JP3383186B2 - 鋼材加工品の浸漬めっき方法 - Google Patents

鋼材加工品の浸漬めっき方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築および土木用
途に用いられる鉄塔、ガードレール(本体、支柱)等の
鋼材加工品の浸漬めっき方法に関し、特に鋼材加工品の
表面に、耐食性、表面品位に優れためっき層を形成する
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に鋼材加工品は、その寿命延長を目
的にして亜鉛めっきを行った後、使用され、その亜鉛め
っきは、鋼材加工品を脱脂、水洗、酸洗、水洗、フラッ
クス塗布または浸漬処理、乾燥後、Alを0.1〜0.
2%含む亜鉛浴に浸漬して行われる。亜鉛は、安価であ
り、大気中および水中で生成する化合物が安定で適度な
腐食速度が得られ、鋼材加工品の防蝕に適した金属であ
る。しかしながら、亜鉛の腐食速度は環境により異な
り、特に海岸等の塩素イオンを含む環境等では、腐食速
度が急激に増加するという問題がある。上記環境でも耐
食性を維持するためにはMgをZnめっき層に添加し、
腐食生成物の安定化を図ることが有効であることは、特
開昭56−96062号公報の第3図に示されている。
【0003】なお、特開昭56−96062号公報は、
ゼンジマー方式の溶融めっきラインによる溶融めっき鋼
帯の製造方法に関するもので、Mg0.1〜2.5%、
Al0.1〜3.0%を含む亜鉛浴を通過した鋼帯の表
面に付着しためっき金属が未凝固状態にある範囲をシー
ルボックスで囲み酸素濃度5000ppm以下の雰囲気
とする高耐食性の溶融めっき鋼帯を得る、というもので
ある。そしてMg添加の目的は、めっき層の腐食生成物
を安定化せしめ、耐食性を向上させるものであり、Al
添加の目的は、Fe−Zn合金層の成長抑制と浴および
めっき層の酸化防止にあることが開示される。
【0004】また、例えば、特公昭60−43430号
公報には、脱脂、水洗、腐食防止剤を含む濃塩酸による
酸洗、水洗、腐食防止剤を含まない濃塩酸による酸洗、
水洗、フラックス塗布、乾燥後の0.01%以上の珪素
を含有する鋼にAl0.01〜0.5%、Mg0.00
1〜0.1%、Sn0.03〜2.0%含む亜鉛浴に浸
漬することにより、0.01%以上の珪素を含有する鋼
の表面に優れた外観、密着性を有するめっき層を形成す
ることが開示されている。なお、上記亜鉛浴中に共存す
るMg、Snの目的は不めっき防止にあることも開示さ
れる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、耐食性
向上の目的でMgを添加した亜鉛浴に、脱脂、水洗、酸
洗、水洗、フラックス塗布、乾燥後の常温の鋼材加工品
を浸漬し、めっきを施した(以下、従来法と呼ぶ)とこ
ろ、Mg0.1%以上を亜鉛浴に添加すると、不めっき
部分が多数発生すること、また活性金属であるMgの触
媒作用により、浸漬時の鋼材加工製品の溶出が激しくな
り、Zn−Fe系のドロスの発生量が膨大になり、ドロ
ス除去を高頻度で実施しなければ、ドロス付着により表
面粗さが荒くなり、めっきされた部分についても外観品
位上においても問題のあることがわかった。本発明は、
上記問題点を解消して、鋼材加工品の全面に、厳しい腐
食環境においても十分な耐食性を有し、表面が平滑で、
且つ耐黒変性に優れ外観品位に優れた商品価値の高いめ
っき層を形成することができる鋼材加工品の浸漬めっき
方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の鋼材
加工品の浸漬めっき方法は、鋼材加工品の表面にフラッ
クスを塗布、乾燥し、Zn及び不可避的不純物からなる
溶融めっき浴(第1浴)に浸漬して鋼材加工品の表面に
10g/m2 以上プレZnめっき後、Mg0.1〜15
%を含有し、残部はZn及び不可避的不純物からなる溶
融めっき浴(第2浴)に浸漬することにより、上記目的
を達成するものである。特にここで重要なのは後述する
がプレZnめっきの付着量である。また、上記第1めっ
き浴にAl0.1〜0.5%含有させることにより、上
記目的を達成した上、良好なめっき密着性を付与するも
のである。また、上記プレZnめっきは、必要量のZn
が存在すればよく、浸漬めっきに代えて電解めっきを採
用することができる。また、表面に10g/m2 以上の
Znめっき層を有する鋼材を加工してなる鋼材加工品を
上記第2浴に浸漬してもよい。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明につい
て詳細に説明する。図1は、熱延Alキルド鋼を円柱加
工した鋼材を、従来法であるフラックス処理法(図1
a)を用いた場合と本発明のプレめっき法(図1b、
c)を用いた製造工程の差異を示したものである。図1
のように従来法では、鋼材表面の酸化防止のためにフラ
ックスを用いて処理しており、直接Zn浴に浸漬してい
る。発明者らは、鋼材表面の酸化防止且つ鋼材表面の反
応を抑制するために第2浴浸漬前にZnめっきを行った
(図1b、c)。
【0008】表1には、熱延Alキルド鋼を円柱加工し
た鋼材に従来のようにフラックス(ZnCl2 /NH4
Cl=300/100g/l)塗布し、100℃で乾燥
後、プレZnめっき(浴温度450℃)で50g/m
2 行い、水洗、乾燥後、常温でMg=1%含有したZn
めっき浴(浴温450℃)に1分間浸漬して得られた鋼
材と、従来のようにフラックス(ZnCl2 /NH4
Cl=300/100g/l)塗布し、100℃で乾燥
後、直接、常温でMg=1%含有したZnめっき浴(浴
温450℃)に1分間浸漬して得られた鋼材と、従来
のようにフラックス(ZnCl2 /NH4 Cl=300
/100g/l)塗布し、100℃で乾燥後、常温でM
gを含まないZnめっき浴(浴温450℃)に1分間浸
漬して得られた鋼材の性能の比較結果を示す。
【0009】
【表1】
【0010】尚、ドロスの発生量は、Mgを含まない亜
鉛浴で通常法を用いた場合の発生量を基準として相対比
較した。また、外観の評価は、不めっきの有無、表面粗
さを考慮した評点を用いて評価した。耐食性試験は、塩
水噴霧試験72時間後の腐食減量測定を行い、0.1g
/m2 ・時間以下を合格とした。外観は、5点法で評価
し、3点以上を合格とした。尚、評価基準は次の通りで
ある。表1の如く、鋼材に第1浴でZnめっきを行った
ものは、ドロス発生量も少なく、作業性、外観について
も問題のないものとなる。
【0011】
【表2】
【0012】図2は、上記の方法において、Mg添加
量を0〜20%の範囲で変更して得た鋼材の腐食減量を
調査して、Mg添加量と耐食性(腐食減量)の関係を示
したものである。図2に示したように、Mg濃度が0.
1%未満では、十分な耐食性が得られず、15%超の添
加でも十分な耐食性が得られない。また、めっき密着性
を必要な特性とする場合には、第1浴にAlの添加0.
1〜0.5%とし、特に0.2〜0.5%とするのが望
ましい。これは図3に示すように0.1%未満では、十
分なめっき密着性が得られず、0.5%超では、黒変現
象が起こり、外観上、製品価値が劣化するためである。
【0013】このように本発明では、特開昭56−96
062号公報記載のゼンジマー方式の溶融めっきライン
による製造方法よりも、広いMg濃度で浸漬めっき可能
であることが分かる。これはゼンジマー式の製造方法と
は、浴浸漬時の温度、時間が異なるためであると推測さ
れる。つまり、浸漬めっき法においては、鋼材を通常、
常温で浸漬するものであること、そしてZnめっき層が
存在することから、FeとMg、Feとの反応性が大幅
に異なるものと思われる。
【0014】プレZnめっきはその付着量が重要であ
り、本発明における付着量は、10g/m2 以上であ
る。10g/m2 未満では、プレZnが第2浴中で瞬時
に溶出し、部分的にFeが露出した状態でめっき浴に浸
漬するため、不めっきになりやすい。更に検討を重ねた
結果、プレめっき方法については、特に限定するもので
はなく、電気めっき法等を用いても必要量のZnが存在
すれば、全く問題なくできることが判明した。つまり、
脱脂工程においてFe表面を清浄した後、硫酸亜鉛浴
で、鋼板を陰極として、1〜100A/dm2 で電解す
ることによりめっきすることができる。
【0015】同様な考え方に基づき、表面に10g/m
2 以上の不可避的不純物を含むZnめっき層を有する鋼
材を加工してなる鋼材加工品をMg0.1〜15%を含
有し、残部はZn及び不可避的不純物からなる溶融めっ
き浴に浸漬することにより同様に優れた性能を有するこ
とが判明した。また、第2めっき浴にSn,Sbを3%
以下で添加するとスパングル模様の光沢のあるめっき外
観が得られた。
【0016】本発明のプレめっき法において、ドロスの
発生が抑えられ、且つ外観品位が優れるメカニズムは以
下のように考えられる。Mgは、反応性の高い元素であ
り、Feの溶出を促進し、ドロスの多量な発生を招くも
のと考えられる。そこでプレZnめっきを行うことによ
り、Feが直接反応しないことが可能になったことが、
本発明のポイントである。すなわちプレZnめっきの付
着量が重要であり、本発明範囲では10g/m2 以上の
プレZnめっきが必要である。
【0017】
【実施例】
(実施例1)表3に本発明の実施例及び比較例、従来例
を示す。熱延Alキルド鋼を円柱加工した鋼材を用いて
浸漬めっきした場合の結果である。尚、実施例中特に述
べぬ限り、第1浴浸漬前の前処理にはフラックス(Zn
Cl2 /NH4 Cl=300/100g/l)塗布し、
100℃で乾燥後、所定の第2浴に浸漬している。ま
た、浴浸漬時の鋼材温度は常温、めっき浴浸漬時間は、
1分である。尚、黒変性の試験は、室内放置を2週間行
い、目視により黒変の発生を観察し、黒変しているもの
は、不合格とした。また、めっき密着性の評価は、以下
の基準に基づく評点法で行い、3点以上を合格とした。
その他の評価(ドロス発生量、外観、耐食性)は、前述
の評価基準に基づいて行った。
【0018】
【表3】
【0019】No1〜No8は、第1浴として不可避的
不純物を含む亜鉛浴(450℃)に10秒浸漬し、ガス
ワイピングにより、表中の付着量に調整した後、水洗、
乾燥後、Mgを含む第2浴(450℃)に1分間浸漬し
た。得られた製品性能は、めっき密着性以外は、本発明
範囲内であれば良好であるが、例えばプレZnめっき量
が少ない場合(No1)には、外観及びドロスの発生量
が劣る。また、第2浴でMg濃度が低い場合(No
4)、逆に高すぎる場合(No8)には、耐食性が劣
る。尚、この場合のめっき密着性は、最終加工品を想定
しているため、めっき密着性は、具備すべき必要特性で
はない。
【0020】No9〜11は、第1浴にAlを含む亜鉛
浴に浸漬した後に、Mgを含む第2亜鉛浴に浸漬したも
のである。Alは、めっき密着性確保のために用いてお
り、本処理後、軽加工を受ける場合には、必要不可欠の
特性となる。つまり、Al濃度が、0.1%未満(No
9)で劣る。また、0.5%超(No11)で黒変を生
じ、商品価値を損ねる。No12は、硫酸亜鉛よりなる
浴で1A/m2 の電流を流し、電気亜鉛めっきを20g
/m2 プレめっき後、Mgを含む浴に浸漬したものであ
る。溶融亜鉛めっきを行った場合と同様に製品性能が良
好となる。また、電気亜鉛めっきそのものが密着性に優
れるためAlを含む含まないにかかわらず良好なめっき
密着性をも得られる。また、No14は、従来法であ
り、ドロスの発生量は、小であるが、耐食性が十分でな
い。また、Mgを含んだ浴で従来のフラックスを用いた
もの(No13)は、製品外観が悪く、ドロスの発生量
も多く、作業上の負荷も大きい。
【0021】
【表4】
【0022】(実施例2)表5には市販の各種Znめっ
き鋼板を用いて、円柱加工した後、1%のMgを含み残
部がZnからなる浴(450℃)に鋼材温度常温で浸漬
処理した結果を示す。製造フローは図1の(d)を参照
されたい。No1は、素材として電気亜鉛めっき鋼板
(Alキルド鋼、1.6mm、付着量20g/m2 )を
内径30mmの円筒加工した後、1%のMgを含み残部
がZnからなる浴(450℃)に鋼材温度常温で浸漬処
理した場合である。いずれの性能も良好である。No2
は、素材として溶融亜鉛めっき鋼板(Alキルド鋼、
1.6mm、付着量60g/m2 )を内径30mmの円
筒加工した後、1%のMgを含み残部がZnからなる浴
(450℃)に鋼材温度常温で浸漬処理した場合であ
る。いずれの性能も良好である。尚、分析の結果、素材
の溶融亜鉛めっき鋼板は、0.2%のAlを含んでい
た。
【0023】
【表5】
【0024】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、鋼材加
工品の全面に、厳しい環境化においても十分な耐食性を
有し、且つ表面が平滑な外観品位に優れた商品価値の高
いめっき層を形成することができる鋼材加工品の浸漬め
っき方法を提供することができ、その効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来法と本発明法の製造プロセスの差異を簡単
に図示したものである。
【図2】Mg添加量と耐食性の関係を示したものであ
る。
【図3】Al添加量とめっき密着性の関係を示したもの
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−207421(JP,A) 特開 昭56−152956(JP,A) 特開 昭53−18434(JP,A) 特開 昭61−295363(JP,A) 特開 平2−93053(JP,A) 特開 平4−2785(JP,A) 特開 平7−90617(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼材加工品の表面にフラックスを塗布、
    乾燥し、Zn及び不可避的不純物からなる溶融めっき浴
    (第1浴)に浸漬して鋼材加工品の表面に10g/m2
    以上プレZnめっき後、Mg0.1〜15%を含有し、
    残部はZn及び不可避的不純物からなる溶融めっき浴
    (第2浴)に浸漬することを特徴とする鋼材加工品の浸
    漬めっき方法。
  2. 【請求項2】 第1浴が、Al0.1〜0.5%含有す
    ることを特徴とする請求項1に記載の鋼材加工品の浸漬
    めっき方法。
  3. 【請求項3】 プレZnめっきを電解めっきで行うこと
    を特徴とする請求項1に記載の鋼材加工品の浸漬めっき
    方法。
  4. 【請求項4】 表面に10g/m2 以上のZnめっき層
    を有する鋼材を加工してなる鋼材加工品を請求項1に記
    載のMg0.1〜15%を含有し、残部はZn及び不可
    避的不純物からなる溶融めっき浴に浸漬することを特徴
    とする鋼材加工品の浸漬めっき方法。
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