JP3359585B2 - 非可逆回路素子 - Google Patents

非可逆回路素子

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JP3359585B2
JP3359585B2 JP00096899A JP96899A JP3359585B2 JP 3359585 B2 JP3359585 B2 JP 3359585B2 JP 00096899 A JP00096899 A JP 00096899A JP 96899 A JP96899 A JP 96899A JP 3359585 B2 JP3359585 B2 JP 3359585B2
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博 徳寺
容平 石川
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、マイクロ波帯や
ミリ波帯におけるアイソレータなどとして用いることの
できる非可逆回路素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、エッジガイドモードを用いたアイ
ソレータが特開平4−287403号および特開昭
63−124602号に示されている。またフィンライ
ン構造によるアイソレータが特開昭61−7701号
に示されている。
【0003】のアイソレータは、磁性体基板にマイク
ロストリップ線路を形成すると共に、ストリップ導体の
途中位置を片側に接地し、磁性体基板に対して垂直方向
に外部直流磁界を印加するようにしたものである。の
アイソレータは、磁性体基板にコプレーナウェーブガイ
ド(以下、「コプレーナ線路」という。)を形成すると
共に、コプレーナ線路の中心導体から一方の接地導体に
かけて電波吸収膜を形成し、磁性体基板に対して垂直方
向に外部直流磁界を印加するようにしたものである。
,のいずれも、外部直流磁界によって磁性体基板内
の磁気特性を変化させ、エッジガイド効果によって線路
両側の伝搬モードの電磁界分布を非対称にし、外部磁界
の方向と信号の伝搬方向に応じて伝搬信号を選択的に減
衰させるようにして、アイソレーション効果を発生させ
るようにしたものである。
【0004】またのアイソレータは、フィンラインの
基板の裏面にエネルギー吸収層を配置して、外部磁界と
信号の伝搬方向に応じて生じる電磁界分布の非対称性に
よって、1方向に伝搬する信号をエネルギー吸収層で吸
収させるようにしてアイソレーション効果を生じさせる
ようにしたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のアイソレータ
においては、伝送線路としてマイクロストリップ線路を
用いるので、マイクロストリップ線路で回路を構成した
平面回路にアイソレータを設ける場合には回路の接続性
が比較的高い。また、のアイソレータにおいては、伝
送線路としてコプレーナ線路を用いるので、例えば同軸
線路との線路変換が比較的容易であるという利点を備え
る。しかし,のいずれの場合でも、基板上にスロッ
ト線路で形成した平面回路や回路素子との接続性は低
い。例えば線路の特性インピーダンスを高くする必要が
ある場合にはスロット線路が有効であるが、従来、スロ
ット線路で構成される非可逆回路素子は存在しなかっ
た。そのため、平面回路にアイソレータを組み込む場合
には、マイクロストリップ線路やコプレーナ線路による
アイソレータを用い、スロット線路との間に線路変換器
を設けなければならず、全体に大型化するという問題が
あった。
【0006】またのフィンラインを用いたアイソレー
タでは、フィンライン自体が導波管との接続性がよいた
め、伝送損失の低い導波管の利点を生かされ、且つ半導
体チップなどをフィンラインの基板に実装できるという
利点を備える。しかし従来のフィンラインを用いたアイ
ソレータは、導波管内の電界面に沿って取り付けられる
基板の一方の面に導体層によるパターンを形成し、他方
の面にフェライト層およびエネルギー吸収層を設ける構
造であるため、基板の両面のパターンニングが必要とな
っていた。そのため、製造が容易ではなく、構造上も複
雑化していた。
【0007】この発明の目的は、上述した種々の問題点
を解消した非可逆回路素子を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、フェリ磁性
特性を示す基板の一方の面にスロットを有する導体膜を
形成し、前記基板の他方の面に抵抗体膜を形成し、前記
基板に略平行で且つ前記スロットに略垂直な向きに直流
磁界を印加して非可逆回路素子を構成する。このように
基板の一方の面にスロットを有する導体膜を形成するこ
とによってスロット線路を構成したため、特にスロット
線路による平面回路との接続性が向上する。また、半導
体チップなどの素子との接続を行う場合に、スロット部
分を跨ぐように素子を実装すればよいので、素子との接
続性が向上する。さらに、他の特性インピーダンスの高
い線路とのインピーダンス整合が容易になるという特性
を生かすこともできる。
【0009】また、この発明は、フェリ磁性特性を示す
基板の表面にスロットを有する導体膜を形成し、該スロ
ットの片方の導体膜の上面、下面、上下面または前記導
体膜と同一面に抵抗体膜を形成し、前記基板に略垂直な
向きに直流磁界を印加して非可逆回路素子を構成する。
この構成により、上記の作用効果を奏し、しかも、基板
表面にスロット線路を構成すると共に、スロットの片方
の導体膜部分に抵抗体膜を形成すればよいため、基本的
に基板の片方の面にのみ導体膜および抵抗体膜をパター
ンニングすればよく、製造が容易となる。
【0010】また、この発明は、導波管内部に、電磁波
伝搬方向に沿って、フェリ磁性特性を示す基板を配置す
るとともに、該基板の表面に、スロットを有する導体膜
を形成し、該スロットの片方の導体膜の上面、下面、上
下面または前記導体膜と同一面に抵抗体膜を形成し、前
記基板に略垂直な向きに直流磁界を印加して非可逆回路
素子を構成する。このように導波管内部に設けた構成に
よって非可逆特性が生じるため、導波管による伝送損失
の低い特性を生かすことができ、且つ基板上に平面回路
やチップ部品を容易に実装構成できるため、比較的小型
で低損失特性が得られる。しかも基板には、その一方の
面に導体膜と抵抗体膜をパターンニングすればよいた
め、製造が容易となり、導波管内部での構造も単純化さ
れ、全体の小型化が容易となる。
【0011】また、この発明は前記基板としては、フェ
リ磁性特性を示す磁性体と誘電体とを積層して構成し、
誘電体に前記導体膜を形成する。
【0012】このように誘電体に導体膜を形成する構造
であるため、誘電体に構成した平面回路との接続性が極
めて高くなる。例えば誘電体基板に平面回路を構成した
ものに非可逆回路素子を設ける場合にも、誘電体基板に
形成した平面回路と磁性体基板に形成した非可逆回路素
子とを接続する、といった構造を採る必要がなくなる。
また、このように誘電体層を付加することにより、電磁
界分布がフェリ磁性特性を示す磁性体部分に引き寄せら
れる。すなわち、誘電体層が無い場合は、主に上記磁性
体部分より空気領域に電磁界が分布するが、誘電率の高
い誘電体層を導体膜の下部に付加することにより、電磁
界分布が上記磁性体内に移動し、その結果大きな非可逆
性を生じることになる。
【0013】また、この発明は、前記導体膜を誘電体と
磁性体との間に設ける。これにより、スロット周囲への
電磁界分布の閉じ込め性が高くなり、外部磁界の印加に
よる電磁界分布の偏りによる非可逆性を高めることがで
きる。また、導体膜および抵抗体膜が誘電体および磁性
体によって保護される。
【0014】さらに、この発明は前記スロットに沿った
抵抗体膜の端部をテーパ状にする。これにより線路の特
性インピーダンスが緩やかに変化するため、信号の反射
が抑えられる。
【0015】
【発明の実施の形態】この発明の第1の実施形態に係る
非可逆回路素子の構成を図1〜図3を参照して説明す
る。図1は非可逆回路素子の斜視図であり、2つの異な
った例について示している。1はフェライトやYIGな
どのフェリ磁性特性を示す磁性体板であり、その表面
(図における上面)に、スロット3を有する導体膜2
a,2bを形成している。このスロット3の片方の導体
膜2bの上面には抵抗体膜4を形成している。図1の
(A)と(B)とでは、抵抗体膜4の形状が異なってい
て、(A)ではスロットから離れる方向に先すぼみ形状
とし、(B)ではスロットから離れる方向に末広がり形
状としている。図に示すように、磁性体板1に対しては
垂直方向に外部から直流磁界Hoを印加する。
【0016】上記導体膜2a,2bおよび磁性体板1は
スロット線路を構成する。この例では、図に示すよう
に、左手前をポート#1、右後方をポート#2とする2
ポートの非可逆回路素子として用いる。
【0017】図2は、図1におけるA−A部分の断面図
であり、外部から直流磁界を印加することによるスロッ
トモードの電磁界分布の変化を示す図である。ここでは
紙面に対して向こう側から手前方向へ(図1に示したポ
ート#2からポート#1方向へ)信号が伝搬する場合に
ついて示している。図中実線の矢印は電界分布を、破線
の矢印は磁界分布をそれぞれ示している。直流磁界Ho
を印加しない状態では、(A)に示すように通常のスロ
ットモードで信号が伝搬する。直流磁界Hoを印加する
と、図2の(B)に示すようにスロットモードの電磁界
分布が右側へ引かれ、電磁界のエネルギーがスロット線
路の図における右側の導体膜に集中することになる。こ
の部分には抵抗体膜4を形成しているため、抵抗体膜4
に電流が流れる際に電力消費が生じ、スロットモードに
よる信号が大きく減衰される。逆に、紙面に対して手前
から向こう側へ(ポート#1からポート#2方向へ)信
号が伝搬する場合には、スロットモードの電磁界分布は
図における左側へ引かれて、抵抗体膜4側の電磁界エネ
ルギー分布が疎になる。その結果、抵抗体膜4による電
力消費が抑制されて、信号はほとんど減衰することなく
伝搬する。この作用により、ポート#1からポート#2
方向へ信号を選択的に伝搬するアイソレータとして用い
ることができる。因みに、直流磁界の方向を逆にした場
合には、直流磁界の方向と信号の伝搬方向とによって定
まる、伝搬モードの電磁界分布の偏る方向が、上述とは
逆の関係となるため、アイソレーションの向きは逆とな
る。
【0018】なお、図1に示したように、スロットに沿
った抵抗体膜4の端部をテーパ状にしたため、阻止方向
に信号が伝搬しようとする場合でも、線路の特性インピ
ーダンスの変化が緩やかとなり、信号の反射が抑えられ
る。透過方向に信号が伝搬する場合には、抵抗体膜側の
電磁界のエネルギー密度が低くなるため、抵抗体膜によ
る影響は殆ど受けないが、図1に示したように、信号の
透過方向にも、抵抗体膜の幅が緩やかに広がる形状とす
れば、線路の特性インピーダンスの変化が緩やかとな
り、抵抗体膜による信号の反射はさらに殆ど生じない。
【0019】図3は図1に示した非可逆回路素子の他の
断面構造を示す図である。これらの例はいずれも、スロ
ットに対して直交する向きの断面図であり、抵抗体膜の
平面パターンは図1に示したものと同様である。(A)
の例では、磁性体板1の表面に抵抗体膜4を形成し、そ
の表面に導体膜2bを形成している。(B)の例では、
抵抗体膜4、導体膜2b、抵抗体膜4の順に積層してい
る。この(A),(B)のように、導体膜と共に抵抗体
膜を積層しても、表皮効果により電流分布は抵抗体膜に
集中するため、効率的な電力消費が可能となる。また、
(C)に示す例では、導体膜2bと同一平面上に抵抗体
膜4を形成している。
【0020】次に、第2の実施形態に係る非可逆回路素
子の構成を断面図として図4に示す。図4において6は
導波管である。1は磁性体板であり、その表面にスロッ
ト3を有する導体膜2a,2bを形成すると共に、スロ
ット3の片方の導体膜2bの表面に抵抗体膜4を形成し
ている。この磁性体板1、導体膜2a,2bおよび抵抗
体膜4の構成は図1および図2に示したものと同様であ
る。この導体膜および抵抗体膜を形成した磁性体板1を
図に示すように、導波管6の内部に配置している。この
構造により、導体膜2a,2bによるスロット3と導波
管6とによってフィンラインを構成している。
【0021】このようなフィンライン構造の場合にも、
磁性体板1に対して垂直方向に外部から直流磁界Hoを
印加することにより、紙面に対して向こうから手前へ伝
搬する信号の電磁界分布は抵抗体膜4側へ集中して、抵
抗体膜4に電流が流れる際に電力消費が生じ、信号が大
きく減衰される。逆に、紙面に対して手前から向こう側
へ信号が伝搬する場合には、伝搬モードの電磁界分布は
図における左側へ引かれて、抵抗体膜4側の電磁界エネ
ルギーが減少する。その結果、抵抗体膜4による電力消
費が抑制されて、信号はほとんど減衰することなく伝搬
することになる。この作用により、紙面に対して手前か
ら向こう側へ信号を選択的に伝搬する導波管型のアイソ
レータとして作用する。次に、第3の実施形態に係る非
可逆回路素子の構成を図5および図6を参照して説明す
る。図5は非可逆回路素子の斜視図である。図中の5は
誘電体板であり、その表面に、スロット3を有する導体
膜2a,2bを形成し、さらに導体膜2b側に抵抗体膜
4を形成している。図中1はフェライトやYIGなどの
フェリ磁性特性を示す磁性体板であり、その上面に誘電
体板5を重ねている。
【0022】このように誘電体板にスロット線路を形成
することにより、この誘電体板5の上に設けられる他の
平面回路や実装される半導体チップなどとの接続性が極
めて高くなる。例えば誘電体板に平面回路を設け、チッ
プ部品を実装するとともに、その誘電体板に導体膜2
a,2bによるスロット線路を形成し、少なくとも、こ
のスロット線路部分に磁性体板1を重ね、外部から直流
磁界Hoを印加することによって、平面回路中にアイソ
レータを設けることができる。そのため、例えば磁性体
板上に導体膜および抵抗体膜を形成してなる非可逆回路
素子と、平面回路を構成した誘電体板とを接続する、と
いった構造を採る必要がなくなる。
【0023】また、上記アイソレータ部分の誘電体板
と、他の平面回路を構成する誘電体板とが別体であって
も、双方の線路の特性インピーダンスを容易に等しくで
きるため、接続部の構成が簡単となる。
【0024】図6は図5に示した非可逆回路素子のスロ
ットに直交する面での幾つかの断面構造を示す図であ
る。(A)の例では、磁性体板1の表面に導体膜2bを
形成し、その表面に抵抗体膜4を形成している。(B)
の例では、磁性体板1の表面に抵抗体膜4を形成し、そ
の表面に導体膜2bを形成している。(C)の例では、
抵抗体膜4、導体膜2b、抵抗体膜4の順に積層してい
る。また、(D)に示す例では、導体膜2bと同一平面
上に抵抗体膜4を形成している。いずれの構造でも、直
流磁界の方向と信号の伝搬方向とに応じて、スロットモ
ードの電磁界分布が図における右方向に偏る状態で、抵
抗体膜4による電力消費が効率良く行われる。
【0025】次に、第4の実施形態に係る非可逆回路素
子の構造を断面図として図7に示す。図7の(A)は磁
性体板を取り除いた状態での平面図、(B)はスロット
に直交する面での断面図である。図において5は誘電体
板であり、その表面に導体膜2a,2bおよび抵抗体膜
4を形成している。この誘電体板5の上面に磁性体板1
を積層することにより、抵抗体膜を備えるスロット線路
を構成している。そして、誘電体板および磁性体板に対
して垂直方向に直流磁界Hoを印加している。
【0026】図7において、ポート#1からポート#2
へ向かう信号のスロットモードの電磁界分布は図におけ
る左方向へ集中し、抵抗体膜4によりほとんど消費され
ずに伝搬するが、ポート#2からポート#1方向へ伝搬
する信号についてはスロットモードの電磁界分布が図に
おける右方向に偏って、抵抗体膜4により電力消費され
るため、大きく減衰する。このように導体膜および抵抗
体膜によるスロット部分を誘電体板と磁性体板により挟
み込んだ構造とすることによって、スロットモードの電
磁界分布がスロット周囲に閉じ込められ、外部磁界の印
加による電磁界分布の偏りが大きくなり、非可逆性が高
まる。また、導体膜および抵抗体膜が誘電体および磁性
体によって保護される。
【0027】次に、第5の実施形態に係る非可逆回路素
子の構成を図8および図9を参照して説明する。図8の
(A),(B)は非可逆回路素子の斜視図であり、異な
った2つの例について示している。(C)はスロットに
直交する面での断面図である。図中1はフェライトやY
IGなどのフェリ磁性特性を示す磁性体板であり、その
一方の面(図における上面)に、スロット3を有する導
体膜2a,2bを形成している。磁性体板1の他方の面
(図における下面)にはスロット3に対向する位置に抵
抗体膜4を形成している。
【0028】図9は、外部から直流磁界を印加すること
による上記非可逆回路素子のスロットモードの電磁界分
布の変化を示す断面図である。ここでは紙面に対して向
こう側から手前方向へ(図8に示したポート#2からポ
ート#1方向へ)信号が伝搬する場合について示してい
る。図中実線の矢印は電界分布を、破線の矢印は磁界分
布をそれぞれ示している。直流磁界Hoを印加しない状
態では、(A)に示すように通常のスロットモードで信
号が伝搬する。外部から直流磁界Hoを磁性体板1に平
行に且つスロット3に垂直な向きに印加すると、スロッ
トモードの電磁界分布は基板の導体膜2a,2bに対向
する面方向へ引き伸ばされる。この部分には抵抗体膜4
を設けているので、抵抗体膜4に電流が流れて、電力消
費が生じ、信号は大きく減衰する。
【0029】逆に、信号がポート#1からポート#2方
向へ伝搬する場合、スロットモードの電磁界は図におけ
る上面方向に引き伸ばされようとする。しかし、空気の
比誘電率は磁性体板1の比誘電率より小さいため、
(A)に示した分布とほぼ同様の分布を示し、抵抗体膜
4での電力消費は殆ど生じない。したがってポート#1
からポート#2方向へは低挿入損失で信号が伝搬する。
【0030】上記の作用により、ポート#1からポート
#2方向へ信号を選択的に伝搬するアイソレータとして
用いることができる。因みに、直流磁界の方向を逆にし
た場合には、直流磁界の方向と信号の伝搬方向とによっ
て定まる、伝搬モードの電磁界分布の偏る方向が、上述
とは逆の関係となるため、アイソレーションの向きは逆
となる。
【0031】なお、阻止方向に信号が入射した場合に、
抵抗体膜4の存在により線路の特性インピーダンスが変
化するが、図8に示したように、抵抗体膜4の信号伝搬
方向の端部をテーパ状にしたため、阻止方向に信号が伝
搬しようとする場合でも、線路の特性インピーダンスの
変化は緩やかとなり、信号の反射が抑えられる。透過方
向に信号が伝搬する場合には、抵抗体膜側の電磁界のエ
ネルギー密度が低くなるため、抵抗体膜による影響は殆
ど受けないが、図8に示したように、信号の透過方向に
も、抵抗体膜の幅が緩やかに広がる形状とすれば、線路
の特性インピーダンスの変化が緩やかとなり、抵抗体膜
による信号の反射はさらに殆ど生じない。
【0032】次に、第6の実施形態に係る非可逆回路素
子の構成を図10を参照して説明する。図10の(A)
は斜視図、(B)はスロットに直交する面での断面図で
ある。図中5は誘電体板であり、図における上面に、ス
ロット3を有する導体膜2a,2bを形成している。1
はフェライトやYIGなどのフェリ磁性特性を示す磁性
体板であり、その図における下面の、スロット3に対向
する位置に抵抗体膜4を形成している。
【0033】図10の(B)に示すように、外部から直
流磁界Hoを誘電体板5および磁性体板1に平行に且つ
スロット3に垂直な向きに印加すると、紙面に対して向
こう側から手前方向に伝搬するスロットモードの電磁界
分布は基板の導体膜2a,2bに対向する面方向へ引き
伸ばされる。この部分には抵抗体膜4を設けているの
で、抵抗体膜4に電流が流れて、電力消費が生じ、信号
は大きく減衰する。逆に、紙面に対して手前から向こう
側へ伝搬するスロットモードの電磁界は図における上面
方向に引き伸ばされようとし、抵抗体膜による電力消費
は殆ど無くなり、低挿入損失で信号が伝搬する。このよ
うにしてアイソレータとして作用する。
【0034】図11は他の非可逆回路素子の構成を示す
断面図である。この例では、誘電体板5の図における上
面にスロット3を有する導体膜2a,2bを形成し、ス
ロット3に対向する位置に抵抗体膜4が配置されるよう
に、抵抗体膜4を形成した磁性体板1を積層している。
この抵抗体膜4のパターンは図10の(A)に示したも
のと同様である。このような構造においても、信号の伝
搬方向と直流磁界の方向に応じて、電磁界分布の偏りが
変化し、所定方向の信号を抵抗体膜4により減衰させ、
それとは逆方向の信号を低挿入損失で伝搬させる。
【0035】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、スロット
線路による平面回路や半導体チップなどとの接続性が向
上し、また他の特性インピーダンスの高い線路とのイン
ピーダンス整合が容易になるという特性を生かすことが
できる。
【0036】請求項2に係る発明によれば、上記の効果
を奏し、しかも、基板表面にスロット線路と抵抗体膜を
形成すればよいため、基本的に基板の片方の面にのみ導
体膜および抵抗体膜をパターンニングすればよく、製造
が容易となる。
【0037】請求項3に係る発明によれば、導波管内部
に設けた構成によって非可逆特性が生じるため、導波管
による伝送損失の低い特性を生かすことができ、且つ基
板上に平面回路やチップ部品を容易に実装構成できるた
め、比較的小型で低損失特性が得られる。しかも基板に
は、その一方の面に導体膜と抵抗体膜をパターンニング
すればよいため、製造が容易となり、導波管内部での構
造も単純化され、全体の小型化が容易となる。
【0038】請求項4に係る発明によれば、誘電体に構
成した平面回路との接続性が極めて高くなる。例えば誘
電体基板に平面回路を構成したものに非可逆回路素子を
設ける場合にも、誘電体基板に形成した平面回路と磁性
体基板に形成した非可逆回路素子とを接続するといった
構造を採る必要がなくなる。また、誘電体層を付加する
ことにより、電磁界分布がフェリ磁性特性を示す磁性体
部分に引き寄せられ、電磁界分布が上記磁性体内に移動
し、その結果大きな非可逆性を生じる。
【0039】請求項5に係る発明によれば、スロット周
囲への電磁界分布の閉じ込め性が高くなり、外部磁界の
印加による電磁界分布の偏りによる非可逆性を高めるこ
とができる。また、導体膜および抵抗体膜が誘電体およ
び磁性体によって保護される。
【0040】請求項6に係る発明によれば、線路の特性
インピーダンスが緩やかに変化するため、信号の反射が
抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る非可逆回路素子の斜視図
【図2】同素子の電磁界分布の概略図
【図3】同素子のいくつかの構成例を示す断面図
【図4】第2の実施形態に係る非可逆回路素子の断面図
【図5】第3の実施形態に係る非可逆回路素子の斜視図
【図6】同素子のいくつかの構成例を示す断面図
【図7】第4の実施形態に係る非可逆回路素子の平面図
および断面図
【図8】第5の実施形態に係る非可逆回路素子の斜視図
および断面図
【図9】同素子の電磁界分布の概略図
【図10】第6の実施形態に係る非可逆回路素子の斜視
図および断面図
【図11】第7の実施形態に係る非可逆回路素子の断面
【符号の説明】
1−磁性体板 2−導体膜 3−スロット 4−抵抗体膜 5−誘電体板 6−導波管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 徳寺 博 京都府長岡京市天神二丁目26番10号 株 式会社村田製作所内 (72)発明者 石川 容平 京都府長岡京市天神二丁目26番10号 株 式会社村田製作所内 (56)参考文献 特開 昭63−124602(JP,A) 米国特許3968458(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01P 1/32 JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェリ磁性特性を示す基板の一方の面に
    スロットを有する導体膜を形成し、前記基板の他方の面
    に抵抗体膜を形成し、前記基板に略平行で且つ前記スロ
    ットに略垂直な向きに直流磁界を印加してなる非可逆回
    路素子。
  2. 【請求項2】 フェリ磁性特性を示す基板の表面にスロ
    ットを有する導体膜を形成し、該スロットの片方の導体
    膜の少なくとも一部に近接するように抵抗体膜を形成
    し、前記基板に略垂直な向きに直流磁界を印加してなる
    非可逆回路素子。
  3. 【請求項3】 導波管内部に、電磁波伝搬方向に沿っ
    て、フェリ磁性特性を示す基板を配置するとともに、該
    基板の表面に、スロットを有する導体膜を形成し、該ス
    ロットの片方の導体膜の少なくとも一部に近接するよう
    に抵抗体膜を形成し、前記基板に略垂直な向きに直流磁
    界を印加してなる非可逆回路素子。
  4. 【請求項4】 前記基板は、フェリ磁性特性を示す磁性
    体と誘電体とを積層して成り、該誘電体に前記導体膜を
    形成したことを特徴とする請求項1、2または3に記載
    の非可逆回路素子。
  5. 【請求項5】 前記導体膜を、前記誘電体と前記磁性体
    との間に設けたことを特徴とする請求項4に記載の非可
    逆回路素子。
  6. 【請求項6】 前記スロットに沿った前記抵抗体膜の端
    部をテーパ状にしたことを特徴とする請求項1〜5のう
    ちいずれかに記載の非可逆回路素子。
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