JP3383542B2 - 誘電体導波管線路の結合構造 - Google Patents

誘電体導波管線路の結合構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロ波やミリ
波等の高周波の電気信号を伝達するための誘電体導波管
線路と他の伝送線路との結合構造に関するものである。
【0002】
【従来技術及びその課題】従来より、配線基板や高周波
パッケージ等の内部に構成される高周波信号用(周波数
が1GHz以上)の伝送線路として、ストリップ線路や
マイクロストリップ線路,コプレーナ線路等が知られて
いる。これらの伝送線路は、複数の誘電体層上に線路と
なる導体を印刷してこれらを積層するといった積層化技
術によって比較的簡単に形成することができ、マイクロ
波領域の周波数をもった電気信号の伝送に優れた特性を
有していることから、高周波信号用の伝送線路として幅
広く用いられている。
【0003】また最近では、誘電体基板を挟む一対の主
導体層と、これら主導体層間に配設される二列のバイア
ホール群とによって疑似的な矩形導波管を形成するよう
にした誘電体導波管線路が提案されており(特開平6-53
711 号公報参照)、従来の矩形導波管と同等の優れた伝
送特性と高い生産性とを併せ持った新しいタイプの伝送
線路として注目されている。
【0004】そして、このような種々の伝送線路は、そ
の伝送特性や用途等に応じて適宜使い分けられており、
そのため、配線基板等の内部に種類の異なる伝送線路を
複数形成してこれらを相互に接続させる技術が要求され
ている。
【0005】ところが、種類の異なる伝送線路同士を相
互に接続させる場合、例えば、ストリップ線路とマイク
ロストリップ線路であれば両者の端部同士を電磁結合さ
せる等して比較的簡単に接続することができるものの、
上述のような誘電体導波管線路と他の伝送線路との結合
構造についてはこれまで具体的な検討がなされておら
ず、誘電体導波管線路と他の伝送線路とを組み合わせて
用いることはできなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで発明者らは、誘電
体導波管線路と他の伝送線路との結合構造について検討
を重ねた結果、誘電体導波管線路の側面もしくは端面を
介して他の伝送線路の一部を挿入させ、これを電磁気的
に結合させることで直接、接続できることを見出した。
【0007】即ち、本発明の誘電体導波管線路の結合構
造は、誘電体基板の少なくとも一部を挟んで対向する一
対の主導体層と、該一対の主導体層間を電気的に接続
し、電気信号の伝達方向に遮断波長の1/2以下の間隔
で配設された二列のバイアホール群と、前記主導体層間
に各バイアホールと接続した状態で配置された副導体層
を具備し、前記主導体層バイアホール群及び副導体
層からなる格子状の側壁や端面で囲まれる導波管領域に
よって電気信号を伝達する誘電体導波管線路と、他の伝
送線路とを結合させるための構造であって、前記誘電体
導波管線路のバイアホール群と、前記副導体層とで形成
された側面もしくは端面を介して、該誘電体導波管線路
の内部に、線路導体と、前記副導体層の一部を利用して
構成されるコプレーナ線路、またはストリップ線路にお
ける前記線路導体の一端を挿入してなることを特徴とす
るものである。
【0008】また、本発明の誘電体導波管線路の結合構
造は、前記誘電体導波管線路内へ側面から挿入された前
記線路導体のスタブの長さ、および前記誘電体導波管線
路の端面からスタブの中心との距離が主導体層間の距離
aに対して、a/4〜a/3であることが望ましい。ま
た、本発明の誘電体導波管線路の結合構造は、前記誘電
体基板が、セラミックスからなり、前記主導体層、バイ
アホール、副導体層および線路導体が、導電ペーストを
印刷塗布し、前記誘電体基板と同時焼成して形成された
ものであることであることが望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面に基づい
て詳細に説明する。図1は本発明の誘電体導波管線路の
結合構造に係る一形態を示す概略斜視図であり、1は誘
電体基板、2は誘電体導波管線路、3a,3bは一対の
主導体層、4はバイアホール、6は他の伝送線路として
のコプレーナ線路、7はコプレーナ線路6の線路導体で
ある。
【0010】前記誘電体基板1は例えばアルミナセラミ
ックスやガラスセラミックス,窒化アルミニウムセラミ
ックス等の誘電体材料から成り、例えばアルミナセラミ
ックスから成る場合、アルミナ、シリカ、マグネシア等
のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加
混合して泥漿状に成すとともにこれを従来周知のドクタ
ーブレード法やカレンダーロール法等を採用してシート
状となすことによって複数枚のセラミックグリーンシー
トを得、しかる後、前記セラミックグリーンシートの各
々に適当な打ち抜き加工を施すとともにこれらを上下に
積層し、高温(約1600℃)で焼成することによって
製作される。
【0011】また前記誘電体基板1の内部には誘電体導
波管線路2とコプレーナ線路6とがそれぞれ配設されて
おり、この2つの伝送線路は誘電体基板1内で相互に結
合されている。前記誘電体導波管線路2は、誘電体基板
1の少なくとも一部、例えば誘電体基板1を形成する5
層の誘電体層1aのうち、下の4層を挟んで対向する一
対の主導体層3a,3bと、該一対の主導体層3a,3
b間を電気的に接続し、電気信号の伝達方向に遮断波長
(λc)の1/2以下の間隔cで配設された二列のバイ
アホール群(バイアホール4の径:φ50〜300μ
m)と、前記一対の主導体層3a,3b間に各バイアホ
ール4と接続した状態で配置された3層の副導体層5と
で形成されている。
【0012】このような誘電体導波管線路2は一対の主
導体層3a,3b間に形成されている2つのバイアホー
ル群が電気信号の伝達方向に遮断波長(λc)の1/2
以下の間隔cで配列しており、電気信号の伝達方向に対
し垂直な方向に電気的な壁を形成していることから、電
磁波を線路の形成方向にのみ良好に伝播させることがで
きる。よって、一対の主導体層3a,3bと二列のバイ
アホール群とで囲まれる領域をa×b(a:一対の主導
体層3a,3b間の距離、b:二列のバイアホール群間
の距離)の擬似的な矩形導波管として作用させることが
でき、マイクロ波やミリ波等の高周波の電気信号を伝達
するのに適した伝送線路として用いることができる。例
えば、誘電体導波管線路2を伝播する電磁波のモードが
TE10モードである場合、一対の主導体層3a,3b
間の距離aを電気信号の中心波長の1/2よりもやや大
きく、また二列のバイアホール群間の距離bをa/2程
度に設定し、一対の主導体層3a,3bを形成した面が
電界と平行なE面になし、またバイアホール4や副導体
層5で囲まれた面が磁界と平行なH面になす。
【0013】ここで、前記バイアホール4の配列ピッチ
cを遮断波長(λc)の1/2以下になすのは、配列ピ
ッチcが遮断波長(λc)の1/2よりも大きくなる
と、誘電体導波管線路2に電磁波を供給する際、隣接す
るバイアホール4間より電磁波が漏れ、電気信号が誘電
体導波管線路2に沿って良好に伝播しなくなるからであ
り、従ってバイアホール4の配列ピッチcは遮断波長
(λc)の1/2以下に設定する必要がある。
【0014】尚、前記副導体層5は、誘電体導波管線路
2の側壁や端面をより細かな格子状になして電磁波の遮
断効果を向上させるためのものである。
【0015】一方、前記誘電体基板1の内部に誘電体導
波管線路2と共に配設されているコプレーナ線路6は、
帯状の線路導体7と、前記副導体層5の一部を利用して
線路導体7の両側に配される接地導体5’とで構成され
ており、電気信号を前記線路導体7を介して伝播させる
ようになっている。
【0016】このようなコプレーナ線路6は、誘電体基
板1を構成する誘電体層1aの一表面上に形成されてお
り、例えば、特性インピーダンスを50Ωとなすよう
に、線路導体7の導体幅を50〜500μmに、また線
路導体7と接地導体との間の距離を50〜500μmに
設定する。
【0017】かかるコプレーナ線路6や前述の誘電体導
波管線路2を構成する一対の主導体層3a,3b、バイ
アホール4、副導体層5及び線路導体7は、誘電体基板
1がアルミナセラミックスからなる場合、タングステン
やモリブデン等の高融点金属材料により形成され、誘電
体基板1を製作する際に誘電体基板1の内部に同時に配
設される。即ち、誘電体基板1となる複数のセラミック
グリーンシートの表面に、タングステン,モリブデン等
の金属粉末を含む導電ペーストを従来周知の厚膜印刷法
等を採用することによって5〜25μmの厚みをもって
所定パターンに印刷・塗布するとともに、セラミックグ
リーンシートに予め開けておいた穴内に導電ペーストを
埋め込み、セラミックグリーンシートと同時に焼成する
ことによって誘電体基板1の内部に誘電体導波管線路2
及びコプレーナ線路6が形成される。
【0018】そして、このような誘電体導波管線路2と
コプレーナ線路6は、図2,図3に示すように、コプレ
ーナ線路6の線路導体7の一端(以下、スタブという)
を誘電体導波管線路2のバイアホール4群と、副導体層
5で形成された側面を介して誘電体導波管線路2の内部
に挿入させることにより結合がなされている。
【0019】かかる結合構造によれば、コプレーナ線路
6を伝播してきた電気信号は、線路導体7のスタブ7’
を励振させ、スタブ7’を中心とした同心円状の磁界を
発生する。そこで前述した誘電体導波管線路2における
二列のバイアホール群間の距離bをa/2に設定する
と、伝播するTE10モードと結合し、誘電体導波管線
路2とコプレーナ線路6との接続が良好に行われること
となる。
【0020】尚、前記スタブ7’の長さdを、伝播させ
る電気信号の中心波長の1/4に設定すると、スタブ
7’が1/4波長のモノポールアンテナと同様の作用を
なすので中心波長の電気信号をより効率的に誘電体導波
管線路2内に放射させることができる。ただし、実際に
は図2の右側の接地導体に対してキャパシタンスが、下
側の接地導体に対してインダクタンスが発生するので、
その分を考慮してスタブ7’の長さdを微調整する必要
があり、このため、スタブ7’の長さdはa/4〜a/
3に設定するのが好ましい。
【0021】また誘電体導波管線路2の端面とスタブ
7’の中心との間の距離eを、伝播させる電気信号の管
内波長の1/4に設定すると、端面で反射されて逆位相
となった電磁波は反射されずに進んだ電磁波と同位相で
加わるので良好な特性が得られるようになる。ただし、
実際には図2の右側の接地導体に対してキャパシタンス
が、下側の接地導体に対してインダクタンスが発生する
ので、その分を考慮して誘電体導波管線路2の端面とス
タブ7’の中心との間の距離eを微調整する必要があ
り、このため、前記距離eはa/4〜a/3に設定する
のが好ましい。
【0022】尚、本発明は上述した形態に限定されるも
のではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種
々の変更、改良等が可能であり、例えば上述の形態では
他の伝送線路としてコプレーナ線路を用いたが、これに
代えて、図4のように、帯状の線路導体8と副導体層
5’の一部とで構成されるストリップ線路6’を用いて
も良い。この場合、ストリップ線路6’を伝播してきた
電磁波はスタブ8’を励振させて同心円状の磁界を発生
するため、これを誘電体導波管線路2を伝播するモード
と結合させることにより伝送線路同士の結合を良好に行
うことができる。また上述の形態では、誘電体導波管線
路2内に挿入されるコプレーナ線路6の線路導体7のス
タブ7’を線路導体7の他の部分と略等しい幅になした
が、これに代えて、図5に示すように、誘電体導波管線
路内に挿入されるコプレーナ線路等の他の伝送線路の線
路導体9のスタブ9’を線路導体9の他の部分よりも幅
広になしておけば、コプレーナ線路と誘電体導波管線路
との特性インピーダンスの不一致を有効に緩和して伝送
特性を向上させることができる。従って誘電体導波管線
路内に挿入される他の伝送線路の線路導体9のスタブ
9’を線路導体9の他の部分よりも幅広になしておくこ
とが好ましい。
【0023】更に上述の形態では、コプレーナ線路6の
線路導体7のスタブ7’をバイアホール群で形成された
誘電体導波管線路2の側面を介して誘電体導波管線路2
の内部に挿入させるようにしたが、これに代えて、図6
に示すように、コプレーナ線路等の他の伝送線路の線路
導体10のスタブ10’を誘電体導波管線路2の端面を
介して誘電体導波管線路2の内部に挿入させるようにし
ても構わない。この場合、TE11モードの電磁波と結
合させることによって電磁界との結合が良好に行われ
る。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、誘電体導波管線路と他
の伝送線路とを簡単かつ良好に接続することができ、一
個の配線基板等の内部で誘電体導波管線路を他の伝送線
路と組み合わせて用いることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘電体導波管線路の結合構造の一形態
を示す概略斜視図である。
【図2】他の伝送線路が設けられている誘電体層の一主
面を示す平面図である。
【図3】図2のX−X線断面図である。
【図4】本発明の誘電体導波管線路の結合構造の他の形
態を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の誘電体導波管線路の結合構造の他の形
態を示す平面図である。
【図6】本発明の誘電体導波管線路の結合構造の他の形
態を示す平面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・誘電体基板 2・・・・・・誘電体導波管線路 3a,3b ・・・・・一対の主導体層 4・・・・・・・バイアホール 5,5'・・・・・・副導体層 6,6'・・・・・他の伝送線路 7,8,9,10・・・・線路導体 7',8',9',10'・・線路導体の一端
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01P 5/107 H01P 3/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】誘電体基板の少なくとも一部を挟んで対向
    する一対の主導体層と、該一対の主導体層間を電気的に
    接続し、電気信号の伝達方向に遮断波長の1/2以下の
    間隔で配設された二列のバイアホール群と、前記主導体
    層間に各バイアホールと接続した状態で配置された副導
    体層とを具備し、前記主導体層バイアホール群及び副
    導体層からなる格子状の側壁や端面で囲まれる導波管領
    域によって電気信号を伝達する誘電体導波管線路と、他
    の伝送線路とを結合させるための構造であって、前記誘
    電体導波管線路のバイアホール群と、前記副導体層と
    形成された側面もしくは端面を介して、該誘電体導波管
    線路の内部に、線路導体と、前記副導体層の一部を利用
    して構成されるコプレーナ線路、またはストリップ線路
    における前記線路導体の一端を挿入してなることを特徴
    とする積層型導波管線路の結合構造。
  2. 【請求項2】前記誘電体導波管線路内へ側面から挿入さ
    れた前記線路導体のスタブの長さ、および前記誘電体導
    波管線路の端面からスタブの中心との距離が主導体層間
    の距離aに対して、a/4〜a/3であることを特徴と
    する請求項1記載の積層型導波管線路の結合構造。
  3. 【請求項3】前記誘電体基板が、セラミックスからな
    り、前記主導体層、バイアホール、副導体層および線路
    導体が、導電ペーストを印刷塗布し、前記誘電体基板と
    同時焼成して形成されたものであることを特徴とする請
    求項1または請求項2記載の積層型導波管線路の結合構
    造。
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