルタ1
8Aは光路に対する小入射角Xが、例えば10度となる
ような向きに配される。この入射角は、上記フィルタが
ラマン散乱光の良好な透過特性を与えると同時にレーリ
ー散乱光を効果的に遮断し得る程度に十分小さいもので
ある。しかしながら、この入射角は、また上記フィルタ
18Aに、ミラー18Bからの入力レーザービーム10
を光路に沿って反射させ得るものである。ミラー18B
はミラー42からの入力レーザービームを受け、そのビ
ームが顕微鏡48とフィルタ18との間の光路に対して
角度2Xをもつように、そのビームをフィルタ18Aに
向ける。すなわち、交差角2Xはフィルタ18A上の選
択された入射角の2倍であり、例えば入射角が10度で
ある場合には20度となる。
【0031】従って、フィルタ18Aは、ホログラフィ
ックフィルタが45°の角度で使用されたなら起こるで
あろう上記不都合なしに、レーリー散乱光を遮断する機
能および入力レーザービームを導入しそのビームを光路
に沿って顕微鏡に向ける機能を共に満たし得るものであ
る。この新規なホログラフィックフィルタ構成例は、本
実施例のラマン分光装置に限定されるものではない。む
しろ、例えばミラー18を用いて入力レーザービームを
適当な角度に向けることによって、上記フィルタ18A
は、多くの他のタイプの分光装置における上記二つの目
的に寄与し得る。それら他のタイプの分光装置は、散乱
スペクトルを分析するためのモノクロメータを用いたラ
マンスペクトロメータおよび他のスペクトロメータを含
むものである。
【0032】図1に戻って参照すると、選択偏フィル
タ44が顕微鏡の対物レンズ20からCCD12までの
光路内に配されている。このフィルタは、要求されたよ
うに光路に挿入したり、あるいは光路から取り除いたり
することができる。また、上記フィルタは、偏方向を
変えるために光軸回りに回転可能である。これは、調査
中のいかなる特別のラマン線の偏状態(いかなる状態
かどうか)の研究を可能ならしめる。その調査はいくつ
かのサンプルを分析する際に付加的な有益な情報を取得
できるものである。必要なら、半波長板をフィルタ18
とフィルタ44との間に挿入してもよいし、あるいは偏
面を回転させるためにフィルタ18のアップビーム
(up−beam)がなされてもよい。
【0033】フィルタ18および44とCCD12との
間では、散乱光は二つの可動ミラー74および76の位
置関係に依存する実現可能な二つの路のいずれかを通過
できる。これらのミラーが図1において実線で示された
位置になめらかに移動する際に、光は他の固定されたミ
ラー78および80を経由し、ファブリ−ペロエタロン
82およびラマン分析フィルタホイール84を介して反
射させられる。ファブリ−ペロエタロン82は、矢印8
5によって示されているように、光路内へのあるいは光
路からの滑動が可能である。これに代わるべきものとし
て、ファブリ−ペロエタロンを固定し、他の可動ミラー
を用いて光路内への導光および光路からの導光を行い得
る。必要なら、ファブリ−ペロエタロン82は、フィル
タホイール84の前位置の代わりに後位置に置かれても
よい。ミラー74および76の滑動とエタロン82の滑
動はコンピュータ120により制御されてもよい。
【0034】光路へのあるいは光路からのミラー74お
よび76を滑動するための構成例は、それらミラーが光
路内に配置された際に、好ましくは図1に示された配列
に正確に戻れるような正確な停止を含むべきである。こ
れはミラー78および80を経由して反射させられる際
のビームの角度調整不良を防止する。必要なら、ミラー
74および76の滑動は、図1の図示例に代えて図1の
平面に対して直角の正確な滑動面上でなされてもよい。
これに代わるべきものとして、ミラーは蝶番式に動かす
ことにより光路内へ導入しかつ光路から取外せるように
してもよい。他の変形例では、二つのミラー74および
76に代えて二つの移動可能なペンタプリズムを用い
る。これは、ペンタプリズムが光路内へ戻った際にその
位置決めが調整不良状態にあっても光が90度まで反射
することを保障するためである。エタロン82は類似の
正確な滑動面上に配されてもよい。
【0035】フィルタホイール84は図3により詳細に
示されている。このフィルタホイールは複数の窓と、各
窓に配された誘電体多層膜帯域フィルタ90とを含む。
誘電体多層膜帯域フィルタ90は、分析されるべきラマ
ンスペクトルの異なる帯域をカバーするものである。上
記ホイールは、軸86回りに矢印87により示されてい
るように回転可能である。フィルタは、コンピュータ1
20の制御下でインデックスモータ88によってフィル
タ90のうち所望のいずれか一つを光路内に配し得るよ
うに指標に合わせられ得る。これはラマンスペクトルの
関心領域の大雑把な選択を提供する。もしフィルタ90
なしにエタロン82を使用できることが望ましいなら、
ホイール84の窓の一つを空けてもよい。
【0036】国際特許出願明細書WO 90/0710
8に記載されているように、選択されたフィルタ90の
帯域は、光路に直交する軸の回りにフィルタを回転する
ことによって変えられ得る。これを達成するために、フ
ィルタホイール84は回転可能なテーブルまたはステー
ジ92上に取り付けられている。このステージ92は再
びコンピュータ120の制御下で図1における矢印93
によって示されているように所望の角度まで回動するた
めのものである。ファブリ−ペロエタロン82を取り除
くことによってラマン分析は、国際特許出願明細書WO
90/07108に記載された方法と全く同様の方法
によって実行され得る。フィルタ90が調整されたラマ
ン帯域からの光はレンズ34によってCCD12上に焦
点を合わせられる。サンプル14上に照らされた領域の
二次元像の焦点をCCDに合わせることが可能である。
変形例では、サンプル上の一点を照らし、かつその点か
らのラマン散乱光を分析することが可能である。
【0037】ファブリ−ペロエタロン82は、いつでも
すぐに購入できるスキャニングタイプのものである。そ
のような公知のデバイスの構造は図1に概略的にのみ示
されている。そのデバイスは二枚の平行板を含むもので
もよい。両板の空間は圧電アクチュエータ83(他の、
例えば電歪アクチュエータを用いてもよい)によってコ
ンピュータ120の制御下で調整され得る。他の商業的
に実用可能なタイプのファブリ−ペロエタロンも使用可
能である。図4は、エタロン82の透過特性、すなわち
レスポンスが入射光の波数(cm当たり)によって如何
に変化するかを示す。図4における実線FPによって示
された透過特性は鋭く画定されたピーク94および95
を有する櫛形様のグラフで示される。これらピーク94
および95は上記二枚の平行板間の空間によって規定さ
れる波数スペクトルの範囲内で一定間隔に発生するもの
である。上記平行板間の空間を変えるための電歪アクチ
ュエータを用いると、上記透過特性のピーク94および
95はスペクトルについて起伏のあるスキャニングをさ
せる原因となり得る。
【0038】ファブリ−ペロエタロン82なしで、上記
フィルタホイール84が単独で使用される例において、
上記窓90で順番に適当なフィルタを選択し、ステージ
92を回転させフィルタを調整することによって200
cm-1ないし3500cm-1までのラマンスペクトルを
解像度を1cm-1とすればスキャンすることが可能であ
る。しかしながら、より高い解像度は、ファブリ−ペロ
エタロン82を光路内へ滑動させてフィルタホイール8
4の選択されたフィルタと一列とすることによって達成
され得る。図4は、ダイアモンドフィルムを分析するこ
とが望ましい例としての解像度を示す。フィルタホイー
ル84の適当なフィルタは選択されかつステージ92上
で回転せしめられる。その結果、フィルタの透過特性
(破線96で示す)は、ダイアモンドの特徴的なラマン
ピークと一致する1332cm-1に中心波数がある。良
好な調整は現在圧電アクチュエータ83を用い、ファブ
リ−ペロ透過特性図のピーク95を生じさせ、1325
cm-1と1340cm-1との間をスキャンすることによ
って行われている。これにより、スペクトル解像度を
0.2cm-1とすればダイアモンドスペクトル中の特徴
あるピークのスキャニングが可能となり、そのピークの
パラメータの精確な決定が行える。それと同時に、CC
D12上にダイアモンドフィルムの表面の二次元像を焦
点を合わせることが可能であり、その結果そのフィルム
の特性(例えば、前述の薄膜フィルムにおける歪みの空
間マップ)を決定できる。
【0039】勿論、同一の技術は他の物質の特徴的なピ
ークの高解像度での分析を提供するのに用いられ得る。
例えば、シリコン面内の歪みはそのラマンピークに影響
を及ぼす。これを研究するために、フィルタホイール8
4からの適当なフィルタ90は光路内となるように指標
に合わせられたのち、ステージ92の手段により回転さ
せられて関心のあるシリコンピークの回りの帯域を通過
する。その後、圧電アクチュエータ83は上記選択され
た通過帯域内をスキャンするのに用いられ、そして上記
CCDによって受光された像における変化はシリコン面
の全域で歪みがどのように変化するかを示す。
【0040】図5および図6は、上記装置の新規な使用
方法を示す。ファブリ−ペロエタロン82のレスポンス
FPは一連の鋭い等間隔のピーク94A−94Eとして
図5に示されている。ファブリ−ペロエタロン82は、
コンピュータ120からの制御下で電圧変化を圧電アク
チュエータ83に印加することによってスキャンされる
際に、上記ピーク94A−94Eは矢印122により示
されるように、スペクトル領域の上側領域または下側領
域をスキャンさせられる。また、図5はホイール84に
おいて選択され得る誘電体フィルタのスペクトルレスポ
ンスDF(破線により示された)を示す。このスペクト
ルレスポンスDFは、コンピュータ120の制御下でフ
ィルタを傾かせることによって矢印122により示され
るようにスペクトル領域の上側領域および下側領域をス
キャンさせられ得る非常に広い裾を有する一つのピーク
を有する。
【0041】ファブリ−ペロエタロン82とホイール8
4における誘電体フィルタとの連続組合せの全体にわた
るレスポンス(インストルメントファンクション)は、
図5におけるIFで示されている。なお、図5のIFの
グラフは、その縦軸を移動して明瞭に表されている。イ
ンストルメントファンクションIFはレスポンスDFに
レスポンスFPを掛けることによって得られた結果と考
えることもできる。そのIFは少しの従属的なピークに
より囲まれた中央の鋭いピークよりなっている。
【0042】サンプル14による完全なラマン散乱スペ
クトルを調査するために、コンピュータ120はプログ
ラミングされてファブリ−ペロエタロンと誘電体フィル
タの双方を同時にスキャンする。例えば、このスキャニ
ングは、それら双方のレスポンスが同一速度で図5の右
側へ向けてなされる。まず、この調査はフィルタのレス
ポンスDFのピークの範囲内で中心に集められたファブ
リ−ペロのレスポンスを維持するような方法でなされ
る。しかしながら、広いスペクトル領域を越えてファブ
リ−ペロのピークをスキャンすることは不可能である。
従って、次のような技術が採用される。上記ピークが隣
合う二つのピーク94Cと94Dとの間の間隔と等価で
ある小さな波数領域を通してスキャンされた際、および
最大許容電圧が圧電アクチュエータ83に印加される前
に、ファブリ−ペロエタロン82はコンピュータ120
によって命令されて、そのスキャニングの初期領域に戻
る(skip back)。ここで、フィルタピークD
Fはピーク94Cの次のピーク94Dを除いてファブリ
−ペロピーク94Cと一致していない。そのスキャニン
グはピーク94DをピークDFの中心となるように維持
し続けるコンピュータ120でもって継続する。再び、
ファブリ−ペロエタロン82がそのスキャニング可能領
域の端部に到達する前に、コンピュータはファブリ−ペ
ロエタロン82に対しある順序で戻るように命令する。
その結果、ここではピーク94EはピークDFと一致す
る。この方法は、誘電体フィルタの性能によってのみ限
定された、非常に広いスペクトル領域で続けられ得る。
誘電体フィルタを変えることによってスペクトル領域は
さらに拡張され得る。
【0043】図6は、必要に応じてコンピュータ120
によって表示され得る、そのようなスキャニング方法の
結果として器具が生成する取得データADの一例を示す
グラフである。示された例では、データADは単一のラ
マンピークRPの結果として生成され得た。メインピー
クに加えて曲線ADは、図5に示されたインストルメン
トファンクションIFの従属的なピークに対応する従属
的なピ−クを有している。これらの従属的なピークはコ
ンピュータ120において実行されたデータプロセッシ
ングオペレーションによって除去され、その結果ピーク
RPは必要に応じて明瞭に表示され得る。適当なコンピ
ュータプログラムが当業者によって素子化され得るの
で、上記データプロセッシングオペレーションは詳細に
は記述されない。必要なアルゴリズムはインストルメン
トファンクションIFを有する取得データADの畳込み
復号化(deconvolution)を包含し、この
目的のために適用され得る適当なアルゴリズムとしては
ヤンソン(Janson)の方法がある。このデータプ
ロセッシング方法の準備として、インストルメントファ
ンクションIFは上記インストルメントを用いることに
よって引き出されて、公知の特性を有する入力光、例え
ば上記インストルメントのレーザ入力光10をスキャン
するようにしてもよい。
【0044】代わりに、DFで示されたピークより狭い
ピークを有する誘電体フィルタを用いることも可能であ
る。この場合において、上記インストルメントファンク
ションはいかなる実質的で従属的なピークを有せず、畳
込み復号化は不要である。
【0045】再び図1を参照すると、フィルタホイール
84およびファブリ−ペロエタロン82の代わりに、フ
ィルタ18,44とCCD12との間の代用光路は次の
ようにして選択され得る。上記可動ミラー74および7
6は例えばコンピュータ120によって光路から滑動し
て外れ、破線74Aおよび76Aによって示された位置
にそれぞれ移動する。その後、散乱光は、鏡面を有する
二等辺プリズム62を経由することで方向を変えて反射
タイプの回折格子60へ通される。例えば、1200線
/mmを有する格子60は、回転正確なテーブルすなわ
ちコンピュータ120からの制御下で、図面の紙面に対
して直角な軸60A回りに回転可能なステージ61上に
取り付けられている。入力レーザビームの焦点はサンプ
ル14上の一点に合わせる。
【0046】図7は回折格子60のより詳細な構成例を
示すものである。ラマン散乱光は、図7の左側からの直
径Dの平行ビームとして顕微鏡から出てくるものであ
る。反射コーティングを具えた二等辺プリズム62は、
プリズム角をαとすると、2αの角度まで上記ビームを
偏向させる。上記プリズムを、図面の紙面に対して直角
な精密スライド64(図7では概略的にのみ示された)
上にラマン散乱光ビームへおよび該ビームから移動可能
とすることは任意である。上記入射ビームは、ラインス
ペースdを有する回折格子に対して直角な面と角度θを
なす。上記回折ビームは、上記プリズムの反対面を経由
してラマン散乱ビームの元来の光路に帰還し、上記回折
格子の垂線に対して角度φをなす。これらの条件下で、
上記回折ビームの中心波長λは、式
【0047】
【数1】 λ=d(sinθ+sinφ) (1) によって与えられる。
【0048】上記入射ビームと上記回折ビームとの間の
角度δは、式
【0049】
【数2】 δ=θ−φ (2) によって示されるように入射角θと回折角φとに関係す
る。
【0050】典型的な0.5ないし1mの分光計では、
δ値は通常20°ないし30°の範囲にある。本発明の
本実施例のために上記範囲のδ値を使用することは、商
業的に利用可能な回折格子の特性が強い輝き(blaz
e)の角度にマッチすることから有益である。図7のδ
値は30°として描かれ、大きさの印象を提供してい
る。
【0051】δ値を固定すると、回折格子の回転軸60
Aとプリズムの中心との間の距離Lが決まる。図7の表
記法を用いると、式
【0052】
【数3】 tan(δ/2)=H/2Ltanα (3) ここでHはプリズムの高さであり、αはプリズム角であ
る。さらに、δ値は式
【0053】
【数4】 δ=π−4α (4) および式
【0054】
【数5】 L=Htan2α/2tanα (5) によって示されるαに関係する。
【0055】図7はH値を15mmと、δ値を30°
と、プリズム角αを37.5°と仮定して描かれてい
る。従って、図7におけるL値は36.5mmである。
勿論、これら角度および寸法は単に実施例として与えら
れていると理解すべきである。
【0056】レンズ34は、ラマン散乱光の焦点を電荷
結合素子(CCD)12上に合わせる。図1の66で示
されたように、回折格子60はCCD12を横切った種
々のラマン波長を分散させる。CCD12を横切る分散
はθの機能であり、かつ回転軸60A回りに与えられた
角度位置(すなわち、与えられた角θ)での回折格子6
0に関し得られたラマンスペクトルの範囲を決める。精
密回転テーブル61を使用すると、調査されるべきラマ
ンスペクトルの全範囲をカバーするように、格子が種々
の異なる角θに段階的に回転させられ得る。各角θごと
に、CCD12は、CCDの各画素(または次なるシグ
ナルプロセッシングおよび分析の間、相互に結合された
画素群ごと)に対応する波数(cm-1)によって調整さ
れ得る。
【0057】格子が1200線/mmであり、δ値が3
0°である場合に、式(1)は式
【0058】
【数6】 λ=833nm(sinθ+sin(θ−30°)) (6) に書き換えられる。
【0059】CCDチップが20μm四方当たり580
画素であると仮定すると、活性領域は12.8mm長で
ある。レンズ34の焦点距離が300mmであれば、上
記活性領域が2.3°に当たる。上記活性領域に対する
分散Δ(1/λ)は式
【0060】
【数7】 Δ(1/λ)=482cm-1cosφ /(sinθ+sin(θ−30°))2 (7) 種々の入射角θについての分散の大きさは表1に示され
る。
【0061】
【表1】 θ φ λ 1/λ Δ(1/λ) 30° 0° 416nm 24010cm-1 1928cm-1 40 10 680 14706 712 50 20 923 10834 369 上記値のすべては実施例として与えられているに過ぎな
い。
【0062】図1および図7の上記装置の新規な面は、
回折格子を用いる従来のモノクロメータによって要求さ
れた入射スリットを必要としないということである。上
記顕微鏡対物レンズ20によってサンプル14上に焦点
を合わせられたレーザ光の小スポットを上記入射スリッ
トに取って代える。上記装置は従来の出射スリットを必
要としない。CCD12の画素(または相互に結合され
た画素群)を出射スリットに取って代える。しかしなが
ら、入射スリットは必要に応じて挿入はできるであろう
が、その場合、入射スリットは国際特許出願GB92/
01026に記載されているように共焦点作用を提供す
ることができる。そのような構成例では、上記スリット
と関係させたレンズ群は、ビームが格子のより大きな領
域をカバーしてスペクトル解像度を増すように上記ビー
ムを拡張することができる利点を有している。
【0063】プリズム62は精密スライド64上に取り
付けられるので、必要があるときはプリズム62を容易
に取り外すことができる。サンプル14の直接の像は、
その後に白色光でサンプル14のある領域を照らすこと
によってCCD12上に得られる。精密スライド64の
ために、プリズム62が戻される際でも、回折格子60
に関係したプリズム62の位置、および角度θ,φ,δ
は変化しない。CCD12全体のラマンスペクトルの分
散は、同様に変化せず、その結果CCDを再較正する必
要がない。すなわち、CCDの同一画素は未だ同一ラマ
ン波長を表しているであろうからである。必要に応じ
て、図面の紙面に直角な精密スライド64に代わりに、
図7における矢印63の方向に排除され戻されるべきプ
リズム62を配することが可能である。しかしながら、
精確な停止は、その後にプリズムが格子60に関係した
正しい位置に戻れることを保証するために提供されるべ
きである。
【0064】本発明の他の新規な面は、回折格子60ま
たは他の分散性の要素が用いられる第1のモードと、整
調可能で非分散光学の要素(ファブリ−ペロエタロン
82および/またはホイールにおける)が用いられる第
二のモードとの間で容易にモード変換する性能にある。
第二のモードはCCDがサンプルのある領域を画像化す
るのに用いられ得るという利点があるのに対し、第一の
モードは、サンプル上の単独の点から同時に完全なラマ
ンスペクトルを登録するのにCCDのポテンシャルを利
用する。一方のモードと他方のモードとの間のモードを
変換することはミラー74および76を移動させること
によって容易に達成される。変形例では、モード変換
は、整調可能な誘電体フィルタまたは他の整調可能な非
分散光学のフィルタ要素をプリズム62の位置に簡単
に挿入することによって達成され得る。従って、上記装
置は非常に多目的なものである。
【0065】必要に応じて、プリズム62は二つの分離
用のミラーに置き換えられ得る。しかしながら、そのプ
リズムは固体光学要素であるので、プリズム角が固定さ
れているのが好ましい。というのは、二つのミラーが使
われたなら、ミラー間の角度がミラーの排除および置換
の度毎に精確に再調整されたことを保証することが必要
であるからである。
【0066】他の可能性は、表面に反射型の回折格子を
備え、かつ裏面に平面ミラーを備えた光学要素60を使
用するところである。そのような光学要素60は、回折
格子に代えたミラー上に光を入射するように回転可能と
される。この場合、ミラーは、その表面がフィルタ18
からCCD12までの光路(θ=φ)に平行となってい
るものである。これはプリズム62を排除するのと同一
の効果を有しており、白色光でサンプルを照らすことに
よりサンプル表面のある領域の実像をCCD上に形成す
ることができる。整調可能フィルタは、サンプルをレー
ザで照らすことによって必要に応じて、例えば図1にお
ける破線68で示されているように光路のどの位置にも
移動させられ得る。
【0067】ここで、CCD12と協同して回折格子6
0を使用する方法を記述する。CCD12は画素の複数
行からなる二次元光検出器アレイである。よく知られて
いるように、CCDからのデータの読出しは一つの連続
したプロセスである。このプロセスは、露光の結果とし
ての各画素において蓄積された電荷が画素の行に沿って
隣接する画素へ移動させられるものである。上記行にお
ける各画素からのデータは、当該行の端部の画素からコ
ンピュータ120によって連続して得られる。必要に応
じて、CCDの使用に代えて、スペクトル66は、画素
の単独行からなる一次元(すなわち、線状)光検出器ア
レイに沿って焦点を合わせられ、当該データは類似した
連続方法で読まれる。
【0068】上記記述されたまでの上記装置の一つの不
利の点は、上記装置がスペクトルをCCD12全体に広
く分散して高解像度を与えるようになっているものであ
れば、スペクトルの一部だけはいずれのときにも受光さ
れ得るというものである。より広いスペクトルからのデ
ータを取得するために、一つの可能な方法としては、ス
ペクトルの一部をCCD12上に十分な時間晒した後、
CCDからのスペクトルの一部に関係する全てのデータ
をコンピュータ120に読み取るという方法がある。次
に、ターンテーブル61は指標に合わせられて、その結
果スペクトルの次の部分がCCD12によって受光さ
れ、十分な露光時間が許され、スペクトルの上記部分か
らの全てのデータがコンピュータに読み取られる。上記
方法は、必要な程度しばしば繰り返される。しかしなが
ら、このステップアンドリピートプロセスは、後のコン
ピュータのデータプロセッシング中の不利な点を有して
いる。というのは、スペクトルの分離部分から取得され
たデータの分離ブロックを互いに結合することは困難だ
からである。これは、特に分離の露光間の光のバックラ
ウンドにおいて変化があったあ場合、あるいは他の条件
が変えられた場合に、事実である。
【0069】改良され新規なデータ取得方法は、図8に
示すように装置を操作するものである。図8は、CCD
12の画素の一列または一行の一部分を概略的に示すも
のである。一定の時間間隔で与えられた点では、この一
列または一行に沿って分散させられたラマンスペクトル
が光線66A,66B,66Cによって図示されてい
る。各光線は異なる波数のラマン散乱光を表している。
上記方法の一般原則は、一つの画素から次の画素への電
荷の移動と同期して、画素の一列または一行に沿って上
記光線をスキャンして端部の画素12Aからのデータを
コンピュータ120で読み取るようになっている。従っ
て、短い露光時間の経過後、コンピュータ120はCC
D12に命令し一つの画素だけの全データを移動すると
同時に、ターンテーブル61に命令し、近くの画素間で
スペクトル解像度と等価の量だけ格子60を指標に合わ
せる。例えば、画素12N中に蓄積された電荷は画素1
2Mへ移動すると同時に、光線66Cは破線66C’で
示された位置に移動する。同時に、画素12H中に蓄積
された電荷は画素12Gへ移動し、光線66Bは位置6
6B’に移動する。また、画素12B中に蓄積された電
荷は画素12Aへ移動し、同時に光線66Aは位置66
A’に移動する。このような方法で、画素12M、画素
12Gおよび画素12A中に存在する電荷は、それぞれ
光線66C,66Bおよび66Aの相対強度に従って引
続き蓄積する。
【0070】次に、先の露光時間と同一の短い露光時間
の経過後、各画素中の電荷は再び各々の隣接する画素へ
移動し、同時に格子60は近くの画素間でスペクトル解
像度と等価の量だけ指標に合わせられる。このようにし
て画素12Mからの蓄積された電荷は、画素12Lへ移
動し、引続き位置66C”に移動した光線の強度に従っ
て蓄積する。同様に、画素12G中の蓄積された電荷は
画素12Fへ移動し、引続き位置66B”に移動した光
線の強度に従って蓄積する。一方、画素12Aからの蓄
積された電荷は、画素の列または行の端部から移動し、
コンピュータ120内の格納部に読み取られる。
【0071】この方法は、所望したスペクトル範囲と同
じ幅のスペクトルからデータを取得するために多数回繰
り返される。スペクトル範囲の全幅上への限定が格子6
0の性能によるところであると認識されるであろう。そ
して、この範囲は多くの場合、高解像度を維持しつつ、
CCD12の幅であるということができる。
【0072】実用上、CCD12は各1列または1行中
に(m)個の画素を有する。コンピュータ120は、読
み出された(m−1)個の第一の画素からのデータを無
視するか捨てるようにプログラムされている。これは、
スペクトルにおいて各点での同一の全露光時間を越えて
蓄積されたデータをより早くかつ正確に処理するという
理由によるものである。しかるに、これら第一の(m−
1)点は後続の点よりも全露光時間が短いであろう。後
続の各点では、m×d秒に等しい全露光時間t以上で蓄
積されたであろう。ここで、dは一つの画素から次の画
素への電荷の各移動間の遅延時間である。
【0073】n個の点からなるスペクトルをスキャンす
るのに要した時間はt+(n×t)/mである。例え
ば、CCDが600個のワイド画素であれば、所望の全
露光時間は10秒であり、6000画素と等価のスペク
トル幅を有するスペクトルは110秒でスキャンされ得
る。この時間は前述したステップアンドリピートプロセ
スに関して要求されるであろう時間より僅かに長い。し
かしながら、本発明の方法が段階的な個別プロセスの代
わりに連続したスキャニングプロセスを包含するもので
あるので、バックグラウンド光レベルにおける条件の変
化または他の変更はあろうが、分離したブロックデータ
を互いに結合する後続データ処理操作中に問題はない。
【0074】最大限可能なスペクトル解像度が要求され
ないならば、ソフトウェアはビンニング(binnin
g)と呼ばれる技術を使用することができる。この技術
は数種の近い画素が一群として処理されるというもので
ある。ソフトウェアは、上記群内の連続の画素から捕捉
するデータを互いに加え、一つのデータ点として処理す
る。一つの利点はデータ量が増加することである。これ
に代わるものとして、露光時間はより早いスキャニング
により短縮され得る。
【0075】ビンニングが用いられようとなかろうと、
第2の利点は、各データ点が列または行における各々の
画素以上に集められる結果、CCDレスポンスの不均一
により、または塵埃の粒子により発生するエラーが平均
的な線で落ち着くというものである。第3の利点は、C
CDと関係した読出し回路内の雑音の効果が減少する。
【0076】図9は、フィルタホイール84内のあるフ
ィルタを使用してサンプル14上の特別の一点のラマン
スペクトルを取得することが望ましい場合に、上記装置
を使用する他の新規な方法を示すものである。これは、
通常、関係する点におけるあるスポットに、入ってくる
レーザビームの焦点を合わせ、x−yテーブル52を用
いてサンプルを正しい位置に配置することによって行わ
れるであろう。しかしながら、本発明の方法において
は、サンプルのある領域は、レンズシステム40を調整
して入ってくるレーザビーム10の焦点をぼかすことに
よって照らされる。ミラー74および76は、フィルタ
ホイール84における所望の整調可能なフィルタを通し
て散乱光を進めるように配置され、上記照光領域の二次
元像はCCD12上で生成される。この照光領域は図9
におけるサークル130によって示されている。
【0077】次に、ユーザーは自己の調査対象のサンプ
ルの照光領域内の一点または小領域を選択する。この選
択は、図9のボックス132により示されるように、C
CD12の対応する画素を共にたくわえる(binni
ng)ことによって達成される結果、コンピュータ12
0が上記画素からデータを一単位として処理することに
よって、正しく、そのデータを取得するであろう。選択
される点または領域は、入ってくるレーザビームによっ
て照らされた領域内のサンプル上のいかなる位置にあっ
てもよい。最終的に、コンピュータ120は所望のラマ
ンスペクトルを通常の方法で作成する。その方法は、選
択されたフィルタを整調して調整すると同時に領域13
2内にたくわえられた(binned)画素からデータ
を取得するというものである。
【0078】図9に示された方法は、いかなる所望のバ
ンド幅、例えば2cm-1または20cm-1を有するフィ
ルタで行われてもよい。スペクトルの範囲はまた、ホイ
ール84の種々のフィルタを順に選択することによっ
て、上記のように拡大されてもよい。上記方法はまた、
必要に応じてファブリ−ペロエタロン82を用いる上記
スキャニング方法と関連させて用いられてもよい。フィ
ルタホイール84内の整調可能な誘電体フィルタの較正
は、本発明の方法で光軸から外れたときに非常に僅かに
シフトされるが、これは必要ならコンピュータ120内
のソフトウェアによって訂正され得る。
【0079】図1の装置は、例えば98で示されたよう
な内部遮蔽部を備え、CCD12に達する入力レーザビ
ーム10から脇へ逸れた光を防ぐようにしてもよい。こ
の遮蔽部における穴100はファブリ−ペロエタロン8
2およびフィルタホイール84を経由して反射した光ビ
ームの通過を許すものであり、これら穴100はミラー
74および76が光路から外れて移動した際に、シャッ
タにより自動的に閉鎖されてもよい。他の遮蔽部は、構
成要素82および84と構成要素40−42との間に備
えられてもよい。レーザ振動数の光を拒絶する他の二色
性フィルタは、CCDの前、例えばミラー76とレンズ
34との間に、自己の回りの他の遮蔽部と共に備えられ
てもよい。
【0080】図10は、二色性フィルタ18とCCD1
2との間に光構成要素の変形例としての構成例を示し、
図1において用いられた同一参照番号は適切な箇所に附
される。
【0081】前述したように、散乱光は、ミラー74が
実線によって示されているように光路に配置されている
か、あるいは破線74Aによって示されているように光
路から外れているかに依存する可能な二つの光路のいず
れかを通ることができる。
【0082】光路に配置されたミラー74でもって、光
はフィルタホイール84の選択されたフィルタを通して
反射させられる。上記選択されたフィルタは、前述した
のと同様の方法で、ステージ92を回転することによっ
て整調され得る。ミラー110はファブリ−ペロエタロ
ン82を通して90°まで光を反射する。その反射光
は、その後レンズ34によりCCD12上に焦点を合わ
せられる。図1に示すように、フィルタホイール84と
ファブリ−ペロエタロン82は互いに関連させて用いら
れてもよく、あるいはステージ92を回転させることに
よって、より低い解像度でラマンスペクトルがスキャン
されるようにファブリ−ペロエタロン82が光路から排
除されてもよい。
【0083】これに代わるものとして、光路から排除さ
れたミラー74でもって、散乱光は回転テーブル61上
に取り付けられた回折格子60に向けて直接進む。テー
ブル61の向きに依存して、選択された回折光線はミラ
ー110まで通される。このミラーは、CCD12に向
けて回折光線を反射するように破線110Aによって示
された位置に蝶番式に旋回できるものである。前述のよ
うに、ファブリ−ペロエタロン82は高解像度で良好に
整調するのに用いられてもよく、あるいは不要であれば
光路から排除されてもよい。
【0084】前述のように、回転テーブル61はラマン
スペクトルの一つの範囲から他の範囲へステップして移
動するのに用いられ得る。また、回折格子は、反対側に
平面ミラーを有する光学要素60であってCCD12上
にサンプルの実像を形成するために上記光学要素を回転
して用いられ得るものであってもよい。
【0085】図1の実施例で示されているように、図1
0の構成例では、サンプル上のあるスポットにレーザビ
ームの焦点を合わせること、およびCCD上の一つの画
素またはたくわえられた(binned)画素の群を当
てにする入口または出射スリットを要求しない。また、
上記構成例は、図1に示されたプリズムは、回折格子が
整調可能な非分散形フィルタと交換されるべきであれば
好ましいとされるのであるが、上記プリズムを要求しな
いという利点を有している。
【0086】図10の構成例は、回折格子60からの回
折された光線の落差(throw)が図1の場合よりも
大きいものとなり得るので、回折格子と協同してスキャ
ニングファブリ−ペロエタロン82を用いる付加的な可
能性をもって、焦点距離のより長いレンズ34の使用を
許し、回折格子が用いられる場合、より高解像度へ導く
という利点を有している。
【0087】上記は、本発明の装置の多くの新規な態様
および多くの新規な方法を指摘したものである。これら
は共に用いられ、あるいは分けて用いられてもよいとい
うことが正しく認識されるであろう。上記態様への修飾
がなされてもよいということも正しく認識されるであろ
う。例えば、サンプル上のある領域の二次元像が必要で
はないなら、CCD12はアバランシェフォトダイオー
ドのような、より簡単な検出器と置き換えてもよい。さ
らに、ラマン散乱スペクトルが議論されてきたが、本発
明は、狭線の光ルミネッセンス、蛍光ルミネッセンスお
よび陰極線ルミネッセンスを含む他のスペクトルの分析
にも使用可能である。
【0088】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
種々の分光分析を容易にかつ正確に行える分光装置の
作方法についてのフレキシビリティを提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象となった分光装置の第1の実施例
としてのラマン分析装置の構成例を示す概略図である。
【図2】図1におけるフィルタの構成を詳細に示す概略
図である。
【図3】図1における矢印IIIの方向から見た分析装
置の一構成要素としてのフィルタホイールを示す正面図
である。
【図4】分析装置の構成要素としてのファブリ−ペロエ
タロンの透過特性を示すグラフである。
【図5】分析装置の構成要素としてのファブリ−ペロエ
タロンの透過特性を示すグラフである。
【図6】ラマンスペクトルの単一線に対する分析装置の
部分の応答性を示すグラフである。
【図7】分析装置の他の部分における光路を示す概略図
である。
【図8】CCD検出器の一部を詳細に示す概略図であ
る。
【図9】CCD検出器上の照光領域を示す模式図であ
る。
【図10】本発明の対象となった分光装置の第2の実施
例としてのラマン分析装置の構成例を示す概略図であ
る。
【符号の説明】
10 レーザ入力ビーム 12 二次元光検出器(CCD) 14 サンプル 18 フィルタ配列 18A ホログラフィックブラッグ回折フィルタ 18B ミラー 20 顕微鏡対物レンズ 34 レンズ 40 レンズシステム 41 ピンホール 42 ミラー 44 選択偏向フィルタ 46 ミラー 48 顕微鏡 50 白色光源 60 回折格子 61 回転テーブル 62 プリズム 64 精密スライド 66 光線 74 可動ミラー 76 可動ミラー 78 ミラー 80 ミラー 82 ファブリ−ペロエタロン 83 圧電アクチュエータ 84 フィルタホイール 86 フィルタホイールの回転軸 90 多層膜誘電体帯域フィルタ 92 ステージ 93 ステージの回転方向 94 ピーク 95 ピーク 96 フィルタの透過特性 120 コンピュータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 GB 9213121.8 (32)優先日 平成4年6月20日(1992.6.20) (33)優先権主張国 イギリス(GB) (31)優先権主張番号 GB 9213120.0 (32)優先日 平成4年6月20日(1992.6.20) (33)優先権主張国 イギリス(GB) (72)発明者 ブライアン ジョン エドワード スミ ス イギリス ロンドン ウエスト ベクト ン ティール クロウズ 16 (72)発明者 レイモンド ジョン チャニイ イギリス グロスターシャ州 バークレ ー ニュー ブルックエンド ラバーナ ム コテージ(番地なし) (56)参考文献 特開 平3−77048(JP,A) 特開 平6−300639(JP,A) 特表 平3−504046(JP,A) SPECTROCHIMICA AC TA,VOL.46A NO.2,pp. 153−159 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01J 3/00 - 3/52 G01N 21/00 - 21/74

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 サンプルを照光して該サンプルから散乱
    光のスペクトルを得る照光手段と、前記散乱光を検出す
    る検出器とを含み、前記検出器は少なくとも一列または
    一行の検出要素と、前記サンプルから受光された前記ス
    ペクトルを分析しかつ該スペクトルを前記検出要素の列
    または行に沿って分散する分散光学デバイスとを含む
    分光装置の操作方法であって、 前記一つの検出要素から次の検出要素へ列または行に沿
    って連続して通過する各要素からのデータを含む、前記
    検出要素の列または行の一端からのデータを連続して読
    込むステップと、 該ステップと同時に、前記データの通過と同期して前記
    検出要素の列または行を横切るような分散スペクトルを
    生じさせるステップとを含むことを特徴とする分光装置
    の操作方法。
  2. 【請求項2】 前記検出要素が電荷結合素子であること
    を特徴とする請求項1に記載の分光装置の操作方法。
  3. 【請求項3】 前記スペクトルラマン散乱光のスペク
    トルであることを特徴とする請求項1または請求項2に
    記載の分光装置の操作方法。
  4. 【請求項4】 前記データの通過と同期して前記検出要
    素の列または行を横切るような分散スペクトルを生じさ
    せるため、前記分散光学系デバイスが回転テーブルに取
    り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項
    3の何れかに記載の分光装置の操作方法
  5. 【請求項5】 前記検出要素の列または行の数をmとし
    た場合、(m−1)個の第一の前記検出要素から読み取
    られるデータが無視または捨てられることを特徴とする
    請求項1から請求項4の何れかに記載の分光装置の操作
    方法
  6. 【請求項6】 前記サンプルからのレーリー散乱光を遮
    断するため、ホログラフィックフィルタが用いられるこ
    とを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の
    分光装置の操作方法
  7. 【請求項7】 前記検出要素の列または行に沿って前記
    分散光学系デバイスが前記スペクトルを分散する第1の
    モードと、所定波長の前記レーリー散乱光で前記サンプ
    ル上の2次元領域が前記検出要素に映し出される第2の
    モードとを含むことを特徴とする請求項1から請求項6
    の何れかに記載の分光装置の操作方法
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