JP3366485B2 - 白金族元素及びテクネチウムの分離回収方法 - Google Patents

白金族元素及びテクネチウムの分離回収方法

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JP3366485B2 JP06986495A JP6986495A JP3366485B2 JP 3366485 B2 JP3366485 B2 JP 3366485B2 JP 06986495 A JP06986495 A JP 06986495A JP 6986495 A JP6986495 A JP 6986495A JP 3366485 B2 JP3366485 B2 JP 3366485B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、使用済み核燃料の硝
酸溶解液及び再処理工場で発生する廃液からの白金族元
素及びテクネチウムの分離回収方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】使用済み核燃料には、ウランやプルトニ
ウム等の核燃料物質のほかに、白金族元素やテクネチウ
ム等の有用な核分裂生成物が相当量含まれている。現在
工業的に行われているピューレクス法と呼ばれる再処理
プロセスでは、使用済み燃料を硝酸で溶解した後、溶媒
抽出法によりウラン、プルトニウムを抽出分離して再利
用している。白金族元素やテクネチウムは他の多種な核
分裂生成物と共に抽出残液に残り、放射性廃液として処
理される。この廃液は、硝酸回収工程や蒸発濃縮工程を
経て高レベル廃液となり、最終的にはガラス固化体の形
で地層深部に貯蔵され処分される計画が進められてい
る。
【0003】上記再処理プロセスにおいて白金族元素及
びテクネチウム等の有価金属元素はいずれの工程でも分
離回収されていない。そのため、溶媒抽出工程では主と
して白金族元素のコロイド状析出物からなるクラッドと
呼ばれる固体微粒子が析出する。このようなクラッドは
水相と有機溶媒相の界面に形成され蓄積されていくた
め、ウランとプルトニウムの抽出を妨害し、分離性能や
核分裂生成物の除染性能を低下させる大きな原因となっ
ている。
【0004】また、高レベル廃液のガラス固化工程で
は、揮発しやすい放射性のルテニウム酸化物が生成され
るため、高温処理時に揮発拡散する恐れがあり、これを
解決するため、高価で複雑なルテニウム除去設備が必要
とされる。
【0005】なお、高レベル廃液中には超長半減期の強
い放射性核種である99Tc(テクネチウム)が含まれて
おり、廃液の処理にあたって、例えばガラス固化体とし
て地層処分する場合、長期にわたる環境への放射能の影
響を与える恐れがあるとされている。
【0006】一方、白金族元素は装飾品のみならず、電
子材料、電気材料として電器産業の分野や触媒として合
成化学、石油化学、自動車産業等の分野において利用さ
れている極めて重要な金属元素である。しかしながら、
白金族元素の天然鉱物資源は乏しく、その埋蔵と生産は
極端に限られた国に偏っており、このため、白金族元素
の供給体制は極めて脆弱である。特に、現在日本におけ
る白金族元素の鉱山はほとんど無く、その全てを海外か
らの輸入に頼っており、価格も極めて高く、原料供給の
確保は重要な課題となっている。
【0007】他方、使用済み核燃料中には相当量の白金
族元素が含まれており、その生成量は燃料の組成や燃焼
度にもよるが、通常の燃焼度の軽水炉使用済み燃料1t
当たりに含まれる量はパラジウム(Pd)850g、ル
テニウム(Ru)1900g、ロビジウム(Rh)32
0g程度である。もしこれらの白金族元素が全量回収さ
れ、その放射能が利用できる十分なレベルまで低減され
れば、現在日本における化学触媒利用量をパラジウムで
約36%、ルテニウムで約60%、ロビジウムでほぼ1
00%満足することができる計算となる。なお、テクネ
チウムは天然には全く産出されていない元素で、核分裂
反応によって人工的に作られた元素である。使用済み核
燃料1t当たり750g程度のテクネチウムが含まれて
いる。
【0008】使用済み燃料中の白金族元素やテクネチウ
ムは溶解工程で一部が不溶残査となるが、そのかなりの
部分は硝酸に溶解されて溶解液中に存在する。これらの
元素の溶解量は燃料の燃焼度、使用する硝酸溶液の濃
度、さらに溶解温度等の条件によるが、通常パラジウム
はほとんど全量、ルテニウムは60〜90%、テクネチ
ウムは約半分程度が溶解するとされている。なお、ロジ
ウム(Rh)の大部分は溶解されずに不溶残査に残って
いる。溶解したこれらの白金族元素やテクネチウムは、
燃料溶解液中にはU、Pu等の核燃料物質のほかに、N
p、Am、Cm等のマイナアクチノイド元素、Cs等の
アルカリ金属元素、Ba、Sr等のアルカリ土類金属元
素、Y、Nd、Ce等の希土類金属元素、Mo、Zr、
Te等の多種多様な核分裂生成物と共存している。ま
た、再処理向上で発生する高レベル放射能廃液中には、
少量のU、Pu抽出残留物及び硝酸に溶解された白金族
元素、テクネチウム及び上記核分裂生成物のほとんど全
量が含まれている。これらの溶液は複雑な組成及び多様
な化学的性質に加え、強い放射能を持っているため、そ
の中の有価元素の分離回収に関しては、まだ効果的な方
法が確立されていないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来は使用済み核燃料
の硝酸溶解液または再処理工場で発生する廃液から白金
族元素及びテクネチウムは分離回収されていなかったた
め、白金族元素及びテクネチウムが使用済み核燃料の再
処理プロセス及び廃棄物の処理処分工程を妨害する等の
問題点があった。一方、白金族元素及びテクネチウムは
工業的に極めて利用価値が高い金属元素であるが、これ
らの元素は国内で産出できず供給が困難である等の問題
点があった。従って、白金族元素及びテクネチウムを分
離回収することは、再処理プロセス性能を向上させ廃液
の放射能レベルの低減化に大きく寄与すると同時に、希
少金属原料の安定確保にも貢献する。
【0010】この発明は上記のような問題点を解消する
ためになされたもので、使用済み核燃料の硝酸溶解液ま
たは再処理工場で発生する廃液から白金族元素及びテク
ネチウムを高収率、高純度で分離回収する方法を得るこ
とを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係る白
金族元素及びテクネチウムの分離回収方法は、使用済み
核燃料の硝酸溶解液または再処理工場で発生する廃液を
アニオン交換樹脂と接触させて、パラジウム、ルテニウ
ム等の白金族元素及びテクネチウムを選択的に吸着させ
た後のアニオン交換樹脂を希硝酸溶液、チオ尿素含有水
溶液、濃硝酸溶液に順次接触させてアニオン交換樹脂に
吸着したルテニウム、パラジウム、テクネチウムをそれ
ぞれ選択的に溶離回収するものである
【0012】
【0013】請求項の発明に係る白金族元素及びテク
ネチウムの分離回収方法は、アニオン交換樹脂が、高分
子ポリマを基体とし、窒素原子を含有する複素環基を官
能基とするアニオン交換樹脂もしくは1〜2級アミン基
を官能基とする弱塩基性アニオン交換樹脂であるもので
ある。
【0014】本発明者等は、まず、使用済み核燃料の硝
酸溶解液または再処理工場で発生する廃液(これらの溶
液を以下「処理液」という)から白金族元素及びテクネ
チウムを分離回収するために、硝酸水溶液における白金
族元素、テクネチウム及び上記処理液中に含まれる他の
各種金属元素に対する種々のアニオン交換樹脂の吸着特
性を調べてきた。特に白金族元素及びテクネチウムの吸
着特性と交換体の官能基構造との関連性に着目し鋭意研
究を重ねた結果、これらの元素に対して強い吸着力及び
優れた選択性を示す交換基を持つ数種のアニオン交換樹
脂を見出した。これらの樹脂は高分子ポリマーを基体と
し、窒素原子を含有する複素環基を官能基とするアニオ
ン交換樹脂、もしくは1〜2級アミン基を官能基とする
弱塩基性アニオン交換樹脂である。この様な官能基とし
て、具体的には次に示す構造を有するものが挙げられ
る。
【0015】
【化1】
【0016】上記官能基を有するアニオン交換樹脂は、
交換基に強い配位結合力を有する窒素原子を含んでいる
ため、白金族元素特にパラジウムイオンに対して極めて
強い吸着力及び優れた選択性を呈している。
【0017】これらのアニオン交換樹脂への白金族元素
及びテクネチウムの吸着特性について測定した結果の一
例を示す。図1は本発明のジピロリル基アニオン交換樹
脂への吸着分配係数の硝酸濃度依存性を示すグラフ図で
ある。この図において、縦軸は吸着分配係数、横軸は硝
酸濃度をモル/リットル(mol/l)示し、実線はパ
ラジウム(Pd)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム
(Ru)、ロジウム(Rh)のジピロリル基アニオン交
換樹脂への吸着分配係数の測定値であり、破線は通常工
業的に最も多く使用されている市販4級アンモニウム基
アニオン交換樹脂へのパラジウム(Pd)の吸着分配係
数の測定値である。吸着分配係数は、吸着平衡時におけ
る樹脂中の金属濃度と溶液中の金属濃度との比として定
義される。この図より、パラジウムに対する吸着分配係
数は、本発明のジピロリル基アニオン交換樹脂では、硝
酸濃度約10-2Mの薄い酸性側から約12Mの濃硝酸ま
での広い領域において、4級アンモニウム基アニオン交
換樹脂の数十〜数百倍程度の大きい値を示す。また、テ
クネチウムに対しても、希硝酸溶液において極めて強い
吸着性を示すことがわかる。さらに、ルテニウムは、硝
酸濃度0.5M〜4Mの範囲で比較的強い吸着性を示
す。
【0018】なお、ジピリジン基、1級アミン基、2級
アミン基を交換基とするアニオン交換樹脂をそれぞれ用
いて測定したところ図1とほとんど同様な結果が得られ
た。一方、これらの樹脂は白金族元素及びテクネチウム
以外の元素、とりわけ上記処理液中に共存する他の金属
元素に対しては通常の市販4級アンモニウム基アニオン
交換樹脂とほぼ同等の吸着性を示すことが確認された。
具体的には、U、Pu、Npは硝酸濃度が2M以上の場
合ではニトラトアニオン錯体を形成するためアニオン交
換樹脂によく吸着されるが、硝酸濃度2M、特に1.5
M以下ではアニオン錯体が形成されないためまったく吸
着されない。また、Cs等のアルカリ金属元素、Ba、
Sr等のアルカリ土類金属元素、Nd、Ce等の希土類
金属元素、Am、Cm等のマイナアクチノイド元素、M
o、Zr等の元素は、硝酸溶液中ではアニオンニトラト
錯体を形成せず、いずれもカチオンの形で存在するた
め、アニオン交換樹脂にはまったく吸着されない。従っ
て、上記樹脂を用いれば、処理液中の白金族元素及びテ
クネチウムのみを選択的に吸着させて、溶液中に共存す
る他の元素から分離することができる。
【0019】また、上記アニオン交換樹脂に吸着された
白金族元素及びテクネチウムをそれぞれ分離回収するた
め、本発明者等はさらに鋭意な検討を重ねた結果、次の
(1)〜(3)に記載する方法を見出した。すなわち、
【0020】(1)処理液中からパラジウム、ルテニウ
ム等の白金族元素及びテクネチウムを吸着させた後のイ
オン交換樹脂を、次いで希硝酸溶液と接触させイオン交
換樹脂に吸着したルテニウムのみを選択的に溶離回収す
る。 (2)上記ルテニウムを溶離させた後のイオン交換樹脂
を、次いでチオ尿素(SC(NH2 2 )含有水溶液と
接触させイオン交換樹脂に吸着したパラジウムのみを選
択的に溶離回収する。 (3)上記パラジウムを溶離させた後のイオン交換樹脂
を、次いで濃硝酸溶液と接触させイオン交換樹脂に吸着
したテクネチウムを選択的に溶離回収する。以下、本発
明を溶液調整工程、吸着工程、溶離回収工程に分けてさ
らに詳細に説明する。
【0021】溶液調整工程 本発明では、まず処理液中の硝酸濃度を0.01〜2規
定の範囲、好ましくは0.1〜1.5規定の範囲に調整
しておく。これらの溶液中の硝酸濃度が0.01規定以
下では溶液中の白金族元素をはじめ多種の金属元素のイ
オンが加水分解反応により沈澱し、次の吸着工程でイオ
ン交換体への吸着性が低下してしまう。
【0022】一方、溶液中の硝酸濃度が2規定以上とな
ると、溶液中に多量なNO3 -イオンが存在し、溶液特に
使用済み燃料の溶解液中に共存するU4+、UO2 2+、P
4+、Np4+等の金属イオンがNO3 -とアニオン錯体を
形成する。これらのアニオン錯体はアニオン交換体に強
い吸着性を呈するため、白金族元素及びテクネチウムと
の分離が困難になる。なお、溶液中の硝酸濃度の調整は
硝酸または純水を添加することによって容易に行われ
る。場合によっては、公知の化学脱硝法や電解脱硝法に
よって行うこともできる。
【0023】吸着工程 溶液調整工程で得られた溶液を上記アニオン交換樹脂と
接触させることにより、溶液中のパラジウム、ルテニウ
ム、テクネチウムのみが樹脂に吸着されて溶液相から樹
脂相に移行し溶液中の他の元素から分離される。なお、
ルテニウムは主にニトロシル・ニトラトのアニオン錯
体、テクネチウムはTcO4 -アニオンの形で吸着され
る。一方、パラジウムの場合、溶液中では主としてPd
2+の形で存在するが、上記樹脂の官能基に強い配位結合
力を有する窒素原子を含んでいるため、パラジウムイオ
ンと官能基中のN原子が配位結合によって安定な錯体を
形成することによってパラジウムが強く吸着される。
【0024】吸着操作は公知のカラム式及びバッチ式が
好ましく利用される。すなわち、カラム式では、イオン
交換樹脂をカラムに詰めて処理液を通液し、溶液中のパ
ラジウム、ルテニウム、テクネチウムを樹脂に吸着させ
る。バッチ式では、容器に処理液及びイオン交換樹脂を
入れて撹拌又は振とうし、溶液中のパラジウム、ルテニ
ウム、テクネチウムを樹脂に吸着させる。使用するイオ
ン交換樹脂の形状は特に限定するものではなく、通常工
業的によく利用される粒径数十〜数百ミクロン程度のマ
クロポア型、ゲル型又は担体担持型の球状樹脂粒が好ま
しく用いられる。また、吸着温度も特に限定することな
く、通常工業的に容易に実現する室温から80℃程度の
範囲でよい。なお、温度を上げることによって吸着速度
をある程度促進することができる。
【0025】溶離回収工程 上記吸着工程を経てアニオン交換樹脂に吸着した白金族
元素及びテクネチウムを、次の(a)〜(c)に記載す
る溶離工程によりそれぞれ分離回収し、それと同時に樹
脂を再生して再利用に供することができる。すなわち、 (a)ルテニウム溶離工程 図1に示したように、硝酸
濃度0.05M以下ではルテニウムの分配係数は急激に
低下し、アニオン交換樹脂にほとんど吸着されなくな
る。従って、上記吸着工程を経たイオン交換樹脂を、次
いで希硝酸溶液と接触させることによって、樹脂に吸着
したルテニウムのみを選択的に溶離することができる。
尚、溶離液として用いる硝酸濃度を0.001M〜0.
05Mの範囲にすることが好ましい。硝酸濃度0.05
M以上では、ルテニウムが樹脂に吸着されるため完全に
溶離されない。一方、硝酸濃度0.001M以下では、
ルテニウムの一部が加水分解により水酸化物ないし酸化
物沈澱になって樹脂粒子の表面や細孔に固着して溶出さ
れない恐れがある。
【0026】(b)パラジウム溶離工程 図1に示した
ように、パラジウムは12M以下の広い硝酸濃度領域に
おいて強い吸着性を呈し、この硝酸濃度範囲ではパラジ
ウムの溶離が望めない。一方、12M以上の濃硝酸濃度
になると吸着が弱くなり、12M以上の濃硝酸によって
溶離される可能性がある。しかし、濃厚硝酸を溶離液と
する場合、テクネチウムも溶離されるため(図1参
照)、両者の分離が困難になる。パラジウムを選択的に
溶離回収するために、本発明者等は種々の溶離剤及び溶
離条件を鋭意検討し、その結果、チオ尿素(SC(NH
2 2 )はパラジウムの極めて優れた溶離剤であること
を見出した。この試薬は窒素原子の配位結合を通してパ
ラジウムイオンと強い錯形成能力を有し、PdXn
2+(X=SC(NH2 2 n=1〜4)といった安定
なカチオン錯体を形成する。このため、アニオン交換樹
脂に吸着されたパラジウムはチオ尿素との配位子置換反
応によって樹脂から溶離される。チオ尿素試薬は水溶性
であり、これを水または硝酸酸性水溶液に溶かして0.
1〜数Mチオ尿素溶液として好ましく用いられる。尚
溶離液としてのチオ尿素の試薬濃度は特に限定するもの
ではない。一方、溶離剤の使用量は当然のことながらパ
ラジウムの吸着量に応じる必要があり、本発明者等の検
討結果によればパラジウム吸着量の2倍モル量以上、好
ましくは4倍モル量以上使用すれば吸着したパラジウム
を選択的に完全に溶離することができる。
【0027】(c)テクネチウム溶離工程 上記パラジ
ウムを溶離させた後のイオン交換樹脂を、次いで濃硝酸
溶液と接触させイオン交換樹脂に吸着したテクネチウム
を溶離回収する。図1に示したように、テクネチウムは
希硝酸溶液においては樹脂に強く吸着するが、硝酸濃度
の増大とともに吸着は急激に減少し、約9M以上になる
とほとんど吸着されなくなる。本発明者等の検討結果に
よれば、9M〜14M程度の濃硝酸溶液を溶離液として
用いた場合、樹脂に吸着されたテクネチウムを全量回収
することができる。なお、テクネチウムの溶離完了と共
に樹脂がNO3 -を吸着した型となり、すなわち、樹脂が
再生されて次の吸着工程に供することができる。
【0028】なお、上記(a)〜(c)の溶離操作は吸
着工程で記載したカラム式及びバッチ式と同様な方法で
行われ、樹脂をそれぞれの溶離剤溶液と接触させること
により、樹脂に吸着されたルテニウム、パラジウム、テ
クネチウム各金属イオンが順次それぞれ溶出され樹脂相
から溶液相に移行して分離回収される。溶離操作の温度
も吸着工程と同様に工業的に容易に実現する室温〜80
℃程度でよい。
【0029】
【作用】請求項1の発明における白金族元素及びテクネ
チウムの分離回収方法は、使用済み核燃料の硝酸溶解液
または再処理工場で発生する廃液をアニオン交換樹脂と
接触させ、パラジウム、ルテニウム及びテクネチウムを
吸着させた後のイオン交換樹脂を希硝酸溶液、チオ尿素
含有水溶液、濃硝酸溶液に順次接触させると、これらの
溶液はそれぞれルテニウム、パラジウム、テクネチウム
に対する溶離液であるため、ルテニウム、パラジウム、
テクネチウムがそれぞれ選択的に溶離回収される
【0030】
【0031】請求項の発明における白金族元素及びテ
クネチウムの分離回収方法は、アニオン交換樹脂が、高
分子ポリマを基体とし、窒素原子を含有する複素環基を
官能基とするアニオン交換樹脂もしくは1〜2級アミン
基を官能基とする弱塩基性アニオン交換樹脂であり、交
換基に強い配位結合力を有する窒素原子を含んでいるた
め、白金族元素特にパラジウムイオンに対して極めて強
い吸着力及び優れた選択性を有する。
【0032】
【実施例】
実施例1.吸着工程及び洗浄工程:内径1cm、長さ2
0cmのガラスカラムの中に交換容量3.4meq/g
のジピロリル基アニオン交換樹脂を15cm充填し(樹
脂重量約6g)、カラム全体を60℃の一定温度に保温
した。カラムの上端から、Pd 504.7mg/l、
Ru 503.8mg/l、Rh 251.7mg/
l、Tc 517.1mg/l、Cs 998.2mg
/l、Sr 1022.4mg/l、Y 501.3m
g/l、Nd 1017.7mg/l、Mo492.3
mg/l、Zr 503.6mg/l、硝酸濃度 1m
ol/lといった組成の模擬使用済み核燃料再処理廃液
50mlを5ml/minの流速で通液した後、続いて
濃度1Mの硝酸水溶液50mlを流して交換体及びカラ
ムの洗浄を行った。カラムの下端から流出した溶液をフ
ラクションコレクタにより10mlごとに分取した。
【0033】ルテニウム溶離工程:次いで、0.05M
の希硝酸溶液50mlを上記と同様な操作で通液し、流
出液を上記と同様な操作で採取した。 パラジウム溶離工程:次いで、溶離液として0.05M
の希硝酸溶液の代わりに0.5Mチオ尿素含有の0.0
1M硝酸溶液を用いたこと以外は上記のルテニウム溶離
工程と同様な操作を行った。
【0034】テクネチウム溶離工程:次いで、溶離液と
して0.05Mの希硝酸溶液の代わりに12M硝酸溶液
を用いたこと以外は上記のルテニウム溶離工程と同様な
操作を行った。 上記各フラクション流出液中の金属濃度を高周波誘導結
合プラズマ(ICP)発光分析法により定量分析した。
図2はこの定量分析の結果を示すグラフ図であり、図に
おいて縦軸は流出液中の濃度(mg/l)を、横軸は上
記工程における流出液のフラクションNo.を示す。同
図より、本発明の分離回収目的金属であるパラジウム、
ルテニウム、テクネチウム以外の金属元素は樹脂にほと
んど吸着されずに吸着工程及びそれに続く洗浄工程の流
出液中に収集されたことがわかる。なお、パラジウム、
ルテニウム、テクネチウムの各目的金属元素は相互に分
離されてそれぞれの溶出液中に濃縮回収されていたこと
がわかる。
【0035】実施例2. 吸着工程:表1に処理液として示す組成の模擬使用済み
核燃料溶解液(硝酸濃度1.5M)200mlを容量3
00mlの共栓三角フラスコにとり、その中に交換容量
5.5meq/gの1級と2級アミン基を共に含む弱塩
基性アニオン交換樹脂5gを入れて、30℃に調整した
恒温水槽中にセットして5時間振とうさせた。その後、
ガラスフィルタによりこの樹脂を吸着残液から分離し
た。
【0036】ルテニウム溶離工程:次いで、0.05M
の希硝酸溶液50mlを容量100mlの共栓三角フラ
スコにとり、その中に上記吸着残液から分離した樹脂を
入れて、30℃に調節した恒温水槽中にセットして30
分間振とうさせた。その後、ガラスフィルタによりこの
樹脂を溶離液から分離した。
【0037】パラジウム溶離工程:次いで、溶離液とし
て0.05Mの希硝酸溶液の代わりに0.2Mチオ尿素
含有の0.1M硝酸溶液を用いたこと以外は上記のルテ
ニウム溶離工程と同様な操作を行った。
【0038】テクネチウム溶離工程:次いで、溶離液と
して0.05Mの希硝酸溶液の代わりに10M硝酸溶液
を用いたこと以外は上記のルテニウム溶離工程と同様な
操作を行った。 上記各溶液中の金属濃度を高周波誘導結合プラズマ(I
CP)発光分析法により定量分析した。その結果を表1
に示す。
【0039】
【表1】
【0040】表中の結果から求めた本発明の分離回収目
的金属であるパラジウム、ルテニウム、テクネチウムの
回収率はそれぞれ95.3%、86.8%、89.5%
であった。なお、パラジウム、ルテニウム、テクネチウ
ム以外の金属元素は樹脂にほとんど吸着されずに、吸着
残液中に残されたことがわかる。また、各目的元素の溶
出液中には他の金属元素はほとんど検出されず、その合
計濃度はいずれも5mg/l以下であった。
【0041】
【0042】
【発明の効果】以上のように、請求項1の発明によれ
ば、使用済み核燃料の硝酸溶解液または再処理工場で発
生する廃液をアニオン交換樹脂と接触させ、パラジウ
ム、ルテニウム及びテクネチウムを吸着させた後のアニ
オン交換樹脂を希硝酸溶液、チオ尿素含有水溶液、濃硝
酸溶液に順次接触させるように構成したので、ルテニウ
ム、パラジウム、テクネチウムをそれぞれ選択的に溶離
回収できる効果がある。従って、溶媒抽出工程における
クラッドの発生が防止でき、再処理プロセス性能の向上
が図れる効果がある。また、再処理廃液の放射能レベル
が低減化され、処理処分上の安全性、経済性を高める効
果がある。また、将来における希少金属原料の安定確保
に大いに寄与できる効果がある。
【0043】
【0044】請求項の発明によれば、アニオン交換樹
脂が高分子ポリマを基体とし窒素原子を含有する複素環
基を官能基とするアニオン交換樹脂もしくは1〜2級ア
ミン基を官能基とする弱塩基性アニオン交換樹脂である
ように構成したので、白金族元素特にパラジウムイオン
に対して極めて強い吸着力及び優れた選択性を有する効
果がある。
【0045】本発明の方法は、比較的簡単な装置と容易
な操作で行われる信頼性の高いイオン交換プロセスであ
り、工業的に実施することは経済的かつ合理的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のジピロリル基アニオン交換樹脂への
吸着分配係数の硝酸濃度依存性を示すグラフ図である。
【図2】この発明の実施例2による各工程におけるフラ
クション流出液中の金属濃度を示すグラフ図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G21F 9/06 ZAB G21F 9/06 ZAB (72)発明者 高島 洋一 東京都品川区荏原7−18−19 (72)発明者 武田 邦彦 横浜市南区中里2−12−5 (72)発明者 鈴木 一弘 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社 原子力研究所内 (72)発明者 難波 隆司 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社 原子力研究所内 (72)発明者 麻生 雅美 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社 原子力研究所内 (72)発明者 堀 保惠 大阪市北区中之島3丁目3番22号 関西 電力株式会社内 (72)発明者 大江 忍 大阪市北区中之島3丁目3番22号 関西 電力株式会社内 (72)発明者 前川 晃 大阪市北区中之島3丁目3番22号 関西 電力株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−66289(JP,A) 特開 平3−158426(JP,A) 特開 昭63−153229(JP,A) 特開 昭63−297222(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22B 11/00 C01G 55/00 C01G 57/00 C22B 60/00 G21F 9/06 581 G21F 9/06 ZAB

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 使用済み核燃料の硝酸溶解液または再処
    理工場で発生する廃液をアニオン交換樹脂と接触させ、
    溶液中のパラジウム、ルテニウム及びテクネチウムを選
    択的に吸着させた後、前記アニオン交換樹脂を希硝酸溶
    液と接触させ前記アニオン交換樹脂に吸着したルテニウ
    ムを選択的に溶離回収し、次いで前記アニオン交換樹脂
    をチオ尿素含有水溶液と接触させ前記アニオン交換樹脂
    に吸着したパラジウムを選択的に溶離回収し、次いで前
    記アニオン交換樹脂を濃硝酸溶液と接触させ前記アニオ
    ン交換樹脂に吸着したテクネチウムを選択的に溶離回収
    することを特徴とする白金族元素及びテクネチウムの分
    離回収方法。
  2. 【請求項2】 前記アニオン交換樹脂は高分子ポリマを
    基体とし、窒素原子を含有する複素環基を官能基とする
    アニオン交換樹脂もしくは1〜2級アミン基を官能基と
    する弱塩基性アニオン交換樹脂であることを特徴とする
    請求項1記載の白金族元素及びテクネチウムの分離回収
    方法。
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