JP3377333B2 - 四輪駆動車のアンチスキッド制御装置 - Google Patents

四輪駆動車のアンチスキッド制御装置

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JP3377333B2
JP3377333B2 JP14573395A JP14573395A JP3377333B2 JP 3377333 B2 JP3377333 B2 JP 3377333B2 JP 14573395 A JP14573395 A JP 14573395A JP 14573395 A JP14573395 A JP 14573395A JP 3377333 B2 JP3377333 B2 JP 3377333B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両の全ての車輪が駆
動輪の四輪駆動車において、各駆動輪に対する制動力を
制御し各駆動輪のロックを防止するアンチスキッド制御
装置に関し、特に悪路走行時にも適切に制動力制御を行
なう四輪駆動車のアンチスキッド制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】前後輪の全てが駆動輪の四輪駆動(4W
D)車としては、パートタイム、フルタイム等種々の方
式のものが知られている。フルタイム方式においては、
一般的に車両前方の駆動輪と車両後方の駆動輪も差動装
置(所謂センタディファレンシャル)を介して連結され
ているが、二輪駆動(2WD)と四輪駆動を切り換える
パートタイム方式においては、センタディファレンシャ
ルを有さない所謂直結式で、四輪駆動時には前後輪が直
結される。
【0003】上記パートタイム方式の四輪駆動車に関
し、特開平4−50067号公報において、3チャンネ
ル方式のアンチスキッドブレーキ制御を適用した場合、
四輪駆動での走行時にはアンチスキッドブレーキ制御を
行なわない旨記載されている。この理由として、同公報
には、前輪側と後輪側とが駆動系を介して直結されてい
るから、前輪側及び後輪側でのブレーキ圧が独立して制
御されると、駆動系での捩じりトルクが増大し、このた
め、前輪及び後輪の車輪速が振動してしまうことになる
と記載されている。而して、同公報においては、四輪駆
動走行での制御時、両後輪でのブレーキ圧の減圧と同時
に、よりロック傾向にある後輪と同じ側の前輪のブレー
キ圧をも後輪側と同様にして減圧し、前輪側と後輪側と
の間に於いて、ブレーキ圧を実質的に同相的にして制御
する方法が提案されている。
【0004】一方、特開昭60−22548号公報にお
いては、路面凹凸レベルを判定し、路面の凹凸状態に応
じて減圧出力感度を落とし、ブレーキ油圧の減圧しすぎ
を防ぐと共に、増圧出力感度を高めることにより、悪路
での過制御によるブレーキ制動力の低下を防ぐように構
成したアンチスキッド制御装置が提案され、悪路判定に
ついて詳述されている。また、特開昭60−25555
8号公報においても、車両の走行路面状態を検知し、悪
路と判定したときには制動油圧の減少度合を減少させる
ようにしたアンチロック制動装置が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記特開昭6
0−22548号公報あるいは特開昭60−25555
8号公報に記載の装置を、前述の直結式の四輪駆動車に
適用した場合においては、駆動系に捩りトルクが蓄積さ
れ易くなり、前述のように前輪及び後輪の車輪速が振動
し、ひいては車体振動を惹起するおそれがある。また、
前述の特開平4−50067号公報に記載の方法を適用
するとしても、悪路走行時には、ロック傾向側の後輪と
同じ側の前輪のブレーキ圧も減圧されるので、前輪側の
制動力が小さくなり、制動距離が伸長する傾向となる。
【0006】そこで、本発明は、四輪駆動車のアンチス
キッド制御装置において、悪路走行時でも、制動距離の
伸長を極力抑えつつ、車体振動を惹起することなく適切
に制動力制御を行ない得るようにすることを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明の四輪駆動車のアンチスキッド制御装置は、
図1に構成の概要を示したように、車両の前方の車輪F
R,FL、及び後方の車輪RR,RLの各々に装着し制
動力を付与するホイールシリンダWfr,Wfl,Wr
r,Wrlと、これらホイールシリンダWfr等の各々
にブレーキ液圧を供給する液圧発生装置PGと、この液
圧発生装置PGとホイールシリンダWfr等との間に介
装しホイールシリンダWfr等のブレーキ液圧を制御す
る液圧制御装置FVと、各車輪の車輪速度を検出する車
輪速度検出手段Sfr,Sfl,Srr,Srlと、こ
れら車輪速度検出手段Sfr等の検出出力に応じて液圧
制御装置FVを駆動しホイールシリンダWfr等に供給
するブレーキ液圧を制御して車輪FR等の各々に対する
制動力を制御する制動力制御手段BCを備えている。そ
して、車両が走行する路面状態を判定する走行路面状態
判定手段RCと、この走行路面状態判定手段RCの判定
結果に基づき制動力制御手段BCに対する制御感度を設
定する制御感度設定手段SEとを備え、図1に破線で示
すように、車輪速度検出手段Sfr等の検出出力に基づ
き車両前方の車輪FR,FLの車輪速度と車両後方の車
輪RR,RLの車輪速度の差を演算する前後輪車輪速度
差演算手段DSを備えると共に、制動力制御手段BCに
よる制動力制御時に前後輪車輪速度差演算手段DSの演
算結果を所定のしきい値と比較して車体の振動状態を判
定する振動判定手段VBと、この振動判定手段VBにて
車体振動の可能性有と判定したときには、制御感度設定
手段SEが設定する制御感度を、車体振動の発生限界内
の所定の感度に変更する制御感度補正手段CEを備える
こととしたものである。
【0008】
【0009】また、上記の前後輪車輪速度差演算手段D
Sに代えて、請求項に記載し図1に破線で示すよう
に、車輪速度検出手段Sfr等の検出出力に基づき各車
輪の加速度を演算する車輪加速度演算手段Afr,Af
l,Arr,Arlと、これらの車輪加速度演算手段が
演算した車両前方の車輪FR,FLの加速度と車両後方
の車輪RR,RLの加速度の差を演算する前後輪加速度
差演算手段DFを備えたものとし、この前後輪加速度差
演算手段DFの演算結果を所定のしきい値と比較して
体の振動状態を判定するように、振動判定手段VBを
成することとしてもよい。
【0010】更に請求項に記載のように、走行路面状
態判定手段RCを、車輪加速度演算手段Afl,Af
r,Arl,Arrの演算結果に基づき路面状態を判定
するように構成すると共に、振動判定手段VBを、前後
輪加速度差演算手段DFの演算結果が第1のしきい値を
下回った後、所定時間内に第2のしきい値を超えたとき
に車体振動と判定する誤判定防止手段を具備したものと
するとよい。
【0011】
【作用】上記の構成になる四輪駆動車のアンチスキッド
制御装置においては、液圧発生装置PGを駆動すると液
圧制御装置FVを介してホイールシリンダWfr,Wf
l,Wrr,Wrlの各々にブレーキ液圧が供給され、
車両前方の車輪FR,FL及び後方の車輪RR,RLに
対し制動力が付与される。一方、車輪速度検出手段Sf
r,Sfl,Srr,Srlによって車輪FR,FL,
RR,RLの車輪速度が検出され、これらの車輪速度に
応じて、制動力制御手段BCによって液圧制御装置FV
が駆動され、ホイールシリンダWfr等に供給されるブ
レーキ液圧が制御され車輪FR等に対する制動力が制御
される。また、走行路面状態判定手段RCにて車両が走
行する路面状態が判定され、その判定結果に基づき制御
感度設定手段SEにて、制動力制御手段BCに対する制
御感度が設定される。そして、車輪速度検出手段Sf
r,Sflにて検出された車両前方の車輪FR,FLの
車輪速度と車輪速度検出手段Srr,Srlにて検出さ
れた車両後方の車輪RR,RLの車輪速度との差が前後
輪車輪速度差演算手段DSで演算され、この演算結果
が、制動力制御手段BCによる制動力制御時に振動判定
手段VBにて所定のしきい値と比較され、車体の振動状
態が判定される。振動判定手段VBにおいて車体振動の
可能性有と判定されたときには、制御感度補正手段CE
によって、制御感度設定手段SEで設定される制御感度
が、車体振動の発生限界内の所定の感度に変更される。
【0012】
【0013】請求項に係るアンチスキッド制御装置に
おいては、車輪加速度演算手段Afr,Aflにて演算
された車両前方の車輪FR,FLの加速度DVwFR,D
VwFLと車輪加速度演算手段Arr,Arlにて演算さ
れた車両後方の車輪RR,RLの加速度DVwRR,DV
wRLとの差[(DVwFR+DVwFL)−(DVwRR+D
VwRL)]が、前後輪加速度差演算手段DFによって演
算され、この演算結果が振動判定手段VBにて所定のし
きい値と比較され、車体の振動状態が判定される。
【0014】請求項に係るアンチスキッド制御装置に
おいては、走行路面状態判定手段RCにて、車輪加速度
演算手段Afl,Afr,Arl,Arrの演算結果に
基づき路面状態が判定される。例えば、車輪加速度が所
定時間内に、所定回数以上、所定の基準値を超えた場合
に悪路と判定される。また、振動判定手段VBにおいて
は、誤判定防止手段により、前後輪加速度差演算手段D
Fの演算結果が第1のしきい値を下回った後、所定時間
内に第2のしきい値を超えたときに初めて車体振動と判
定される。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。図2は本発明の一実施例のアンチスキッド制御装
置を示すもので、マスタシリンダ2a及びブースタ2b
から成り、ブレーキペダル3によって駆動される液圧発
生装置2と、車輪FR,FL,RR,RLに配設された
ホイールシリンダ51乃至54の各々とが接続される液
圧路に、ポンプ21,22、リザーバ23,24、ダン
パ25,26及び電磁弁31乃至36が介装されてい
る。尚、車輪FRは運転席からみて前方右側の車輪を示
し、以下車輪FLは前方左側、車輪RRは後方右側、車
輪RLは後方左側の車輪を示しており、本実施例では全
輪が駆動輪となる直結式の四輪駆動車が構成されてい
る。ブレーキシステムについては、図2に明らかなよう
に前後配管が構成され、後輪側は共通の液圧系とされて
いるが、前輪側と同様、独立の液圧系としてもよい。ま
た、ダイアゴナル配管としてもよい。
【0016】液圧発生装置2とホイールシリンダ51乃
至54との間には本発明にいう液圧制御装置たるアクチ
ュエータ30が介装されている。このアクチュエータ3
0は、マスタシリンダ2aの一方の出力ポートとホイー
ルシリンダ51,52の各々を接続する液圧路に夫々電
磁弁31,32及び電磁弁33,34が介装され、これ
らとマスタシリンダ2aとの間にポンプ21が介装され
て成る。これに対し、マスタシリンダ2aの他方の出力
ポートとホイールシリンダ53,54の両者に連通する
液圧路に電磁弁35,36が介装され、これらとマスタ
シリンダ2aとの間にポンプ22が介装されている。ポ
ンプ21,22は電動モータ20によって駆動され、こ
れらの液圧路に所定の圧力に昇圧されたブレーキ液が供
給される。従って、これらの液圧路が常開の電磁弁3
1,33,35に対するブレーキ液圧の供給側となって
いる。
【0017】常閉の電磁弁32,34の排出側液圧路は
リザーバ23を介してポンプ21に接続され、同じく常
閉の電磁弁36の排出側液圧路はリザーバ24を介して
ポンプ22に接続されている。リザーバ23,24は夫
々ピストンとスプリングを備えており、電磁弁32,3
4,36から排出側液圧路を介して還流されるブレーキ
液を収容し、ポンプ21,22作動時にこれらに対しブ
レーキ液を供給するものである。
【0018】電磁弁31乃至36は2ポート2位置電磁
切替弁であり、夫々ソレノイドコイル非通電時には図2
に示す第1位置にあって、各ホイールシリンダ51乃至
54は液圧発生装置2及びポンプ21あるいは22と連
通している。ソレノイドコイル通電時には第2位置とな
り、各ホイールシリンダ51乃至54は液圧発生装置2
及びポンプ21,22とは遮断され、リザーバ23ある
いは24と連通する。尚、図2中のチェックバルブはホ
イールシリンダ51乃至54及びリザーバ23,24側
から液圧発生装置2側への還流を許容し、逆方向の流れ
を遮断するものである。
【0019】而して、これらの電磁弁31乃至36のソ
レノイドコイルに対する通電、非通電を制御することに
よりホイールシリンダ51乃至54内のブレーキ液圧を
増圧、減圧又は保持することができる。即ち、電磁弁3
1乃至36のソレノイドコイル非通電時にはホイールシ
リンダ51乃至54に液圧発生装置2及びポンプ21あ
るいは22からブレーキ液圧が供給されて増圧され、通
電時にはリザーバ23あるいは24側に連通し減圧され
る。また、電磁弁31,33,35のソレノイドコイル
に通電しその余の電磁弁のソレノイドコイルを非通電と
すれば、ホイールシリンダ51乃至54内のブレーキ液
圧が保持される。従って、通電、非通電の時間間隔を調
整することにより所謂パルス増圧(ステップ増圧)又は
パルス減圧を行ない、緩やかに増圧又は減圧するように
制御することができる。
【0020】上記電磁弁31乃至36は電子制御装置1
0に接続され、各々のソレノイドコイルに対する通電、
非通電が制御される。電動モータ20も電子制御装置1
0に接続され、これにより駆動制御される。また、車輪
FR,FL,RR,RLには夫々本発明にいう車輪速度
検出手段たる車輪速度センサ41乃至44が配設され、
これらが電子制御装置10に接続されており、各車輪の
回転速度、即ち車輪速度信号が電子制御装置10に入力
されるように構成されている。車輪速度センサ41乃至
44としては、例えば各車輪の回転に伴って回転する歯
付ロータと、このロータの歯部に対向して設けられたピ
ックアップから成る周知の電磁誘導方式のセンサであ
り、各車輪の回転速度に比例した周波数の電圧を出力す
るものが用いられるが、他の方式のものでもよい。更
に、ブレーキペダル3が踏み込まれたときオンとなるブ
レーキスイッチ45が電子制御装置10に接続されてい
る。
【0021】電子制御装置10は、図3に示すように、
バスを介して相互に接続されたCPU14、ROM1
5、RAM16、タイマ17、入力ポート12及び出力
ポート13から成るマイクロコンピュータ11を備えて
いる。上記車輪速度センサ41乃至44及びブレーキス
イッチ45の出力信号は増幅回路18a乃至18eを介
して夫々入力ポート12からCPU14に入力されるよ
うに構成されている。また、出力ポート13からは駆動
回路19aを介して電動モータ20に制御信号が出力さ
れると共に、駆動回路19b乃至19gを介して夫々電
磁弁31乃至36に制御信号が出力されるように構成さ
れている。マイクロコンピュータ11においては、RO
M15は図4及び図5に示した各フローチャートに対応
したプログラムを記憶し、CPU14は図示しないイグ
ニッションスイッチが閉成されている間当該プログラム
を実行し、RAM16は当該プログラムの実行に必要な
変数データを一時的に記憶する。
【0022】上記のように構成された本実施例において
は、イグニッションスイッチ(図示せず)が閉成される
と図4及び図5のフローチャートに対応したプログラム
の実行が開始する。プログラムの実行が開始すると、ま
ず図4のステップ101にてマイクロコンピュータ11
が初期化され、各種の演算値、車速を表す推定車体速度
Vso(これについては後段にて詳述する)、各車輪の
車輪速度Vw及び車輪加速度DVw等がクリアされる。
そして、ステップ102において車輪速度センサ41乃
至44の出力信号から各車輪の車輪速度VwFR,VwF
L, VwRR,VwRL(代表してVwで表す)が演算さ
れ、ステップ103に進みこれらの値から車輪加速度D
VwFR, DVwFL,DVwRR,DVwRL( 代表してDV
wで表す) が演算される。次に、ステップ104にて、
図5を参照して後述するように制御感度が設定される。
【0023】そして、ステップ105に進み各車輪につ
いてアンチスキッド制御中(図4においてはABS制御
中として表す)か否かが判定され、制御中であればステ
ップ107に進み、そうでなければステップ106にて
各車輪に関しアンチスキッド制御開始条件が成立したか
否かが判定され、開始と判定されればステップ107に
進む。アンチスキッド制御開始条件を充足していなけれ
ばそのままステップ113にジャンプする。ステップ1
07においては、上記車輪速度Vw、車輪加速度DVw
及び後述の推定車体速度Vsoに基づいて判定される制
動状況、及び路面の摩擦係数(μ)に応じて、減圧、パ
ルス増圧及び保持の何れかの制御モードに設定される。
尚、路面の摩擦係数は、例えばスリップ率に応じて高
μ、中μ及び低μの何れかに特定される。
【0024】そして、ステップ108にて制御モードが
減圧モードか否かが判定され、減圧モードであればステ
ップ109に進み減圧信号が出力され、そうでなければ
ステップ110に進みパルス増圧モードか否かが判定さ
れる。パルス増圧モードと判定されるとステップ111
に進み、増圧と保持を交互に繰り返すパルス増圧信号が
出力され、ホイールシリンダ51乃至54のうちの制御
対象が徐々に増圧される。パルス増圧モードでなければ
ステップ112に進み保持信号が出力され、ホイールシ
リンダ液圧が保持される。上記制御モードの設定及び増
減圧信号の出力は各車輪のホイールシリンダについても
同様に行なわれ、ステップ113にて四つの車輪FR,
FL,RR,RLの全てに関し処理が行なわれたか否か
が判定され、四輪全てについて処理が完了するまで上記
ルーチンが繰り返される。尚、本実施例においては、車
両後方の車輪RR,RLは電磁弁35,36によって同
時に液圧制御が行なわれる。これが完了するとステップ
114にて推定車体速度Vsoが演算されステップ10
2に戻る。
【0025】図5のフローチャートは前述の制御感度設
定の処理を示すもので、その制御状況の一例を図6に示
す。尚、図6において、細い実線のVAは実車体速度を
示し、太い実線は車両前方の車輪速度Vwf(VwFR又
はVwFL)、破線は車両後方の車輪速度Vwr(VwRR
又はVwRL)を示し、二点鎖線のVsnは基準車体速度
を示している。先ず、ステップ201において、車両の
走行路面状態が判定される。例えば、各車輪速度あるい
は車輪加速度の変動に基づき、車両が悪路を走行中か否
かが判定される。この悪路判定については前掲の特開昭
60−22548号等に開示されているが、例えば車輪
加速度が所定時間内に、所定回数以上、所定の基準値を
超えたときに悪路と判定される。
【0026】而して、ステップ201において悪路と判
定された場合には、ステップ202に進み制御感度が深
く設定され、良路であればステップ203にて通常の制
御感度が設定される。具体的には、ステップ202にお
いて減圧出力感度及び増圧出力感度が深く設定される。
即ち、図6の実車体速度VAとの差(実際には推定車体
速度Vsoとの差)が大となるように基準車体速度Vs
nが設定され(図6のb点より前、及びe点より後)、
ステップ202のように減圧側と増圧側で夫々基準車体
速度Vsl,Vshが設定される場合には、夫々推定車
体速度Vsoとの差が通常の場合より大となるように設
定される。また、ステップ203においては減圧出力感
度及び増圧出力感度が、車体振動の発生限界内の所定の
感度、即ち蓄積される捩れトルクによって車体振動が生
じない程度の大きさ(このときの感度を「通常の感度」
という)に設定される。
【0027】そして、ステップ204にてアンチスキッ
ド制御中か否かが判定され、制御中でなければそのまま
図4のメインルーチンに戻るが、制御中と判定されたと
きには、ステップ205以降に進む。ステップ205で
は、先ず前後輪の車輪加速度の差ΔDVs(以下、前後
輪加速度差ΔDVsという)が第1のしきい値G1(負
の値で、減速度を表す)と比較される。ここで、前後輪
加速度差ΔDVsは、前輪側の車輪加速度DVwFR,D
VwFLの和から後輪側の車輪加速度DVwRR,DVwRL
の和が減ぜられ、[(DVwFR+DVwFL)−(DVw
RR+DVwRL)]として求められる。ステップ205に
おいて第1のしきい値G1以上と判定されると、そのま
まステップ207に進み、第1のしきい値G1未満と判
定されると、誤判定防止カウンタGCが所定時間T1に
相当するカウント値(図6中にT1で表す)に設定さ
れ、ステップ207に進む。
【0028】ステップ207においては、誤判定防止カ
ウンタGCの値が0か否かが判定され、0と判定されれ
ばステップ212に進むが、0でなければ、即ちカウン
ト中であればステップ208に進み、誤判定防止カウン
タGCがディクリメント(−1)された後、ステップ2
09に進む。ステップ209では前後輪加速度差ΔDV
sが第2のしきい値G2(正の値で、加速度を表す)と
比較され、この第2のしきい値G2以下と判定されると
そのままステップ212に進むが、第2のしきい値G2
を超えたと判定されたときには、ステップ210にて振
動判定カウンタBCが所定時間T2に相当するカウント
値(図6中では縦軸にカウント値、横軸に時間を夫々T
2で表す)に設定され、更にステップ211にて誤判定
防止カウンタGCがクリア(0)された後、ステップ2
12に進む。
【0029】ステップ212では振動判定カウンタBC
が0か否かが判定され、0と判定されればそのまま図4
のメインルーチンに戻るが、そうでなければステップ2
13にて振動判定カウンタBCがディクリメント(−
1)された後、ステップ214に進み通常の制御感度
(車体振動の発生限界内の減圧出力感度及び増圧出力感
度)に設定される。このような処理が繰り返される結
果、図6のb点からe点まで通常の制御感度に設定さ
れ、e点に至るとステップ212にて振動判定カウンタ
BCが0と判定され、以後も悪路走行中であれば制御感
度が深く設定される(ステップ202)。而して、本実
施例によれば、悪路走行中でも車体振動を惹起すること
なく、適切なブレーキ液圧制御を行なうことができる。
【0030】図7は本発明の他の実施例に係るフローチ
ャートを示すもので、ステップ301乃至306は図5
のフローチャートと同様であるが、本実施例では図5の
ステップ207乃至211が省略されている。即ち、前
後輪加速度差ΔDVsが第1のしきい値G1を下回ると
判定されたときには、ステップ306にて振動判定カウ
ンタBCがカウント値T2に設定された後直ちにステッ
プ307以降に進み、図5のステップ212乃至214
と同様に処理される。而して、図7の実施例によれば誤
判定防止カウンタが省略され、簡単な制御となる。
【0031】上述の実施例においては何れも前後輪加速
度差ΔDVsを振動判定に用いているが、更に簡便な態
様として、前後輪の車輪速度の差[(VwFF+VwFL)
−(VwRR+VwRL)]を所定のしきい値と比較して振
動判定を行なうこととしてもよい。
【0032】
【発明の効果】本発明は上述のように構成されているの
で以下の効果を奏する。即ち、本発明の四輪駆動車のア
ンチスキッド制御装置によれば、請求項1のように、走
行路面状態判定手段によって車両が走行する路面状態を
判定し、その判定結果に基づき制御感度設定手段にて、
制動力制御手段に対する制御感度を設定し、更に、前後
輪車輪速度差演算手段にて演算した車両前方と車両後方
の車輪速度の差を、制動力制御手段による制動力制御時
に、振動判定手段にて所定のしきい値と比較して車体の
振動状態を判定し、車体振動の可能性有と判定したとき
には、制御感度補正手段によって、制御感度設定手段で
設定する制御感度を、車体振動の発生限界内の所定の感
度に変更するように構成されているので、悪路走行時に
おいても、制動距離の伸長を極力抑えつつ、車体振動を
惹起することなく適切なブレーキ液圧制御を行ない、安
定した制動作動を確保することができる。
【0033】また、請求項2係るアンチスキッド制御
装置においては、前後輪車輪加速度差演算手段にて演算
した車両前方の車輪の加速度と車両後方の車輪の加速度
との差を、振動判定手段にて所定のしきい値と比較して
車体の振動状態を判定するように構成されているので、
迅速且つ的確に車体振動の可能性の有無を判定し、悪路
走行時においても、制動距離の伸長を極力抑えつつ、車
体振動を惹起することなく適切なブレーキ液圧制御を行
ない、安定した制動作動を確保することができる。
【0034】請求項に係るアンチスキッド制御装置に
おいては、走行路面状態判定手段にて、車輪加速度演算
手段の演算結果に基づき路面状態を判定すると共に、振
動判定手段の誤判定防止手段により、前後輪加速度差演
算手段の演算結果が第1のしきい値を下回った後、所定
時間内に第2のしきい値を超えたときに初めて車体振動
と判定するように構成されているので、的確に走行路面
状態を判定すると共に、一層確実に車体振動の可能性の
有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の四輪駆動車のアンチスキッド制御装置
の概要を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る四輪駆動車のアンチスキッド制御
装置の実施例の全体構成図である。
【図3】図2の電子制御装置の構成を示すブロック図で
ある。
【図4】本発明の一実施例におけるアンチスキッド制御
の処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施例における制御感度設定の処理
を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例における前後輪の車輪速度、
前後輪加速度差、誤判定防止カウンタ及び振動判定カウ
ンタの状態を示すグラフである。
【図7】本発明の他の実施例における制御感度設定の処
理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2 液圧発生装置 2a マスタシリンダ 2b ブースタ 3 ブレーキペダル 10 電子制御装置 20 電動モータ 21,22 ポンプ 23,24 リザーバ 30 アクチュエータ(液圧制御装置) 31〜36 電磁弁 41〜44 車輪速度センサ(車輪速度検出手段) 51〜54 ホイールシリンダ FR,FL,RR,RL 車輪
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 亮彦 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイ シン精機株式会社内 (72)発明者 二瓶 寿久 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 松林 博之 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−85338(JP,A) 特開 平3−235750(JP,A) 特開 平1−145253(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/58

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の前方及び後方の車輪の各々に装着
    し制動力を付与するホイールシリンダと、該ホイールシ
    リンダの各々にブレーキ液圧を供給する液圧発生装置
    と、該液圧発生装置と前記ホイールシリンダとの間に介
    装し前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を制御する液
    圧制御装置と、前記車輪の各々の車輪速度を検出する車
    輪速度検出手段と、該車輪速度検出手段の検出出力に応
    じて前記液圧制御装置を駆動し前記ホイールシリンダに
    供給するブレーキ液圧を制御して前記車輪の各々に対す
    る制動力を制御する制動力制御手段を備えた四輪駆動車
    のアンチスキッド制御装置において、前記車両が走行す
    る路面状態を判定する走行路面状態判定手段と、該走行
    路面状態判定手段の判定結果に基づき前記制動力制御手
    段に対する制御感度を設定する制御感度設定手段と、
    記車輪速度検出手段の検出出力に基づき前記車両前方の
    車輪の車輪速度と前記車両後方の車輪の車輪速度の差を
    演算する前後輪車輪速度差演算手段と、前記制動力制御
    手段による制動力制御時に前記前後輪車輪速度差演算手
    段の演算結果を所定のしきい値と比較して前記車体の振
    動状態を判定する振動判定手段と、該振動判定手段にて
    車体振動の可能性有と判定したときには、前記制御感度
    設定手段が設定する制御感度を、前記車体振動の発生限
    界内の所定の感度に変更する制御感度補正手段を備えた
    ことを特徴とする四輪駆動車のアンチスキッド制御装
    置。
  2. 【請求項2】 車両の前方及び後方の車輪の各々に装着
    し制動力を付与するホイールシリンダと、該ホイールシ
    リンダの各々にブレーキ液圧を供給する液圧発生装置
    と、該液圧発生装置と前記ホイールシリンダとの間に介
    装し前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を制御する液
    圧制御装置と、前記車輪の各々の車輪速度を検出する車
    輪速度検出手段と、該車輪速度検出手段の検出出力に応
    じて前記液圧制御装置を駆動し前記ホイールシリンダに
    供給するブレーキ液圧を制御して前記車輪の各々に対す
    る制動力を制御する制動力制御手段を備えた四輪駆動車
    のアンチスキッド制御装置において、前記車両が走行す
    る路面状態を判定する走行路面状態判定手段と、該走行
    路面状態判定手段の判定結果に基づき前記制動力制御手
    段に対する制御感度を設定する制御感度設定手段と、
    記車輪速度検出手段の検出出力に基づき前記車輪の各々
    の加速度を演算する車輪加速度演算手段と、該車輪加速
    度演算手段が演算した前記車両前方の車輪の加速度と前
    記車両後方の車輪の加速度の差を演算する前後輪加速度
    差演算手段、該前後輪加速度差演算手段の演算結果
    所定のしきい値と比較して前記車体の振動状態を判定す
    振動判定手段と、該振動判定手段にて車体振動の可能
    性有と判定したときには、前記制御感度設定手段が設定
    する制御感度を、前記車体振動の発生限界内の所定の感
    度に変更する制御感度補正手段を備えたことを特徴とす
    四輪駆動車のアンチスキッド制御装置。
  3. 【請求項3】 前記走行路面状態判定手段が、前記車輪
    加速度演算手段の演算結果に基づき路面状態を判定する
    ように構成すると共に、前記振動判定手段は、前記前後
    輪加速度差演算手段の演算結果が第1のしきい値を下回
    った後、所定時間内に第2のしきい値を超えたときに車
    体振動の可能性有と判定する誤判定防止手段を具備した
    ことを特徴とする請求項記載の四輪駆動車のアンチス
    キッド制御装置。
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