JP3364309B2 - 磁気抵抗効果素子および磁気記録装置 - Google Patents

磁気抵抗効果素子および磁気記録装置

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JP3364309B2
JP3364309B2 JP03866594A JP3866594A JP3364309B2 JP 3364309 B2 JP3364309 B2 JP 3364309B2 JP 03866594 A JP03866594 A JP 03866594A JP 3866594 A JP3866594 A JP 3866594A JP 3364309 B2 JP3364309 B2 JP 3364309B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気ヘッド等として使
用される磁気抵抗効果素子、およびこの磁気抵抗効果素
子を磁気ヘッドとして用いた磁気記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、単層磁性膜の異方性磁気抵抗効果
を用いた磁気抵抗効果素子に代って、磁界による抵抗変
化が著しく大きいスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子
(Phys.Rev.B,43(1991)1297等参照)が提案されてい
る。スピンバルブ型の磁気抵抗効果素子は、厚さ 2〜 5
nm程度の非磁性金属薄膜(Cu薄膜等)によって仕切られ
た一対の強磁性層、例えば単位強磁性層の厚さが 5〜10
nm程度のNiFe合金膜やCo膜等を有し、かつ上記強磁性層
の一方にFeMn合金膜等の反強磁性層を積層することによ
り構成されている。
【0003】このような構造では、反強磁性層と接して
いる強磁性層の磁化は固定され、信号磁界により反強磁
性層と接していない強磁性層の磁化方向のみが変化す
る。その結果、上下の強磁性層間の磁化が平行な状態
と、反平行な状態とを実現することができ、スピン依存
散乱によって両状態の間で大きな抵抗変化を得ることが
できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したよ
うなスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の抵抗変化感度(%
(A/m))を増加させるためには、抵抗変化率を増加させる
ことと、その変化をできるだけ低磁場側で起こるように
することの 2点が重要である。
【0005】抵抗変化率自体を増加させる 1つの方法と
して、できるだけ中間の非磁性金属薄膜を薄くし、両強
磁性層の間を散乱を受けずに行き来する電子数を増やせ
ばいいことが知られている。しかしながら、従来のスピ
ンバルブ型磁気抵抗効果素子では、Cu等からなる中間非
磁性金属層の厚さを 2nm以下にすると、上下の強磁性層
間の交換結合が強くなり、低磁場では両強磁性層の磁化
の成す角を変化させることが困難となる。このため、抵
抗変化率自体は上昇しても、抵抗変化感度を向上させる
ことができないという問題があった。
【0006】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、中間非磁性金属層をできるだけ薄く
した上で、強磁性層間の交換結合力を小さくすることに
よって、抵抗変化感度の向上を図った磁気抵抗効果素子
を提供することを目的としており、さらにはそのような
磁気抵抗効果素子を用いることによって、再生感度の向
上を図った磁気記録装置を提供することを目的としてい
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気抵抗効果素
子は、少なくとも一対の強磁性層と、前記一対の強磁性
層間に介在され、少なくとも 2種類の非磁性金属薄膜の
積層構造を有する中間非磁性金属層とを具備する磁気抵
抗効果素子であって、前記強磁性層との界面側に配置さ
れる前記非磁性金属薄膜のフェルミエネルギーは、前記
強磁性層のフェルミエネルギーのうち、電子スピン依存
平均自由行程が長いスピン方向におけるフェルミエネル
ギーにより近い値を有し、かつ前記 2種類の非磁性金属
薄膜間のフェルミエネルギーの差は 0.5eV以上であるこ
とを特徴としている。
【0008】また、本発明の磁気記録装置は、磁気抵抗
効果素子を有する磁気ヘッドと、磁気記録媒体とを具備
する磁気記録装置において、前記磁気抵抗効果素子は、
少なくとも一対の強磁性層と、前記一対の強磁性層間に
介在され、少なくとも 2種類の非磁性金属薄膜の積層構
造を有する中間非磁性金属層とを具備し、前記強磁性層
との界面側に配置される前記非磁性金属薄膜のフェルミ
エネルギーは、前記強磁性層のフェルミエネルギーのう
ち電子スピン依存平均自由行程が長いスピン方向におけ
るフェルミエネルギーにより近い値を有し、かつ前記 2
種類の非磁性金属薄膜間のフェルミエネルギーの差は
0.5eV以上であることを特徴としている。
【0009】
【作用】本発明の磁気抵抗効果素子においては、上下の
強磁性層間を仕切る中間非磁性金属層として、少なくと
も 2種類の非磁性金属薄膜の積層構造膜を用いている。
そして、上記積層構造膜を構成する 2種類の非磁性金属
薄膜間のフェルミエネルギーの差を 0.5eV以上としてい
るため、中間非磁性金属層内で電子の反射を引き起こす
ことができる。これにより、中間非磁性金属層から強磁
性層に電子が侵入するときのアップスピン電子とダウン
スピン電子の反射確率の差が小さくなり、強磁性層間の
交換結合力を小さくすることができる。
【0010】また、強磁性層との界面側に配置される非
磁性金属薄膜には、強磁性層のフェルミエネルギーのう
ち、電子スピン依存平均自由行程が長いスピン方向にお
けるフェルミエネルギーにより近いフェルミエネルギー
を有する非磁性金属材料を用いているため、中間非磁性
金属層と強磁性層との界面における非弾性散乱を抑制す
ることが可能となる。
【0011】これらにより、本発明によれば、中間非磁
性金属層の厚さを薄くし、スピン依存散乱の大きさを保
った上で、上下の強磁性層間の交換結合を切ることがで
きる。従って、抵抗変化率を増加させた上で、その変化
を低磁場側で起こるようにすることが可能となり、ひい
ては安定して抵抗変化感度の向上を図ることが可能とな
る。
【0012】なお、本発明の磁気抵抗効果素子は、一対
の強磁性層間が反強磁性結合しないスピンバルブ膜を用
いたものに好適であるが、強磁性層と中間非磁性金属層
とを多数積層した人工格子膜を用いたもの等に適用する
こともできる。
【0013】
【実施例】次に、本発明を実施例によってさらに詳細に
説明する。
【0014】図1は、本発明をスピンバルブ型磁気抵抗
効果素子に適用した一実施例の構造を模式的に示す断面
図である。同図において、1、1は強磁性層である。こ
れら一対の強磁性層1、1間には、それらを仕切る中間
非磁性金属層2として、少なくとも 2種類の非磁性金属
薄膜2a、2bを有する積層構造膜が配置されている。
なお、ここで言う非磁性とは、常磁性、反磁性等を指す
ものである。この実施例における積層構造の中間非磁性
金属層2は、強磁性層1、1側にそれぞれ配置された第
1の非磁性金属薄膜2a、2aと、それらの中間に配置
された第2の非磁性金属薄膜2bとの 3層積層構造を有
している。なお、図中3は反強磁性層である。
【0015】上記強磁性層1、1の構成材料としては、
Co、Ni、CoFeに代表されるCo系合金、NiFeに代表される
Ni系合金等が例示される。特に、軟磁気特性と抵抗変化
率の大きさ等の点からNi、NiFeCo、CoFe等が好適であ
る。このような強磁性層1の厚さは特に限定されるもの
ではないが、例えば 1〜20nm程度とすることが好まし
い。これは、強磁性層1の厚さが 1nm未満であると膜表
面での電子散乱が大きくなり、抵抗変化率が減少する傾
向にあり、また20nmを超えるとシャント電流の比率が高
くなって、かなり抵抗変化率が減少するからである。
【0016】中間非磁性金属層2を構成する第1の非磁
性金属薄膜2aと第2の非磁性金属薄膜2bとは、それ
らのフェルミエネルギーの差が 0.5eV以上となる 2種類
の非磁性金属材料からなるものである。また、強磁性層
1との界面側にそれぞれ配置される第1の非磁性金属薄
膜2aは、強磁性層1のフェルミエネルギーのうち、電
子スピン依存平均自由行程が長いスピン方向におけるフ
ェルミエネルギーにより近いフェルミエネルギーを有す
る非磁性金属材料からなるものである。なお、本発明で
言うフェルミエネルギーは、LMTO法、APW法、L
APW法等のバンド理論の計算から求められたΓ(ガン
マ)点での伝導帯の底からフェルミ・レベルまでの値を
指すものとする。
【0017】ここで、スピンバルブ膜等において強磁性
層間の交換結合が起こる原因としては、中間非磁性金属
層内での電子の局在の効果がある(Phys. Rev. B,48(19
93)7238等参照)。磁性体内部では、アップスピンを持
った電子とダウンスピンを持った電子では感じる原子ポ
テンシャルの高さが異なっている。そのため、図2に示
すように、スピンバルブ膜等では一対の強磁性層の磁化
が平行のときと反平行のときでは、アップスピン電子が
感じる原子ポテンシャルとダウンスピン電子が感じる原
子ポテンシャルの形状に差ができる。このときに電子の
局在の様子が変化してエネルギーに差が生じるため、よ
り低エネルギーの状態が安定になろうとして、反平行も
しくは平行な交換結合が生じる。平行状態が安定になる
か、反平行状態が安定になるかには、ポテンシャルの大
きさ、中間非磁性金属層の厚さ、フェルミ面形状等が関
与する。そして、交換結合の大きさは、図3に示すよう
に、中間非磁性金属層から強磁性層に電子が侵入すると
きのアップスピン電子とダウンスピン電子の反射確率の
差が大きいほど大きくなる。
【0018】この実施例のスピンバルブ型磁気抵抗効果
素子では、上下の強磁性層1、1間を仕切る中間非磁性
金属層2として、フェルミエネルギーの差が 0.5eV以上
の 2種類の非磁性金属薄膜2a、2bを用いている。こ
れにより、中間非磁性金属層2から強磁性層1に電子が
侵入するときのアップスピン電子とダウンスピン電子の
反射確率の差を小さくすることができ、強磁性層1、1
間の交換結合力を小さくすることが可能となる。すなわ
ち、フェルミエネルギーの差が 0.5eV以上の 2種類の非
磁性金属薄膜2a、2bを積層した中間非磁性金属層2
を用いて、図4に示すように、中間非磁性金属層2内部
に原子ポテンシャルの変調を加えることによって、中間
非磁性金属層2内部で電子の反射を引き起こすことがで
きる。従って、図5に示すように、中間非磁性金属層2
から強磁性層1に電子が侵入するときのアップスピン電
子とダウンスピン電子の反射確率の差を小さくすること
ができる。このことにより、一対の強磁性層1、1の磁
化が平行のときと反平行のときの電子の局在の変化が小
さくなり、エネルギーの差が小さくなるために、交換結
合力が小さくなる。
【0019】このとき、磁気抵抗変化率を小さくしない
ためには、強磁性層1内で電子のスピン依存平均自由行
程が長いスピン方向の電子が、中間非磁性金属層2と強
磁性層1との界面で非弾性散乱を受けないようにする必
要がある。このため、強磁性層1との界面側には、強磁
性層1のフェルミエネルギーのうち、電子スピン依存平
均自由行程が長いスピン方向におけるフェルミエネルギ
ーにより近いフェルミエネルギーを有する非磁性金属材
料からなる第1の非磁性金属薄膜2aを配置している。
さらに、強磁性層1側に配置される第1の非磁性金属薄
膜2aは、上記条件を満足しているものであればよい
が、磁気抵抗変化率をより増大させるためには、非磁性
金属材料のフェルミエネルギーと電子スピン依存平均自
由行程が長いスピン方向における強磁性層1のフェルミ
エネルギーとの差が小さい方が望ましい。具体的には、
上記フェルミエネルギーの差が 0.5eV以下であることが
好ましい。
【0020】ここで、上述した強磁性層1の構成材料の
うち、Coの場合にはアップスピン電子のフェルミエネル
ギーは 8.7eV、ダウンスピン電子のフェルミエネルギー
は 7.2eVであり、Niの場合にはアップスピン電子のフェ
ルミエネルギーは 8.8eV、ダウンスピン電子のフェルミ
エネルギーは 8.4eVである。また、Co系合金やNi系合金
もほぼ同様な値を示す。そして、Co、Ni、Co系合金、Ni
系合金等の強磁性体は、いずれもアップスピン電子の方
が平均自由行程が長い。従って、第1の非磁性金属薄膜
2aには、例えばダウンスピン電子によるフェルミエネ
ルギーよりも、アップスピン電子によるフェルミエネル
ギーにより近いフェルミエネルギーを有する非磁性金属
材料を用いる。すなわち、強磁性層1、1にCoおよびNi
から選ばれる少なくとも 1種を主成分とする強磁性体を
用いるときには、強磁性層1との界面側に配置される第
1の非磁性金属薄膜2aの構成材料として、 |Ef (up)−Ef (NM)|<|Ef (down)−Ef (NM)| (式中、Ef (up)は強磁性層のアップスピン電子のフェ
ルミエネルギーを、Ef(down)は強磁性層のダウンスピ
ン電子のフェルミエネルギーを、Ef (NM)は非磁性金属
材料のフェルミエネルギーを示す)を満足する非磁性金
属材料を用いる。
【0021】上述したような 2つの条件、すなわち (1)
2種類の非磁性金属薄膜のフェルミエネルギーの差を
0.5eV以上とする、 (2)強磁性層との界面側に配置され
る非磁性金属薄膜を、強磁性層のフェルミエネルギーの
うち、電子スピン依存平均自由行程が長いスピン方向に
おけるフェルミエネルギーにより近いフェルミエネルギ
ーを有する非磁性金属材料により形成する、を満足させ
ることによって、中間非磁性金属層2の厚さを薄くして
磁気抵抗変化率を増大させ、この大きな磁気抵抗変化率
を低下させることなく、上下の強磁性層1、1間の交換
結合を切ることができる。すなわち、抵抗変化感度を向
上させることが可能となる。
【0022】中間非磁性金属層2を構成する非磁性金属
薄膜2a、2bの具体的な組合わせは、例えば以下に示
す通りである。まず、強磁性層1との界面側に配置され
る第1の非磁性金属薄膜2aを構成する非磁性金属材料
としては、上述したCoやNiのフェルミエネルギーの値を
考慮すると、Cu(Ef =9.3eV)、Au(Ef =10.1eV)、Pt
(Ef =9.4eV)およびこれらを主成分とする合金等が例
示される。
【0023】また、これら第1の非磁性金属薄膜2aを
構成する非磁性金属材料と、フェルミエネルギーの差が
0.5eV以上となる第2の非磁性金属薄膜2bを構成する
非磁性金属材料との組合わせとしては、Cu(Ef =9.3e
V)-Ag(Ef =7.9eV)、Au(Ef =10.1eV)-Ag(Ef =7.9e
V)、Pt(Ef =9.4eV)-Ag(Ef =7.9eV)、Cu(Ef =9.
3eV)-Pd(Ef =7.4eV)、Au(Ef =10.1eV)-Pd(Ef =7.4
eV)、Pt(Ef =9.4eV)-Pd(Ef =7.4eV)、Cu(Ef =
9.3eV)-Au (Ef =10.1eV)、Pt(Ef =9.4eV)-Au(E
f =10.1eV)等が挙げられる。第2の非磁性金属薄膜2b
を構成する非磁性金属材料としては、上記したような元
素を主成分とする合金等を用いてもよい。また、上述し
た 2種類の非磁性金属材料の組合わせのうち、特に共晶
系や包晶系の組合わせを用いることが、相互拡散による
効果の低減を防止する上で好ましい。具体的には、 Cu-
Ag、 Au-Pt、 Pt-Ag等が望ましい。
【0024】中間非磁性金属層2は、上述したような第
1の非磁性金属薄膜2aと第2の非磁性金属薄膜2bと
の積層構造を有するものであり、基本的には図1に示し
たように、強磁性層1側に第1の非磁性金属薄膜2aを
それぞれ配置し、それらの間に第2の非磁性金属薄膜2
bを配置した 3層積層構造となる。ただし、第2の非磁
性金属薄膜2bをさらに多層化する等、種々の変形が可
能である。また、強磁性層1側にそれぞれ配置する 2つ
の第1の非磁性金属薄膜2aは、上記条件(1)、(2) を
満足していれば、同一の材料で形成してもよいし、また
異なる材料で形成してもよい。
【0025】なお、 Cu-Auや Pt-Au等の組合わせを使用
する場合には、どちらの非磁性金属材料を強磁性層1側
に配置してもよいが、より電子スピン依存平均自由行程
が長いスピン方向におけるフェルミエネルギーとの差が
小さい非磁性金属材料を強磁性層1側に配置することが
好ましい。例えば Cu-Auの組合わせではCu、 Pt-Auの組
合わせではPt等である。また、このように 2種類の非磁
性金属薄膜2a、2bが、いずれも電子スピン依存平均
自由行程が長いスピン方向におけるフェルミエネルギー
により近いフェルミエネルギーを有する場合には、中間
非磁性金属層2を第1の非磁性金属薄膜2aと第2の非
磁性金属薄膜2bとの 2層積層構造としてもよい。
【0026】上述したような積層構造を有する中間非磁
性金属層2の厚さは、全体の膜厚として 1〜 5nmの範囲
とすることが好ましい。中間非磁性金属層2の膜厚が 5
nmを超えると、抵抗変化感度を十分に向上させることが
できず、また 1nm未満であると、各非磁性金属薄膜2
a、2bの膜厚にもよるが、強磁性層1、1間の交換結
合を十分に小さくすることが困難となる。より好ましい
厚さは 1.5〜 2.5nmの範囲である。また、各非磁性金属
薄膜2a、2bの膜厚は、 0.2〜 2nmの範囲とすること
が好ましい。この理由は、 0.2nm未満の膜は作製するこ
とが困難であり、また 2nmを超えると全体の厚さを 5nm
以下とすることが困難となるからである。より好ましい
非磁性金属薄膜2a、2bの膜厚は 0.5〜 1nmの範囲で
ある。なお、本発明では、非磁性金属薄膜2a、2b間
で多少の拡散が生じることがあるが、局所的に積層構造
が形成されていれば何等問題はない。
【0027】次に、上記構造を有する磁気抵抗効果素子
の具体例とその評価結果について述べる。
【0028】実施例1 まず、図6に示すように、サファイア基板11上に第1
の強磁性層12として、CoFe合金膜をRFスパッタ法に
より 7nmの膜厚で成膜した。次いで、第1の強磁性層1
2上に、膜厚 0.4nmのCu薄膜13a、膜厚 0.4nmのPd薄
膜13b、膜厚0.4nmのCu薄膜13cを順に成膜した。
これらCu薄膜13a/Pd薄膜13b/Cu薄膜13cによ
る 3層積層構造膜により、中間非磁性金属層13が構成
される。次に、上記 3層積層構造の中間非磁性金属層1
3のCu薄膜13c上に、第2の強磁性層14として、Co
Fe合金膜を 5nmの膜厚で積層形成し、さらに反強磁性層
15として、FeMn合金膜を14nmの膜厚で積層形成した。
その上に、必要に応じて保護膜16を形成し、さらに電
極17a、17bを形成することによって、スピンバル
ブ型磁気抵抗効果素子18を作製した。
【0029】このようにして得たスピンバルブ型磁気抵
抗効果素子18の磁気特性および抵抗変化率を評価した
ところ、中間非磁性金属層13の厚さを全体で 1.2nmと
薄くしているにもかかわらず、上下の強磁性層12、1
4間の交換結合を第1の強磁性層12の磁化曲線のシフ
トが400A/m以内となるように切ることができた。また、
抵抗変化率は 10%という高い値を示した。
【0030】比較例1、2 中間非磁性金属層を膜厚 1nmのCu単独層(比較例1)、
および膜厚 3nmのCu単独層(比較例2)とする以外は、
それぞれ実施例1と同様にして、スピンバルブ型磁気抵
抗効果素子を作製した。これらスピンバルブ型磁気抵抗
効果素子の特性を実施例1と同様にして評価したとこ
ろ、比較例1においては、上下の強磁性層間は強く結合
し、磁化の反平行状態を得ることができず、磁気抵抗効
果は得られなかった。また、比較例2においては、上下
の強磁性層間の交換結合を切ることはできたが、中間非
磁性金属層が厚いために、抵抗変化率は6%と小さい値し
か得られなかった。
【0031】比較例3 中間非磁性金属層を膜厚 3nmのPd単独層とする以外は、
実施例1と同様にして、スピンバルブ型磁気抵抗効果素
子を作製した。このスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の
特性を実施例1と同様にして評価したところ、上下の強
磁性層間の交換結合を切ることができ、第1の強磁性層
の磁化曲線のシフトは約240A/mであった。しかし、抵抗
変化率は5%と小さい値しか得られなかった。
【0032】比較例4 中間非磁性金属層の積層構造をPd薄膜(0.4nm)/Cu薄膜
(0.4nm)/Pd薄膜(0.4nm)とする以外は、実施例1と同
様にして、スピンバルブ型磁気抵抗効果素子を作製し
た。このスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の特性を実施
例1と同様にして評価したところ、上下の強磁性層間の
交換結合を切ることができ、第1の強磁性層の磁化曲線
のシフトは約400A/mであった。しかし、Pdのフェルミエ
ネルギーはCoFeのダウンスピン電子のフェルミエネルギ
ーに近いため、抵抗変化率は6%と小さい値しか得られな
かった。
【0033】実施例2 中間非磁性金属層の積層構造を表1に示す組合わせに変
更する以外は、実施例1と同様にして、それぞれスピン
バルブ型磁気抵抗効果素子を作製した。これらのスピン
バルブ型磁気抵抗効果素子の特性を表1に併せて示す。
【0034】
【表1】 次に、これら各磁気抵抗効果素子を 250℃で 1時間熱処
理した後、同様に磁気特性を評価したところ、共晶系で
ある Cu-Ag(No.1)、 Au-Pt(No.4)、 Pt-Ag(No.5)の組合
わせでは、上下の強磁性層間の磁気的結合は切れたまま
であったが、それ以外の組合わせ(No.2,3)では相互拡散
が起こり、磁気的結合が大きくなって磁化曲線のシフト
が増大した。
【0035】さらに、 300℃で 1時間熱処理したとこ
ろ、共晶系である Cu-Ag(No.1)、 Au-Pt(No.4)、 Pt-Ag
(No.5)の組合わせでも相互拡散が起こり、積層構造に乱
れが生じたが、局所的に見ると積層構造が残っているた
め、磁気的結合の増大はあまり見られなかった。
【0036】なお、本発明における強磁性層と中間非磁
性金属層とは、積層膜として抵抗変化部を構成するもの
であり、その積層数は特に限定されるものではない。本
発明の磁気抵抗効果素子は、上述した実施例で示したよ
うに、強磁性体が反強磁性結合しないスピンバルブ膜を
用いたものに好適であるが、強磁性層と非磁性金属層と
を多数積層した人工格子膜を用いたものに適用すること
もできる。
【0037】また、前述した実施例1、2による磁気抵
抗効果素子を再生用の磁気ヘッドとしてそれぞれ用い、
これと通常の磁気記録媒体とを組合わせて磁気記録装置
を構成したところ、前述した比較例2、3、4による磁
気抵抗効果素子を再生用の磁気ヘッドとして用いた場合
に比べて、再生感度を向上させることができた。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の磁気抵抗
効果素子によれば、中間非磁性金属層の厚さをできるだ
け薄くし、かつスピン依存散乱の大きさを保った上で、
上下の強磁性層間の交換結合を切ることが可能となるた
め、安定に抵抗変化感度の向上を図ることができる。ま
た、このような磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドとして用
いた磁気記録装置によれば、再生感度の向上を図ること
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例による磁気抵抗効果素子の
構造を模式的に示す断面図である。
【図2】 スピンバルブ膜における原子ポテンシャルを
示す図である。
【図3】 スピンバルブ膜において電子が中間非磁性金
属層から強磁性層に入射したときの反射波の様子を示す
図である。
【図4】 本発明の磁気抵抗効果素子における原子ポテ
ンシャルを示す図である。
【図5】 本発明の磁気抵抗効果素子において電子が中
間非磁性金属層から強磁性層に入射したときの反射波の
様子を示す図である。
【図6】 本発明の一具体例として作製した磁気抵抗効
果素子の構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1、12、14……強磁性層 2、13……中間非磁性金属層 2a、13a……第1の非磁性金属薄膜 2b、13b……第2の非磁性金属薄膜 3、15……反強磁性層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐橋 政司 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝 研究開発センター内 (72)発明者 岩崎 仁志 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝 研究開発センター内 (56)参考文献 特開 平5−175571(JP,A) 特開 平6−104506(JP,A) 特開 平4−247607(JP,A) 特開 平4−280483(JP,A) 特開 平5−242436(JP,A) 特開 平6−251941(JP,A) 特開 平6−236527(JP,A) 特開 平5−291037(JP,A) 米国特許5493465(US,A) IEEE Transactions on Magnetics,1990年9 月,Vol.26,No.5,pp.2747 −2749 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 43/08 G01R 32/09 G11B 5/39 H01F 10/30 H01L 43/10 JICSTファイル(JOIS)

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも一対の強磁性層と、前記一対
    の強磁性層間に介在され、少なくとも 2種類の非磁性金
    属薄膜の積層構造を有する中間非磁性金属層とを具備す
    る磁気抵抗効果素子であって、 前記強磁性層との界面側に配置される前記非磁性金属薄
    膜のフェルミエネルギーは、前記強磁性層のフェルミエ
    ネルギーのうち、電子スピン依存平均自由行程が長いス
    ピン方向におけるフェルミエネルギーにより近い値を有
    し、かつ前記 2種類の非磁性金属薄膜間のフェルミエネ
    ルギーの差は 0.5eV以上であることを特徴とする磁気抵
    抗効果素子。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の磁気抵抗効果素子におい
    て、 前記中間非磁性金属層は、前記強磁性層との界面側にそ
    れぞれ配置される 2つの前記非磁性金属薄膜と、これら
    2つの非磁性金属薄膜間に配置される前記非磁性金属薄
    膜との 3層積層構造を有することを特徴とする磁気抵抗
    効果素子。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の磁気抵抗効果素子におい
    て、 前記 2種類の非磁性金属薄膜は、共晶系または包晶系の
    組合わせからなることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の磁気抵抗効果素子におい
    て、 前記一対の強磁性層は、CoおよびNiから選ばれる少なく
    とも 1種を主成分とする強磁性体からなることを特徴と
    する磁気抵抗効果素子。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の磁気抵抗効果素子におい
    て、 前記強磁性層との界面側に配置される前記非磁性金属薄
    膜は、Cu、AuおよびPtから選ばれる少なくとも 1種を主
    成分とする非磁性体からなることを特徴とする磁気抵抗
    効果素子。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の磁気抵抗効果素子におい
    て、 前記強磁性層との界面側に配置される前記非磁性金属薄
    膜のフェルミエネルギーは、前記強磁性層のフェルミエ
    ネルギーのうち、電子スピン依存平均自由行程が長いス
    ピン方向におけるフェルミエネルギーとの差が 0.5eV以
    下であることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  7. 【請求項7】 請求項1記載の磁気抵抗効果素子におい
    て、 前記 2種類の非磁性金属薄膜は、 Cu-Ag、 Au-Ag、 Pt-
    Ag、 Cu-Pd、 Au-Pd、Pt-Pd、 Cu-Auおよび Pt-Auから
    選ばれる少なくとも 1種の組合わせからなることを特徴
    とする磁気抵抗効果素子。
  8. 【請求項8】 請求項1記載の磁気抵抗効果素子におい
    て、 前記中間非磁性金属層は、 1〜 5nmの範囲の厚さを有す
    ることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  9. 【請求項9】 請求項1記載の磁気抵抗効果素子におい
    て、 前記 2種類の非磁性金属薄膜は、それぞれ 0.2〜 2nmの
    範囲の厚さを有することを特徴とする磁気抵抗効果素
    子。
  10. 【請求項10】 請求項1記載の磁気抵抗効果素子にお
    いて、 前記一対の強磁性層は、それぞれ 1〜20nmの範囲の厚さ
    を有することを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  11. 【請求項11】 磁気抵抗効果素子を有する磁気ヘッド
    と、磁気記録媒体とを具備する磁気記録装置において、 前記磁気抵抗効果素子は、少なくとも一対の強磁性層
    と、前記一対の強磁性層間に介在され、少なくとも 2種
    類の非磁性金属薄膜の積層構造を有する中間非磁性金属
    層とを具備し、前記強磁性層との界面側に配置される前
    記非磁性金属薄膜のフェルミエネルギーは、前記強磁性
    層のフェルミエネルギーのうち、電子スピン依存平均自
    由行程が長いスピン方向におけるフェルミエネルギーに
    より近い値を有し、かつ前記 2種類の非磁性金属薄膜間
    のフェルミエネルギーの差は 0.5eV以上であることを特
    徴とする磁気記録装置。
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