JP3373592B2 - 防眩性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents
防眩性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、防眩性,耐孔食性,耐
候性に優れたフェライト系ステンレス鋼に関する。
候性に優れたフェライト系ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼は、代表的な耐食材料とし
て各種建築用資材,構造材等に使用されている。なかで
も、フェライト系ステンレス鋼は、高価なニッケルを含
まず、溶接にも問題がないことから、安価な耐食材料と
して汎用されている。しかし、フェライト系ステンレス
鋼の代表鋼種であるSUS430を例にとると、腐食環
境の緩やかな田園地帯においても短期間で赤銹を発生す
ることにみられるように耐食性,耐候性が十分でない。
更に、溶接時の加熱,冷却によって粒界腐食が発生し易
い欠点もある。
て各種建築用資材,構造材等に使用されている。なかで
も、フェライト系ステンレス鋼は、高価なニッケルを含
まず、溶接にも問題がないことから、安価な耐食材料と
して汎用されている。しかし、フェライト系ステンレス
鋼の代表鋼種であるSUS430を例にとると、腐食環
境の緩やかな田園地帯においても短期間で赤銹を発生す
ることにみられるように耐食性,耐候性が十分でない。
更に、溶接時の加熱,冷却によって粒界腐食が発生し易
い欠点もある。
【0003】耐候性を改善するには、Cr量の増加やM
oの添加等が有効である。CrやMoの増加に伴った靭
性の低下は、C及びNを低減させることで改善してい
る。C,Nの低減は、耐粒界腐食性改善にも有効であ
る。しかし、C,Nの低減にも自ら限界があり、現在、
工業的に到達し得るC,N量レベルでは、粒界腐食感受
性を完全に無くすことはできない。そこで、C,Nを固
定し得るTi又はNb等の安定化元素を単独或いは複合
で添加することにより、粒界腐食に及ぼすC,Nの悪影
響を解消している。
oの添加等が有効である。CrやMoの増加に伴った靭
性の低下は、C及びNを低減させることで改善してい
る。C,Nの低減は、耐粒界腐食性改善にも有効であ
る。しかし、C,Nの低減にも自ら限界があり、現在、
工業的に到達し得るC,N量レベルでは、粒界腐食感受
性を完全に無くすことはできない。そこで、C,Nを固
定し得るTi又はNb等の安定化元素を単独或いは複合
で添加することにより、粒界腐食に及ぼすC,Nの悪影
響を解消している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらの技術的背景を
もとにして、たとえば低炭素・低窒素30Cr−2.0
Mo−Nb鋼のように、耐候性に優れた含Mo高Cr鋼
が開発されている。しかし、海岸地帯,海上等の塩素イ
オンを含む腐食環境に曝されると、温度,湿度等の気象
条件によっては短期間に赤銹を発生することがある。赤
銹発生は、不動態皮膜の一部が塩素イオンで破壊され、
ステンレス鋼成分が溶解し、Feの腐食生成物が形成さ
れることに起因する。すなわち、ステンレス鋼の表面
は、通常赤銹等の発銹を抑制する不動態皮膜で覆われて
いる。しかし、海岸地帯や海上では不動態皮膜が破壊さ
れ、その再生を妨げる作用をもつ塩素イオンを含んだ海
塩粒子の飛来により、腐食が進行する。
もとにして、たとえば低炭素・低窒素30Cr−2.0
Mo−Nb鋼のように、耐候性に優れた含Mo高Cr鋼
が開発されている。しかし、海岸地帯,海上等の塩素イ
オンを含む腐食環境に曝されると、温度,湿度等の気象
条件によっては短期間に赤銹を発生することがある。赤
銹発生は、不動態皮膜の一部が塩素イオンで破壊され、
ステンレス鋼成分が溶解し、Feの腐食生成物が形成さ
れることに起因する。すなわち、ステンレス鋼の表面
は、通常赤銹等の発銹を抑制する不動態皮膜で覆われて
いる。しかし、海岸地帯や海上では不動態皮膜が破壊さ
れ、その再生を妨げる作用をもつ塩素イオンを含んだ海
塩粒子の飛来により、腐食が進行する。
【0005】また、外装材等の用途に使用されるステン
レス鋼板として、表面光沢を抑えた防眩性が望まれるこ
とから、ダル加工や研磨仕上げしたものが多用されてい
る。しかし、ダル肌や研磨肌は、光輝焼鈍又は調質圧延
で仕上げたものに比較して耐候性に劣る。これは、ダル
肌や研磨肌の材料に形成されている不動態皮膜に欠陥が
多く、しかも凹凸部があるため付着した塩素イオンが流
れ落ちにくいためである。光輝焼鈍等を施したものにあ
っても、加工時に発生した疵等の欠陥が表層部に存在す
ると耐候性が劣化し、早期に赤錆が発生することがあ
る。本発明は、このような問題を解消すべく案出された
ものであり、不動態皮膜の特性を改善する合金設計によ
って、塩素イオンを含む腐食環境においても優れた耐食
性,耐候性を示し、防眩性に優れた研磨肌,ダル肌等と
して使用可能なフェライト系ステンレス鋼板を提供する
ことを目的とする。
レス鋼板として、表面光沢を抑えた防眩性が望まれるこ
とから、ダル加工や研磨仕上げしたものが多用されてい
る。しかし、ダル肌や研磨肌は、光輝焼鈍又は調質圧延
で仕上げたものに比較して耐候性に劣る。これは、ダル
肌や研磨肌の材料に形成されている不動態皮膜に欠陥が
多く、しかも凹凸部があるため付着した塩素イオンが流
れ落ちにくいためである。光輝焼鈍等を施したものにあ
っても、加工時に発生した疵等の欠陥が表層部に存在す
ると耐候性が劣化し、早期に赤錆が発生することがあ
る。本発明は、このような問題を解消すべく案出された
ものであり、不動態皮膜の特性を改善する合金設計によ
って、塩素イオンを含む腐食環境においても優れた耐食
性,耐候性を示し、防眩性に優れた研磨肌,ダル肌等と
して使用可能なフェライト系ステンレス鋼板を提供する
ことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の高耐食性フェラ
イト系ステンレス鋼は、その目的を達成するため、C:
0.05重量%以下,Si:1.0重量%以下,Mn:
1.0重量%以下,P:0.04重量%以下,S:0.
03重量%以下,Ni:1.0重量%以下,Cr:20
〜35重量%,Mo:1〜8重量%,Nb:0.1〜
1.0重量%及びN:0.05重量%以下を含み、Cr
+3Mo≧37重量%を満足する。このフェライト系ス
テンレス鋼は、更にTi:0.05〜0.3重量%,A
l:0.01〜0.5重量%,Cu:0.1〜1.0重
量%及びZr:0.05〜0.3重量%の1種又は2種
以上を含むこともできる。
イト系ステンレス鋼は、その目的を達成するため、C:
0.05重量%以下,Si:1.0重量%以下,Mn:
1.0重量%以下,P:0.04重量%以下,S:0.
03重量%以下,Ni:1.0重量%以下,Cr:20
〜35重量%,Mo:1〜8重量%,Nb:0.1〜
1.0重量%及びN:0.05重量%以下を含み、Cr
+3Mo≧37重量%を満足する。このフェライト系ス
テンレス鋼は、更にTi:0.05〜0.3重量%,A
l:0.01〜0.5重量%,Cu:0.1〜1.0重
量%及びZr:0.05〜0.3重量%の1種又は2種
以上を含むこともできる。
【0007】
【作用】本発明者等は、フェライト系ステンレス鋼の表
面に形成される不動態皮膜と耐食性,耐候性との関係を
種々の観点から調査・研究した。その結果、不動態皮膜
に含まれるCr及びMoの割合が高くなると、耐食性,
耐候性等において非常に優れた特性が得られることを解
明した。不動態皮膜中のCr及びMoが耐食性,耐候性
等の向上に与える理由は、次のように推察される。不動
態皮膜中に多量のCrが存在すると、不動態皮膜が破壊
されても、自己修復作用が強く、再不動態化され易い。
しかし、Cr及びFeを主成分とする不動態皮膜には、
腐食の起点となる活性な欠陥部が存在する。Moは、こ
の不動態皮膜中に存在する欠陥部を補完し、腐食の発生
を抑制する。また、カソード反応を抑制する作用をMo
が示すことから、仮に腐食が発生した場合でも腐食の進
行が抑制される。その結果、耐食性及び耐候性が向上す
る。
面に形成される不動態皮膜と耐食性,耐候性との関係を
種々の観点から調査・研究した。その結果、不動態皮膜
に含まれるCr及びMoの割合が高くなると、耐食性,
耐候性等において非常に優れた特性が得られることを解
明した。不動態皮膜中のCr及びMoが耐食性,耐候性
等の向上に与える理由は、次のように推察される。不動
態皮膜中に多量のCrが存在すると、不動態皮膜が破壊
されても、自己修復作用が強く、再不動態化され易い。
しかし、Cr及びFeを主成分とする不動態皮膜には、
腐食の起点となる活性な欠陥部が存在する。Moは、こ
の不動態皮膜中に存在する欠陥部を補完し、腐食の発生
を抑制する。また、カソード反応を抑制する作用をMo
が示すことから、仮に腐食が発生した場合でも腐食の進
行が抑制される。その結果、耐食性及び耐候性が向上す
る。
【0008】不動態皮膜中のCr及びMoは、基材であ
るフェライト系ステンレス鋼の組成に大きく影響され
る。そこで、フェライト系ステンレス鋼の合金設計が不
動態皮膜の組成に与える影響を調査した。その結果、C
r+3Mo≧37重量%の条件が満足されるように20
〜35重量%の範囲でCr及び1〜8重量%の範囲でM
oが含まれるとき、Cr及びMoの割合が安定して高い
不動態皮膜が形成されることを見い出した。不動態皮膜
に多量のCr及びMoが含まれるとき、耐食性及び耐孔
食性が著しく向上する。また、加工疵等の欠陥があって
も、孔食の進行が抑制される。しかも、このような不動
態皮膜は、酸洗仕上げを必要とすることなく、研磨した
ままの鋼材表面においても形成される。そのため、防眩
性に有効なダル肌や研磨肌をもった材料としての使用が
可能になる。
るフェライト系ステンレス鋼の組成に大きく影響され
る。そこで、フェライト系ステンレス鋼の合金設計が不
動態皮膜の組成に与える影響を調査した。その結果、C
r+3Mo≧37重量%の条件が満足されるように20
〜35重量%の範囲でCr及び1〜8重量%の範囲でM
oが含まれるとき、Cr及びMoの割合が安定して高い
不動態皮膜が形成されることを見い出した。不動態皮膜
に多量のCr及びMoが含まれるとき、耐食性及び耐孔
食性が著しく向上する。また、加工疵等の欠陥があって
も、孔食の進行が抑制される。しかも、このような不動
態皮膜は、酸洗仕上げを必要とすることなく、研磨した
ままの鋼材表面においても形成される。そのため、防眩
性に有効なダル肌や研磨肌をもった材料としての使用が
可能になる。
【0009】以下、基材として使用されるフェライト系
ステンレス鋼の合金成分及び含有量を説明する。 C,N: ステンレス鋼に不可避的に含まれる元素であ
る。C,N含有量を低減すると軟質になり、加工性が向
上すると共に炭化物の生成が少なくなる。また、C,N
含有量の低減に伴って、溶接性及び溶接部の耐食性も向
上する。そこで、C及びN含有量の上限を、共に0.0
5重量%に規定した。 Si: 溶接部の高温割れや溶接部靭性に対し有害な元
素である。また、ステンレス鋼を硬質にするので、Si
含有量は低い方が好ましい。そこで、Si含有量の上限
を1.0重量%に規定した。
ステンレス鋼の合金成分及び含有量を説明する。 C,N: ステンレス鋼に不可避的に含まれる元素であ
る。C,N含有量を低減すると軟質になり、加工性が向
上すると共に炭化物の生成が少なくなる。また、C,N
含有量の低減に伴って、溶接性及び溶接部の耐食性も向
上する。そこで、C及びN含有量の上限を、共に0.0
5重量%に規定した。 Si: 溶接部の高温割れや溶接部靭性に対し有害な元
素である。また、ステンレス鋼を硬質にするので、Si
含有量は低い方が好ましい。そこで、Si含有量の上限
を1.0重量%に規定した。
【0010】Mn: ステンレス鋼中に微量に存在する
Sと結合して可溶性硫化物MnSを形成することによ
り、耐候性を低下させる有害な元素である。そこで、M
n含有量の上限を1.0重量%に規定した。 P: 母材及び溶接部靭性を損なうので、P含有量は低
い方が望ましい。しかし、ステンレス鋼等の含Cr鋼を
脱Pすることは困難であり、且つP含有量を極度に低下
させることは製造コストの上昇を招く。したがって、P
含有量の上限を0.04重量%に規定した。 S: 耐候性及び溶接部の高温割れに悪影響を及ぼす有
害な元素であるため、S含有量は低い方が好ましい。そ
こで、S含有量の上限を0.03重量%に規定した。
Sと結合して可溶性硫化物MnSを形成することによ
り、耐候性を低下させる有害な元素である。そこで、M
n含有量の上限を1.0重量%に規定した。 P: 母材及び溶接部靭性を損なうので、P含有量は低
い方が望ましい。しかし、ステンレス鋼等の含Cr鋼を
脱Pすることは困難であり、且つP含有量を極度に低下
させることは製造コストの上昇を招く。したがって、P
含有量の上限を0.04重量%に規定した。 S: 耐候性及び溶接部の高温割れに悪影響を及ぼす有
害な元素であるため、S含有量は低い方が好ましい。そ
こで、S含有量の上限を0.03重量%に規定した。
【0011】Ni: フェライト系ステンレス鋼の靭性
改善に有効な合金元素である。しかし、多量のNi含有
は、コスト高の原因となる。本発明においては、通常の
フェライト系ステンレス鋼で不可避的不純物として混入
される1.0重量%にNi含有量の上限を定めた。 Cr: ステンレス鋼の耐食性を高める主要元素であ
り、耐候性,耐孔食性,耐隙間腐食性及び一般耐食性を
著しく向上させる。耐食性改善に与えるCrの作用は、
20重量%未満では不十分である。しかし、Cr含有量
が35重量%を超えると、著しい脆化が生じ、薄板製
造,製品加工等の際に困難を伴う。そのため、Cr含有
量を20〜35重量%の範囲に定めた。
改善に有効な合金元素である。しかし、多量のNi含有
は、コスト高の原因となる。本発明においては、通常の
フェライト系ステンレス鋼で不可避的不純物として混入
される1.0重量%にNi含有量の上限を定めた。 Cr: ステンレス鋼の耐食性を高める主要元素であ
り、耐候性,耐孔食性,耐隙間腐食性及び一般耐食性を
著しく向上させる。耐食性改善に与えるCrの作用は、
20重量%未満では不十分である。しかし、Cr含有量
が35重量%を超えると、著しい脆化が生じ、薄板製
造,製品加工等の際に困難を伴う。そのため、Cr含有
量を20〜35重量%の範囲に定めた。
【0012】Mo: Crと共に耐候性を高める有効な
合金元素であり、その効果はCr量が増すにつれて大き
くなる。本発明で規定したCr量レベルにおいては、1
重量%未満のMo含有量では耐候性改善効果は小さく、
逆に8%を超えてMoを添加すると延性の低下を招き加
工上困難を伴う。そこで、Mo含有量を1〜8重量%の
範囲に設定した。Mo含有量は、Cr含有量との間でC
r+3Mo≧37重量%の関係が成立していることが必
要である。この式は、本発明者等による実験の結果とし
て求められたもので、研磨肌,ダル肌としても良好な耐
候性を維持するために有効な指標である。すなわち、C
r+3Mo≧37重量%の関係が満足される合金設計で
は、鋼材表面に形成される不動態皮膜にCr及びMo酸
化物の割合が多くなり、研磨肌,ダル肌の状態において
も耐食性及び耐候性が向上する。Cr,Moは耐候性改
善のための基本成分であり、Moの方がCrよりも耐候
性改善に対する寄与が大きいことから、係数をCrの3
倍とした。
合金元素であり、その効果はCr量が増すにつれて大き
くなる。本発明で規定したCr量レベルにおいては、1
重量%未満のMo含有量では耐候性改善効果は小さく、
逆に8%を超えてMoを添加すると延性の低下を招き加
工上困難を伴う。そこで、Mo含有量を1〜8重量%の
範囲に設定した。Mo含有量は、Cr含有量との間でC
r+3Mo≧37重量%の関係が成立していることが必
要である。この式は、本発明者等による実験の結果とし
て求められたもので、研磨肌,ダル肌としても良好な耐
候性を維持するために有効な指標である。すなわち、C
r+3Mo≧37重量%の関係が満足される合金設計で
は、鋼材表面に形成される不動態皮膜にCr及びMo酸
化物の割合が多くなり、研磨肌,ダル肌の状態において
も耐食性及び耐候性が向上する。Cr,Moは耐候性改
善のための基本成分であり、Moの方がCrよりも耐候
性改善に対する寄与が大きいことから、係数をCrの3
倍とした。
【0013】Nb: 本発明で規定したC量レベルのフ
ェライト系ステンレス鋼において粒界腐食を防止する。
この作用を得るため、0.1重量%以上のNb含有量が
必要である。しかし、過剰のNb添加によって溶接部靭
性を阻害するので、Nb含有量の上限を1.0重量%に
規定した。本発明のフェライト系ステンレス鋼は、T
i,Al,Cu及びZrの1種又は2種以上を任意成分
として含むことができる。これらの合金元素の影響は、
次の通りである。 Ti: 不動態皮膜を強固にし、比較的低いCr量及び
Mo量の組成であっても優れた耐食性及び耐候性が得ら
れる。また、Ti添加は、粒界腐食を抑制し、C,Nを
固定する作用も呈する。このような効果を得るために
は、0.05重量%以上のTiを含有することが必要で
ある。しかし、0.3重量%を超えてTiを含有させる
と、素材の表面品質を劣化させ、局部的な腐食を強める
傾向がみられる。そこで、Tiを含有させる場合、その
含有量を0.05〜0.3重量%の範囲に定める。
ェライト系ステンレス鋼において粒界腐食を防止する。
この作用を得るため、0.1重量%以上のNb含有量が
必要である。しかし、過剰のNb添加によって溶接部靭
性を阻害するので、Nb含有量の上限を1.0重量%に
規定した。本発明のフェライト系ステンレス鋼は、T
i,Al,Cu及びZrの1種又は2種以上を任意成分
として含むことができる。これらの合金元素の影響は、
次の通りである。 Ti: 不動態皮膜を強固にし、比較的低いCr量及び
Mo量の組成であっても優れた耐食性及び耐候性が得ら
れる。また、Ti添加は、粒界腐食を抑制し、C,Nを
固定する作用も呈する。このような効果を得るために
は、0.05重量%以上のTiを含有することが必要で
ある。しかし、0.3重量%を超えてTiを含有させる
と、素材の表面品質を劣化させ、局部的な腐食を強める
傾向がみられる。そこで、Tiを含有させる場合、その
含有量を0.05〜0.3重量%の範囲に定める。
【0014】Al: 脱酸剤として添加される成分であ
るが、不動態皮膜を緻密化する作用も呈する。このよう
な作用は、0.01重量%以上のAl含有量で顕著とな
る。しかし、0.5重量%を超えてAlを添加すると、
素材の表面品質の劣化を招き、且つ溶接性が悪化する。
そのため、Alを含有させる場合、その含有量を0.0
1〜0.5重量%の範囲に設定する。 Cu,Zr: 任意成分として添加されるCu及びZr
は、共に耐候性改善に有効な合金元素である、このよう
な効果を得るためには、0.1重量%未満のCu含有量
又は0.05重量%未満のZr含有量では不十分であ
る。しかし、多すぎると溶接部靭性が阻害されるため、
したがって、CuやZrを含有させる場合、Cu含有量
の上限を1.0重量%に、Zr含有量の上限を0.3重
量%にそれぞれ設定する。
るが、不動態皮膜を緻密化する作用も呈する。このよう
な作用は、0.01重量%以上のAl含有量で顕著とな
る。しかし、0.5重量%を超えてAlを添加すると、
素材の表面品質の劣化を招き、且つ溶接性が悪化する。
そのため、Alを含有させる場合、その含有量を0.0
1〜0.5重量%の範囲に設定する。 Cu,Zr: 任意成分として添加されるCu及びZr
は、共に耐候性改善に有効な合金元素である、このよう
な効果を得るためには、0.1重量%未満のCu含有量
又は0.05重量%未満のZr含有量では不十分であ
る。しかし、多すぎると溶接部靭性が阻害されるため、
したがって、CuやZrを含有させる場合、Cu含有量
の上限を1.0重量%に、Zr含有量の上限を0.3重
量%にそれぞれ設定する。
【0015】この合金系においては、Cr及びMoを多
量に含む不動態皮膜が研磨されたままの鋼材表面に形成
される。不動態皮膜に含まれるFe,Cr及びMoの合
計量に占める各元素の割合及びCr+3Moの割合を原
子数換算でみると、Crの割合は、鋼材の組成が本発明
で規定する要件を満足する限り25.0%以上となって
いる。また、Moの割合が4%以上で、Cr+3Moの
割合が42%以上になっている。他方、Feの割合は、
Cr及びMoの増加に伴って、70%以下に低下してい
る。不動態皮膜にこのように多量のCr及びMoが含ま
れていることから、鋼材表面層に加工疵等の欠陥が多少
存在していても自己修復作用が働き、腐食の進行が抑制
される。この点、Cr+3Moが37重量%未満の研磨
材では、Feの割合が高くなり、また比較的ポーラスな
不動態皮膜が形成されることと相俟つて、後述する実施
例で示されているように耐候性及び耐孔食性共に劣って
いる。
量に含む不動態皮膜が研磨されたままの鋼材表面に形成
される。不動態皮膜に含まれるFe,Cr及びMoの合
計量に占める各元素の割合及びCr+3Moの割合を原
子数換算でみると、Crの割合は、鋼材の組成が本発明
で規定する要件を満足する限り25.0%以上となって
いる。また、Moの割合が4%以上で、Cr+3Moの
割合が42%以上になっている。他方、Feの割合は、
Cr及びMoの増加に伴って、70%以下に低下してい
る。不動態皮膜にこのように多量のCr及びMoが含ま
れていることから、鋼材表面層に加工疵等の欠陥が多少
存在していても自己修復作用が働き、腐食の進行が抑制
される。この点、Cr+3Moが37重量%未満の研磨
材では、Feの割合が高くなり、また比較的ポーラスな
不動態皮膜が形成されることと相俟つて、後述する実施
例で示されているように耐候性及び耐孔食性共に劣って
いる。
【0016】
【実施例】表1に示す化学成分を有する各種のステンレ
ス鋼を溶製し、熱間圧延により板厚3.5mmの熱延板
を製造した。その後、板厚1.0mmまで冷間圧延し、
1000〜1050℃で焼鈍後、長さ100mm及び幅
100mmの供試材を切り出した。なお、一部の供試材
については、焼鈍・酸洗後にダル目を付けた。表1にお
いて、Aグループの鋼は、本発明で規制した成分・組成
を満足するステンレス鋼である。そのうち、A1及びA
5は25Cr鋼をベースとし、A2及びA4は30Cr
鋼をベースとし、A3は31Cr−3Mo鋼である。他
方、Bグループの鋼は、Cr+3Moが37重量%に達
しないステンレス鋼である。
ス鋼を溶製し、熱間圧延により板厚3.5mmの熱延板
を製造した。その後、板厚1.0mmまで冷間圧延し、
1000〜1050℃で焼鈍後、長さ100mm及び幅
100mmの供試材を切り出した。なお、一部の供試材
については、焼鈍・酸洗後にダル目を付けた。表1にお
いて、Aグループの鋼は、本発明で規制した成分・組成
を満足するステンレス鋼である。そのうち、A1及びA
5は25Cr鋼をベースとし、A2及びA4は30Cr
鋼をベースとし、A3は31Cr−3Mo鋼である。他
方、Bグループの鋼は、Cr+3Moが37重量%に達
しないステンレス鋼である。
【0017】
【表1】
【0018】各供試材を、先ず#120、次いで#60
0の機械研磨を施した後、#600の手研磨で仕上げ
た。なお、ダル肌の供試材については、そのまま使用し
た。研磨材に形成されている不動態皮膜の表層部をXP
S分析し、Fe,Cr及びMoを定量した。原子数換算
でFe,Cr及びMoの合計を100としたとき、それ
ぞれの元素が占める割合及びCr原子+3(Mo原子)
の割合を算出した。算出結果を示す表2から明らかなよ
うに、Cr+3Mo≧37重量%の条件を満足するAグ
ループの供試材は、何れもCr原子+3(Mo原子)の
割合が高くなっている。これに対し、Cr+3Moが3
7重量%に達しないBグループの供試材では、Cr原子
+3(Mo原子)の割合が低い値を示した。
0の機械研磨を施した後、#600の手研磨で仕上げ
た。なお、ダル肌の供試材については、そのまま使用し
た。研磨材に形成されている不動態皮膜の表層部をXP
S分析し、Fe,Cr及びMoを定量した。原子数換算
でFe,Cr及びMoの合計を100としたとき、それ
ぞれの元素が占める割合及びCr原子+3(Mo原子)
の割合を算出した。算出結果を示す表2から明らかなよ
うに、Cr+3Mo≧37重量%の条件を満足するAグ
ループの供試材は、何れもCr原子+3(Mo原子)の
割合が高くなっている。これに対し、Cr+3Moが3
7重量%に達しないBグループの供試材では、Cr原子
+3(Mo原子)の割合が低い値を示した。
【0019】
【表2】
【0020】各研磨材を、沖縄県宜野湾市で3階建建物
の屋上で暴露面が北向きになるように、5度の傾斜をつ
けてベークライトワッシャーを介してステンレス鋼製ア
ングルに取り付け、大気暴露試験に供した。そして、各
供試材の耐候性を、暴露試験後の供試材表面における赤
銹発生率で判定した。赤銹発生率は、JIS D 02
01に基づいて求めた。赤錆発生率をCr+3Moで整
理したところ、図1に示すようにCr+3Mo=37重
量%を境として赤錆発生率が急激に低下していた。表2
及び図1から、Cr+3Mo≧37重量%は、不動態皮
膜中のCr及びMoの割合が高く、耐候性の向上に有効
であることが確認される。
の屋上で暴露面が北向きになるように、5度の傾斜をつ
けてベークライトワッシャーを介してステンレス鋼製ア
ングルに取り付け、大気暴露試験に供した。そして、各
供試材の耐候性を、暴露試験後の供試材表面における赤
銹発生率で判定した。赤銹発生率は、JIS D 02
01に基づいて求めた。赤錆発生率をCr+3Moで整
理したところ、図1に示すようにCr+3Mo=37重
量%を境として赤錆発生率が急激に低下していた。表2
及び図1から、Cr+3Mo≧37重量%は、不動態皮
膜中のCr及びMoの割合が高く、耐候性の向上に有効
であることが確認される。
【0021】次いで、研磨材及びダル材の孔食電位を測
定した。測定は、液温80℃に保持しAr脱気した20
%NaCl溶液を用いて掃引速度0.1mV/分の動電
位法で行い、アノード電流密度が200μA/cm2 に
達する電位を孔食電位として測定した。測定された孔食
電位をCr+3Moで整理した結果を、図2に示す。図
2から明らかなように、耐孔食性に関しても、Cr+3
Mo=37重量%を境として急激な上昇傾向がみられ
る。他方、Cr+3Moが37重量%未満の領域では、
Cr+3Moの増加に見合った孔食電位の上昇度合いは
小さなものであった。
定した。測定は、液温80℃に保持しAr脱気した20
%NaCl溶液を用いて掃引速度0.1mV/分の動電
位法で行い、アノード電流密度が200μA/cm2 に
達する電位を孔食電位として測定した。測定された孔食
電位をCr+3Moで整理した結果を、図2に示す。図
2から明らかなように、耐孔食性に関しても、Cr+3
Mo=37重量%を境として急激な上昇傾向がみられ
る。他方、Cr+3Moが37重量%未満の領域では、
Cr+3Moの増加に見合った孔食電位の上昇度合いは
小さなものであった。
【0022】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、フェライト系ステンレス鋼の合金設計、特にCr+
3Moを37重量%以上とすることによって、鋼材表面
に形成される不動態皮膜に多量のCr及びMoを含ませ
ている。この不動態皮膜は、基材の成分系と相俟つて、
研磨肌及びダル肌の状態にあっても優れた耐食性及び耐
候性を呈する。そのため、防眩性の向上に有効な研磨仕
上げ及びダル仕上げが採用でき、優れた耐候性及び耐孔
食性を活かして屋根材,外装材,貯湯槽等の屋外タンク
等の外装構造材料として広範な分野で使用される。
は、フェライト系ステンレス鋼の合金設計、特にCr+
3Moを37重量%以上とすることによって、鋼材表面
に形成される不動態皮膜に多量のCr及びMoを含ませ
ている。この不動態皮膜は、基材の成分系と相俟つて、
研磨肌及びダル肌の状態にあっても優れた耐食性及び耐
候性を呈する。そのため、防眩性の向上に有効な研磨仕
上げ及びダル仕上げが採用でき、優れた耐候性及び耐孔
食性を活かして屋根材,外装材,貯湯槽等の屋外タンク
等の外装構造材料として広範な分野で使用される。
【図1】 Cr+3Moが赤錆発生率に与える影響を示
すグラフ
すグラフ
【図2】 孔食電位とCr+3Moとの関係を示すグラ
フ
フ
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 杉本 育弘
山口県新南陽市野村南町4976番地 日新
製鋼株式会社鉄鋼研究所内
(72)発明者 白山 和
山口県新南陽市野村南町4976番地 日新
製鋼株式会社鉄鋼研究所内
(56)参考文献 特開 平5−70899(JP,A)
特開 平3−2355(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C22C 38/00 - 38/60
Claims (2)
- 【請求項1】 C:0.05重量%以下,Si:1.0
重量%以下,Mn:1.0重量%以下,P:0.04重
量%以下,S:0.03重量%以下,Ni:1.0重量
%以下,Cr:20〜35重量%,Mo:1〜8重量
%,Nb:0.1〜1.0重量%及びN:0.05重量
%以下を含み、Cr+3Mo≧37重量%を満足する防
眩性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼。 - 【請求項2】 Ti:0.05〜0.3重量%,Al:
0.01〜0.5重量%,Cu:0.1〜1.0重量%
及びZr:0.05〜0.3重量%の1種又は2種以上
を含む請求項1記載の高耐食性フェライト系ステンレス
鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14224493A JP3373592B2 (ja) | 1993-06-14 | 1993-06-14 | 防眩性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14224493A JP3373592B2 (ja) | 1993-06-14 | 1993-06-14 | 防眩性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06346196A JPH06346196A (ja) | 1994-12-20 |
JP3373592B2 true JP3373592B2 (ja) | 2003-02-04 |
Family
ID=15310799
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14224493A Expired - Fee Related JP3373592B2 (ja) | 1993-06-14 | 1993-06-14 | 防眩性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3373592B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4625043B2 (ja) | 2007-03-30 | 2011-02-02 | 東京製綱株式会社 | 動索用ワイヤロープ |
JP6108497B1 (ja) * | 2015-10-05 | 2017-04-05 | 日新製鋼株式会社 | 耐食性に優れたステンレス鋼管 |
-
1993
- 1993-06-14 JP JP14224493A patent/JP3373592B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH06346196A (ja) | 1994-12-20 |
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