JP2000201006A - 非可逆回路装置、通信機装置 - Google Patents

非可逆回路装置、通信機装置

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JP2000201006A
JP2000201006A JP11001354A JP135499A JP2000201006A JP 2000201006 A JP2000201006 A JP 2000201006A JP 11001354 A JP11001354 A JP 11001354A JP 135499 A JP135499 A JP 135499A JP 2000201006 A JP2000201006 A JP 2000201006A
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slot
film
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resistor film
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Koichi Sakamoto
孝一 坂本
Hiroshi Tokuji
博 徳寺
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Murata Manufacturing Co Ltd
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Murata Manufacturing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】スロット線路を伝送路とする回路に適合する非
可逆回路装置を構成する。また、フィンラインの導波管
内部へ設ける基板に対する導体膜および抵抗体膜のパタ
ーンニングを容易にした非可逆回路装置を構成する。 【解決手段】フェリ磁性特性を示す磁性体板1の表面に
スロット3を有する導体膜2a,2bを形成し、スロット3の
片方の導体膜2bに抵抗体膜4を形成し、磁性体板1に垂直
方向に外部から直流磁界Hoを印加する。ポート#2か
らポート#1方向へ信号が伝搬する際、スロットモード
の電磁界が抵抗体膜4方向に偏り、抵抗体膜4により電力
消費されるため、信号の伝搬が阻止される。ポート#1
からポート#2方向へ信号が伝搬する場合には抵抗体膜4
による損失がなく、低損失で透過する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、マイクロ波帯や
ミリ波帯におけるアイソレータなどとして用いることの
できる非可逆回路装置およびそれを用いた通信機装置に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、エッジガイドモードを用いたアイ
ソレータが特開平4−287403号および特開昭63−124
602号に示されている。またフィンライン構造によるア
イソレータが特開昭61−7701号に示されている。
【0003】のアイソレータは、磁性体基板にマイク
ロストリップ線路を形成すると共に、ストリップ導体の
途中位置を片側に接地し、磁性体基板に対して垂直方向
に外部直流磁界を印加するようにしたものである。の
アイソレータは、磁性体基板にコプレーナウェーブガイ
ド(以下、「コプレーナ線路」という。)を形成すると
共に、コプレーナ線路の中心導体から一方の接地導体に
かけて電波吸収膜を形成し、磁性体基板に対して垂直方
向に外部直流磁界を印加するようにしたものである。
,のいずれも、外部直流磁界によって磁性体基板内
の磁気特性を変化させ、エッジガイド効果によって線路
両側の伝搬モードの電磁界分布を非対称にし、外部磁界
の方向と信号の伝搬方向に応じて伝搬信号を選択的に減
衰させるようにして、アイソレーション効果を発生させ
るようにしたものである。
【0004】またのアイソレータは、フィンラインの
基板の裏面にエネルギー吸収層を配置して、外部磁界と
信号の伝搬方向に応じて生じる電磁界分布の非対称性に
よって、1方向に伝搬する信号をエネルギー吸収層で吸
収させるようにしてアイソレーション効果を生じさせる
ようにしたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のアイソレータ
においては、伝送線路としてマイクロストリップ線路を
用いるので、マイクロストリップ線路で回路を構成した
平面回路にアイソレータを設ける場合には回路の接続性
が比較的高い。また、のアイソレータにおいては、伝
送線路としてコプレーナ線路を用いるので、例えば同軸
線路との線路変換が比較的容易であるという利点を備え
る。しかし,のいずれの場合でも、基板上にスロッ
ト線路で形成した平面回路や回路素子との接続性は低
い。例えば線路の特性インピーダンスを高くする必要が
ある場合にはスロット線路が有効であるが、従来、スロ
ット線路で構成される非可逆回路装置は存在しなかっ
た。そのため、平面回路に非可逆回路装置を組み込む場
合には、マイクロストリップ線路やコプレーナ線路によ
る非可逆回路装置を用い、スロット線路との間に線路変
換器を設けなければならず、全体に大型化するという問
題があった。
【0006】またのフィンラインを用いたアイソレー
タでは、フィンライン自体が導波管との接続性がよいた
め、伝送損失の低い導波管の利点を生かされ、且つ半導
体チップなどをフィンラインの基板に実装できるという
利点を備える。しかし従来のフィンラインを用いたアイ
ソレータは、導波管内の電界面に沿って取り付けられる
基板の一方の面に導体層によるパターンを形成し、他方
の面にフェライト層およびエネルギー吸収層を設ける構
造であるため、基板の両面のパターンニングが必要とな
っていた。そのため、製造が容易ではなく、構造上も複
雑化していた。
【0007】この発明の目的は、上述した種々の問題点
を解消した非可逆回路装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するため
本発明の非可逆回路装置は、フェリ磁性特性を示す基板
と、該基板の一方の面に形成されたスロットを有する導
体膜と、前記基板の他方の面に形成された抵抗体膜と、
前記基板に略平行で且つ前記スロットに略垂直な向きに
直流磁界を印加する磁石と、前記基板の周囲を覆って磁
路を形成するヨークとを含んでなる。このように基板の
一方の面にスロットを有する導体膜を形成することによ
ってスロット線路を構成したため、特にスロット線路に
よる平面回路との接続性が向上する。また、半導体チッ
プなどの素子との接続を行う場合に、スロット部分を跨
ぐように素子を実装すればよいので、素子との接続性が
向上する。さらに、他の特性インピーダンスの高い線路
とのインピーダンス整合が容易になるという特性を生か
すこともできる。
【0009】また、請求項2に係る非可逆回路装置は、
フェリ磁性特性を示す基板と、該基板の表面に形成され
たスロットを有する導体膜と、該スロットの片方の導体
膜の少なくとも一部に近接するように形成された抵抗体
膜と、前記基板に略垂直な向きに直流磁界を印加する磁
石と、前記基板の周囲を覆って磁路を形成するヨークと
を含んでなる。この構成により、上記の作用効果を奏
し、しかも、基板表面にスロット線路を構成すると共
に、スロットの片方の導体膜部分に抵抗体膜を形成すれ
ばよいため、基本的に基板の片方の面にのみ導体膜およ
び抵抗体膜をパターンニングすればよく、製造が容易と
なる。
【0010】さらに、請求項3に係る非可逆回路装置
は、導波管内部に、電磁波伝搬方向に沿って配置された
フェリ磁性特性を示す基板と、該基板の表面に形成され
たスロットを有する導体膜と、該スロットの片方の導体
膜の少なくとも一部に近接するように形成された抵抗体
膜と、前記基板に略垂直な向きに直流磁界を印加する磁
石と、前記基板の周囲を覆って磁路を形成するヨークと
を含んでなる。このように導波管内部に設けた構成によ
って非可逆特性が生じるため、導波管による伝送損失の
低い特性を生かすことができ、且つ基板上に平面回路や
チップ部品を容易に実装構成できるため、比較的小型で
低損失特性が得られる。しかも基板には、その一方の面
に導体膜と抵抗体膜をパターンニングすればよいため、
製造が容易となり、導波管内部での構造も単純化され、
全体の小型化が容易となる。
【0011】さらにまた、請求項4に係る非可逆回路装
置は、前記基板が、フェリ磁性特性を示す磁性体と誘電
体とを積層して成り、該誘電体に前記導体膜を形成して
いる。このように誘電体に導体膜を形成する構造である
ため、誘電体に構成した平面回路との接続性が極めて高
くなる。例えば誘電体基板に平面回路を構成したものに
非可逆回路装置を設ける場合にも、誘電体基板に形成し
た平面回路と磁性体基板に形成した非可逆回路装置とを
接続する、といった構造を採る必要がなくなる。また、
このように誘電体層を付加することにより、電磁界分布
がフェリ磁性特性を示す磁性体部分に引き寄せられる。
すなわち、誘電体層が無い場合は、主に上記磁性体部分
より空気領域に電磁界が分布するが、誘電率の高い誘電
体層を導体膜の下部に付加することにより、電磁界分布
が上記磁性体内に移動し、その結果大きな非可逆性を生
じることになる。
【0012】さらにまた、請求項5に係る非可逆回路装
置は、前記フェリ磁性特性を示す基板の一方の面に形成
された前記スロットを有する導体膜を、誘電体により覆
っている。これにより、スロット周囲への電磁界分布の
閉じ込め性が高くなり、外部磁界の印加による電磁界分
布の偏りによる非可逆性を高めることができる。また、
導体膜および抵抗体膜が誘電体および磁性体によって保
護される。
【0013】さらにまた、請求項6に係る非可逆回路装
置は、前記スロットに沿った前記抵抗体膜の端部をテー
パ状にしている。これにより線路の特性インピーダンス
が緩やかに変化するため、信号の反射が抑えられる。
【0014】さらにまた、本発明の通信機装置は、請求
項1〜6のうちいずれかに記載の非可逆回路装置を含んで
なる。これにより小型で非可逆特性の優れた通信機装置
が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】最初に本発明の非可逆回路装置に
おける種々の非可逆動作を示すため、非可逆回路装置よ
り導体膜および抵抗体膜が形成された基板と、基板に印
加される直流磁界方向とを取り出し、それらの部分(以
下、便宜的にこれらの部分を合わせて非可逆回路素子と
する)のみを用いて説明を行う。
【0016】この発明の第1の実施形態に係る非可逆回
路素子の構成を図1〜図3を参照して説明する。図1は非
可逆回路素子の斜視図であり、2つの異なった例につい
て示している。1はフェライトやYIGなどのフェリ磁
性特性を示す磁性体板であり、その表面(図における上
面)に、スロット3を有する導体膜2a,2bを形成してい
る。このスロット3の片方の導体2bの上面には抵抗体膜4
を形成している。図1の(A)と(B)とでは、抵抗体膜4
の形状が異なっていて、(A)ではスロット3から離れる
方向に先すぼみ形状とし、(B)ではスロット3から離れ
る方向に末広がり形状としている。図に示すように、磁
性体板1に対しては垂直方向に外部から直流磁界Hoを
印加する。
【0017】上記導体膜2a,2bおよび磁性体板1はスロ
ット線路を構成する。この例では、図に示すように、左
手前をポート#1、右後方をポート#2とする2ポートの
非可逆回路素子として用いる。
【0018】図2は、図1におけるA−A部分の断面図であ
り、外部から直流磁界を印加することによるスロットモ
ードの電磁界分布の変化を示す図である。ここでは紙面
に対して向こう側から手前方向へ(図1に示したポート
#2からポート#1方向へ)信号が伝搬する場合について
示している。図中実線の矢印は電界分布を、破線の矢印
は磁界分布をそれぞれ示している。直流磁界Hoを印加
しない状態では、(A)に示すように通常のスロットモ
ードで信号が伝搬する。直流磁界Hoを印加すると、図
2の(B)に示すようにスロットモードの電磁界分布が右
側へ引かれ、電磁界のエネルギーがスロット線路の図に
おける右側の導体膜に集中することになる。この部分に
は抵抗体膜4を形成しているため、抵抗体膜4に電流が
流れる際に電力消費が生じ、スロットモードによる信号
が大きく減衰される。逆に、紙面に対して手前から向こ
う側へ(ポート#1からポート#2方向へ)信号が伝搬す
る場合には、スロットモードの電磁界分布は図における
左側へ引かれて、抵抗体膜4側の電磁界エネルギー分布
が疎になる。その結果、抵抗体膜4による電力消費が抑
制されて、信号はほとんど減衰することなく伝搬する。
この作用により、ポート#1からポート#2方向へ信号を
選択的に伝搬するアイソレータとして用いることができ
る。因みに、直流磁界の方向を逆にした場合には、直流
磁界の方向と信号の伝搬方向とによって定まる、伝搬モ
ードの電磁界分布の偏る方向が、上述とは逆の関係とな
るため、アイソレーションの向きは逆となる。
【0019】なお、図1に示したように、スロットに沿
った抵抗体膜4の端部をテーパ状にしたため、阻止方向
に信号が伝搬しようとする場合でも、線路の特性インピ
ーダンスの変化が緩やかとなり、信号の反射が抑えられ
る。透過方向に信号が伝搬する場合には、抵抗体膜4側
の電磁界のエネルギー密度が低くなるため、抵抗体膜4
による影響は殆ど受けないが、図1に示したように、信
号の透過方向にも、抵抗体膜4の幅が緩やかに広がる形
状とすれば、線路の特性インピーダンスの変化が緩やか
となり、抵抗体膜4による信号の反射はさらに殆ど生じ
ない図3は図1に示した非可逆回路素子の他の断面構造を
示す図である。これらの例はいずれも、スロットに対し
て直交する向きの断面図であり、抵抗体膜の平面パター
ンは図1に示したものと同様である。(A)の例では、磁
性体板1の表面に抵抗体膜4を形成し、その表面に導体膜
2bを形成している。(B)の例では、抵抗体膜4、導体膜
2b、抵抗体膜4の順に積層している。この(A),(B)
のように、導体膜2bと共に抵抗体膜4を積層しても、表
皮効果により電流分布は抵抗体膜4に集中するため、効
率的な電力消費が可能となる。また、(C)に示す例で
は、導体膜2bと同一平面上に抵抗体膜4を形成してい
る。
【0020】次に、第2の実施形態に係る非可逆回路素
子の構成を断面図として図4に示す。図4において6は導
波管である。1は磁性体板であり、その表面にスロット3
を有する導体膜2a,2bを形成すると共に、スロット3の
片方の導体膜2bの表面に抵抗体膜4を形成している。こ
の磁性体板1、導体膜2a,2bおよび抵抗体膜4の構成は図
1および図2に示したものと同様である。この導体膜2a,
2bおよび抵抗体膜4を形成した磁性体板1を図に示すよう
に、導波管6の内部に配置している。この構造により、
導体膜2a,2bによるスロット3と導波管6とによってフィ
ンラインを構成している。
【0021】このようなフィンライン構造の場合にも、
磁性体板1に対して垂直方向に外部から直流磁界Hoを
印加することにより、紙面に対して向こうから手前へ伝
搬する信号の電磁界分布は抵抗体膜4側へ集中して、抵
抗体膜4に電流が流れる際に電力消費が生じ、信号が大
きく減衰される。逆に、紙面に対して手前から向こう側
へ信号が伝搬する場合には、伝搬モードの電磁界分布は
図における左側へ引かれて、抵抗体膜4側の電磁界エネ
ルギーが減少する。その結果、抵抗体膜4による電力消
費が抑制されて、信号はほとんど減衰することなく伝搬
することになる。この作用により、紙面に対して手前か
ら向こう側へ信号を選択的に伝搬する導波管型のアイソ
レータとして作用する。
【0022】次に、第3の実施形態に係る非可逆回路素
子の構成を図5および図6を参照して説明する。図5は非
可逆回路素子の斜視図である。図中の5は誘電体板であ
り、その表面に、スロット3を有する導体膜2a,2bを形
成し、さらに導体膜2b側に抵抗体膜4を形成している。
図中1はフェライトやYIGなどのフェリ磁性特性を示
す磁性体板であり、その上面に誘電体板5を重ねてい
る。
【0023】このように誘電体板5にスロット線路を形
成することにより、この誘電体板5の上に設けられる他
の平面回路や実装される半導体チップなどとの接続性が
極めて高くなる。例えば誘電体板5に平面回路を設け、
チップ部品を実装するとともに、その誘電体板に導体膜
2a,2bによるスロット線路を形成し、少なくとも、この
スロット線路部分に磁性体板1を重ね、外部から直流磁
界Hoを印加することによって、平面回路中にアイソレ
ータを設けることができる。そのため、例えば磁性体板
上に導体膜および抵抗体膜を形成してなる非可逆回路素
子と、平面回路を構成した誘電体板とを接続する、とい
った構造を採る必要がなくなる。
【0024】また、上記アイソレータ部分の誘電体板
と、他の平面回路を構成する誘電体板とが別体であって
も、双方の線路の特性インピーダンスを容易に等しくで
きるため、接続部の構成が簡単となる。
【0025】図6は図5に示した非可逆回路素子のスロッ
トに直交する面での幾つかの断面構造を示す図である。
(A)の例では、磁性体板1の表面に導体膜2bを形成し、
その表面に抵抗体膜4を形成している。(B)の例では、
磁性体板1の表面に抵抗体膜4を形成し、その表面に導体
膜2bを形成している。(C)の例では、抵抗体膜4、導体
膜2b、抵抗体膜4の順に積層している。また、(D)に示
す例では、導体膜2bと同一平面上に抵抗体膜4を形成し
ている。いずれの構造でも、直流磁界の方向と信号の伝
搬方向とに応じて、スロットモードの電磁界分布が図に
おける右方向に偏る状態で、抵抗体膜4による電力消費
が効率良く行われる。
【0026】次に、第4の実施形態に係る非可逆回路素
子の構造を図7に示す。図7の(A)は磁性体板を取り除
いた状態での平面図、(B)はスロットに直交する面で
の断面図である。図において5は誘電体板であり、その
表面に導体膜2a,2bおよび抵抗体膜4を形成している。
この誘電体板5の上面に磁性体板1を積層することによ
り、抵抗体膜4を備えるスロット線路を構成している。
そして、誘電体板5および磁性体板1に対して垂直方向に
直流磁界Hoを印加している。
【0027】図7において、ポート#1からポート#2へ
向かう信号のスロットモードの電磁界分布は図における
左方向へ集中し、抵抗体膜4によりほとんど消費されず
に伝搬するが、ポート#2からポート#1方向へ伝搬する
信号についてはスロットモードの電磁界分布が図におけ
る右方向に偏って、抵抗体膜4により電力消費されるた
め、大きく減衰する。このように導体膜2a、2bおよび抵
抗体膜4によるスロット3部分を誘電体板5と磁性体板1に
より挟み込んだ構造とすることによって、スロットモー
ドの電磁界分布がスロット3周囲に閉じ込められ、外部
磁界の印加による電磁界分布の偏りが大きくなり、非可
逆性が高まる。また、導体膜2a、2bおよび抵抗体膜4が
誘電体板5および磁性体板1によって保護される。
【0028】次に、第5の実施形態に係る非可逆回路素
子の構成を図8および図9を参照して説明する。図8の
(A),(B)は非可逆回路素子の斜視図であり、異なっ
た2つの例について示している。(C)はスロットに直
交する面での断面図である。図中1はフェライトやYI
Gなどのフェリ磁性特性を示す磁性体板であり、その一
方の面(図における上面)に、スロット3を有する導体
膜2a,2bを形成している。磁性体板1の他方の面(図に
おける下面)にはスロット3に対向する位置に抵抗体膜4
を形成している。
【0029】図9は、外部から直流磁界を印加すること
による上記非可逆回路素子のスロットモードの電磁界分
布の変化を示す断面図である。ここでは紙面に対して向
こう側から手前方向へ(図8に示したポート#2からポー
ト#1方向へ)信号が伝搬する場合について示してい
る。図中実線の矢印は電界分布を、破線の矢印は磁界分
布をそれぞれ示している。直流磁界Hoを印加しない状
態では、(A)に示すように通常のスロットモードで信
号が伝搬する。外部から直流磁界Hoを磁性体板1に平
行に且つスロット3に垂直な向きに印加すると、スロッ
トモードの電磁界分布は基板の導体膜2a,2bに対向する
面方向へ引き伸ばされる。この部分には抵抗体膜4を設
けているので、抵抗体膜4に電流が流れて、電力消費が
生じ、信号は大きく減衰する。
【0030】逆に、信号がポート#1からポート#2方向
へ伝搬する場合、スロットモードの電磁界は図における
上面方向に引き伸ばされようとする。しかし、空気の比
誘電率は磁性体板1の比誘電率より小さいため、(A)に
示した分布とほぼ同様の分布を示し、抵抗体膜4での電
力消費は殆ど生じない。したがってポート#1からポー
ト#2方向へは低挿入損失で信号が伝搬する。
【0031】上記の作用により、ポート#1からポート
#2方向へ信号を選択的に伝搬するアイソレータとして
用いることができる。因みに、直流磁界の方向を逆にし
た場合には、直流磁界の方向と信号の伝搬方向とによっ
て定まる、伝搬モードの電磁界分布の偏る方向が、上述
とは逆の関係となるため、アイソレーションの向きは逆
となる。
【0032】なお、阻止方向に信号が入射した場合に、
抵抗体膜4の存在により線路の特性インピーダンスが変
化するが、図8に示したように、抵抗体膜4の信号伝搬方
向の端部をテーパ状にしたため、阻止方向に信号が伝搬
しようとする場合でも、線路の特性インピーダンスの変
化は緩やかとなり、信号の反射が抑えられる。透過方向
に信号が伝搬する場合には、抵抗体膜4側の電磁界のエ
ネルギー密度が低くなるため、抵抗体膜4による影響は
殆ど受けないが、図8に示したように、信号の透過方向
にも、抵抗体膜4の幅が緩やかに広がる形状とすれば、
線路の特性インピーダンスの変化が緩やかとなり、抵抗
体膜4による信号の反射はさらに殆ど生じない。
【0033】次に、第6の実施形態に係る非可逆回路素
子の構成を図10を参照して説明する。図10の(A)は斜
視図、(B)はスロットに直交する面での断面図であ
る。図中5は誘電体板であり、図における上面に、スロ
ット3を有する導体膜2a,2bを形成している。1はフェラ
イトやYIGなどのフェリ磁性特性を示す磁性体板であ
り、その図における下面の、スロット3に対向する位置
に抵抗体膜4を形成している。
【0034】図10の(B)に示すように、外部から直流
磁界Hoを誘電体板5および磁性体板1に平行に且つスロ
ット3に垂直な向きに印加すると、紙面に対して向こう
側から手前方向に伝搬するスロットモードの電磁界分布
は基板の導体膜2a,2bに対向する面方向へ引き伸ばされ
る。この部分には抵抗体膜4を設けているので、抵抗体
膜4に電流が流れて、電力消費が生じ、信号は大きく減
衰する。逆に、紙面に対して手前から向こう側へ伝搬す
るスロットモードの電磁界は図における上面方向に引き
伸ばされようとし、抵抗体膜4による電力消費は殆ど無
くなり、低挿入損失で信号が伝搬する。このようにして
アイソレータとして作用する。
【0035】図11は第7の非可逆回路素子の構成を示す
断面図である。この例では、誘電体板5の図における上
面にスロット3を有する導体膜2a,2bを形成し、スロッ
ト3に対向する位置に抵抗体膜4が配置されるように、抵
抗体膜4を形成した磁性体板1を積層している。この抵抗
体膜4のパターンは図10の(A)に示したものと同様であ
る。このような構造においても、信号の伝搬方向と直流
磁界の方向に応じて、電磁界分布の偏りが変化し、所定
方向の信号を抵抗体膜4により減衰させ、それとは逆方
向の信号を低挿入損失で伝搬させる。
【0036】以上に示した例では非可逆回路素子として
の基本構成部分のみを示したが、回路素子としての非可
逆回路装置の構成例を図12および図13を参照して説明す
る。図12は非可逆回路装置全体の分解斜視図である。10
は例えば図8に示した非可逆回路素子の基板である。11
はこの基板10に対して、基板に平行で且つスロットに垂
直な向きに直流磁界を印加するための磁石である。13は
基板10と磁石11を保持するキャリアであり、磁石11のヨ
ークとしても用いるため、磁性体材料から成る。12はそ
の上部に被せるキャップである。
【0037】図13は上記非可逆回路装置の斜視図および
断面図である。この図に示すように、キャップ12をキャ
リア13より小さくして、基板10の2つの入出力ポート部
分を露出させている。図13の(B)において、2つの磁石
11,11の磁極はその両面部分にあって、キャリア13をヨ
ークとして用いる。すなわち、キャリア13と基板10が磁
石11,11の磁路を構成し、基板10に対して平行な向きに
直流磁界を印加する。
【0038】なお、基板10の導体膜とキャリア13および
キャップ12の内面との距離h1,h2は管内波長λgの1/2
以下にする。このことにより、基板10とキャリア13との
間、および基板10とキャップ12との間の空間に不要な平
行平板モードの電磁界が励起されないようにする。
【0039】次に、基板に対して垂直方向に直流磁界を
印加するタイプの非可逆回路装置の構成を図14および図
15を参照して説明する。図14は非可逆回路装置全体の分
解斜視図である。10は非可逆回路装置の基板であり、例
えば図1に示した構造の基板を用いる。11はこの基板10
に対して、基板に垂直な向きに直流磁界を印加するため
の磁石である。13は基板10と下方の磁石11を保持するキ
ャリアである。12は上部の磁石11を保持するとともに、
キャリア13に被せるキャップである。このキャリア13と
キャップ12は磁石11のヨークとしても用いるため磁性体
材料から成る。
【0040】図15は上記非可逆回路装置の斜視図および
断面図である。図15の(B)において、2つの磁石11,11
の磁極はその両面部分にあって、キャリア13およびキャ
ップ12はヨークとして作用する。すなわち、キャリア1
3、キャップ12および基板10が磁石11,11の磁路を構成
し、基板10に対して垂直方向に磁界を印加する。
【0041】なお、基板10の導体膜とキャリア13および
キャップ12の内面との距離h1,h2を管内波長λgの1
/2以下にする。これにより基板10の上部の導体膜とキ
ャリア13との間、基板10の下部の導体膜とキャップ12と
の間に不要な平行平板モードが励起されないようにす
る。
【0042】以上に示した非可逆回路装置を用いて高周
波回路を構成する場合、非可逆回路特性を示す基板の導
体膜部分を電極として他の回路素子の電極とを電気的に
接続すればよい。例えば図16に示すように、非可逆回路
装置100と他の回路素子101を共通の基台に設置すると共
に両者をワイヤ14によりボンディングする。
【0043】次に、上記非可逆回路装置を用いて構成し
た送受信装置の実施形態として、ミリ波レーダモジュー
ルについて図17を参照して説明する。図17は送受信装置
全体のブロック図である。図17において、オシレータは
送信信号を発振し、非可逆回路装置としてのアイソレー
タはその信号が逆方向に伝搬してオシレータ側に戻らな
いように、信号を一方向に伝搬させる。サーキュレータ
は送信信号をアンテナへ導き、アンテナからの受信信号
をミキサ側へ伝搬させる。アンテナは送信信号を無線送
信(送波)し、物体からの反射波を受信(受波)する。
2つのカプラのうち一方のカプラはアイソレータの出力
信号に結合してローカル信号を取り出し、他方のカプラ
はそのローカル信号と受信信号とを混合してミキサへ与
える。ミキサは非線形素子により上記ローカル信号と受
信信号との差の周波数成分の高調波を生成する。
【0044】上記ミリ波レーダモジュールを利用するコ
ントローラは、オシレータの発振周波数を周期的に変調
するとともに、上記ローカル信号と受信信号との差の周
波数およびその時間的変化から、物体までの距離および
相対速度を検出する。
【0045】上記ミリ波レーダモジュールの伝送線路は
誘電体板にスロットを形成したスロットモードの線路で
あり、各回路素子は単一の誘電体板上に一体的に設け
る。例えば非可逆回路装置は上記誘電体板の所定箇所に
フェライト板を積層して、その部分に図5、7などに示し
たものと同様の非可逆回路装置を構成する。
【0046】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、スロット
線路による平面回路や半導体チップなどとの接続性が向
上し、また他の特性インピーダンスの高い線路とのイン
ピーダンス整合が容易になるという特性を生かすことが
できる。
【0047】請求項2に係る発明によれば、上記の効果
を奏し、しかも、基板表面にスロット線路と抵抗体膜を
形成すればよいため、基本的に基板の片方の面にのみ導
体膜および抵抗体膜をパターンニングすればよく、製造
が容易となる。
【0048】請求項3に係る発明によれば、導波管内部
に設けた構成によって非可逆特性が生じるため、導波管
による伝送損失の低い特性を生かすことができ、且つ基
板上に平面回路やチップ部品を容易に実装構成できるた
め、比較的小型で低損失特性が得られる。しかも基板に
は、その一方の面に導体膜と抵抗体膜をパターンニング
すればよいため、製造が容易となり、導波管内部での構
造も単純化され、全体の小型化が容易となる。
【0049】請求項4に係る発明によれば、誘電体に構
成した平面回路との接続性が極めて高くなる。例えば誘
電体基板に平面回路を構成したものに非可逆回路装置を
設ける場合にも、誘電体基板に形成した平面回路と磁性
体基板に形成した非可逆回路装置とを接続するといった
構造を採る必要がなくなる。また、誘電体層を付加する
ことにより、電磁界分布がフェリ磁性特性を示す磁性体
部分に引き寄せられ、電磁界分布が上記磁性体内に移動
し、その結果大きな非可逆性を生じる。
【0050】請求項5に係る発明によれば、スロット周
囲への電磁界分布の閉じ込め性が高くなり、外部磁界の
印加による電磁界分布の偏りによる非可逆性を高めるこ
とができる。また、導体膜および抵抗体膜が誘電体およ
び磁性体によって保護される。
【0051】請求項6に係る発明によれば、線路の特性
インピーダンスが緩やかに変化するため、信号の反射が
抑えられる。
【0052】請求項7に係る発明によれば、非可逆特性
の優れた通信機装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る非可逆回路素子の斜視図
【図2】同素子の電磁界分布の概略図
【図3】同素子のいくつかの構成例を示す断面図
【図4】第2の実施形態に係る非可逆回路素子の断面図
【図5】第3の実施形態に係る非可逆回路素子の斜視図
【図6】同素子のいくつかの構成例を示す断面図
【図7】第4の実施形態に係る非可逆回路素子の平面図
および断面図
【図8】第5の実施形態に係る非可逆回路素子の斜視図
および断面図
【図9】同素子の電磁界分布の概略図
【図10】第6の実施形態に係る非可逆回路素子の斜視
図および断面図
【図11】第7の実施形態に係る非可逆回路素子の断面
【図12】本発明の非可逆回路装置の分解斜視図
【図13】同非可逆回路装置の斜視図および断面図
【図14】本発明の他の非可逆回路装置の分解斜視図
【図15】同非可逆回路装置の斜視図および断面図
【図16】非可逆回路装置と他の回路素子との接続構造
を示す図
【図17】ミリ波レーダモジュールの構成例を示すブロ
ック図
【符号の説明】
1−磁性体板 2−導体膜 3−スロット 4−抵抗体膜 5−誘電体板 6−導波管 10−非可逆回路装置の基板 11−磁石 12−キャップ 13−キャリア 14−ワイヤ 100−非可逆回路装置 101−他の回路素子

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フェリ磁性特性を示す基板と、該基板の一
    方の面に形成されたスロットを有する導体膜と、前記基
    板の他方の面に形成された抵抗体膜と、前記基板に略平
    行で且つ前記スロットに略垂直な向きに直流磁界を印加
    する磁石とを含んでなることを特徴とする非可逆回路装
    置。
  2. 【請求項2】フェリ磁性特性を示す基板と、該基板の表
    面に形成されたスロットを有する導体膜と、該スロット
    の片方の導体膜の少なくとも一部に近接するように形成
    された抵抗体膜と、前記基板に略垂直な向きに直流磁界
    を印加する磁石とを含んでなることを特徴とする非可逆
    回路装置。
  3. 【請求項3】導波管内部に、電磁波伝搬方向に沿って配
    置されたフェリ磁性特性を示す基板と、該基板の表面に
    形成されたスロットを有する導体膜と、該スロットの片
    方の導体膜の少なくとも一部に近接するように形成され
    た抵抗体膜と、前記基板に略垂直な向きに直流磁界を印
    加する磁石とを含んでなることを特徴とする非可逆回路
    装置。
  4. 【請求項4】前記基板が、フェリ磁性特性を示す磁性体
    と誘電体とを積層して成り、該誘電体に前記導体膜を形
    成したことを特徴とする請求項1、2または3に記載の非
    可逆回路装置。
  5. 【請求項5】前記フェリ磁性特性を示す基板の一方の面
    に形成された前記スロットを有する導体膜を、誘電体に
    より覆ったことを特徴とする請求項1、2、3または4に記
    載の非可逆回路装置。
  6. 【請求項6】前記スロットに沿った前記抵抗体膜の端部
    をテーパ状にしたことを特徴とする請求項1〜5のうち
    いずれかに記載の非可逆回路装置。
  7. 【請求項7】請求項1〜6のうちいずれかに記載の非可逆
    回路装置を含んでなることを特徴とする通信機装置。
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