JP3370973B2 - 繊維補強セメント板の製造方法 - Google Patents

繊維補強セメント板の製造方法

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    • B28B1/00Producing shaped prefabricated articles from the material
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、繊維補強
セメント板の製造方法に関するものである。さらに詳し
くは、この出願の発明は、供給ボックス内でのスラリー
の滞留を解消し、出口への異物の引っ掛かりを防止し
て、表面地合が良好に保持される抄造を可能とする繊維
補強セメント板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】外壁材、屋根材等の外装材には、繊維補
強セメント板が広く採用されている。この繊維補強セメ
ント板は、例えば図5に示した抄造式により製造されて
いる。
【0003】すなわち、セメント及び繊維を主原料と
し、フィラー等が適宜添加配合され、これを水に分散し
て得られる比較的低濃度のスラリーを、供給ボックス
(1)から、無端状の連続体に形成され、駆動ロール
(2)及び従動ロール(3)に懸架されて図5図中の矢
印方向に移動するフェルト等の透水性を有する透水性シ
ート(4)の上に供給し、グリーンシートとした後、真
空固液分離装置(5)においてサクションボックス(5
1)により透水性シート(4)の裏面を支持しながらグ
リーンシートを下方より減圧吸引し、脱水して生板を作
製する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この図
5に示される抄造式の繊維補強セメント板の製造方法に
は次のような問題があった。
【0005】すなわち、スラリーは比較的低濃度として
いるが、供給ボックス(1)内で滞留しやすく、これを
解消するためにスラリーを供給ボックス(1)内におい
て攪拌していたが、滞留防止は完全には実現されなかっ
た。このため、スラリーに発生した滞留にともない異物
が発生し、これが次第に大きく成長し、供給ボックス
(1)の出口(1a)に引っ掛かるようになる。この状
態においてスラリーの供給を行うと、大きな異物によっ
てグリーンシート表面が荒らされ、地合不良となる。
【0006】この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑
みてなされたものであり、供給ボックス内でのスラリー
の滞留を解消し、出口への異物の引っ掛かりを防止し
て、表面地合が良好に保持される抄造を可能とする繊維
補強セメント板の製造方法を提供することを目的として
いる。
【0007】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、セメント及び繊維を主原
料とし、水に分散して得られる固形分濃度20%以上6
5%以下のスラリーを、供給ボックスからその出口周辺
に振動をかけながら透水性シートの上に供給し、グリー
ンシートとした後、減圧吸引して脱水する抄造式の繊維
補強セメント板の製造方法であって、供給ボックスの前
面下端部に出口を形成する出口ゲートが少なくともその
下端部において抄造幅方向に複数に分割され、出口中央
部のクリアランスが両端部のクリアランスより小さくさ
れていることを特徴とする繊維補強セメント板の製造方
法(請求項1)を提供する。
【0008】
【0009】この出願の発明は、上記請求項1に係る発
明の繊維補強セメント板の製造方法において、出口ゲー
トは、下端部のみが抄造幅方向に複数に分割され、分割
されていない部分に1台の振動機が配設されていること
(請求項)、出口ゲートは、その全体が抄造幅方向に
複数に分割され、分割された各々に振動機が1台ずつ配
設されていること(請求項)、分割された出口ゲート
は、さらにその下端部において複数に細かく分割されて
いること(請求項、透水性シートに対する供給ボッ
クスの出口周辺部の角度が20〜90°とされているこ
と(請求項)、振動数が可変とされていること(請求
)をそれぞれ好ましい態様として提供する。
【0010】
【0011】以下、この出願の発明の繊維補強セメント
板の製造方法についてさらに詳しく説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】この出願の発明の繊維補強セメン
ト板の製造方法では、前記の通り、セメント及び繊維を
主原料とし、水に分散して得られるスラリーの固形分濃
度、すなわちスラリーの総重量に対する固形分重量の割
合を20%以上65%以下としている。これは、スラリ
ーの固形分濃度が20%より低いと、流動性が余りに大
きく、スラリーが供給ボックス(1)の出口(1a)か
ら飛び出してしまい、グリーンシートの厚みに許容でき
ないばらつきが生じるからであり、また、65%よりも
高いと流動性が不足し、供給ボックス(1)内での滞留
を解消し得ないからである。
【0013】これに加え、この出願の発明の繊維補強セ
メント板の製造方法では、スラリーを供給ボックス
(1)から透水性シート(4)の上に供給する際に、供
給ボックス(1)に形成された出口(1a)辺に
動をかけるようにしている。このように供給ボックス
(1)に形成された出口(1a)辺に振動をかける
ことにより、攪拌に比べ、供給ボックス(1)内でのス
ラリーの滞留が解消される。したがって、スラリーの滞
留にともなう異物の発生が防止され、出口(1a)への
異物の引っ掛かりがほとんど起こらず、表面地合が良好
に保持される抄造が可能となる。
【0014】供給ボックス(1)に形成された出口(1
a)辺に振動をかける手段については特に制限はな
く、例えば、エアバイブレーター、アンバランスウエイ
ト式バイブレーター等の各種の振動機を採用することが
できる。この振動機は、供給ボックス(1)の所定の部
位に配設することができる。
【0015】図1は、この出願の発明の繊維補強セメン
ト板の製造方法における供給ボックスの一実施形態を概
略的に示した断面図である。この図1に示したように、
振動機(6)は、例えば供給ボックス(1)の前面下端
部に出口(1a)を形成する出口ゲート(1b)に配設
することができる。この場合、出口ゲート(1b)は、
供給ボックス(1)の本体(1c)と別体とすることが
でき、出口ゲート(1b)と本体(1c)との接続部に
バネ、ゴム等の緩衝材(7)を介在させることができ
る。これにより、振動機(6)が発生する振動は、供給
ボックス(1)に形成された出口(1a)の周辺のみに
かかる
【0016】また、この出願の発明の繊維補強セメント
板の製造方法では、透水性シート(4)に対する供給ボ
ックス(1)の出口周辺部(1e)の角度(θ)を20
〜90°とすることができる。出口周辺部(1e)の角
度(θ)は、小さいほど、仮に異物が発生したとしても
これを容易に排出するのに有効となるが、小さくなるに
つれてスラリーを圧縮することになり、グリーンシート
の厚みにばらつきが生じやすくなる。従って、透水性シ
ート(4)に対する供給ボックス(1)の出口周辺部
(1e)の角度(θ)は最小でも20°が好ましい。上
限とする90°は、スラリーを円滑に排出することがで
きる限界の角度であり、好ましくは80°である。
【0017】そして、この出願の発明の繊維補強セメン
ト板の製造方法では、供給ボックス(1)の出口(1
a)周辺に振動をかける場合、図2に示したように、供
給ボックス(1)の前面下端部に出口(1a)を形成す
る出口ゲート(1b)を、少なくともその下端部におい
て抄造幅方向に複数に分割し、出口(1a)の中央部の
クリアランスを両端部のクリアランスより小さくする。
出口ゲート(1b)を下端部において抄造幅方向に複数
に分割する具体的な手段としては、付け爪状に形成した
断面L若しくはJ字形状を有する分割ゲート(8)を出
口ゲート(1b)の下端部に横方向に連設することが例
示される。より具体的には、図2図中に拡大して示した
ように、分割ゲート(8)の少なくとも両端部に長穴
(9)を形成し、また、出口ゲート(1b)の下端部に
はスタッド(10)を立設しておき、長穴(9)にスタ
ッド(10)を通し、出口(1a)のクリアランスが所
定の大きさとなる位置において、ナット(11)をスタ
ッド(10)に締め付け、分割ゲート(8)を出口ゲー
ト(1b)の下端部に固定することが例示される。この
場合、出口ゲート(1b)は、下端部のみが抄造幅方向
に複数に分割されることとなり、振動機(6)は、出口
ゲート(1b)の分割されていない部分に1台配設する
ことができる。
【0018】また、出口ゲート(1b)は、図3に示し
たように、その全体を抄造幅方向に複数に分割すること
もできる。この場合、出口(1a)のクリアランスは、
分割された各々の出口ゲート(1b)の取付位置を上下
方向に調整し、所定の大きさとすることができる。ま
た、この場合には、分割された各々の出口ゲート(1
b)に振動機(6)を1台ずつ配設することができる。
さらに、全体を抄造幅方向に複数に分割された出口ゲー
ト(1b)は、図4に示したように、その下端部を複数
に細かく分割することもできる。下端部を複数に細かく
分割する具体的な手段には、図2に示した分割ゲート
(8)を同様に採用することができる。
【0019】このように、供給ボックス(1)の前面下
端部に出口(1a)を形成する出口ゲート(1b)を、
少なくともその下端部において抄造幅方向に複数に分割
し、出口(1a)の中央部のクリアランスを両端部のク
リアランスより小さくすることにより、グリーンシート
の幅方向の厚みのばらつきを容易に抑制することが可能
となり、しかも厚みの微調整が可能ともなる。
【0020】さらにこの出願の発明の繊維補強セメント
板の製造方法では、振動数を可変とすることができる。
振動数を可変とすると、出口(1a)のクリアランスを
変更せずともグリーンシートの厚みを変えることがで
き、出口(1a)のクリアランスを一定としたまま薄物
から厚物まで抄造することが可能となる。振動数を上げ
るとグリーンシートの厚みは厚くなる。また、振動数に
よりグリーンシートの厚みが変化することから、振動数
を可変とすることは、グリーンシートの幅方向の厚みの
ばらつきを抑制するのにも効果的となる。この効果は、
後述する実施例に示されるように、図3及び図4に示し
たような、出口ゲート(1b)の全体が抄造幅方向に複
数に分割され、その各々に振動機(6)が配設された供
給ボックス(1)を使用する場合に特に顕在化される。
【0021】なお、この出願の発明の繊維補強セメント
板の製造方法では、供給ボックス(1)の出口(1a)
周辺又は供給ボックス(1)の全体にかける振動の振動
数、振幅等の諸条件については特に制限はない。スラリ
ーの性状等を考慮し、適当な条件に設定することができ
る。
【0022】次に、この出願の発明の繊維補強セメント
板の製造方法に基づき繊維補強セメント板を製造した実
施例を示す。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【実施例】 (実施例) 普通ポルトランドセメント(OPC)50重量部及びパ
ルプ5重量部にシリカ45重量部を添加配合し、これを
水に分散させ、固形分濃度40%のスラリーを調製し
た。このスラリーを、図2に示した供給ボックス(1)
から透水性シート(4)としてのフェルトの上に、振動
機(6)として配設したアンバランスウェイト式バイブ
レーターにより供給ボックス(1)の出口(1a)周辺
に表に示した条件において振動をかけながら、速度1
0m/分で供給し、次いで真空固液分離装置でフェルト
ごと減圧吸引して脱水した。
【0034】なお、振動の振幅は0.2mmとし、供給ボッ
クス(1)の出口周辺部(1e)の角度は90°とし
た。グリーンシートの幅方向の厚みのばらつき、及びグ
リーンシートの厚みの調整範囲を評価した。その結果も
表2に合わせて示した。
【0035】
【表1】
【0036】この表に示したように、グリーンシート
の幅方向の厚みのばらつきは許容されるものであった。
一方、グリーンシートは薄物のみ抄造が可能であった。 (実施例) 実施例において供給ボックス(1)を図3に示したも
のに替えた他は全く同様にして繊維補強セメント板の製
造を行った。
【0037】表に示したように、実施例に比べ、グ
リーンシートの幅方向の厚みのばらつきにやや改善が見
られる。 (実施例) 実施例において供給ボックス(1)を図4に示したも
のに替えた他は全く同様にして繊維補強セメント板の製
造を行った。
【0038】表に示したように、実施例に比べ、グ
リーンシートの幅方向の厚みのばらつきに明確な改善が
見られる。 (実施例) 実施例においてアンバランスウェイト式バイブレータ
ーのモーターにインバーターを取り付け、振動数を可変
とし、表に示した振動数において繊維補強セメント板
の製造を行った。
【0039】表に示したように、実施例に対し、薄
物から厚物までの抄造が可能となった。振動数を上げる
と、グリーンシートの厚みは厚くなった。 (実施例) 実施例においてアンバランスウェイト式バイブレータ
ーのモーターにインバーターを取り付け、振動数を可変
とし、表に示した振動数において繊維補強セメント板
の製造を行った。
【0040】表に示したように、実施例に対し、グ
リーンシートの幅方向の厚みのばらつきが改善されると
ともに、薄物から厚物までの抄造が可能ともなった。 (実施例) 実施例においてアンバランスウェイト式バイブレータ
ーのモーターにインバーターを取り付け、振動数を可変
とし、表に示した振動数において繊維補強セメント板
の製造を行った。
【0041】表に示したように、実施例に対し、グ
リーンシートの幅方向の厚みのばらつきが改善されると
ともに、薄物から厚物までの抄造が可能ともなった。勿
論、この出願の発明は、以上の実施形態並びに実施例に
よって限定されるものではない。スラリーの配合成分、
配合割合、振動条件等の細部については様々な態様が可
能であることは言うまでもない。
【0042】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この出願の発
明によって、供給ボックス内でのスラリーの滞留が解消
され、出口への異物の引っ掛かりが防止されて表面地合
が良好に保持される抄造が可能となる。しかも、グリー
ンシートの幅方向の厚みのばらつきを容易に抑制可能
で、厚みの微調整が可能ともなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の繊維補強セメント板の製造方
法における供給ボックスの概要を示した断面図である。
【図2】この出願の発明の繊維補強セメント板の製造方
法における供給ボックスの実施形態を概略的に示した
斜視図である。
【図3】この出願の発明の繊維補強セメント板の製造方
法における供給ボックスの別の実施形態を概略的に示し
た斜視図である。
【図4】この出願の発明の繊維補強セメント板の製造方
法における供給ボックスの別の実施形態を概略的に示し
た斜視図である。
【図5】抄造式の繊維補強セメント板の製造方法を示し
た概略図である。
【符号の説明】
1 供給ボックス 1a 出口 1b 出口ゲート 1c 本体 1e 出口周辺部 2 駆動ロール 3 従動ロール 4 透水性シート 5 真空固液分離装置 51 サクションボックス 6 振動機 7 緩衝材 8 分割ゲート 9 長穴 10 スタッド 11 ナット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中田 公明 大阪府門真市大字門真1048番地 松下電 工株式会社内 (72)発明者 中 雄一 大阪府門真市大字門真1048番地 松下電 工株式会社内 (56)参考文献 特開 昭54−152018(JP,A) 特開 平4−142903(JP,A) 特開 昭63−247004(JP,A) 特開 平10−323811(JP,A) 特開 平2−252504(JP,A) 実開 平3−66704(JP,U) 実開 平3−52105(JP,U) 実開 昭54−155944(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B28B 1/52 B28B 1/30 B28B 13/02

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セメント及び繊維を主原料とし、水に分
    散して得られる固形分濃度20%以上65%以下のスラ
    リーを、供給ボックスからその出口周辺に振動をかけな
    がら透水性シートの上に供給し、グリーンシートとした
    後、減圧吸引して脱水する抄造式の繊維補強セメント板
    の製造方法であって、供給ボックスの前面下端部に出口
    を形成する出口ゲートが少なくともその下端部において
    抄造幅方向に複数に分割され、出口中央部のクリアラン
    スが両端部のクリアランスより小さくされていることを
    特徴とする繊維補強セメント板の製造方法。
  2. 【請求項2】 出口ゲートは、下端部のみが抄造幅方向
    に複数に分割され、分割されていない部分に1台の振動
    機が配設されている請求項記載の繊維補強セメント板
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 出口ゲートは、その全体が抄造幅方向に
    複数に分割され、分割された各々に振動機が1台ずつ配
    設されている請求項記載の繊維補強セメント板の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 分割された出口ゲートは、さらにその下
    端部において複数に細かく分割されている請求項記載
    の繊維補強セメント板の製造方法。
  5. 【請求項5】 透水性シートに対する供給ボックスの出
    口周辺部の角度が20〜90°とされている請求項1乃
    いずれかに記載の繊維補強セメント板の製造方法。
  6. 【請求項6】 振動数が可変とされている請求項1乃至
    いずれかに記載の繊維補強セメント板の製造方法。
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