JP3365312B2 - 埋設鋼管の塗膜損傷位置検出方法 - Google Patents

埋設鋼管の塗膜損傷位置検出方法

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JP3365312B2
JP3365312B2 JP18411498A JP18411498A JP3365312B2 JP 3365312 B2 JP3365312 B2 JP 3365312B2 JP 18411498 A JP18411498 A JP 18411498A JP 18411498 A JP18411498 A JP 18411498A JP 3365312 B2 JP3365312 B2 JP 3365312B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地中に埋設された
塗覆装鋼管の塗膜損傷位置を地表より非接触で検出する
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、塗覆装鋼管の塗膜損傷を地表面よ
り非接触で検知する方法として、塗覆装鋼管と地面との
間に電圧を印加し、鋼管中に電流を流し、塗膜の損傷か
ら流れ出た電流により地表面に生成される電位分布を計
測することにより欠陥位置を計測する電位法と呼ばれる
方法がある。
【0003】一般に電位法では、鋼管に流す電流として
低周波の正弦波を用い、地表面に設置した2点の電極間
の電位差を検出する。地表面での電極位置を埋設鋼管に
沿って移動することにより電位差の変化を計測し、損傷
位置の特定を行う。しかし実際の計測においては、損傷
から流れ出る電流は微小であり検出される電位差信号も
微弱なものとなる。さらに、地表面と電極との接地抵抗
の変動による信号の変動や、地中の迷走電流や、商用電
源による誘導電流等がノイズ源となりSN比が悪化する
ため、塗覆装の損傷特に微少な損傷を精度よく、確実に
検出することは困難であった。
【0004】このため発明者らは、先に出願した特願平
9−57102号の明細書において、塗膜損傷検知にお
いて鋼管に供給、印加する信号として擬似ランダム信号
を使用し、地表面の電極で検出した電位差信号に対して
供給、印加した擬似ランダム信号と同一パターンの参照
信号との相関処理を行い、相関処理の結果のピーク値を
検出電位差信号とすることでSN比向上を図る方式を提
案している。
【0005】前記特許出願に係る、鋼管に供給、印加す
る信号として擬似ランダム信号を使用し、地表面の電極
で検出した電位差信号に対して供給、印加した擬似ラン
ダム信号と同一パターンの参照信号との相関処理を行
い、相関処理の結果のピーク値を検出電位差信号とする
方式では、地表面に設置した電極により検出した信号を
パーソナルコンピュータ等の信号処理装置によりアナロ
グ・デジタル変換(AD変換)して取込み、信号処理装
置により検出信号データと参照信号データとの相関処理
を行う方法が述べられている。
【0006】ここで相関処理は検出信号をf(t)、参
照信号をg(t)とすると、相関処理結果Φ(τ)は、
次式(1)であらわされる。
【0007】
【数1】
【0008】ここで、Tは擬似ランダム信号の周期であ
る。そして式(1)で、f(t)及びg(t)が同一の
擬似ランダム信号同士の場合、相関処理結果は擬似ラン
ダム信号の自己相関関数となり、周期的なピークを示
し、その周期は擬似ランダム信号の周期Tに等しい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このような前記特許出
願に係る擬似ランダム信号を用い、信号処理として相関
処理を用いる方式は、従来の電位差法に比較してきわめ
て精度良く塗膜損傷位置を検出できる。しかし、この方
式では、相関処理結果Φ(τ)のピーク値を検知電位差
信号とするため相関処理演算において、(1)式のg
(t−τ)におけるτを擬似ランダム信号の一周期分に
わたって変化させ計算する必要があるため、信号処理装
置による検知信号の取込み、演算処理を順次行った場合
には、擬似ランダム信号の周期以上の処理時間が必要と
なり、計測の応答性が悪化するという問題がある。ま
た、前記方式では相関処理結果Φ(τ)のピーク値を検
知電位差信号とし、その変化をプロットし、検知電位差
信号の位相の変化点であるゼロクロス点を塗膜損傷位置
としているが、迷走電流等の外部からのノイズの影響に
よる変動によりゼロクロス点のずれが発生した場合、位
相の変化点の正確な検出が困難となり塗膜損傷検出位置
の誤差を生じるという問題がある。
【0010】また、前記方式では外乱ノイズに加え、地
表電位測定時の電極と地表面との接触抵抗の変動による
検出電位の変動により相関処理後のピーク値の変動、ノ
イズの増加が発生し、SN比が劣化し、電位差信号の変
化を正確に計測することが困難となり塗膜損傷点、特に
微小損傷点の検出性能が低下するという問題がある。本
発明は、上記問題点を解決するためになされたものであ
り、高応答性で精度よく安定した埋設鋼板の塗膜損傷位
置検出を行う方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る
埋設鋼管の塗膜損傷位置検出方法は、地中に埋設された
塗覆装鋼管と大地との間に擬似ランダム信号を交流電圧
として印加して前記塗覆装鋼管内に電流を流し、その管
軸方向に沿った地表面の一定間隔の2点間の電位差を検
出し、この検出信号と前記鋼管に印加した擬似ランダム
信号と同一のパターンの参照信号との相関処理を行い、
この相関処理結果のピーク値を前記2点間の電位差信号
とし、前記2点の位置を管軸方向に沿って移動しながら
連続的に信号の検出とその相関処理を行うことにより地
表面の電位差分布を計測し、その電位差分布の変化状況
からこの埋設鋼管の塗膜損傷位置を検出する方法におい
て、前記2点間での検出信号を一定時間間隔で順次アナ
ログ・デジタル変換し、前記鋼管に印加した擬似ランダ
ム信号の1周期分のデータ数で、時間の経過とともに新
規データに更新される検出信号のデジタルデータ配列を
記憶し、予め前記鋼管に印加した擬似ランダム信号と同
一の信号パターンを有する1周期分の参照用デジタルデ
ータ配列を用意しておき、前記アナログ・デジタル変換
と並行して、検出信号のデジタルデータ配列と前記用意
した参照用デジタルデータ配列との間で、時間の経過と
ともに更新される検出データと参照データの対応する配
列要素同士をそれぞれ乗算した積の総和を求める積和算
出処理を、検出データと参照データの配列要素の対応を
擬似ランダム信号の1周期分ずらしながら総ての対応に
ついて行い、処理結果のピーク値を検出することで検出
データと参照データの相関処理を行うものである。
【0012】本発明の請求項2に係る埋設鋼管の塗膜損
傷位置検出方法は、前記請求項1に係る方法における検
出信号のデジタルデータ配列と参照用デジタルデータ配
列を用いて相関処理を行う方法において、連続的に相関
処理を行う際に、相関結果のピーク値が予め設定した一
定値以上である場合には、以降の相関処理において、検
出データと参照データとの間の対応をずらせながら積和
算出処理を行う範囲を相関結果のピーク値が得られた検
出データと参照データの対応点を含む任意の範囲内の対
応点に限定し、この限定された対応の範囲内においての
み検出データと参照データ間の積和算出処理を行い、処
理結果のピークを検出する相関処理を検出したピーク値
に対して繰り返し、相関処理のピーク値が前記設定した
一定値未満となった場合には、以降の相関処理におい
て、検出データと参照データとの間の対応をずらせなが
ら積和算出処理を行う範囲を限定せずに、検出データと
参照データの対応を擬似ランダム信号の1周期分にわた
ってずらしながら総ての対応について行うものである。
【0013】本発明の請求項3に係る埋設鋼管の塗膜損
傷位置検出方法は、前記請求項1又は2に係る方法にお
いて、前記2点間での検出信号を一定時間間隔で順次ア
ナログ・デジタル変換し、前記鋼管に印加した擬似ラン
ダム信号の1周期分のデータ数で、時間の経過とともに
新規データに更新される検出信号のデジタルデータ配列
を記憶し、前記記憶した検出信号のデジタルデータ配列
から任意に設定された範囲の移動平均データを算出し、
前記記憶した検出信号の各データから、それぞれ対応す
る移動平均のデータを差し引くことにより得られたデー
タ配列を新たな検出データとして参照データとの間で相
関処理を行うものである。
【0014】本発明の請求項4に係る埋設鋼管の塗膜損
傷位置検出方法は、前記請求項1,2又は3に係る方法
において、検出信号のデジタルデータ配列と参照データ
との相関処理結果のピーク値を順次記憶し、この記憶し
たピーク値の一定時間内のデータの平均値を求め、この
平均値を前記2点間の検出電位差信号とするものであ
る。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を説明する前
に、本発明による埋設鋼管の塗膜損傷位置検出方法の基
礎的な作用・効果を以下に説明する。本発明の請求項1
に係る埋設鋼管の塗膜損傷位置検出方法では、地中に埋
設された塗覆装鋼管と接地極との間に、擬似ランダム信
号を交流信号として印加し鋼管内に電流を流すと、塗覆
装鋼管の塗膜に損傷があると損傷部から地中に電流が流
出する。地表面に設置した電極等により地表面の一定間
隔の2点間の電位差を計測すると、損傷近傍においては
損傷から流出する電流により生成された電位分布に起因
する電位差信号が検出される。この検出される電位差信
号は鋼管に印加した擬似ランダム信号と同一のパターン
を有する信号であり、検出信号と鋼管に印加した擬似ラ
ンダム信号と同一パターンを有する参照信号との相関処
理を行うと、相関処理の結果として使用した擬似ランダ
ム信号の自己相関関数であるパルス状の信号が得られ
る。相関処理の結果得られたパルス状の信号のピーク値
は地表面に設置された電極によって検出された電位差に
対応し、相関関数のピーク値から地表面電位差を知るこ
とが出来る。ここで、地表面の2点の位置を移動し、連
続的に信号の検出とその相関処理を行うと相関処理結果
のピーク値を電位差信号とし、電極の移動に伴う電位差
信号の変化、すなわち地表面の電位差分布を計測され、
埋設塗覆装鋼管の損傷の位置上部の地表面では損傷部か
ら流出する電流により生成される電位分布により急峻な
電位差信号の変化が計測され、この電位差信号の変化か
ら埋設塗覆装鋼管の損傷位置を特定することが可能とな
る。本発明では地表面に設置した2点間での検出電位差
信号を一定時間間隔で順次アナログ−デジタル変換する
ことにより、前記鋼管に印加した擬似ランダム信号の1
周期分の時間範囲に相当する、時間の経過とともに更新
される検出信号のデジタルデータ配列を記憶し、アナロ
グーデジタル変換による時間の経過とともに更新される
検出信号のデジタルデータ配列と、あらかじめ用意され
た鋼管に印加した擬似ランダム信号と同一の信号パター
ンを有する参照信号のデジタルデータ配列との間で、検
出データ配列と参照データ配列の対応する配列要素同士
を配列要素数分すべて乗算し、総ての乗算結果の積算を
行う処理を行うことにより検出信号と参照信号との相関
関数の1点に関する演算が行われ、検出データ配列と参
照データ配列の要素の対応を擬似ランダム信号の1周期
分ずらしながら行う事で、演算結果のデータ配列として
表される相関関数が得られ、検出信号と参照信号との相
関処理が行われる。さらに、検出データ配列と参照デー
タ配列の演算処理による相関関数の算出を繰り返し行
い、得られた相関関数データの極値を電位差計測値とし
て出力することを繰り返し連続的に行うので、検出デー
タの時間の経過による更新に伴う検出電位差信号の変化
が出力として得られる。
【0016】本発明の請求項2に係る埋設鋼管の塗膜損
傷位置検出方法では、前記、検出信号と参照信号との相
関関数を検出信号のデジタルデータ配列と参照信号のデ
ジタルデータ配列の対応要素同士の乗算とその積算の繰
り返し演算により行う方法において、時間の経過と伴に
更新される検出データ配列と参照データ配列との演算を
繰り返し行い、相関演算結果を連続的に行う際に、演算
処理の結果得られた相関関数のデータ配列の極値、すな
わち検出電位差信号の大きさ(絶対値)が、あらかじめ
設定した一定値以上である場合には以降の演算処理にお
いて、相関処理結果が極値(絶対値が最大)となる検出
データ配列と参照データ配列の配列要素の対応組み合わ
せを含む一定の範囲の対応点の組み合わせについての相
関処理である、検出データ配列と参照データ配列の対応
する要素同士の配列要素数分の乗算とその積算を行うの
で、検出データ配列と参照データ配列の対応を擬似ラン
ダム信号の1周期分総て行う処理に対して演算処理量を
減少され、高速に極値を含む範囲の相関関数のデータ配
列が得られ、高い応答性で検出電位差信号の変動を計
測、出力することができる。また、検出データ配列と参
照データ配列の配列要素の組み合わせを一定の範囲に限
定して処理を繰り返した結果得られる相関関数(の一
部)のデータ配列の極値(絶対値の最大値)が、前記設
定した一定値未満となった場合すなわち、検出電位差信
号が一定値以下となった場合には、以降の演算処理にお
いては、検出データ配列と参照データ配列の対応要素間
の乗算とその積分処理を、検出データ配列と参照データ
配列の対応点を擬似ランダム信号の1周期分にわたって
ずらしながら総て行うので、検出データの位相ずれ等に
よる相関関数のデータ配列中の極値の位置ずれや、信号
の減少、変動による極値の誤判定を最小限に抑制され
る。
【0017】本発明の請求項3に係る埋設鋼管の塗膜損
傷位置検出方法では、前記、検出信号と参照信号との相
関関数を検出信号のデジタルデータ配列と参照信号のデ
ジタルデータ配列の対応要素同士の乗算とその積算の繰
り返し演算により行う方法において、時間の経過と伴に
更新される1周期分に相当する検出信号のデジタルデー
タ配列に対して、検出信号のデジタルデータ配列から予
め設定された配列要素数範囲の移動平均データを検出デ
ータ配列数だけ算出することにより、検出信号中の低周
波の変動成分に相当する移動平均処理結果のデータ配列
を得て、検出データ配列要素から対応する移動平均処理
結果のデータを差し引くことにより得られたデータ配列
を検出信号のデータ配列として参照データ配列との間で
相関演算処理を行うので、検出信号中の低周波の変動成
分が除去され、低周波の信号変動に起因する相関関数の
変動を除去、抑制した相関関数のデータ配列が得られ、
安定した検出電位差信号が得られる。
【0018】本発明の請求項4に係る埋設鋼板の塗膜損
傷位置検出方法では、前記、検出信号と参照信号との相
関関数を検出信号のデジタルデータ配列と参照信号のデ
ジタルデータ配列の対応要素同士の乗算とその積算の繰
り返し演算により行う方法において、繰り返し演算の結
果得られる検出信号と参照信号の相関関数のデータ配列
から、各相関データ配列中の極値のデータすなわち検出
電位信号の大きさを順次記憶し、記憶した極値(電位差
強度)のあらかじめ定めた一定時間中(一定要素数)の
データの平均値を演算し、検出電位差信号として出力す
るので、検出信号のオフセット変動等による相関関数デ
ータ配列の変動の影響を抑制、安定した電位差信号が出
力される。
【0019】以下本発明の各実施の形態における相関処
理方法を説明する。 実施形態1 図2は本発明の各実施形態に係る埋設鋼管の塗膜損傷位
置検出試験装置の構成を示す図であり、図の1は擬似ラ
ンダム信号発生器、2は塗覆装鋼管、3はターミナル、
4は接地極、5は電極、6は相関演算処理装置、7は損
傷、を示す。図1は本発明の実施形態1に係る相関処理
方法を示す説明図であり、図2の相関演算処理装置6の
構成を示している。図1において、10はAD変換装
置、11、12シフトレジスタ、13は乗算器、14は
積算器、15は信号判別装置、16はシフト制御装置を
示す。図3は図1、2の各信号を説明するための波形図
であり、図3を参照して、図1、2の動作を説明する。
【0020】図2の試験装置では、埋設塗覆装鋼管2か
らのターミナル3と接地極4との間に、擬似ランダム信
号発生器1により発生させた擬似ランダム信号を印加
し、埋設塗覆装鋼管中に電流を流入させる。本実施形態
では擬似ランダム信号発生器として、フィードバックル
ープを有するシフトレジスタにより構成されるM系列信
号発生器を使用し、440Hzのシフトクロック周波数、
符号長127のM系列信号を発生し、鋼管に印可した。
この時、M系列信号の周期は1/440×127(秒)
となる。なお、ここで使用するM系列信号の1符号の周
波数、1周期の符号長は任意の値とすることが可能であ
り、周波数、符号長を変更することにより擬似ランダム
信号処理によるSN改善効果を高くすることも可能であ
るまた、実際の信号の鋼管への印加にあたっては鋼管中
への流入電流を調整するため電力アンプを使用すること
も可能である。地表面に一定間隔で設置した2つの電極
5により、塗覆装鋼管の損傷7から地中に流出する電流
により生成される電位分布による地表面の電位差を検出
する。本実施形態では2つの電極を埋設塗覆装鋼管の管
軸方向に配置し、各電極間の間隔を1mとした。検出さ
れた地表面電位差信号は相関演算処理装置6に入力され
る。
【0021】図1の相関演算処理装置6内では、AD変
換装置10により電極により検出された電位差信号(図
3の(a)を参照)を一定周期でアナログ−デジタル変
換し(図3の(b)を参照)、デジタルデータをシフト
レジスタ11に入力する。シフトレジスタ11はAD変
換装置10の変換周期に同期して動作し、AD変換され
た最新のデジタルデータを入力し、各構成要素を順次シ
フトし、最も古いデータを捨てていくことにより、シフ
トレジスタ11中に常に擬似ランダム信号の1周期に等
しい個数のデータを蓄積する。本実施形態では、1符号
の周波数440HzのM系列信号に対し、AD変換の変
換クロック周波数を4400Hzとし、M系列信号を構
成する1パルスに対し10点のAD変換を行い、デジタ
ルデータを出力した。また、シフトレジスタは1270
段に構成し、AD変換周波数に同期して駆動し、擬似ラ
ンダム信号の1周期分のデータを記憶、蓄積した。シフ
トレジスタ12はシフトレジスタ11と同じ段数で構成
され、さらに、シフトレジスタはループ状に構成されて
いる。シフトレジスタ中にはあらかじめ、鋼管に印加し
た擬似ランダム信号1周期分のデジタル化されたデータ
(図3の(c)を参照)が入力されている。シフトレジ
スタ11とシフトレジスタ12の各構成の内容は、乗算
器群13によりそれぞれ個別に乗算され、シフトレジス
タの構成要素数分の乗算結果が得られる。各乗算結果は
積算器14に入力され、ここですべての乗算結果の積算
を行いその積算結果を信号判別装置15に入力する。
【0022】ここで、乗算器群13による乗算と積算器
14による1回目の積算処理が終わった時点で、シフト
制御装置16によりシフトレジスタ12の内容が1デー
タ分だけシフトされ、シフトレジスタ11とシフトレジ
スタ12の対応が1つずらさる。シフトレジスタ12の
1回目のシフトが終了した時点で、2回目の乗算及び積
算処理が行われ、演算処理結果が信号判別装置15に入
力される。このようにして、シフトレジスタ12内の参
照用デジタルデータを1データ分ずつシフトさせ、検出
デジタルデータと参照用デジタルデータの対応を擬似ラ
ンダム信号の1周期分ずらせながら、すべての対応につ
いての積和算出処理を行う(図3の(e),(f)を参
照)。信号判別装置15では、積算器からの積算結果の
入力がシフトレジスタの構成要素の個数分行われる間の
積算結果の絶対値の最大値を判別し、対応する積算結果
を検出信号として出力する。
【0023】ここで、シフトレジスタ12の動作周波数
は任意に設定可能であり、各構成要素(シフトレジス
タ、乗算器、積算器等)の動作限界での高速な信号処理
を行うことが可能となる。また、本実施形態では、相関
演算を相関演算処理装置6により行う方法を示したが、
同様の動作をコンピュータによる信号取り込み、ソフト
ウェアによる演算処理により実現することも可能であ
り、この場合には使用する擬似ランダム信号の周波数、
符号長の変更に柔軟に対応可能な相関処理実現すること
が可能である。
【0024】実施形態2 図4は本発明の実施形態2に係る相関処理方法を示す説
明図であり、図5は図4の相関処理順序を示す流れ図で
ある。なお図5のSに続く数値はステップ番号を示す。
図4には、図1の構成に信号レベル判別装置17が追加
されているが、実施形態2の基本的な構成、動作は図
1、2に示した実施形態1と同様である。図2の電極5
により検出された電位差信号と参照信号との相関処理を
行い(図5のS1を参照)、相関処理結果のデジタルデ
ータ配列を得て、相関データ配列中の絶対値の最大値を
判別し(図5のS2を参照)、電位差検出信号として信
号判別装置15より出力する。
【0025】信号判別装置15の出力する電位差検出信
号は、信号レベル判定装置17に入力される。信号レベ
ル判別装置17は、入力された電位差信号レベルが予め
設定された一定値以上であるか否かを判別する(図5の
S3を参照)。そして入力された電位差信号レベルが前
記一定値(閾値)以上でない場合には、図5のS1に戻
り、実施形態1の場合と同様の相関処理を行う。そして
入力された電位差信号レベルが前記一定値(閾値)以上
の場合には、下記のようにシフト制御装置16及び信号
判別装置15の動作を制御する(図5のS4を参照)。
即ち実施形態1の場合には、一定周期でシフトレジスタ
12の内容を順次シフトさせながら、シフト毎に積和算
出処理を行うが、本実施形態2では、電位差信号レベル
が一定値以上の場合、その相関処理結果を得た演算処理
において、まず電位差信号の極値が得られたシフトレジ
スタ12のシフト量分から一定数差し引いたシフト量ま
でシフトレジスタ12をシフトさせ、その後、乗算、及
び積算処理を開始する。そして、電位差信号の極値が得
られたシフト量に一定数加えたシフト量まで順次シフト
させる。
【0026】この時、信号判別装置15では、(極値が
得られたシフト量±一定数)の範囲でシフトレジスタ1
2を順次シフトさせ、得られる乗算及び積算処理の結果
中の極値(絶対値の最大値)を示す積算結果を出力し、
その出力結果に応じて信号レベル判定装置17では、シ
フト制御装置16及び信号判別装置15を制御する。ま
た、シフト制御装置16では、乗算、積算処理の繰り返
しが終了した時点で、(データ一周期分のシフト量−
(極値が得られたシフト量+一定数))のシフトを行い
シフトレジスタ12内のデータ配列を初期状態に戻す動
作を行っている。いまシフトレジスタの段数が1270
の場合に、シフトレジスタ12のシフトを1270回行
って得られる1270個の(1周期の)相関処理結果の
データ中極値が得られたのがシフトレジスタ12を25
0シフトさせた点とすると、次の乗算、積算演算はシフ
トレジスタ12を200シフトさせた点より開始し、3
00シフトさせるまで行い、シフト量300での演算が
終了した時点で、シフトレジスタ12を970シフトさ
せ、データ配列を演算開始時の状態に戻す。上記乗算、
積算の繰り返し処理を行っている間にシフトレジスタ1
1の内容がAD変換のクロック周波数に従って更新(シ
フト)された場合、相関結果の極値が得られる点はずれ
るが、前述のように一定範囲内での処理を行うようにす
れば範囲内で極値を得ることが可能となる。また、本実
施形態もコンピュータによる信号取り込み、ソフトウェ
アによる演算、信号処理により実現することが可能であ
る。
【0027】実施形態3 図6は本発明の実施形態3に係る相関処理方法を示す説
明図であり、図6には図4の構成に、データ記憶用レジ
スタ18及び演算器19が追加されている。本実施形態
3では、AD変換装置10により電極により検出された
電位差信号を一定周期でアナログ−デジタル変換、シフ
トレジスタ11に入力されたデータからあらかじめ決め
られた個数(この例では4個)のデータを演算器19に
入力する。演算器19では入力されたデータの平均を行
い、入力データの内のあらかじめ決められたデータから
平均値を減算したデータを出力しデータ記憶用レジスタ
18の対応するレジスタに入力する。図6の例では、図
の最上段に示される演算器19は、シフトレジスタ11
からf(0) 〜f(3) の4個のデータを入力し、この平均
値fm0を求め、データf(0)からfm0を減算したデータ
f′(0) をデータ記憶用レジスタ18の初段に入力す
る。また次の段に示される演算器19は、シフトレジス
タ11からf(1) 〜f(4) の4個のデータを入力し、こ
の平均値fm1を求め、データf(1) からfm1を減算した
データf′(1) をデータ記憶用レジスタ18の2段目
(f′(0) の隣)に入力する。
【0028】これら演算器群19による処理は、シフト
レジスタ11のレジスタ数分行われ、この結果、データ
記憶用レジスタ18にはシフトレジスタ11中の電位差
信号から電位差信号の移動平均を差し引いた信号、すな
わち電位差信号の低周波の変動分を差し引いたデータが
記録される。データ記憶用レジスタ18の内容は、シフ
トレジスタ11の内容が、AD変換に伴い更新されるの
に伴い更新される。本実施形態では、データ記憶用レジ
スタ18の内容を電位差信号として、相関演算を行う。
また、本実施形態も、コンピュータによる信号取り込
み、ソフトウェアによる演算、信号処理により実現する
ことが可能である。
【0029】実施形態4 図7は本発明の実施形態4に係る相関処理方法を示す説
明図であり、図7には図6の構成に平均演算器20が追
加されている。本実施形態における各構成要素の動作
は、図1、4、6に示した実施形態と同様であり、信号
判別装置15から検出電位差信号と参照信号との相関処
理波形(データ)の極値となる(絶対値が最大となる)
点のデータ、すなわち電位差検出信号を出力する。平均
演算器20は信号判別装置からの出力データを入力し、
入力された信号(データ)のあらかじめ定められた時間
間隔内(個数)の平均値を算出し、出力する。また、本
実施形態もコンピュータによる信号取り込み、ソフトウ
ェアによる演算、信号処理により実現することが可能で
ある。
【0030】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、地中に埋
設された塗覆装鋼管と大地との間に擬似ランダム信号を
交流電圧として印加して前記塗覆装鋼管内に電流を流
し、その管軸方向に沿った地表面の一定間隔の2点間の
電位差を検出し、この検出信号をA・D変換して得られ
る検出デジタルデータ配列を順次記憶し、これと並列し
て、検出デジタルデータ配列と予め用意された参照用デ
ジタル配列との間で配列要素の対応を擬似ランダム信号
の1周期分ずらせながら総ての対応位置における両デー
タ間の積和算出を行う相関処理を高速で行うようにした
ので、地表面に設置した2点の位置を埋設鋼管管軸方向
に走査し、2点間の電位差の変化を計測する信号検出及
び信号処理の応答性を高くし、従来よりもより高速な走
査、計測を実施することが可能となる。
【0031】また本発明によれば、埋設鋼管の塗膜損傷
位置検出方法における検出信号のデジタルデータ配列と
参照用デジタルデータ配列を用いて相関処理を行う方法
において、連続的に相関処理を行う際に、相関結果のピ
ーク値が予め設定した一定値以上である場合には、以降
の相関処理において、検出データと参照データとの間の
対応をずらせながら積和算出処理を行う範囲を相関結果
のピーク値が得られた検出データと参照データの対応点
を含む任意の範囲内の対応点に限定し、この限定された
対応の範囲内においてのみ検出データと参照データ間の
積和算出処理を行うようにしたので、前記対応の範囲を
限定せずに擬似ランダム信号の1周期分ずらせる場合に
比較して、相関処理時間が短縮され、さらに応答性の良
い計測結果が得られる。
【0032】また本発明によれば、前記埋設鋼管の塗膜
損傷位置検出方法において、A・D変換後順次記憶した
検出信号のデジタルデータ配列から各データ毎に任意に
設定された範囲の移動平均データを算出し、前記記憶し
た検出信号の各データから、それぞれ対応する移動平均
のデータを差し引くことにより得られたデータ配列を新
たな検出信号として参照データとの間で相関処理を行う
ようにしたので、検出信号中の低周波の変動成分が除去
され、低周波の信号変動に起因する相関関数の変動を除
去、抑制した相関関数のデータ配列が得られ、安定した
検出電位差信号が得られる。
【0033】また本発明によれば、前記埋設鋼管の塗膜
損傷位置検出方法において、検出信号のデジタルデータ
配列と参照データとの相関処理結果のピーク値を順次記
憶し、この記憶したピーク値の一定時間内のデータの平
均値を求め、この平均値を前記2点間の検出電位差信号
とするようにしたので、検出信号のオフセット変動等に
よる相関関数データ配列の変動の影響を抑制、安定した
電位差信号が出力される。
【0034】また本発明によれば、前記検出デジタルデ
ータの移動平均化処理やピーク検出値の一定時間内の平
均化処理を組み合せて採用することにより、地表面に設
置した2点電極間の電位差信号の検出における外乱ノイ
ズ、電極と地表面との接触抵抗の変動による検出信号の
影響を除去し、安定した相関処理結果を得ることがで
き、さらに安定した塗膜損傷の検知、計測の実現が可能
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態1に係る相関処理方法を示す説明図
である。
【図2】本発明の各実施形態に係る埋設鋼管の塗膜損傷
位置検出試験装置の構成を示す図である。
【図3】図1、2の各信号を説明するための波形図であ
る。
【図4】本発明の実施形態2に係る相関処理方法を示す
説明図である。
【図5】図4の相関処理順序を示す流れ図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る相関処理方法を示す
説明図である。
【図7】本発明の実施形態4に係る相関処理方法を示す
説明図である。
【符号の説明】
1 擬似ランダム信号発生器 2 塗覆装鋼管 3 ターミナル 4 接地極 5 電極 6 相関演算処理装置 7 損傷 10 AD変換装置 11,12 シフトレジスタ 13 乗算器 14 積算器 15 信号判別装置 16 シフト制御装置 17 信号レベル判別装置 18 データ記憶用レジスタ 19 演算器 20 平均演算器
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−239267(JP,A) 特開 昭63−191049(JP,A) 特開 平2−297089(JP,A) 特開 平11−118768(JP,A) 特開 平11−160281(JP,A) 長棟章生,手塚浩一,M系列信号パル ス圧縮方式地中探査レーダ,計測自動制 御学会論文集,1994年,Vol.30,N o.10,第1151−1157頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/00 - 27/24 G01N 27/72 - 27/90 JICSTファイル(JOIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 地中に埋設された塗覆装鋼管と大地との
    間に擬似ランダム信号を交流電圧として印加して前記塗
    覆装鋼管内に電流を流し、その管軸方向に沿った地表面
    の一定間隔の2点間の電位差を検出し、この検出信号と
    前記鋼管に印加した擬似ランダム信号と同一のパターン
    の参照信号との相関処理を行い、この相関処理結果のピ
    ーク値を前記2点間の電位差信号とし、前記2点の位置
    を管軸方向に沿って移動しながら連続的に信号の検出と
    その相関処理を行うことにより地表面の電位差分布を計
    測し、その電位差分布の変化状況からこの埋設鋼管の塗
    膜損傷位置を検出する方法において、 前記2点間での検出信号を一定時間間隔で順次アナログ
    ・デジタル変換し、前記鋼管に印加した擬似ランダム信
    号の1周期分のデータ数で、時間の経過とともに新規デ
    ータに更新される検出信号のデジタルデータ配列を記憶
    し、 予め前記鋼管に印加した擬似ランダム信号と同一の信号
    パターンを有する1周期分の参照用デジタルデータ配列
    を用意しておき、前記アナログ・デジタル変換と並行し
    て、検出信号のデジタルデータ配列と前記用意した参照
    用デジタルデータ配列との間で、時間の経過とともに更
    新される検出データと参照データの対応する配列要素同
    士をそれぞれ乗算した積の総和を求める積和算出処理
    を、検出データと参照データの配列要素の対応を擬似ラ
    ンダム信号の1周期分ずらしながら総ての対応について
    行い、処理結果のピーク値を検出することで検出データ
    と参照データの相関処理を行うことを特徴とする埋設鋼
    管の塗膜損傷位置検出方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の埋設鋼管の塗膜損傷位置
    検出方法における検出信号のデジタルデータ配列と参照
    用デジタルデータ配列を用いて相関処理を行う方法にお
    いて、連続的に相関処理を行う際に、 相関結果のピーク値が予め設定した一定値以上である場
    合には、以降の相関処理において、検出データと参照デ
    ータとの間の対応をずらせながら積和算出処理を行う範
    囲を相関結果のピーク値が得られた検出データと参照デ
    ータの対応点を含む任意の範囲内の対応点に限定し、こ
    の限定された対応の範囲内においてのみ検出データと参
    照データ間の積和算出処理を行い、処理結果のピークを
    検出する相関処理を検出したピーク値に対して繰り返
    し、 相関処理のピーク値が前記設定した一定値未満となった
    場合には、以降の相関処理において、検出データと参照
    データとの間の対応をずらせながら積和算出処理を行う
    範囲を限定せずに、検出データと参照データの対応を擬
    似ランダム信号の1周期分にわたってずらしながら総て
    の対応について行うことを特徴とする埋設鋼管の塗膜損
    傷位置検出方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の埋設鋼管の塗膜損
    傷位置検出方法において、 前記2点間での検出信号を一定時間間隔で順次アナログ
    ・デジタル変換し、前記鋼管に印加した擬似ランダム信
    号の1周期分のデータ数で、時間の経過とともに新規デ
    ータに更新される検出信号のデジタルデータ配列を記憶
    し、 前記記憶した検出信号のデジタルデータ配列から各デー
    タ毎に任意に設定された範囲の移動平均データを算出
    し、 前記記憶した検出信号の各データから、それぞれ対応す
    る移動平均のデータを差し引くことにより得られたデー
    タ配列を新たな検出データとして参照データとの間で相
    関処理を行うことを特徴とする埋設鋼管の塗膜損傷位置
    検出方法。
  4. 【請求項4】 請求項1、2又は3記載の埋設鋼管の塗
    膜損傷位置検出方法において、 検出信号のデジタルデータ配列と参照データとの相関処
    理結果のピーク値を順次記憶し、この記憶したピーク値
    の一定時間内のデータの平均値を求め、この平均値を前
    記2点間の検出電位差信号とすることを特徴とする埋設
    鋼管の塗膜損傷位置検出方法。
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